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電子回路シミュレータLTspice による設計検証技術の習得 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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電子回路シミュレータLTspice による設計検証技術

の習得

著者

小林 英一

雑誌名

技術部活動報告集

18 (2012年度)

ページ

15-18

発行年

2013-03

URL

http://hdl.handle.net/10098/8790

(2)

図1.インストール画面 図2.”μ”の文字化け対策 1. はじめに リニアテクノロジー社(以下LTC 社と表記)が提供する無償の電子回路シミュレータ LTspiceⅣ (エルティースパイス 4,以下 LTspice と表記)を活用して,電子回路設計・検証の時間短縮と完 成度向上に役立てることを目的とする. LTspice は LTC 社によって特にスイッチング電源解析を高精度で行うため SPICE 3 をベースに 開発され,プログラムの最適化を行ったものであり,素子数等の機能制限もなく,実用性が高い. 火花が飛びやすい高電圧回路も PC 上での回路解析においては火事にならず,地域貢献事業およ び日常業務において作製が必要となる新規回路の初期完成度を高めることができると期待される. 2. 注意事項 2-1. インストールフォルダの変更 インストール時,初期状態では図1のように "C : ¥ Program Files ¥ LTC ¥ LTspiceIV" と入力されて いるが,Windows Vista 以降はセキュリティ強化によ り,Program Files 内にインストールすると自動更新に 失敗または回路図ファイルが保存できない等の不具合 が多いため "C : software ¥ LTspiceIV" 等に変更する と良い. 2-2. ”μ”(マイクロ)の文字化け対策 LTspice を日本語版の Windows 上で使うと"μ"が文 字化けするため,代わりにアルファベットの"u"を表示 するよう,図2のように設定変更が必要である. 2-3. 解析結果の自動保存 初期状態では解析結果を自動的に保存してしまう. 不要な場合は Tools → Control Panel → Operation タブ → Automatically delete .*** files を ”Yes” ま たは “Ask” とし生成ファイルを自動/選択消去する. 3. 解析用回路の作成方法 簡単な回路であれば ”New Schematic” を選択し,何もない状態から書き始めても良いが, 最初に核となるデバイスを決め,予め用意されているサンプル回路図を基に,仕様を修正して いく方法が効率的で良い.回路図の入力操作はPCB CAD : EAGLE よりも扱いやすいと感じた.

電子回路シミュレータ

LTspice による設計検証技術の習得

第三技術室 小林 英一

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図4.パワーMOSFET(R6010ANX)の I-V 特性解析結果 5. R6010ANX の静特性 VGS=5V VGS=4V VGS=6V VGS=10V 図3.他社 SPICE モデルの取り込み 表1.有用性の高い解析コマンド(抜粋) 4. 解析コマンド 解析コマンドは数多く用意されているが,特に使用頻度および有用性の高いものを抜粋する. コマンド名 内容 .tran 最も基本的な解析で,電圧や電流の時間変化を調べる過渡応答解析である. .ac 交流掃引により,回路の周波数応答を解析する.(周波数上限は100MHz) .dc 直流掃引により,トランジスタ等のI-V 特性(静特性)を解析する. .measure 解析後の結果データから,平均値,振幅,最大・最小値,実効値などを読み取り, 演算する.応用範囲が広いコマンドである. .step パラメータ掃引により,回路図中の定数を段階的に変化させ並行解析する. .param ユーザー定義パラメータを使用する. .temp 周囲温度掃引により,ダイオードやトランジスタ等の温度特性を解析する. 5. 他社メーカー提供の SPICE モデルを使用する SPICE モデルとは,回路解析に必要なデバイス情報 (シンボル,ネットリスト,パラメータ集)である. LTspice は販売促進用に無償化されているため,予め 用意されている SPICE モデルは汎用素子を除き当然 そのほとんどがLTC 社製のデバイスであり,他社メー カーが提供するSPICE モデルを取り込む機会は多い.

図 3 は ROHM 製パワーMOSFET R6010ANX の SPICE モデル(サブサーキット形式)を取り込んだ例 である.回路図中にコマンド「.include <ファイル名>」

を書き,部品名のPrefix を「X」とし,Value を.SUBCKT 横の部品名と一致させる.また,.include でファイルをフルパス指定しない場合は,SPICE モデルのファイルは回路図と同じフォルダに置く.

6. LTspice を用いた解析例

6-1. パワーMOSFET の I-V 特性評価(データシートとの比較)

.dc 解析により,ROHM 製パワーMOSFET R6010ANX の I-V 特性(静特性)を解析した. 図4 は LTspice の解析結果,図 5 はデータシートに記載されている静特性である.飽和後のド レイン電流値に違いはあるものの,飽和するまでは同じ傾きのI-V 特性が得られている.

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図6.抵抗器誤差を 10%とした場合のモンテカルロ解析結果 図7.スイッチング電源回路の効率解析 図8.LTspice で解析した波形(左)と観測波形(右)の比較 6-2. モンテカルロ解析(バラつき解析) 図 6 はモンテカルロ解析によっ て,スイッチ回路の負荷抵抗1kΩ の誤差を±10%と設定し,解析を 50 回実施した例である.抵抗器の 誤差が±10%であっても VDSには 影 響 な い が ,ID は お よ そ 180~ 220mA でバラつくことが判る. 6-3. スイッチング電源回路の解析(電源効率,波形比較,高速フーリエ変換) 図7 は絶縁型フライバックコンバータ方式(降圧)のスイッチング電源回路図を作成し,20ms の.tran 解析および.measure コマンドを使用して過渡応答解析を行った例である.LTspice

には「定常状態の自動検出」と「効率のレポート」機能があり,電源効率の計算では通常こ れらを利用するが,回路条件によっては正しく機能しない場合も多いため,.measure コマ ンドで入出力電力を演算させ,それらの比から効率を求める方法が便利である. 図 8 は LTspice による解析波形と,作製した電源回路上における観測波形との比較であ る.各素子に適切なパラメータを入力することで,現物に近い波形が得られるようになった. VGS VDS ID 10.78ms 10.80ms 10.82ms 10.84ms 10.86ms -150V 0V 150V 300V -5A 0A 5A 10A -2V 0V 2V 4V 6V -10V -5V 0V 5V 10V V(d) Ix(q1:1) V(q6_c) V(g)

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図9.高速フーリエ変換(FFT)表示 また図 9 は図 7 の解析結果から,高 速フーリエ変換(FFT)を使って周波 数スペクトル表示を出した例である. 製品開発における不要輻射対策の検討 時に,高調波解析やノイズの伝搬経路 を探したい場合には便利な機能である. 7. 課題,問題点 以下の点はLTspice に限らず,SPICE 系の回路シミュレータ共通の問題である.  SPICE モデルの作成は容易でなく,入手性もあまり良くない.回路設計では様々なメー カーの電子部品を使い,他のSPICE モデルを取り込む機会は多いが,日本国内ではロー ム社やルネサス・エレクトロニクス社が多くのSPICE モデルを公開し始めているのに対 し,東芝セミコンダクター・ストレージ社(以下東芝と表記)はごく一部のデバイスを 公開しているのみに留まる.SPICE モデルを販売しているマルツパーツ館では,2013 年 3 月 7 日時点で東芝製ダイオードが 525 円~,東芝製 MOSFET は 2,100 円~,である.  他社用に暗号化された SPICE モデルは,LTspice で使用できない.SPICE モデルは暗号

化でき半導体ベンダー等が企業秘密にしたいパラメータを隠匿できる.例えば,シノプ シス社のHSPICE やテキサス・インスツルメンツ社の TINA-TI のモデルは使用できない.  素子の配置や伝送路形状などによる寄生容量の影響が大きくなる高周波回路では使えな い..ac 解析では 100MHz まで設定可能だが,実用的な範囲は直流~10MHz 程であろう.  回路規模が大きくなると,解析中は CPU 負荷率 100%となって解析時間が長くなり,収 束エラーが発生する頻度も高まる. 8. まとめ 本研修では,LTspice の基本的操作および解析方法を習得することができた.得られた解析波形 は現物と近く,非常に有用なソフトウェアであると判る.ただし,定常的に規模の大きい回路の解 析を行うには,解析専用のPC を別途用意しなければならない.また,回路シミュレータは全ての 条件やパラメータを取り込んだとしても,完全に再現することはできないため,解析結果を信じ過 ぎず設計の落としどころを探す,くらいの割り切った考え方も必要であろう. 参考文献等 1) 渋谷道雄;回路シミュレータ LTspice で学ぶ電子回路,オーム社(2011) 2) 堀邦晴;LTspiceⅣセミナー[初級編]説明資料,東京エレクトロンデバイス(2012) 3) トランジスタ技術 2011 年 6 月号,超入門!電子回路シミュレーション,CQ 出版社(2011) 4) 原田耕介(監修);スイッチング電源ハンドブック(第 2 版),日刊工業新聞社(2000) 5) 神崎康宏;電子回路シミュレータ LTspice 入門,CQ 出版社(2009) 6) 石井聡;電子回路設計のための電気/無線数学,CQ 出版社(2008) 7) 各種 Web 情報

図 4 .パワー MOSFET(R6010ANX) の I-V 特性解析結果 図 5.  R6010ANX の静特性 VGS=5V VGS=4V VGS=6V VGS=10V 図3.他社SPICEモデルの取り込み 表1.有用性の高い解析コマンド(抜粋) 4
図 9 .高速フーリエ変換( FFT )表示また図9は図7の解析結果から,高速フーリエ変換(FFT)を使って周波数スペクトル表示を出した例である.製品開発における不要輻射対策の検討時に,高調波解析やノイズの伝搬経路を探したい場合には便利な機能である. 7

参照

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