Title
Molecular Basis of Selective IgG2 Deficiency : The Mutated
Membrane- bound Form of γ2 Heavy Chain Caused Complete
IgG2 Deficiency in Two Japanese Siblings( 内容の要旨
(Summary) )
Author(s)
田下, 秀明
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第366号
Issue Date
1998-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14758
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氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 田 下 秀 明(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 366
号
平成10 年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当MoIecuJar Basis of Se]ectivelgG2Deficiency:The Mutated
Membrane-bound Form of Y2Heavy Chain Caused Comp暮etelgG2Deficiencyin
TwoJapanese SibIings (主査)教授 近 藤 直 実 (副査)教授 野 澤 義 則 教授 高 見 剛 論文内容の要旨 先天性免疫不全症には種々の病型があり.そのうち抗体産生不全を主とする免疫不全症のひとつにIgG2欠乏 症がある。本症はIgM,IgG,IgAなどの他の免疫グロブリン値の低下はないがIgGのサブクラスの1つである IgG2のみが選択的に欠乏しており,肺炎球菌やインフルエンザ菌などによる反復性の中耳炎や副鼻腔炎,肺炎 などを呈する。IgG2が産生されるためには垂鎖遺伝子群においてVDJ可変部領域とCγ2定常領域がクラススイッ チによって近接する必要がある。クラススイッチが生じるためにはgermlineCγ2transcriptと呼ばれる蛋白に 翻訳されないmRNAの発現が不可欠と考えられ.クラススイッチ後IgG2重鎖をコードするmature Cγ2 transcriptが産生される。一方,免疫グロブリンは分泌される抗体の他に,B細胞表面レセプターとして働く膜 結合型が存在している。どのような機序で各種免疫グロブリンのうちIgG2のみが選択的に欠乏するのかを解析 することは免疫グロブリン産生の調節機構を知る上で重要である。しかしこれまでにはIgG2垂鎖をコードする Cγ2領域を含む大きな遺伝子欠失例が知られるのみであった。 申請者は選択的IgG2欠乏症の兄弟例について病因解析を行い,本症の病因となる遺伝子変異をはじめで明ら かにした。 1.研究方法 1)対象:中耳炎および呼吸器感染症を繰り返し.血巾IgG2レベルが常に測定感度以下を示している5才と10才 の兄弟を対象とした。 2)競合的PCRによるgermlineC†2transcriptの半定量:患児およびコントロールの末梢血単核球よりRNAを 抽出しcDNAを合成した。すでに報告されているγ2領域遺伝子の配列をもとにプライマーを作成し,コントロー ルのcDNAよりPCRにてgermlineCγ2transcriptを増幅,さらにそのPCR産物をクローニングしてcompetitor DNAを作成した。COmpetitorDNAの3倍希釈系列を作成し患児らのcDNAとともに競合的PCRを行い,ポリア クリルアミドゲルにて泳動した。 3)競合的PCRによるmatureCγ2transcriptの半定量:同様の操作で.免疫グロブリンVDJ領域の重鎖J領域 遺伝子の配列とCγ2エクソン2の配列をもとにプライマーを作成してmature C†2 transcriptを増幅し, maturecγ2transcriptに対するcompetitorDNAを作成した。COmPetitor DNAの10倍希釈系列を作成し患 児らのcDNAとともに競合的PCRを行い,ポリアクリルアミドゲルにて泳動した。 4)S†2領域の解析:Sγ2領域を特異的に増幅できるようにプライマーを設定し,患児およびコントロール末梢 血の好中球分画より得られたゲノムDNAを用いてPCR増幅を行い,電気泳動にてサイズ差について検討した。 5)Cγ2領域の解析:Cγ2領域を特異的に増幅できるようにプライマーを設定し,患児およびコントロール末梢 血の好中球分画より得られたゲノムDNAを用いてPCR増幅を行い,その全長についてシークエンスを行った。 6)Cγ2膜エクソンのクローニンク ヒトCγ2領域を含むファージをHindⅢにて切断し,Cγ2エクソン周辺を
-43-含む断片をクローニングした。すでに報告されている他のヒトIgGサブクラス重鎖遺伝子の膜エクソンにおいて 共通な配列部分およびCγ2のエクソン4にプライマーを設定しCγ2膜エクソン領域の増幅およびシークエンスを 行った。
7)膜型Cγ2transcriptの解析:ヒトCγ2エクソン2およぴCγ2膜エクソンにプライマーを設定し,患児およ
びコントロールの末梢血単核球由来cDNAを用いて膜型Cγ2 transcriptを増幅し,シqクエンスにより
alternative splice siteを明らかにした。 2.結果 1)競合的PCRによるgermlineCγ2transcriptの半定量:患児らにおけるgermiine Cγ2transcriptの発現量 はコントロールとほぼ同等であった。 2)競合的PCRによるmature Cγ2transcriptの半定量:患児らにおけるmatureCγ2transcriptの発現量はコ ントロールの100分の1以下と低下を認めた。以上より本症の病因となる変異がクラススイッチ以降に存在するこ とが明らかになった。 3)Sγ2領域の解析:患児およぴコントロールにおいて,ゲノム由来Sγ2領域PCR産物には明らかなサイズ差は 認められなかった。 4)Cγ2領域の解析:患児らにおいてCγ2エクソン4の分泌型停止コドンの7塩基上流にGの1塩基挿入 (1793insG)を,さらにその3塩基上流にでからCへの1塩基置換をホモ接合体として検出した。両変異は患児らの 母親ではヘテロ接合体としてみられたが,コントロール60例では同変異は1例もみられなかった。 5)Cγ2膜エクソンのクローニング:すでに報告されている他のIgG重鎖の膜エクソンと高い相同性をもった71 アミノ酸をコードする2つのエクソンMl,M2が同定された。
6)膜型Cγ2transcriptの解析:Cγ2エクソン4の分泌型停止コドンの6塩基上流にalternative splice siteが存
在することが明らかとなった。患児らの1793insG変異によりframeshiftが起こると.IgG2重鎖の膜領域のアミ ノ酸配列は疎水性領域を欠く119アミノ酸からなる全く異なる配列へと変化する。これにより膜型IgG2重鎖がそ の機能を失い,正常なB細胞反応が障害されることが本症の病因であると考えられた。 3.考察 今回同定された遺伝子変異により分泌型IgG2重鎖は最後のアミノ酸残基リジンを欠失するのみであるが,一 方B細胞レセプターとしての膜型IgG2垂鎖はframeshiftにより膜質通領域および種を超えて保存された細胞質 内領域の配列を失う。マウスにおいて膜結合型垂鎖の正常な発現が正常なB細胞反応と分泌型免疫グロブリン産 生において不可欠であるとするいくつかの研究成果と照らし合わせ.1793insG変異がこの兄弟における選択的 かつ完全型IgG2欠乏症の病因であると結論した。これはヒト選択的IgG2欠乏症における初めての報告である。 論文審査の結果の要旨 申請者 田下秀明は,選択的IgG2欠乏症患児の末梢血をもちいて競合的PCRとシークエンスを中心とした手 法によりゲノムDNAおよびcDNAの解析を行い,IgG2重鎖膜エクソンの配列を明らかにするとともに,世界で 初めてIgG2欠乏症の病因のひとつが,Cγ2領域における1塩基挿入であることを明らかにした。この研究は小児 科学ならびに免疫学の研究の進歩.発展に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌] MolecularBasisofSelectiveIgG2Deficiency‥TheMutatedMembrane-boundForm ofγ2Heavy Chain Caused CompleteIgG2Deficiency・in TwoJapanese Siblings
平成10年発行予定 TheJournalofClinicalInvestigation 印刷中