北畜会報 39 : 11-14, 1997
ウシ乳蛋白質の免疫化学的定量
平 山 博 樹 ・ 横
j賓 道 成東京農業大学生物産業学部,網走市 099-24
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Hiroki HIRA YAMA and Michinari
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OKOHAMA Laboratory of Animal Resources, Faculty of Bioindustry, Tokyo University of Agriculture, 196 Aza-Yasaka, AbashiriせlI099-24 キーワード:乳蛋白質多型,モノクローナル抗体, ELISA,カゼイン, βーラクトグロプリン Key words : Milk protein polymorphism, Monoclonal antibody, ELISA, Casein,β-lactoglobulin要 約
ウシ乳蛋白質の遺伝的多型は,乳牛の遺伝的改良の 際のマーカーとして利用できると考えられており,遺 伝的多型と乳蛋白質生産性の関連を検索するために, 乳蛋白質の免疫化学的定量を試みた.定量は,モノク ローナル抗体を用いたELISA法により行い,乳蛋白 質のうち αSlーカゼイン(Cn),β-Cn,x-Cn
およびβー ラクトクゃロプリン (Lg)についてそれぞれ個別に定量 を実施した.定量された蛋白質量は,各蛋白質におけ る遺伝的多型間で比較を行った.その結果, αSl-Cnで はBB型, β-CnてのはA2A2, A1 A2およびA2B型,
x CnではBB型, β-LgではAAおよびAB型の乳が, その他のものよりもそれぞれ成分量が高い結果となっ た 緒-
c:::t 牛乳中に含まれるカゼインやホエーといった蛋白質 は,食品としてのみならず,工業用など多岐にわたっ て利用されており,利用技術の向上にともない,今後 も乳蛋白質利用の場は拡大していくものと思われる (中江;1988).また乳蛋白質の持つ生理活性など,様々 な機能に関する研究も進められている(上野川ら; 1994) . このような需要や畜産の現状を考えると,蛋白質や 脂肪といった成分単位もしくは各蛋白質単位での改良 が必要となるが,そのひとつの方法として乳蛋白質の 遺伝的多型を指標とした乳牛改良があげられる.乳蛋 白質型と生産性の関係については多くの試験が行われ ており (GIBSON; 1990, MARZIALI andNG-KWAI-受 理 1997年 3月 14日 HANG; 1986),アメリカでは乳牛改良のための標識遺 伝子情報の提供が行われている(広瀬;1992). 本試験では,各種乳蛋白質成分量とそれぞれの遺伝 的多型との関連性を調査することを目的として,モノ クローナル抗体(mAb)を用いたELISA法による特異 的定量を行い,遺伝的多型間での比較を行った.
材料および方法
供試乳は,網走市卯原内地区の酪農家17戸から採集 し, 3,000rpmで20分間の遠心分離により脂肪および 爽雑物を除去後, -20o Cで凍結保存した.各乳蛋白質の 定量は,尿素加等電点電気泳動法(横j賓および平山; 1996)により乳蛋白質型を判定した後, α'Sl-Cn (BB 型 :48例, BC型 :16例),β-Cn (A1 A1型 :48例, A2 A2型 :48例, A1A2型 :48例, A1B型 :22例, A2 B型 :31例,A3
遺伝子を含むヘテロ型 8例),x-Cn
(AA型 :48例, BB型 :9例, AB型 :48例)およぴ β-Lg (AA型 :48例, BB型 :48例, AB型 :48例) について実施した. ELISA法は,捕捉抗体を用いず,固相に直接コー テ ィ シ グ さ れ た 抗 原 に 抗 乳 蛋 白 質mAb(横演ら; 1996)を反応させ,アルカリフォスファターゼで標識 された抗マウスIgG抗体を 2次抗体として検出した. 標準曲線の作成は,ウシ乳蛋白質標品 (α-CnC7891, β-Cn C6905,x-Cn
C0406,β-Lg L6879: SIGMA CHEMICAL CO.)を用いて行った.これら標品は, ケルダール法により測定した窒素量から蛋白含有率を 補正し,さらに精製が完全で、ないため目的蛋白質の含 有率を補正して標準抗原液として用いた.結果および考察
各乳成分(αSl-Cn,β-Cn,x-CnおよびβLg)に対-11-平山博樹・横j賓道成
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0.1 +-' × UJ α51・CnStandard curve Fig.1 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0 0 (EC 問 。 寸 )CO 一 ぢ Z 一 古 川 ︼。
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0 0 0 σヲ 1 . 1 ' ) 1' -Concentration (ng/ml) OF n u 0 0 0 0 m 凶 r、
σヲ Concentration (ng/ml) β-Lg Standard curve Fig.4 ]{-Cn Standard curve Fig.3Table 1 Relationship between cow milk protein polymorphism and amount of each component Extinction士S.E. (405nm) 0.503士0.02a N umber of samples examined Phenotype Loci 48 BB αS1・Cη 0.2962士0.0146b 16 BC 0.4025土0.0119b,c 48 A1Al 0.4963土0.0185a 48 A2 A2 0.4328土0.0155a,b,c 48 A1A2 0.3504土0.0083d 22 A1B β-Cn 0.4437::t0.01a,b 31 町 一 州 一 品 0.409::t0.0177 b,c 8 0.4114土0.0146a 48 0.5924土0.0717b 9 BB x-Cn 0.4986::t0.014 7c 48 AB 0.3207土0.0175a 48 AA 0.2325士0.0153b 48 BB β-Lg 0.2896土0.0133a 48 AB 0.4963::t0.0185, AIA2型0.4328土0.0155,A1 B型 0.3504土0.0083,A2 B型 0.4437士0.01お よ び
A3
遺 伝子を含むグループ0.409士0.0177となった.これら のうちA2
遺伝子を含むグループ,すなわちA2A2型, A1 A2型および、 A2B型は, 0.43以上で有意に高い結 果となった.]{-Cnは, A A型 0.4114土0.0146,BB型 0.5924土0.0717および AB型 0.4986士0.0147であっ た.](-Cnでは, 9例と例数は少ないものの BB型が最 も高い値を示し,次いでAB型,A A型という順でこれ -12-a, b, c, d: Values followed by the differ letter are significantly different at 1% level. する標準曲線は,405nmでの吸光度をもって作成した (図 1~ 4).α51-Cnで は や や 低 い 相 関 係 数 (r二 0.8707) となったが, βCn,]{-Cnおよび β-Lgでは r二 0.94以上となり,ほぼ直線関係にあった. 次に, α51-Cn,β-Cn,](-Cnおよび β-Lgについて それぞれ定量した結果(吸光度405nm)を示す(表 1). 偽 1-Cnでは, BB型 0.503土0.02, BC型 0.2962::t 0.0146となり BB型 が 有 意 に 高 い 結 果 と な っ た .β -Cnでは, A1A1型 0.4025士0.0119, A2 A2型ウシ乳蛋白質の免疫化学的定量 らの聞に有意な差が認められ
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遺伝子を含むグルー プで蛋白量が多い傾向にあった.ホエー蛋白質中のβ -Lgは, A A型 0.3207:
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0.0175, BB型 0.2325:
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0.0153お よ び AB型 0.2896:
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0.0133となり, A Aお よびAB型のグループと BB型 の 聞 に 有 意 な 差 が 検 出され,
A遺伝子を含むグループが蛋白量の多い傾向 にあった. 今回の試験結果では, αS1-Cnで BB型, β-Cnでは A2遺伝子を含む型, }(-Cnでは BB型, β-Lgでは A 遺伝子を含む型がそれぞれの成分蛋白質を多く含んで、 いた.これまでの報告の中で,このような各乳蛋白質 成分量と遺伝的変異の関係を調査したものはあまりみ られないが,総蛋白量および蛋白率などへの影響につ いては多くの研究がなされており (GIBSON; 1990, MARZIALI and N G-K w AI・HANG; 1986, NG-KwAI・HANG et al.; 1984),今回の結果はこれらと一致する ものであった.またこれらの報告で、は遺伝子頻度につ いても述べられているが,著者らも道東地域のホルス タイン種について遺伝子頻度を調査しており, αS1 Cη .B
,
βCn. A2,
}(-Cn. Bおよび、 β-Lg.A遺伝 子は,それぞれ0.982,0.620, 0.138および 0.341と なっていた(横漬および平山;1996). したがって,特 に遺伝子頻度の低い}(-Cn・B型および β-Lg.A型に ついては今後高い選抜効果が期待でき, β-Cn.A2型に ついてもその可能性があるものと思われた. 次に, EL1SA法により得た吸光度を,作成した回帰 式により蛋白量に変換した値と,参考値として既報の 値(祐;
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1981) を示した(表 2).これらを比較する と,参考値に対する EL1SAによる値は,約 1/2,000 ~1/10 程であった.これは,定量の手法が異なるため 単純に比較することはできないが,mAbを用いること で抗原中の一部を特異的にとらえたということや,立 体障害などにより完全な定量が行われていないことも 考えられた.したがって今後は,サンドイツチ法や抗 体のFab'部分を用いて定量を行った場合の検出感度 について検討する必要があると思われた.また, 4乳 蛋白質の構成比では,どちらの値とも α'S1-Cnが最も 多く,次いでβ-Cnとなり, }(-Cnもしくは β-Lgが最 も少なくなったが, EL1SA法による値は α'S1-Cn量が 顕著に高くなった.これについても,定量法もしくは mAb株による影響などについて今後試験する必要が あると思われた. 今回報告した抗乳蛋白質mAbによる免疫化学的定 量値は,標識遺伝子による選抜と併用することによっ て,乳牛改良への有効な'情報となり得るものと考えら れた.すなわち,総蛋白質生産量としてだけでなく個々 の成分蛋白質としての利用を考えた場合,それぞれの 生産量』情報を把握することが重要になり,乳蛋白質の 精製や多型判定などとも合わせ,抗乳蛋白質mAbは 有効なフ。ロープとなるものと思われる.謝 辞
本研究は平成7年度東京農業大学一般フ。ロジェクト 研究(課題番号79) の助成を受けて実施したものであ る.記して謝意を表する.また,本研究遂行にあたり 貴重な試料を提供していただいた,網走市乳牛検定組 合の根本恒夫氏および江口政憲氏ならびに網走市卯原 内地区の酪農家各位に心から深謝いたします.文 献
GIBSON,J
.
P. (1990) 1s there profit in a protein gene. HolsteinJ
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A. S. and K.F.NG-KwAI・HANG (1986)Effects of milk composition and genetic polymor-phism on coagulation properties of milk.
J
.
Dairy Sci., 69: 1793-1798. Table 2 Concentration of cow milk protein (mg/ml) Milk protein ELISA士S.E. αS1・Cn 1.5732士8.45X 10-2 (98.56) β-Cn 0.0189土3.54X 10 -4 (1.18) }(-Cn 0.0029士7.80X 10 -5 (0.18) β-Lg 0.0011
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3.83x
10-5 (0.07) ※: Sukegawa (1981) ( ): each content percentage to total milk protein. -13-Reference※ 15.75-19.25 (57.80) 6.65-9.80 (24.40) 2.40-4.50 (8.81) 2.45-4.20 (8.99)平山博樹・横j賓道成
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