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85 いった事態を招かないように 記載方法についてよく検討したほうがいいでしょう この点 東京家庭裁判所のホームページ ( syosiki02/index.html) からダウンロードできる調停申立に係

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はじめに

2 月 27 日、「家事事件手続法と弁護士実務」と 題して日比谷ホールにて講演をさせていただきま した。諸先輩の前でお話しさせていただくのは誠 に僭越ではございましたが、熱心に聴講してくだ さって、感謝にたえません。 さて、2013 年 1 月 1 日に施行されたばかりの家 事事件手続法に関する解説書は多数出版されてい ます(参考文献リストをご参照ください)。家事事 件手続法が制定された経緯や条文の正確な趣旨な どはそれら関連書で確認していただくとして、上 記の講演、さらには本稿でも、弁護士実務として 押さえておくべきポイントに絞ることとしました。 なお、私は、離婚事件、特に DV 被害者の事件 を専門とさせていただいていることを考慮してい ただいたのか、家事事件手続法施行前から現在ま で続いている東京家庭裁判所と東京三会との協議 会に参加しておりますが、他の家庭裁判所での運 用について詳細を存じません。そしてまた、東京 家庭裁判所でも、施行後の状況を踏まえて、適宜 運用を改善していくことと思われますので、今回 解説するのも、東京家庭裁判所の現時点の運用が 中心となる限界がございます。各地の家庭裁判所 の現時点での運用は HP などで確認して、対応な さることをお勧めします。

一 家事調停の申立て、答弁

1 申立書の写しの送付 家事審判法の下では口頭でも申立てができまし たが(家審規 3 条)、家事事件手続法(255 条 1 項) では、申立ては書面によらなければならないとさ れました。 そして、重要なのは、原則として、調停申立書 の写しが相手方に送付されることになったことで す(法 256 条)。ですから、申立書正本に、副本を 添付します(規則 127 条による規則 47 条の準用)。 家事審判法では、申立書の写しを相手方に送る かどうかは、家庭裁判所の裁量にゆだねられてい ましたが、相手方が申立ての内容を知ったうえで 調停に臨むことが、調停を充実させ、早期解決の 観点から重要と考えられ、送付されることとなり ました。 申立書を送付することにより、相手方との感情 的対立が激しくなるおそれがあったり、申立書に 個人の秘密にわたる内容が記載されているような 場合は、家事調停の円滑な進行を妨げるおそれ があるものとして、例外的に申立書を送付しな くてもよいとされています(法 256 条 1 項ただし 書)。しかし、多数の事件を迅速に扱わなくては ならない家庭裁判所が、代理人がついている申立 書までつぶさに確認して、例外にあたるかどうか をチェックすることはほぼないと思われます。 なお、仮に申立書が例外的に送付されなかった 場合にも、審判移行となり、法 47 条 4 項の例外 事由はないと判断された場合には、原則閲覧謄写 が許可されることになります。 ですから、代理人としては、相手方が読むこと を前提に、申立書を作成する必要があります。 このような扱いの変化に伴い、郵券が 800 円か ら 1000 円に変更になりました。 2 申立書等 代理人としては、申立書副本が送達されること になった趣旨(調停の充実、手続保障)を踏まえつ つも、申立書を受け取った相手方の感情を逆なで し、不必要に感情的対立を悪化させたり、逆上し た相手方により依頼者の生活の平穏が害されると

家事事件手続法と弁護士実務

打越 さく良(弁護士 53 期)

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いった事態を招かないように、記載方法について よく検討したほうがいいでしょう。 この点、東京家庭裁判所のホームページ(http:// www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/ syosiki02/index.html)からダウンロードできる調 停申立に係る書式は、よく配慮されています。 ①申立書書式(ワード)はコンパクトに当事者目録、 申立ての趣旨、動機を記します。 ②事情説明書(エクセル)には、収入、住居、財産 の状況など裁判所が事案を理解する上で必要な 情報を記載します。調停段階では、相手方に送 付されませんが、申請があれば閲覧謄写許可さ れることがあります。なお、従前の代理人作成 の申立書には、事情説明書の内容が欠けている ことが多かったとのことであり、定型書式を使 わない場合にも、これらの事項に留意してまと めてください。 ③子についての事情説明書(エクセル)は、離婚や 内縁関係解消の調停申立にあたり、未成年の子 がいる場合に、記入して提出します。これも、 相手方に送付されませんが、申請があれば閲覧 謄写許可されることがあります。 ④進行に関する照会回答書(エクセル)は、相手方 との事前の協議状況、暴力の状況、裁判所に配 慮を求めたい事柄などを記載するものです。相 手方に開示されません。 今まで定型書式ではなく申立書を作成してきた 弁護士としては、定型書式では「物足りない」と感 じるかもしれません。しかし、申立書の写しが相 手方に送付されるという扱いに留意すれば、当事 者の対立が激しい事案、DV・つきまとい等があり 詳細を記載することによりかえって紛争を激化さ せる可能性がある場合は、慎重に定型書式を利用 するほうがよいでしょう。特にそのような事情が なく、財産分与のみが焦点といった場合には、あ らかじめ財産について詳細を書いた非定型の書式 が良いこともあるでしょう。ケースバイケースで 判断してください。 申立書に「別紙の通り」と記載し、かつ、別紙と して補充書を添付等、申立書と一体であると明確 な場合は、申立書の一部として扱われ、そのまま 相手方に送付されることになります。 なお、従前の代理人が作成する申立書等につい ては、必ずしも裁判所から良い評価を得ておらず、 むしろ非常に厳しいコメントを受けています。あ えて定型書式を利用しない場合でも、辛辣なコ メントを念頭にした方が良いでしょうi。 3 答弁書等 申立書の写しを相手方に送付した事件について は、申立書に対応する答弁書・連絡先等の届出書・ 進行に関する照会回答書の書式等が送付されるこ とになります。相手方は、初回期日の1週間前ま でに返送します。答弁書は、申立人に交付されま せんが、申立人が希望した場合には閲覧謄写が許 可される場合もあります。 4 連絡先等の届出書 裁判所によると、当事者が現住所を秘匿する必 要がある場合、申立書には住民票上の住所または 相手方と同居中だったときの住所を記載し、別途 書類の送付場所について連絡先等の届出書(HP に i  「…代理人弁護士が作成する申立書は、一般に、様々な種類の情報を区別していないこと、情報量が多いこと、夫婦間の紛争の経緯をは じめ、過去の事実を具体的かつ詳細に記載する傾向のあること等の特徴が認められます。新法の施行により、申立書の写しを原則送付する こととなった場合に、このような申立書を送付することによる支障が生じないか、仮に支障がないとしても、相手方の出席確保、調停の 円滑な進行という観点から問題はないのか十分な吟味が必要であると思います。(中略)手続の開始時に相手方に送付することとなる申立 書の記載内容は、相手方が、調停で申立人の求める内容を容易に理解できるものとしておくこと、それ以外の情報は控えめにして、ポイン トが明確になるようにすること等も、重要と思われます。」(小田正二「家事事件手続法の概要と運用に関する課題」『戸籍時報特別増刊号№ 682』40 頁~ 41 頁)   「当事者はたぶん思い余って弁護士事務所に駆け込んで、いろいろなことをお話になることと思います。それをいきなりむげに、要件事 実と言っても始まらないのは当然ですが、時々、訴状あるいは準備書面で夫婦の長きにわたる婚姻史を書かれているものがあります。し かも、どうもそれを見ていくと、語尾が『なになになのです』などとなっていて、どうもご本人に書いていただいたものをまるっと写して いるかもしれないと思うものもあります。   では、それだけ主張してどうなるのかということかと思いますけれども、それだけ主張して、果たして全部立証できるのか。仮に立証 できるとして、その意味は本当にあるのかというところを考えていただく必要があります。   東京家裁に来た直後はそういう書面を昼ドラを見る気持ちで読んでいましたが、昼ドラを見るというのもゆとりのいることでして、ポ イントを絞っていただくことが大事かと思っています」(日野直子「最近の離婚事件における動向と訴訟における留意点」『二弁フロンティ ア』2012 年 7 月号 8 頁~ 9 頁)

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あります)を提出するものとしています。連絡先 等の届出書の上に非開示の希望に関する申出書 (HP にあります)をステープラーで留めて提出す ることになります。 しかし、裁判所にもヒューマンエラーはあり、 DV 被害者の住所を加害者に教えてしまった事件 が報じられることもありますii。危険なケースで は、かつて加害者と同居していた住所を記載、あ るいは代理人の住所を記載して、裁判所にも秘匿 することも検討してください。 5 代理人等目録、委任状 申立書に添付するための代理人等目録の書式も 裁判所 HP に掲載されています。 今までは訴訟委任状で代用しても家庭裁判所に 注意されることはありませんでしたが、施行後は 手続代理委任状(資料)を用いてください。依頼者 が住所を秘匿している場合には、くれぐれも秘匿 している住所で委任状を記載しないようにしま しょう。依頼者には、知られても大丈夫な住所(か つて同居していた住所など)を記載してもらいま す。

二 家事審判の申立て

1 審判の申立て 従前は口頭による申立ても認めていましたが(家 事審判規則 3 条)、申立書を家庭裁判所に提出しな ければならないことになりました(法 49 条 1 項)。 調停不成立のときは、調停申立ての時に審判 の申立てがあったとみなされることもあってで しょうか(法 272 条 4 項)、東京家庭裁判所の HP 上、審判申立てに係る書式は調停に比べて少ない です(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/ tetuzuki/syosiki01/index.html)。 事情説明書、子についての事情説明書の写しは、 調停と異なり、相手方に送付されます。調停時に 相手方が閲覧謄写しなくても、結局審判になった ら相手方が読むことになります。 以上より、裁判所用のほか、相手方の人数分の 申立書、事情説明書等の写しを併せて提出するこ とになります。 別表第2事件については、連絡先等の届出書(調 停と同じ書式)を提出します。 非開示の希望に関する申出書を必要に応じて利 用することも、調停と同様です。 2 申立ての趣旨・理由の変更 審判の申立ての基礎に変更がない限り、申立 ての趣旨又は理由を変更できます(法 50 条 1 項)。 家事審判手続の期日においては口頭で、それ以外 は書面で行います(法 50 条 2 項)。 申立ての基礎とは、審判事項についての権利関 係の基礎となる事実であり、変更の有無は変更の 有無は、変更以前の資料が変更後もそのまま利用 可能かが一つの基準となります。たとえば、子の 親権者変更の申立てを、面会交流の申立てに変更 することは認められるでしょう。

三 書面の提出方法、記録の閲覧謄写

1 調停事件における申立書以外の書面の扱い 調停事件については、書面の扱いについて、前 述の通り申立書については原則相手方に送付され る扱いになったものの、それ以外の調停記録の閲 覧謄写については、旧法と同様、家庭裁判所が「相 当と認めるとき」に閲覧謄写を認めることとして います(法 254 条 1 項)。許可されず不服があって も、即時抗告はできません。 しかし、法改正を機に、家庭裁判所は、調停記 録の閲覧謄写についても、可能な限り許可する方 向で運用を行うようです。 いわゆる経済事件(婚姻費用、養育費、財産分与、 年金分割、遺産分割、扶養)については、提出し た書面の写しを他方当事者に交付することを求め られます。そこで、後述する通り、秘匿事項に注 意してください。 なお、戸籍謄本抄本等や遺産となる不動産等を 特定するための不動産登記事項証明書、年金分割 情報通知書等は、他の当事者交付用の写しの提出 は不要です。 ii  2007 年 7 月東京地裁書記官が被害者の住所を加害者に漏らしたため国家賠償請求訴訟となった事件など(毎日新聞 2007 年 11 月 30 日)。

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2 審判事件での書面の扱い 審判事件では、当事者から許可申立てがあれば、 全事件について、提出した書面は原則として閲覧 謄写正本等の交付を許可されることになります (法 47 条 3 項)。閲覧謄写を却下する裁判に対し 当事者は即時抗告もできます(法 47 条 8 項)。 このような改正を踏まえ、今後は、経済事件に 限らず、提出書面を他方当事者に交付することを 求められます。 なお、戸籍謄本抄本等や遺産となる不動産等を 特定するための不動産登記事項証明書、年金分割 情報通知書等は、他の当事者交付用の写しの提出 は不要です。 3 符号通し番号・資料説明書 調停・審判いずれについても、資料に、符号(申 立人は「甲」、相手方は「乙」など)と通し番号を付 して、資料説明書(資料の標目、趣旨等を説明す る書面)を作成します。 非開示希望のものについては、標目などにあま り詳細に記入しない方が適切でしょう。たとえば、 標目は「報告書」、作成者は固有名詞でなく、「医師」 などと書くのがよいでしょう。 4 秘匿情報に注意を資料の提出に注意を (1) 調停段階でも要注意 以上の通りの変更に照らし、調停段階でも、資 料の提出にはよく注意しましょう。そもそも提出 すべきかどうかを吟味するとともに、提出予定の 資料に秘匿したい情報が記載されていないか、よ く精査してください。 旧法下で「調停委員限り」と相手方に開示しない よう要請して資料を提出することも認められてき ましたが、今後はそのようなことはないと心しま しょう。 (2) マスキング処理・非開示の希望に関する申出書 提出予定資料に秘匿した事項があっても、マス キング処理で対応できる場合にはまずはマスキン グしてください。たとえば、年金分割の情報通知 書に記載された住所・発行元・勤務先、源泉徴収 票上の支払者名と所在地、生活保護受給証明書や 賃貸借契約書に記載された住所、診断書の医師名・ 病院名等が考えられます。なお、年金事務所に依 頼すると、発行元や住所を記載しない情報通知書 を発行してもらえます。 秘匿を希望する事項があり、マスキング処理で は対応できない場合には、非開示の希望に関する 申出書(東京家裁のHPに調停と別表第2審判事 件に共通の書式が掲載されています。)を添付して 提出します。非開示を希望する書面ごとに、非開 示の希望に関する申出書をステープラーで付けて 一体として提出します。対象書面との一体性が確 保できないため、FAX での提出は認められません。 書面提出時に、「非開示の希望に関する申出書」 が添付されていない場合には、非開示の希望はな い、閲覧謄写許可申請が認められても異議がない ものと扱われますので、ご注意ください。他方当 事者から閲覧謄写申請がされた場合、書面提出者 に意向は確認されません。申出書が出ていても許 可相当と裁判所が考えた場合には、提出者に事前 に打診があるそうです。

四 立会調停

1 趣旨 調停期日のはじめと終わりに、双方当事者本人 が調停室に立ち会った上で、裁判所から、手続の 説明、進行予定や次回までの課題の確認等、ある いは、成立不成立等により事件が終了する際の意 思確認を行うというもので、東京家庭裁判所等で、 家事事件手続法の趣旨のひとつである、調停手続 の透明性の確保の観点から、主体的な合意形成の 前提となる、手続の進行や対立点、他の当事者が 提出した資料の内容等について、両当事者と判所 が共通の認識を持つための取り組みとして、行わ れています。 代理人が選任されていても、代理人のみでなく、 双方当事者本人を立ち会わせます。 一律硬直的な扱いではなく、事案等に応じて柔 軟に実施するとのことです。 2 支障がある場合(実施しない・当面見合わせる) たとえばこのような場合には、立会調停は実施し ないか当面見合わせた方が適当でしょう。 ・DV 事案で遭遇を避けるべく別階待機、時差呼び 出しとしている場合

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・DV(身体的、心理的、性的問わず)があり立会 に支障がある旨進行に関する照会回答書に記載 がある場合 ・精神科、心療内科等に通院中ないし直前まで通 院していた場合 そのほか、具体的な支障が見当たらなくても説 得に応じない場合には、円滑な調停運営が見込め ないので、見合わせることになるでしょう。 代理人としては、上記のような趣旨を理解した 上で、支障がある場合には裁判所に知らせ(「進行 に関する照会回答書」に事情を書きます)、当事者 の安全安心確保に努めましょう。初回期日は特に 当事者の緊張が強いので、そのような懸念がある 場合には、慎重を期すよう求めましょう。また、 支障が予想されず、実施してみたところ、一方当 事者が他方に激しい怒りや恨みを表明する等した 場合にも、代理人としては、直ちに中止を求める べきでしょう。

五 証拠調べ、事実の調査

1 証拠調べ 新法でも、家事審判事件では、民事訴訟事件に おける当事者主義と異なり、職権探知主義はそ のまま維持されています(法 56 条 1 項)。しかし、 家事手続の中でも、当事者の協力をまたなければ 事案の解明が困難である事案もあり、当事者によ る資料収集、提出を期待するほうが妥当で合理的 なこともあり、手続保障の観点から、当事者に証 拠調べの申立権(法 56 条 1 項)が認められる一方、 証拠調べにおける当事者の責務が規定されました (法 56 条 2 項)。代理人としてはこの責務を念頭 に入念に準備をしなくてはなりません。 家事審判事件につき、民訴法の証拠調べに関 する規定の中で準用しないと個別に明記された もの以外は準用されます(法 64 条 1 項)。準用さ れない規定(民訴 179 条、182 条、187 条、188 条、 189 樹夫、207 条 2 項、208 条、224 条・229 条 4 項) は条文をご確認ください。なお、証拠調べは非公 開であり(33 条)、裁判所が職権ですることがで きます(法 56 条 1 項・258 条 1 項)。証人尋問(民 訴第 2 編第 4 章第 2 節)で準用されない規定はな く、 付 添 い(民 訴 203 条 の 2)、 遮 へ い(民 訴 203 条の 3)、ビデオリンク(民訴 204 条)なども準用 され、当事者尋問にも準用されます(民訴 210 条)。 なお、家事調停における事実の調査、証拠調べ については、法 56 条~ 62 条、64 条が準用され ています(258 条 1 項)。調査嘱託(258 条 1 項・62 条)などを活用しましょう。 2 事実の調査 別表第1審判事件については、家庭裁判所は、 事実の調査をした場合において、その結果が当事 者による家事審判の手続の追行に重要な変更を生 じ得るものと認めるときは、これを当事者及び利 害関係人に通知しなければならないとされました (法 63 条)。別表第2審判事件については、特に 必要がないと認める場合を除き、その旨を当事者 及び利害関係参加人に通知しなければならないと されました(法 70 条)。旧法の下では、事実の調 査の通知に関する規定はありませんでした。不意 打ち防止、当事者にとって審判の基礎となる資料 へのアクセスという意味で、大変重要な変更です。 別表第2の調停事件は調停が不成立となると当 然に審判に移行します(法 272 条 4 項)。調停事件 記録のうち審判手続において事実の調査がされた ものに限り、審判の資料となります。事実の調査 を行った旨の通知を受けることにより、代理人と して、記録の閲覧謄写請求を行い、何が審判の基 礎資料となっているかを把握した上で、主張反論 を組み立てることになります。 3 当事者からの陳述聴取、審問期日の立会い (1) 必要的陳述聴取 別表第2審判事件については、家庭裁判所は当 事者の陳述を聴かなくてはなりません(法 68 条)。 当事者以外の者についても、各則において必要的 陳述聴取が規定されていることにもご注意くだ さ い(120 条、152 条、161 条 3 項、169 条、178 条、184 条、188 条 3 項、210 条、229 条、236 条、 240 条 4 項、120 条 1 項)。 (2) 陳述聴取の方法 陳述聴取の方法としては、審問期日における陳 述聴取、書面による照会、家裁調査官による聴取 などがあります。家事手続では当事者に期日指定 の申立権はありません(34 条 1 項)。

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当事者の申出があるときは、家庭裁判所は、審 問の期日で陳述の聴取をしなければなりません (法 68 条 2 項)。ただし、離婚時年金分割審判事 件については、当事者に審問期日を求める申出権 はありません(法 233 条 3 項)。 (3) 抗告審 抗告審が原審判を取り消す場合は当事者等につ き陳述を聴取しなくてはなりません(89 条 1 項)。 別表第2審判事件については、原審当事者(抗告 人除く)につき陳述を聴取しなくてはなりません (同条 2 項)。 抗告状の写しの送付(88 条 1 項)とあいまって、 不意打ち防止、当事者等に攻撃防御の機会を保障 するものとして重要な規定です。 4 審問の立会 審問期日は、裁判所への心証への影響が直接的 ですから、他方当事者に反論の機会を保障する必 要があります。 そこで、家庭裁判所が審問期日を開いて事実の 調査をするときは、他方当事者は原則として当該 期日に立ち会うことができます(法 69 条)。ただ し、当事者が期日に立ち会うことによって、事実 の調査に支障を生ずるおそれがある場合、この限 りではありません(69 条但書)。 例外の「事実の調査に支障を生ずるおそれがあ る」とは、おそらく、DV 事案などで、相手の対席 が危険な場合、当事者の供述を困難にする場合な どが考えられます。代理人としては、当事者から の陳述聴取が適切に行われるように、サポートす べきであり、裁判所にその点の理解を求め、相手 方の対席を回避しましょう。もっとも、相手方本 人の対席は認められなくても、相手方代理人が対 席することまで回避すべき事態はほぼ考えられな いでしょう。 なお、立会を認めるかどうかは、裁判長の手続 指揮権の権限の行使、合目的的裁量の範囲内です ので、立会を認められなくても、これに対して独 立して不服申立てはできません。

六 別表第二審判事件の手続の流れ

1 手続が審判から開始される場合 当事者の対立が激しい事件(子の引渡し等)では、 まず審判期日を開いて当事者双方を呼び出し、事 情を聴くという従来の方法で運用されるかと思わ れます。 2 調停が先行した場合の陳述聴取の方法 事件類型によって概ねこのように運用されるも のと思われます(もちろん事案によってさまざま でしょう)。特に急ぎたい婚姻費用の申立人代理 人としては、③のようにスムーズに進むように、 調停不成立の期日には資料が出揃っているように 心がけたいものです。 ①審問期日を後日指定し、そこで審問により陳述 聴取を行う場合  …子の引渡し、面会交流、親権者変更、財産分 与、遺産分割など ②審問期日は開かず、当事者双方への書面照会に より陳述聴取を行う場合  …年金分割など ③当事者双方が出席している調停期日において調 停不成立として、その当日、直ちに審問期日を 開いて審問により陳述聴取を行う場合  …婚姻費用や養育費で資料が出揃っている場合 など 3 審理の終結日及び審判日の指定 (1) 審理の終結日 別表第2審判事件につき、相当の猶予期間を置 いて、審理を終結する日を定めなければならなこ とになりました(法 71 条)。ただし、当事者双方 が立ち会う期日において終結する場合には、猶予 期間を置かずに審理を終結する旨宣言できます (法 71 条但書)。 裁判所が判断の基礎とする資料は、終結日まで に提出、収集されたものに限られます。代理人と しては、審理の終結までに、攻撃防御を尽くします。 上記規定は抗告審にも準用されています(法 93 条 1 項)。 (2) 審判日 審理を終結したときは、審判をする日を定めね ばなりません(法 72 条)。 抗告審にも準用されています(法 93 条 1 項 )

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終わりに代えて

その他、管轄、電話会議・テレビ会議、取下げ、 審判前の保全処分、不服申立て、子の意思の把握、 調停に代わる審判等でも大切な改正がなされてい ますが、紙数が尽きてしまいました。これからも、 施行後の状況も踏まえて、改善が重ねられていく ものと思われます。改正の内容、趣旨を踏まえ、 運用の変更に注意し、入念に家事事件に臨みたい ものです。 参考文献 金子修編著『一問一答家事事件手続法』商事法務、2012年 秋武憲一編『概説 家事事件手続法』青林書院、2012年 小島妙子『Q&A離婚実務と家事事件手続法』民事法研究会、2013年 増田勝久編著『Q&A家事事件手続法と弁護士実 ㊞

手続代理委任状

平成25年 月 日 住 所 委任者 ㊞ 私は、次の弁護士を手続代理人と定め、下記の事件に関する各事項を委任します。 弁護士 ○ ○ ○ ○ 住所 東京都千代田区霞ヶ関○丁目○番○号 ○○ビル○階 ○○法律事務所 (○○弁護士会所属) TEL 03- - FAX 03- - 記 委任事項 第1 事件 申立人 相手方 裁判所 東京家庭裁判所 事件名 事件(事件番号:平成 年( )第 号) 第2 委任事項 1 第1記載の事件について,申立人・相手方手続代理人としてする一切の件 2 前項の申立ての取下げ 3 家事事件手続法(以下「法」という。)268条1項若しくは277条1項 1号の合意,270条1項に規定する調停条項案の受諾又は286条8項の共 同の申出 4 審判に対する即時抗告,法94条1項(288条において準用する場合を含 む。)の抗告,97条2項(288条において準用する場合を含む。)の申立 て又は279条1項若しくは286条1項の異議 5 前項の抗告(即時抗告を含む。),申立て又異議の取下げ 6 代理人の選任 以上 ■資料

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