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地盤工学会北海道支部技術報告集第 5 5 号平成 27 年 1 月於室蘭市 繰返しせん断履歴を受けた火山灰質盛土の耐波性能に関する模型実験 室蘭工業大学大学院 学生会員 古舘聖斗 室蘭工業大学大学院 国際会員 川村志麻 室蘭工業大学大学院 学生会員 山田亮一 1. まえがき 2011 年 3 月 1

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繰返しせん断履歴を受けた火山灰質盛土の耐波性能に関する模型実験

室蘭工業大学大学院 学生会員 ○古舘 聖斗 室蘭工業大学大学院 国際会員 川村 志麻 室蘭工業大学大学院 学生会員 山田 亮一 1 . ま え が き 2011 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖地震では我が国に未曾有の被害をもたらし,地盤工学に対 しても多くの問題を提起した.一方で,東北自動車道の盛土構造物が地震津波被害を低減させた事実は,土 構造物の有用性や重要性を再確認させた事 例として高く評価 され,このような高精度の土構造物の建設が望 まれている. 本研究では,既往の研究例 え ば4)と同様,駒岡火山灰質土を用いた模型盛土斜面を構築し, 1g 場の振動載荷 模型実験を実施している.地震動を載荷後,人工 的な規則波を与え,地震動と波の作用 が複合的に作用した 場合の盛土斜面の崩壊機構を明らかにしている. 2.試験装置と用いた試料 本研究で用いた試験装置の全体図を 図-1 に示す. 2 次 元 平 面 ひ ずみ 模 型土 槽の 内 寸 法 は幅 2000mm, 高さ 700mm,奥行き 600mm であり,これに 1 次元 振 動 載 荷装 置 (振 動 台の 大き さ : 長さ 400mm,高さ 450mm,奥 行 き 580mm) を 付 設 し た . 前 面 に は 厚 さ 20mm の強化ガラスが設置され,斜面の変形挙動が 観察できるようになっている.なお,グリース塗布 などによる土槽側面の摩擦除去は行っていない.振 動載荷は油圧シリンダ ーを用いたコンピュータ制御 により,最大荷重は 150kg,振幅は最大±50mm,周 波数は 0.05 Hz~5.0 Hz の規則波(正弦波)を与える ことが可能になっている.一方,造波装置では AC モーターの回転数とクランクシャフトの長さを制御・調 整することにより,任意の波の周期と波高が設定できるようになっている.造波可能な波の周波数は 0.05 Hz ~ 1.0 Hz である . 本 研 究 では 斜 面 高 と水 深 の比 が 既往の 研 究1),12)と同程度になるように 水深を h=240 mm, 波浪周波数を 0.32 Hz として与えている. 用いた試料は,支笏カルデラを噴出源(支笏軽石流堆積物(Spfl))とする駒岡火山灰質土(ρs=2.47g/cm3, ρdmax=1.120g/cm3,ρdmin=0.759g/cm3, D50=0.27mm, Uc=46, Fc=35.2~42.6%) で あ る . この試料は 実大盛土斜 面5)の力学挙動評価に関する研究で使用 された火山灰質土と同一である.ここでは,2011 年度に構築した実 大盛土構築時 4)の締固め度 Dc=85%(ρ d =0.90g/cm 3) を基準とし,Dc が 90%(ρ d =0.95g/cm 3)と 80%(ρ d =0.85g/cm3)になるように模型斜面を作製した(乾燥密度の 変動は 5%以内である).なお,飽和度の違いが 崩壊挙動に及ぼす影響を極力小さくするために,初期飽和度 Sroの変動は約 5%以内を目標としている. 3.試験ケース ,模型斜面作製方法と試験方法 実施した模型実験では,作製した 模型斜面に振動載荷装置によって振動を加えた後,Flap 式造波装置によ り波を与えた.模型実験の詳細 を以下に示す. 図-2 は,過去に構築された実 大盛土斜面4)および既往の模型実験6)における締固め曲線を示したものであ Model slope 45° Hole positions in crank wheel Wave paddle AC Motor Crank shaft CL 240mm 7 0 0mm 4 5 0mm 3 00 mm Shaking table 図-1 模型試験で用いた振動載荷・造波装置

Wave-induced failure of volcanic embankments subjected to cyclic loadings and its evaluation: Kiyoto Furudate, Shima Kawamura and Ryoichi Yamada (Graduate School of Engineering, Muroran Institute of Technology)

地 盤 工 学 会 北 海 道 支 部 技 術 報 告 集 第 5 5 号

(2)

る.実大盛土斜面の締固め曲線を実線に,既往の模 型実験の締固め曲線を点線に示している.また,本 振動実験の試験条件を●印でプロットしている.実 大盛土斜面及び模型実験から得られた締固め曲線で は,駒岡火山灰質土の最適含水比は wopt = 40.5%とな っている.この締固め曲線を基準にし,過去の一連 の模型実験では初期含水比が最適含水比 を挟む形で 設定され模型実験が行われている (図-2-①と②). 本模型実験においても同様に,初期含水比が最適含 水比を境界とし て最適含水比よりも低い含水比と高 い含水比の模型斜面を作製している.その後,20 回 の繰返し振動載荷を模型斜面に与えた後, 造波試験 を開始し,複合的な外力が斜面崩壊に及ぼす影響を 調べている.図-2 の③では,締固め度を一定にし,初期含水比の違いが斜面崩壊に及ぼす影響(Case1,Case2) を,②では初期含水比を一定にし,締固め度の違いが斜面崩壊に及ぼす影響(Case2~Case4)を,②と③で は初期含水比及び締固め度を一定にし, 入力加速度の違いが斜面崩壊に及ぼす影響 (Case2,Case5~Case8) を調べている .実施した全試験ケースを 表-1 に示す. 【斜面崩壊の定義と入力加速度の設定方法】 既往の研究7)~11)では,土質材料,斜面角,降雨強度の違い,不透水層の有無にかかわらず, 飽和度がピー クに達し,PIV 解析から算出したせん断ひずみが 4~6%発生した後に崩壊に至っている.本研究では,模型 斜面作製時に 6 本挿入した凧糸の変位から算出したせん断ひずみをそれぞれ算出し( 写真-1 参照),その平 均値が 4%以上になった時点を斜面崩壊と定義している. また,図-3 は実大に換算した 盛土の波の侵食崩壊の定義を 示したものである.本研究では簡易分割法によ り安全率を導出し斜面崩壊を定義し ている.既往の研究 12)に基づいて崩壊天端幅を推定すると ,天端 0.5m 写真-1 凧糸を埋め込んだ模型斜面 図-2 締固め曲線 図-3 侵食距離と安全率の関係 表-1 試験ケース

T est case Case 1 Case 2 Case 3 Case 4 Case 5 Case 6 Case 7 Case 8

Sample name

Angle of inclination, a (°)

Initial water content (%) 37 Length of base, B (mm) Dry density, rd (g/cm 3 ) 0.95 0.80 Acceleration (gal) - - - - 550 280 250 150 Shear strain (%) - - - - 5.61 2.74 2.00 1.05 Water depth (m) Wave frequency (Hz) 0.32

Komaoka volcanic soil 45 0.24 400 43 0.90 0.85 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 1.4 W0=43% wo=38 Eroded distance, X (m) S a fe ty fa c to r, Fs Slope angle 45o Slope height H=1.5m c'=0  t=12.4, 12.8kN/m3 X H 0.5m w0=43% w0=37% X=0.42m

Initial slope

25 30 35 40 45 50 55 60 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 Water content, W(%) Sr=90% Sr=80% Sr=70% W Compaction test, Komaoka wopt=40.5%, ρdmax=0.910g/cm3 Dry densit y, ρd (g/c m 3) Degre e of compac ti on , Dc(%) 50 60 70 80 90 100 110 □A-c method (1.0Ec)

●Model test Dc=90% Dc=85% Dc=80% ② ① ③

(3)

の位置ですべり破壊する ことにな った.この結果 に基づいて安全率を計算すると,侵食距離が 0.42m に達した時点 において安全率が 1.0 を下回る.本 研 究 で は ,試 験 装 置 の 制 約 上 , 模 型 の ス ケ ー ル を 1/5 に し て い るた め , 波によ る 侵食 距離 が 8cm 達 した時点が実大のそれに相当する.その値を波の 侵食崩壊と定義した. また,入力加速度の違い による影響を評価する ために,初期含水比 37%で作製した模型斜面を基 準とし,せん断ひずみ(=1,2,3,4~ 6%)に 対 応する入力加速度を 決定した.初期含水比 43%の 斜 面 は, 37%の模型斜面と同じ入力加速度下で振 動載荷を与えた場合について比較・検討している (表-1 参照). 【斜面作製方法と試験条件】 (a) 所 定 の 斜 面 形 状 に な る よ う に ア ル ミ サ ッ シ を 設 置 し , 初 期 含 水 比 を 実 験 ケ ー ス (w0 = 37,43%) ご とに 調整す る.そ の後 , 試 料を 均一に なる よ うにまきだして 堆積させる.目標の斜面密度rd = 0.90g/cm3(締固め度 85%)では,質量 13kg のロ ーラーで 1 層 7cm あたり 2 往復の締固めを行っ ている.斜面密度ρd =0.95g/cm3(締固め度 90%) では,質量 13kg のローラーを 1 層 7cm あたり 3 往 復する ことに より締 固め , またrd =0.85g/cm3 (締固め度 80%)では質量 13kg のローラーを 1 層 7cm あたり半往復の締固め ,模型盛土斜面を 作製している. (b) 所 定 の 高 さ ま で 締 固 め た 後 に , ア ル ミ サ ッ シ 上 に 鋭利 な刃先 を有す る 鉄 板を 滑ら せなが ら, 余 分な試料を取り除く. 模型実験の代表的な斜面形状・計器配置図を 図-4 に,試験条件を 表-1 に示す. ここでは,斜面崩壊現象・侵食現象 を把握するために,間隙水圧(pw1~pw2)と凧糸の変位から算出され るせん断ひずみが計測されている . 試験手順を以下に示す. 【試験手順】 ① 図-1 に示す Flap 式造波装置のパドル長さ及び波浪周波数(最大波高 H=3.23cm)を所定の値に設定する.ま た,振動載荷装置の周期,振幅を変化させ ,所定の加速度 (150,250,280,550gal)に設定する. ② 模型斜面作製後,図-1 に示す振動載荷装置を起動すると同時に,間隙水圧計,加速度計の測定を開始す る.20 回の繰返し振動載荷後,一度,間隙水圧計と加速度計を停止する. ③ その後,土槽内の底面から水深が 240mm になるまで注水する. ④ Flap 式造波装置を起動すると同時に,間隙水圧計,加速度計の測定を開始する. ⑤ 造波を開始してから斜面形状に明瞭な変形(崩壊)が現れるまで,または 4 時間実験を継続する.振動 載荷が終了した時点で模型斜面の崩壊が確認された場合 は,この時点で実験を終了と する. 図-4 代表的な模型斜面の形状と計器配置図 表-2 模型振動台実験の相似則 表-3 造波実験に関する相似則 Scale (Model/Prototype) Length 1/l Frequency l3/4 Density 1 Deformation 1/l3/4 Strain 1/l1/2 Stress 1/l Acceleration 1 Scale(Model/prototype) Length 1/N

Stress ratio in element of slope 1

Pore water pressure ratio 1

Strain in element of slope 1

Deformation 1/N Time 1/N0.5 580 50 50 50 50 50 240 240 400 Cross-section Cross-section 45 degree slope unit : mm Pore water pressure transducer : pw

Acceleration meter : am

(4)

本模型振動実験における相似則を 表-2 に示す.この相似則は土構造物の力学現象を支配する物体力を模型 盛土と実大盛土で一致させることによって導かれたものであり, 振動載荷実験では この相似則にもとづいて 議論している.一方,波の作用を再現した 重力場の模型実験では ,相似則を満足することができないため,波に ついてはフルード相似則 ,模型斜面については要素試験の考え方に従い ,実験を行っている( 表-3 参照).そ のため,間隙水圧値は有効土被り圧により正規化して整理している. 4.結果と考察 4-1.初期含水比の違いによる斜面崩壊の変化 ここでは,最適含水比 (wopt =40.5%)よ り も 低 い 含 水比 (w0 = 37%)と 高い含水比 (w0 =43%)の 2 つのケース (Case1,Case2)について,初期含水比の違いが斜面崩壊に及ぼす影響を検討する.試験条件は,斜面角 45°, 波浪周波数 0.32Hz であり,斜面密度はrd =0.90g/cm3(締固め度 85%)に調整している.なお,入力加速度 は与えていない. 写真-2はw0= 43%と w0= 37%の試験開始300秒後 の 斜 面侵食 の 様 子 を表 し たも の である .写真 か ら,w0= 43% の方がw0= 37%よりも侵食エリアが大きいことが確認される.図 -5は侵 食 距離 X(斜 面 表 面 から の 水平 距 離), 侵食面積A と試験開始からの経過時間の関係を示したものである. 侵食距離Xと経過時間の関係に着目する と,同経過時間では両初期含水比ともに ほぼ同等の侵食距離になっていることがわかる.しかしながら,侵 食面積Aと経過時間の関係を見てみると, w0= 43%の 方 が w0= 37%よりも早く侵食 エ リ ア が拡 大 して い ること がわかる.また w0= 37%で は w0= 43%と比べ, 侵 食 面積 の 急 増 点 (40~380,700~780: 図 中 の 点線 )が 存在するよ うである.これは,既往の研究2)と同様にw 0= 43%では w0= 37%と比べ,高含水状態なので盛土表面で の 波の 侵食を受け易 いことを示唆したものであ ろう.なお,斜面崩壊は試験開始 1020秒後 (w0= 43%),試 験 開 始 920 秒後 (w0= 37%)に 発 生 し た. 写真-2 初期含水比の違いにおける斜面侵食の変化 (a) w0 = 43% (b) w0 = 37% 図-5 侵食距離 X,侵食面積 A の経時変化 Wave frequency 0.32Hz Water content 43% Elapsed time 300sec

Initial slope

Eroded distance

Eroded area

(a)

Wave frequency 0.32Hz Water content 37% Elapsed time 300sec

Initial slope

(b)

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 0 200 400 600 800 1000 1200 E rod ed d ist an ce,X (cm ) Elapsed time(sec)

Wave-induced failure of slope Dc=85%,f=0.32Hz,h=0.24m w0=43%,37% w0=43% w0=37% 0 20 40 60 80 100 120 0 200 400 600 800 1000 1200 E roded area,A (cm 2) Elapsed time(sec)

Wave-induced failure of slope Dc=85%,f=0.32Hz,h=0.24m w0=43%,37%

w0=43%

(5)

図-6は同条件における過剰間隙水圧挙動を示したものである.なお,過剰間隙水圧uを 初 期 有効 土 被り 圧 vo’で正規化して示している.図より,w0= 43%の 試 験 開 始 直 後 では 過 剰間 隙 水圧の 上 昇 は あま り 見ら れ ない . 一方,w0= 37%では試験開始直後から徐々に過剰間隙水圧が蓄積している.一般に , 最 適 含水 比 を挟 み 湿潤 側(w0= 43%)では透水係数が最小値を示すことから,波の浸透の影響が小さく,層流力によって侵食が進 行したものと考えられる.w0= 37%ではそれに比べて透水係数が高いため,盛土内に浸透しやすく,その結 果として間隙水圧が上昇したことが考えられる. 4-2.締固め度の違いによる斜面崩壊の変化 ここでは,w0 =43%の斜面 に つ い て,締 固 め度 の 違いが 斜 面 崩 壊に 及 ぼす 影 響を検 討 す る.斜 面 密度 はrd = 0.90g/cm3(締固め度 85%)及びrd =0.95g/cm3(締固め度 90%),rd =0.85g/cm3( 締固め度 80%)の 3 つのケ ース(Case2~Case4)である.なお,入力加速度は与えていない. 写真-3はDc= 80%とDc= 90%の締固め度における 試験開始 300秒後の斜面侵食の様子を表したものである. 写真-2(a)および写真-3を比較すると,締固め度が高くなるにつれて,経過時間に伴う 侵食エリアは減少す る傾向が伺える.図-7は侵食距離 X(斜面表面からの水平距離),侵食面積 A と試験開始からの経過時間の 関係を示したものである.はじめに,侵食距離Xと経過時間の関係を見てみると,締固め度が増加するにつ れて,侵食され難くなっていることがわかる. 侵食面積Aも同様に,経過時間に比例して増加する傾向が見 られた. 図-8は同条件における過剰間隙水圧挙動を示したものである.先ほどと同様に 過剰間隙水圧uを 初 期有 効 土被り圧vo’で正規化して示している.締固め度が変化しても湿潤側(w0= 43%)で は 試 験 開始 直 後に 過 剰間 隙水圧の上昇はあまり見られなかったが,締固め度が減少するにつれ て過剰間隙水圧の増加が顕著に現れた. 図-9は締固め度と試験開始から 斜面崩壊までの時間の関係を表したものである. 試験開始から 斜面崩壊ま での時間tf を締固め度80%の試験開始から斜面崩壊までの時間tf80で正規化して示している.図より,締固め 図-6 初期含水比の違いにおける間隙水圧挙動 の変化 (a) w0 = 43% (b) w0 = 37% 写真-3 締固め度の違いによる斜面侵食 状況の変化 (a) Dc= 80% (b) Dc= 90% -0.25 0 0.25 0.5 0.75 1 1.25 0 300 600 900 1200 1500 Ex cess por e w ater pr essur e ratio Δu/σ v0 ' Elapsed time(sec) pw1 pw2 45 degree slope Dc=85% f=0.32Hz h=0.24m w0=43% ρd=0.90g/cm3 pw1 pw2 failure -0.25 0 0.25 0.5 0.75 1 1.25 0 300 600 900 1200 1500 Ex cess por e w ater pr essur e ratio Δu/σ v0 ' Elapsed time(sec) pw1 pw2 45 degree slope Dc=85% f=0.32Hz h=0.24m w0=37% ρd=0.90g/cm3 pw1 pw2 failure

(a)

(b)

Wave frequency 0.32Hz Water content 43% Elapsed time 300sec Degree of compaction 80%

Initial slope

(a)

Wave frequency 0.32HzWater content 43%

Elapsed time 300sec Degree of compaction 90%

Initial slope

(b)

(6)

度が上昇するにつれて斜面崩壊までの時間が 増加して いることがわかる.例えば,斜面崩壊は,Dc=90%では 試験開始1070秒後,Dc=85%では1020秒後,Dc=80%で は680秒後に発生した.締固め度が85%を超えた点から 勾配が急激に上昇し,斜面崩壊までの時間 にあまり変 化がなくなることは興味深い . 4-3.振動履歴後の波の侵食による 斜面崩壊 ここでは,w0 =43%に つ い て , 振 動 履歴 を 与え た 後 に波を作用させて斜面崩壊させたケースについて報告 する.試験条件は,波浪周波数 0.32Hz,斜面密度rd = 0.90g/cm3(締固め度 85%)に調整している.入力加速度は 550gal,280gal,250gal,150gal,入力加速度なし の 5 ケース(Case2,Case5~Case8)と比較した. 図-10 に入力加速度の違いによる応答加速度の変化を示す.入力 加速度 150gal(γ =1.0%)の 場 合( 図 -10(a) 参照)では,試験開始後,天端部の応答加速度が少し大 きくなるが,斜面にひび割れ,崩壊は発生しなかっ た.図示は省略するが,入力加速度 250gal(γ =2.0%), 280gal( γ =3.0%)の場合についても同様の結果であ った.次に,入力加速度 550gal(γ =6.0%)の場合(図 -10(b)参照) では ,試 験 開始後 , 天端 部 の応 答 加 速度 はかなり増加し,盛土底部より水の浸み出しが確認されたが,斜面にひび割れ,崩壊は発生しなかった.図 示は省略するが,間隙水圧挙動の上昇傾向3)から,この試験ケースではサイクリックモビリティ―に 移 行し たことが確認されている.振動終了後,150gal(γ =1.0%)で は ,0.1%の 鉛直ひずみv(沈下量/斜面初期の高 さ)が,550gal(γ =6.0%) では, 1.7%の 鉛 直 ひ ずみvが発生した.

写真-5は,入力加速度550gal(γ =6.0%),280gal( γ =3.0%),250gal( γ =2.0%),150gal( γ =1.0%)の

振動載荷履歴後 に波を作用させたケースの試験開始300秒後の侵食の様子を示したものである.写真-2(a) と写真-5の比較では,入力加速度が 250galを下回ると経過時間に伴う侵食エリアは減少する傾向が見られた. 図-8 締固め度の違いによる間隙水圧挙動の変化 (a) Dc= 80% (b) Dc= 90% 図-7 侵食距離 X,侵食面積 A の継時変化 図-9 締固め度と斜面崩壊時間の関係 -0.25 0 0.25 0.5 0.75 1 1.25 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 Ex cess por e w ater pr essur e ratio Δu/σ v0 ' Elapsed time(sec) pw1 pw2 45 degree slope Dc=90% f=0.32Hz h=0.24m w0=43% ρd=0.95g/cm3 pw1 pw2 failure -0.25 0 0.25 0.5 0.75 1 1.25 0 250 500 750 1000 Ex cess por e w ater pr essur e ratio Δu/σ v0 ' Elapsed time(sec) pw1 pw2 45 degree slope Dc=80% f=0.32Hz h=0.24m w0=43% ρd=0.85g/cm3 pw1 pw2 failure

(a)

(b)

0 20 40 60 80 100 120 0 200 400 600 800 1000 1200 E roded area,A (cm 2) Elapsed time(sec)

Wave-induced failure of slope w0=43%,f=0.32Hz,h=0.24m Dc=85~90% Dc=85% Dc=80% Dc=90% 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 0 200 400 600 800 1000 1200 E ro d ed d is tan ce, X (cm ) Elapsed time(sec)

Wave-induced failure of slope w0=43%,f=0.32Hz,h=0.24m Dc=85~90% Dc=85% Dc=80% Dc=90% 78 80 82 84 86 88 90 92 0 0.3 0.6 0.9 1.2 1.5 1.8 Degr ee of com paction (% ) Elapsed time

(7)

写真-5 締固め度の違いにおける斜面侵食の変化 (a) 550gal (b) 280gal (c) 250gal (d) 150gal

写真-4 振動載荷後の斜面形状 (a) 150gal(1)(b) 550gal(=6.0%)

図-10 入力加速度の違いによる応答加速度の変化( w0 = 43%, 振動載荷時)

(a) 150gal(1)(b) 550gal(=6.0%)

Wave frequency 0.32Hz Water content 43% Elapsed time 300sec Acceleration 550gal

Initial slope

(a)

Wave frequency 0.32Hz Water content 43% Elapsed time 300sec Acceleration 280gal

Initial slope

(b)

Wave frequency 0.32Hz Water content 43% Elapsed time 300sec Acceleration 250gal

Initial slope

(c)

Wave frequency 0.32Hz Water content 43% Elapsed time 300sec Acceleration 150gal

Initial slope

(d)

=1.7%

Initial slope

γ =5.6%

(b)

=0.1%

Initial slope

γ =1.0%

(a)

0.0 4.0 8.0 - 8.0 - 4.0 0 2 4 6 8 45 degree slope α=150gal ρd= 0.90 g/cm3 0.0 4.0 8.0 - 8.0 - 4.0 0 2 4 6 8 45 degree slope α=550gal ρd= 0.90 g/cm3

(a)

(b)

(8)

図-11は侵食距離X(斜面表面からの水平距離),侵食面積 A の具体値を試験開始からの経過時間の関係 と して示したものである.侵食距離 Xと経過時間の関係を見てみると, 280gal(γ =3.0%) 以 下 で あ れ ば入 力 加 速度が減少するにつれて入力加速度 なし(γ =0%) の状態 よりも侵 食 され 難くなっ て い る こと が わか る .一 方,入力加速度が550gal(γ =6.0%)では 入 力 加 速 度なし( γ =0%)の 状 態 に 比 べて 侵 食 さ れや す くな っ てい る.同様に,侵食面積Aは経過時間に比例して増加する傾向が見ら れた.特に,入力加速度が550gal(γ =6.0%) では入力加速度 なし(γ =0%)の 場 合 に 比べ ,そ の 増加 率 が 急 激に 上 昇し て いる.ま た,入力 加 速度 が 280gal (γ =3.0%)以 下 で あ れ ば 入力 加 速 度 が減 少 する と ともに ,そ の 勾配 は 低下 し て いる .また 入力 加 速度 150gal (γ =1.0%) の場合 では,侵 食 エ リ アが 急 激に 上 昇する 点 (450~600秒 )も 存 在 した( 図 中 の 点線 参 照) . これ は既往の研究12)のように斜面が波により侵食され ,ノッチを形成し,それにより小規模崩壊が進行的に発生 したことに起因したものであろう. 図-12は同条件において過剰間隙水圧挙動を示したものである.先ほどと同様に 過剰間隙水圧uを 初 期有 効土被り圧vo’で正規化して示している.入力加速度が変化しても最適含水比よりも湿潤側(w0= 43%)で は 試験開始直後に過剰間隙水圧の上昇はあまり見られな かった.特に,入力加速度が減少するにつれて過剰間 隙水圧は蓄積し難くなっている . 図-12 入力加速度の違いにおける間隙水圧挙動 の変化 (a) 550gal (b) 280gal (c) 250gal (d) 150gal

図-11 侵食距離 X,侵食面積 A の経時変化 -0.25 0 0.25 0.5 0.75 1 1.25 0 250 500 750 1000 1250 1500 Ex cess por e w ater pr essur e ratio Δu/σ v0 ' Elapsed time(sec) pw1 pw2 45 degree slope Dc=85% f=0.32Hz h=0.24m w0=43% ρd=0.90g/cm3 ac=150gal pw1 pw2 -0.25 0 0.25 0.5 0.75 1 1.25 0 200 400 600 800 1000 1200 Ex cess por e w ater pr essur e ratio Δu/σ v0 ' Elapsed time(sec) pw1 pw2 45 degree slope Dc=85% f=0.32Hz h=0.24m w0=43% ρd=0.90g/cm3 ac=250gal pw1 pw2 -0.25 0 0.25 0.5 0.75 1 1.25 0 300 600 900 1200 1500 1800 Ex cess por e w ater pr essur e ratio Δu/σ v0 ' Elapsed time(sec) pw1 pw2 45 degree slope Dc=85% f=0.32Hz h=0.24m w0=43% ρd=0.90g/cm3 ac=280gal pw1 pw2 failure -0.25 0 0.25 0.5 0.75 1 1.25 0 250 500 750 1000 Ex cess por e w ater pr essur e ratio Δu/σ v0 ' Elapsed time(sec) pw1 pw2 45 degree slope Dc=85% f=0.32Hz h=0.24m w0=43% ρd=0.90g/cm3 ac=550gal pw1 pw2 failure

(a)

(b)

(c)

(d)

0 20 40 60 80 100 120 0 300 600 900 1200 1500 1800 E ro d ed ar ea ,A (cm 2) Elapsed time(sec)

Wave-induced failure of slope Dc=85%,f=0.32Hz,h=0.24m w0=43%,ac=150~550gal NCL 550gal 280gal 250gal 150gal 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 0 450 900 1350 1800 E rod ed dis tance, X (cm ) Elapsed time(sec)

Wave-induced failure of slope Dc=85%,f=0.32Hz,h=0.24m w0=43%,ac=150~550gal NCL 550gal 280gal 250gal 150gal

(9)

次に, 斜面崩壊に至るまでの時間を整理した.一連の実験において入力加速度550galでは大きなせん断履 歴を受けたため,波による斜面崩壊までの時間は 760秒(γ=6.0%)となり,入力加速度なし(γ=0%)に比べ 減少した.また,入力加速度 150gal(γ=1.0%)では1730秒,250gal(γ=2.0%)では1490秒,280gal(γ=3.0%) では1100秒で崩壊し,斜面内のせん断ひずみが大きくなるほど崩壊までの 時間が短くなる結果となった.そ の具体値を図-13に示す.ここで,崩壊時間はw0 =43%に お け る 振 動履 歴 無 し の ケース の 崩 壊 時間 Tfailure0(1020 秒)によって正規化して示している.図より,せん断ひずみが 1%時にピークを迎え,それ以降は,せん断ひ ずみが大きくなるほど崩壊までの時間が早くなっていることがわかる.また,せん断ひずみが 4%を超えると 振動により斜面崩壊していることから,振動載荷履歴が無い場合よりも早く崩壊することがわかる. 以上のことから,最適含水比よりも高い含水比で作製した本模型斜面では,振動による締固め効果によっ て波の侵 食に よ るす べ り崩壊 の 抵 抗 が上 昇 し, 振動載荷が無い場合よりも崩壊までの時間が 増加することが示された .一方,さらに大きな せん断履歴を 受けた場合(せん断ひずみ約 3% 以上)では,その影響は無視できないことが明 らかにされた.そのため,盛土 斜面の安定性を 議論する上では せん断履歴の影響 を把握する ことが極めて重要である.今後は浸透流解析を 行い,詳細を明らかにする予定である. 5 . 結論 造波装置および振動載荷装置を用いた 一連 の模型実験より,次のような 結論を得た. (1) 波の侵食作用を受ける盛土斜面では,初期含水比の違いは斜面の崩壊形状ならびに力学的安定性に影 響を及ぼす. (2) 締 固 め 度 の 違 い は 斜 面 の 強 度 お よ び 斜 面 崩 壊 に 至 る ま で の 時 間 に 影 響 を 及 ぼ す が , 締 固 め 度 が Dc=90% 以 上 に な ると , 斜面 崩 壊 ま での 時 間に あ まり変化は 現れない . (3) 動的振動によるせん断履歴の違いは,斜面のすべり抵抗ならびに斜面崩壊へ至る時間や斜面崩壊の形 状に影響を及ぼす. (4) 地震動のような外力によって 発生する盛土斜面内のせん断ひずみの把握は,斜面の安定性を議論する 上で重要である. 謝辞 本研究を進めるにあたり,平成 26 年度科学研究費補助金 基盤研究 C(代表 川村志麻)から研究補助が 与えられた.また,実験及びデータ整理に室蘭工業大学 藤本 遼 君と関 謙悟 君の協力を得た.末筆ながら 記して謝意を表します. 参考文献 (1) 川村 志麻・三 浦 清一:波 の侵 食 作 用 によ る 斜面 の 崩壊と そ の 安 定性 評 価法 ,土 木学 会 論 文 集 , No.4/C-68, pp.643-657, 2012. (2) 古舘聖斗 , 川村志麻 , 三浦清一 , 佐藤要太 : 繰返し載荷を受けた火山灰質盛土の耐波性能に関する模型 実験,土木学会年次学術講演会講演 集,69(C),pp.537-538, 2014. (3) 山田亮一,川村志麻,三浦清一,佐藤要太: 地震動及び降雨履歴を受けた火山灰質土斜面の力学挙動に 関する模型実験 ,地盤工学会北海道支部技術報告集,第 54 号,129-138,2014. (4) 工藤明日香,三浦清一,川村志麻,横浜勝司,松村聡,海谷宣弘:火山灰質粗粒土によって構築した実 大盛土斜面の力学挙動計測,地盤工学会北海道支部技術報告集,第 52 号,pp.193-198, 2012. (5) 川 村 志 麻 , 三 浦 清 一 , 宮 浦 征 宏 : 実 物 大 盛 土 の 崩 壊 現 象 と そ の 動 態 観 測 , 地 盤 工 学 会 北 海 道 支 部 技 術 報 図-13 せん断ひずみ量による崩壊時間の変化 Shearing strain (%)

T

fai lur e

/T

fai lur e0 0 1 2 3 4 5 6 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 2.2 2.4 Tfailure0=1020(s) w0=43%

Wave loading only

(10)

告集,第 54 号, pp.177-184,2014.

(6) 佐藤要太,川村志麻,三浦清一:締固め条件の違いが火山灰質土斜面の崩壊現象に及ぼす影響,地盤工 学会北海道支部技術報告集,第 53 号, pp.175-184, 2013.

(7) 川村志麻,三浦清一,石川達也,横浜勝司:寒冷地にある 不飽和火山灰質土斜面の降雨模型実験による 崩壊現象とその評価 ,土木学会論文集 C,Vol.66, No.3, pp.577-594, 2010.

(8) S. Kawamura and S. Miura: Rainfall-induced failures of volcanic slopes subjected to freezing and thawing, Soils and Foundations, Vol.53, No.3, pp. 443 -461, 2013.

(9) 川村志麻,三浦清一,奥田健太,中野博貴,石川達也:凍結融解履歴が火山灰質土斜面の降雨時力学挙 動 に 及 ぼ す 影 響 , 降 雨 と 地 震 に 対 す る 斜 面 崩 壊 機 構 と 安 定 性 評 価 に 関 す る シ ン ポ ジ ウ ム 論 文 集 , pp.231-236, 2009. (10) 川村志麻,奥田健太,中野博貴,三浦清一, 横浜勝司 :破砕性火山灰質土 斜面の降雨時力学挙動に及ぼ す諸要因の影響,地盤工学会北海道支部技術報告集,第 50 号, pp.127-136, 2010. (11) 川村志麻,奥田健太,三浦清一, 芦原真志 :凍結融解履歴を有する破砕性火山灰質土斜面の崩壊機構に 関する模型実験,地盤工学会北海道支部技術報告集,第 51 号, pp.53-62, 2011. (12) 川村志麻 , 栗林正樹 , 井野寿人 : 波の侵食に起因する斜面崩壊に関する模型実験 ,土木学会 年次学術講 演会講演集,62(3),pp.47-48, 2007.

参照

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