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36:378 第 38 回日本脳卒中学会講演シンポジウム 原著 36: , 要旨 TIA 2 t-pa Key words: stroke registry, stroke subtype, onset-visi

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36:378 1)島根大学医学部内科学講座内科学第三 2)島根大学 (2013 年 12 月 30 日受付,2014 年 1 月 7 日受理)

脳卒中データバンクからみた最近の脳卒中の疫学的動向

山口 修平1) 小林 祥泰2)  要旨:1999 年から 2012 年まで脳卒中データバンクに登録された 10 万例余りの急性期脳卒中患者 データの中から,最近の脳卒中疫学に関連する内容について経年変化を中心に解析を行った.虚血 性脳卒中ではアテローム血栓性梗塞・塞栓が 31%,ラクナ梗塞 29%,心原性脳塞栓 26%で,経年的 には心原性脳塞栓の増加傾向が認められた.心原性脳塞栓は加齢と共に増加し,80 歳以上で 30%を 占めた.発症−来院時間については TIA で 2 時間以内の受診が増加しているが,その他の病型では 著変が認められなかった.重症度に関しては虚血性脳卒中で経年的な軽症化が認められた.一方, 退院時予後に関してはアテローム血栓性梗塞でのみ改善が認められ,他の病型については不変で あった.高齢化に伴う心原性脳塞栓の予防対策の必要性および t-PA 治療推進を目指した早期受診啓 発活動の重要性が示唆された.

Key words: stroke registry, stroke subtype, onset-visit time, chronological change

はじめに  脳卒中は我が国における心血管疾患の中でも頻度が高 く,死亡率も第 4 位と上位であり,死亡患者数は 12 万 人に及んでいる(平成 23 年度厚生労働省).さらに介護 が必要となった原因疾患として脳卒中は 27%を占め, 最も重要な疾患の一つである.  脳卒中テータバンクは脳卒中の急性期治療を標準化 し,日本人における脳卒中治療のエビデンスの検証と確 立を目的として小林らが開発した登録型データベースで あ る1). そ の 運 営 は 現 在 Japan Standard Stroke Registry

Study Group (JSSRS group)により行われており,日本脳 卒中協会に事務局が置かれている.これまで全国の 93 施設から症例の登録がなされている.このデータベース の解析は,2003 年,2005 年,2009 年にそれぞれ単行本 「脳卒中データバンク」として出版されており,我が国の 脳卒中急性期医療の現状把握に貢献している2–4).今回, 2012年末までに集積されたデータの一部を解析し,脳 卒中急性期医療の現状に関して検討を行ったので報告す る.14 年間のデータの蓄積があることから,今回の解 析ではこの期間の経年変化に注目した検討を行った. 対象と方法  今回解析の対象としたのは,1999 年 1 月から 2012 年 12月まで脳卒中データバンクに登録がなされた 107,336 例である.男性 59%,女性 41%である.平均年齢は 70.5±12.9 歳で,その年齢分布は,49 歳以下 7%,50 歳 台 14 %,60 歳 台 25 %,70 歳 台 31 %,80 歳 以 上 23 % で,70 歳台が最も多数を占めた.症例の登録は 93 施設 からなされている.登録施設の分布は,北海道 8 施設, 東北 5 施設,関東 24 施設,北陸 2 施設,中部 2 施設, 近 畿 11 施 設, 中 国 19 施 設, 四 国 5 施 設, 九 州 15 施 設,沖縄 2 施設であった.経年変化に関する検討では, 時期を 1999∼2004 年(I 期),2005∼2008 年(II 期), 2009∼2012 年(III 期)の 3 つの期間に分けた.統計学的 解析は χ2検定を用いた(SPSS 18.0 を使用). 結  果 1.病型別・年齢別の発症頻度と経年変化  対象患者全体の病型別頻度に関して,まず虚血性脳卒 中について解析した.虚血性脳卒中の中で占める各病型 の割合は,アテローム血栓性梗塞が塞栓を合わせて 31%と最も高頻度で,次いでラクナ梗塞の 29%,心原 性脳塞栓 26%の順であった.一過性脳虚血発作(TIA)は

原  著

脳卒中36: 378–384, 2014

第38回日本脳卒中学会講演 シンポジウム

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脳卒中の疫学的動向 36:379 7%であった.一方,出血性脳卒中では高血圧性脳出血 が脳卒中全体の 14%を占め,くも膜下出血は 6%の頻度 であった.  脳卒中の各病型が各年齢層に占める割合を解析したも のを Fig. 1 に示す.TIA は 4∼6%で加齢と共に低下傾向 にあった.アテローム血栓性梗塞は 60 歳台から 80 歳台 までほぼ同様で 20%前後であった.アテローム血栓性 塞栓は 5%前後であった.ラクナ梗塞で頻度が高いのは 60歳 台 で 25 % を 占 め, 次 い で 70 歳 台,50 歳 台 の 順 で,80 歳台では 19%に減少した.心原性脳塞栓は逆に 60歳未満の 9%から加齢と共に急激に増加し,80 歳台 が最も高頻度で 30%を占めた.出血性脳卒中に関して は,高血圧性脳出血,くも膜下出血ともに 60 歳以前が 最も頻度が高く,それぞれ 20%,13%を占めた.いず れも加齢と共に頻度の減少を認めた.  次に虚血性脳卒中と出血性脳卒中の中でそれぞれの病 型 が 占 め る 割 合 の 経 年 的 な 変 化 に つ い て 検 討 し た (Fig. 2).虚血性脳卒中ではその割合に有意の経年変化 を認め,心原性脳塞栓が I 期の 25%から III 期の 28%に 増加した.他の病型はほとんど変化を認めなかった.出 血性脳卒中について脳卒中全体に占める割合の変化をみ る と, 高 血 圧 性 脳 出 血 が I 期 13 %,II 期 15 %,III 期 14%とやや増加を認めた.一方,くも膜下出血は I 期 7%,II 期 6%,III 期 5%と減少傾向を認めた.  高血圧性脳出血の患者で抗血栓薬の服用者の経年的変 化を検討した.Fig. 3 に示すように,抗血小板薬,抗凝 固薬,その併用のすべてにおいて服用率の上昇が認めら れた. Fig. 1 年代別にみた脳卒中病型の頻度 Fig. 2 虚血性脳卒中病型の頻度の経年変化

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脳卒中 36 巻 5 号(2014:9) 36:380 2. 病型別の発症−来院時間と経年変化  次に病型により発症から来院までの時間に差がある かにつき検討した(Fig. 4).この解析に関しては,発症 後 7 日以内の受診例のみを対象とした(79,707 例).発症 後 2 時間以内に来院できた患者が最も多いのはくも膜下 出血(53%)で,高血圧性脳出血(52%),AVM 脳出血 (46%),心原性脳塞栓(45%),TIA(44%)がそれに次 いで多かった.一方最も受診が遅れるのはラクナ梗塞 (2 時間以内 14%)であった.発症−来院時間の経年変化 (Fig. 5)をみると,2 時間以内の来院割合は TIA で経年 的に増加が認められるが,他の病型では II 期において早 期受診の割合が増加していたが,最近の III 期では再び 減少していた. 3.病型別の入院時重症度と経年変化  入院時の重症度を NIHSS 得点により 4 点以下,5∼10 点,11∼16 点,17∼22 点,23 点以上の 5 段階に分け, 病型毎の重症度を検討した(Fig. 6).23 点以上の重症が 多いのは出血性脳卒中でいずれの病型も重症者が 25% Fig. 3 高血圧性脳出血患者での抗血栓薬の服用頻度の経年変化 Fig. 4 脳卒中病型別にみた発症−来院時間

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脳卒中の疫学的動向 36:381 以上を占めた.一方,虚血性脳卒中では,心原性脳塞栓 の 20%が 23 点以上で最重症であった.TIA は 4 点以下 が 90%を占め,ラクナ梗塞では 72%が 4 点以下であっ た.次いで各病型の重症度の経年変化を検討した.TIA および出血性脳卒中は重症度に変化を認めなかった.一 方,TIA 以外のアテローム血栓性梗塞・塞栓,ラクナ 梗塞,心原性脳塞栓はいずれも,I 期から III 期にかけ て 4 点以下の軽症例の増加および 23 点以上の重症例の 減少が認められた(Fig. 7). 4.病型別の退院時予後と経年変化

  退 院 時 の 予 後 は modified Rankin Scale (mRS)で 評 価 し,病型ごとの相違をみた(Fig. 8).TIA は mRS 2 以下

Fig. 5 発症後 2 時間以内に来院した割合の脳卒中病型別の経年変化

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脳卒中 36 巻 5 号(2014:9) 36:382

Fig. 7 虚血性脳卒中病型別の入院時重症度の経年変化

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脳卒中の疫学的動向 36:383 が 93%を占めた.アテローム血栓性梗塞は mRS 2 以下 が 53%,ラクナ梗塞では 73%と良好であるが,心原性 脳塞栓は mRS 2 以下が 40%で mRS 5 以上が 32%を占め 予後は不良であった.出血性脳卒中では,高血圧性脳出 血の mRS 2 以下は 32%で,mRS 5 以上が 38%で予後は 不良であった.くも膜下出血の mRS 2 以下は 51%で比 較的多いが,mRS 5 以上の重症例も 33%と多かった. 経年変化をみると TIA,くも膜下出血,ラクナ梗塞,心 原性脳塞栓,高血圧性脳出血のいずれも,その予後に関 して著変は認められなかった.アテローム血栓性梗塞だ けは mRS 2 以下が I 期の 52%から III 期の 57%に増加 し,mRS 5 以上が I 期の 16%から III 期の 12%に低下 し,予後の改善が認められた. 考  案  「脳卒中データバンク 2009」4)では 2007 年までに登録 された 47,000 例余りが解析され,我が国での急性期脳 卒中の実態が明らかにされた.今回,その後に登録され た 63,000 例余りを含めた 107,336 例のデータ解析を行っ た.我が国の疫学研究では 1961 年に開始された久山町 研究が,脳卒中を含めた心血管系疾患の縦断的な観察成 果を報告している.その後,吹田研究,日本動脈硬化縦 断研究,大迫研究,端野・壮瞥町研究などの大規模なコ ホート研究が行われている.また脳卒中を主たるター ゲットとした登録研究では,J-MUSIC 研究,Fukuoka Stroke Registry研究などがあり,脳卒中疫学についての 多くの報告がなされている.今回解析を行った脳卒中 データバンクの特徴として,症例数が 10 万人以上と極 めて多数であること,さらに全国の基幹病院から登録が なされており我が国の急性期脳卒中医療の現状が全国規 模で把握できることが挙げられる.  病型別,年齢別の発症頻度はアテローム血栓性梗塞お よび塞栓(31%),ラクナ梗塞(29%),心原性脳塞栓 (26%)の順に多く,2004 年の J-MUSIC の報告に比較す るとラクナ梗塞が減少し,心原性脳塞栓が増加してい る5).最近の Fukuoka Stroke Registry(2011 年)で報告され

ているデータでは,ラクナ梗塞 27%,心原性脳塞栓 26%と,今回の結果に近似している6).今回 3 つの時期 に分けて経年的な検討を行ったところ,この 14 年間に 心原性脳塞栓の増加が目立っている.さらに年齢別の病 型の変化に関する検討でも明らかなように,高齢者で心 原性脳塞栓が急激に増大している.したがって,心原性 脳塞栓の経年的増加は人口の高齢化が関与しているもの と考えられる.出血性脳卒中に関しては,高血圧性脳出 血の割合はやや増加傾向,くも膜下出血は減少傾向を認 めた.近年抗血小板薬や抗凝固薬による脳梗塞予防が進 歩している一方で,高血圧性脳出血の増加傾向は抗血栓 薬使用の増加とも関連している可能性も考えられる. BAT研究でも抗血栓薬による出血リスクの増大が指摘 されており7),抗血栓薬服用時の血圧管理の重要性が示 唆される.  発症から受診までの時間に関しては,症状が突発する こと,重症であることが早期受診の要因と考えられ,く も膜下出血,高血圧性脳出血,AVM 脳出血,心原性脳 塞栓,TIA などで 4 割以上が早期受診をしていた.2005 年に保険収載をされた t-PA による血栓溶解治療を推進 する観点からは,心原性脳塞栓が最も良い適応になり早 期受診が望まれる.しかし 2 時間以内の受診割合の経年 変化を見ると,2005∼2008 年でやや増加したものの 2009年以降の期間には減少している.地域住民に対す る脳卒中症状を知らせる社会教育プログラムが,脳卒中 の早期認知と受診を促進し血栓溶解療法の実施率を上げ ることが示されており,啓発活動にさらなる努力が必要 である8)  脳卒中の重症度に関しては予測通り出血性脳卒中と心 原性脳塞栓で重症者が多かった.一方経年変化では,ア テローム血栓性梗塞・塞栓,ラクナ梗塞,心原性脳塞栓 のいずれの虚血性脳卒中の病型においても,入院時の症 状の軽症化が認められた.この要因については,危険因 子の管理状況,抗血栓薬や脂質異常治療薬の服薬状況な どが影響していると思われるが9),データベースの詳細 な検討がさらに必要である.一方退院時予後に関して は,経年的な改善傾向はアテローム血栓性梗塞のみで認 められ,それ以外の病型では残念ながら期待したような 改善は明らかではなかった.アテローム血栓性梗塞に対 して,我が国では一部の症例での t-PA 治療に加えアル ガトロバン,エダラボンなどが使用されることが多い が,これらが今回認められた予後改善に寄与したかにつ いても詳細な検証が必要である.t-PA が最も使用される 頻度が高い心原性脳塞栓で予後の経年変化が認められな かったことは,t-PA 治療を受けている患者の割合がまだ 少なく,今後治療例を増加させるべく努力が必要である ことを示している.  最後に,今回の解析は予備的なもので,近い将来に治 療内容や危険因子に関する詳細な検討結果がまとめられ ることが期待される. 参考文献 1) 小林祥泰:脳卒中急性期患者データベース構築に関する 研究.21 世紀型医療開発推進研究事業報告書 2) 小林祥泰(編):脳卒中データバンク.東京,中山書店,

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脳卒中 36 巻 5 号(2014:9) 36:384 2003 3) 小林祥泰(編):脳卒中データバンク 2005.東京,中山書 店,2005 4) 小林祥泰(編):脳卒中データバンク 2009.東京,中山書 店,2009

5) Kimura K, Kazui S, Minematsu K, et al: Analysis of 16,922 patients with acute ischemic stroke and transient ischemic attack in Japan. A hospital-based prospective registration study. Cerebrovasc Dis 18: 47–56, 2004

6) 北園孝成:福岡脳卒中データベース研究(Fukuoka Stroke Registry; FSR).福岡医誌 102: 285–292, 2011

7) Toyoda K, Yasaka M, Iwade K, et al: Dual antithrombotic ther-apy increases severe bleeding events in patients with stroke and cardiovascular disease: a prospective, multicenter, observational study. Stroke 39: 1740–1745, 2008

8) Adams HP, del Zoppo G, Alberts MJ, et al: Guidelines for the early management of adults with ischemic stroke: a guideline from the American Heart Association/American Stroke Associ-ation Stroke Council, Clinical Cardiology Council, Cardiovas-cular Radiology and Intervention Council, and the Atheroscle-rotic Peripheral Vascular Disease and Quality of Care Out-comes in Research Interdisciplinary Working Groups: the American Academy of Neurology affirms the value of this guideline as an educational tool for neurologists. Stroke 38: 1655–1711, 2007

9) Johnsen SP, Svendsen ML, Hansen ML, et al: Preadmission oral anticoagulant treatment and clinical outcome among patients hospitalized with acute stroke and atrial fibrillation: a nationwide study. Stroke 45: 168–175, 2014

Abstract

Epidemiology of acute stroke in Japan: Japan Standard Stroke Registry Study

Shuhei Yamaguchi, M.D., Ph.D.1) and Shotai Kobayashi, M.D., Ph.D.2) 1)Department of Neurology, Faculty of Medicine, Shimane University

2)Shimane University

Background: Stroke is still a heavy burden to our society. We have developed a stroke databank system since 1999 to standardize stroke therapy in acute stage and verify the evidence of treatment in Japanese stroke patients.

Methods: We analyzed the data of more than 100,000 patients with acute stroke registered in Japan Standard Stroke Registry from 1999 to 2012. We focused on the chronological changes in stroke patient data.

Results: Ischemic stroke was divided into three subtypes; 31% of patients had atherosclerotic, 29% had lacunar stroke, and 26% had cardioembolic stroke. Only the prevalence of cardioembolic stroke increased over the years. The incidence of cardioembolic stroke was high in aged people; 30% of stroke patients of more than 80 years had cardio-embolic stroke. The time interval between stroke onset and hospital visit did not change chronologically except for transient ischemic attack, which showed increased ratio of early visit within 2 hours after stroke onset. The severity of illness became milder in recent years for ischemic stroke, but not for hemorrhagic stroke. On the other hand, modified Rankin Scale at discharge improved only for atherosclerotic stroke in recent years, while other types of stroke did not show improvement in prognosis at discharge.

Conclusion: These data indicate the importance for prevention of cardioembolic stroke in aged people and social education for early detection of stroke symptoms and hospital visit.

Key words: stroke registry, stroke subtype, onset-visit time, chronological change

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