総
説
出産の振り返りに関する文献検討
A literature review on postnatal debriefing
鈴 木 由美子(Yumiko SUZUKI)
*1大久保 功 子(Noriko OKUBO)
*2 抄 録 目 的 本研究は,出産の振り返りに関する国内外の文献を検討することによって,研究の動向を明らかに し,国内における実践と研究への示唆を得ることを目的とした。 方 法 文献の検索は,出産体験,出産,産後,想起,振り返り,バースレビュー,Childbirth,After birth, Postnatal,Postpartum,Debriefing,Midwife-led counseling をキーワードとし,医学中央雑誌 Web 版, CINAHL,PubMed,を用いて行った。検索の範囲は,1980年から2016年6月までとした。対象文献は, 産後の女性に対する出産の振り返りについて論じられている原著論文とし,結果はGarrardのマトリッ クス方式を用いてまとめた。 結 果 18件の文献が抽出された。出産の振り返りに関する研究の動向は国内と国外で異なっていた。国内 では出産の振り返りを実施した結果を記述した質的研究を経て,その効果を検証した仮説検証型研究が 行われていた。一方,国外では出産の振り返りを実施した結果について記述した質的研究と,介入の効 果を検証した仮説検証型研究が行われていたが,出産の振り返りという実践の根拠が明確にされていな いことが問題になると,緊急事態ストレスデブリーフィングを理論的根拠とした介入研究が中心と なっていった。ところが,産後に限らずルーチンで行われる一度限りの振り返りは精神的健康を害する 可能性があることがコクランレビューによって示されると,介入を受けた女性の経験を明らかにするた めの質的研究や実践の実態調査に対する関心が高まっていった。これにより,すべての女性を対象に介 入することは適切ではないこと,介入時期は女性の状況に応じて検討する必要があることなどが明らか にされ,これまでの実践は女性のニーズを反映したものではなかった可能性が示された。それ以降,こ うした研究結果を受け継ぎ女性のニーズに即した実践の開発に向けた仮説検証型の研究が行われてい た。 結 論 国内の実践においては,ルーチンで行われる出産の振り返りを見直していく必要がある。また,女性 が必要としている実践を提供していくためには,まず出産の振り返りに関する女性のニーズならびに現 2016年10月21日受付 2017 年10月4日採用 2018年4月10日早期公開*1東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科博士課程(Doctor Course, Graduate School of Health Care Science, Tokyo Medical and Dental
University)
行の実践の実態調査が必要である。
キーワード:出産の振り返り,バースレビュー,文献検討
Abstract Purpose
This study assessed research trends in postnatal debriefing to identify implications for future practice and re-search.
Method
A literature search of the Japan Medical Abstracts Society, CINAHL, and PubMed databases was conducted using the following keywords: Childbirth, After-birth, Postnatal, Postpartum, Debriefing, and Midwife-led counseling, in-cluding all studies published between 1980 and 2016. We only selected original articles and identified studies on postnatal debriefing offered to postpartum women. We used Garrard's matrix method to describe the results. Results
Eighteen articles were selected for the analysis. Differences were observed in the trends in postnatal debriefing studies in Japan and foreign countries. Japanese studies began by using a qualitative approach for postnatal debriefing, describing the effects of intervention. Subsequently, further studies also delved into hypothesis testing assessing the effects of postnatal debriefing. In contrast, foreign studies on postnatal debriefing initially included qualitative research to describe the effects of intervention and hypothesis testing to evaluate the effects of intervention. In cases where the researchers indicated a lack of robust evidence on postnatal debriefing as a problem, an increase in the hypothesis testing approach using a Critical Incident Stress Debriefing to evaluate the intervention was observed. However, a Cochrane systematic review revealed no evidence of benefits from a single debriefing session and indicated some potential for harm, as researchers focused on surveys to research current practice and qualitative studies to explore women's experience of postnatal debriefing. It was revealed that intervention was not appropriate for all women and that the timing of the intervention needed to be examined while considering individual situations. Possibly, the past practices did not reflect women's needs. Subsequently, a study utilizing hypothesis testing was conducted based on past studies and was aimed at development of the practice of considering women's needs.
Conclusion
In Japan, the routine of performing postnatal debriefing needs to be reevaluated. To provide appropriate inter-vention required by women, it is necessary to identify women's postpartum needs for postnatal debriefing and inves-tigate the practice that needs to be performed.
Key words: postnatal debriefing, birth review, literature review
Ⅰ.緒 言
産後の女性に対する出産の振り返りには,肯定的な 出産体験をもたらす効果や(中野,2011),産後の精 神 的 健 康 を 高 め る 効 果 が あ る と 報 告 さ れ て い る (Lavender, et al., 1998)。それゆえ,出産の振り返り は,国内のみならず国外においても重要な看護実践と して位置づけられてきた(Baxter, et al., 2014;荻田 他,2013)。しかし,出産の振り返りには,情緒的な 健 康 を 害 す る 可 能 性 が あ る と も 指 摘 さ れ て い る (Small, et al., 2000)。 一方,近年,看護ではエビデンスに基づく実践が推 奨されている。けれども,エビデンスとなる研究結果 は,前述したように矛盾していることもある。実践家 や研究者はこうした研究結果をどのように解釈し,エ ビデンスとして活用していけばよいのだろうか。 Kitson(1997)は,看護のエビデンスとしては,それ が構築された概念枠組みの影響を考慮しなければ不十 分であると指摘している。また,Marks-Maran(1999) は,実践の場で利用できるエビデンスは,個別の状況 を捉えてないランダム化比較試験では,見つけること ができないとも述べている。 したがって,得られた研究結果をエビデンスとし て,実践の場あるいは研究において利用していくため には,まず,出産の振り返りに関する量的・質的研究 の研究結果をそれぞれの概念枠組みや背景とともに整 理する必要がある。そこで,本研究では,出産の振り 返りに関する研究の動向を,それぞれの理論的基盤や 背景といったその研究の文脈を踏まえながら明らかに することとした。次いで,研究の動向を概観しながら,日本における実践上の課題と今後の研究の展望に ついて考察した。なお,本研究において,出産の振り 返りとは産後の女性が助産師とともに出産を振り返る ことと定義した。
Ⅱ.方 法
文献の検索は,2016 年 6 月に医学中央雑誌 Web 版, CINAHL,PubMed の学術論文データベースを用いて 行った。キーワードは,出産体験,出産,産後,想 起, 振り 返り, バース レビュ ー, Childbirth,After birth, Postnatal, Postpartum, Debriefing, Midwife-led counselingとした。検索の範囲は,出産の振り返 りが着目されるようになった 1980 年から 2016 年 6 月 までとした。対象文献は原著論文のみとし,紀要,会 議録,地方学会誌は除外し,産後の女性に対する出産 の振り返りについて論じられている文献のみを抽出し た。文献の使用言語は英語および日本語とした。検討 項目は,研究の目的,方法(対象者,適応基準と除外 基準,介入内容,実施者,時期と場所,回数と時間), 評価(測定尺度),結果(効果)である。これらに関す る記述を文献のなかから抽出し,マトリックス方式 (Garrard, 2010/2012)を用いて結果をまとめた。Ⅲ.結 果
文献検索の結果,医学中央雑誌 162 件,CINAHL64 件,Pub Med71 件の計 297 文献が抽出された。まず, 紀要,会議録,地方学会誌36件を除外し,重複してい た英文献15件,専門家の意見7件,レビュー文献17件 を除外した。続いて,タイトルと要旨を精査し,産後 の女性に対する出産の振り返りについて論じられてい ない 204 文献を除外した。その結果,医学中央雑誌 4 件,CINAHL8 件,PubMed6 件,合計 18件の対象文献 が抽出された(図1)。国別でみると,日本 4件,イギ リス9件,オーストラリア5件であった。これらには, 出産の振り返りの効果を検証した研究,出産の振り返 りの実態を調査した研究,出産の振り返りを実施した 結果について記述した研究があった。以下にその結果 を記述し,研究の概要は表に示した(表1,2,3)。 1.出産の振り返りの効果を検証した研究 出産の振り返りの効果を検証した研究は 9 件あり, ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:以下 RCT)が 6 件, RCT 後 の フ ォ ロ ー ア ッ プ が 1 件 (RCT6 件中の 1 件である Small らのフォローアップ), 非ラン ダム化比 較試験(Non-Randomized Controlled Trial:以下N-RCT)が2件であった。抽出された研究 に関して,介入の目的と方法,対象者の選定,実施 者,実施時期と回数,測定用具と結果について述べ る。 1)介入の目的と方法 助産師が,産後の女性に対する出産の振り返りを実 施する主な目的は,産後の精神的な健康問題の予防 (詳細は表 1 参照),将来の出産に対する恐怖の軽減, 出産体験を統合し肯定的に意味づけることであった。 以下,目的別に介入方法を述べていく。 (1)産後の精神的な健康問題の予防を目的とした研 究
6件の研究があった(Gamble, et al., 2005;Lavender, et al., 1998;Meades, et al., 2011;Priest, et al., 2003; Selkirk, et al., 2006;Small, et al., 2000)。このうち 3 件の研究が構造化された介入を行っていた(Gamble, et al., 2005; Priest, et al., 2003; Selkirk, et al., 2006)。Gamble ら(2005)は,出産する女性と助産師 のフォーカスグループインタビューに関する研究を基 に, 緊 急 事 態 ス ト レ ス デ ブ リ ー フ ィ ン グ(Critical Incident Stress Debriefing:以下 CISD)の要素を組み 込み,①治療的人間関係,②相手の認識を受け入れ一 緒に取り組む,感情の表出を支える,③女性の思い違 いを明確にし,情報を提供する,④気もちと行動をつ ࢹ࣮ࢱ࣮࣋ࢫ᳨⣴ ་Ꮫ୰ኸ㞧ㄅ162௳ࠊCINAHL64௳ࠊPub Med71௳ 㸦n=297㸧 (n=222) ་Ꮫ୰ኸ㞧ㄅ126௳ CINAHL45௳ Pub Med51௳ 㝖እ(n=204) せ᪨ࣈࢫࢺࣛࢡࢺ⢭ᰝ ་Ꮫ୰ኸ㞧ㄅ122௳ CINAHL37௳ Pub Med45௳ ࣭ኵ፬ࡼࡿฟ⏘ࡢࡾ㏉ࡾ㛵ࡍࡿᩥ⊩ ࣭ฟ⏘ࡢࡾ㏉ࡾࢆᨭࡋࡓຓ⏘ᖌ㛵ࡍࡿᩥ⊩ (n=18) ་Ꮫ୰ኸ㞧ㄅ4௳ CINAHL8௳ Pub Med6௳ 㝖እ(n=75) ⣖せ࣭㆟㘓࣭ ᆅ᪉Ꮫㄅ36௳ 㔜」ᩥ⊩15௳ ࣞࣅ࣮ࣗᩥ⊩17௳ ᑓ㛛ᐙࡢពぢ7௳ ࠙㝖እࡋࡓᩥ⊩ࠚ 図1 文献検索のフローチャート
表 1 出 産 の 振 り 返 りの 効 果 を 検 証 した 研 究 ( 年 代 順 ) 著 者 /年 /国 目的 対 象 者 適 応 基 準 除 外 基 準 介 入 実 施 者 時 期 /場 所 回 数 / 時 間 測 定 用 具 主 な 結 果 ランダム 化 比 較 試 験 Lavender & Walkinshaw (1998 ); イギリス 介 入 に よって , 産 後 うつ や 不 安 を 低 減 できるかど うか 検 証 する 介 入 群 : 58 人 対 照 群 : 56 人 初 産 婦 /経 腟 分 娩 /単 胎 / 頭 位 /正 期 産 III 度 裂 傷 /胎 盤 用 手 剥 離 / NICU /ICU 介 入 群 : 対 話 的 インタビュー 対 照 群 : 通 常 のケア 助 産 師 退 院 前 / 病 院 で 実 施 1 回 / 30 ~ 120 分 ① HADS 産 後 3 週 間 に 測 定 ・ 介 入 群 の 不 安( p <0.0001 )・うつ ( p<0.0001 ) の 高 得 点 者 の 割 合 が 有 意 に 低 かっ た Small, et al. ( 2000 ) ; オーストラリア 介 入 に よって , 産 後 うつ の 発 症 率 を 低 減 できるか どうか 検 証 する 介 入 群 : 467 人 対 照 群 : 450 人 操 作 的 分 娩 ( 帝 王 切 開 / 鉗 子 分 娩 /吸 引 分 娩 ) 1500g 以下 の 出 産 /死 産 /英 語 が 話 せない /医 師 の 指 示 /母 ま たは 児 の 具 合 が 悪 い 場 合 介 入 群 : 出 産 について 自 由 に 語 る 対 照 群 : 標 準 的 なケアとリーフ レットの 配 布 研 究 者 2 人 ( 助 産 師 ) 退 院 前 / 病 院 で 実 施 1 回 / 60 分 ① EPDS ② SF-36 産 後 6ヵ 月 で 測 定 ・ EPDS : 有 意 差 なし ・ SF36 : 日 常 役 割 機 能( 精 神 )の 項 目 におい て のみ , 有 意 差 があった 。 介 入 群 が 低 かっ た ( t= − 2 .31 , CI95% − 10.48 to − 0.84 ) Small, et al. ( 2006 ) ; オーストラリア 介 入 に 長 期 的 な 効 果 があ るのか どうか 評 価 する 介 入 群 : 264 人 対 照 群 : 270 人 2000 年 に 行 われた RCT のフォローアップ Small ( 2000 )を 参 照 ① EPDS ② SF-36 前 回 の 測 定 から 4~ 6 年 経 過 後 に 測 定 ・ EPDS : 有 意 差 なし ・ SF-36 : 有 意 差 なし Priest, et al. ( 2003 ) ; オーストラリア 介 入 に よって , 産 後 うつ , PTSD の 発 症 率 を 低 減 でき るかど うか 検 証 する 介 入 群 : 875 人 対 照 群 : 870 人 35 週 以上 の 出 産 /18 歳 以 上 /英 語 が 話 せる 出 産 時 に 精 神科 の 治 療 を 受 けてい る /NICU 介 入 群 : CISD に 基 づく 介 入 対 照 群 : 標 準 的 な 産 後 ケア * フォ ローアップ : 必 要 に 応 じて 心 理 士 によるインタビューあり 訓 練 を 受 けた 助 産 師 産 後 72 時 間 以 内 / 病 院 で 実 施 1 回 / 15 ~ 60 分 ① IES ② EP DS 産 後 , 2, 6, 12 ヵ 月 で 測 定 ・ IES : 有 意 差 なし ・ EPDS : 有 意 差 なし Kershaw, et al. ( 2005 ) ; イギリス 介 入 に よって , 将 来 の 出 産 に 対 する 恐怖 を 低 減 で きるか どうか 検 証 する 介 入 群 : 161 人 対 照 群 : 158 人 初 産 婦 /操 作 的 分 娩 /英 語 が 話 せる 死 産 /新 生 児 死 亡 /ICU / NICU 介 入 群 : CISD に 基 づく 介 入 対 照 群 : 標 準 的 な 産 後 ケア 訓 練 を 受 けた 地域 の 助 産 師 ① 産 後 10 日 目 ② 10 週 後 自 宅 で 実 施 2 回 ① WDEQ ② IES 産 後 10 日 , 10 週 , 20 週 で 測 定 ・ WDEQ : 有 意 差 なし ・ IES : 有 意 差 なし Gamble, et al. ( 2005 ) ; オーストラリア 産 後 , PTSD 発 症 のリスク の 高 い 褥 婦 への 介 入 の 効 果 を 検 証 する 介 入 群 : 50 人 対 照 群 : 53 人 DSM-IV (PTSD )によ りスクリー ニング /英 語 が 話 せる 死 産 /流 産 / 18 歳 未 満 介 入 群 : 2 回 の 介 入 ① カウ ンセリング ( CISD の 要 素 を 含 む ) ② 電 話 によるカウンセリング 対 照 群 : 標 準 的 な 産 後 ケア 助 産 師 ① 産 後 72 時 間 以 内 /病 院 ② 産 後 4-6 週 / 自 宅 2 回 / 40 ~ 60 分 ① MINI-PTSD ② EPDS ③ DASS-21 ④ MSSS 産 後 4-6 週 と 産 後 3ヵ 月 に 測 定 ・ PTSD の 基 準 に 該 当 する 女 性 の 割 合 : 差 なし ・ 産 後 3ヵ 月 の 測 定 時 のみ , トラウマ 症 状 ( p<0.05 )と , EPDS 高 得 点 者( EPDS>12 )の 割 合( p<0.05 )に , 有 意 差 あり 。 介 入 群 が 低 かった 。その 他 は 有 意 差 なし Selkirk, et al. ( 2006 ) ; オーストラリア 介 入 が , 産 後 の 精 神 的 健 康 に 影 響 を 与 えるかどう かを 検 証 する n=149 人 ( 詳 細 な 記 述 なし ) 介 入 群 : 構 造 化 された 介 入 ( 院 内 のプロトコールと 振 り 返 りマ ニュア ルに 準 じて 実 施 。 CISD に 準 じてい ると 考 えられるが 理 論 的 根 拠 につ いて 記 述 なし ) 対 照 群 : 標 準 的 な 産 後 ケア 介 入 のために 雇 用 された 助 産 師 産 後 3 日 以 内 / 病 院 で 実 施 1 回 / 30 ~ 60 分 ① SCL90-R ② DAS ③ STAI ④ PSI ⑤ FAD ⑥ EPDS ⑦ POBS ⑧ IES ⑨ IIS 妊 娠 28 週 : ① ②③⑥ 産 後 1~ 2 日 : ⑦⑨ 産 後 1ヵ 月 : ③⑥⑦⑧ 産 後 3ヵ 月 : ②③④⑥⑦ ⑧ 介 入 群 のみ ⑤ ・ EPDS : 有 意 差 なし ・ STAI : 有 意 差 なし ・ POBS : 有 意 差 なし ・ DAS : 有 意 差 なし ・ IES : 有 意 差 なし ・ PSI : 有 意 差 なし 非 ランダム 化 比 較 試 験 Meades, e t al. ( 2011 ) ; イギリス 希 望 する 女 性 を 対 象 とし た 介 入 に , 産 後 うつと PTSD の 発 症 率 を 低 減 する 効 果 が あるかどうか 検 証 する 介 入 群 : 46 人 対 照 群 : 34 人 DSM-IV (PTSD )によ りスクリー ニング 18 歳 未 満 /英 語 が 話 せな い 介 入 群 : 出 産 について 自 由 に 語 る → 介 入 を 希 望 した 女 性 のみ 対 照 群 : 標 準 的 な 産 後 ケア → 介 入 を 希 望 しな かった 女 性 カウンセリン グ, または 認 知 行 動 療 法 を 学 んだ 助 産 師 のどちらか 平 均 産 後 16 週 ( 産 後 1.3 ~ 72.2 ヵ 月 ) 場 所 : 不 明 1 回 / 60 ~ 90 分 ① EPDS ② PSS-SR ③ PTCI 介 入 群 : 介 入 前 と 介 入 の 1ヵ 月 後 対 照 群 : 産 後 約 6 週 後 と 約 10 週 後 ・ 両 群 の 女 性 たちの PTSD の 症 状 は 時 間 とと もに 軽 減 し てしたが , より 軽 減 していたの は 介 入 群 の 対 象 者 であった ( p<0.05 ) ・ EPDS : 有 意 差 なし 中 野 美 佳 ( 2011 ) ; 日 本 介 入 が , 肯 定 的 出 産 体 験 をもた らすかどうか , そ の 効 果 を 検 証 する 介 入 群 : 30 人 対 照 群 : 30 人 経 膣 分 娩( 吸 引 分 娩 含 む ) /日 本 語 が 話 せる 介 入 群 : 面 接( 看 護 指 針 を 作 成 ) 対 照 群 : 記 載 なし 研 究 者 ( 助 産 師 ) 産 褥 2 日 以 内 / 病 院 で 実 施 1 回 / 50 ~ 140 分 ① 出 産 態 度 の 自 己 評 価 ② 出 産 体 験 のとらえ 方 ③ 出 産 体 験 の 満 足 度 ④ 自 己 概 念 妊 娠 37 週 以 降 ①② 分 娩 後( 24 時 間 以 内 )①②③④ 退 院 前( 産 褥 4~ 5 日 目 /介 入 後 )①②③④ ・ 出 産 態 度 の 自 己 評 価 : 介 入 後 は 介 入 群 の 方 が 有 意 に 高 かった ・ 出 産 体 験 のとらえ 方 : 有 意 差 なし ・ 出 産 体 験 に 対 する 満 足 感 : 有 意 差 なし 介 入 群 は 介 入 後 に 有 意 に 高 くなっ ていた ・ 自 己 概 念 : 両 群 間 に 有 意 差 なし 介 入 群 は 介 入 後 に 有 意 に 高 くなっ ていた Notes. CI, Confidential Interval ; DAS, Dyadic Adjustment Scale ; DASS-21, Depres sion Anxiety and Stress Scale 21 ; DSM-IV, Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders ; EPDS, Edinburgh Postnatal Depression Scale ; FAD, Feedback after debriefing questionnaire ; HADS, Hospital Anxiety and Depression Scale ; IES, Impact of Event Scale ; IIS, Intrapartum intervention scale ; MASS, Maternity Social Support Scale ; MINI-PTSD, Mini-International Neuropsychiatric Interview-Post-Traumatic Stress Disorder ; POBS, Percept ion of Birth Scale ; PSI, parenting stress index short form ; PTCI, Posttraumatic Cognitions Inventory ; PSS-SR, PTSD Symptom Scale-Self Report ; SATI, State-Trait Anxiety Inventory ; SCL90-R, Symptom Check List 90-R ; SF-36, MOS 36-Item Short-Form He alth Survey ; WDEQ, Wijma Delivery Expectanc y /Experienc e Quest ionnaire
表 2 出 産 の 振 り 返 りの 実 態 を 調 査 した 研 究 著 者 /年 /国 目的 対 象 方 法 と 評 価 主 な 結 果 Steel & Beadle., ( 20 03 ); イギリ ス 出 産 の 振 り 返 りの 定 義 と 目的 を 調 査 する こと 46 施 設 ・ 文 献 検 討 によっ て 出 産 の 振 り 返 りを 定 義 した 。 ・ 質 問 紙 は , 研 究 者 が 作 成 した 出 産 の 振 り 返 りの 定 義 に 基 づき 作 成 した。 ・イギリスの 2 つの 地域 を 無 作 為 に 抽 出 した 後 , その 地域 にある 46 のすべての 産 科 施 設 に 質 問 紙 を 送 付 し た。 ・ 回 収 率 は 93% ( n=43 )。 88% の 施 設 が 出 産 体 験 について 語 る 機 会 を 女 性 に 提 供 していた。 ・ 出 産 の 振 り 返 りは 以下 の 3 種 類 に 分 類 された 。 提 供 されているサービス は , 施 設 によって 異 なってい た。 A : 構 造 化 された 出 産 の 振 り 返 り( n=6 : 14% ) B : A のように 構 造 化 されていない 。 通 常 の 産 後 ケアに 属 する 。( n=12 : 28% ) C : サービスの 定 義 が 多 様( n=25 : 58% ) Ayers, et al., ( 20 06 ); イギリ ス 出 産 の 振 り 返 りの 内 容 を 調 査 する こと 93 施 設 ・ 困 難 な 出 産 を 体 験 した 女 性 への 産 後 サービス についての 実 態 を 調 査 した 。 ・イギリスの 4 分 の 1 にあたる 病 院 を 無 作 為 に 抽 出 し , 電 話( 90% )と 郵送 ( 10% )での 調 査 を 行 った。 ( この 研 究 では , 困 難 な 出 産 についての 定 義 はされてい なかった。 ) ・ 質 問 内 容 : サー ビス 実 施 の 有 無 , 具 体 的 なサ ービスの 内 容 , サービスの 評 価 について ・ 71 施 設 が 調 査 に 参 加 した。 困 難 な 出 産 を 体 験 した 女 性 に 対 してサービス を 提 供 していた 病 院 は 94% で あった が , 過 去 の 研 究 結 果 を 基 に 提 供 されているサービスは 5% であった。 ・ほとん どのサービスが 助 産 師 ある いは 医 師 によって 提 供 されて いたが , カウンセラーや 臨 床 心 理 士 によっ て 提 供 されていた 施 設( 23% )もあった。 表 3 出 産 の 振 り 返 りを 実 施 した 結 果 について 記 述 した 研 究 著 者 /年 /国 目的 対 象 方 法 と 評 価 主 な 結 果 和 田 サヨ 子 ら ( 1986 ); 日 本 出 産 体 験 の 想 起 によって , 分 娩 期 の 産 婦 の 喪 失 体 験 の 性 質 と 関 連 因 子 を 探 究 すること 36 人 初 産 婦 : 16 人 経 産 婦 : 20 人 自 然 分 娩 : 23 人 処 置 分 娩 : 13 人 分 娩 経 過 中 の 産 婦 の 様 子 や 周 りの 状 況 を 観 察 するために , 出 産 中 の 産 婦 の 表 情 や 動 作 をビ デオ に 録 画 した。また , 産 婦 の 喪 失 体 験 のレベルを 測 定 する ために , 感 情 を 自 作 の 評 定 尺 度 に よって 測 定 した。 出 産 の 振 り 返 りでは , 研 究 者 が , 産 褥 3 日 以 内 に 出 産 に 関 する 気 持 ちや 妊 娠 から 出 産 に 至 る 出 来 事 に ついて 語 ることを 促 した。 語 りは 録 音 した 後 データ 化 し , その 内 容 を 質 的 に 分 析 した。 ・ 出 産 過 程 にお いて 喪 失 反 応 に 影 響 を 及 ぼし た 要 因 内 的 要 因 : 恐 れ , 罪 悪 感 , 制 御 喪 失 , 予 想 と 現 実 の 不一 致 , 産 婦 によ る 事 象 の 否 定 的 解 釈 外 的 要 因 : 処 置 産 , 医 療 従 事 者 による 自 尊 心 を 傷 つけられる 言 動 , 身 体 的 不 快 感 その 他 : 児 の 外 観 に 関 する 現 実 と 予 想 の 不一 致 など ・ 想 起 によって , 喪 失 感 情 をもっていた 女 性 の 94% に 解 放 感 がもたらされた。 東 野 妙 子 ら ( 2005 ); 日 本 出 産 の 振 り 返 りの 意 義 を 確 認 すること 25 人( 経 腟 分 娩 のみ ) 初 産 婦 : 13 人 経 産 婦 : 12 人 産 褥 3 日 以 内 に 陣 痛 体 験 に 焦 点 を 当 てた 出 産 の 振 り 返 りを 実 施 した。 出 産 の 振 り 返 りの 内 容 をそ の 場 で 記 録 し , これらの 記 録 について , 女 性 が 陣 痛 体 験 をどのように 受 け 止 めてい るの か , 出 産 の 振 り 返 りによって どのように 受 け 止 めが 変 化 したのかに 着 目 しながら 分 析 を 行 った。 ・ 陣 痛 体 験 をほ ぼ 否 定 的 に 受 け 止 めていた 褥 婦 が , 出 産 の 振 り 返 りによ り 肯 定 的 な 受 け 止 め に 変 化 したの が 11 事 例 にみられた。 ・「 自 分 の 体 験 を 確 認 できた」 「 納 得 で きた」 など ,「 振 り 返 り」 の 意 義 を 示 唆 したのが 11 事 例 に みられた。 東 野 妙 子 ら ( 2006 ); 日 本 グループに よる 出 産 の 振 り 返 りの 効 果 を 確 認 する こと 34 人 初 産 婦 : 17 人 経 産 婦 : 17 人 経 膣 分 娩 : 31 人 帝 王 切 開 : 3 人 当 該 施 設 で 勤務 している 研 究 者 が , グループ ( 1 グル ープ 2~ 8 名 )で 出 産 体 験 を 自 由 に 語 る 機 会 を 褥 婦 に 提 供 した。 実 施 時 期 は , 経 膣 分 娩 の 場 合 は 産 褥 4 日 目 , 帝 王 切 開 の 場 合 は 産 褥 8 日 目 であっ た。 出 産 の 振 り 返 りの 実 施 中 に , 他 の 研 究 者 1 名 が 参 加 観 察 法 を 用 いて 振 り 返 りの 状 況 を 把 握 し 筆 記 した。 介 入 後 , 振 り 返 りの 場 と 振 り 返 り 後 の 出 産 体 験 の 受 け 止 めに ついて 質 問 紙 調 査 を 行 い , 結 果 を 単 純 集 計 した。 参 加 した 感 想 についての 自 由 記 述 の 内 容 は 意 味 内 容 の 類 似 性 に 基 づき , 参 加 観 察 で 得 たデータを 参 考 に 分 析 した。 ・ 91% の 女 性 が「 自 分 を 理 解 して くれる」 ,「 自 分 を 同 一 化 できるようなグループ」 と 受 けとめ ており , 安 心 感 と 自 己 開 示 とカタルシス を 可 能 にした。 ・ 対 象 者 全 員 が ,「 自 分 の 出 産 はこれでい いのだ」 と 受 け 止 めた。 Allen. (1999 ); イギ リス 分 娩 様 式 と 心 理 的 アウトカムの 関 連 を 評 価 するこ とと , 出 産 体 験 を 語 った 経 験 の 有 無 とそ の 感 想 について 調 査 する こと 61 人 経 膣 分 娩 : 35 人 帝 王 切 開 分 娩 : 13 人 鉗 子 分 娩 : 4 人 吸 引 分 娩 : 6 人 質 問 紙 調 査 を 2 回 行 った。 1 回 目( 産 後 早 期 ) ① 痛 みの 評 価( MQP ) ② 出 産 に 対 する 受 け 止 め( POBS ) ③ 研 究 者 が 作 成 した 質 問 紙 調 査 2 回 目( 産 後 4 週 間 ) ① 心 的 外 傷 後 ストレス 症 状( IES ) ② うつ ( EPDS ) ③ 痛 みの 評 価( MQP ) ④ 研 究 者 が 作 成 した 質 問 紙 調 査 ・ 分 娩 形式 と IES ・ EPDS ・ MQP ・ POBS との 関 連 はなかった。 ・ IES : 12 名( 21% )の 女 性 が , 13 点 以上 であった。 ・ EPDS : 7 名( 12% )の 女 性 が , 14 点 あるいはそれ 以上 であった。 ・ IES /EPDS のスコアが 高 い 女 性 は , 出 産 経 験 におけるネガティ ヴな 部 分 を 共 有 することを 望 んでいた。 一 方 , スコアが 低 い 女 性 は , ポジティヴな 部 分 を 共 有 することを 望 んでいた。 ・ 出 産 について 語 る 機 会 は 有 益 だと 感 じて いた 女 性 , よくも 悪 くもない と 感 じていた 女 性 , 有 益 でないと 感 じていた 女 性 がいた。 Inglis. (2002 ); イギ リス Birth Afterthoughts Service の 効 果 を 調 査 すること 46 人 過 去 6ヵ 月 間 に サービスを 利 用 した 女 性 質 問 紙 調 査 の 後 , 同 意 が 得 られた 女 性 23 名 に 対 して , 電 話 インタビュー が 行 われた。 ① 質 問 紙 調 査 ② 電 話 でのインタビ ュー ⇒ インタビューデータは , インタビュアーによって 記 録 された。 ( キーワード , 重 要 なポイント )内 容 分 析 を 行 った。 ( 質 問 紙 の 具 体 的 な 内 容 や 回 収 率 については 記 載 されていな かった。 ) ・ 女 性 は 出 産 から 平 均 12 ヵ 月 でサ ービスを 利 用 していた。 ・ 女 性 は 出 産 に 伴 う 処 置 やケアについて 専 門 家 に 確 認 したいというニー ズをもっていた。 ・ 女 性 は 将 来 の 妊 娠 のために 出 産 で 経 験 し たことを 理 解 したいというニ ーズをもっていた。 ( 量 的 なデ ータの 分 析 結 果 についての 記 載 はなかった。 ) Baxter, et al., ( 2003 ); イギ リス リエゾン 助 産 師 による 出 産 の 振 り 返 り の 効 果 を 調 査 すること 232 人 ( 質 問 紙 の 回 収 率 , 有 効 回 答 率 の 記 載 はなし ) リエ ゾン 助 産 師 による 産 後 サービ スを 受 けた 女 性 たちに , サ ービスの 満 足 感 についての 質 問 紙 調 査 を 行 った。 ( 産 後 サー ビス : 産 後 の 女 性 がリエゾン 助 産 師 とともに 出 産 につい て 話 し 合 う。 考 えや 感 情 を 探 ったり , 解 決 しない 疑 問 について 尋 ねたり , 次 回 の 出 産 プランに つい て 話 したりする。 病 院 や 自 宅 でサービスを 受 ける 場 合 も あれば , 電 話 相 談 のみの 場 合 もあ る。 ) ・リエゾン 助 産 師 は , 10 ヵ 月 間 にわたって 1940 人 の 褥 婦 と 病 棟 , 電 話 , 手 紙 によ ってコンタ クトを とり , 出 産 の 振 り 返 りのサ ービス につい ての 情 報 を 提 供 した。そ のうち の 17% が 出 産 について 語 る 機 会 を 希 望 した。 ・ 質 問 紙 調 査 では , サービスを 受 けた 女 性 の 56% が 振 り 返 り の サービスは 不 要 であると 答 え たが , 44% の 女 性 は 産 後 に 助 産 師 と 語 る 機 会 が 必 要 だと 答 えた。 Bailey, et al., ( 2008 ); イギ リス Birth Afterthoughts Service を 利 用 した 女 性 の 経 験 を 明 らかにすること 7 人 グラ ウンデッド・セオリーを 用 いた 。 ・ Listening ( 聴 くこと )と explaining ( 説 明 す ること )という 2 つのテーマが 明 らか になった。 ・ 女 性 たちは , ① フラッシュバック , 自 責 感 , うつなどといったトラウ マに 関 する 症 状 を 抱 えて いる 場 合 , 出 産 体 験 を 語 る 必 要 性 を 感 じる , ② 自 身 の 出 産 体 験 を 理 解 するた めに , 出 産 の 際 に 用 いられた 専 門 用 語 を 明 確 にする , ③ 出 産 において 何 が 起 こったのかを 理 解 する , ④ 困 難 な あるいはトラ ウマとなるよう な 体 験 を 聴 い てもらい , 認 めて もらう , ⑤ 何 が 起 こったのかを 理 解 し 解 放 される , ⑥ 区 切 りをつける , という 経 験 をし ていた。 Notes. Birth Afterthoughts service , 産 後 の 女 性 に 出 産 体 験 を 語 る 機 会 を 提 供 するイギリスのサービ ス ; MQP , McGill Pain Questio nnaire ; POBS , Maunt and Mercer Perception of Birth Scale
なげる,⑤分娩中のことを振り返る,⑥社会的なサ ポートを強化する,⑦対処への積極的な取り組みを強 化する,⑧解決策を探る,という8段階で構成してい た。Priest ら(2003)の介入は CISD を基盤にした 7 段 階で,① Engagement(導入),② Facts(出産の時に起 きたこと),③Thoughts(出産の時に考えたこと),④ Feelings and reactions(出産の時の感情や反応),⑤ Normalization(その感情や反応は正常であることを助 産師が保障する),⑥ Education(その人に合った対処 法を助産師が提供する),⑦Disengagement(再び元の 生活に戻る) で構成されていた。一方,Selkirk ら (2006)は,上記の 6 段階に,⑦ Re-entry(出産に対す る女性の感情と反応をまとめ,女性自身の気持ちを表 出できる機会を提供する),⑧ Final Phase(更なる質 問に答え,女性が必要としている情報を提供する)を 加えた8段階の介入を行っていた。なお,この研究で は介入の理論的根拠については明記されていなかっ た。 他3件の研究は構造化しない介入を行っており,出 産について自由に語る機会が提供されていた(Laven-der, et al., 1998; Meades, et al., 2011; Small, et al., 2000)。
(2)将来の出産に対する恐怖の軽減を目的とした研 究
国外の研究 1 件のみであった。介入は CISD に基づ いており,① Introductory(導入),② Fact finding(事 実確認の段階),③ Feelings(感情の段階),④ Symp-toms(症状の段階),⑤ Teaching と Validation(教育と 確証の段階),⑥ Re-entry(確認の段階)の 6 段階で構 成されていた(Kershaw, et al., 2005)。 (3)出産体験を統合し,肯定的に意味づけることを 目的とした研究 国内の研究 1 件のみであった。中野(2011)は,女 性が産褥早期に出産体験を統合し,肯定的に意味づけ ることで母親役割にスムーズに適応していけるよう (Mercer, 1981;Rubin, 1961),分娩経過の時間的な流 れに沿って自己の出産体験についての語りを促す介入 をしていた。 2)対象者の選定 分娩様式の違いによって対象者を選定した研究は4 件あり,そのうち2件が経腟分娩の経験者(Lavender, et al., 1998;中野,2011),他2件が操作的分娩(吸引 ・鉗子分娩,帝王切開)の経験者を対象者としていた (Kershaw, et al., 2005; Small, et al., 2000)。 ま た,
DSM-IVによって PTSD に該当する対象者を選定した 研究は 2 件あった(Gamble, et al., 2005;Meades, et al., 2011)。Gambleら(2005)は,該当者全員を対象と していたが,Meadesら(2011)は該当する対象者のう ち,希望者のみを対象としていた。特定の選定方法を 用いなかった研究は 2 件あった(Priest, et al., 2003; Selkirk, et al., 2006)。 3)実施者 介入の実施者が CISDの訓練を受けた助産師であっ た研究は 2 件あった(Kershaw, et al., 2006;Priest, et al., 2003)。Selkirk ら(2006)の介入の実施者は,研究 のために雇用された助産師であったが,訓練の有無に ついての記述はなかった。その他の研究では,カウン セリングもしくは認知行動療法を学んだ助産師が介入 を行っていた研究が 1 件あり(Meades, et al., 2011), 専門的な訓練を受けていない助産師または助産師資格 を有する研究者が介入している研究が 4 件あった (Gamble, et al., 2005; Lavender, et al., 1998; 中 野,
2011;Small, et al., 2000)。なお,CISD が組み込まれ ていたGambleら(2005)の介入では,実施者に高度な 精神療法の技術は必要ないと記載されていたが, CISDの訓練を受けたか否かは明示されていなかった。 4)実施時期と回数 実施時期は,それぞれの研究で異なっていたが,実 施回数は 1 回,あるいは 2 回であった。実施回数が 1 回の研究は6件あり,このうち3件が産後72時間以内 に実施していた(中野,2011;Priest, et al., 2003; Selkirk, et al., 2006)。中野(2011)は,産後 72 時間以 内は出産体験を感じたままの言葉で表現しやすいとす るRubin とMercer の論文を根拠にしていた。Priestら (2003)はCISDの介入手順に準じて実施時期を決めて いたが,Selkirk(2006)らの研究では,介入時期の根 拠については明記されていなかった。Lavender ら (1998)と Small ら(2000)の研究では,時期が明示さ れておらず,入院中としていたが,どちらの介入もそ の理論的根拠に関する記載はなかった。Meades ら (2011)は,希望者の希望する時期に実施した結果, 産後 1.3~72.2ヵ月となっていた。なお,介入後 の フォローアップを行っていたのは,Priestら(2003)の 研究のみであった。この研究では,産後 2,6,12ヵ 月において,Edinburgh Postnatal Depression Scale(以 下EPDS)のスコアが12点より高い場合,精神の不調 によって治療を受けている女性,抗うつ薬や不安薬を 内服している女性に対して心理士による継続的なイン
タビューが行われていた。 実施回数が 2 回の研究は 2 件あった。Gamble ら (2005)は,産後 72 時間以内と産後 4~6 週の間に, Kershawら(2005)の介入は CISD に基づいていたが, 実施時期は産後10日と10週であった。 5)測定用具と結果 測定用具と結果について,目的別に述べていく。 (1)産後の精神的な健康問題の予防を目的とした研究 測定用具は,主に産後うつ,不安,PTSDに関連し た尺度が用いられていた。上記に加え,QOL やスト レスの程度などを測定する尺度を用いていた研究も あった。 ① 産後うつ 産後うつに関する尺度を用いていた研究は 6 件 あ った(Gamble, et al., 2005; Meades, et al., 2011; Priest, et al., 2003;Selkirk, et al., 2006;Small, et al., 2000;Small, et al., 2006)。測定尺度には,EPDSが用 いられていた。有意差が認められたのは,Gamble ら (2005)の研究のみであり,介入群の方がEPDS高得点 者(EPDS>12)の割合が少なかった。 ② 不安症状 不安症状を測定した研究は3件あったが,用いられ た尺度はそれぞれ異なっていた。Gamble ら(2005) は,Depression Anxiety and Stress Scale 21(DASS-21) を用い,Lavender ら(1998)は,Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を, Selkirk ら(2006)は, State-Trait Anxiety Inventory(STAI)を 用 い て い た。 有意差が認められたのは Lavenderら(1998)の研究の みであり,介入群の方が HADS 高得点者の割合が低 かった。
③ PTSDに関連する症状
PTSDに関連する症状を測定していた研究は 4 件あ り, 尺 度に は, Impact of Event Scale(IES)と Mini-International Neuropsychiatric Interview-Post-Traumatic Stress Disorder(MINI-PTSD),PTSD Symptom Scale-Self Report(PSS-SR), Posttraumatic Cognitions In-ventory(PTCI)の 4 種類があった。Priest ら(2003)と Selkirkら(2006)は, IES を 用い て いた。Gamble ら (2005)は MINI-PTSD を,Meades ら(2011)は,PSS-SRと PTCI を用いていた。有意差が認められたのは 2 件で,Gamble ら(2005)の研究では,産後 3ヵ月の時 点でのみ介入群のトラウマ症状が軽減し,Meades ら (2011)の研究では,介入群の方がPTSDの得点が低下 していた。 ④ その他 そ の 他, 以 下 の よ う な 尺 度 が 用 い ら れ て い た。 Selkirkら(2006)は,精神的ストレスと育児ストレス を Symptom Check List 90-R(SCL90-R)と Parenting stress index short form(PSI)によって測定していた。 さらに,Dyadic Adjustment Scale(DAS)によって夫婦 あ る い は パ ー ト ナ ー と の 関 係 性 を, Perception of Birth Scale(POBS)を用いて出産体験の認識を測定し た。有意差が認められた項目はなかったが,対照群の 女性の方が妊娠期から産後3ヵ月にかけてDAS得点が 大きく低下していた。2000 年と 2006 年に行われた Smallらの研究では,健康関連の QOL を測定する SF-36が用いられていた。有意差が認められたのは 2000 年に実施された研究のみであり,日常役割機能におけ る精神の得点のみにおいて介入群の方が低かった (Small, et al., 2000)。 (2)将来の出産に対する恐怖の軽減を目的とした研 究
出産の恐怖の測定には,Wijima Delivery Expect-ancy / Experience Questionnaire(WDEQ)が用いられて いた(Kershaw, et al., 2005)。なお,IESもあわせて測 定されていたが,いずれも有意差は認められなかっ た。
(3)出産体験を統合し,肯定的に意味づけることを 目的とした研究
Samko and Schoenfeldの出産態度測定尺度,自己概 念(Rosenberg のSelf-Esteem の尺度によって自尊感情 を測定)が測定されていた(中野,2011)。有意差が認 められたのは,出産態度の自己評価であり,介入群は 自己の出産態度を肯定的に評価していた。 2.出産の振り返りの実態を調査した研究 出産の振り返りの実態を調査した研究は 2 件あり, いずれも国外の研究であった。 Steelら(2003)は,出産の振り返りの内容や方法が 明確にされていないにもかかわらず,看護実践として 広く普及していることを問題として捉え,実態を調査 する必要があると考えた。まず,文献検討によって出 産の振り返りを以下のように定義した。①女性が自身 の出産体験を表現する,②女性が出産体験についての 気持ちを語る,③女性に必要な情報が提供される,④ 女性に必要なケアが提供される,⑤必要なサポートが 特定され,女性に紹介される,⑥女性が将来について どのようなことを感じているのか語り合う,⑦女性の
体験が正常であることを確認する,⑧(出産体験に関 する)感覚,匂い,視覚,嗅覚などに焦点をあてる, ⑨起きたことについて最もよくなかった事柄(worst thing)を特定する。次に,これを基に質問紙を作成し た。イギリス全土の地域から2つの地域を無作為抽出 した後,その地域にあるすべての産科施設(46 施設) を対象に質問紙調査を行った。その結果,提供されて いる出産の振り返りは,①~⑨の全てが含まれている (14%),①~⑤までが含まれている(28%),①~⑨の 項目のいくつかを組み合わせている(58%),と施設 によって異なっていた。 Ayersら(2006)は,トラウマ体験後の振り返りは有 害となる可能性があるという研究結果を受け(Rose, et al., 2002),困難な出産を経験した女性,またはト ラウマ的な出産を経験した女性に対してどのような出 産の振り返りが提供されているのかを明らかにするた めの調査を行った。調査対象となった施設の 94% が 産後サービスを提供しており,このサービスの 78% が出産の振り返りを提供するサービスであった。しか し,出産の振り返りに関する研究結果を基盤にして サービスを提供していた施設はわずか5%であった。 3.出産の振り返りを実施した結果について記述した 研究 出産の振り返りを実施した結果について記述した研 究は7件あった。 1)国内の研究 和田他(1986)は,出産についての知覚体験を状況 危機とし,出産は自己のいくつかの局面を失う喪失体 験をもつものであると考えた。そこで,産後の想起 は,喪失体験に伴う悲嘆,わだかまりおよび感情の表 出を助ける行為であるとするRubin(1961)の論文を基 に,産後の女性に出産を想起させて,出産における喪 失体験と想起のもたらした結果を分析した。出産中の 産婦の表情や動作はビデオに録画し,感情については 自作の評定尺度によって測定した。さらに,産褥3日 以内にインタビューを行った。これらのデータを分析 した結果,出産における喪失反応に影響を及ぼした要 因が明らかになった。また,想起は喪失感情をもって いた女性に解放感をもたらす可能性があることが示唆 された。 東野他(2005)は,母親役割獲得過程において産褥 早期に出産体験を統合することが重要であることを指 摘しているMercer(1981)を根拠に,陣痛体験に焦点 を当てた振り返りの意義を検討した。助産師の資格と 経験をもつ研究者が,女性に陣痛体験を中心に語るよ う促し,女性が陣痛体験をどのように自分のものとし て受け止めたのかを検討した。対象者は,経腟分娩を した褥婦 25 名であった。実施にあたり助産師は,① 実施前に分娩経過を把握する,②産褥3日以内に実施 する,③傾聴することを基本的姿勢とする,④満足な 体験にも共感し,保証する,⑤話したくない場合は強 制しない,⑥女性が誤って解釈していることがあれば 修正する,⑦否定的体験は否定せず受け止めるが,自 分の受け止めが対象と違う場合は率直に伝える,とい う点に留意した。分析は,参加観察で得られたデータ を基に行った。その結果,11 事例において,ほぼ否 定的に受け止められていた陣痛体験が介入後には肯定 的な受け止めに変化していた。陣痛体験に焦点をあて た出産の振り返りの意義が示唆された。 東野他(2006)は,産褥早期の女性のグループによ る出産の振り返りを悲嘆作業への援助として位置付 け,その効果を確認することを目的に研究を行った。 研究の対象施設に勤務している研究者が,1グループ 2~8 名の対象者に各自の出産体験を自由に語ること を促した。介入の効果は参加観察法と質問紙調査を用 いて分析した。その結果,グループによる出産体験の 振り返りは,女性たちに安心感を与えるだけでなく, 連帯感や仲間意識を強めていた。また,他者の出産の 語りを聞くことで,自身の出産体験が意識化され,そ れが出産体験の受容へとつながっていた。 2)国外の研究 Allen(1999)は,分娩様式と心的外傷後ストレス症 状や産後うつとの関連について評価を行うと同時に (表3参照),出産について語ることが女性にとって有 益となるのかどうかを検討するために,出産体験を 語った経験の有無とその感想についても調査した。出 産の振り返りがどのような場で,いつ行われたものな のかについての情報はなかったが,50% 以上の女性 が,出産体験を医療者などの専門家に語っていたこと が明らかになった。また,誰かに出産について語るこ とは有益だと感じた女性がいる一方で,良くも悪くも ないと感じた女性や,有益でないと感じた女性がいる ことが分かった。
Inglis(2002)は,Birth Afterthoughts Service(出産 について語る機会を提供するサービス)を利用した女 性がサービスをどう受け止めているのかを明らかにす るために,電話でのインタビューを行った。その結
果,女性たちは,①望んだ時に必要な情報が欲しい, ②出産に伴う処置やケアに関することを専門家に聞い て確認したい,③将来の妊娠のために過去の出産で体 験したことを理解したい,というニーズを持っている ことが示された。また,これらの結果からは,産後の 女性たちがサービスを利用したいと感じた時,すぐに サービスを利用できるということが重要であることが 示唆された。 Baxterら(2003)は,産後サービス(希望時にリエゾ ン助産師と出産体験を語る機会が提供される)の評価 を 行 う た め に, サ ー ビ ス を 受 け た 女 性 た ち か ら フィードバックを得た。サービスに対する女性の評価 は個々によって異なっていた。また,サービスを利用 する理由も多様であったが,女性たちは,①受けたケ アに関すること,②産後の付加的サポート(骨盤低筋 群の体操,よく泣く赤ちゃんへの対応等),③産科施 設でのひどい体験,④ケアに不満が残った時の保証 (スタッフ教育とケアの改善につなげる),⑤更なるサ ポートネットワーク(産後うつの既往がある場合), ⑥次の分娩計画と今回の出産の際に行われた介入を回 避するための計画,について語っていた。
Baileyら(2008)は,Birth Afterthoughts Serviceの効 果については過去の研究で示されているが,何が女性 にとって有益となるのかは具体的に明らかにされてい ないとし,サービスを利用した女性たちの経験を記述 した。女性たちは,豊富な知識をもった助産師と出産 について語ることによって,自身の出産に対する理解 を深めていた(表3参照)。 4.国内と国外の研究の動向 出産の振り返りの研究の動向は国内と国外で異 なっていた。国内では,出産の振り返りを実施した結 果について記述した研究から(東野他,2005;東野 他,2006),N-RCTによる効果の検証へと進んでいた (中野,2011)。出産の振り返りの根拠には,Rubinや Mercerの論文を引用して,母親役割へと適応してい く過程において出産体験を統合し意味づけて自分のも のとすることが重要であるとしていた。けれども,出 産の振り返りの効果を母親役割への適応に置いて検証 していた研究は見当たらなかった。 一方,国外では,イギリスで 1993 年頃より出産に よって生じたわだかまりの解消を目的に Birth After-thoughts Serviceが提供されていたため,1990 年代の 終わりから 2000 年代初頭は主にこのサービスの質を 評価するための研究が行われていた(Allen, 1999; Baxter, et al., 2003;Inglis, 2002)。そのため,Laven-derら(1998)は出産の振り返りを産後の精神的な健康 問題の予防を目的とした介入に位置付け,RCT を用 いて介入後の抑うつと不安症状を測定しその効果を評 価した。介入の結果,介入群の方が抑うつと不安症状 の高得点者の割合が低くなった。これを受けて Small ら(2000)は,操作的分娩後の産後うつの発症率を低 減することを目的にRCTを行ったが効果はなかった。 出産の振り返りに関する理論的根拠が不明確である という Alexander(1998)の指摘から,Priest ら(2003) や Kershaw ら(2005)は出産の振り返りを危機介入に 位置付け,CISD の手法を介入の理論的根拠とした RCTを行ったが効果は認められなかった。一方,コ クランレビューでは,トラウマ体験後に行われる一回 限りの振り返りはPTSDのリスクを高める可能性があ るため,ルーチンでの実施は避けるべきであると指摘 さ れ た(Rose, et al., 2002)。 こ れ を 受 け Gamble ら (2005)は,介入を二回に増やし,カウンセリングを 基盤に CISD の要素を一部含めた介入へと更新した。 かつ,対象者をPTSDの発症リスクが高い女性に限定 した。その結果,産後 3ヵ月において介入群の方が EPDS高得点者の割合とトラウマ症状の得点が有意に 低くなった。Selkirk ら(2006)は,出産の振り返りの 効果を検証した研究において一定の結果が得られない のは,独立変数の抑制不足と測定尺度に問題があると し,PTSDの症状,不安,うつ症状だけでなく,精神 的ストレスや育児ストレス,夫婦の関係性に関する尺 度を加えて測定したが,統計学的な有意差は認められ なかった。 Ayersら(2006)や Bailey ら(2008)は,出産の振り 返りとは何か,それが必要とされる場では何が起 こっているのかということに疑問を持ち,実践の実態 調査や出産の振り返りを必要とする女性の経験を記述 するための質的研究を行った。その結果,実践現場で は明確な根拠がないまま介入が行われているという実 態や(Ayers, 2006),出産について語りたいと感じた 時に介入を受けたいという女性のニーズが明らかに なった(Bailey, 2008)。Meades ら(2011)は,これま で行われてきた RCT(Gamble, et al., 2005;Lavender, et al., 1998;Priest, et al., 2003;Selkirk, et al., 2006; Small, et al., 2000:2006),コクランレビュー(Rose, et al., 2002),Ayersら(2006)やSteelら(2003)の研究 結果を統合し,出産の振り返りを出産に伴う心的外傷
後のトリートメントに位置づけた。DSM-IVによって あらかじめPTSDの発症リスクの高い人をスクリーニ ングし,その内の希望者のみを対象とした。特別に訓 練された助産師が必要時専門家に紹介することを前提 に,対象者の希望する時に介入した結果,介入群の方 がPTSDの得点が低下していた。
Ⅳ.考 察
1.出産のトラウマに対する配慮 国外ではトラウマ体験後の振り返りが有害だと指摘 したコクランレビューを受け(Rose, et al., 2002), CISDを通常の介入の概念枠組にしようとする試みか ら,振り返りの現状調査や女性の実際のニーズ調査 や,出産によるPTSDのリスクの高い人を対象とした 振り返りの効果の検証へと発展していた。一方,国内 では,国外とは異なり,RubinやMercerを根拠に研究 が行われており(中野,2011;東野他,2005;東野 他,2006;和田他, 1986),出産がトラウマとなった 場合については検討されてこなかった。 このような国内外での相違は,結果に示した通り, 出産の振り返りの理論的な根拠が異なっていることに あると考えられた。けれども,産後一ヵ月の調査研究 では,出産に伴う PTSD のリスクの高い女性(IES-R の得点が25点以上)が8.4%いたという報告もある(松 本他,2006)。対象者を限定することなく出産の振り 返りをルーチンで行うと,少なくともそのような女性 にとっては害を及ぼす可能性がある。振り返りがなぜ 有害なのかを示している最近の文献では,トラウマ体 験直後に振り返りを促されると,過覚醒状態に陥り不 安が高まって,トラウマからの自然な回復過程が妨げ られる等と指摘されている(Foa, et al., 2009/2013)。 したがって,出産の振り返りはすべての人に行うので はなく,希望者に限定するなど,対象者に配慮する必 要があると考える。 一方,トラウマからの回復の解明に取り組んだ Herman(1992/2015)によれば,その過程には,当事 者の安全が十分に確保される段階,当事者がその出来 事のストーリーを構成して語り,トラウマの記憶を再 構成しライフストーリーに統合する段階,未来を創造 していく過程に入っていく段階があるという。けれど も,これらは全ての人が同じペースで直線的に進んで いくわけではないと述べている。したがって,出産が トラウマとなった場合には,女性が語りたいときに語 れるよう長期にわたって出産の振り返りを提供する必 要があると考える。また,出産後のすべての女性を対 象に出産の振り返りを提供するならば,有害ではない 実践を開発していくことを検討しなければならない。 例えば,CISD に代わる方法として開発された心理的 応急処置を基盤にして新たな介入手法を考えていくこ とも提案できる(WHO, 2011)。ただし,これも希望 者のみに提供されるものである。 2.出産の振り返りに関する研究課題と展望 国外では,出産の振り返りという実践の根拠が明確 ではないという指摘を受け,理論的な枠組みに CISD を導入していた。しかし,これらの研究は CISDの枠 組みとの理論的な整合性を欠いた研究であったと考え られる。なぜなら,CISD では PTSD のリスクを抱え た 希 望 者 を 対 象 に す る が(Mitchell, et al., 2001 / 2006),対象者を希望者ではなく産後の女性全員とし ていたり(Priest, 2003),分娩様式や分娩回数によっ て選定していたからである(Kershaw, 2005)。また CISDを介入として使う際には訓練が必要だが,介入 者が訓練されたことを明記した研究はPriestら(2003) とKershaw ら(2005)のみだった。さらに,CISDの本 来の目的は必要時,臨床心理士やソーシャルワー カー,精神科医,精神科看護師などの精神保健の専門 家につなげられるよう継続的にスクリーニングするこ とであるが(Mitchell, et al., 2001 / 2006),ほとんど が 1~2 回限りの介入であった。今後,実践の根拠に なりうる研究をしていくには,Meadesら(2011)のよ うに根拠とする理論を理解して介入を導入し,概念枠 組みとの整合性を吟味しながら適切な測定尺度を用い て効果を評価する必要がある。また,介入研究で効果 を検証していくには,対象者が研究者の期待に応えよ うとするホーソン効果や,測定者バイアスを回避する ために,研究デザインの段階で盲検化を工夫する必要 がある。 3.女性のニーズへの応答 Alexander(1998)やコクランレビュー(2002)の指 摘に影響を受け,国外では調査研究や質的研究も行わ れていたが,これにより研究者が必要だと考える実践 と女性が望んでいる実践の間に齟齬が生じていること が明らかになった。研究者は出産の振り返りを危機介 入に位置付けていたため,介入の多くは 72 時間以内 や入院中に設定されていた。ところが,その時期は出産について語る余裕などないと感じていた女性もいた (Allen, 1999)。つまりこのことは,女性の精神的な健 康問題を予防しようとしていた研究者の介入が,実は 当事者のニーズを反映したものではなかった可能性が あったとも考えられる。Freidsonは,専門家と患者と の間には支援する者と支援される者という構造があ り,そこには支配する者と支配される者という権威主 義的な構造が働いていると述べている(Freidson, 1970 /1992)。実践家も研究者もこのことを心に留めてお く必要があるだろう。 国内では,出産の振り返りに関する研究はまだ少な くこれから蓄積していかなければならない。女性の ニーズに即した実践は助産師と女性が対話する関係の なかからつくられていくものであると考える。まず は,女性のニーズや臨床現場における実践の実態を明 確にするための研究に取り組んでいく必要がある。 研究の限界 今回は,研究の動向を明らかにすることを目的とし ていたため,採用した文献の質は評価していない。出 産体験の想起を促した研究者がその結果を評価するな ど,研究遂行上のバイアスリスクを含むと思われるも のも除外できていないという限界がある。
Ⅴ.結 論
出産の振り返りに関する研究には,出産の振り返り の効果を検証した研究,出産の振り返りの実態を調査 した研究,出産の振り返りを実施した結果について記 述した研究があった。 効果を検証した研究における理論的枠組みは,国内 と国外で異なっており,国内では出産がトラウマと なった女性に振り返りを促すことのリスクについては 検討されていなかった。また,実態を調査した研究 は,国内には見当たらず,国外のみで行われていた。 出産の振り返りを実施した結果について記述した研究 では,国外では女性のニーズに基づいて長期的な フォローを行っていたが,国内では産後数日以内に実 施した研究のみであった。今後,実践においては,出 産の振り返りをルーチンで行うことを見直し,希望者 に限定するなど,女性のニーズに応じた実践へと更新 していく必要がある。また,出産の振り返りの実態や 女性のニーズを明らかにしていく研究が必要である。 利益相反 本論文内容に関連する利益相反事項はない。 文 献Alexander, J. (1998). Confusing debriefing and defusing postnatally: the need for clarify terms, purpose and value. Midwifery, 13, 122-124.
Allen, H. (1999). Debriefing for postnatal women: Does it help? Professional care of Mother and Child, 9(3), 77-79. Ayers, S. (2004). Delivery as a traumatic event: Prevalence,
Risk factors, and treatment for postnatal posttraumatic stress disorder. Clinical Obstetrics & Gynecology, 47(3), 522-567.
Ayers, S., Claypool, J., & Eagle, A. (2006). What happens after a difficult birth? Postnatal debriefing. British Journal of Midwifery, 14(3), 157-161.
Bailey, M. & Price, S. (2008). Exploring women's experien-ces of Birth Afterthoughts Service. EVIDENCE BASED MIDWIFERY, 6(2), 52-58.
Baxter, J., McCrae, A., & Dorey-Irani, A. (2003). Talking with women after birth. British journal of Midwifery, 11 (5), 304-309.
Baxter, D. J., McCourt, C., & Jarrett, M. P. (2014). What is current practice in offering debriefing services to post-partum women and what are the perceptions of women in accessing these services: A critical review of the literature. Midwifery, 30(2), 194-219.
Foa, E., Keane, T., Fridman, M., & Coben, J. (2009)/飛鳥
井望監訳(2013).PTSD 治療ガイドライン(第 2 版).
P77-92,東京:金剛出版.
Freidson, E. (1970)/進藤雄三・宝月誠訳(1992).医療と
専門家支配.p.118-148,東京:恒星社厚生閣. Gamble, J., Creedy, D., Moyle, W., Webster, J., McAllister,
M., & Dickson, P. (2005). Effectiveness of Counselling Intervention after a Traumatic Childbirth: A Random-ized Controlled Trial. Birth, 32(1), 11-19.
Garrard, J. (2010)/安部陽子訳(2012).看護研究のための 文献レビューマトリックス方式.pp.81-93,東京:医 学書院. Herman, J. (1992)/中井久夫訳(2015).心的外傷と回復. pp.241-242,東京:みすず書房. 東野妙子,和田サヨ子,武田とき子,青木望美(2005). 産後の振り返りによる陣痛体験の分析.母性衛生, 45(4),503-511.
東野妙子,和田サヨ子,武田とき子,後藤美穂(2006). 産褥早期の女性のグループによる産後の振り返りの 分析.母性衛生,47(1),205-213.
Inglis, S. (2002). Accessing a debriefing service following birth. British Journal of Midwifery, 10(6), 368-371. Kershaw, K., Jolly, J., Bhabra, K., & Ford, J. (2005).
Randomized controlled trial of community debriefing following operative delivery. BJOG: An International Journal of Obstetrics and Gynecology, 112 (11), 1504-1509.
Kitson, A. (1997). Using evidence to demonstrate the value of nursing. Nursing Standard, 11(28), 34-39.
Lavender, T. & Walkinshaw, S. (1998). Can midwives reduce postpartum psychological morbidity? A randomizes trial. Birth, 25(4), 215-219.
Marks-Maran, D. (1999). Reconstructing nursing: evidence, artistry and the curriculum. Nurse Education Today, 19, 3-11.
Meades, R., Pond, C., Ayers, S., & Warren, F. (2011). Postnatal Debriefing: Have we thrown the baby out with the bath water? Behavior Research and Therapy, 49, 367-372.
Mercer, R. T. (1981). The Nurse and Maternal Tasks of Early Postpartum. MCN, 6, 341-345. 松本鈴子,横尾京子,岡村仁,中込さと子(2006).産後 1ヵ月における出産に伴う母親の心的外傷後ストレス の出現―NICU入院時の母親と健常新生児の母親の比 較―.広島大学保健ジャーナル,6(1),71-80. Mitchell, J., Everly, G. (2001)/高橋祥友訳(2006).緊急事 態ストレス・ PTSD 対応マニュアル,pp.146-197,東 京:金剛出版. 中野美佳(2011).肯定的出産体験をもたらすための看護 ―出産体験の想起・統合を促す看護の効果の検証―. 母性衛生,52(1),111-119. 荻田珠江,中澤貴代,安積陽子,荒木奈緒,平塚志保 (2013).バースレビューを実施した助産師学生の経 験と教育課題の検討.日本助産学会誌,27(1),72-82.
Priest, S., Henderson, J., Evans, F. S., & Hagan, R. (2003). Stress debriefing after childbirth: a randomized control-led trial. Med J Aust, 178(11), 542-545.
Rose, S. C., Bisson, J., Churchill, R., & Wessely, S. (2002). Psychological Debriefing for preventing posttraumatic stress disorder (PTSD). Cochrane Database Syst Rev, (1).
Rubin, R. (1961). Pueperal Change. Nursing Outlook, 9 (12), 735-755.
Selkirk, R., Maklaren, S., Ollerenshaw, A., & McLachlan, J. A. (2006). The longitudinal effects of midwife-led postnatal debriefing on the psychological health of mother. Journal of Reproductive & Infant Psychology, 24 (2), 133-147.
Small, R., Lumley, J., Donohue, L., Potter, A., & Waldenström, U. (2000). Randomized controlled trial of midwife led debriefing to reduce maternal after oper-ative childbirth. British Medical Journal, 321, 1043-1047.
Small, R., Lumley, J., & Toomey, L. (2006). Midwife-led debriefing after operative birth: four to six year follow-up of a randomized trial. BMC Medicine, 4(3), 1-4. Steel, A. & Beadle, M. (2003). Survey of postnatal debriefing.
Journal of advanced Nursing, 43(2), 130-136.
和田サヨ子,近藤潤子(1986).出産後の想起(review)に よる産婦の妊娠出産過程における情緒の分析 ― 出産 時の喪失体験を中心として―.日本看護科学会誌,6
(3),11-21.
World Health Organization (2011). Psychological First Aid: guide for field workers. http:// apps.who.int / iris / bitstream /10665/44615/18/9789241548205_jpn.pdf