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組織転換と構造化理論 : アメリカ・ハイテック企業のエスノグラフィ

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組織転

一一アメリカ ・ハイ

と構造化理論

ク企業 のエ ス ノグ ラフ イーー ー

之 博 藤 伊 I は じめ に 本稿 はア メ リカの 中堅ハ イテ ック企業 のエ ス ノグラフィー (民族 史的記述 に 1 ) 基づ いた研 究)で あ る。著 者が参加観察 をお こな った時,こ の会社 はマネ ジメ ン ト ・クライ シス と呼 ばれ る組織 の転換期 にあ った。 この転換 プ ロセスが なぜ 起 こったのか,こ の転換 プ ロセスでなにが起 こって い るのか,が このエス ノグ ラフ ィー の焦点 とな った。本稿 の 目的 は,エ ス ノグラフ ィー を とうして, Anthony Giddens(1979)の 提唱す る構造化理論 を組織転換分析 の枠組 とし て導入す ることである。 その際,正 統的組織論の枠組み を組織転換プロセスの 分析 に適用す ることの困難性 も指摘 したい。 正統的組織論 と構造化理論は次の ように対置で きる。正統的組織論は組織理 論 を個 人の経験に還元で きる ミクロ組織論 と行為主体 として組織 を概念化す る マ クロ組織論 に分割す る。 ここでは,組 織 と個人は独立 した実体的存在 として 仮定 され,組 織 は機能的 システム として概 念化 され る。対 して,構 造化理論 (Giddens 1979)は組織 をマ クロ と ミクロの相 互浸透 プ ロセスに存在す る社 会的構築物 と仮定す る。個人が社会的経験 を解釈す るために利用す る諸資源や 2 ) 諸規則 と定義 され る 「構造」は, さまざまな利害関心 をもつ個人の解釈枠 とな 1)エ ス ノグラフィーは,参 加観祭,イ ンテンシブなインタビュー,内 部資料の閲覧 を通 じ た,文 化 内の当事者の視フ点に基づ いた社会的状況の記述 を目的 とした定性的研究である。 Ceertz(1983)は それ を 「濃密 な記述」 (thick description)と呼んでいる。 尚,守 秘義 務 のため,本 稿 のエスノグラフィーに登場す る全 ての人名 ・会社名 は偽名 を用 いている。 2)Giddensの 「構造」概念 は Geertz(1973,1983)の 文化 の概念に近似 している。Geertzノ

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136 彦 根論叢 第 310号 って人々の相 互作用 に影響 を与 え る。 さ らに,「 構 造」 は人々の相互作用 の な か で再 生産 されて い く。組織 とは,こ の構 造化 プ ロセスに よって生み 出 され る 社会 的構築 物 で あ る とい うのが構 造化理論 の主張 で あ る。 この ような組織現象に対す る仮定の違 いは組織変化プ ロセスに対 して も異な った視″点を提供す る。従来の組織変動研究では組織の安定状態 を定常状態 と仮 定 し,組 織の転換期 であるマネジメン ト・クライシスの段階 を剰余概念 として 扱 って きた。 あるいは,転 換期 を,単 に,進 化プ ロセスの選択。淘汰段階 とし て極めて大 まかに概念化 して きた。 しか し,構 造化理論に したがえば,組 織の 安定状態はむ しろ異常 であ り,マ ネ ジメン ト・クライシス段階は組織 を生産, 再生産す る構造化 プ ロセスを活性化,顕 在化す るにす ぎない。本稿 はこの よう な観点か らア メ リカのハ イテ ック企業の分析 を試み る。 本稿 はエスノグラフィーの典型的な構成に したが っている。 まず,概 念的な 枠組み を提示す るこ とか ら議論 を開始す る。 そこでは,組 織変動論の代表的研 究の批判的検討 をお こない,概 念的枠組み としての構造化理論の導入がお こな われ る。ついで,調 査方法 と調査対象企業の概要が説明され る。 そ して,構 造 化理論 に基づ いたア メ リカの中堅ハ イテ ック企業の転換プ ロセスの解釈 をお こ な う。最後に,本 稿 で得 られた発見 と示唆 を要約 してまとめ とす る。 H 概 念的な枠組み :組織変動論 と構造化理論 1.組 織変動論の系譜 組織変動論 は組織論の主要 な研究課題のひ とつであ り,こ こで全ての研究 を カバーす ることは著者の能力 を超 えている。 しか し,組 織の長期的環境適応 を 議論す る組織変動論 は大 き く3つ のカテ ゴ リーに分類 される, というおおよそ ヽによると,文 化は文化の当事者が社会的な世界を解釈するために用いるコンテクス トとし てのシンボルの体系である。 自然環境, 人 工物, 言 動は全てシンボルであ り, こ れらのシ ンボルのパターンが文化である。C i d d e n s の 「構造」 も共同体のメンバーが利用する解釈 の道具であり, G e e r t z の文化 とほぼ同じものを指す と考えることができる。

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組織転換と構造化理論 137 の コンセ ンサ スが存在 す る (Thomas 1994)。 まず, ト ップ 。マネ ジメン トの 戦略 的選 択 を重視 す るアプ ロー チ と環境へ の適応 を組織変動 の説明に用 いるア プ ロー チが対 置 され る。 そ して,両 アプ ロー チ を折衷す る相互作用 アプ ローチ とで も呼 ばれ る第 3の 立場 が存在 す る。 第 1の ,戦 略 的選 択 を重視 す るアプ ロー チ (e.g"Chandler 1962,Andrew 1972,Schendel and HOfer 1979)に よれ ば,経 営者 は戦略や組織 をデザ イン す る合理 的 な行為 者 であ る。一方 で,組 織 を構成 す る他 の人々は戦略の機械的 な実行 者 と仮定 され る。 このアプ ロー チの代表的 な人物 であ る Chandler(196 2)は ,ア メ リカ企業 の戦略 と組織 の発展史に次の ようなパ ター ンを発見す る。 GMや デュ ポ ン とい ったア メ リカ大企業 は トップ主導 で製 品系列 を増加 させ る こ とで組織 を拡大 して きた。つ いで,そ の製 品系列 の増加か ら生 じた管理上 の 複雑 性 は,経 済危機 の後 に会社 を引 き継 いだ次世代 の トップが組織 デザ インを 職 能制組 織 か ら事 業部 門制 組 織 に変 更 す るこ とで解 決 され て いた。Chandler は,こ のア メ リカ企業 の発展パ ター ンか ら,「 組織 は戦略 に したが う」 とい う 命題 を抽 出す る。Chandlerの 研 究 は戦略 のデザ イン学派 (e.g,Andrew 1972, Schendel and HOfer 1979)に 多大 な影響 を及ぼ し, ト ップ主導の組織変化 モデル に原 型 を与 えた。Chandlerは ,戦 略の形成者 と組織 の革新 者 は別 の人 物 であ る と論 じたが,戦 略,組 織 ともに トップ主導 で形成,革 新 され ると主張 してい たか らであ る。 しか し,後 に, このアプ ロー チは,組 織が戦略 を創発 し, 慣 性 力 を もつ 側 面 を 無 視 し て い る 点 で 批 判 を受 け る よ うに な る (e.gり Mintzberg 1978,Burgelman 1994)。 組織変動論 の第 2の アプ ロー チは環境 の外 的 な要 因 を組織変動 の原因 として 分 析 し,組 織 内のプ ロセ ス をほ とん ど考 慮 しない立場 であ る。 それは,ポ ピュ レ ー シ ョ ン・エ コ ロ ジ ー ( A l d r i c h 1 9 7 9 , H a n n a n a n d F r e e m a n 1 9 8 9 , A l d r i c h a n d W i e d e n m a y e r 1 9 9 3 ) , 進 化論的経済学 (Nelson and Winter

1 9 8 2 ) , コンテ ィンジェンシー理論 (Burns and stalker 1961,Lawrence and L o r s c h 1 9 6 7 ) と い った広 範 な学 派 に共通 す る観 点 であ る。 まず,ポ ピュ レー シ ョン ・エ コロジーや進化論 的経 済学 は組織変化 の推進力 を自然淘汰 (変異 ・

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︱ ︱ ︲ 138 彦 根論叢 第 310号 淘汰 ・保 持 )に もとめ る。す なわ ち,企 業集 国 内の戦略 に ランダムな変異が生 じるこ とで,企 業 間 (戦略 間)の 自然淘汰が始 まる。競争 に よる洵汰 の結果, 勝 ち残 った企 業 (戦略)が 存続 して い く (保持 され て い く)。 ここで は,生 態 の変化 は個 々 の企業 の生成 と死減 に よって生 じるこ とが主張 され,企 業 の独 自 性や 企業 内の変化 プ ロセ スは考 慮 され ない。 また, コ ンテ ィンジェンシー理論 では,静 的 な環境 と組織 の適合 が分析 の焦″点とな り,組 織 の環境適 応プ ロセス 自体 は議論 され るこ とはない。 このように第 2の アプローチは多様 な理論か ら なるが,い ずれの理論 も組織が主体的に環境に適応す る側面 を考慮 していない 点で共通す る。 以上の 2 つ のアプ ローチはいずれ も両極端 な主張 を繰 り広げて きた といえる。 戦略的選択 アプ ローチは トップ ・マネ ジメン トの戦略的選択能力 を過大に評価 していた。対 して,第 2の アプローチは環境の決定 因を過大に見積 もっていた。 第 3 の アプ ローチは両者の折哀モデルであ り, トップの戦略選択能力 を認めつ つ も,そ こに次の ような一定の限定 を課す。 このアプローチに したがえば,一 旦,組 織が戦略 を選択す ると,一 定の組織構造,手 続 き,従 業員の心理状態の 整 合 状 態 が 生 じ,戦 略 や 組 織 に大 きな変 化 を加 え る こ とが 困 難 とな る (Starbuck 1965, Child 1977, Quinn 1981, Prahalad and Bettis 1986, 力 田 護野 1988)。この ような整合状態が組織の人々の認知 にバ イアスを生 じさせ る とともに,変 化 に抵抗す るような政治的プロセスを生み出すためである。 もし, 組織にこの ような慣性力が働 くのであれば,組 織変化 は漸進的に進行す るので はな く,一 定期間の安定期か ら次の安定期への革命的変化 をともな うはずであ る。本稿 で用 いる転換期 (転換プ ロセス)と い う用語はこの革命的変化段階 を 指 してい る。 この変化 プ ロセスの原型 は Thomas Kuhn(1962)の パ ラダイ ム論にみ ることができる。Kuhnに よれば,科 学史で 「通常科学」 と呼ばれ る 安定 した支配的パ ラダイムは,科 学革命 と呼ばれ る転換期 を経て新 たな 「通常 科学」の段階に達す る。科学革命期 の特徴 は複数パ ラダイムの連立であ り,パ ラダイムの優劣は政治的なプ ロセスを経て決定 され る。

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組織転換 と構造化理論 139 a n d M l l e s 1 9 8 0 ) は パ ラ ダ イ ム論 の 原 型 を忠 実 に 組 織 進 化 モ デ ル と して 適 用 した もの で あ る。 た とえ ば, G r e i n e r モ デ ル に よれ ば, 組 織 の 生 成 期 は企 業 家 的 リー ダーが個 人的に組織 をコン トロールす る。 しか し,組 織の規模が拡大す ると,個 人的 コン トロールでは処理 しきれない多 くの問題が発生 し,組 織は混 乱状態に陥 る。 この経営危機 (マネ ジメン ト・クライシス)を 解消す るために は,公 式的管理 システムを導入す ることが必要 となる。 しか し,今 度は,公 式 的管理 システムが次第に組織内の企業家精神 を抑圧 し始め,そ れが第 2の 経営 危機 として顕在化す るに至 る。組織は この ような安定期 と経営危機 を繰 り返 し なが ら進化す るとい うのが Greinerモ デルの指摘 である。Greinerモ デルは大 まかに組織の発展段階 を分析す るのには極めて有効 であ り,お お よその組織は Greinerモ デルに該 当す る進化段階 を経 る と考 えるこ とがで きる。 し か し, こ のモデルでは組織の危機的状態が どのようなプ ロセスで発生 し, どの ように し て解消 され るのか を分析す る枠組み を提供 しない。Kuhnの パ ラダイム論 とと もに,組 織進化 モデルは転換プロセス (科学革命や危機的状態 とい う言葉で表 現 され る)を ,安 定状態で捉 えるこ とので きない残余概念 として使用 している にす ぎない。 相互作用アプ ローチのなかで,進 化論的モデル (e.g"野 中 1985,竹 内・棚 原 ・加護野 ・奥村 ・野中 1986,加 護野 1988,野 中 1990,Burgelman 1994) は組織変化の転換期 に焦点 を当てる数少ない業績のひ とつである。進化論的モ デルによると,組 織転換は トップ とミドル・マネー ジャーの相互作用の結果 と して起 こる。 ト ップは,組 織の歴史的,環 境的,制 度的制約のなかで,組 織の メンバーが活動す るコンテクス トをつ くる。 ここで コンテクス トとは, ドメイ ンの提示,マ ネジメン ト・コン トロール ・システム (指揮・命令系統,業 績評 価 ・報mtH制度や情報 システム)の 設計,組 織文化 の構築, ミ ッションの提示 な どを通 じて形成 され る。組織の転換はこの コンテクス トのなかでの ミドル・マ ネー ジャーの 自律的 な行動 を トップが解釈 して,制 度化す るこ とをもって完了 す る。特 に,危 機的状態での,企 業家的 ミ ドルに率 い られたプ ロジェク ト・チ ームが組織転換の担い手 となる (加護野 1988,野 中 1990,Burgelman 1994)。

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140 彦 根論議 第 310号 この進化 論 的 モデルの主張 は,組 織転換 プ ロセスでは, ト ップ と ミ ドルの対話 を通 じた非常 に密度 の濃 い社会 的意味構築 のプ ロセ スが働 いているこ とを示唆 す る。 このプ ロセ スは 「戦略」や 「組織」 の意味 を転換 させ,新 たな社会 的意 味 を創 出す る知 識創造 プ ロセスでぁ る (野中 1990)。しか し,転 換 プ ロセスが 社 会 的意味構築 プ ロセ ス として概 念化 され るべ きものであれば,正 統的組織論 では転換 プ ロセス を説明 で きない。 なぜ な ら,社 会的意味構築学派 と正統的組 織論 はその基本的な前提 を共有 していないか らである。 この″点をもう少 し踏み 込んで検討 してお こう。 正統的組織論は有機体 アナ ロジー を用いて,組 織 を客観的で,機 能的な実体 とみ なす (Hassard 1993)。有機体 のアナ ロジー は Parsons(1937)やDurkheim

(1947)の機能的社会学,MalinOwski(1944)や Radcliff‐BrOwn(1952)の 構造―機能主義に深 く根づ いている。 これ らの立場に したが うと,個 人は組織 を構成す る部分 ではあるが,組 織は個人の心理 に言及す ることな く研究できる 独 自の実体 として概 念化 され る (Durkheim 1947)。あるいは,文 化 は,社 会 化 を通 じて,個 人に社会の機能 を遂行す るための行動 レパー トリーや心理特性 を埋め込む (Parsons 1937)。この立場 では,組 織転換はひ とつの整合的な機 能的 システムか ら別 の機能的 システムヘの転換 を意味 している。対 して,社 会 的意味構築学派は社会的現実 を客観的実体 (たとえば,椅 子などの物理的なも の)と 区別 して,人 々の相互作用によって構築 されたものであるとみる。たと えば,わ れわれは組織的生活にまつわるさまざまなコンセプ ト (たとえば,組 織,階 層,合 理性)を 直接経験 で きない (Schwartzman 1989)。われわれは こういった コンセプ トを社会的実践のなかか ら構築 して,組 織 を秩序ある実体 として理解す るために利用 しているのである。 しか し,そ の秩序 自体,社 会の 構成員が これ らの社会生活に基本的なコンセプ トを共有す ることか ら生み出さ れている。社会的生活の秩序 は,こ のような人々の秩序構築の努力に支えられ ているがために,完 全 に非決定性 を排除す ることは不可能なのである (Moore 1976)。社会的意味構築学派か らみた組織転換プロセス とは,こ の非決定性が 拡大 した状態なのである。

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組 織 転 換 と構 造化理 論 2.構 造化理論の枠組み Giddens(1979)は ,上 記の社会的意味構築学派の一般的な主張 よ りさらに 踏み込んで機能主義の人間観 と組織観 に批判 を加 え, よ リダイナ ミックな理論 的枠組み を提供す る。Giddensは 「自省能力 をもった個人」 とい う概念か ら議 論 を開始す る。 この個人は 自らの行動 を注視 して,常 にその意味や含意 を引 き 出す こ とがで きる。 さらに, 自省的個人は他人 も自分 と同 じ自省能力 をもって 行動 しているこ とを知 っている。 さらに, 自らが属す る共同体 の構成原理 (組 織化原理)を 知 ってお り,そ れ を利用 してで きるだけ 自分 の利害関心 を達成 し ようと行動す るのが 自省的個人である。 Giddensがづづ いて導入す る中心概念が 「構造」である。 「構造」は相互作 用のなかで人々が利用す る諸規則 と諸資源であると定義 され る。 「構造」は相 互作用の媒体 であ り,相 互作用の結果で もある, とい う二面性 をもっている。 「構造」は Geertz(1973)の 「文化」にほぼ類似 の概 念 であ り,自 省 的個 人 を取 り巻 くシンボルの体系であると考 えることがで きる。Giddensに よると, 組織や社会 を含む全ての共同体 は,共 同体 内のパ ワーの分布 を前提に, 自省的 個 人の相互作用 (構造化プロセス)か ら生み出され る。同時に,構 造化理論 に よれば,個 人は共 同体 と独立のアイデンティティー を保持す るわけではな く, 構造化 のプ ロセスに参加す ることで, 自らのアイデンティティー を獲得,再 構 D 築 し続 け るの で あ る。 さ らに,構 造化 プ ロセ スは政 治 的 プ ロセ スで もあ る。 G i d d e n s に よれば,人 々の解釈枠 にはズ レが あ り,そ の結果,同 じ組織現象 に 接 して も各 自の解釈 は微 妙 に異 な る。 この よ うな解釈 の ズ レこそが組織 ダイナ 3)共 同体 に参加す ることがアイデンティティー を獲得す ることであるとい う主張は組織論, 社会学,文 化人類学に散見 され る。 た とえば,Orr(1990)は コピー1多理業者,Raz(199 6)は ヤ クザ,Becker(1973)は バ ン ドマ ン,マ リファナ 中毒者,ホ モセ クシャルにつ いて,ア イデンティティー と共同体 の メンバー シップの関係 を論 じている。 また,理 論的 に も,個 人 と共 同体概 念の不可分性 は,解 釈学的実在 主義哲学 (Heidegger 1962),文 化 の シンボ リック ・アプ ローチ (Geertz 1973,1983),状況的学習理論 (Wallger and Lave 1991)に よって認識 されてお り,多 様 な分野に深 く根 ざした ものだ といえる。

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1 4 2 彦 根論議 第 3 1 0 号 ミズムの原動 力 であ り,組 織 が決 して安定状 態 に達 しない理 由であ る。 Giddensの 構 造化理論 は,組 織 的パ ラ ドックスに際 して, 自省 的個 人が極 め て柔軟 に対 応す る能 力が あ る こ とを示 唆 して い る (Boland 1993)。す なわ ち, 組織 は創造性 と効率性,個 人の利益 と組織 の利益,技 術 志 向 と市場志 向,競 争 と協 力 とい った さ ま ざまなパ ラ ドックス を内在 して い る。Bolandに よれば, 個 人が組 織生活 に用 い る暗黙知 (状況的知 識)は 複数 あ り,状 況 に応 じて柔軟 に それ らを使 い分 け るこ とが で きる。個 人 は巧 みに組織的パ ラ ドックス を回避 しなが ら,構 造化 プ ロセ スに参加 で きるの であ る。 そ して,組 織 はそのパ ラ ド ックス を超越 す るのであ る。 さて,上 記の構造化理論は組織変化が組織 メンバーの組織化原理に対す るコ ンセンサスの拡大 と破壊 を経て進行す るプ ロセスであることを示唆す る。組織 の基本的な運営方針 としての組織化原理 に コンセンサスが存在す る場合 を考 え てみ よう。組織化原理 は組織的な正 当性の根拠 を提示す る。それゆえ,利 害関 心 を満足 しようとす る個 人は組織化原理 を行為や解釈の指針 とす る必要がある。 この ように組織 メンバーが共通の組織化原理 に配慮 をして相互作用す ることが, 組織的秩序 を社会的に構築 してい くのである。ついで,組 織化原理の コンセン サ スが損なわれた場合 を想定 してみ よう。 その際,個 人間の論争 を解決す る基 盤 は失 われ, メンバー間の利害の対立が表面化す る。すなわち,異 なった立場 の人々は,異 なった価値観 (たとえば,効 率性 と創造性)で 自己の正当性 を主 張 して,組 織的パ ラ ドックスが顕在化す るのである。 さらに,個 人 と組織の二分律 を否定す る構造化理論 に したがえば,組 織転換 プ ロセスは組織成員のアイデンティティーの変容 をともな う。正統的組織研究 が仮定す るようには,組 織変化 は構造 と戦略の変化 に とどまらない現象である といえる。 この点に関連 して,人 類学者の Victor Turner(1980)は ,こ の 構造変化 の状態 を 「リミナ リティー」 と名づ けている。 「リミナ リティー」は 共 同体 メンバー に 自身のアイデ ンティティー をゆるがせ,反 省 を促す間構造状 態であると定義 され る。組織 はこの ような 「リミナ リティー」の状態を経て転 4)│)ミ ナ リテ ィーの例 は,高 校生 と大学生の間構造状態 としての浪人生,革 命後でまだ新 ノ

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組織転換 と構造化理論 換 を遂 げ るの で あ る。 IH 調 査方法 と調査企業 Pettigrew,Ferlie,and Mckee(1992)は ,組 織変動論 の共通 の方法論上 の問題 点 として, 1回 の変化 エ ピソー ドを事後 的 に取 り上 げ るこ とを批判す る。 その結 果,事 後 的 に再構 成 され た組織変化 プ ロセスは,合 理化,正 当化,単 純 化 され た もの で あ った。 Pettigrewほ か は ヨンテ クス トや 歴 史的,政 治 的 なプ ロセ スに焦点 をあてた組織変化 の研 究 を提 唱 してい る。以上 で レビュー した組 織 変化 の文 献 も基 本 的 に Pettigrewほ か の批 判 す る方 法論 に したが って い た。 その″点,本 稿 の分析 は参加観察 に基づ いたエ ス ノグラフ ィー であ る。 当事 者 の 視 ″点か ら現在継続 中の組織変化 を研 究す る本稿 は,Pettigrewほ か の方法論上 の提 唱 にい ささか な りとも応 え よ うとす る もの であ った。 著者は, 3ヶ 月間にわたって,調 査企業 での会議に 自由に参加 し,会 社の書 類 を閲覧 し,従 業員にインタビューす ることを許可 された。観察 された会議は 5 ) 0 の 各週 に開催 され るエ ンジエ ア リン グ会議,販 売会議,隔 週 の品質会議 であ った。 会 議 とインタビュー の間に会社 の 日常業務 が観察 され た。会議 の内容 ,イ ンタ ビュー,観 察 は フ ィー ル ドノー トに記入 し,定 性 的 な方法論 に したが って分析 した (Diesing 1971,Glaser and Strauss 1965,Denzin and Lincoln 1994, Lofland and Lofland 1995)。す なわ ち,フ ィー ル ドノー トを細か なカテ ゴ リ ー に分割 し,繰 り返 し出現す る経験的 なテーマ を発見す るこ とを試みた。 この ヽしい政体 が確定 しない状態な ど多様 な現象 を含む。 5)エ ンジエア リング会議 の参加者 は,技 術マネー ジャー を議長に, 5人 か ら10人のエンジ エアが,担 当プ ロジェ ク トごとに召集 された。技術マネー ジャーカヽ 前週の各チームの進 捗状況 の報告 を受 け,技 術 的な問題 を議論す ることが この会議の 目的であった。 6)営 業会議の参加者は,営 業マネー ジャー を議長に, 7人 のセールス要員であった。 この 会議 は,主 として,セ ールス ・アプ ロー チや製 品の仕様 につ いての教育 をお こなっていた。 7)品 質会議 は,テ ックの もっ とも高い レベ ルの会議 である。営業マネー ジャー を議長に し て,CEO,技 術,広 報,財 務 の各 マネー ジャー と技術 部 門,営 業,顧 客 サー ビスか ら各 一名が参加 した。 この会議の主たる議題は各部門の コーデ ィネー ションに関わる問題 であ った。

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144 彦 根論叢 第 310号 作 業 をフ ィー ル ドノー トに意味の あ るパ ター ンが見 いだせ るまで繰 りした。 同 時 に,フ ィー ル ドノー トを解釈 す るための さまざまな理論 的 な枠組 み を吟味 し て カテ ゴ リー化 の基準 とした。 その過程 で著者 が最初 に見 いだ した枠組 みが組 織変動 論 で あ る。 しか し,分 析 を進 め るに したが って組織変動論 ではフ ィー ル ドノー トを解釈 す るには不適 当であ るこ とが判 明 した。つ いで,組 織 の社会 的 意 味構築や 意味解釈 に関す る文献が レビュー され た。 その 中か ら構造化理論 が フ ィー ル ドノー トを解釈 す る枠組 み として採用 され るにいた った。 調査 対 象企業 の テ ック (仮名 )は ,ア メ リカの 中西部 の 中核都 市 に位 置す る, 10年間 で急成長 した高llR益のハ イテ ック企業 であ る。従業員 はエ ンジエア を中 心 に50名弱 であ り,社 員 のほ とん どは 白人男性 であ る (女性 が数名 い るが,女 性 マ ネー ジャー は い ない。 黒 人,ア ジア系社 員 もい ない)。 この地域 の人 口比 率 は黒 人が過 半数 を 占め てお り,こ の分布 は人 口分布 を全 く反映 していない。 テ ックは産業用 デー ター測定 の ため の システム ・メー カー であ り,そ のエ ッチ 市場 の創造者 で もあ る。 その革新性,積 極性 は業 界 で今 日も高 く評価 されてい る。 現 在 の CEO(最 高経 営 責 任 者)で あ る トム ・ア ダム ス (仮名 )は 創 業 者 で あ り,こ の会社 を100%個 人所 有 して い る。 ア ダム スはエ ンジエ ア リングの学 位 を もち,調 査 当時40代半 ば であった。彼 の強力 な リー ダー シ ップが この会社 の成長 の推進 力 であ る。創業 当時か ら,経 営 資源 の不 足 を補 うため に,ア ダム スは 固定 費 を抱 え込 む こ とを避 け,マ ー ケテ ィング とエ ンジエア リングに資源 を集 中 させ て きた。製造 と流通 は極 カ ア ウ トソー シングに よって まか なわれ た。 テ ックが創 業 10年に して100以上 の製 品 を もつ こ とが で きたの もその よ うな資 源 の特化 が あ ったか らであ る。 財務 的 にみ る と高 い収益率,売 上 高 の増加 を誇 ってい るテ ックも,そ の 内部 に大 きな混乱 が生 じて い るこ とが参加観察 を通 じて発見 され た。会社 が成功 し, 規模 が増加 す るにつ れて, さ ま ざまな こ とにア ダムスが個 人的 コン トロー ル を 及 ぼす こ とが難 し くな ってい る。全 てのマ ネー ジャー が会議 の場 で,あ るいは, イ ン タ ビュー の 中で,組 織 内の混乱 とコン トロー ルの欠如 に対す る欲求不満 を

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組織転換 と構造化理論 表 明 して いた。 IV 解 釈 先述の ように,当 初,テ ックで収集 したフィール ドノー トは組織変動論の観 点か ら分析 された。Greiner(1972)の 組織進化 モデル を用 い る と,テ ックは 創業者の個 人的 コン トロールか ら公式組織の コン トロールヘの変換段階の混乱 状態にあると以下の理由で考 えられ る。テ ックでは,後 に述べ るように,同 じ 問題 (公式的管理 システムの導入)が 会議 で繰 り返 して議論 され,決 して解決 され るこ とはなか った。 また, この問題 をめ ぐって,部 門間の対立は極めて激 しい ものであった。 これ らは,全 て組織化 の方法 について コンセンサスが欠如 していることを示 し,組 織が転換状態にあるこ とを示唆 していた。 その点,権 かに'Greinerモ デルはテ ックの状況 をその発展段階に位置づ け る枠組み を提 供 している。 しか し,Greinerは 変動期 にマネジメン ト上 の危機が発生す る と い うが,そ の変動期が どの ように進行す るのか 自体 は論 じていない。同様 に, 主流の組織論 に基づ いた他 の組織変動論 は,組 織の安定状態 を仮定 し,組 織の 転換期 を異常事態 として想定す る傾 向にある。 これ らの諸理論 はいずれ も転換 プ ロセス 自体 を分析す る枠組み を提供 しない。わずかに,組 織の転換プロセス に洞察 を提供す る進化論的モデル も, 自らが示唆 した組織の文化的変化プロセ スを説明 していない。 1.顕 在化 した組織的パ ラ ドックス 本稿 では,組 織の非決定性 に注 目して,組 織 を構造化プ ロセスに存在す る社 会的構築物 として概念化す る。 なかで も,会 議 を分析の焦点 としている。組織 にあって,人 々が 自らの解釈 を表明 し,他 者の解釈 を理解す るのは対話 を通 じ てである。会議 は言語的,非 言語的 コ ミュニケー ションを通 じて,組 織内の対 話が もっ とも顕在化 す る場 であ る (Schwartzman 1989)。人々が会議 での論 争に参加 し,論 争 を観察 し,論 争 を反省す ることをつ うじて,構 造化プ ロセス は もっ とも濃密 に進展 してい くのであ る。 この点 を,Schwartzman(1989)

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146 彦 根論叢 第 310号 は,組 織が会議 をつ くると同時に,会 議が組織 をつ くると表現 している。言 う まで もな く,そ の場合の組織 とは社会的構築物 としての組織である。 テ ックの会議 は,一 見,極 めて混乱に満 ちた ものである。各参加者に組織 を 運営す る正 しい方法についての コンセンサスが存在 していないことは即座 に感 じられ た。特 に,品 質会議 は,ア ダムス (CEO)と 各部 門のマネー ジャーや 代表者が参加す るために,常 に多 くの論争が繰 り広げ られ,非 常 に緊張感が高 い場 であった。 そこでの論争の焦点は公式的管理 システムの導入に関わるさま ざまな問題 であった。 Boland(1993)は 構造化 プ ロセス を組織的パ ラ ドックス をめ ぐって進行す ると考 えたが,テ ックにおいて も,各 部 門の利害関心は公式的管理 システム導 入の論争の背後にある組織的パ ラ ドックスに関係 していることが,フ ィール ド ノー トの分析か ら発見 された。 テックに現在顕在化 している組織的パ ラ ドック ス とは,創 造″性 と信頼″性のパ ラ ドックスである。 まず,テ ックに とって,創 造 性 の要請 とは次の ような ものである。 そ もそ もテックはアダムス とい う企業家 的 リー ダー に よって経営 され,創 造性 をその発展の原動力 として きた。今 日, テ ックは業界で も革新的 な企業 として名声 を得 てお り,そ の名声がテックの最 大の競争優位 の源泉 であ る。 この優位性 を維持すべ くテ ックは開発 に多 くの資 源 を投入 している。一方で,ア ダムスは,資 源 を集中す るために,製 造 と流通 を極カアウ トソー シング して きた。プ ロ トタイプの多 くの部 品開発 も委託生産 で賄われて きた。 そのために,製 造のみならず,開 発の多 くも外部の企業に依 存 している。 このアウ トツー シング政策はテックに柔軟性 を与え,創 造性 を喚 起す るのに貢献 して きた。 しか し,開 発 と製造がスケジュールに沿って,欠 陥 な く進め られ るためには,外 部か らの部 品の流れ を効率的に管理す る必要があ る。 これがテ ックに とっての信頼性の要請であ り,創 造性の要請 と表裏の関係 にある。 テ ックの企業規模が小 さかった段階では,ア ダムスが 自ら組織の隅々 に まで 目を配 って, この 2つ の要請 を満足 して きた。 その前提 として,ア ダム スの個 人的 コン トロールが組織化原理 として コンセンサスを得ていたことがあ げ られ る。 し か し, テ ックの企業規模が拡大す るとともに,信 頼″性と創造″性を

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組織転換と構造化理論 147 同時 に達成す るこ とは, テ ックに とって極 め て困難 な課題 とな りつつ あ る。特 に現在,緊 急の問題 とな って い るのが,信 頼性 の コン トロー ルであ る。 テ ック の製 品数 は100を超 え,供 給業 者 か らの部 品供 給 の遅 れ に よる開発 の遅延,出 荷 の遅延 が頻発す るようになっている。 それに ともな うさまざまな組織 内の混 乱が生 じ,事 態は もはやアダムスの個人的 コン トロールの限界 を超 えている。 以前にはアダムスの個 人的なコン トロールで解決 されていた信頼性 と創造性の パ ラ ドックスの顕在化が,テ ックの組織的危機の原因であると解釈 される。 2.プ レーヤー達 :パ ワー と観点 先述の ように,テ ックの会議 で組織的パ ラ ドックスが もっとも顕在化す るの が,全 ての部 門の代表者が参加す る品質会議 である。本稿 では,こ の会議の参 加者 9人 を指 してプ レーヤー と呼ぶ。 この 9人 のプ レーヤー 中 6人 がマネー ジ ャー であ る (アダムスを含む)。各マネー ジャー間には,ア ダムスを除いて, 公式的な地位 の上下はない。 しか し,彼 らの間には,非 公式的なパワーの違い は発見で きる。 また,公 式的管理 システムの導入 をめ ぐる各マネー ジャーの立 場 は,後 述の ように,各 自の職能部 門の信頼性 と創造性 に対す る要請 と密接に 関連 している。非マネー ジャー も同様の規則に従 うが,製 造部 門の技師のみは その傾 向に したがわなかった。以下に, 9人 のプ レーヤーのパワー と観点 を列 9 ) 記 して, テ ックの構 造化 プ ロセ ス を理解 す る文脈 的知 識 とす る。 ア ダム スは会社 の オーナー として,絶 対的 な決定権 を有 してい る。 ア ダムス は営業 と開発 の 日常業務 に も深 く関与 してい る。彼 は,セ ー ル スマ ン として, 顧客 訪 問や コンフ ァレンスヘ の参加 をお こな ってい る。 エ ンジエア として も, 彼 は テ ックの主要 製 品 ライン開発 のプ ロジェ ク ト ・リー ダー も勤め る。 その結 果, 彼 の組織 的パ ラ ドックスに対 す る態度 は信頼性 と創造性 の双方 に とらわれ 8)製 造マネー ジャー,広 報マネー ジャーのインタビューはテ ックの成長 をアダムスの個 人 的オ能 に言及 して説明 した。 9)以 下 の記述は,フ ィール ドノー トのインタビュー と観祭か ら組み立て られた ものである。 特 に必要 な箇所 にのみ出典 を示 した。

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148 彦 根論叢 第 310号 て い る。彼 は このパ ラ ドックス をこれ まで個 人的 な決定 で成功裡 に解 消 して き た。 それゆ え,彼 は現在 も公式的管理 システム を導入す る必要性 を全面的 には 認め て い ない。 彼 は テ ッ クの現在 の経営体 制 を大 幅 に変 更す る意思 を示 唆 した こ とはな く,彼 の公 式的管理 システム導入 に対す る意見 は全社 員 に とって極 め て曖味 であ る。 技術 マ ネー ジャー は テ ックの 中核 的 な部 門の長 として,重 要 な位 置 を 占め て い る。 さ らに,彼 は社 内で唯一 ア ダムスの古 い友 人であ り,前 任者の解 雇後 に ア ダム スに乞 われて この会社 にや って きた。社 内に親密 な人間関係 が ほ とん ど 存在 しない この会社 で,彼 とア ダム ス との関係 は特 異 な もの であ る。 しか し, 彼 のパ ワー は後 に述べ る営業 マ ネー ジャー と措抗 した ものであ り,突 出 した も の では ない。 ア ダムス とこの 2人 のナ ンバー 2と 呼ぶべ きマ ネー ジャーの地位 は隔絶 した もの であ る。公式的管理 システム導入 に関 しては,技 術 マネー ジャ ー は供給業者 の出荷 の遅 れに よる開発へ のダメー ジを深刻視 してい る。エ ンジ エア リング会議 での議題 の 多 くは この問題 に集 中 していた。 しか し,彼 は,公 式的管理 システムの導入は組織的柔軟性 を損 な うものであると考 えて もいる。 彼 は現在 のテ ックの混乱 を解決す るには,信 頼性 の犠牲 を最小 限にお さえつつ, 創造性 を維持す るこ とが重要 であると考 えてい る。具体 的には,極 めて限 られ た範囲での公式的 システムの導入 を彼は提唱 していた。相対的に高いポジショ ン と創造性の要請への偏 りか ら,彼 は公式的管理 システム導入に積極的に反対 す るプ レーヤー であった。 もうひ とりのナ ンバー 2と 言 うべ き営業マネー ジャー は,幅 広い経験 を持 ち (技術,財 務,営 業,マ ー ケティング),ア ダムスの相談にのる機会が多か っ た。彼のオフィスはアダムスの部屋の隣に位置 し, 2人 は一緒に顧客 を頻繁に 訪 問 していた。アダムス ともっとも接触の頻度が高いのが彼である。その″く, 開発 で頻発す る不確実性 の処理 に追われ,開 発の遅れ をめ ぐってアダムス と対 立す ることの多い技術マネー ジャーは不利な立場 にあった。公式的管理 システ ムに関 しては,営 業マネー ジャーは顧客 と直接的な接触 を持 ち,彼 の関心は欠 陥のない製品がスケジュール どうりに出荷 され るこ とにある。営業マネー ジャ

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組織転換と構造化理論 149 -は 信頼性 の要請 に重 きを置 いてい る と言 える。技術マネー ジャー に対抗 して, 彼 は公 式 的管理 シス テムの導 入 の主要 な提 唱者 であ る。 以上 の 3人 と較 べ て弱 い基盤 しか もって いないのが製造 マ ネー ジャー であ る。 製造 マ ネー ジャー の勤 続年数 は 1年 未満 と浅 く,製 造 の大半 をア ウ トソー シン グす るこの会社 では,製 造部 門はマー ジナルな位 置 しか 占めていない。製造部 門の仕事 は部 品の 品質検査 と最 小 限の組 立 に限定 されて い た。 さ らに,製 造 マ ネー ジャー は供 給業 者 を コン トロー ルす る直接の責任 を有 してお り,社 内の混 乱 の源泉 として非難 され る立場 に あ る。 製 品の 出荷 は彼 の責任 であ り,彼 自身 は公 式的 システム を導入す るこ とに賛成 してい る とインタビュー では認めてい る。 製造 マ ネー ジャー は創 造性 の要 請 に較べ て,信 頼性 の要請 に重 きを置 く立 場 に あ った。 しか し,一 方 で,公 式 的管理 システムの導入 は現在組 立 をお こな って い る製造部 門の要員 (時間給 の工 員)の 解 雇 を ともな う, と彼 は理解 して い た。 その ため,彼 は公 の場 ではは っ き りと彼 の立場 を表明 していなか った。 その他 に,会 議 に参加 して い るマネー ジャー は財務 と広報 のマネー ジャー で あ る。彼 らの会議 での発 言 はほ とん どな く,そ の意味 で彼 らは会議 での構 造化 プ ロセ スの主要 なプ レーヤー とはみ な され なか った。彼 らは公式的管理 システ ムの導入の必要性 と,そ れに ともな う組織改革 の必要性 を認め てはいたが,公 式 的管理 システム導 入が彼 らの仕事 には大 きな影響 を与 えない もの と考 えて い 1 0 ) た。 以上 6 人 のマ ネー ジャー の他 に会 議 の参加 者 は 3 人 いた。 ひ と りは製造部 門 の技 師 であ り,彼 は時 間給工員 の リー ダー的存在 であ った。彼 は公式的管理 シ ステム導入 に反対 であ り,そ れ は組織 改革 に よって解 雇 され る可能性 のあ る工 員の利害 を反映す るものであった。 したが って,彼 の立場 は信頼性 と創造性の いずれかの要請ではな く,時 間給工員の雇用の確保 を目的 としていた。彼は, 上記の 4人 の主要プ レーヤーに加 えて,発 言の多いひ とりであった。その他, この会議の唯一の女性が営業部 門か ら出席 していた。彼女は,営 業要員 として, 1 0 ) 財 務 , 広 報 マ ネー ジャー の イ ン タ ビュー

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日 F ト ー ー ト ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー 150 彦 根論叢 第 310号 公 式的管理 システム導入 を求め ていた。最後 に,営 業部 門に付属 す る顧客 サー ビス部 門か らひ と りの参加 者が あ った。彼 も公式的管理 システム導入に賛成の 立場 ではあ るが,会 議 での発 言の機会 は限 られ ていた。 3.論 争 に よる構造化 プ ロセス 調査 時点 で,テ ック社 内で公 式的正 当性 を もった経営方針 は,依 然,ア ダム スの個 人的 コン トロー ルに よるマネ ジメン トであった。 アダムスはテ ックの主 権 者 であ り,彼 の個 人的 コン トロー ル を否定 す るこ とは,彼 の主権へ の攻撃 と して解釈 され る可能性 が あ った。 それゆ え,こ のマ ネ ジメン トの存立基盤 に表 面 だ って異議 を唱 え るプ レー ヤー は不在 であ った。 しか し,公 式的管理 システ ムに対 しての意見 の相違 が会議 に頻発 して いた。 もっ とも強 く,繰 り返 して議 論 され た課題 は,製 造部 門での品質検査 に公式的手続 きを導入す るか否か であ った。 以下 にその論 争 の例 を 3つ あげ,解 釈 を加 えてい る。 顧 客 か ら製 品の欠陥 につ いての苦 情 を受 け たア ダム スは,製 造部 門に,品 質 検杢 法 を改良す るこ とを品質会議 で命 じて いた。 それ まで製造部 門は工員が 目 で見 て検杢 す る とい う方法 (visual inspection)を採 ってお り,そ れは欠陥 を 発 見す るのに有効 な方法 ではなか った。 品質検杢 を改良す るこ とは信頼性 を強 化 す るこ とを意味 して いた。 しか し,製 造 マネー ジャー に とって,新 しい品質 検査 方法 を確 立す るこ とは組織 改革 を必要 としていた。 なぜ な ら,品 質検査体 制 を整備 す るため に,製 造 マネー ジャー は,製 造部 門での組立 をや め,品 質検 杢 に特化 す るこ とが必要 であ る と考 えていたため であ る。 しか し,組 立機能の 解 体 は製造部 門の工 員 の解 雇 につ なが る。一 方 で,ア ダムスはその よ うな組織 改革 の意思 も計画 も明 らか に した こ とは なか った。彼 の欲 していた こ とは顧客 の苦情 に こたえ るこ とだけ であ り,現 行 の体制 で何 らかの品質検杢法 を発明す 1 1 ) 各マネージャーのインタビューで,「 この会社はアダムスの ものだ」,「 アダムスが決 めたことだか らしょうがない」,「 それがアダムスのや り方だ」 といった発言がテックの 戦略 を説明する際にみられた。 「アダムスの リーダーシップがテック基本的な運営方針な のか」 という著者の質問にも全ての人が同意 した。

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組織転換と構造化理論 151 るこ とであ った。 ア ダムス 自身, 自 らの個 人的 コン トロー ル を通 じた経営方針 を公 式 的管理 システムに よるコン トロー ルに変 え る意思 はなか った。 また,ア ダム スは公 式的管理 システム を創 造性 と矛盾す る もの として捉 えていた。 この よ うな状況 の なか,ア ダムスが 品質検査 の改良 を命令 した次 の会議 で,製 造マ ネー ジャー は品質検杢 の新 しい方法 を考 え るこ とが で きなか った と報告 した。 製造 マ ネー ジャー は品質検杢 が時 間 を浪費す るこ とや,現 有 の人材 での限界 を 主 張 した。 しば しの押 し問答 の後,ア ダムスは,繰 り返 し,品 質検査 法 を考 え るよ うに指示 して,会 議 は次 の議題へ と移 ってい った。 しか し,結 局,ア ダム スの命令 は何 ら新 しい品質検査 方法 を生 み 出す こ とは なか った。 この論争 で注 目すべ きは,製 造マ ネー ジャーが以上 のエ ピソー ドの背景 を理 解 して い た点 で あ る。 彼 は,ア ダムスが組織改革 を ともな うよ うな大規模 な品 質検査体 制1の導 入 を,個 人的 コン トロー ルか ら公式的管理 システムに よる経営 へ の移行 であ る と解釈 す る と予測 して いた。製造マネー ジャー はその よ うな組 織 改革 を提案 す るこ とが ア ダム スヘ の攻撃 と解釈 されかね ない こ とを危倶 して いた。 ここで,製 造マ ネー ジャー は まさに Grenierモ デルの個 人的 コン トロー ルの危機 的状況 として現状 を理解 していた。 それ に加 えて,彼 は政治的 な判 断 をお こな って い る。 その判 断材料 は,ア ダムスの現状 認識 につ いての解釈,ア ダム スのパー ソナ リテ ィー, 自 らの弱 いパ ワー基盤 であ る。 これ らは全 てが彼 の行動 の コンテ クス トとしての 「構 造 」 を形成す る。 その結果 は,ア ダムスの 命令 に対 す る彼 の不 明確 な反応 であ り無行動 であ った。 この彼 の無行動 はア ダ ム スの個 人的 コン トロー ルが機 能 しなか った こ とを意味 して い る。 それは,会 議 の衆 人監視 の場 での出来事 であ り,他 の会議参加 者 の解釈 の対象 とな り組織 の非決定性 を高め た。 また,技 術 マ ネー ジャー は創造性 を重視 す る立場 か らア ダム スに論争 を挑 ん だ。 その論 争 は次 の よ うに して進展 した。 あ る品質会議 で,ア ダムスは新 製 品 に特別 な品質検査 をお こな うこ とを製造 マネー ジャー に指示 した。 この新 製 品 1 2 ) ア ダムスのインタビュー 1 3 ) 製 造マネー ジャーのインタビュー

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152 彦 根論叢 第 310号 は テ ックに とっての最初 の家庭 向け商 品であ るこ とか ら,ア ダムスは よ り慎重 に 品質 を管理 したい と考 えていた。 しか し, この時 も,ア ダムスは具体 的 な品 質検 査 の方法 を提示 しなか った。 製造 マ ネー ジャー も,や は り,特 別 な品質検 杢 は時間の制約上 難 しい こ とを述べ,ア ダム スの指示 に 日ご もった。 その時, 技術 マ ネー ジャーが その よ うな品質検査 をお こな うこ とは技術 的 に無理 だ と製 造 マ ネー ジャー を擁護 した。 技術 マ ネー ジャー はア ダムスの提案 はア ドホ ック な もの で,公 式的管理 システム を導入す るコス トを全 く考慮 していない と論 じ た。 技術 マ ネー ジャー は,後 の インタビュー で,常 に顧客 の意見 でア ドホ ック に経営 を左右 す るのが ア ダム スの経営 ス タイルだ と憤慨 し,公 式的管理 システ ムの導入 は経営 の全体像 を考 えたなか での ピンポイン トに とどまるべ きだ と主 張 して いた。 この問題 をめ ぐって,ア ダムス と技術 マネー ジャー は しば ら く言 い争 ったが,技 術 マ ネー ジャはア ダム スの経営 ス タイル批判 まで を口にす るこ とは なか った。 この論 争 は営業 マ ネー ジャーが次 の議題 に話 を移 す こ とで暖味 な形 で打 ち切 られ,結 果 的 に,先 の ケー ス と同様,特 別 な検査 方法が導入 され るこ とは なか った。 この論争 も,ア ダム スの個 人的 コン トロー ルが機能 してい ない こ とを象徴 してい る。 以上 の 2つ の論 争 では,製 造 マネー ジャー と技術 マ ネー ジャー は違 う理 由で, ア ダム スの命令 に従 わ なか った。 また,両 マ ネー ジャー のパ ワー基盤 も大 き く 異 な って いた。 両 マ ネー ジャー とも全 く異 な った コンテ クス トを 「構 造」 とし て い た と考 え られ る。 しか し,彼 らは,い ずれ もアダムスが何 を考 えて い るの か を常 に解釈 して,そ れ に部 門の代 表 としての立場やパ ワー の基盤 を勘案 しな が ら行 動 していた。 そ して,結 果的 に,両 者 の行 動 はアダム スの個 人的 コン ト ロー ルの破綻 を会議 で シグナ ルす るこ ととなった。一方 で,ア ダムスは両マネ ー ジャーの微妙 な立場 を理解す るに至 っていない。アダムスは顧客の苦情 を解 消す る範 囲 で信頼性 を欲 したが,彼 の個 人的 コン トロー ルに よる組織的柔軟性 を排 除 しよ うとは考 えていなか った。 第 3の 論 争 は部 門間の対 立か ら生 じてい る。 しば しば,供 給業者か らの供 給 の遅 れ を原 因 として,テ ックでは製造 スケ ジュー ルが遅 れ るこ とが あ る。 この

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組織転換と構造化理論 153 問題 に関 して,営 業部 門か ら会議 に参加 してい る女性 は製造技師 に出荷 スケ ジ ュー ル を毎 日ア ップデ イ トして報告 す るこ とを求め た。彼女 (営業部 門)は 出 荷 の遅 れか ら損 なわれ た信頼性 を立 て直す こ とを期待 して いた。営業部 門の女 性 の提案 に対 して,製 造 技師 は沈黙 した ままであ った。彼女 は当惑 しつつ 同 じ 提 案 を繰 り返 した。製造技 師は再 び沈黙 し,気 まず い空気が流れ始め た ときに, アダムスが技師 を注意 をす るように名前 を呼んだ。技師はぶ っきらぼ うに「OK, ただ し,ス ケジュール表はあんたにはや らないよ」 と女性にむけて答えた。す か さずアダムスが 「この件は忘れろ」 と言って,次 の議題へ と会議 を進めた。 その後 も,技 師は依然1貸然 として座 ったままで,女 ″性は傷ついたように見えた。 この論争は部 門間の根深い対立 と組織的 コンセンサスの欠如 を示 している。 製造部 門は少ない人員でオーバー ロー ド状態にあ り, さらに雇用の不安 にFlaさ れている。製造技師はいかなる公式的管理 システムの導入に も反対であ り,組 織的にマー ジナルな存在 で もある。一方で,営 業の女性は営業マネー ジャー と 同様 に,顧 客への時間 どうりの出荷 を確保す るために信頼性 を求めているに過 ぎず,組 織改革 を念頭 に置いていない。 こういった両者の立場の違いが,製 造 技師に極 めて感情的な反応 を引 き起 こしたのである。両者にお互 いの立場 を勘 案す る意思 は認め られず,テ ックの全社 レベルでのアイデンティティーが損な われていた と解釈 され る。 さらに, この際のアダムスの反応は彼が組織的パ ラ ドックスの解消に本気で 取 り組む意思がないことを示 している。 この論争は部 門間の立場の違 いを明 ら かにす る絶好の機会 で もあった。 しか し,彼 は二人の対立が表面化す ると,議 題 を次の トッピクスに移 して しまった。製造技師 と営業の女性の感情的 しこ り も残 されたままであった。アダムスの行動は参加観察者のみならず全ての会議 参加者に観察 されている。 この行動は部門間の対立 を会議の場 で公に論 じるの はタブーであるとい うメッセー ジとな りうる。 このタブーは,次 のように して, テックのマネー ジャー間で正 当化 されて もいる。技術マネー ジャーによると,

アダムスがいる場所では,マネージャーはお互いの部門を批判しないという

)。

1 4 ) 技 術 マ ネー ジャー の イ ン タ ビュー

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154 彦 根論議 第 310号

テックでは,そ のような行動は 「

パワー ・プレイ」 として軽蔑されると彼は言

う。 しか し,お 互いの部門を批判 しないことは,部 門間の異なった要請に目を

つぶることでもある。こうして,テ ックでは組織的パラ ドックスを表面立て議

論することがタブー とな り,テ ックは組織の転換段階で足踏みしているのであ

る。

この ような転換期 は 「リミナ リティー」 としての性質 をもつ (Turner 1980)。 人々は組織化原理 を見失 い, 自らの部 門や よ り下位の集団に 自らのアイデンテ ィティー を帰属 させ てい る。 そ して, 自己をテ ックと一体化することは困難に なっている。テ ックが現在の停滞状態 を回避す るためには,組 織的パ ラ ドック ス を解消す る組織化原理 を発見す るための対話 を開始 させ なければならない。 しか し,ア ダムスが組織的パ ラ ドックスを語 ることをタブー視 していることが 部 門間の建設的 な対話 を妨げてい るのである。 V ま とめ 組織変動論 では,テ ックの転換プ ロセスで何が起 こっているのか,な ぜ テッ クの組織変化が転換プロセスで停滞 しているのか,が 説明で きなかった。構造 化理論 は転換プ ロセスを分析す る理論的枠組み を提供 した。 しか し,言 うまで もな く,本 稿 の調査 は 1社 のみ を対象に してお り,一 般化可能性の″点で限界が ある。 また,テ ックの状況について,異 なった問題意識 をもった研究者は全 く 房Uの解釈 をす る可能性 もあ り得 る。 これ らは全てエスノグラフィーの限界 とし て指摘 されなければならない。 そのような限定 を踏 まえた上で,本 稿 の発 見を 一般化す ると次のようになる。 組織転換プ ロセスは,何 らかの理由で組織化原理 に対す るコンセンサスが損 なわれ るこ とで始 まる (テックの場合, ト ップの個人的 コン トロールが成長に よって損 なわれた)。す ると,人 々は,下 位集団 と一体化す る度合 いが増 し, 下位集団の状況に条件づ け られた 「構造」に依拠 して構造化プロセス (対話な どの)に 参加す るようになる。 その結果生 じる構造化プロセスでの対立は,お 互 いに解釈のズレを顕在化 させ,感 情的な対立や政治的な配慮 を高め る。その

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組織転換と構造化理論 155 こ とが, 個 人 をます ます下位 集 団のア イデ ンテ ィテ ィー に一体化 させ るこ とに なる。組織転換 を達成す ることは, この ような悪循環 を断ち切 り,新 しい組織 化原理 の コンセ ンサスを構築す るこ とである。 本稿が示唆す る組織変化のマネジメン トヘの含意は, トップが部 門間の対立 を解消す るような全社 的なアイデ ンティティー を生み出す ような対話プロセス に積極的に参加す る必要性 である。その際,各 部 門や他の下位集団の要請の矛 盾 を明示化す るために,社 内の政治的対立 を一時的に増大 させ るような事態 も 覚″悟すべ きである。 ト ップ 自身 も自らのアイデ ンティティーの変容 を受け入れ る覚悟 も必要 となろう。危機状態にあって,正 統的組織変動研究が示唆す るよ うに,戦 略や組織 といった仕組み を変化 させ るだけでは不十分 なのである。

(付記)本 研究は,Steven P.Feldman準 教授 とLeonard H.Lynn教 授 (と もに Case Western Reserve University)との共 同執筆 の未発表原稿 を,異 なった概念的な枠組み を適用 して,再 解釈 した ものである。 したがって,本 稿 は共同論文 に多 くを負っている。特 に, リ ミナ リティーの概念 と組織的パラ ド ックスの分析 につ いては,両 先生 よるご教示 を受けた。 もちろん,あ りうべ き 誤診は全 て筆者の責任 であ る。 引 用 文 献 A l d r i c h , H . E . , 1 9 7 9 . θt t α% ″冴ガθ% s α% ブ 2 % υ力 % 物夕% お. E n g l e w o o d C l i f f s . N H J : Prentice‐Hall.

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参照

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