• 検索結果がありません。

日本認知・行動療法学会におけるダイバーシティの推進

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "日本認知・行動療法学会におけるダイバーシティの推進"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本認知・行動療法学会 第44回大会 112

-日本認知・行動療法学会におけるダイバーシティの推進

○(企画・司会・話題提供者)佐藤 美幸1)(話題提供者)松永 美希2)(話題提供者)佐藤 寛3)(話 題提供者)松見 淳子3) 1 )京都教育大学、 2 )立教大学、 3 )関西学院大学 企画趣旨 公認心理師の国家資格化により日本認知・行動療法 学会が担う役割はますます大きくなる。人口知能の開 発、急激な人口減少、グローバル化など大きな変化が 予測される時代に、社会に貢献する組織として学会が 発展するためにできることの 1 つに、ダイバーシティ (多様性)の推進があげられる。 経営学の分野では経営陣のダイバーシティが進むこ とで、意思決定が複眼的になる、人材プールの拡大、 社内外の労働者の要請に応えられる、社会的ネット ワークの拡大などの効果があると指摘されている (Mishra & Jhunjhunwala, 2013)。本学会においても ダイバーシティを推進することで、イノベーションを 取り入れた心理療法の提供や多様なクライエントへの 対応といった対外的な貢献や、会員が持てる力を発揮 することができる組織内でのメリットが生じると考え られる。 日本では成長戦略の一つとして女性の活用が掲げら れ、男女共同参画が進められてきた。2015年には精神 科関連学会が共同で男女共同参画推進共同宣言を取り まとめ、日本認知・行動療法学会もこの宣言に名前を 連ねており、男女共同参画がダイバーシティ推進の重 要な側面であることがわかる。シンポジウムでは本学 会で精力的に活動する女性会員と女性会員を家族にも つ男性会員に男女共同参画の現状やご自身の体験を話 題提供して頂く。 ダイバーシティは、集団の中で、個人の能力や経験 あるいは知識およびそれらに対する価値が多様化する タスク型ダイバーシティと、性別、国籍、年齢など個 人の属性が多様化するデモグラフィー型ダイバーシ ティに分けることができ、タスク型ダイバーシティの ほうが組織のパフォーマンスを向上させることが指摘 されている(Joshi & Roh, 2009)。性別というデモグ ラフィックな観点だけではなく多様な能力を生かすと いう観点からダイバーシティのメリットについて議論 を行いたい。 男女共同参画に関連する法律と施策(佐藤美幸) 1999年に男女共同参画社会基本法が施行され、男女 共同参画基本計画の策定、積極的改善措置を含む施策 を策定・実施することを国の責務とした。2005年の男 女共同参画基本計画(第 2 次)では、社会のあらゆる 分野において2020年までに指導的地位に占める女性の 割合を30%程度になるように取り組みを推進すること が示され、精神科関連学会による男女共同参画推進共 同宣言の根拠となった。さらに、第 2 次安倍内閣は女 性が輝く社会を作ることを最重要課題の 1 つと位置づ け、積極的改善措置の実効性を高めるために女性活躍 推進法を制定した。 女性活躍推進法における基本原則は、1.女性に対す る採用、昇進などの機会の積極的な提供と、性別によ る固定的役割分担等を反映した職場慣行への配慮、 2.環境整備により職業と家庭の両立を可能にする、 3.職業と家庭との両立は本人の意思が尊重される、の 3 点である。国、地方公共団体、従業員301名以上の 事業主は、女性の活躍に関する行動計画を策定し周 知・公表することが義務付けられた。 このため、さまざまな企業や団体が女性活躍推進の 取り組みを進めている。特に指導的地位に達するまで の「採用」「定着」「登用」の各段階において、「機会 創出」「制度支援」「意識醸成」の 3 つの観点から課題 を整理することによって実効性のある施策を決定でき ると指摘されている。本学会においてタスク型ダイ バーシティを拡大するために、どのような「機会創出」 「制度支援」「意識醸成」が可能か考察する。 日本の他学会・他領域における男女共同参画の取り組 み例から(松永美希) 男女共同参画白書(内閣府,2017)によると,女性 の進学率の割合は年々増加傾向にあり,とくに人文科 学系では学部で65.4%,大学院(修士)で59.3%と半 数以上を女性が占める。このような女性の高学歴化が 進む一方で,女性は結婚,出産,育児などライフイベ ントによって一時的に研究・臨床活動を中断すること も多い。また男女問わず,育児や介護などで研究・臨 床活動をやむを得ず中断もしくは縮小する場合もあ る。認知・行動療法学会は,研究発表や臨床スキルの ワークショップも盛んにおこなわれ,我が国の認知行 動療法の発展をリードする,スピード感のある学会で ある。そのような学会への活動の中断は,研究・臨床 スキルの停滞・後退につながるのではないかという不 安や危機感を持っている会員もいるのではないかと思 う。さまざまなライフイベントのなかで,学会活動を 継続するためにはどのような工夫や支援が必要なので 自主企画シンポジウム12

(2)

日本認知・行動療法学会 第44回大会 113 -あろうか。 理系を中心とした他学会の状況をみると,男女共同 参画委員会やダイバーシティ推進委員会が発足され, さまざまなライフイベントを乗り越えて研究活動や学 会活動をおこなうための工夫が議論されたり,多様性 のあるキャリアを支援するための研究支援制度などが 整備されている。 また他職種の領域をみると,作業療法士協会では 「女性協会会員の活動を促進するための事業」が提案 され, 5 か年計画として学会・研修会での託児所の設 置,相談窓口の開設,女性役員の増員といった具体的 目標が掲げられている。 本発表では,以上のような日本における他学会や他 領域での取り組み例を取り上げるとともに,さまざま なライフイベントを乗り越えて本学会で活動している 会員の声なども紹介する予定である。 日本認知・行動療法学会における男女共同参画(佐藤 寛) 本学会では2018年度に役員改選が行われ,現行の役 員(理事・幹事)13名において男性は11名(84.6%), 女性は 2 名(15.4%)となった。これらの数値は2015 年に本学会も参加した60団体共同の「男女共同参画推 進共同宣言」における「2020年までに指導的地位に女 性が占める割合を30%以上に」という目標と比較する と,大きな開きがある。しかし,これらの側面だけを 見て「本学会では女性の活動が低調である」と結論づ けるのは明らかな誤りである。たとえば,本学会の学 会賞を受賞した直近10件の論文の筆頭著者は,男性 6 名,女性 4 名である。また,本学会の機関誌の直近10 号に掲載された70件の学術論文の筆頭著者は,男性が 延べ43名(61.4%),女性が延べ27名(38.6%)である。 筆頭著者というアクティブな会員層に限ってみても, 4 割前後という割合を女性が占めている。本学会では アクティブに活動する会員と,学会のリーダーである 役員との女性比率に差が認められることがわかる。学 会における女性リーダー育成の目的は,人材の多様性 の確保,創造的環境の整備,公正な業績評価などを含 むが(男女共同参画学協会連絡会, 2014),本学会に おいても単純な数値目標を掲げるだけでなく,会員の 実態を踏まえたエビデンスベイストな組織経営によっ て,学会のミッションを踏まえた男女共同参画を推進 する必要がある。 ダイバーシティを推進する行動随伴性と文化的背景:  ジェンダー・ギャップ指数(松見淳子) 男女共同参画に焦点をあて,先述のタスク型ダイ バーシティとデモグラフィー型ダイバーシティについ て,日本認知・行動療法学会および他学会の動向を踏 まえて検討する。日本はGDP(国内総生産)において, 米国と中国に次ぎ世界第 3 位の経済大国である。し かしながら,世界経済フォーラム(World Economic Forum)の「The Global Gender Gap Report2017」に よると,男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数 (Gender Gap Index: GGI)は144か国中114位であっ た。GDIは,経済参画,政治参画,教育,健康の 4 つ の分野のデータから集計されるが,日本の場合,経済 参画が114位,政治参画が123位と極端に低い。組織に おける意思決定過程への女性の登用が乏しい日本の現 状では,真の男女共同参画を目標にした構造改革をも たらすことは困難である。「意識の改革」が基本的方 向として挙げられるが,GGIを改善するための行動変 容が求められる。例えば,目標値設定はその一つとし て一部で成果を挙げている。 タスク型ダイバーシティに関しては,多文化世界に 関するマクロな実証研究(e.g., Hofstede, 1980; Hofstede, Hofstede, & Minkov , 2010) も参考にな る。即ち、国の価値観を示す文化的次元は,学会を含 む日本の組織文化に働く随伴性を分析する際にも有効 である。本シンポジウムでは,認知・行動の変容を主 眼とする本学会が今後いかに男女共同参画を推進する 環境を具現化できるかを検討したい。 自主企画シンポジウム12

参照

関連したドキュメント

9月15日頃 ・本会会報第71号を発行 本会「事業方針」の周知など 9月‐11月末 ・制度変更・規程改正の周知期間

一般社団法人日本自動車機械器具工業会 一般社団法人日本自動車機械工具協会 一般社団法人日本自動車工業会

Leighl NB, Page RD, Raymond VM, et al: Clinical Utility of Comprehensive Cell-free DNA Analysis to Identify Genomic Biomarkers in Patients with Newly Diagnosed

infectious disease society of America clinical practice guide- lines: treatment of drug-susceptible

「社会福祉法の一部改正」の中身を確認し、H29年度の法施行に向けた準備の一環として新

・特定非営利活動法人 日本 NPO センター 理事 96~08.. ・日本 NPO 学会 理事 99-03

会長 各務 茂夫 (東京大学教授 産学協創推進本部イノベーション推進部長) 専務理事 牧原 宙哉(東京大学 法学部 4年). 副会長

19 セミナー 「memento mori 滋賀− 死 をみつめ, 今 を生きる−」 を滋賀会館で日本財団,