1 ベクトルの内積と外積
R
を実数全体の集合とし,R
n によってn
次元数ベクトル空間を表す.定義
1.1 x, y
を第j
成分がそれぞれx
j, y
j であるn
次元数ベクトルとする. (1) x
とy
の内積(x, y)
を(x, y) =
∑
n j=1x
jy
j によって定義する. (2) x
の長さ∥ x ∥
を∥ x ∥ = √
(x, x) =
√ ∑
n j=1x
2j によって定義する.(3) n = 3
の場合,x
とy
の外積x × y
をx × y =
x
2y
3− x
3y
2− x
1y
3+ x
3y
1x
1y
2− x
2y
1
によって定義する.次の結果は内積の定義から容易に確かめられる.
命題
1.2 x, y, z ∈ R
n, r ∈ R
とするとき,次のことが成り立つ.(1) (x + y, z) = (x, z) + (y, z), (x, y + z) = (x, y) + (x, z).
(2) (rx, y) = r(x, y) = (x, ry).
(3) (y, x) = (x, y).
(4) (x, x) ≧ 0
であり, x ̸ = 0
ならば(x, x) > 0
である.命題
1.3 x ∈ R
n の第i
成分をx
i とするとき,| x
i| ≦ ∥ x ∥ ≦ | x
1| + | x
2| + · · · + | x
n|
が成り立つ.定理
1.4 x, y ∈ R
n のとき,以下の不等式が成り立つ.(1) | (x, y) | ≦ ∥ x ∥ ∥ y ∥ (シュワルツの不等式). (2) ∥ x + y ∥ ≦ ∥ x ∥ + ∥ y ∥ (三角不等式).
x =
x
1x
2x
3
, y =
y
1y
2y
3
, z =
z
1z
2z
3
∈ R
3に対し, det(x,y, z)
によって,x, y, z
をそれぞれ第1
列,第2
列,第3
列とする3
次正方行列の行列式x
1y
1z
1x
2y
2z
2x
3y
3z
3= x
1y
2z
3+ x
2y
3z
1+ x
3y
1z
2− x
1y
3z
2− x
2y
1z
3− x
3y
2z
1 を表す.定義
1.5 R
3 の基底x, y, z
に対し,[x, y, z]
によってベクトルの並ぶ順序も考慮に入れたR
3 の基底を表す.det(x, y, z) > 0
であるとき,[x, y, z]
は右手系であるといい,det(x, y, z) < 0
であるとき,[x, y, z]
は左手系であ るという.
内積と外積の定義から,次の結果が確かめられる.
命題
1.6 x, y, z ∈ R
3 と実数r
に対し,次の等式が成り立つ.(1) (x + y) × z = x × z + y × z, x × (y + z) = x × y + x × z (2) (rx) × y = x × (ry) = r(x × y)
(3) y × x = − x × y, x × x = 0 (4) (x × y) × z = − (y, z)x + (x, z)y (5) (x × y, z) = det(x, y, z)
(6) (x × y, z × w) = (x, z)(y, w) − (x, w)(y, z), ∥ x × y ∥
2= ∥ x ∥
2∥ y ∥
2− (x, y)
2(7) Ax × Ay =
tA(x ˜ × y) (ただし A ˜
はA
の余因子行列)注意
1.7 (1) x
とy
のなす角をθ
とすれば,
上の(6)
より∥ x × y ∥ = √
∥ x ∥
2∥ y ∥
2− ∥ x ∥
2∥ y ∥
2cos
2θ = ∥ x ∥∥ y ∥ sin θ
だからx × y
の長さはx
とy
を2
辺とする平行四辺形の面積に等しい. 従って,x, y
が1
次独立であることとx × y ̸ = 0
であることは同値である.(2)
上の(5)
で,z = x, y, x × y
の場合を考えると(x × y, x) = (x × y, y) = 0, det(x, y, x × y) = ∥ x × y ∥
2 だ から,x × y
はx
とy
の両方に垂直なベクトルであり,x, y
が1
次独立ならば[x, y, x × y]
は右手系である.2 写像の微分
定義
2.1 p ∈ R
n, r > 0
に対してB(p ; r) = { x ∈ R
n| ∥ x − p ∥ < r }
とおき,これを半径r
中心p
の開球という.以後,
X ⊂ R
n, Y ⊂ R
mとし,写像f : X → Y
を考える.定義
2.2 p ∈ R
n, q ∈ R
m とする.
どんなε > 0
に対しても, δ > 0
で条件「x
∈ B(p ; δ) ∩ X
かつx ̸ = p
ならばf (x) ∈ B(q ; ε)」
を満たすものがあるとき,
x
をp
に近づけたときのf
の極限はq
であるといい,これをlim
x→p
f (x) = q
で表す.注意
2.3 lim
x→p
f (x) = q
であることは,言い換えると,どんなε > 0
に対しても,δ > 0
で 「∥ x − p ∥ < δ, x ∈ X
かつx ̸ = p
ならば∥ f(x) − q ∥ < ε」を満たすものがあることである.
従って,このことはlim
x→p
∥ f (x) − q ∥ = 0
と同値である.命題
2.4 p ∈ R
n, q, r ∈ R
m, a, b, c ∈ R
とし,写像f, g : X → Y
はlim
x→p
f (x) = q, lim
x→p
g(x) = r
を満たし,関 数s : X → R
はlim
x→p
s(x) = c
を満たすとする. このとき,次の等式が成り立つ.(1) lim
x→p
(af (x) + bg(x)) = aq + br (2) lim
x→p
s(x)f(x) = cq
証明(1)
任意のx ∈ X
に対し,
三角不等式から∥ (af (x) + bg(x)) − (aq + br) ∥ = ∥ a(f (x) − q) + b(g(x) − r) ∥
≦ ∥ a(f (x) − q) ∥ + ∥ b(g(x) − r) ∥ = | a |∥ f (x) − q ∥ + | b |∥ g(x) − r ∥
であり,仮定と注意2.3
からx → p
のとき,∥ f (x) − q ∥
と∥ g(x) − r ∥
はともに0
に近づくため,上の不等式から,∥ (af (x) + bg(x)) − (aq + br) ∥
も0
に近づく. 故に,注意2.3
によりlim
x→p
(af (x) + bg(x)) = aq + br
である.(2)
任意のx ∈ X
に対し,三角不等式から∥ s(x)f (x) − cq ∥ = ∥ s(x)f (x) − cf(x) + cf (x) − cq ∥ = ∥ (s(x) − c)f (x) + c(f (x) − q) ∥
≦ | s(x) − c |∥ f (x) ∥ + | c |∥ f (x) − q ∥ = | s(x) − c |∥ f (x) − q + q ∥ + | c |∥ f (x) − q ∥
≦ | s(x) − c | ( ∥ f (x) − q ∥ + ∥ q ∥ ) + | c |∥ f (x) − q ∥
であり,仮定と注意
2.3
からx → p
のとき,∥ f (x) − q ∥
と| s(x) − c |
はともに0
に近づくため,上の不等式から,∥ s(x)f (x) − cq ∥
も0
に近づく.
故に,
注意2.3
によりlim
x→p
s(x)f (x) = cq
である. □
x ∈ X
に対し, f (x) ∈ Y
の第i
成分をf
i(x)
で表すことにする. x
をf
i(x)
に対応させることにより,
関数f
i: X → R
が定まる.命題
2.5 q ∈ R
mの第i
成分をq
i とすれば,lim
x→p
f (x) = q
が成り立つためには,すべてのi = 1, 2, . . . , m
に対 してlim
x→p
f
i(x) = q
i が成り立つことが必要十分である.証明 すべての
i = 1, 2, . . . , m
に対してlim
x→p
f
i(x) = q
i が成り立つならば, limx→p
| f
i(x) − q
i| = 0
が すべてのi = 1, 2, . . . , m
に対して成り立つため, lim
x→p
∑
m i=1| f
i(x) − q
i| = 0
である.
ここで,
命題1.3
から0 ≦ ∥ f (x) − q ∥ ≦
∑
m i=1| f
i(x) − q
i|
だから, limx→p
∥ f (x) − q ∥ = 0
が成り立つため,注意2.3
により, limx→p
f (x) = q
である.命題
1.3
から,
任意のi = 1, 2, . . . , m
に対して| f
i(x) − q
i| < ∥ f (x) − q ∥
だから, lim
x→p
f (x) = q
ならば,
注意2.3
により, limx→p
∥ f (x) − q ∥ = 0
が成り立つため,すべてのi = 1, 2, . . . , m
に対してlim
x→p
f
i(x) = q
i である.□
定義2.6 p ∈ X
に対し, lim
x→p
f (x) = f (p)
が成り立つとき, f
はp
で連続であるという.
すべてのp ∈ X
に対 し,f
がp
で連続であるときf
を連続写像という.注意
2.7
命題2.4
から,連続写像の和および連続関数と連続写像の積は連続写像である. また命題2.5
から,写像 が連続であるためには,各成分の関数が連続であることが必要十分である.命題
2.8 p ∈ X
に対し,正の実数r, L
で条件「x∈ B(p ; r) ∩ X
ならば∥ f(x) − f (p) ∥ ≦ L ∥ x − p ∥
」を満たす ものがあれば, f
はp
で連続である.
証明 任意の
ε > 0
に対して,δ
をr
とε
L
の小さい方とすれば,x ∈ B(p ; δ) ∩ X
ならば∥ f (x) − f (p) ∥ ≦
L ∥ x − p ∥ < Lδ ≦ ε
だからf
はp
で連続である.□
命題
2.9 X ⊂ R
n, Y ⊂ R
m, Z ⊂ R
k, p ∈ R
n, q ∈ Y
とし,
写像f : X → Y
はlim
x→p
f (x) = q
を満たし,
写像g : Y → Z
はq
で連続であるとする. このときlim
x→p
g(f (x)) = g(q)
が成り立つ.証明
g
のq
における連続性から,
任意のε > 0
に対して, δ
1> 0
で「y ∈ B(q ; δ
1) ∩ Y
ならばg(y) ∈ B(g(q) ; ε)
」を満たすものがある. また,
f
についての仮定から,δ > 0
で,「x∈ B(p ; δ) ∩ X
かつx ̸ = p
ならばf(x) ∈ B (q ; δ
1)」を満たすものがある.
従ってx ∈ B(p ; δ) ∩ X
かつx ̸ = p
ならばg(f (x)) ∈ B(g(q) ; ε)
となるため,x
lim
→pg(f (x)) = g(q)
が成り立つ.□
定義
2.10 X ⊂ R
n の点p
に対し,B(p ; r) ⊂ X
を満たす正の実数r
が存在するとき,p
をX
の内点という.定義
2.11 p
をX
の内点とする. m × n
行列A
で,
次の等式( ∗ )
を満たすものがあるときf
はp
で微分可能で あるという.x
lim
→pf(x) − f (p) − A(x − p)
∥ x − p ∥ = 0 · · · ( ∗ )
以後,「f は
p
で微分可能である.」というときはp
はf
の定義域X
の内点であることは仮定する.写像
f , m × n
行列A, p ∈ X
に対して, 写像ε = ε
f,A,p: X → R
m をε
f,A,p(x) =
f (x) − f (p) − A(x − p)
∥ x − p ∥ x ̸ = p
0 x = p
で定義すれば,この定義と定義
2.11
から次のことがわかる.命題
2.12
任意のx ∈ X
に対して,等式f (x) = f (p) + A(x − p) + ∥ x − p ∥ ε
f,A,p(x)
が成り立ち
, f
がp
で微分可能であるためには, ε
f,A,p がp
において連続,
すなわちlim
x→p
ε
f,A,p(x) = 0
となるよ うな,m × n
行列A
が存在することが必要十分である.補題
2.13 A = (a
ij)
をm × n
行列としてM = √ ∑
1≦i≦m,1≦j≦n
a
2ij とおくと, ∥ Ax ∥ ≦ M ∥ x ∥
が任意のx ∈ R
n に対して成り立つ.証明
x
の第i
成分をx
i とし,A
の第i
行の成分を縦に並べて得られるベクトルをa
i とすると, シュワルツ の不等式から(
∑
n j=1a
ijx
j)
2= (a
i, x)
2≦ ∥ a
i∥
2∥ x ∥
2= (
∑
n j=1a
2ij)
∥ x ∥
2.
従って∥ Ax ∥
2=
∑
m i=1(
∑
n j=1a
ijx
j)
2≦
∑
m i=1( ∑
n j=1a
2ij)
∥ x ∥
2= M
2∥ x ∥
2. □
命題
2.14 f
がp
で微分可能ならばr, L > 0
でB(p ; r) ⊂ X
かつ「x∈ B(p ; r)
ならば∥ f (x) − f (p) ∥ ≦ L ∥ x − p ∥
」 を満たすものがある. 従って命題2.8
からf
はp
で連続である.証明
m × n
行列A
は定義2.11
の( ∗ )
を満たすとする. 命題2.12,
三角不等式および補題2.13
から∥ f (x) − f(p) ∥ =
∥ A(x − p) + ∥ x − p ∥ ε
f,A,p(x) ∥ ≦ ∥ A(x − p) ∥ + ∥ x − p ∥∥ ε
f,A,p(x) ∥ ≦ (M + ∥ ε
f,A,p(x) ∥ ) ∥ x − p ∥ · · · ( ∗ )
である.仮定と命題
2.12
からlim
x→p
∥ ε
f,A,p(x) ∥ = 0
であるため,r > 0
でB(p ; r) ⊂ X
かつ「x∈ B(p ; r), x ̸ = p
ならば∥ ε
f,A,p(x) ∥ < 1」を満たすものがとれる.
従って( ∗ )
からx ∈ B(p ; r)
ならば∥ f (x) − f (p) ∥ < (M + 1) ∥ x − p ∥
である.
□
定義
2.15 p ∈ X , v ∈ R
n とし,
十分小さなr > 0
に対して| t | < r
ならばp + tv ∈ X
であるとする.
極限lim
t→0f (p + tv) − f (p) t
が存在するとき,
f
はp
においてv
方向に微分可能であるといい,この極限のベクトルをf
のp
におけるv
方 向の微分という. とくにY = R (m = 1), v = e
j の場合,上の極限値を∂f
∂x
j(p)
で表し,f
のp
におけるj
番目 の変数に関する偏微分といい,このとき,f
はj
番目の変数に関してp
において偏微分可能であるという. さら にf
がX
の各点でj
番目の変数に関して偏微分可能なとき,p ∈ X
を∂f
∂x
j(p)
に対応させる関数をj
番目の変 数に関する偏導関数と呼んで∂f
∂x
j: X → R
で表す.命題
2.16 f : X → Y
がp
で微分可能なとき,任意のv ∈ R
n に対してf
はp
においてv
方向に微分可能であ る. このとき定義2.11
の等式( ∗ )
におけるm × n
行列A
はlim
t→0f (p + tv) − f (p)
t = Av
を満たす. とくに
A
の第j
列はlim
t→0
f (p + te
j) − f (p)
t
で与えられるため定義2.11
の等式( ∗ )
を満たす行列A
は存在すればただ1
つだけである.
証明 命題
2.12
の等式にx = p + tv
を代入すれば,f (p + tv) = f (p) + tAv + | t |∥ v ∥ ε
f,A,p(p + tv)
となるため,lim
t→0f (p + tv) − f (p)
t = Av + lim
t→0
| t |
t ∥ v ∥ ε
f,A,p(p + tv) · · · ( ∗∗ )
である.| t |
t ∥ v ∥ ε
f,A,p(p + tv)
= ∥ v ∥ ∥ ε
f,A,p(p + tv) ∥
であり,仮定と命題2.12
からlim
t→0
∥ ε
f,A,p(p + tv) ∥ = 0
だ から( ∗∗ )
からlim
t→0
f (p + tv) − f(p)
t = Av
が得られる.□
定義
2.17
上の命題から定義2.11
の等式( ∗ )
を満たす行列A
はf
とp
を与えればただ1
つに定まるため,これ をf
′(p)
で表して,f
のp
における微分という.命題
2.18
写像f : X → Y
とx ∈ X
に対し, f (x) ∈ Y
の第i
成分をf
i(x)
で表し, X
で定義された実数値関 数f
i: X → R
を考える.(1) f
がp
で微分可能ならば,各f
i はp
で微分可能で,f
′(p)
の(i, j)
成分は∂f
i∂x
j(p)
である.(2)
逆に各f
i がp
で微分可能ならばf
はp
で微分可能である.
証明(1) f
′(p)
の第i
行をA
i とするとf(x) − f (p) − f
′(p)(x − p)
∥ x − p ∥
の第i
成分はf
i(x) − f
i(p) − A
i(x − p)
∥ x − p ∥
だから
f
i(x) − f
i(p) − A
i(x − p)
∥ x − p ∥
≦
f (x) − f (p) − f
′(p)(x − p)
∥ x − p ∥
が成り立つ.
x → p
のとき,右辺は0
に近づくためlim
x→p
f
i(x) − f
i(p) − A
i(x − p)
∥ x − p ∥ = 0
となり,f
i はp
で微分可 能でf
i′(p) = A
i である.A
の(i, j)
成分はA
i の第j
列だから命題2.16
と偏微分の定義からA
ie
j= ∂f
i∂x
j(p)
に 等しくなる.
(2) A
をf
i′(p)
を第i
行とするm × n
行列とすれば, m
次元ベクトルf (x) − f (p) − A(x − p)
∥ x − p ∥
の第i
成分はf
i(x) − f
i(p) − f
i′(p)(x − p)
∥ x − p ∥
だから仮定と命題2.5
からlim
x→p
f (x) − f (p) − A(x − p)
∥ x − p ∥ = 0
である.□
命題2.19 X ⊂ R
n, v, p ∈ R
n とし,t ∈ (a, b)
ならばp+ tv ∈ X
であるとする.ω : (a, b) → X
をω(t) = p+ tv
で定め,関数f : X → R
はω(t) (t ∈ (a, b))
において微分可能であるとする. このとき,v
の第j
成分をv
j とす れば,次の等式が成り立つ.(f ◦ ω)
′(t) =
∑
n j=1v
j∂f
∂x
j(p + tv)
証明 命題2.18
からf
′(p + tv) =
( ∂f
∂x
1(p + tv) ∂f
∂x
2(p + tv) · · · ∂f
∂x
n(p + tv) )
である. 一方,命題
2.16
か ら(f ◦ ω)
′(t) = lim
h→0
f ((p + tv) + hv) − f (p + tv)
h = f
′(p + tv)v
だから結果を得る.□
定理2.20 (合成写像の微分法) X ⊂ R
n, Y ⊂ R
m, Z ⊂ R
l とする.f : X → Y
がp
で微分可能であり,g : Y → Z
がf (p)
で微分可能ならば,合成写像g ◦ f : X → Z
もp
で微分可能で,次の等式が成り立つ.(g ◦ f )
′(p) = g
′(f (p))f
′(p)
証明 写像
ε
f,f′(p),p, ε
g,g′(f(p)),f(p) を,それぞれ,ε
f,p, ε
g,f(p) で表すことにすれば,命題2.12
からf (x) = f (p) + f
′(p)(x − p) + ∥ x − p ∥ ε
f,p(x) · · · (1)
g(y) = g(f (p)) + g
′(f (p))(y − f (p)) + ∥ y − f (p) ∥ ε
g,f(p)(y) · · · (2)
が成り立つ. (2)の等式のy
にf (x)
を代入すれば次の等式が得られる.g(f (x)) = g(f (p)) + g
′(f (p))(f (x) − f (p)) + ∥ f (x) − f (p) ∥ ε
g,f(p)(f (x))
x ̸ = p
として,この等式の右辺の第2
項のf (x)
に(1)
の右辺を代入して, 両辺を∥ x − p ∥
で割って整理すれば(g ◦ f )(x) − (g ◦ f )(p) − g
′(f (p))f
′(p)(x − p)
∥ x − p ∥ = g
′(f (p))ε
f,p(x) + ∥ f (x) − f (p) ∥
∥ x − p ∥ ε
g,f(p)(f (x)) · · · (3)
が得られる. 従ってx → p
としたときに,上式の右辺が0
に近づくことが示されれば,g ◦ f : X → Z
はp
で微分 可能で,定義2.17
により, (g◦ f )
′(p) = g
′(f (p))f
′(p)
であることがわかる.三角不等式から
(3)
の右辺の長さについて,
次の不等式が成り立つ. g
′(f (p))ε
f,p(x) + ∥ f(x) − f (p) ∥
∥ x − p ∥ ε
g,f(p)(f (x))
≦ ∥ g
′(f (p))ε
f,p(x) ∥ + ∥ f (x) − f (p) ∥
∥ x − p ∥ ε
g,f(p)(f (x)) · · · (4)
まず,A = g
′(f (p))
として補題2.13
を用いると∥ g
′(f (p))ε
f,p(x) ∥ ≦ M ∥ ε
f,p(x) ∥
を満たす定数M
があり, 仮定 と命題2.12
からx
がp
に近づくとき,この不等式の右辺は0
に近づくためx
lim
→p∥ g
′(f (p))ε
f,p(x) ∥ = 0 · · · (5)
である
.
命題2.14
から, r, L > 0
でB(p ; r) ⊂ X
かつ∥ x − p ∥ < r
ならば∥ f (x) − f (p) ∥ ≦ L ∥ x − p ∥
を満たす ものがあるため, 0< ∥ x − p ∥ < r
ならば∥ f (x) − f (p) ∥
∥ x − p ∥ ε
g,f(p)(f (x)) ≦ L ε
g,f(p)(f (x)) · · · (6)
が成り立つ. 命題
2.14
から,f
はp
で連続だから, limx→p
f (x) = f (p)
が成り立つため, 仮定と命題2.9
から,x
lim
→pε
g,f(p)(f (x)) = 0
である. 従ってx → p
のとき, (6)の右辺は0
に近づくため,x
lim
→p∥ f (x) − f (p) ∥
∥ x − p ∥ ε
g,f(p)(f (x)) = 0 · · · (7)
が成り立つ. (5), (7)と
(4)
から,x → p
のとき, (3)の右辺は0
に近づくため,主張は示された.□
上の定理でZ = R
の場合を考える.x ∈ X
に対しf (x) ∈ Y
の第i
成分をf
i(x)
で表し,実数値関数f
i: X → R
を考えれば,命題2.18
の(1)
からm × n
行列f
′(p)
の(i, j)
成分は∂f
i∂x
j(p)
であり, 1× m
行列g
′(f (p))
の(1, j)
成分 は∂g
∂x
j(f (p))
である. 一方(g ◦ f )
′(p)
の(1, j)
成分は∂g ◦ f
∂x
j(p)
だから,上で示した等式(g ◦ f )
′(p) = g
′(f (p))f
′(p)
の両辺の
(1, j)
成分を比較すれば次の結果が得られる.系
2.21 f : X → Y
がp
で微分可能であり,g : Y → R
がf (p)
で微分可能ならば,次の等式が成り立つ.∂g ◦ f
∂x
j(p) =
∑
m k=1∂g
∂x
k(f (p)) ∂f
k∂x
j(p)
3 空間曲線
定義
3.1 x(t), y(t), z(t)
を閉区間[a, b]
で定義された連続関数とし, t ∈ [a, b]
に対し, x(t) =
x(t) y(t) z(t)
とおく. t
が
a
からb
まで動くとき, 3次元数ベクトルx(t)
全体からなる集合{ x(t) ∈ R
3| t ∈ [a, b] }
を空間曲線という. 言 い換えれば,
各t ∈ [a, b]
を3
次元数ベクトルx(t)
に対応させる[a, b]
からR
3 への写像x
を考えると, x
による閉区間
[a, b]
の像が空間曲線であり,写像x (またはその成分の関数 x(t), y(t), z(t))
をこの空間曲線のパラメータ表示
(
媒介変数表示,
助変数表示)
という.
定義
3.2
写像x : [a, b] → R
3 によってパラメータ表示される空間曲線C
が与えられたとき,t
0= a, t
N= b
を 満たす単調増加数列∆ = { t
i}
Ni=0 に対して,L(x; ∆) =
∑
N i=1∥ x(t
i) − x(t
i−1)) ∥
とおく. 実数λ
で,次の条件(i)
と(ii)
を満たすものが存在するとき,
曲線C
は長さをもつといい, λ
をC
の長さと呼ぶ.
(i) t
0= a, t
N= b
を満たす任意の単調増加数列∆ = { t
i}
Ni=0 に対して,L(x; ∆) ≦ λ
である.(ii) λ
′< λ
ならば,L(x; ∆) < λ
′ かつt
0= a, t
N= b
を満たす単調増加数列∆ = { t
i}
Ni=0 が存在する.写像
x : (p, q) → R
3 のx
成分,y
成分,z
成分の関数をそれぞれx(t), y(t), z(t)
とする. これらの関数が開区間(p, q)
の各点で微分可能であるとき,t ∈ (p, q)
を
x
′(t) y
′(t) z
′(t)
に対応させる(p, q)
からR
3 への写像をx
′ で表す. このとき,
x
′(t)
は曲線C
上の点x(t)
における接線方向のベクトルである.定理
3.3
写像x : (p, q) → R
3 の各成分の関数x(t), y(t), z(t)
が開区間(p, q)
の各点で微分可能であり,これら の導関数x
′(t), y
′(t), z
′(t)
はすべて連続であるとする.p < a < b < q
に対し,空間曲線C
が写像x : [a, b] → R
3 によってパラメータ表示されるとき,C
の長さは∫
b a∥ x
′(t) ∥ dt
で与えられる.以後
, x : [a, b] → R
3を空間曲線C
のパラメータ表示とするとき, x
は上の定理の条件満たし,
さらに各t ∈ [a, b]
に対して,
x
′(t)
は零ベクトルではないと仮定する.定義
3.4 C
を写像x : [a, b] → R
3 によってパラメータ表示される空間曲線とする.t ∈ [a, b]
に対し,x
′(t)
をx(t)
におけるC
の接ベクトルという.区間
[a, t]
に対応する曲線C
の部分の長さをs(t)
とすれば,上の定理からs(t)
はs(t) =
∫
t a∥ x
′(u) ∥ du (3.1)
で与えられる.
s(t)
を区間[a, b]
で定義されたt
の関数と考えて,s
の導関数を考えれば,微分積分学の基本定理に より, s
′(t) = ∥ x
′(t) ∥
であり, x
′(t)
は零ベクトルではないという仮定から,
すべてのt ∈ [a, b]
に対してs
′(t) > 0
である. 従ってs
は狭義単調増加関数だから,L = s(b)
とおけば,s
は[a, b]
から[0, L]
への1
対1
の関数である.s
−1: [0, L] → [a, b]
をs
の逆関数として,写像x : [a, b] → R
3 との合成写像x ◦ s
−1: [0, L] → R
3 をx ˜
とおけ ば, ˜x
も曲線C
のパラメータ表示を与える.˜
x(t) = x ◦ s
−1(t) =
x(s
−1(t)) y(s
−1(t)) z(s
−1(t))
(3.2)
だから,合成関数の微分法から
x ˜
′(t) =
(s
−1)
′(t)x
′(s
−1(t)) (s
−1)
′(t)y
′(s
−1(t)) (s
−1)
′(t)z
′(s
−1(t))
= (s
−1)
′(t)
x
′(s
−1(t)) y
′(s
−1(t)) z
′(s
−1(t))
= (s
−1)
′(t)x
′(s
−1(t))
が得られる
. u = s
−1(t)
とおけばt = s(u)
であり,
逆関数の微分法とs
′(t) = ∥ x
′(t) ∥
から(s
−1)
′(t) = (s
−1)
′(s(u)) = 1
s
′(u) = 1
s
′(s
−1(t)) = 1
∥ x
′(s
−1(t)) ∥ (3.3)
が成り立つため,˜
x
′(t) = 1
∥ x
′(s
−1(t)) ∥ x
′(s
−1(t)) (3.4)
を得る. 故に, ˜x
′(t)
は単位ベクトルである. 従って,s, t ∈ [0, L] (s < t)
に対し,区間[s, t]
に対応する曲線C
の部 分の長さ∫
t s∥ x ˜
′(u) ∥ du =
∫
t sdu
はt − s
に等しい.
定義
3.5
空間曲線C
が写像x : I → R
3(I
は区間)によってパラメータ表示され,各s, t ∈ I (s < t)
に対して区間
[s, t]
に対応する曲線C
の部分の長さがt − s
に等しいとき, x
を曲線C
の弧長パラメータ表示いう.
上の議論から,任意の曲線は弧長パラメータ表示をもつ.
次の結果は,容易に確かめられる.
命題
3.6
関数f : (p, q) → R
と写像x, y : (p, q) → R
3の各成分は微分可能であるとする. 関数(x, y) : (p, q) → R
と写像x + y, f x, x × y : (p, q) → R
3 を(x, y)(t) = (x(t), y(t)), (x + y)(t) = x(t) + y(t), (f x)(t) = f (t)x(t), (x × y)(t) = x(t) × y(t)
によって定義する.
このとき,
次の等式が成り立つ.
(1) (x + y)
′(t) = x
′(t) + y
′(t) (2) (f x)
′(t) = f
′(t)x(t) + f (t)x
′(t)
(3) (x, y)
′(t) = (x
′(t), y(t)) + (x(t), y
′(t)) (4) (x × y)
′(t) = x
′(t) × y(t) + x(t) × y
′(t)
空間曲線