子どものいま、大人のいま : 子どもの生活世界を考える
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(2) Shiga University. 56. 紅 林 伸 幸・川 村 光. を実施した。. インターネットや携帯電話によって個々人は手. 調査 A は、子どもの生活実態を探るために、. 軽に必要な情報を入手することができると同. 小学校5年生と6年生を対象として実施した子. 時に、他者と今までと異なった綿密なコミュニ. ども調査である。内容は彼らの友人・家族関係. ケーションをとることが可能になっている。. を中心に、その他、習い事やインターネットの. 以上のように、現代の子どもたちは、都市化・. 活用状況から成り立っている。. 情報化した社会・文化の中で日常生活を営んで. 調査 B は学生、教師、その他の一般成人を. おり、佐世保市の小学生殺傷事件ではまさに子. (1). 対象とした大人調査である. 。学生は教員養. どもたちの人間関係や情報化社会の在り方が問. 成学部の2年生、教師は同一市内の小学校4校. われた。. に勤務する者、一般成人は生涯学習関連のシン. では、実際にそのような社会のなかで、子ど. ポジウムの参加者である。いずれも教育に強い. もたちは他者とどのような関係を結び、また、. 関心を持っていると推察されることを確認して. どんな生活しているのだろうか。本章では、子. おく。調査項目では、大人がどのような生活を. ども調査の結果にもとづいて、第一に友人・家. 送り、どんな社会を作り上げているのかと、子. 族関係と遊びの側面から子どもたちの人間関係. どもたちとどのような関わりを持ち、また子ど. を、第二に先の小学生殺傷事件で注目されたイ. もたちの問題をどのように捉えているのかを尋. ンターネットの使用状況を捉えることによっ. ねた。さらに、インターネットの活用状況につ. て、都市化・情報化社会のなかで子どもたちが. いていくつかの質問項目を用意した。. どのような世界に生きているのかを明らかにす. 調査方法は、子ども調査は学校、大人調査で. る。. は学生へのものは大学、教師へのものは学校、 一般成人へのものはシンポジウム会場での留め. 3-1.友人関係. 置きである。. 多くの子どもたちは、たくさんの友人と遊ぶ. なお、 両調査の調査票の作成と調査の実施は、. ことが好きであり、一人でいるより彼らと一緒. 紅林と川村の指導のもとに、紅林が所属する滋. にいることが多く、また、テレビ番組の話をよ. 賀大学教育学部教育文化コースの学生が行った. くしている。しかし、休日に友人とよく遊ぶ者. (2). 。. は半数であり、メールをよくする者は2割しか いない。. 3.子ども調査の結果報告. また、8割弱の子どもは、上記のような関係. 高度経済成長期以降、 地域の共同体が解体し、. をもっている友人を、自分のことを理解してく. これまで地域にあった人間関係が崩れ、他方で. れている存在と捉えており、仲の良い友人には. は都市化に伴い、共同体が未成熟な地域が増加. 何でも話ができると思っている。だが、学校の. しており、地域住民がどのように人間関係を形. 中に悩み事を相談できる友人がいると回答した. 成していくのかが重要な課題になっている。ま. 者は6割強と若干低くなっている。(図表2). た、近年は、様々の情報雑誌が氾濫し、さらに テレビやラジオといったメディアだけでなく、. 友人にしてほしいこと(図表3)としては、 「一緒に遊んでくれる」ことが最も高く、8割 弱となっている。 「お ちこんだ時にはげま してもらう」こと、 「相談にのってもら う」こと、「うれし い時いっしょに喜ん でくれる」ことは5 割前後しかあげられ ておらず、友人に助. NII-Electronic Library Service.
(3) Shiga University. 子どものいま、大人のいま. 57. 言者や共感者であることを望むのは意見が分か. 者が「グループのメンバーが変わるのはいやだ」. れる。 また、 「いけないところを注意してもらう」. と回答している。多くの子どもが所属している. ことは4割弱、 「勉強を教えてもらう」ことは. グループを自分の居場所と考えており、加えて、. 3割強であり、友人に指導者的な役割をあまり. それが固定的・閉鎖的なグループであることを. 求めていないようである。. 望んでいる。しかし、グループ内の友人に悩み. 次に、学校内にいつも一緒に行動するグルー. の相談をする者は半数に止まっている。さらに、. プがあるかどうかを見ると、 8割の者が「ある」. 約4割の者がグループ内で自分が異なった意見. と回答しており、そのグループの人数は平均5. を持っていても言わず、やってはいけないこと. 人である。メンバーは「クラスが同じ友だち」. を友人に注意できずに一緒にやってしまう。つ. 94.3%「クラスが違う友だち」26.6%「学年が. まり、およそ半数の子どもにとっては、グルー. 違う友だち」9.4%「性別が違う友だち」6.1%. プは自分にとって心のよりどころであるのだ. というように、主に同じクラスの同性の友人に. が、そこで素直に自己を表現することが難しい. よって構成されている。. と推察される。. そのグループ(図表4)については、9割前 後の子どもが「グループで集まっていると楽し. 3-2.家族関係. い」 「グループの中にいるとホッとする」 「グルー. 8割弱の小学生が、家族は優しく、また自分. プから抜けたくない」と回答し、また7割強の. のことを信頼してくれており、一緒にいると安. NII-Electronic Library Service.
(4) Shiga University. 58. 紅 林 伸 幸・川 村 光. 心すると回答している。そ れに対し、家族が厳しいと 回答 し た の は 6 割弱であ り、自分が悪いことをして もおこらないと回答したの は1割強である。 (図表5) 家族とのコミュニケー ションの機会に関しては、 「家族といっしょに買い物 にいくことがある」 8割強、 「親と一緒にテレビ番組を よく見る」8割弱、 「家族 といっしょに遊ぶことがあ る」6割弱となっている。 家族と話をする時間は、登 校日は約1時間 45 分、休 日は約2時間 50 分であり、 学校にいる時間、友人と遊 ぶ時間、家で勉強する時間 等を考慮に入れると、その 時間はそれほど少ないもの ではないと思われる。また、家で手伝いをす. あるのだが家族に相談できない、あるいは、家. る頻度を確認すると、 「毎日」30.4%「一週間. 族に相談するような悩みそのものがないなどの. に4回か5回」13.0%「一週間に2回か3回」. 理由が考えられる。. 26.9%「一週間に1回くらい」13.0%「一ヶ月 に1回か2回」11.2%「まったくしない」5.6%. 3-3.遊び. となっており、8割強の者が週に1回以上、家. 学校外で友人と遊ぶ時間は、登校日は約1時. で手伝いをしている。さらに夕食をともにする. 間 45 分、休日は3時間弱である。また、テレ. 他者については、 「家族全員がそろって食べる」. ビゲームで遊ぶ時間は、登校日は約 45 分、休. 37.1%「家族全員ではないが、家族のだれかと. 日は約1時間 10 分である。したがって、子ど. 一緒に食べる」58.8%「だいたいいつも一人で. もたちは、登校日は約2時間半以上、休日は4. 食べる」2.5%「家族以外のだれかと食べる」1.5%. 時間以上、遊びに時間を費やしているようであ. と、家族全員とまではいかないまでも、大半は. る。一方、家で勉強する時間は、登校日は約1. 家族と食事をしている。つまり、多くの子ども. 時間 15 分、休日は約1時間半となっている。. たちには家族と十分なコミュニケーションをと. 遊び場所(図表6)については、7割の子ど. る機会があると思われる。. もが「自分の家」「友だちの家」をあげている。. では、このような機会を利用して、どのくら. その次は「公園」で5割となっている。その他. いの子どもたちが自分の悩み事を家族に相談し. の「近所の空き地」「校庭」「道路」「ゲームセ. ているのだろうか。 「何でも相談する」10.6%. ンター」「コンビニ」「図書館」は1割前後に止. 「だいたい相談する」39.0%「あまり相談しない」. まっている。すなわち、子どもたちの遊び場は. 26.1%「まったく相談しない」24.2% となって. 主に家の中であることがわかる。. おり、半数しか家族に相談していない。家族と. では、これらの場所で誰と遊ぶのだろうか(図. 接する機会は多いものの、彼らに悩み事を相談. 表7)。ひとりで遊ぶ子どもは 24.1% であり、. する子どもは半数しかいないことには、悩みが. 残りの7割強の者は誰かと遊んでいる。「同じ. NII-Electronic Library Service.
(5) Shiga University. 子どものいま、大人のいま. 59 る。しかし、少数といえども、 他者と接する時間が減少して いることは注目されよう。 次に、インターネットを日 常的に使用するようになった 子どもたちと、それを使用し ない子どもたちとに分類し (3). 、彼らの人間関係の在り. 方にどういった違いがあるの かを見ていこう(4) (図表8)。 クラスの友だち」7割「クラスは違うけれど同. これを確認することによって、インターネット. じ学年の友だち」は6割と、多くの子どもたち. が子どもたちの人間関係に与える影響を探って. は同年齢の友人と遊んでいる。その一方で、 「学. いきたい。. 年の違う友だち」や「家族」は3割程度に止まっ. まず、家にあるパソコンの台数を確認すると、. ている。また、 「違う学校の近所の友だち」 「違. インターネットを日常的に使用している子ども. う学校で習い事が同じ友だち」は約1割となっ. の家には約2台あるのに対し、使用しない子ど. ている。つまり、他校の子どもたちとの交流は. もの家は約1台ある。こうした自宅にあるパソ. 少なく、彼らの交友関係は基本的に学区内に限. コンの台数が、彼らのインターネット使用頻度. 定されているようである。. と関連している。 友人関係では、「学校で友だちとテレビ番組. 3-4.インターネット. の話をよくする」「友だちとメールをよくする」. 子どもたちのインターネットの平均使用時. という項目で、インターネットを使用する子ど. 間は、登校日は約 30 分、休日は約 45 分であ. もの方が割合が高く、さらに、学校内でいつも. る。彼らのうち、自宅にパソコンがある家庭は. 一緒に行動するグループがある割合も同様の結. 86.2% であり、およそ1、2台を所有している。. 果になっている(使用する子ども 83.4%、使用. 多くの子どもたちが日常的にパソコンと接する. しない子ども 75.5%)。インターネットを使用. ことのできる環境にあると思われる。 けれども、. する子どもの方が、友人とのコミュニケーショ. インターネットを日常的に使用している( 「よ. ンをとる機会が多いようである。また、「学校. く使う」+「たまに使う」 )子どもたちは6割. の中に悩みごとを相談できる友だちがいる」や、. であり、家にパソコンがあるからといって 、 す. いつも一緒に行動する「グループの友だちに悩. べての子どもがインターネットを生活の一部に. みの相談をする」といった項目においても、イ. しているわけではない 。. ンターネットを使用する子どもの方が割合が高. インターネットを日常的に使用している子ど. い。加えて、友人にしてほしいことでは「相談. もたちが、その効果や影響についてどのように. にのってもらう」ことの割合が高くなっている。. 考えているのかを確認すると、インターネット. つまり、インターネットを日常的に使用してい. を利用するようになって「勉強がわかるように. る子どもの方が、友人と親密な関係を望んでお. なった」47.9%、 「勉強するのが楽しくなった」. り、実際にそうした関係を結んでいる者が多い. 30.1% と、学習に対するインターネットの効果. ようである。. を実感している子どもは半数以下に止まってい. 家族関係については、「家族といっしょに買. る。だが、パソコンそのものに対して好意的に. い物にいくことがある」で、インターネットを. なった子どもは8割以上にのぼる。他方、 「外. 使用する子どもの割合が高くなっている(使用. で遊ぶ時間がへった」 (16.4%) 「ひとりでいる. する子ども 84.6%、使用しない子ども 77.6%)。. 時間が増えた」 (28.1%)といったネガティブ. だが、図表5の他の項目には有意差がなく、ま. な影響が予想される項目は低い値を示してい. た、家族と話をする時間、家で手伝いをする回. NII-Electronic Library Service.
(6) Shiga University. 60. 紅 林 伸 幸・川 村 光 だちの家」「公園」「近所 の空き地」「校庭」「ゲー ムセンター」「コンビニ」 などに基本的に違いが見 ら れ ず、 イ ン タ ー ネ ッ トを使用する子どもと 使用しない子どもとの間 に、自宅を除く他の遊び 場所に違いはないようで ある。学校外での遊びに ついては、インターネッ トの使用状況と、ひとり で遊ぶこととの間には関 連が見られず、インター ネットをよく使用するか らといって、友人と遊ぶ ことが少ないというわけ ではないと考えられる。 遊び相手について確認す ると、「同じクラスの友 だち」使用する子ども 75.0%、使用しない子ど も 66.7% と、 イ ン タ ー ネットを使用する子ども の割合が高いものの、他 の遊び相手については違 いはなかった。 3-5.子どもの現在 以上述べてきた現代の 子どもたちの人間関係を まとめると次のようにな る。 彼らの人間関係を形成. 数、家族で夕食を食べる割合、家族に悩み事を. していく基本的な空間として学校と家がある。. 相談する割合においても違いはなかった。つま. これらの空間で、彼らは友人や家族と頻繁にコ. り、子どものインターネットの使用状況と、家. ミュニケーションをとる機会を有している。学. 族関係とはあまり関連がないようである。. 校内での友人関係の特徴としては、いつも一緒. 遊びに関しては、学校外で友人と遊ぶ時間、. に行動するグループがあり、それを身体的・精. テレビゲームで遊ぶ時間、家で勉強する時間に. 神的な居場所と捉えているのだが、そこで自己. おいて違いはみられなかった。遊び場所は、 「自. を表現できない者もいるということがあげられ. 分の家」使用する子ども 74.0% 使用しない子. る。他方、学校外では、主に自分ないし友人の. ども 68.3% と、インターネットを使用する子. 家で、学区内の同学年の友人と遊び、交流を深. どもの方が自宅で遊ぶ割合が高い。しかし、 「友. めている。さらに、家族関係については、子ど. NII-Electronic Library Service.
(7) Shiga University. 子どものいま、大人のいま. 61. もたちは家族を心の拠り所としているものの、. 人自身がどのような世界を作り出しているのか. 彼らに悩みを相談する者は半数程度に止まって. を確認していく。その際、子ども調査において. いることが明らかになった。. 主たる注目点とした、人間関係とインターネッ. また、対人関係に影響を及ぼすと考えられる. トとの関わりについて特に注目する。. インターネットに関しては、子どもたちは家庭 内で日常的にそれに接することができる機会を. 4-1.現代の子ども像と大人社会の子どもへ. 有しており、そのうち6割の者がインターネッ. の悪影響. トを日常的に使用している。彼らは、それによ. 自分の小学生時代と比べて現代の子どもが変. る学習効果はあまり実感していないものの、パ. わったかどうかを確認すると、変わったと「思. ソコンに親しむように なっており、大人が懸 念している対人関係へ の影響については、友 人・家族関係において ネガティブな影響をあ まり受けていないよう で あ る。 む し ろ、 友 人関係において、イン ターネットを使用する 子どもたちの方がそう でない者たちより、友 人と親密なコミュニ ケーションをする機会 を多く有しているよう である。しかし、少数 で あ る が、 イ ン タ ー ネットを使用するよう になって、ひとりでい る時間が増えたり、外 で遊ぶ機会が減ったり している子どもがいる ことは注目しておく必 要があろう。 4.大人調査の結果報 告 ここまで、子ども調 査の結果から、子ども たちの生活の実際を確 認してきた。 本章では、 大人調査の結果を紹介 し、大人たちが、子ど もたちをどのようにみ ているのか、そして大. NII-Electronic Library Service.
(8) Shiga University. 62. 紅 林 伸 幸・川 村 光. う」49.6%、 「まあそう思う」42.1% と、あわ. 確認すると、ここで取り上げたすべての項目に. せて9割もの大人が「自分の小学校時代と比べ. おいてほぼ6割を越える者が「悪影響がある」. て現代の子どもは変わった」と回答している。. と回答していることになる。子どもを取り巻く. では、変わったと思われている具体的な内容. あらゆるものが、かなりの大人に子どもに一定. はどのようなものだろうか(図表9) 。大人は. 程度悪い影響を及ぼしていると認識されている. 自分が子どもだった頃より、現代の子どもの方. ことがわかる。. が物質的に豊かな環境で育っていると考えてい. 以上のように、大人は子どもに対して、他者. る。また、親の愛に飢えている一方で親の期待. とのコミュニケーション能力の不足等、ネガ. が大きく、習い事で忙しく、ストレスが多い。. ティブな認識を持っていることが明らかになっ. さらに、人との付き合いが苦手で、命の大切さ. た。また、子どもに対する現代社会の影響に関. をわかっていない。加えて、純粋さ、集中力、. しては、人間関係の希薄化や情報メディアが子. 忍耐力、責任感、気力がない。さらに、大人び. どもに悪影響を与えていると指摘している。け. ている側面があるのだが、自己中心的で甘えん. れども、既に述べたように、子どもに起こって. 坊の面も持ち合わせていると思っている。これ. いる問題は、大人の問題でもある。子どもたち. らのことから、自分の子ども時代と比較して、. に悪影響を及ぼしていると彼らが考えているも. 今の子どもがネガティブに捉えられていること. のの多くは、他ならぬ彼ら自身が生み出してい. がわかる。. る社会的な現実である。それらの実態がどのよ. 次に、そうした子どもの問題の原因がどのよ. うなものであるのかを、次節以降で確認したい。. うにとらえられているのかを確認する。 「とても悪影響」を及ぼしているという回答. 4-2.大人の人間関係. が多かったのは、 「両親の離婚」 (57.8%) 「テ. 子どもたちは、たくさんの友人と遊ぶことが. レビや映画の暴力シーン」 (55.1%) 「アダルト. 好きであり、一人でいるより彼らと一緒にいる. 情報」 (54.8%) 「地域との人間関係の希薄化」. ことが多いことが確認されたが、大人はどうだ. (42.9%) 「テレビゲーム」 (42.2%)といった項. ろうか。図表 11 に示すように、「悩みごとを. 目であり、子どもたちと彼らを取り巻く他者と. 相談できる友人がいる」「友人はあなたのこと. の繋がりの希薄化や、情報メディア関係が上位. を理解してくれていると思う」「仲のよい遊び. にきている。しかし、 「インターネット」をあ. 友達がいる」の3つにあてはまると回答した者. げた大人は2割弱に止まっており、情報メディ. が、学生、教師、一般成人ともに8割前後と高. アのすべてが子どもに悪影 響を及ぼしていると考えら れているわけではない。ま た、 「親の共働き」 (13.9%) や、 「早期教育」 (12.9%) 「学 校教育の質」 (14.3%) と いった今日の教育の特質に 関わるものの悪影響を特に 大きいと指摘した者はほと んどいない。 (図表 10) ところで、上記のように 「とても悪影響」を及ぼし ているという判断は項目に よって異なっているが、図 表 10 に 示 す よ う に、 「少 し影響がある」との合計で. NII-Electronic Library Service.
(9) Shiga University. 子どものいま、大人のいま. 63. い値を示している。一方、友だちの人数に関わ. ており、以下「電子メール」56.4%「掲示板. る「たくさんの友人と遊ぶことが好き」 「友人. の閲覧」45.3%が利用者の多いものとして続. が多い」は6割前後、5割前後と、上記の3つ. いている。教師と一般成人も「ホームページの. と比べて若干少なくなっている。また「一人で. 閲覧」「電子メール」の利用者が多いが、9割. いるのが好き」や「一人で行動することがよく. を超える学生と比べて「ホームページの閲覧」. ある」の指摘率がかなり高くなっている。以上. は少なく、逆に「電子メール」は一般成人で7. の結果から、大人の人間関係の特質としては、. 割を超えるという特徴が確認された。 「電子メー. 数の規範よりも、親密さの規範の方が強いこと. ル」の利用についての違いは、学生のメールの. が推察される。特に、自分の身近にいる親しい. 活用が日常化している現実と合わせて考えれ. 友人については、悩み事を相談できる、 (自分. ば、学生がインターネットと携帯電話を目的や. のことを) 理解してくれているといったように、. 用途に応じて使い分けていることを示している. 強い信頼感を持っている。他方で、自分自身の. と言えるだろう。また、そうした学生たちにお. 対人関係の持ちようについ ては、 「人と話すのが得意 である」 「人見知りする」 「他 人に本心を見せない」の数 値が示すように、必ずしも 自己開示性が高いわけでは ないと認識されている。 4 - 3. 広 が る イ ン タ ー ネット社会 イ ン タ ー ネ ッ トを日常 的に 使 用 し て い る子ども たち は 6 割 と い う結果で あったが、大人は、学生は 100 %、 教 師 95.5 %、 一 般成人 84.6%と、いずれ も非 常 に 高 い 割 合でイン ター ネ ッ ト を 利 用してい る。また、インターネット の利用日数は1週間に 3.7 日、 利 用 時 間 は 1 日 あ た り約1時間半という結果で あった。 インターネットにおいて 利用しているサービスは学 生、教師、一般成人で異な るが、3者に共通して「も のごとを調べる」が9割を 超える圧倒的な高い割合を 示している(図表 12) 。学 生は 「ホームページの閲覧」 も9割を超える者が利用し. NII-Electronic Library Service.
(10) Shiga University. 64. 紅 林 伸 幸・川 村 光. いて、ホームページの閲覧や掲示板の利用(閲. 指摘が多いこと、逆に教師の指摘が少ないこと. 覧 45.3%、書き込み 26.5%)が高い割合を示. が確認される。この結果を、学校現場や教師の、. していることは、今後それらの利用者がいっそ. 情報化社会への対応の遅れを示すものと捉える. う増加していくであろうことを予感させる。. か、教育者としての慎重な態度として理解すべ. インターネットの有用性や危険性についての. きかは意見の分かれるところだろう。. 認識も、学生、教師、一般成人では大きく異なっ ている(図表 12) 。全体としてみれば、 「もの. 4-4.子どものモデルとしての大人. ごとを調べるのに便利」 「買い物に便利」 「いろ. 今回の回答者は、子どもとの関わりが自分の. んな人と話と話ができる」などの有用性につい. 生活に占める主観的なパーセンテージを、学. て「そう思う」と回答している者の多さや、 「ト. 生は平均 18.0%、教師は 67.0%、一般成人は. ラブルに巻き込まれる恐れがある」 「犯罪につ. 34.4%ととらえている。それぞれの置かれて. ながる」 「引きこもりにつながる」といった危. いる状況や関心を考えたとき、妥当な数値だと. 険性に対する認識の高さなど、インターネット. 思われる。ところで、調査では、自分が子ど. の二面性については十分に認識されていると考. もたちのモデルとなるような生き方をしてい. えて良いだろう。特に、危険性の認識は学生に. るかを問うたところ、学生の 27.2%、教師の. 高く、彼らが危険性をしっかり認識した上でそ. 64.3%、一般成人の 47.3%が、モデルになる. れらを積極的に利用していることがわかる。た. ような生活をしていると回答した。そこで、モ. だし、危険性を認識しているからといって、問. デルとなるような生き方をしていると考えてい. 題が生じないというわけではない。危険性の自. る大人と、そうではない大人の比較を行い、子. 覚と危険の回避は別物であることを確認してお. どものモデルとなる生き方の特徴を探った。 (図. く必要はあるだろう。また、 「普段できない会. 表 13). 話ができる」に「そう思う」と回答した者は、. 休日の生活の仕方を比較したところ、いずれ. 学生 41.9%、教師 28.4%、一般成人 36.6%と. も有意な差は確認されなかった。大きな意味で. 決して小さくない。ネットとの向こうには、ふ. の生活行動のパターンに関しては、両者の間に. だんとは違うもう一つのコミュニケーション空. は違いはないと言ってよいだろう。. 間が確実に形成され、広がりはじめているので. 人間関係については、学生と一般成人におい. ある。. て、モデルとなるような生活を送っている人と. では、こうしたコミュニケーションの子ども. そうでない人の間で有意差が確認されている。. に与える影響はどのように考えられているだろ. 子どものモデルとなることと人間関係の持ちよ. うか。大人全体では、インターネットの良い. うとの間に相関が確認されたことは、大人が子. 影響としては「勉強の役に立つ」85.1%「学習. どもの人間関係の持ち方に問題や危機感を感じ. 意欲が高まる」58.7%「将来の仕事に役立つ」. ていることを示していると理解することができ. 80.2%「感性が豊かになる」24.9% と、子ども. る。具体的には、学生と一般成人は共通して、. の感性には影響をあまり与えないが、学習の補. モデルとなる生き方をしている人の方が、「悩. 助的な効果は期待できると考えられている。他. みごとを相談できる友人がいる」「友人はあな. 方で、 「トラブルに巻き込まれる恐れがある」. たのことを理解してくれていると思う」「人と. 84.5%「犯罪につながる」64.5%「引きこもり. 話すのが得意である」「リーダーシップがある」. につながる」53.3%「人とのつき合いが下手に. に「あてはまる」と回答している者が多い。学. なる」53.0% と、子どもたちがインターネット. 生では「仲のよい遊び友達がいる」 「友人が多い」. を使用することによって、彼らがトラブルに巻. も同様である。以上の結果からは、自分が子ど. き込まれたり、対人関係を形成していく上でマ. もたちのモデルとなるような生活や生き方をし. イナスの影響があることも予測されている。. ていると考えている人は、社交的で、人と関わ. 学生、教師、一般成人を比較すると、プラス. ることに積極的であり、そして自分の親しい友. の効果とマイナスの影響の両方について学生の. 人を信頼している、あるいは信頼できる友人を. NII-Electronic Library Service.
(11) Shiga University. 子どものいま、大人のいま. 65. 持っているという特徴があることがわかる。. ると考えている者に近所の子どもと積極的に関. ところで、教師に関しては、学生や一般成人. わっている者が多い。日常的に学校で子どもた. と同種の傾向は確認されなかったが、しかし、. ちと深い関わりを持っている教師の結果と併せ. 教師では、モデルとなる生き方をしている人ほ. て考えれば 、 子どもたちと実際に関わることが. ど「人見知りする」 「他人に本心を見せない」. 、 大人自身が自らの生活や生き方を見直し、自. という消極的な人間関係が少なくなっている。. 分が望ましいと考える人間関係を自覚的に営む. 教師というそもそも子どもにとってモデルとな. 契機となるのかもしれない。. ることが期待されている人たちにとって、実際 的な人との社交的な関わり方は、職業役割上、. 5.おわりに 子どもと大人の現在に関するい. 当然の態度となっているのであろう。したがっ. くつかの課題. て、むしろ、よりハードルが高い、自身の開示. サンプルの量と質の双方にわたって制約があ. 性の部分で、両者の差が確認されているものと. り、本研究の結果を一般的な知見として結論づ. 推察される。. けることはできない。けれども、本稿を終える. 図表 13 の下段は、近所の子どもたちとの関. にあたって、以下の4つを、今後検討すべき課. わりに違いがあるかどうかを確認したものであ. 題や着眼点として提示しておきたい。. るが、一般成人はモデルとなる生き方をしてい. 第一は、子どもたちの世界の実態として、イ. NII-Electronic Library Service.
(12) Shiga University. 66. 紅 林 伸 幸・川 村 光. ンターネットの文化は確実に広がり、子どもた. 文化が、子どもたちの世界にどのような影響を. ちの世界の一部となりつつあるということであ. 及ぼしているのかは、今後特に焦点を当てて検. る。インターネットの文化は、学生を含む若者. 討する必要があるだろう。. の文化と学校教育の2つが並行して先導する形. 第四は、子どもの問題を捉える大人の認知. で、子どもたちをそこへと取り込んでいる。今. 枠組みについてである。図表 14 と図表 15 は、. 回のデータによれば、それは、有用性による一. 既に紹介した子どもへの悪影響の理解と育児. 方的な広がりではなく、危険性についての認識. 観やしつけ観が学生と教師と一般成人で異なっ. も高められるなかで進んでいるものと思われ. ているかどうかを確認したものである。本稿の. る。しかし、そこが普段の生活からは切り離さ. 分析では、学生と教師と一般成人が多くの点で. れた、もう一つの別の世界であることも確認さ. 異なった回答傾向を示していることを確認して. れた。そこで何が起こっているのか、既存の規. きたが、この2つの表からは、子どもの問題の. 範がどのようにつくりかえられていくのかを予. 原因のとらえ方には比較的共通の傾向があるこ. 測することは決して容易ではないだろう 。. とが確認される。子どもへの悪影響要因につい. 第二は、既に何度も述べてきたが、大人が子. ては、自分が関わりを持っている要因の問題性. どもの変化の原因と考えているもののほとんど. を比較的低く見積もる傾向が認められ、それが. が、子どものものではなく、大人が作り出した. 4つの項目について有意差となって現れている. 社会的な現実であるという点である。9割を超. が、それ以外の理由で解釈される差はほとんど. える大人が「悪影響がある」と指摘している情. 認められない。特に、育児やしつけに関わる図. 報規範の崩壊も地域や家庭の崩壊も、その行為. 表 15 では有意差が認められるものは一つもな. の主体は子どもではなく大 人である。どれだけの大人 がそれらの問題を自分たち を主語とした物語として捉 えているだろうか。 第三は、子どもの世界に 対する、学生のもつ影響に つ い て で あ る。 学 生 は 子 どもたちと接触する機会が きわめて少ない。今回の調 査で対象としたのは教育学 部の学生であり、子どもへ の関心は高いと推察される が、彼らでも子どもとの関 わりは生活の 20%以下で、 他の大人と比べて低い。近 所の子どもたちへの関わり も同様である。けれども、 そうした子どもとの関わり の少ない学生を含む若者こ そが、子どもたちの世界を 先導する文化の担い手でも あり、子どもたちがモデル として見ている対象でもあ る。こうした若者や彼らの. NII-Electronic Library Service.
(13) Shiga University. 子どものいま、大人のいま い。これらの結果は、大人が子どもの問題を捉 える枠組みが、学生と教師と一般成人に共通し. 67. <注> (1)本研究では、子どもの世界の地平にある. ていることを示しているのではないだろうか。. 全体的な文化を大人の世界として捉えてい. それは全員に同じように判断させるものではな. る。したがって、若者文化の中心的な担い手. く、問題のとらえ方をそもそも規定するまなざ. である学生を、大人調査の対象者に加えた。. しの共有である。おそらく外部から様々なメ. また、子どもたちを取り巻く重要な大人とし. ディア(教育を含む)を通して獲得され、認識. て、教師を独立したカテゴリーとして取り上. を枠づけているそれらのものから、自身の子ど もや社会へのまなざしを自由にしないかぎり、. げた。 (2)子ども調査のメンバーは宇那木知佳、岸. 私たちはそれを自分たちの問題として捉えるこ. 本美央、高田雄、安友千絵、大人調査のメン. とはできないのかもしれない。. バーは上野賢治、保木良太、山本千香子であ. 本稿では、子どもと大人を対象として実施し た2つの調査結果の紹介を行ってきたが、様々. る。 (3)インターネットを日常的に使用する(「よ. な制約から、両者の比較分析や、総合的に捉え. く使う」+「たまに使う」)子どもは 632 名、. る考察の作業を十全と果たすことはできなかっ. 使用しない(「ほとんど使わない」+「まっ. た。しかし、今求められているものは、子ども. たく使わない」)子どもは 426 名である。. の生きる全体的な世界を知ることである。今回. (4)インターネットを日常的に使用する子ど. 得られた着眼点に関心を払いつつ、両者をより. もと、使用しない子どもの違いを確認するに. 総合的に関連させながら捉えていく研究を志向. あたっては、カイ二乗検定やt検定を行い、. することを今後の課題としたい。. 5%水準で有意差を確認した。. NII-Electronic Library Service.
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