佐賀大学医学部附属病院
肝臓内科
肝臓は体で一番大きな工場
②解毒・分解
③貯蔵
①合成
①合成って何?
食べたものは胃・腸で消化・吸収さ
れ、門脈という血管を通って肝臓に
運ばれます。運ばれた栄養素を原料
として体に必要なものにつくり変え
ます。
②解毒・分解って何?
体の中の老廃物や外から持ち込
まれたアルコールや薬を害のない
ものにします。
③貯蔵って何?
合成した栄養で、すぐに必要でない
分(糖質・脂質)を肝臓に貯めておく
ことです。
食事が取れない夜間の栄養補給は
肝臓に貯めておいた栄養が使われ
ています。
問題です
問1 夜寝る前にすこし食べたほうがいい 問2 食物繊維を摂って便秘を予防することが必要 問3 塩分は血圧が高くなければ控える必要はない 問4 肝硬変の人は安静第一である 問5 寒い季節なら生の魚(刺身など)を食べてもいい 問6 なるべく健康食品はとった方が良い 問7 (アミノレバンまたはへパンEDを飲まれている方のみ お答えください。) 肝臓病用の栄養剤(アミノレバンEN、ヘパンED)を 飲みはじめたら食事の量を変えなければならない肝硬変の原因
2008年6月 日本肝臓学会総会より肝硬変とは
肝
臓が
硬
く
変
化
したもの
炎症が続くと線維化が進み肝臓は
硬くなってきます。
急性肝炎 慢性肝炎 肝硬変 肝がん 感染
肝臓の線維化とは
F1 F2 F3 F4 肝癌 年間 0.5% 年間1.5% 年間 5% 年間 7%肝硬変の症状と治療法
初期には、特別な症状はありません。症
状のない肝硬変を
代償性
肝硬変と呼
び、症状のある肝硬変を
非代償性
肝硬
変といいます。
肝硬変の主な身体症状
足がむくむ 筋肉がおちる 脳症 疲れやすい・だるい こむらがえり 出血しやすい 腹水肝硬変にみられる自覚症状
全身症状 全身倦怠感,疲れ易い, 集中力の低下,発熱,体重減少, 黄疸 消化器・ 腹部症状 お腹の張り,腹部膨満感, 肝臓部の圧迫感,吐血,下血, 食欲低下,むかつき,便秘,下痢 その他 褐色尿,尿量の減少,下腿浮腫, 皮膚のかゆみ,不眠,腰痛, こむら返り,性欲の減退,出血傾向, 月経異常,乾燥症候群(目や口など)①合成
食べたものは胃・腸で消化・吸収さ
れ肝臓に運ばれます。運ばれた栄養
素を原料として体に必要なものにつ
くり変えます。
肝硬変になると・・・栄養が合成されにくくなり、アルブミ
ンなどのタンパク質やコレステロール
が減ってきます。
むくみ、腹水の原因
アルブミンが3.0g/dlより低くなると、水
分が血管から組織 にしみでてきます。
肝硬変の患者さんにみられる足のむくみ
や腹水は多くの場合、これが原因です。
②解毒・分解
体の中の老廃物や外から持ち込
まれたアルコールや薬を害のない
ものにします。
肝硬変になると・・・肝硬変では有害なアンモニアがうまく処
理できなくなり、血液中にアンモニアが
増えると肝性脳症の原因となります。
肝性脳症の原因
症状とその程度 軽 睡眠障害、多幸感、判断力の低下 眠りがち、羽ばたき振戦 ほとんど眠る、意識障害、暴れたりする 意識消失、昏睡 重特に便秘になるとアンモニアが増
えるため便秘に注意しましょう。
肝臓の機能が低下して、有害物質(アンモ
ニア)が除去できなくなり精神神経症状を
きたした状態。
③貯蔵
合成した栄養で、すぐに必要でない
分(糖質・脂質)を肝臓に貯めておく
ことです。
食事が取れない夜間の栄養補給は
肝臓に貯めておいた栄養が使われ
ています。
肝硬変になると・・・肝硬変になると栄養が貯めこめなくなり、
空腹時間が長いと栄養不良になります。
3大栄養素
タンパク質肝硬変での食事において3つの大切な栄養素があります。
それは・・・
タンパク質
・
糖質
・
脂質
エネルギーの元=車のガソリンに相当 ガソリン 身体の構造や働きを制御=車の車体・性能に相当 糖質・脂質 例えると・・・・肝硬変における蛋白質・エネ ルギー低栄養状態の頻度 森脇久隆:日本病態栄養学会雑誌, 3(1), 22, 2000
肝硬変患者における
タンパク質・エネルギー低栄養状態の頻度
肝硬変患者における
タンパク質・エネルギー低栄養状態の頻度
13
(12%)
13
13
(12%)
(12%)
14
(13%)
14
14
(13%)
(13%)
55
(50%)
55
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(50%)
(50%)
27
(25%)
27
27
(25%)
(25%)
症例数(%) (n=109) エ ネ ル ギ | 代 謝正常
異常
正常
異常
タンパク代謝肝硬変では、普通に食べていたら栄養不良になります
糖質・ 脂 質肝硬変のエネルギー不足!
肝硬変患者のエネルギー代謝動態
0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 肝硬変患者 健常人 0 ~ ~ ** (n=98) (n=20) REE/BMR 1 肝硬変患者 健常人 0 ~ ~ *** (n=98) (n=20) npRQ 田近 正洋ほか: 消化器科,26(5), 526,1998 **p<0.01,***p<0.001 by Student’s t-test 対象:2cm以上の肝癌を合併していない肝硬変患者 98名と健常人 20名 方法:燃焼比率は、分時酸素消費量、分時二酸化炭素産生量、尿中総窒素より算出 REE(resting expenditure:安静時エネルギー消費量) BMR(basal metabolic rate: 基礎代謝量)npRQ(non-protein respiratory quotient: 非蛋白呼吸商)
Mean±S.D. 肝硬変患者は消 費エネルギーが多 い
肝硬変の重症度分類別の
エネルギー基質の燃焼比率
16.0 13.0 13.2 14.6 25.7 39.7 48.2 59.0 58.3 47.3 38.6 26.4 0% 50% 100% 健常人(n=20) m-ChildA (n=20) m-ChildB (n=51) m-ChildC (n=27) 糖質 脂肪 蛋白質 * *** *** *** *** **p<0.01,***p<0.001 by Student’s t-test 田近 正洋ほか: 消化器科、26(5) ,526,1998 対象:2cm以上の肝癌を合併していない肝硬変患者 98名と健常人 20名 方法:燃焼比率は、分時酸素消費量、分時二酸化炭素産生量、尿中総窒素より算出 m:modified-Pughの肝硬変の重症度分類による 肝機能が悪くな るほど,糖質がエ ネルギーとして利 用されなくなる夜間のエネルギーは
肝臓から補ってます。
肝硬変では栄養が貯
めこめないため夜間
は飢餓状態(エネル
ギー不足)!
肝硬変においては、空腹がエネル
ギー産生に悪影響を与える。
頻回食、とくに眠前補食(LES)が
必要である。
分割食に対する世界の動向
z 肝硬変患者では就寝前の軽食摂取を含めて一日4~6 回に食事を分けて摂取すべきである。(A.S.P.E.N. Broad of Directors and The Clinical Guidelines Task Force: Guidelines for the use of parenteral and enteral nutrition in adult and pediatric patients, JPEN,26,(Sup),65-67;2002)
z 栄養障害のある肝硬変患者は、グリコーゲンの貯蔵 能が減少しているため、6時間以上の絶食をさせて はいけない。 肝硬変では就寝前の炭水化物を中心とした軽食摂取 を含めて一日4~7回の少量の食事を摂取すること が奨められる。
(ESPEN guidelines for nutrition in liver diesease and transplantation, Clin. Nutr.,16,43-55;1997 )