第4回
市大センター病院・薬局間地域連携ワーキング
「乳がんの化学療法
~周術期補助化学療法を中心に~」
横浜市立大学附属市民総合医療センター
薬剤部
がん薬物療法認定薬剤師
徳丸 隼平
平成27年11月27日 ヨッチー本日の内容
乳がん治療
乳がんの治療 乳がん薬物療法の目的 当院の周術期化学療法概略レジメン各論
DOC療法wPTX療法 nab-PTX療法 HER2療法検査値
肝機能の減量基準 腎機能の減量基準まとめ
Take home message FEC療法EC療法 TC療法
本日の内容
乳がん治療
乳がんの治療 乳がん薬物療法の目的 当院の周術期化学療法概略レジメン各論
DOC療法wPTX療法 nab-PTX療法 HER2療法検査値
肝機能の減量基準 腎機能の減量基準まとめ
Take home message FEC療法EC療法 TC療法
当院の外来化学療法室の診療科別利用患者内訳
消化器外科 29%乳腺甲状腺外科
29%
血液内科 17% 消化器内科 11% 呼吸器 7% 婦人科 5% 泌尿器科 2% 2015年4-9月 2892件乳がんの治療法
手術
(乳房、リンパ節)
放射線
(乳房、リンパ節)
薬物療法
・抗がん剤
・ホルモン剤
・分子標的治療薬
局所治療
全身治療
乳がんの治療の流れ
本日の内容
乳がん治療
乳がんの治療 乳がん薬物療法の目的 当院の周術期化学療法概略レジメン各論
DOC療法wPTX療法 nab-PTX療法 HER2療法検査値
肝機能の減量基準 腎機能の減量基準まとめ
Take home message FEC療法EC療法 TC療法
治療目的
周術期補助化学療法
がんを完全に
治す
こと
転移再発の化学療法
微小転移
診断の時点ですでに存在する小さな転移
画像検査(レントゲン、CT、MRI、PET等)
含めいかなる検査でも発見不可
数年から数十年かけて転移再発
微小転移のある可能性の高いがん
には
全身化学療法
が推奨される
術後補助化学療法の上乗せ効果
周術期に推奨される病型別の薬物療法
病型(サブタイプ)免疫染色 推奨される薬物療法 Luminal A ホルモン陽性、HER2陰性、 low Ki67 ホルモン療法単独 (原則として化学療法は行わない) Luminal B ホルモン陽性、HER2陰性、 high Ki67 ホルモン療法±化学療法Luminal-HER2 ホルモン陽性、HER2陽性 ホルモン療法+抗HER2療法+化学療法 HER2 ホルモン陰性、HER2陽性 抗HER2療法+化学療法
Triple negative ホルモン陰性、HER2陰性 化学療法
本日の内容
乳がん治療
乳がんの治療 乳がん薬物療法の目的 当院の周術期化学療法概略レジメン各論
DOC療法wPTX療法 nab-PTX療法 HER2療法検査値
肝機能の減量基準 腎機能の減量基準まとめ
Take home message FEC療法EC療法 TC療法
術前か術後か
本日の内容
乳がん治療
乳がんの治療 乳がん薬物療法の目的 当院の周術期化学療法概略レジメン各論
FEC療法EC療法 TC療法 DOC療法 wPTX療法 nab-PTX療法 HER2療法検査値
肝機能の減量基準 腎機能の減量基準FEC100療法/EC療法
スケジュール
day1 静注 21日毎 4コース
使用薬剤
FEC 5-FU 500 mg/㎡ エピルビシン 100mg/㎡ シクロホスファミド 500 mg/㎡ EC エピルビシン 90 mg/㎡ シクロホスファミド 600 mg/㎡
主な副作用
悪心嘔吐(高度)、便秘、骨髄抑制、口内炎、脱毛 心機能障害、出血性膀胱炎、皮膚乾燥・色素沈着(FECのみ) セット処方 イメンド(80)1C分1 day2-3 デカドロン(0.5) 16T分2 day2-5 ファモチジン(20) 1T分1 day1-5 ノバミン 1T/回 10回分 吐き気時 酸化マグネシウム(330) 3T分3 3日分 自己調節可 レボフロキサシン(500) 1T分1 38度以上発熱時 ビーソフテンローション 50g 1日3回手荒れ予防TC療法
スケジュール
day1 静注 21日毎 4コース
使用薬剤
ドセタキセル 75 mg/㎡ シクロホスファミド 600 mg/㎡
主な副作用
過敏症、悪心嘔吐(中等度)、便秘、 骨髄抑制、 口内炎、脱毛、 関節・筋肉痛、浮腫、出血性膀胱炎、 皮膚障害、間質性肺炎 セット処方 デカドロン(0.5) 16T分2 day2-3 ランソプラゾール(15) 1T分1 day1-5 ロキソプロフェン(60) レバミピド 1T/回 10回分 関節・筋肉痛発現時 酸化マグネシウム(330) 3T分3 3日分 自己調節可 レボフロキサシン(500) 1T分1 38度以上発熱時 ビーソフテンクリーム 50g 1日3回手荒れ予防悪心嘔吐対策
急性悪心嘔吐
化学療法の0~24時間後に発生する悪心嘔吐
遅延性悪心嘔吐
化学療法の24時間後から約1週間程度持続する悪心嘔吐
突出性悪心嘔吐
制吐剤の予防投与にもかかわらず発現する悪心嘔吐
予期性悪心嘔吐
抗がん剤のことを考えただけで誘発される悪心嘔吐
2015 日本癌治療学会編 制吐薬適正使用ガイドライン第2版より悪心嘔吐対策
悪心嘔吐対策
FEC療法のセット処方
イメンド(80mg)1Cap分1 day2-3 デカドロン錠(0.5mg)16錠分2 day2-5 ファモチジンD錠(20mg)1錠分1 day1-5 ノバミン錠 1錠/回 吐き気のするとき
コントロール不良の場合の追加制吐剤の処方例
ユーパン錠(0.5mg)1錠/回(点滴前日と当日朝の予防内服) ジプレキサ錠 2.5-5mg/day 分1眠前 day1-7 デカドロン錠(0.5mg)8錠分2 2day延長分 イメンド(80mg)1Cap分1 2day延長分
アロキシによる便秘に注意!!
(グラニセトロン 0.1%未満 アロキシ 16.5%) 酸化マグネシウム(330mg)3錠分3 自己調節可悪心嘔吐対策
生活指導で伝えるべき悪心嘔吐対策
吐き気は必ず数日で落ち着くこと
無理して食事をとらないこと(水分はしっかりとる)
1日3回の食事にこだわらず、回数を増やし少しずつ
食事をとると良い
部屋の風通しをよくすること
締め付けの強い衣服を着ないようにすること
点滴前日は十分な睡眠をとること
(不眠の場合は眠剤処方の検討が必要)
点滴当日の朝食を食べ過ぎないこと(油分注意)
アンスラサイクリン、トラスツズマブの心毒性
ドキソルビシンやエピルビシン等のアンスラサイクリン
系抗がん剤は累積投与量により不可逆的な心筋障害を引
き起こす
(トラスツズマブによる心毒性は可逆的であり中止により
改善する)
投与前及び治療開始後も定期的に心機能評価
(超音波エコー)を実施
左室駆出率45-50%以下で投与中止する
初期症状
手足のむくみ、体重増加、労作時呼吸困難、息切れ
5%の心毒性が出現する累積投与量
ドキソルビシン 500 mg/㎡
エピルビシン 900 mg/㎡
岡元るみ子 監修「がん化学療法副作用対策ハンドブック」より抜粋骨髄機能(WBC、NEU、Hb、Plt)
骨髄抑制
ほとんどの殺細胞性の抗がん剤にみられる血液毒性の総称
田口哲也 監修「イラストでよくわかるがん治療とサポーティブケア」 より抜粋 主な機能 骨髄抑制の現れ方 骨髄抑制による臨床症状 白血球 (好中球) 生体の防御 (とくに白血球中で最も多い好中球は 貪食、殺菌能を有し、生体防御に重要) 白血球減少(好中球減少) 易感染状態 (発熱、口内炎等) 赤血球 ヘモグロビンによる酸素運搬、供給 赤血球減少(ヘモグロビン減少) 貧血、酸素欠乏症状 血小板 止血 血小板減少 出血傾向 骨髄抑制の強さに応じて、レジメン 毎にday1で必要とされる骨髄機能 の値は異なる 骨髄機能の回復が遅ければ延期、 減量して投与される発熱時の対応
感染予防の指導
毎日の体温測定と手洗いうがい、外出時のマスク着用
発熱時の対応の指導
抗生剤が処方(当院ではクラビット500mg 分1 5日間)されている
場合には、37.5-38度以上の発熱が確認された時点で内服する
5日間内服しても解熱しない場合、もしくは発熱による症状が強い
(下痢を併発、呼吸困難等)場合には病院に連絡いただく
乳腺レジメンにおける発熱性好中球減少症発現率(%)
1)FEC療法(11.2%)、TC療法(68.8%)
DOC療法(7%)、weekly PTX(1%)
1) G-CSF適正使用ガイドライン 2013年版 Ver.2 一般社団法人 日本癌治療学会編G-CSF適正使用ガイドライン 2013年版 一般社団法人 日本癌治療学会編
発熱性好中球減少症(FN)発症のリスク因子
初回治療前のFNのリスクの評価 ASCO NCCN EORTC • 高齢者(65 歳以上) • PS†不良 • FN の既往歴†† • 広範囲放射線照射などの強 い前治療 • 化学放射線療法 • 腫瘍の骨髄浸潤による血球 減少 • 栄養状態不良 • 開放創や活動性感染の存在 • 進行がん • 重篤な合併症 • 高齢者(65 歳以上) • PS†不良 • 化学療法施行歴 • 放射線治療歴 • 治療前好中球減少 • 腫瘍の骨髄浸潤 • 感染や開放創 • 最近の手術歴 • 腎障害 • 肝障害(ビリルビン高値) • 高齢者(65 歳以上) • 進行がん • FN の既往歴††† performance Status(PS)とは全身症状の指標であり,Eastern Cooperative Oncology Group によって分類される。
0:無症状,1:軽度の症状があり,2:日中の50%以上は起居,3:日中の50%以上は就床,4:終日就床
††レジメンの異なる先行化学療法におけるFNの既往歴
ペグフィルグラスチム
血清中ペグフィルグラスチム濃度及び好中球数の中央値 2014年11月薬価収載の持続型G-CSF製剤(106,660円/回)
効能効果
がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制
推奨投与時期
がん化学療法終了後24時間~72時間
投与対象者
FN発症率が20%を超えるレジメン、もしくはFN発症率が10-20%の
レジメンでFN発症のリスク因子を有する患者
乳腺での投与対象(希望制)
FEC、TC療法に限定
腰背部痛に注意
ジーラスタ®適正使用ガイドより一部抜粋DOC療法
スケジュール
day1 静注 21日毎 4コース
使用薬剤
ドセタキセル 75 mg/㎡
主な副作用
過敏症、骨髄抑制、口内炎、脱毛、 倦怠感、浮腫、関節・筋肉痛、 皮膚障害、間質性肺炎 セット処方 デカドロン(0.5) 16T分2 day2-3 浮腫・倦怠感予防 ランソプラゾール(15) 1T分1 day1-5 ロキソプロフェン(60) レバミピド 1T/回 10回分 関節・筋肉痛発現時 酸化マグネシウム(330) 3T分3 3日分 自己調節可 ビーソフテンクリーム 50g 1日3回手荒れ予防weekly PTX療法【12連投】
スケジュール
day1 静注 7日毎 12回投与
使用薬剤
パクリタキセル 80 mg/㎡
主な副作用
アレルギー、骨髄抑制、脱毛、 関節・筋肉痛、末梢神経障害 セット処方(希望者のみ) 牛車腎気丸 3P分3 メチコバール 3T分3nab-PTX療法
スケジュール
day1 静注 21日毎 4コース
使用薬剤
パクリタキセル[アルブミン懸濁型] 260 mg/㎡
主な副作用
骨髄抑制、口内炎、脱毛、 関節・筋肉痛、末梢神経障害、 皮疹・じんま疹、 視力障害(黄斑浮腫)、倦怠感 セット処方 デカドロン(0.5) 8T分2 day2-4 倦怠感予防 ロキソプロフェン(60) レバミピド 1T/回 15回分 関節・筋肉痛発現時タキサン系による末梢神経障害
一回投与量、総投与量が多い程出現しやすい蓄積毒性
頻度
nab-PTX(63.7%)>wPTX(60%)>DOC(20%)
支持療法薬
十分なエビデンスのある治療は現状存在しない
リリカ、サインバルタ、牛車腎気丸、メコバラミン等
対応
生活に支障のあるしびれ(Grade3以上)を認めた場合
には休薬・減量が原則となる
当科では指標としてボタンの開け閉め、リモコン操作、
箸の操作に影響があるかないかを判断基準としている
足の痺れによる転倒に注意が必要
DOCによる浮腫予防
DOCの総投与量が300-400mg/㎡で発現しやすい
(用量依存性)
下肢浮腫から発症し、全身浮腫へ移行、重篤な例では胸
水、腹水が貯留する
DOCセット処方
デカドロン錠(0.5mg)16錠分2 day2-3
浮腫予防に対するコルチコステロイドの有用性
JCO September 1997 vol. 15 3149-3155
倦怠感が強い場合にはデカドロンの延長も考慮
浮腫が強い場合は利尿薬(フロセミド 20mg分1)
抗HER2療法
スケジュール
day1 静注 21日毎 17コース(1年間)
使用薬剤
トラスツズマブ 8 mg/kg 90分(2回目以降は 6 mg/kg 30分)
投与間隔
術前ケモで手術が入ったり、患者都合で4週間投与間隔があいた場合には 再導入療法として8mg/kgが実施される
主な副作用
インフュージョンリアクション、心不全
投与前内服
カロナール200mg 3錠(投与30分前に処置として内服)インフュージョンリアクション
症状
悪心、頭痛、頻脈、血圧低下、皮疹、息切れ
発症頻度・時期
ハーセプチンでは4割程度に発生する
ほとんどが初回の点滴中または直後に発生する
とくに多いのは点滴開始2時間以内
点滴速度
初回90分、2回目以降30分
初回はカロナール錠(200)3錠内服後30分
タキサンとの併用
ドセタキセルやパクリタキセルと併用される場合にはこれらの薬剤
の過敏症とインフュージョンリアクションの区別がつかなくなる
ため当院では2回目からハーセプチンを併用する
本日の内容
乳がん治療
乳がんの治療 乳がん薬物療法の目的 当院の周術期化学療法概略レジメン各論
DOC療法wPTX療法 nab-PTX療法 HER2療法検査値
肝機能の減量基準 腎機能の減量基準まとめ
Take home message FEC療法EC療法 TC療法
乳がん領域に用いられる抗がん剤と減量基準
①肝機能
「乳癌診療ポケットガイド 第2版」より抜粋 抗がん剤 肝機能異常の指標 減量の目安 抗がん剤 肝機能異常の指標 減量の目安 ドキソルビシン 1.2 < T-Bil ≦ 3.0 50% ビノレルビン T-Bil ≦ 2.0 減量なし 3.1 < T-Bil ≦ 5.0 25% 2.1 < T-Bil ≦ 3.0 50% T-Bil > 5.1 投与中止 T-Bil > 5.0 25% エピルビシン 1.2 < T-Bil ≦ 3.0 またはAST施設上限2-4倍 50% カペシタビン (慎重な肝機能フォロー) 減量なし T-Bil > 3.1 またはAST施設上限4倍以上 25% ゲムシタビン トランスアミナーゼ上昇はあるが T-Bilが正常範囲内 減量なし パクリタキセル 3週ごと投与量 トランスアミナーゼ上限10倍未満 かつT-Bil上限1.25倍以下 減量なし カルボプラチン (慎重な肝機能フォロー) 減量なし トランスアミナーゼ上限10倍未満かつT-Bil上限1.26~2.0倍以下 75% エリブリン 軽度肝障害(Child-Pugh class A) 1.1 mg/㎡ トランスアミナーゼ上限10倍未満
かつT-Bil上限2.01~5.0倍以下 50% 中等度肝障害(Child-Pugh class B) 0.7 mg/㎡ トランスアミナーゼ上限10倍以上
またはT-Bil上限5.0倍以上 投与中止 重度肝障害(Child-Pugh class C) 投与中止 ドセタキセル トランスアミナーゼ上限1.6~6.0倍 75%