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ラオス : 経済開発の現状と国際協力の方向

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139

ラオス:経済開発の現状と国際協力の方向

堂  本  健  二

      1) 1 はじめに 一ラオスにおける「市場経済化」の意義一  国際政治面でボー・チ・ミンを父としベトナムを兄とあおいだインドシナの 緩衝国家ラオスは,1975年の社会主義革命後,中央集権的に国家建設を進めて いたが,早くも70年代末には農業部門の集団化失敗を契機とした司令経済方式 破綻の兆しが現れていた。80年代中盤以降国営企業の再編成を皮切りに本格化 した経済の開放化・自由化の流れの中で,旧ソ連・東欧諸国経済の破綻を目の 辺たりにしたラオス政府首脳が強調してきた開発戦略はやはり日本を中心とす る外国企業の積極的誘致による西太平洋経済への参画であり,いわば国際経済 関係の東側から西側へのシフトであった。これが,70年代以降日本企業をはじ めとする外国民間投資による工業化が東南アジア諸国の経済発展に大きく寄与 した事実を念頭においていたことはいうまでもない。さらに,86年以降の円高 局面でみられた日本企業のラッシュとそれにつづく各国の急速な経済発展が, 自国経済の停滞ないし閉塞状況を顧みたとき,「移行経済国」というよりも典型 的な低開発国であるラオスに一種の焦燥感にも似た経済開放化への意欲を抱か せたであろうことは想像に難くない。

 1995年7月,ベトナムがASEAN加盟と対米国交正常化を果たした。96年

1月にはAFTA(ASEAN自由貿易地域)にも加盟する。このインドシナ

半島の大国が成長著しい西太平洋経済の一角を占めることによって,東・東南 アジア全体が更なる発展の歩みを進めることは確実である。しかし,こうした 1)正式名称は,ラオス人民民主主義共和国。1991年に憲法が制定され自由選挙が実施され たが,事実上はラオス人民革命党による一党独裁状態がつづいている。

(2)

140  彦根論叢 第297号 国際政治経済環境の変化は,ベトナム・ラオスの関係をかつての「兄弟関係」 から「商業関係」へ変質させており,ラオスは,西太平洋の経済ダイナミズム に一足早く乗り込もうとするかつての兄弟国をむしろ競合国として,あるいは それとの「棲み分け」の可能性を探りつつ,自国の経済開発に遭忙しなければ       2) ならない局面を迎えているということができる。  86年の第4回人民革命党大会以降,多くの自由化乃至規制緩和措置が実施さ れた結果,マクロ指標を観る限り,経済は安定的に推移している。しかし,そ の成長は,国内の農業や製造業等の直接生産部門の生産性向上に十分に裏打ち されたものとは依然として言い難い。ラオスが自立的な成長軌道に乗り西太平 洋の経済ダイナミズムのなかで自由貿易の利益を享受するためには,いくつも の構造的な問題に取り組まねばならない。本稿は,以上のような問題意識のも と,インドシナの内陸小国ラオスに対して経済開発支援の観点からどのような 国際協力が望ましいかについて検討するものである。

II経済開発の現状

1.発展の初期条件  ラオスはインドシナ半島の中央部に位置する内陸国である。国土面積は約23 万7千kmでおおよそ我が国の本州に等しい。人口密度は約19人/㎞にすぎず経 済の集積度は低い。全国的な道路網が整備されていないこともあって,国内で は周辺国との国際貿易,流通サービスや関連軽工業に関して各地域固有の条件        3) を活かした方向で経済開発が進められている。総人口は447万人(1993年)で国 内市場規模は小さい。内陸国として経済的に不利な地理条件にあることに加え, 非耐久消費財の国際競争力が既に高くなおも未熟練労働を多く抱えるタイ,中 国,ベトナムに囲まれていることからも,ラオスが短期間のうちに工業化に成 2)ラオスは92年8月にASEANへのオブザーバー加盟が認められた。正式加盟は97年の 予定とされている。 3) “Basic Statistics about the Socio−Economic Development in the Lao P.D.R. 1993”, National Statistical Center, Cornmittee for Planning and Cooperation.

(3)

      ラオス:経済開発の現状と国際協力の方向  141 心する可能性はかなり限られていると言わざるを得ない。      4)  多様な民族によって構成される総人口の3割以上は,生産性が極めて低い自 給自足的農業(焼畑農業等)や狩猟生活を営んでいる。地方農村に住む人々は 栄養摂取量,幼児死亡率,識字率などの社会指標でみて国際的に観ても劣悪な 生活状況におかれている。都市周辺部においてさえ道路網が決定的に不足して いることから,農村と都市・市街地との生活水準の格差は甚だしい。  自給自足的なレベルで農業を営む人々の多くは,経済取引においては依然と して物々交換を行なっているところがら,経済の貨幣化と貨幣価値の安定が, そうしたレベルにある人々を近代的な経済活動に参加させるための重要な条件 となっている。また,ラオスの1人当たりGNPは1993年現在280USドルで, 統計上は隣国タイの約13%の水準にすぎないが,かなりの所得が外貨(タイ・ バーツやUSドル)や貴金属の形態で退蔵され,金融システムによって十分に 吸収されないまま,国民所得計算上も大きな投資一貯蓄ギャップを生んでいる        5) ことが問題となっている。金融部門の近代化を進め国内貯蓄動員と投資拡大の ためのチャンネルを整備することが必要である。 2.「新経済機構」(New Economic Mechanism :NEM)の整備  ラオス政府内部においても,早くも80世代初めには,経済開発過程において は民間企業活動が重要な役割を果たすべきであるとの議論が広まり,計画経済 方式の結果として,①国営企業・農民の生産意欲の停滞,②国内貯蓄動員の失 敗,③民間企業の発展を大きく阻害したため成長・発展の機会を逃してきたこ とがはっきりと認識された。これらの問題に対処するため,85年に一部の国営 企業を再編成したのを始めとして,他の移行経済国のケースと同様に次に挙げ 4)総:人口の約40%が少数民族とされる。伝説的に多数派である低地ラオ族も含めて68種類 もの民族が存在するといわれているが,大きくは,低地ラオ族,中高地ラオ族,高地ラオ 族に分類されることが多い。構成比はそれぞれ56%,34%,10%(1990年)となっている。 5)国民所得の支出構造に関するデータは公表されていない。世界銀行スタッフの推計によ れば,1992年ラオスの国内貯蓄率は5.7%となっており,サブ・サハラ・アフリカ諸国の水 準(2∼8%)ということができる。一方,国内投資率は15.2%と推計されている。

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142 彦根論叢 第297号        6) るような経済改革が果敢に実施された:  工)国営および公営企業の独立採算制導入  2)農産物価格の自由化(米に関する政府調達価格制度の廃止)  3)公共料金を除く小売価格の自由化と外国為替相場の自由化(=複数為替相   場面の廃止)  4)生産および流通分野への民間企業活動の自由な参入を保証  5)金融部門の整備  6)国営および公営企業の民営化と経営改善  7)公務員数25%削減計画の段階的実施  8)外国投資法等経済分野を中心とする各種の法律整備  9)国庫資産管理と予算(歳入・歳出)執行の中央集権化(地方政府の独立採   算制を廃止)  10)鉱産物と木材を除く外国貿易部門の自由化  さちに政府は,93年2月の国民議会においてNEMと一連の経済開発5力年 計画の間に位置づけられるものとして「西暦2000年に向けた社会経済開発指針」 を明らかにした。①市場原理に基づく生産活動の拡大,②低開発状態からの脱 却と民主主義制度の発展を基本指針としつつ,開発戦略として,電力・製造業

      9) 10)

・運輸通信分野の開発,地方農村開発の促進,外国民間直接投資の積極的導入, 6)なお,一連の改革措置実施にあたっては,1989年以降数次にわたって受け入れたIMF  と世界銀行の構造調整融資およびUNDPによる種々の技術協力が深くかかわっている。 7)経済5一年開発計画は暫定3力年計画を含めて4期分が実施されてきた。紙数制約のた  めそれらの検討は別の機会に譲らざるを得ない。 8) “Speech by Mr. Khampoui Keoboualapha, Deputy Prime Minister, at the Annual  Ordinary Session of the National Assembly, Feburary 22, 1993, Vientiane” 9)少数民族対策は革命以来の重要課題である。政府は,都市農村間の経済格差拡大を回避  すべく,地域開発あるいは農村開発を重点分野とする一方,急激な自由化措置実施が少数  民族に悪影響を及ぼすことをおそれ,内外に「ステップ・バイ・ステップ・アプローチ」  を強調してきている。 10)1988年に外国投資法を発表,94年にこれを改正している。しかし,関連する国内経済各  法律・規定の整備が遅れたことやこれらを実施する行政能力さらに道路・通信等インフラ  ストラクチュア・サービスの質を疑問視する声はやまず,当初はASEAN加盟国の外国ノ

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ラオス:経済開発の現状と国際協力の方向  143 人的資源の開発,経済開発と環境問題のバランス確保を掲げている。 3.経済改革の成果と問題点  経済改革実施以降ラオス経済は比較的安定的に推移してきている。特に,1989 第1表マクロ経済の動向 ○ 一般指標    国土面積:236,800knf    人口     447万人(1993) GDP     1,334百万ドル(1993) 1人当りGDP: 298US$(1993) 1989 1990 1991 1992 1993 1.GDP部門別構成比(%)  農林水産業  工業  サービス  輸入税 2,実質GDP成長率(%)  (1990年価格基準) 3.消費者物価上昇率(%) 4.財政(対GDP比,%)  政府歳入(援助を除く)  政府歳出  財政収支(援助を除く)  財政収支(援助を含む) 5.国際収支  輸出(百万ドル)  輸入(百万ドル)  [輸出/輸入](%)  経常収支(援助を除く)(%)注1)  経常収支(援助を含む)(%)注1)  総合収支(単位:百万ドル)  債務返済比率(対輸出比)  外貨準備高(単位:百万ドル)  輸入可能月数 6.対ドル為替レート(Kip) 7.対外債務残高注2)(百万ドル)

60乙843

0﹂3﹃014

に﹂−り乙  − 59.5 60.7 14.4 24.1 0.8 6.7 35.7 57.3 16.6 24.6 1.5 4.0 13.4

 8.3 9.9 10.3

 24.9 23.4 20.9 −16.6 一13.5 一10.6 −12.6 一10.7 一6.8  63.3 210.7  30.0 −18.5 −15.7  23.9  15.9  59.7  3.4 713.5 237.5  78.7 201.6  39.0 −11.7 −9.0 −14.5  10.3  64.8  3.9 695.5 308.6  96.6  228  42.4 −11.3 −4.6 −2.7  11.2  57.2  3.0 711.5 337.8 58.0 16.7 23.9 1.4 7.0 9.8 56.3 17.4 24.3 2.0 5.9 6.3 ∩コー9倉4

18ρ04

11

760﹂2

000﹂5

12一

132.6 265.6 49.9 −8.8 −3.5 15.7  6.3 81.2  3.7 717.0 413.5

12578468403379345356

20 R5

T一一2 10 71

注1)対GDP比率 注2)対旧東欧圏債務(1992年末現在で約7億3千4百万ルーブル)を除く。 出所)IMF及び世界銀行調査団提供資料により作成。 \投資法と遜色ない内容とさえいわれたラオスの外国投資法は実際には日本企業を含め潜在  的な投資家の懸念を払拭するにはいたつていない。

(6)

144  彦根論叢 第297号 年に世界銀行及びIMF(国際通貨基金)が構造調整融資を開始して以来,マ クロ経済関係指標は著しい改善を示しており,経済運営に関してはこれまでの        11) ところ順調に推移しているということができる(第1表)。  最近の安定的な経済動向は,生産面からみれば,GDPシェア約6割を占め る農業部門が良好な天候条件に支えらえて回復・多様化していること,勃興著 しい衣料産業やオートバイ組立等の製造業部門の活性化,建設部門の拡大,ホ テル,レストラン,金融,観光分野等のサービス部門の成長等によるもので(第

第2表 GDP構成

(o/o)

 構成比

1988 1993 1988−93年聞の 年平均成長率 成長寄与度 農林水産業  穀物  畜産・漁業  林業 工業  鉱業  製造業  建設  電力 サービス  運輸・倉庫  卸・小売業  金融  不動産  政府サービス  ホテル・レストラン  その他サービス 輸入税 合・計

33914281339115386006726702314481340120

只U9自2  1  1   9盈       0

      1

57162254177435810601235107215660370110

4U32 

1      2       0

      1

 5.6  3.6  7.4  9.3 17.4  9.3 19.7 12.7 10.9  6.3  1.0 12.9 41.9  7.6 −4.7 88.1 96.8 12.5  7.5

97890271669075929705526609411011341220

412 2 1  2 1  一 1 10

出所)ラオス国家統計局提供資料により作成。 11)1995年春以降,貿易収支の悪化から急激な為替切り下げ局面にある。ビエンチャン等厚  市部においても日用品はタイからの輸入に大きく依存せざるを得ないので,輸入物価の上 昇を通じて消費者物価の上昇が懸念される。このことは,また,農村部の対都市部交易条  件悪化を招き,長引けば,開発利益の均零を要求している地方農民が社会的混乱を引き起  こさないとも限らない。事実,本年7月には政治的にも重要な観光都市ルアンプラバンで  暴動事件のため1カ月以上にわたって夜間外出禁止令がだされた。

(7)

      ラオス:経済開発の現状と国際協力の方向  145 2表),特に,衣料,オートバイの輸出は,グロスでみた場合,木材,電力と共 に輸出増大と貿易収支改善に大きく貢献している。これら生産部門の拡大は外 国投資の増大と並行している。88−93年の累計で約5億ドルの外国投資案件が 第3表 外国民間直接投資残高

投資額

(US$1,000) 構成比 (%) 1.産業別   農業   木材関連   衣料   上記以外の製造業   鉱業(含石油)   輸出入業   ホテル・観光   銀行・保険   コンサルタント   建設・輸送機械修理   通信   その他サービス   合 計 2.投資国別   タイ   アメリカ   台湾   オーストラリア   中国   マレーシア   フフンス   uシア   香港   イギリス   シンガポール   韓国   マカオ   日本   ベトナム   その他   合 計 103,386 69,142 43,618 90,162 83,223 32,688 110,705 36,000  3,051 76,289   soe  5,802 654,566 198,085 82,549 40,974 29,431 24,182 21,897 17,822 16,834 16,601 12,889 11,021  7,087  3,135  2,379  2,249  6,028 493,163

86787095571905063256501000

11 

11 

1   1    0       1

2730946446246550006864433322100010

41

0 1 注)「産業別」と「投資国別」の合計が異なるのは前者にラオス側資  本が含まれているため。 出所)世界銀行及びESCAP提供資料

(8)

146 彦根論叢第297号 許可されており,およそ40%はタイ資本で,以下,米(16.7%),台湾(8.3 %),オーストラリア(6.0%)が主要投資国となっている。セクター別には, 農業15.8%,製造業20.5%,サービス業40.6%である(第3表)。  しかしながら,基幹産業である農業部門が著しく粗放的な経営から成り立っ ており,その生産性向上がつとに望まれるが,灌概整備,品種改良,その他の        12) 技術の導入が著しく遅れている。また,近年の国際協力の増大にも関わらず, 道路,通信,電力などインフラストラクチュアの整備は著しく遅れており,農 業や製造業など直接生産部門の発展を大きく促す段階には至っていない。更に, 経済全体の長期的な発展のためには,このようなハードウェアの整備のみなら ず,マクロ及びセクター別開発計画と適切な法律・制度に裏打ちされた実施組 織といったソフトウェアの整備が重要で,現在の成長率ないし成長のモメンタ ムを今後も維持するためには,一層の人材育成と制度組織改革の推進が不可欠 である。 4.対外経済関係の動向  80年代末から90年忌初めにかけてラオスの外国貿易は大きく変貌した。経済 自由化の流れのなかで国内経済が順調に拡大したこともあって89年以降貿易額 は増大しつづけた。貿易赤字の対GDP比をみると89年の20%から93年の11% に大きく縮小している。重要なのはこの貿易収支の改善が,輸出入の相手別・ 品目別構成の変化によって実現されたと考えられることである。        13)  第4表によれば,91年以降は非通貨交換可能圏との貿易額が輸出入両面で激 減し,通貨交換可能圏との取引がこれらを相殺する以上に急増したことが明ら 12)雇用シェアは1992年で農業87%,工業3.6%,サービス9.4%となっている。GDPシェ  ア(第3表参照)と照らし合わせると,ラオスでは農業部門の生産性は工業部門のそれに  比べて非常に低く,格差の程度は国際的に観てもかなり大きいことから,ラオス農業は典  型的な低開発段階にあるということができる。 13)ドル決済を行わない国々で事実上は旧ソ連・東欧諸国を指す。一方,通貨交換可能圏は  東南アジア諸国や西欧諸国が中心だがベトナムや中国も含まれている。ラオス中央銀行に  よる。

(9)

  ラオス:経済開発の現状と国際協力の方向  147 第4表 輸出入構成 A.輸出構成 (百万ドル) 1989 199e 1991 1992 1993 1.通貨交換可能圏  電力  木材  木製品  コーヒー  金属  繊維・衣料品  農林産物  オートバイ  その他 2.非通貨交換可能圏  コーヒー  木材・木製品  金属  その他 3.合 計 47.2 15.0 4.0 11.6 3.6 ﹄﹄一 40﹂

一ユ23ユ﹄3

 ごUピ﹂民り0023  1        4U

12244

8∩﹂OJ只り一 =﹂1  1 。0 x﹁

77

一’6’23つユマ

 0773り08

 り々        7 94.2 21.3 3.0 37.9 2.2 1.3 15.1 3.7 2.4 0.9 0.8 0.4 0.3 96.6

20704233584000460793227791200022

31 

3   2  11        3 1      1 203.1 17.1  8.5 38.2  3.3  4.0 37.0  9.2 22.0 35.O  o.o  o.o  o.o  o.o  o.0 203.1 B。輸入構成 (百万ドル) 1989 1990 1991 1992 1993 1.通貨交換可能圏  米などの食糧  各県による輸入  石油製品  機械・原材料  その他 2.非通貨交換可能圏 3.援助案件に関わる輸入 4.合 計 67.7  9.2 15.4 12.2 11.2 19.7 67.0 75.0 209.7

813329479471799779

だ0  一  ワ自  7に﹂0ゾ

        一

140.8 13.0 15.4 21.1 61.3 30.1 17.7 67.6 226.1 176.0 31.6  0.0 24.3 94.7 25.4  0.0 68.4 244.4 326.3 30.5 35.3 19.7 191.2 49.6  0.0 26.9 353.2 出所:ラオス中央銀行    14) かである。現在,ラオスの主要貿易相手国は,輸出面ではベトナム(25.3%), タイ(16.4%),中国(14.6%)など周辺3力国だけで総輸出の56.3%を占めて おり,以下フランス(8.3%),アメリカ(72%),日本(6.3%)と続いてい 14)例えばロシアは1991年にラオス貿易をそれまでのバーター取引からハードカレンシー決  済に移行させていることから,第4表にもかかわらず対ロシア貿易は継続している。但し,  93年において輸出の2.6%,輸入の0.5%を占めるに過ぎない。

(10)

148  彦根論叢 第297号 る。一方,輸入面ではタイ1国で49.7%を占めている。続いて日本(24.6%), シンガポール(5.3%),中国(3,0%),フランス(3.0%)である。伝統的に外 貨稼得源として重要な木材・電力に加え,近年,輸出増大傾向が著しい品目は ベトナム向けを中心としたオートバイとフランスとアメリカ向けの衣料品であ 15) る。これらはいずれもタイからの機械・原材料輸入急増の要因となっている。 機械・原材料以外に輸入面で指摘しておくべきなのは,食糧輸入と「その他」 に含まれている日用雑貨品のシェアが大きいことである。ラオスは食糧自給を 達成していない。また,工業生産基盤が極めて脆弱なために,日用雑貨品の殆 どをタイからの輸入に依存しているためである。 第5表 国際収支 (百万ドル) 1989 1990 1991 1992 1993 貿易収支  輸出  輸入 貿易外収支   (民間移転収支) 経常収支 資本収支   (公的移転収支) 誤差脱漏 総合収支 一147.4  63.3 −210.7   4.1   8.3  −135  121.9  19.0  37.0  23.9 一122.9  78.7 −201.6  10.5  10.9 −101.5  112.1  23.4 −25.1 −14.5

36984132971674066922

13

X22 111116一一

一132.9 132.7 −265.6  20.5   8.6 −103.9  135.1  62.9 −15.5  15.7 一150.1  203.1 −353.2  19.6   9.5  −121  117.4  61.9  28.0  24.4 出所:ラオス中央銀行  このように輸出が順調に伸び貿易収支の相対規模だけでなく輸出の輸入に対 する相対比率も最近では上昇してきていること(第1表参照),公的援助及びタ イ企業を中心とした外国民間直接投資が引き続き流入していること等により, 15)オートバイは文字通りボルト・ナットを締めつけるだけの組立生産で,日系商社が参画  して設立されたラオ・スズキ,ラオスとの合弁事業によるタイ・ホンダの組立工場がある。  合わせて月産3,000台以上の生産能力があり,製品の3割以上がベトナム向け,残りはラオ  ス国内向けとのことである。衣料に関しては,現在ビエンチャン市内だけで50∼60ケ所の  工場が操業しており,多くはタイ,シンガポール,台湾,韓国の資本によるもので,アメ  リカやフランス等による輸出規制を受けている国々の企業がラオスに生産拠点を一部移し  ているものである。

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       ラオス:経済開発の現状と国際協力の方向  149 ラオスの国際収支は改善傾向にある(第5表)。なお,国際収支動向からみた場 合,ラオスのもうひとつの特徴として海外送金受取が相対的に大きいことを指 摘しておく。75年の社会主義革命及び79年の中越紛争の際,多くのラオス人及 びベトナム系ラオス人の知識人・企業家を含む市民がアメリカ,フランス,オ ーストラリア等に難民として流出したが,里中「民間移転収支」が大きな黒字 を示しているのは,彼らからの海外送金が続いているためである。海外に住む 親族からの送金によって新車のオートバイや乗用車を即金で購入することはけ っして珍しいことではなく,ビエンチャン市民の高い消費水準のひとつの背景 となっている。 III主要な開発課題 1.政府部門の強化  80年代後半以降の比較的安定的な推移にもかかわらず,ラオス経済が今後も 成長を持続するためには構造的な問題即ち,①内陸山岳小国家にとって不利な 国際運輸コスト負担に関わる経済的属性を克服ないし緩和する,②非貨幣経済 ・未組織経済を近代部門に取り込む,③自給自足経済を営む多種多様な民族の 厚生水準を高め名実ともに統合された国民経済を形成していく,④周辺国との 国際経済関係の深化,といった点に取り組まねばならない。換言すれば,脆弱 な直接生産部門を開発するために,農業灌概設備・道路・通信・電力等のイン フラストラクチュアや制度組織・人材などを含む広義の経済基盤の建設を,イ ンドシナ半島全体の発展の枠組のなかで進めていくことがラオスの長期的な課 題であるといえよう。この脈絡において,国内の民間セクターを育成していく ことも含め,政府の役割は今後も大きくあらねばならないということができる。  ところで,ラオスでは経常収支赤字を相殺する形で西側諸国からの資本流入 が増大してきており,いわば多額の援助を前提にして国際収支はようやく均衡 するという構造がしばらくは続くと考えられるので,国内のマクロの投資効率 をできるだけ高めに維持できるよう開発政策を運営することが重要である。つ まり,西側援助国及び国際援助機関によって供給される中長期資本は事実上そ

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150 彦根論叢 第297号 のほとんどが政府資本支出乃至財政赤字を補うためのものであるため,公共投 資の生産性が向上しなければ投資効率が悪化することによって投資貯蓄ギャッ プ拡大ひいては国際収支の悪化を導き,結局はラオスの債務負担を一方的に増 大させる事態を招きかねない。また,世界的視野で観れば国際機関を含め援助 側の対ラオス援助資金は潤沢ではありえず,民間投資にしても中国やベトナム が経済開放・自由化に開進している現在,ラオスの投資先としての魅力は一層 小さい。このように,ラオス側の外国の資金と技術に対する需要に比べ供給が 今後はむしろ先細る懸念もあるので,公的援助や民間投資を可能なかぎり効率 的に利用しなければならないことは明らかである。この意味において,重要な 課題として援助吸収能力の強化をあげることができる。 2.援助吸収能力の強化 (1)開発計画及び政策の調整機能強化  今後の経済開発の諸局面では,政府部門が引き続きイニシアティヴをとらざ るをえない。政府自身の機能強化を射程に含めた具体的で総合的な開発戦略を 確立する必要が大きい。そのうえで国際協力を受け入れるのでなければ,いた ずらに援助案件に関わる支出が増大し,財政赤字が拡大することによって長期 的な経済発展過程を大きく阻害する恐れもある。ラオスでは,インフラストラ クチュア投資プロジェクトの多くが,部門的にも空間的にも綿密な相互調整の 枠組がないまま,民聞投資を含む国際協力によって実施されているのが実情で あるところがら,長期的な経済発展の方向と共に国土整備の方向を念頭におい た,投資案件相互の連関を保持し投資資金の効果的な配分を目的とする枠組の 提示と実行が必要である。援助側にとっても,こうした枠組を踏まえたうえで 立案・設計された案件をラオス側に提示することにより,ニーズに適合した国 際協力を実施できる余地が拡がる。  また,政府内において,単に計画を立案・提示するだけでなく国際協力の受 け入れ窓口となり,援助案件のニーズ適合性を検討し実施状況をモニターでき る強力な援助調整機関が重要であり,ラオスにおいてはこれをいかに強化して

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       ラオス:経済開発の現状と国際協力の方向  151 いくかが大きな課題である。現在,公的援助については94年10月に外国援助管 理委員会が,民間直接投資については88年に外国投資法施行と共に設立された 外国投資管理委員会があり,両者とも国家計画協力委員会が事務局を抱えてい るが,その機能は十分とはいえない。主な理由は2つある。まず,両委員会は いずれも閣僚級メンバーからなる委員会であり案件の審査過程が不透明なうえ 実施が許可されるまでに長い時間を要し,援助機関や投資家の計画を大いに狂 わせる場合が多々あること,第2に,両下龍会の事務局を担当している国家計 画協力委員会のスタッフは,専門家集団ではないため,例えば電力開発援助案 件のプロポーザルを検討する際,案件実施が許可された場合にはカウンター・ パートとなる工業省の意見・示唆を聞き入れずに,国際協力による電力開発推 進という国是にとらわれ,現場側にとっては実施が無理な援助側の提案内容を 受け入れてしまうといったことが多く,案件の事前評価という点及び各実施機 関の意見を十分に吸い上げられないという点で計画調整機能を果たしていない。 第2点については,各省・各実施機関の「縄張り意識」に由来する制度的問題 と人材不足に大きな原因がある。 (2)財政運営  過去に債務累積を経験した多くの発展途上国の経験によれば,ODA(政府 開発援助)やその他の外国資金によって実施された援助案件が結果的には受け 入れ国の財政赤字をかえって増大させ援助の追加的な供与によって対外債務が さらに増大するといった現象が見られた。ラオスにおいてこのような事態を回 避するためには,援助によって実施される新規投資に伴う債務増大とその投資 に関連して必要となる経常的な支出増大の両者を正確に予測し管理・調整する ことが重要である。援助国間の事前の調整も重要であるが,受け入れ国である ラオス側の財政運営能力・歳出管理能力の強化が望まれる。こうした財政基盤 の質的な強化は公共投資の効率を高めるために不可欠な要素のひとつであるが, これに加えて,開発計画におけるプロジェクトの選択,プロジェクト運営・管 理に必要な政府部門内の人的資源の効果的な配下等に関する十分な経験とノウ ハウが案件の持続性を確保するうえで重要である。

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152 彦根論叢 第297号 (3)人的資源開発  教育・保健・医療などの社会部門を含め,人的資源開発はラオスにとって長 期にわたって重要な分野であり続けよう。社会部門に関しては,自給自足的レ ベルにある農業の生産性をわずかでも引き上げるために,農業用水や飲料水な どの生活用水の確保等,地道な努力がまず必要である。一般に,他の開発途上 国の開発経験からは,これらのサービスの向上は容易ではないということがで きる。特に,地方政府の行政能力の向上が必要であり,国際協力を効果的に受 け入れる過程においても人材を育成していくといった考え方が重要である。  また,経済開発により直結した分野,すなわちODAや外国民間直接投資を 受け入れるために必要な人材をどのように育成していくかという点も重要であ る。短期的には,民間直接投資の拡大とそれらの事業活動の中で行われるOn− the−job−trainingによってある程度の熟練の蓄積が期待できる。衣料縫製業な ど組立加工型産業の場合は,かなり綿密なスペックやマニュアルによって生産 工程が管理されるため,労働者の最低限の資質が確保されれば大きな障害はな いであろう。しかし,特に金融部門等高度なサービスを提供する分野では,会 計士,タイピスト,秘書などの事務職向けの人材を十分に供給するため,官民 協調の下に職業訓練組織を拡充しなければならない。  このような短期的な問題のほかに30年前後の長期的な観点からみると,初等 ・中等教育を充実させていくよう努力を続けなければならない。従って,特定 の職種に関する訓練を充実させる一方で,将来の人材を開発するために教育投 資を積極的に実施すべきではあるが,ラオスの現在の自然条件や民族分布条件 などを考慮すると,辺地教育を組織的・制度的さらに資金的な観点からどのよ うに整備し持続させていくかが重要な検討課題となる。 3.周辺国との経済関係  地理的には勿論,言語・習慣などの点で共通点が多いタイは,自国内の都市 ・地方間経済格差問題解決策の一環として東部及び東北部の開発を推進してお り,カンボジアと共にラオスを自国経済の後背地として位置づけ,中央政府・

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       ラオス:経済開発の現状と国際協力の方向  153 関係各県政府連携のもとラオスとの経済交流を一層加速させるとの明確な方針 を有している。80年代末からは貿易・民間直接投資を通じ,その歴史的確執に もかかわらずラオスと緊密な関係を強固なものにしつつあることは既にみたと おりである。このような状況のもと,例として国際道路網整備に関していえば, 94年4月,ラオス中部に位置する首都ビエンチャンとメコン川を挟んで対峙す るタイ領ノンカイ市がオーストラリアの無償援助によって建設されたメコン橋 によって結ばれた。また,既に日本政府はラオス南部のパタセ市に無償援助に よって第2のメコン橋を建設する可能性調査の実施を約束している。東西に位 置するベトナムータイ問ルートが開発され,また,現在整備中の南北ルート(中 国雲南省一ラオスーカンボジア)が完成すれば,西暦2000年頃にはラオスはイ ンドシナ半島の物流の要所となる可能性もある。  したがって,長期的視点からは,道路等のインフラストラクチュア整備は勿        16) 論,森林資源管理,電力開発などの分野では,ラオス側にもたらされる開発利 益を最大化するためにも,それらのサービスの潜在的な大需要国であるタイ, ベトナム,中国などとの経済関係を十分に考慮しながら開発計画を立案・実施 する必要がある。 IV 国際協力の現状と課題 1.国際協力の現状  ラオスに対する公的援助額は,1991∼93年の3年間は毎年1億4千万一一 5千          17) 万ドルで推移しており,経常収支赤字を十分に相殺できる規模の援助が流入し ている。国際機関による多国間協力ではADB(アジア開発銀行),世界銀行, IMF, UNDPが主要援助機関である。また,二国間協力では,過去3年間 連続して日本がトップ・ドナーで,スウェーデン,オーストラリアが3大援助 国となっている。分野別には,世界銀行,IMFが構造調整融資プログラムに 16)いずれもタイが最大の需要国であり,その傾向が将来にわたって継続することはまちが  いないと思われる。 17)在ラオスIMF, UNDP事務所及び国家計画委員会提供資料による。

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154 彦根論叢第297号 よるマクロ経済運営支援を実施しているほか,各援助機関が,農業開発,森林 保全,運輸・通信を中心に各分野においてインフラストラクチュア建設や人材 育成を支援している。また,空間的にはこれまで日本を含め各国の援助案件は 首都ビエンチャンに集中する傾向にあったが,道路網が整備されてきたことに ともない近年は徐々に地方へも展開されるようになってきている。 2.ラオスにおける経済移行支援の意味と問題点       18)  政府は,1989年以降,世界銀行やIMFによる構造調整融資を受けてきた。 そのプログラムの基本目的は,財・要素価格の自由化等によるマクロ経済不均 衡問題の軽減にある。世界銀行やIMFによる構造調整の枠組では,構造的な 経済不均衡は当該国政府の経済政策の「失敗」によるものであることが想定さ れている。言い換えれば,これらは「調整」あるいは「振り子を戻すこと」に よって「本来の」成長軌道に復帰できるとの考え方である。しかし,これを市 場経済を新規に構築しようとしている経済に適用しても,そもそも価格の自由 化に経済が反応しないといった問題がある。道路や通信設備がなければ価格変 更による実態経済からの反応は鈍い。民間セクターが発達していなければ,こ れを育成する段階から考慮しなければならず,民営化問題においても公共企業 が国内で売却あるいは貸与されるようになるまでにはかなりの努力と時間の経 過が必要である。市場原理を基本とした経済開発のためには市場が形成されて いなければならない。いわゆる構造調整の枠組における「市場の歪み」の是正 や政策の変更・調整は,新たな技術の導入が成果を挙げるための重要な要件で はあるが,これのみではラオスの持続的且つ安定的な経済成長は望めない。生 産基盤ないし成長のための基盤作りが必要であり,財政運営や行政機構の整備 に加えて,人的資源,インフラストラクチュア等の基礎的条件の整備に関わる 支援を考慮しなければならない。 18) “Current Economic Trends in Lao P.D.R. under the Enhanced Structural Adjust−  ment Facility”, Bank of the Lao P.D.R. and IMF Resident Representative Office, Oct.  1993.

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       ラオス:経済開発の現状と国際協力の方向  155 3.協力実施上の留意点  幹線道路の整備,電力開発,国内航空網の整備,国際・国内通信サービスの 供給などインフラストラクチュア・サービスに対する需要は今後も拡大し続け るであろう。しかし,当面のラオスの援助吸収能力は限られたものであり,国 際協力が急激に拡大することがあれば,現在の財政金融機構の下では,インフ レ助長,債務累積を呼び,結果的にはラオスの経済的負担を増大させる結果に 終わる可能性もある以上,援助機関・国相互はもとよりラオス政府との十分目 政策対話にもとづいた援助計画が必要である。  更に,援助吸収力が十分ではないという意味で援助流入が事実上厳しく制限 されていることを踏まえると,ラオスへの特に日本の経済協力の在り方を考え るうえで重要と思われる点は,第1に,著しい財政不均衡に配慮したコスト節 約的な「草の根無償援助」,第2は「住民あるいは地方政府参加(participatry development)」の推進である。特に,第2の点については,ラオス経済社会が 置かれている状況を踏まえると,非常に重要な概念と思われる。地方政府が従 来よりも一層直接的に開発投資案件実施過程に参加することによって,組織的 にプロジェクト管理のノウハウを体得し,.さらには訓練・教育の必要性を実感 することが是非とも必要である。援助案件としても,そのような制度的・組織 的問題の解決あるいは改善に貢献できるようなコンポーネントを含む内容のも のが望まれる。例えば,ネパールにおけるイギリス援助のように,道路建設案 件のなかに,建設工事中に発生する事故被災者を看護するための診療システム の構築や訓練のために必要な識字教育の組み込みといった,統計上は表面化し ないコンポーネントを組み合わせて援助を実施している例がある。森林資源の 分野でも,森林管理を組織的に効果的なものとするために識字教育を組み込み, 結果として,参加住民の識字率を向上させるといったプラスの間接効果を生み だすような援助案件の実施が強く望まれる。ラオスでは,残念ながら,資金協 力や技術協力を実施する際に前提とされる技術知識や経験そのものが欠落して おり,これを補う段階から出発しなければならないためである。

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