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隔月刊「訪問リハビリテーション」第007号(CS5).indd

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消費税率変更の場合 上記定価は税率の差額分変更になります 定価2,100円(本体2,000円+税5%) ISBN978-4-905241-07-2 C3347 ¥2000E (001∼066)

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特集:連 携

巻頭言「連携」 訪問リハビリテーションにおける連携

  ~有意義な連携してますか?~

リハビリ推進センター 株式会社 代表取締役 理学療法士 

阿部 勉

*  日本国語大辞典によると連携とは,互いに連絡 をとりながら手をたずさえて物事を行うことと記 されている.訪問リハビリテーション(以下,訪 問リハ)においてこれを読み解くと,利用者様を 中心としたサービス提供者及び介助者がお互いに 連絡を密にとりながら訪問をしていくことと解釈 できる.“はて?いまさら何を言いたいのか”と 多くの読者は思うだろう.周知のごとく訪問リハ では,連携を抜きにしては何も始まらないだろ うし,何の成果も期待できない,逆にリスクが高 く,上手くいったように見えてもサービス提供者 の自己満足に終わってしまうのが関の山である. 筆者が思うに訪問リハは明けても暮れても連携の 繰り返しである.訪問経験者ならば,いかに連携 が重要で大切な事柄であることは十分認識してい る・・・はずである.くどい言い回しで大変恐縮 ではあるが“連携”の巻頭言において稚拙ながら もあえて疑問を呈したい.“有意義な連携をして ますか?”  古今東西,様々なステージにおいて連携の必要 性を幾度となく議論されてきた.実際の訪問リハ から見た連携の仕組みは,医師・ケアマネジャー への月1回の訪問計画書及び報告書の提出,利用 者及び家族への訪問計画書の同意,さらに介護保 険下においては担当者会議の開催などがある.し かしながら,規律を履行することだけに終始して はいないだろうか?有効にその仕組みが機能して いるのかと考えたことはあるだろうか?もっと連 携を促進するための努力はしているだろうか?と 筆者自身も反省の念が絶えない.読者からは,時 間がない!との悲鳴が聞こえてきそうだが,そも そも何のための訪問であろうか?目的は何なの か?を今一度考えて欲しい.答えは一つ,利用者 の自立支援と介護負担の軽減,そして意味ある生 活再建である.その為に連携が欠かせないことは冒 頭で述べた.そこで,筆者から2つの提案をしたい.  1つ目は,“たった一つのプラスα”である.たっ た1本の電話,1枚のFAX,1枚の伝言メモが 連携の潤滑剤になる.たった一つのプラスαが, 効率的な連携に結びつき連携そのものを有意義な ものに進化させると確信している.今日からたっ たの一歩,しかし心のこもった大きな一歩を踏み 出していこう,利用者様のために.  2つ目.訪問リハとは,利用者様を真ん中に据 えた多職種混合チームの中の一員である.そもそ もチームとは,共通の目的,達成すべき目標,そ のためのアプローチを共有し,連帯責任を果たせ る補完的なスキルを備えた少人数の集合体であ る.そのチーム内で連携を有意義にしていくため のポイントは,他のメンバーの意見に耳を傾け, 建設的に反応し,ときにはその主張の疑わしき点 も善意に解釈し,他のメンバーの関心ごとや成功 を認めるといった価値観が重要である.つまり, 信頼関係が欠かせない.信頼関係の構築は一朝一 夕で成せるものではないが,日々の努力と積極的 なコミュニケーションの結果である.今日からメ ンバーとの信頼関係を構築するための努力をしよ う,利用者様のために. *リハビリ推進センター 株式会社  (〒173-0013 東京都板橋区氷川町2-11)

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「転倒防再発予防を目的とした短期間の訪問リハビリテーションを提供した  脊髄小脳変性症の一症例」 伊藤 卓也,他 株式会社東京リハビリテーションサービス 竹中佐江子 次号予告 編集後記 ……… 63 ……… 64 ∼訪問リハの達人はどんな道具を使っているのか?∼ 永耒  努 ……… 39 ……… 45 ……… 57 ……… 51

連載記事

訪問リハビリテーションで役立つ評価の考え方

達人の道具

症例報告

施設の紹介

∼車の運転に関して①∼『自動車運転に関する法的知識』 三浦 祐司 内田千惠子 ※予定をしておりました記事 平成24年医療保険・介護保険 同時改定について(仮)は、次号(通巻8号)の特集記事『医療保 険・介護保険同時改定の影響』としてご案内させていただくことにいたしました。ご了承賜りますよう何卒宜しくお願い申し上げます。 17

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訪問リハビリテーションと医師との連携

地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター リハビリテーション科副部長 兼 救急診療部副部長

加藤 貴行

* 1.新人教育はどんな職場にも大切  私は老人病院の救急診療部副部長でもある.老 人と救急,あるいは救急と訪問リハビリテーショ ンというのはミスマッチと思われるかもしれな い.リハビリテーションの分野の中で今後最も成 長率が高くなりそうでかつ重要な役割を果たすべ きだと考える「訪問リハビリテーション」と医師 との連携について,期待するところを自身の経験 から述べさせていただきたいと思う.  ここ数年,研修医のお世話係をするようになっ た.厚生労働省が掲げる医師臨床研修制度の基本 理念は,「臨床研修は,医師が,医師としての人 格をかん養し,将来専門とする分野にかかわらず, 医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識し つつ,一般的な診療において頻繁に関わる負傷又 は疾病に適切に対応できるよう,基本的な診療能 力を身に付けることのできるものでなければなら ない(医師法第16条の2第1項に規定する医師臨 床研修に関する省令)」というもので,簡単に言 うと「総合医」を育てようというものだ.「人格 のかん養」は私には難しいが,コモンディジーズ (common disease)の診療方法の教育はやらなけ ればならない.このため各専門科のローテーショ ンに加えて,救急外来での研修を行うことでこの 目的を実現することになっている.そのために救 急医療をやったことのない自分が救急の副部長と *地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター  (〒173-0015 東京都板橋区栄町35番2号) 特集:連 携 key word 1.訪問リハビリテーション    2.神経内科    3.救急医療 なった.毎朝8:00,前夜救急入院症例を検討す るカンファレンスを開くのが私の役目で,救急外 来診療の実際は,院内各科から来てもらっている 各科の先生方にお願いしている.私も神経内科当 直を月3~4回やっている.  院長は我々の病院の機能は高齢患者への専門 的・全人的・包括的医療の提供だと言う.しかし 私の考える病院の機能とは第一に「教育」である. 非常に偏った見方と言われそうだが,私から見れ ば研修医を一人前の医師に育てる為に病院は存在 すると言っても過言ではない.それは看護師の新 人でもリハビリテーション療法士の新人にとって も同様だ.採用したPT・OT・STの新人達を教育 して,一人前の医療人に育てることが最大の機能 である.更に一般化して言えば,職員が成長し続 けていくことが病院存続の目的と言っても良い. 2.神経内科の研修  私は1990(平成2)年に旭川医大を卒業し,国 立病院医療センター(約900床.現国立国際医療 研究センター)の内科研修医(2年間)となった. 2か月毎に各科病棟をローテーションする(循環 器,呼吸器,消化器,神経内科,腎臓内科,血液 内科,内分泌科,膠原病科,麻酔科)[表1].  どの科でも研修医向けの教育が行われていた. 呼吸器科では部長先生によるテストがあり,何十 枚もの胸部レントゲンフィルムについて所見と鑑 別診断を述べさせられた.神経内科では全入院患

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訪問リハビリテーション通巻7号 (2012年4・5月) 4 者の病歴・神経所見を提示する.指導医から診察 所見の取り方,記載様式,検査,鑑別診断,治療 の考え方などを教わって作成した.手書きかワー プロ専用機の時代だ.消化器科では毎週朝7:30 から新患プレゼンテーションが英語で行われ,英 文の準備が大変だった.循環器科は夜中でも急性 心筋梗塞の患者が来院すると研修医も含めて召集 され,緊急で心臓カテーテル検査・治療(PTCA) を行う.研修医は病院内に住んでおり,循環器科 ローテーション中はいつ呼ばれてもいいように夕 食・入浴後にまたケーシーの白衣に着替えて寝て いた.  同期の内科研修医は13名で,2年間の研修医が 終わると大学医局に入局したり,他の病院に移る. 内科研修医終了後に麻酔科,病理医,眼科に進ん だ女性もいる.私は神経内科に心を惹かれた.神 経内科は脳神経系や神経筋疾患を診る内科の一分 野だ.精神科ではない.脳梗塞やパーキンソン病 などの脳の疾患,ギランバレー症候群のような末 梢神経疾患,視神経・脳・脊髄を侵す多発性硬化 症,デュシャンヌ型や筋強直性などの筋ジストロ フィー,脊髄小脳変性症などの神経変性疾患,ア ルツハイマー病やレビー小体病などの認知症疾患 などが守備範囲である.  「特定疾患」とはいわゆる「難病」のことで, 厚生労働省が実施する難治性疾患克服研究事業 の臨床調査研究分野の対象疾患,130疾患を指す. そのうち35疾患が神経内科疾患であり27%を占 める.  「特定疾病」とは介護保険において16ある[表2] が,そのうち筋萎縮性側索硬化症,初老期におけ る認知症,パーキンソン病関連疾患(進行性核上 性麻痺,大脳皮質基底核変性症,パーキンソン病), 脊髄小脳変性症,多系統萎縮症,脳血管疾患の6 疾病(群),37.5%が神経内科疾患である.  私自身は特定の疾患に興味があったと言うより も,ヒトの脳や神経系の構造や仕組み,どのよう に神経回路が発生して出来上がって来るのか,脳 内のどことどことが繋がっているのか,に関心が あった.  臨床医として神経内科を専門とするに当たって はまず診察で神経学的所見が取れるようになるこ とが先決だ.教科書を読み,先輩に聞いて,ある いは神経内科医長先生の回診で診察しているとこ ろを見せてもらって,身に付けようとした.ただ 立派な先生になると,教科書に書いていないこと や教科書の隅っこの方に小さく書いてある些細な ことまで良くご存じなので,到底かなわない.私 は教科書的な神経学的所見が本を見ずに取れると いうレベル.神経内科の優秀な先生方からはお叱 りを受けそうだが,「何も考えずに」「目をつむっ ていても(?)」「スピーディに」「どの患者でも 一通り全部の」神経学的診察ができるようになる ことを目指していた.毎日異なる患者さんを診察 していると,膝蓋腱反射ひとつでもどのくらいの 反応が正常(多くのヒトでの平均的)なのかがわ かるようになるものだ.逆に言うと,本を読んだ [表1] 経歴 [表2] 「介護保険」の特定疾患16(うち が, 神経内科疾患)

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り教えてもらってもそれは所見の出し方がわかる だけで,正常か異常かを判断するには沢山の症例 にあたるしかない.  1992(平成4)年から同院の神経内科レジデン トとなった[表1].筋電図検査(神経伝導検査・ 針筋電図等),腓腹神経生検・筋生検,神経内科 外来もやらせてもらった.今時の研修医は医学生 の頃から患者の診察方法を学び・練習もしている し,初期研修医の時から救急外来での初療(問診・ 診察・処置)を必ず行うので,外来診療を研修す る機会が結構ある.我々が研修医の時には病棟患 者の診療が主な仕事だった.  月16日勤務,任期は1日で日々是を更新する, という辞令だったが,勿論毎日病院へ行く.3年 目からは平日の午後に週2回,神経内科外来の外 勤へ行くことになった.自分の病院よりも忙し い外来や筋電図検査をやらせてもらい勉強になっ た.しかし病棟にいること自体が医師にとっては 重要な仕事・研修内容である.病棟にいれば何か が起こる.急変もあれば,診察して新しいことに 気付くかもしれない.当時はポケベルを持ち,受 け持ち患者に何かあれば,外出時でも電話連絡を とって,必要なら病院に戻らねばならなかった. だから夏休みの1週間はポケベルフリーとなった のでとっても気楽になれたものだ.  神経内科医として素晴らしい実力,人格の持ち 主であるという井上聖啓先生を,学生時代のクラ ブの先輩を通して紹介していただいた.ぜひ井上 先生の下で勉強したいと熱望し,1993(平成5) 年10月から横浜労災病院神経内科専修医となっ た.井上部長と副部長の下に専修医が4~5名で, 神経内科病棟40床の患者を診ていた.平日は毎朝 7時からカンファレンスを行う.前日に入院した 症例について,受持医が症例提示し討論する.症 例検討会と入院全症例のカンファレンスも週1 回,夕方から行われ深夜に及んだ.  詳細な神経学的診察は1例30分近くかかる.毎 週井上先生の回診があり,主治医ごとに受け持ち 患者約8名ずつ,1時間半位かけて先生と1対1 で回診をした.その時に井上先生が診察する姿を 見て診察法や考え方を学んだ.先生はほぼ丸1日 かけて回診をして下さった.部長と副部長とで外 来をこなし,若い専修医は病棟に張り付き,患者 を良く診るように指導された.  井上先生が若い頃に神経内科の教授から,1万 例の症例を診るまではものを言うなと言われたそ うだ.神経学的診察はそのくらいの経験が必要だ と.勿論,優秀な人はそこまでやらずともきちん と患者を診られるとは思うが,私のような凡人が ある一定のレベルにまでなるためには,多数症例 を経験しなければならない.神経内科外来に出る ようになってからは,初診だけで週20例は診るか ら,年間1000例くらい新しい患者さんを診察した. そのペースだと10年で10000例となるはずだった.  神経内科初診外来をしていた時には,20分で問 診・診察を済まさねばならなかった(要領の悪い 私は実際には30~40分もかかってしまい,待ちく たびれたたくさんの患者さんからお叱りを受け た).予約制で無かったため,朝8:30の段階で10人 くらい初診患者が外来に来ている.朝一番に来院 した患者の中には5時間後の診察になる人が出て きてしまうが,仕方がないので一旦帰宅して午後 にまた出直して来てもらったりした.神経内科の 初診外来でいろいろやってみて一番時間の節約に なる方法は,患者の話を聞かないことであった. ひどい医者だとお思いだろうが仕方がない.  これには診療科の特殊な事情もあった.リハビ リテーション業界の皆さん方には,神経内科の患 者がたくさんお世話になっているので,神経内科 がどのような科なのか承知していただいているこ とと思う.しかしながら1991年に開院した横浜労 災病院においては,院内医師に対してすら神経内 科の何たるかについて啓蒙が必要だった.当時の 井上部長は,「頭痛,めまい,しびれ,意識障害 は全部神経内科で診ます」と宣言した.結果とし て縊首や農薬誤飲・低酸素脳症などの自殺未遂を 多く診ることになったのは予想外であったが,数 多くの症例を経験させてもらえたし,高気圧酸素 療法室にも患者と一緒に何度も入った.神経内 科を皆が知るところとなり院内での信用も得られ

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訪問リハビリテーション通巻7号 (2012年4・5月) 6 た.意識障害や神経症候を発症した人があれば, 必ずコンサルテーションされるようになった.  医師同志でも神経内科が認知されるには努力が 必要だった一方で,一般市民の方々にとっては神 経内科とは何かということを啓蒙することは大変 難しかった.精神神経科のことじゃないのか,い や心療内科のことかと勘違いの連続である.初診 外来の何割かの人は,診察の途中~後半になっ て,自分の受診した科が自分の本来の目的と違う 所だと気付く.その時にここぞとばかり,神経内 科とは何なのか,などと説教を垂れると当然患者 様のご機嫌は悪化する.自分の希望していない診 療科の受付でたっぷり待たされた上に,説教を聞 かされたらたまったものではない.だから絶対に 余計な説明はしない,しないで済むように自然に 患者に分からせるように仕向ける.すなわち,診 察室に招き入れたら,問診票を見て一言「それで は一通り診察させてください」と言って,神経学 的診察を始めてしまうのである.一生懸命診察す れば,その途中で怒り出す患者さんは少ない.診 察途中で彼女が「私が受診したいのはここじゃな い!」と気付いても素知らぬ顔をして遂行するの である.診察が済んでから,神経内科としては問 題ないと思いますなどと言っても,「こんなに詳 しく診察してもらったのは初めてです」と言われ て感謝されることが多かった.感謝の気持ちを述 べられた後,「私の受診する科はここじゃなかっ たみたいだけど,今日はいいわ」,とそれほど怒 らずに帰っていただけたものである. 3.リハビリテーション科の沿革  1998(平成10)年,井上先生の同期の整形外科 医,望月部長に呼んでいただき東京都老人医療セ ンターリハビリテーション科に移った[表1].そ れまでが神経内科だから,リハビリテーションと の関わりは勿論あったのだが,リハビリテーショ ンの「リ」の字も知らない私にとってはPTとOT の区別すらついていなかった.  神経内科に未練がある私は,井上先生の主宰す る慈恵医大神経内科のカンファレンスに通い,当 院に併設する東京都老人総合研究所の神経病理で の肉眼所見(ブレインカッティング)や顕微鏡所 見のカンファレンスに参加していた.しかし神経 内科の諸先輩からは,逆に「神経内科臨床におけ るリハビリテーションの重要性」について,何度 も話を聞かされることになった.  リハビリテーション科では入院患者を受け持 ち,院内他科からの依頼患者を診察しリハビリ テーション処方を行う.処方を入力する前に必ず やっていることがある.それは全ての患者に対し て一通りの神経学的所見を取って,カルテに漏れ なく記載しておくことである.記載時間を含める と30分くらいかかっている.他科主治医も所見を きちんと書いていないことがあり,患者の神経学 的所見を取って記載しているのはその入院中には 自分だけであるということも多い.今所見を取っ て記載しなければ,次の瞬間には患者は脳卒中を 再発してしまうかもしれないし,死んでしまうか もしれない.そう考えて診察に臨んだ.再発した とすると神経所見は変わってしまうし,死んでし まったら所見そのものが永遠に取れなくなってし まう.もし病理解剖が許可されたら,生前の神経 学的所見は非常に重要だ.いくら病理解剖が取れ ても生前の身体・神経学的所見が取れていなけれ ば,研究・教育的な価値もずいぶん下がってしま い,せっかくの遺志が生かされなくなってしまう のだ.いつでも目の前の患者が死んだ時のことま で考えて診察しなさいと教わった.  当院の沿革は,1872(明治5)年養育院創立, 1947(昭和22)年養育院付属病院開設,1972(昭 和47)年現建物完成(リハビリテーション科開設), 東京都老人総合研究所開所,1986(昭和61)年東 京都老人医療センターに改称,2009(平成21)年 東京都老人医療センターと東京都老人総合研究所 を統合し,地方独立行政法人東京都健康長寿医療 センター設立,2013年隣接地に新施設完成予定[表 3].  リハビリテーション科初代部長は荻島秀男先生 で,リハビリテーション部門は病院建物の1階部

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分のほぼ全てを占有していた.当時世界に先駆け て作られた,研究所を併設する高齢者専門の総合 病院である当院が,もっとも力を入れていたのが リハビリテーションだったのだ.  「寝たきり」という言葉が邦文誌で使用され始 めたのは,横山巌(神奈川県総合リハビリテーショ ンセンター)「老年医学とリハビリテーションの 考え方」理学療法と作業療法1969(3)2; p7-10と いう文献のあたりからである.「寝たきり」の問 題は,1974年の日本リハビリテーション医学会総 会シンポジウム「老人のリハビリテーション,特 にねたきり老人の問題」で大きく取り上げられた1) 当院でも東京都老人総合研究所が「ゼロントロ ジー公開講座(第9回)(1977年11月)寝たきり 老人の看護と予防」という報告書を1978年に出版 している.  東京都養育院附属病院リハビリテーション科で は1973年からデイホスピタルを併設オープンし, 在宅での寝たきりを予防しようと試みて来た2) 当時は介護保険は勿論,高齢障害者に対するデイ ケア・デイサービスは無く,画期的な取り組みだっ た.脳血管障害などの,リハビリテーション科病 棟を退院した患者が主な対象で,片麻痺や失語症, 高次脳機能障害の方々であった.週2~5回通院, 午前9:30から午後3:00まで滞在し,各患者に処方 されたPT,OT,ST,及びグループ訓練を施行 した.昼食は持参.約1年間を目途に「卒業」し てもらい,毎年デイホスピタル「フォローアップ」 と称して同窓会(親睦会・講演会)を行った.介 護保険の開始に伴い2000年に終了・廃止となった. 「デイホスピタル」以後は,一般の介護保険サー ビスによる,デイケア・デイサービスを利用して もらうようになった.また回復期リハビリテー ション病棟が都内でも普及したため,回復期では ない当科病棟からは直接自宅退院をする患者数は 減少している. 4.救急とリハビリテーション

 救急医・ER医(emergency room doctor)は「総 合医」でもある.問診・診察で診断し,さらに集 中治療的な管理ができるところが「総合医」プラ スアルファの専門性だ.研修医の最重要目標も, 「総合医」としての基礎を身に付けることだ.一 方で我々リハビリテーション科医もまた「総合医」 でなければならないという.和歌山県立医科大学 リハビリテーション科(田島文博教授)では「救 急医学教室のご協力のもと,発症早期からリハ科 が主治医となり,治療に当たる体制」を作り,「医 師の本分である急性期における全身管理をする主 治医としての医療知識技術から退院後の『かかり つけ医』としての能力をもつ医師の育成に努めま す」と謳っている(同科ホームページより[写真 1]).  実は訪問リハビリテーションとER医にも共通 点がある.どちらにも一人で孤軍奮闘する人が あり,Burned-outする人もいるだろう.ER医は 子どもから高齢者まで,内科でも外科でも脳外科 でも診療しなければならない.訪問リハビリテー ションでも小児~高齢者が対象になるし,一人で 行くとき訪問先ではPT・OT・STの垣根を越え て評価・介入をしているのではないだろうか?し たがってER医は「何科が専門ですか?」と聞か れると「何でも診られるのが専門ですよ」と答え る.訪問リハビリテーション療法士も何でも診ら れるという専門性があった方がいいかもしれな [表3] 東京都健康長寿医療センター沿革

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訪問リハビリテーション通巻7号 (2012年4・5月) 8 い.私はER医ではないが,研修医に教えるため に何でも診られるという専門性を勉強するつもり である.  救急車で当院に搬送された脳血管障害や大腿骨 頚部骨折の患者を救急医として診療し,神経内科 や整形外科病棟に緊急入院させる.入院後はリハ ビリテーション科医として処方を出す.2~3週 間後にリハビリテーション科病棟に転科しても らって入院主治医となり,3~4週間後には在宅 調整・本人家族指導を行い自宅退院とするか,回 復期リハビリテーション病棟へ転院する.稀に急 変や病状悪化で死亡された場合には,病理解剖を お願いして脳や脊髄を含めて検索させていただ き,院内カンファレンスや学会で発表する.自分 の中では救急からリハビリテーション,在宅,病 理解剖,研究報告まで一連に繋がっている.  こんな流れで仕事をしてきたが,神経内科医な らば患者を自宅に見に行きなさいと,若い頃に恩 師から言われているにもかかわらず未だに実現で きていない.今後は機会を作って在宅診療もして みたいが,システムとして当院から往診に出てい くことは難しそうである.訪問リハビリテーショ ンや訪問看護についても同様で,当面は外来患者 や退院していく入院患者を地域・在宅へ帰してい く時には,地域で活躍している皆さんの力をお借 りするしかない.当院の新人PT・OT・STも訪 問リハビリテーションを経験するチャンスが無い のが実情である.  病院勤務の医師にとっては,患者が自宅でどん な生活をしているかを想像することは本当に難し い.往診や在宅診療を全く経験したことのない私 にとっては,元々の想像力の貧困さも相まって,口 先だけの退院指導となってしまいがちなのである.  先日も,神経内科外来通院中の70代の脊髄小脳 変性症患者さんについて外来主治医から相談され た.体幹・四肢失調が悪化し,キャスター付き歩 行器で屋外も歩行可能だが,自宅内のベッドから 立ち上がったり,ベッドに座ろうとした時によく 転倒するようになったというのである.立ってし まえば,手すりや壁つたいに歩行可能で歩行中に は転ばない.恐らくベッドと周囲の手すり・ベッ ド柵の配置などの再検討が必要なのだろう.現在 の部屋の様子を尋ねてみたが,どこを直せば良い のか見当がつかない.外来受診時にPTに訓練・ 指導をしてもらおうにも,改めて筋力増強や歩行 訓練をしてみるだけではあまり状況は改善しそう には無かった.そこで最後の頼みは訪問リハビリ テーションと考えた.ケアマネージャーに相談し て訪問リハビリテーションを開始してもらうよう にお願いした.慣れたPT・OTなら,自宅の様子 を一目見ただけで,何が問題で,どうしたら良い かについて解決策を提案してくれるのだろうと期 待している. 5.訪問リハビリテーションと医師との連携  維持期というのは,慢性の「廃用症候群」の進 行期のことである,と考えている.訪問リハビリ テーションは維持期リハビリテーションとして位 置づけられてきた.しかし,入院期間が短縮され るにしたがって,亜急性期や回復期のリハビリ テーションの一部が,在宅において訪問リハビリ テーションとして提供されることが多くなりつつ ある.  訪問リハビリテーション療法士が行う情報収集 能力は素晴らしいと思う.本人の生活機能や周り [写真1] 和歌山県立医科大学リハビリテーション科HP http://www.wakayama-med.ac.jp/dept/igakubu/160486/index.html

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の環境,いわゆる生活歴や価値観,家族との関係, 本人の役割など,病院の医師には想像もつかない ような深い内容を知る努力がなされているのだろう.  多くの合併症を持ちながら,医療情報の少ない 訪問の現場でリハビリテーションを実施する場 合,リスク管理や目標設定を行う上で医師との連 携,すなわち医師側からの情報提供が必要である. 「訪問リハビリテーション」誌を拝読すると,訪 問の現場では医学的な情報を必要としているとい う声が多く伝わって来た.誰のどんな医療情報が 欲しいかをこちらに投げ掛けていただいて,今後 は指示書に加えて何らかの医療情報伝達の手段が 必要となろう.  他のリハビリテーション科医とは異なるかもし れないが,私は入院中の患者にもリハビリテー ション処方を出す際には,訓練内容についてはほ とんど具体的な指示をしない.診断・既往・現病 歴・身体及び神経学的所見の要約,禁忌事項くら いなものだ.後はセラピストに任されており,リ ハビリテーションのプロとして思う存分実力を発 揮していただくことを期待している.  訪問リハビリテーション報告書には,訪問看護 師からの報告とは違った視点の内容を希望する. 例えば歩行の阻害因子やエンドポイント,最大歩 行距離なども書いてもらえると参考になる.通常 時や緊急時の連絡の方法については,我々の病院 では緊急時・平日時間外・休日は,原則として救 急外来へ直接連絡していただいている.通常時は Faxか,平日日中に主治医宛に電話をいただくこ とになる.  連携で大切なのは,一人の患者さんを介した単 発の連携だけでなく,普段から地域で勉強会や症 例検討会を行って顔見知りになっておく,継続的 な連携が重要だと思う.我々の今後の課題である. 6.おわりに  訪問リハビリテーションならではの特徴,利点 はたくさんある.病院に入院中は「患者さん」だっ た人が,自宅では「主人」となり,訪問者が「お 客様」として接待を受ける側に代わる.訪問では 特別な器具は用意できないが,自宅全体がリハビ リテーションの道具となる.病院ではいくら自宅 のADL訓練をシミュレーションで行っても,リ アルな実地訓練にはかなわない.  病院でも地域でも多職種の連携は重要である が,例えば人口希薄地域での訪問リハビリテー ションでも,病院で行うリハビリテーションと同 じようにPT・OT・STの3人が訪問しなければ評 価や介入は行えないのだろうか?得意,不得意は あろうが,3職種のボーダーを越えた働きも時に は必要と思う.少人数でも何でもやる,一人二役・ 三役という方向性もあるのかもしれない.「包括 的訪問リハビリテーション療法士(PT専攻,OT 専攻,ST専攻)」とか,「訪問マルチリハビリテー ションセラピスト」なんていうのもいいではない か.訪問リハビリテーションという領域はリハビ リテーション職種間の学際領域の垣根を取り払う 突破口にはならないかなどと夢想している.  「訪問で求められている理学療法士像は,運動 器しかみれない理学療法士でなく」「様々なリハ アプローチを実践する」「訪問リハセラピストと いう概念が今後必ず必要になる」3)という吉良氏 の意見には強く同意する.  病院リハビリテーションにおいては,このよう な新しい考え方は絶対に生まれてこないと思う. 地域における訪問リハビリテーションという新し いフィールドだから,日本式の新しいリハビリ テーションのあり方を提案してくれるのではない か.今後の新しい日本のリハビリテーションを担 うのは「訪問リハビリテーション」だと信じてや みません. 文献 1) 荻島秀男,寝たきり老人とリハビリテーション,日本 リハビリテーション医学会誌 12(1), 20-21, 1975 2) 荻島秀男,尾賀幹ら,リハビリテーションにおけるデ イ・ホスピタルの位置づけ,日本リハビリテーション 医学会誌 13(3), 223, 1976 3) 吉良健司:理学療法士としての訪問リハビリテーショ ンにおける専門性の活かし方(1).訪問リハビリテー ション1:89-96,2011

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消費税率変更の場合 上記定価は税率の差額分変更になります 定価2,100円(本体2,000円+税5%) ISBN978-4-905241-07-2 C3347 ¥2000E (001∼066)

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当社は「世界を変える、新しい流れを。」というミッションの下、インターネットを通じて、法人・個人の垣根 を 壊 し 、 誰 もが 多様 な 専門性 を 生 かすことで 今 まで