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沖縄県立総合教育センター前期長期研修員第 56 集研究集録 2014 年 9 月 算数 見通しをもち筋道を立てて考え表現する力を育てる算数指導の工夫 - 表現様式の変換と 語り始めの言葉 を意識した算数的活動を通して ( 第 2 学年 )- 名護市立瀬喜田小学校教諭島田綾子 Ⅰ テーマ設定の理由 2

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沖縄県立総合教育センター 前期長期研修員 第56集 研究集録 2014年9月

〈算数〉

見通しをもち筋道を立てて考え表現する力を育てる算数指導の工夫

-表現様式の変換と「語り始めの言葉」を意識した算数的活動を通して(第2学年)-

名護市立瀬喜田小学校教諭

Ⅰ テーマ設定の理由

21世紀は、新しい知識・情報・技術が、社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増 す「知識基盤社会」の時代だと言われている。「知識基盤社会」は変化が激しく、新しい課題に試行錯誤 しながらも対応することが求められる社会である。こうした社会を生き抜く資質として、児童生徒に必要 とされる能力が「生きる力」である。「生きる力」とは、「確かな学力」、「豊かな人間性」、「健康と体力」 の調和のとれた力をさし、平成20年改訂の小学校学習指導要領では、「生きる力」をはぐくむという理念 のもと、知識や技能の習得、それをもとに思考、判断、表現する力、学習意欲の育成が求められている。 中央教育審議会答申(平成20年)の算数科における改善の基本方針では、「根拠を明らかにし筋道を立 てて体系的に考えることや、言葉や数、式、図、表、グラフなどの相互の関連を理解し、それを適切に用 いて問題を解決したり、自分の考えを分かりやすく説明したり、互いに自分の考えを表現し伝え合ったり することなど」の指導の充実が挙げられた。その答申を受け、「小学校学習指導要領解説算数編」(以下「解 説算数編」と記す)では、「算数的活動を通して日常の事象について見通しを持ち筋道を立てて考え、表 現する能力を育てる」ことが目標として示された。 しかし、本県における平成25年度に実施された全国学力・学習状況調査の結果を見ると、平成24年度に 比べ全国平均との差は縮まっているものの、算数B問題で-4.0ポイント全国平均と差があり、数学的な 表現を用い筋道を立てて自分の考えを説明する力の育成は、大きな継続課題となっている。またそれは、 本校児童についてもあてはまることである。 これまでの算数授業実践では、既習事項をもとに解決の見通しをもって問題を解き、考えの根拠を算数 用語を使ってまとめ、伝える力が身につくよう問題解決的な学習過程に沿って指導を重ねてきた。その中 で児童は、基礎的・基本的な計算技能を身に付けてきているが、演算決定や立式の力、自力解決の場にお いての既習事項と関連づけて考える力や、根拠を明確にし要点を簡潔にまとめる力は十分とは言えない。 それは、これまでの授業における問題解決的な学習の過程で、数学的な根拠を記述し、筋道を立てて考え を表現できるような指導の手立てが不足していたからではないかと考える。 これらの課題を解決するためには、具体物や半具体物、言葉や数、図や式を用いて考え、記述する算 数的活動の充実と、その考えを数学的な表現を用いて説明する算数的活動の充実を図ることが有効であ ると考える。説明する算数的活動では、自分のかいた図や式を関連づけながら説明するだけでなく、友 達の図や式を見て考えを説明したり、友達が説明したことを自分の言葉で言い換えさせたりしていく。 その算数的活動を繰り返すことで、筋道を立てて考え表現する力は定着するのではないかと考える。 そこで本研究では、表現様式の変換に着目し、「語り始めの言葉」を意識した算数的活動の指導を工夫 していくことにより、児童は見通しをもち筋道を立てて考え表現する力を身に付けることができるであ ろうと考え、本テーマを設定した。 〈研究仮説〉 「数と計算」領域の学習指導において、自分の考えを様々な様式に変換する算数的活動と、「語り始め の言葉」を意識させた算数的活動の指導を工夫することにより、解決の見通しをもって問題を解き、筋道 を立てて考え表現する力が育つであろう。

Ⅱ 研究内容

1 研究の基本的な考え方 (1) 見通しをもち筋道を立てて考える力(数学的な考え方) 小学校学習指導要領の下での学習評価では、評価の観点として「思考・判断・表現」が示されてお り、算数科において「思考・判断・表現」にあたる観点は「数学的な考え方」である。この「数学的な 考え方」の観点の趣旨は、「日常の事象を数理的にとらえ,見通しをもち筋道を立てて考え表現した

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り,そのことから考えを深めたりするなど,数学的な考え方の基礎を身に付けている。」であるこ とから、見通しをもち筋道を立てて考える力は数学的な考え方ととらえることができる。 学習過程においての「見通しをもつ」とは、問題解決するに当たり、既習事項を手がかりにして、 児童が結果について「こうなるであろう」と予想したり、解決の方法について「こうするとできる のではないか」と考えたりして先を見通すことや答えの大きさを見積もることであり、「筋道を立 てて考える」とは、見通しをもとに根拠を明らかにしながら自分の考えを整理し、考えを進めるこ とである。問題解決の結果が正しい ことをきちんと示すためには、筋道 を立てて考えることが求められる。 片桐重男(2004)は、「Ⅱ数学の方 法に関係した数学的な考え方」、「Ⅲ数 学の内容に関係した数学的な考え方」、 これらの原動力になるものとして「Ⅰ 数学的な態度」を数学的な考え方とし て挙げている(表1)。 本研究においては、見通しをもち筋 道を立てて考える力を片桐の述べると ころの、「Ⅱ数学の方法に関係した数 学的な考え方」、「Ⅲ数学の内容に関係 した数学的な考え方」としてとらえる こととする。 (2) 算数科における表現する力 小島宏(2009)によると、「数学的な表現力とは、言葉や数、式、図、表、グラフなどを用いて、 問題の解決過程における考え方や処理の仕方や結果をわかりやすく表したり、説明したりする能力 のことである。」とされ、算数科における表現力の役割について五つをあげている(表2)。 算数科における表現力は、既習事項やキーワー ドを整理し表現することで考えたり、考えたこ とを表現したり、表現したもので考えたりする ことであるといえ、考える力と関わって相乗的 に高まっていく関係にあるといえる。 また、自分で考え表現したことを基にコミュ ニケーションすることができると考え、授業においては、ペアや全体で表現する場を適宜設けるこ ととする。 6年間でつける数学的表記の 系統として、間嶋哲(2004) は、表3のようにまとめてい る。数学的表記は、筋道を立 てて考え表現する算数的活動 において重要であり、その力 は、児童に確実に身に付けさ せたい力である。数学的表記 は学年を追うに従って系統的 に発展し、抽象化されていく ため、その系統性を理解した 上で当該学年の指導にあたる必要がある。 本研究で扱う単元「たし算とひき算のひっ算(1)」では、説明や表現する算数的活動をより多 く授業の中で取り入れた説明や表現をする力をはぐくむ重点単元とし、初出のテープ図についても 丁寧な指導をしていくこととする。 (3) 数学的な表現様式とその変換について 中原忠男(1995)は、問題解決能力や表現力育成のために算数・数学教育における表現を幅広く Ⅰ 数学的な態度  1 自ら進んで自己の問題や目的・内容を明確に把握しようとする  2 筋道の立った行動をしようとする  3 内容を簡潔明確に表現しようとする  4 よりよいものを求めようとする Ⅱ 数学の方法に関係した数学的な考え方  1 帰納的な考え方   2 類推的な考え方    3 演繹的な考え方  4 統合的な考え方(拡張的な考え方を含む)    5 発展的な考え方  6 抽象化の考え方(抽象化、具体化、条件の明確化の考え方)  7 単純化の考え方   8 一般化の考え方    9 特殊化の考え方  10 記号化の考え方   11 数量化、図形化の考え方 Ⅲ 数学の内容に関係した数学的な考え方  1 集合の考え     2 単位の考え     3 表現の考え  4 操作の考え     5 アルゴリズムの考え 6 概括的把握の考え  7 基本的性質の考え  8 関数の考え     9 式についての考え   学年  指導したい数学的表記 (指導する単元) 1年 絵図(たしざん、ひきざん)、ブロック図(たしざん、ひきざん) 2年 ブロック図(たしざん、ひきざん)、情景図、テープ図(たしざんとひきざん)、 線分図(たしざんとひきざん)絵図、テープ図(かけざん) 3年 線分図(かけ算、わり算) 4年 数直線(およその数)、線分図(わり算)、面積図(小数・分数)、二次元表(整理の仕方) 5年 面積図・線分図(分数のたし算ひき算)、線分図・対応数直線(小数のかけ算わり算) 関係図・対応数直線(割合) 6年 面積図・線分図・対応数直線(分数の四則計算)、対応数直線(比例) 表1 数学的な考え方一覧 表2 算数科における表現力の役割 表3 6年間でつける数学的な表記の系統 ○ 考える手がかりとしての表現 ○ 自分の考えを表現し、客体化して検討する ○ 自分の考え方や仕方を筋道立て、整理するための表現 ○ コミュニケーション能力を支える表現 ○ 考えの仕方やまとめとしての表現

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とらえていくのがよいと考え、多様な表現方法を5つに類型化することを提唱している(表4)。 表4 数学的な表現様式と具体例 [問題] 赤い箱に飴玉が3個あります。青い箱に2個あります。合わせると何個になりますか。 表現様式 内 容 表 現 様 式 の 具 体 例 現実的表現 実物を用いて、現実に即した操作や実験を行う表現 実際に飴玉3個と2個を合わせる。 操作的表現 おはじき等の半具体物をモデルとして操作する表現 おはじき、ブロック等の半具体物などを合わせる操作 ブロック3個と2個を合わせる。 図的表現 絵、図、グラフ等を用いた表現 ○○○ ○○ 言語的表現 日常言語を用いた表現 3に2を足すと5になる。 記号的表現 算数で使う記号(数・式等)を中心とした表現 3+2=5 さらにこの5つの表現を、その特性と相互の関係を 踏まえて体系化している(図1)。その上で、表現力の 記号的表現 育成には、これらの表現様式の変換を授業に取り入れ ることが重要であると述べている。 言語的表現 現実的表現は、場面をイメージしやすく具体性に富 むため、問題の意味を理解するのに有効である。操作 図的表現 的表現は、具体的な現実的表現と抽象的な言語的表現、 記号的表現とを結ぶ中間的なはたらきをするもので、 操作的表現 具体から抽象への媒介をするものとして小学校低学年 で有効である。図的表現は、小学校低学年の具体的な 絵や図からグラフ等、表し方や表す内容に大きな幅が ある。数学的な構造を明確化したり、イメージ化・視 現実的表現 覚化したりして伝えるはたらきがある。言語的表現は 日常言語を用いた表現で、記述したり、口頭で説明し たりする活動である。現実的表現、操作的表現、図的 表現の後に考えを整理し、深めるため用いられることがあり、論理的な思考が特に必要とされる表 現である。記号的表現は、思考の過程や結果などを簡潔に、厳密に表現でき、他の表現様式で考え た結論を最終的に一般化する際に使われる。 数学教育における表現体系においては、5つの各表現が、下から上へと上がるにつれて親しみや すい具体的な表現から抽象的な表現へとなるよう位置づけられており、表現間や同一表現内の矢印 は表現相互の変換を表している。 数学的な表現様式の変換には、異なる表現様式間における変換と、同じ表現様式内の変換の2つ がある。ある表現様式から他の表現様式へ変換する際には、一度思考し表現した内容について再確 認して変換するので、その活動を通して思考力とともに表現力も育つと考える。 本研究における授業「たし算とひき算のひっ算(1)」で予想される表現様式の変換は、次の表の 通りである(表5)。既習事項や既有経験(算数的活動、解決活動、実験など)を活用した表現様 式の変換と、本単元において指導する表現様式の変換を通して、見通しをもち筋道を立てて考える 力をはぐくんでいきたい。 表5 「たし算とひき算のひっ算(1)」で予想される表現様式の変換 異なる表現様式間における変換 同じ表現様式内における変換 ○筆算(記号的表現)から数え棒やお金の図(図的表現)に変換する。 ○友達が説明したことを自分の言葉で言い換える。(言語的表現内) ○数え棒やお金の図(図的表現)の説明(言語的表現)をする。 ○友達の説明を聞き、それを再現する。(言語的表現内) ○筆算(記号的表現)のしかたを説明(言語的表現)する。 ○数え棒の図をお金の図に変換する。(図的表現内) ○数え棒の操作(操作的表現)をしながら、言葉で説明(言語的表現) ○アレイ図をテープ図に変換する。(図的表現内) する。 など ○筆算手順を式に表す。(記号的表現内) など (4) 「語り始めの言葉」を意識した算数的活動について 田中博史(2001)は、算数科における表現方法として「式で表現する」、「図で表現する」、「操作 で表現する」、「言語で表現する」等があり、これらは重複して活用されるもので、式で表現すると きも、図で表現するときも、操作で表現するときも、その支えとして常に機能しているのは言語に 図1 数学教育における表現体系

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よる表現であることから、表現の中核になるのは「言語で表現する」ことであるとしている。そして、 田中は、「児童が自分の言葉で考えを語る際に出てくる『語り始めの言葉』は、思考の方向性をつ くる点で重要な意味をもち、それらの言葉を教師が意図的に聞き取り、位置づけていくことで授業 の展開の指針とすることができる」と述べている(表6)。 授業においては、考えている筋道を整理したことを表出する場面で使われる「まず、それから」等 の「語り始めの言葉」を教師が価値づけながら児童に意識させることで、順序立てて考え表現する力 が育つと考える。筆算の仕方を説明す る場面や筆算の間違い理由を説明す る場面では、「だって、でも」や「例 えば」を使い、お互いの考えに関わ らせる中で、筋道を立てて考える力 をはぐくんでいきたい。また、筋道 立てて考えたことを、大事なことを 落とさず、正確に表現するために必 要な算数用語を「語り始めの言葉」 とともに使わせ、考え表現する力を よりはぐくんでいくこととする。 (5) 算数的活動について 「解説算数編」には、算数的活動とは、「児童が目的意識をもって主体的に取り組む算数にかか わる様々な活動」と記され、身体を使ったり具体物を用いたりしながら、算数に関する課題につい て考えたり、算数の知識をもとに発展的、実用的に考えたりする活動や、考えたことなどを表現し たり説明したりする活動と示されている。「目的意識をもって主体的に取り組む」とは、「新たな性 質や考え方を見いだそうとしたり,具体的な課題を解決しようとしたりすることである」としてい ることから、算数的活動は、単なる活動というのではなく、思考を伴った活動だといえる。 算数的活動は、算数科目標から考えると「数量や図形についての基礎的・基本的な知識・技能が 身に付くもの」、「日常の事象について見通しをもち筋道を立てて考え,表現するもの」、「算数的活 動の楽しさや数理的な処理のよさが感じら れるもの」、「学習したことを生活や新た な学習に活用するもの」であることが必要 である。第2学年における算数的活動の 概略として「解説算数編」では、表8の ように示している。 単元「たし算とひき算のひっ算(1)」の指導においては、問題解決的な学習の中で、数え棒を操 作したり、図をかいたり、言葉で表現したりする算数的活動を取り入れ、思考を深めさせる。数を 数え棒やお金の図で表すことで、児童から数を十の位と一の位とに分けて足す・引く考え方を引き 出し、計算の筋道を操作と筆算形式と結びつけて説明させる。このような算数的活動を通して、数 を構成的にとらえる眼を広げるとともに、考えた計算の筋道を表現できる力をはぐくんでいくこと ができると考える。

Ⅲ 指導の実際

1 単元名 「たし算とひき算のひっ算(1)」 啓林館『わくわく算数2年上』 2 単元の目標 (2位数)±(2位数)の筆算の仕方を理解し、計算することができる。 順思考の問題場面をテープ図に表すことができる。 3 単元の評価規準 関心・意欲・態度 数学的な考え方 技 能 知識・理解 ・筆算のよさに気づき、活用しよう ・十進位取り記数法のしく ・(2位数)±(2位数)の筆算を一の位 ・筆算の仕方を知り、(2 とする。また、答えの見当をつけ みをもとにして、(2位 から順に、繰り上がりや繰り下が 位数)±(2位数)の計 てから計算しようとする。 数)±(2位数)の筆算の り に気をつけて、手際よくできる。 算の仕方で説明するこ ・加法及び減法に関して成り立つ性 仕方を考えることができ ・順思考場面をテープ図に表すこと とができる。 質を調べ、計算の確かめにいかそ る。 が できる。 うとする。 例えば・・・ 自分なりのわかり方に置き換えて話す言葉(具体化して考える) だって、でも 友達の考えにかかわろうとする言葉(反例を挙げて吟味する) まず、それから 考えている筋道を整理しようとする言葉(順序立てて考える) だったら 活動の先を考える言葉(活動の発展を考える) もしも 発展を考えたり、ものごとを整理したり、一般化を図ろうとする 言葉(仮定したり条件をつけたりして考える) 表6 「語り始めの言葉」とその働き 表7 「たし算とひき算のひっ算(1)」の学習で使わせたい算数用語 表8 第2学年における算数的活動の概略 既習 一の位、十の位、繰り上がり、繰り下がり、答え 初出 筆算、たす数、たされる数、ひく数、ひかれる数、テープ図 ア 整数が使われている場面を見付ける活動・・・・・[A数と計算] イ 乗法九九表からきまりを見付ける活動・・・・・・[A数と計算] ウ 量の大きさの見当を付ける活動・・・・・・・・・[B量と測定] エ 図形をかいたり、作ったり、敷き詰めたりする活動・・[C図形] オ 図や式に表し説明する活動・・・・・・・・・・・[D数量関係]

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4 単元の指導と評価の計画(全12時間) 時 目 標 学習活動(○)・表現様式の変換を含む算数的活動例(◇) 評価規準【観点】(評価方法) 1 ・じゅんびうんどう:既習事項の復習、「たし算とひき算のひっ算(1)」の準備 p39 ・筆算の学習をするという課 ○34+12を立式し、計算のしかたを数え棒を使って考える。 【関】数を縦に並べて計算す 題をつかむ。 ○「数を縦に並べて計算するしかたを考える」という課題をつか るしかたに関心をもち、取 ・(2位数)+(2位数)で繰り む。 り組もうとしている。 2 上がりのない筆算ができる ○数え棒の操作をもとに筆算のしかたを考え説明する。 【考】繰り上がりのないたし p40~p41 ◇操作的表現・・数え棒を操作して考える。 算のしかたを考えることが ◇言語的表現・・自分の考えを文に書く、考えを話す。 できる。 友達の考えを聞き自分の言葉で再現する。 (観察・発言・ノート・ ◇記号的表現・・筆算形式にかく。筆算する。 チェックテスト) ・(2位数)+(2位数)で一の ○前時との違いに気づき、数え棒を使って34+28の計算のしか 【知】繰り上がりの意味を理 3 位に繰り上がりのある筆算 たを考え説明する。 解している。 ができる。 ◇操作的表現・・数え棒を操作して考える。 【技】繰り上がりの意味を理 本 p42 ◇図的表現・・・位取り板シートに数え棒等をかいて考える。 解し、繰り上がりを忘れず 時 ◇言語的表現・・自分の考えを文に書く。話す。 に筆算ができる。 友達の考えを聞き自分の言葉で再現する。 (観察・発言・ノート・ ◇記号的表現・・筆算する。 チェックテスト) ・たし算について、交換法則 ○問題を読んで、たし算の場面であることをつかみ、みらいと 【知】交換法則が成り立つこ が成り立つことに気づき、 つばさの考えを見て話し合う。 とを理解している。 答えの確かめができる。 ○たし算では、たされる数とたす数を入れ替えても答えは同じ 【技】交換法則を用いて、た 4 p43 になることを理解する。また、その方法について説明する。 し算の答えを確かめること ◇言語的表現・・自分の考えを文に書く。話す。 ができる。 たし算の交換法則について聞き、自分の言葉 (観察・発言・ノート・ で再現する。 チェックテスト) ◇記号的表現・・筆算して確かめる。 5 ・たし算の筆算練習 p44 ・形成確認問題 ・(2位数)-(2位数)で繰り ○65-24を立式し、筆算のしかたを数え棒を使って考える。 【考】繰り下がりのない筆算 下がりのない場合の筆算が ○(2位数)-(2位数)で繰り下がりのない場合の筆算のしかた のしかたを考えることがで できる。 を理解し、説明する。 きる。 6 p45 ◇操作的表現・・数え棒を操作して考える。 【知】繰り下がりのない筆算 ◇図的表現・・・位取り板シートにお金の図等をかいて考える のしかたを理解している。 ◇言語的表現・・自分の考えを文に書く。話す。 (観察・発言・ノート・ 友達の考えを聞き、自分の言葉で再現する。 チェックテスト) ◇記号的表現・・筆算する。 ・(2位数)-(2位数)で繰り ○前時との違いに気づき、数え棒を使って53-26の筆算しかた 【知】繰り下がりの意味を理 下がりのある筆算ができる を考える。 解している。 p46 ◇現実的表現・・10円玉硬貨、1円玉硬貨を使って考える。 【技】繰り下がりの意味を理 7 ◇操作的表現・・硬貨や数え棒を操作して考える。 解し、繰り下がりを忘れず ◇図的表現・・・位取り板シートにお金の図等をかいて考える に筆算ができる。 ◇言語的表現・・自分の考えを文に書く。話す。 (観察・発言・ノート・ 友達の考えを聞き自分の言葉で再現する。 チェックテスト) ◇記号的表現・・筆算する。 ・ひき算の答えの確かめ方を ○81-39の答えの確かめ方を考える。 【知】ひき算の答えの確かめ 理解し、答えの確かめがで ○答えの確かめ方を知る。 方を理解している。 きる。 ○算数用語を使って、答えの確かめ方を説明する。 【技】(ひく数)+(答え)=(ひ 8 p47 ◇言語的表現・・自分の考えを文に書く。話す。 かれる数)をもとにひき算 ひき算の答えの確かめ方を聞き、自分の言葉 の答えを確かめることがで で再現する。 きる。 ◇記号的表現・・筆算して確かめる。 (観察・発言・ノート・ チェックテスト) ・テープ図について理解し表 ○テープ図のかき方を理解し、問題場面をテープ図で表す。 【技】問題場面をテープ図で すことができる。 ◇図的表現・・・既存のテープ図、自作のテープ図に問題場面 表すことができる。 9 ・テープ図をもとにして、合 をかき表す。 【考】テープ図をもとにして 併や求残の問題を解くこと ◇記号的表現・・式に表し計算する。筆算する。 式に表すことができる。 ができる。 (観察・発言・ノート・ p48~49 チェックテスト) 10 ・ひき算の筆算練習 p50 ・形成確認問題 11 ・たしかめ道場:学習内容の自己評価 p51 12 ・総括評価:単元テスト 5 本時の指導(3/12時間) (1) 本時の目標 (2位数)+(2位数)で、一の位に繰り上がりのある筆算ができる。 (2) 授業仮説 ・導入の場において、前時の学習との違いと既習事項を確認することにより、解決の見通しをもち、

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本時のめあてを明確にもって自力解決に取り組むことができるであろう。 ・操作的表現、図的表現、言語的表現、記号的表現を変換する算数的活動を通して、筆算の仕方を 筋道を立てて考えることができ、理解が深まるであろう。 (3) 展開 過程 学習活動・主な発問と予想される児童の反応 指導上の留意点及び評価 1 PCフラッシュカードを使い、既習事項の復習を ・前時の学習を想起させ、繰り上がり する。 のない筆算の仕方を確認する。 2 絵と文から問題場面を理解する。 34円のガムと28円のチョコ買うと、いくらにな ・わかっていること( 線)、たず りますか。 ねていること( 線)を確認し、 T:どんな式になりますか。 それそれぞれに線を引かせる。 導 C:34+28です。 T:どうしてたし算でしょう。 ・演算決定の理由を 入 C:ガムとチョコを買って、二つ合わせた値段を聞 はっきりさせてか いているからです。 ら立式させる。 7 T:昨日の学習と違うところはどんなところですか。 C:昨日はガムと飴玉を買っていたけど、今日はガ ・前時の問題を想起 分 ムとチョコを買っています。 させ、違いに着目 C:たす数が違います。12が28になっています。 させる。 C:繰り上がりがあります。 〈語り始めの言葉カード〉 3 学習のめあてを把握する。 T:今日学習するのは、どんなことでしょう。 ・学習の流れを確認させる。 C:繰り上がりのある筆算をしよう。 ①筆算の仕方を考える。 34+28の筆算の仕方を考えて、説明しよう。 ②筆算の仕方を説明する。 4 34+28筆算の仕方を考え発表する。 ・数え棒の操作と対応させながら話さ (自力解決 → 発表) せたり、かかせたりする。 T:筆算の仕方を考えて、説明しましょう。 ・一つの方法で考えて表現できた児童 〈思考・表現 → 表現様式の変換〉 には、他の方法での表現をさせる。 〈表現様式の変換〉 ①数え棒を操作して考える → 図に表す (操作的表現) (図的表現) ・数え棒の操作の仕方や考え方がわか 展 らず困っている児童には、既習事項 の掲示資料をもとに前時の学習内容 を想起させる。 開 ←既習事項の 25 掲示資料 ②筆算形式に表す → 図に表す、文に表す (記号的表現) (図的表現)、(言語的表現) 分 ・一の位から繰り上がってできた10の 束の処理に困っている児童には、個 別に位取り記数法のしくみを振り返 らせる。 ・座席表を活用し、一人一人の考え方 〈数え棒の図〉 を把握する。 ・自分の考えと友達の考えを比べなが 〈お金の図〉 ら聞かせる。 ③友達の説明を自分の言葉で再現(修正しながら) ・一の位から計算することのよさに気 (言語的表現) づかせる。 ・児童一人一人にペアや全体の場で説 明の機会をもたせる。 ・算数用語や考えのつながりを表す言 葉「語り始めの言葉」を意識して話さ せる。 ・不正確な表現は、他の児童に言い換 えさせたり、問い返しを行ったりし て、修正していく。 ・繰り上がった数を忘れないように十 の位に補助数字の1を書かせる。 34は十の束が3つと 一が4つ。 28は十の束が2つと 1が8つ。 始めに一の位の計算をして 12。そして十の位に1繰り 上がって1+3+2をして 6。答えは62です。 まず最初に一の位から数 えて、それに30と20をた して62です。

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・筆算手順の確認をする。 (記号的表現) 1 【知】繰り上がりの意味を理解してい C:答えは62円です。 34 る。 (観察・発言・ノート) +28 62 5 57+13、9+27の筆算をする。 ・繰り上がって一の位が空位になる場 T:次の筆算をして気づいたことはどんなことです 合や桁数のそろっていない場合の筆 か。 算も数え棒と対応させて確認させる。 C:57+13の筆算は、一の位が0になる。 ・筆算の仕方を唱えながら解くことで C:9+27の筆算は、9に十の位の数がない。 計算の仕方を確実にする。 筆算するときは、位をそろえないとまちがう。 6 学習のまとめをする。 ま T:今日の学習でわかったことを書きましょう。 ・児童の言葉でまとめさせる。 と (言語的表現) ・繰り上がりのある筆算をするときの め 34+28の筆算は、 注意点を本時の学習を振り返りなが はじめに一の位の4と8を足して12 らまとめさせる。 13 十の位に1繰り上がって1+3+2で6 【技】繰り上がりの意味を理解し、繰 分 答えは62 り上がりを忘れずに筆算ができる。 7 チェックテストをする。 (ノート、チェックテスト) 6 仮説の検証 研究仮説に基づき、表現様式を変換する算数的活動と、「語り始めの言葉」を意識させた算数的活動 の指導の工夫を行った。用いた手立てが、見通しをもって問題を解き、筋道を立てて考え表現する力の 育成につながったか検証する。検証の方法として、操作・発言などの行動観察、算数ノート、チェック テスト、単元の総括評価、授業記録、アンケート調査等を基に分析・考察する。 (1) 表現様式を変換する算数的活動の指導の工夫について 検証前、自分の考えをかくことができますかとの 問いに、「できる、少しできる」と答えた児童は、20 %で、用いたことのある表現様式もわずかであった。 これは、対象が低学年児童のため学習経験が浅いこ とや、既習内容の掘り起こしが十分ではなかったこ とが理由の一つであると考えられる。そこで、児童の 実態を踏まえ、学習指導においては「数え棒の操作を する」、「数え棒の図をかく」、「位取り板の活用をす る」、「位取り板を活用した考えの図をかく」、「お金 (半具体物)の操作をする」、「お金(半具体物)の 図をかく」、「友達の考えを自分の言葉で再現する」、 「自分や友達のかいた図の共通点を探す」等を繰り返 させ、表現の幅を広げていきたいと考えた。 ◆繰り下がりのある筆算のしかたの説明 児童が見通しをもって問題解決に取り組めるよう、 〈筆算〉 〈文〉 授業の導入では、前時の学習を想起させてから既習事 項の復習(プレゼンテーションソフトで作成した筆算 手順を見ながらの説明、筆算の視計算)を行った。そ の後、ほぼ全員が本時の学習・自力解決活動に取り組 み、解決の見通しがもてない児童には、教室側面に掲 示している既習事項をヒントにすることで自力解決に 〈図・位取り板カード〉 取り組ませることができたことから、前時の学習の想 お金の図だけでなく、言 起や既習事項の確認は、見通しをもって学習に取り組 葉や線、矢印を書き加え、 むために必要なことであるとの再確認ができた。 計算のしかたを説明して 単元始めのたし算の筆算の学習では、数え棒を縦に いる。 並べて操作し、その様子を話すことに時間を要した ため、授業時間内には操作的表現、言語的表現(話す)、記号的表現(筆算)が精一杯で、言語的表 現(文)ができた児童は、(6/15名)と少なかった。しかし、次時のひき算の筆算の学習時には、そ 33 13 60 7 7 80 0 0 0% 20% 40% 60% 80% 100% 検証後 検証前 できる 少しできる あまりできない できない N=15 表9 表現様式の前後比較 (N=15) 表現様式 (児童アンケートより) 検証前 まる図(3名)、文(1名) お金の図(8名)、数え棒の図(4名)、まる図 検証後 (3名)、文(3名)、位取り板の図(15名)、 ことば(3名)、テープ図(1名) 図2 自分の考えをかくことの前後比較 図3 考えの表現(児童ノートより)

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れまで数え棒の図をかき手間取っていた児童も、お 金の図の方が素早くかけることに気付き、その後は それを選択して、短時間で全員が図的表現ができる ようになった。検証後、自分の考えをかくことが「で きる、少しできる」とする児童は73ポイント増え(前 頁図2)、併せて表現様式の数も増加した(全頁表9) ◆たし算の交換法則・答えの確かめ(4/12時) その際の位取り板ワークシートの活用は、位を意識し て考え、算数用語を使って順序立てて説明することの 一助となった(前頁図3)。 また、授業の終末では、ノートに貼付した自己評価 カードで、自分の考えの表現方法を振り返らせた(図 4)。一つの表現様式で満足したり、学習作業が遅か ったりしていた児童も「次の時間は自分の考えを話す ◆ひき算の答えの確かめ(8/12時) ことをがんばるよ」、「自分の考えを文で書けるように なりたい」と意欲や自己に応じためあてをもち、進ん で学習に取り組む姿が見られ、学習作業のスピードア ップにもつながった。 言語的表現(話す)は、学習のまとめで児童の言葉 をつないで文章表現したものを追体験の形で個々に声 に出させること、自分の考えを表現できた児童をモデ ①既習事項のアレイ図で表現 → テープ図に変換 ルに友達の表現を模倣して話すことから取り組ませ た。一人では筋道を立てて考えを話すことが難しい児 童も模倣することで数え棒で操作したことを筆算形式 と対応させて話すことができた。第4、8時の加法の 交換法則や答えの確かめの方法、減法の答えの確かめ の方法では、記号的表現と言語的表現(話す)の変換 ②既存のテープ図に言葉・数量を記入、計算 に重点を置き、隣席の友達と話しながら筆算する算数 的活動の時間を十分確保した(図5)。単元テストの 答えの確かめ方を問う問題での正答率が80%(12/15 名)であることから、言葉と筆算の表現を行き来する 表現様式の変換は、学習内容の理解と定着に効果があ ③問題場面をテープ図で表現、計算 ったと考える。 単元終末の初出のテープ図学習では、文意をとらえ た後、児童に馴染みのあるアレイ図に表現させ、演算 決定、立式後、テープ図を紹介し変換させた。問題場 面が把握できると、テープ図の部分が何を表してい るか正確に言葉で表現することができた。自力でテープ図をかく課題では、アレイ図をかき、それを 囲んでテープ図に換えるという段階をふまないと表現できない児童も見られたが、数問解き重ねてい くうちに素早くかけるようになった(図6)。問題場面をテープ図に表したら、式が見えてきた、答 えが見えてきたことを実感した児童は、「はやくかけるね」、「分かりやすいね」とそのよさにも気づい ていた。授業内のチェックテストで2量の関係まで正確にテープ図に表現できた児童は93%で、単元 テストで演算決定、立式できた児童は100%であった。必要に応じてテープ図をかく活動や復習を重 ね、その力の維持と定着を図っていきたい。 単元を通して表現様式の変換が見られたのは、式→図、操作→式、聞く→話す、図→図、式→文な どであり、単元終末には、どの児童も2つ以上の表現様式に表すことができた。児童の学習作業の速 度が遅いことは課題であるが、発達の段階を考慮しながら、全員に操作的表現、図的表現、言語的表 現、記号的表現をする機会を多くもたせたことで、言葉や式、図等を関連させて思考したり、表現し たりするようになってきたことも確認できた。前単元「たしざんとひきざん」(2位数±1位数)の単 元テストで計算のしかた説明問題を完答できた児童は、60%(9/15名)、本単元「たし算とひき算のひ っ算(1)」の単元テストで筆算のしかたの説明問題を完答できた児童は67%(10/15名)と7ポイン 「34-19の答えは15 で 、 答 え の 確 か め は、ひく数+答えを するんだよね。」 28と55が逆になっている けど答えは同じだから・ ・・。たし算は、たす数 とたされる数を入れかえ ても答えは同じって言え ばいいんだね。 図4 自己評価カード 図5 表現様式(言語と記号)の変換の様子 図6表現様式の変換(アレイ図→テープ図)

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ト増加した(次頁図7)。今後も操作、図、言葉を関連づけた表現様式の変換を重ね、より力をはぐ くんでいきたい。 児童にとって、表現様式の中で最も難しいのは、言語的表現である文章表現であった。そこで、友 達が考えを文や言葉で発表した後は、考えのよさと、 ◆前単元での計算の仕方の説明問題 (完答60%) 表現のよさに目を向けさせるようにした。すると「10 の束を作るとわかりやすい」、「~のでと、繰り下がる わけを書いているところがいい」、「算数の言葉とつな ぎ言葉(語り始めの言葉を含む)を使っていてわかり やすい」等が挙げられ、良い型を学級の中から示すこ ◆本単元での計算の仕方の説明問題 (完答67%) とができた。それを基に自分の表現方法を振り返らせ、 どの部分の表現を修正する必要があるのかを児童に意 識させることへつなげていった。解決のしかたや結果 を相手にわかりやすく正確・簡潔に伝えようとする姿 が見られるようになり、自分の考えを文章表現する 力は身につきつつある。 単元テスト結果、「数学的な考え方」で「A十分満 足」、「Bおおむね満足」の児童は合わせて87%で、 数と計算領域における前単元テストとの比較では、 7ポイントの増加が見られた(図8)。なお、「技能」 については93%で増減なし、「知識・理解」について は80%で20ポイント増加という結果となり、表現様式 を変換する算数的活動に取り組ませることは、「知識・理解」の定着にもよい影響を与えたと考える。 以上のことから、図的表現、操作的表現、現実的表現、記号的表現、言語的表現を変換する算数的 活動は、自分の考えを様々な様式で表現することで自分の考えを整理したり、深化したりでき、また、 それぞれを関連づけて表現していくことは、筋道を立てて考える力をはぐくむのに有効であったと考 える。 (2) 「語り始めの言葉」を意識した算数的活動の指導の工夫について 発表することについて「好き、少し好き」と肯定的に 答えた児童は多く授業中は進んで発表する姿が見られ たが、自分の考えを発表するときに気をつけているこ とは、どんなことですかとの問いに「ない」と答えた 児童も多く(表10)、自分の考えを表現する際は視点 がずれていることも少なくなかった。発表することは 好きで一問一答形式の問いには答えられるが、筋道を 立てて考える力、自分の考えの根拠を明確にして表現する力は、まだ十分でないことが課題であった。 そこで、図や文をかく、話す、聞く等の算数的活動の中で、児童と一緒に足りない部分を補ったり、 他の表現に置き換えて表したりを繰り返し行った。その過程で、「語り始めの言葉」である「まず」、「次 に」、「それから」という順序を表す言葉や「でも」、「だったら」、「たとえば」等の自分の思いを表現し 友達に伝えやすくなる言葉を確認して教室掲示し、場面に応じて意識して使わせるようにした。同時 に、それまで「始めにこっちをたして」と表現したためにわかりづらかったことを「一の位」、「十の位」 と表現を明確にし、「10が来たから」と表現していたことを「1繰り上がって」等の算数に関係のあ る言葉「算数用語」を使って正確に表現することの指導も行った。 お互いの考えを発表し合う場においては、思考の ◆65-24の筆算の仕方を児童なりに説明する文章 順に説明することの確認から始め、友達の考えと自 〈修正指導〉 分の考えの共通点や相違点、友達の考えの良さに気 ・「一の位」、「十の位」と をつけさせ、発表後は順序立てて表現できた児童の いう言葉を使い、何を 考えを全体の場で取り上げて賞賛したり、認めたり どうするのか正確に表 するなどの価値付けを行った。 現させる。 筋道立てて考えることはできているが、表現の仕 方が正確でない児童(図9)には、修正指導を行った。筆算手順と対応させながら言語表現する活動 67 67 20 13 13 20 0% 20% 40% 60% 80% 100% 本単元 「たし算とひき算の… 前単元 「たし算とひき算」 A B C N=15 表10 自分の考えを発表する時に 気をつけていること前後比較(N=15) ・ない(12名) 検証前 ・間違えないようにする(2名) ・大きな声で話す(1名) ・算数用語を使う(9名) 検証後 ・「語り始めの言葉」を使う(4名) ・間違えないようにする(1名) ・話す姿勢に気をつける(1名) 図7 計算のしかた説明問題・完答率 図8 単元テスト「数学的な考え方」 結果比較 図9 筋道立てて考えているが表現指導を要した文章

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(表現様式の変換)を繰り返させ、また、良いモデルとなる友達の表現を聞き、再現する活動を通し て「語り始めの言葉」、「算数用語」を使って正確に表現することが徐々にできるようになってきた。 「まず」と「語り始めの言葉」を使いながらも計 ◆2/12時(34+12の筆算)è7/12時(53-26の筆算) 算のしかたを説明することの意味が理解できていな かった児童には、「始めにどこを計算したの?」、「次 に?」、「それから?」と段階的に連続して問いかけ、 自分の考えを整理させていくことで課題の意味を理 解させ、考えの根拠を示し、順序立てて正確な表現 ができるようになってきた(図10)。 児童は、話す・かくといった算数的活動を重ねて いくことによって、自分の考えを表現するときに徐 々に相手意識をもてるようになり、「まず」、「それか ら」等の「語り始めの言葉」を使い、順序立てて考え を話すことができるようになってきた。「でも」を使 ◆友達に筆算の仕方が間違えていることを説明する言葉 って反例を挙げて自分の考えを述べたり、「だって」 を使って友達の筆算が間違えている理由を言ったり できる児童も見られるようになり、筆算はなぜ一の 位から計算するのかとの問いに対して、十の位から ◆34+28の筆算を一の位からする理由の記述 計算すると困ることを「たとえば」と具体的に例を挙 げて文章表現し、それを聞いた友達を「だからだね」 と納得させる場面なども見られた(図11)。 単元始め、言語的表現(話す)において、「語り始 めの言葉」を使い、筋道立てて表現できた児童は33% であったが、終末には87%へ、筋道立てて考えたこ とを言語的表現(文章表現)できる児童は、13%か ら67%へと共に54ポイントの増加が見られた(図1 2)。現段階では、筆算の仕方を筋道を立てて話した り、書いたりが十分にできない児童も、筆算手順を 理解し、計算することができることから、今後、筆 算技能の習熟が図られることで、自分のしているこ との説明がつくと期待できる。筋道を立てて考え、 表現する力が定着するように次単元以降においても 本単元同様の指導を継続していくこととする。 話すことと書くことの力の伸びの差はあるが、単元始めに比べ、「語り始めの言葉」と「算数用語」 を使うことで、思考の順に表現し、考えの根拠を示した説明ができるようになってきたことから、考 えたり、表現したりする場面において、「語り始めの言葉」を意識し使わせることは、筋道を立てて 考え表現する力をはぐくむ手立てとして有効であると考える。

成果と課題

1 成果 (1) 単元を通して様々な算数的活動や表現様式を経験させることにより、表現の幅が広がった。 (2) 自分の考えを様々な様式で表現し、変換する算数的活動をすることを通して考えが整理、深化さ れ、筋道を立てて考え表現する力をはぐくむことができた。 (3) 様々な表現様式を用いた説明を「語り始めの言葉」を意識して行わせることにより、考えたこと を筋道を立てて表現することができた。その際、「算数用語」も同時に意識して使わせることで、 考えをより簡潔にわかりやすく伝えることにつながった。 2 課題 (1) 算数的活動の継続を図り、様々な表現様式を確実に習得させる指導法の工夫。 (2) 「語り始めの言葉」、「算数用語」を意識して使い、思考をより深める相互交流の場の指導の工夫。 一の位はあっているけど、十の位 が間違っているよ。だって十の位 は1繰り下げたから3-3だよ。 67 87 13 33 0 20 40 60 80 100 言語的表現(文) できる 言語的表現(話す) できる 検証前 検証後 N=15 % 図11 「語り始めの言葉」を使った発言・記述 図10 表現の変容(A児のノートより) 図12 「語り始めの言葉」を使い、筋道立てた表現の前後比較

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〈参考文献〉 筑波大学附属小学校算数研究部 2014 『算数授業研究 特集「図」を使う子どもを育てる』 東洋館出版 田中博史 2013 『語り始めの言葉「たとえば」で深める算数教育』 東洋館出版 吉川成夫 小島宏 2011 『小学校算数「数学的な考え方」をどう育てるか』 教育出版 全国算数研究会 2011 『表現力はこうして育てる 2年』 東洋館出版 国立教育政策研究所 2011 『評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料 小学校算数』 教育出版 尾崎正彦 2011 『書くっておもしろい!表現力を鍛える算数授業のススメ』 東洋館出版 小島 宏 2008 『算数科の思考力・表現力・活用力《新しい学習指導要領の実現》』 文溪堂 文部科学省 2008 『小学校学習指導要領解説 算数編』 東洋館出版 小島 宏 2004 『学力を高める算数科の授業づくり』 教育出版 中原忠男 1999 『構成的アプローチによる算数の新しい学習づくり』 東洋館出版 〈参考URL〉 沖縄県教育委員会 2014 『沖縄県学力・学習調査分析資料』 http://www.pref.okiunawa.jp/edu/gimu/jujitsu/data/jokyo/documents/h25zenkokutyousakekka.pdf 文部科学省 2014 『確かな学力』 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/korekara.htm

参照

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