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94条2項 類 推 適 用 あ る い は94条2項 ・ 110条 重 畳 的 類 推 適 用 の 限 界(1)

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94条2項 類 推 適 用 あ る い は94条2項 ・ 110条 重 畳 的 類 推 適 用 の 限 界(1)

久須本 か お り

目 次

1問 題 の 所 在

II判 例 に お け る94条2項 類 推 適 川 法 理 の展 開 194条2項 類 推 適 用 判 例 の 分 類

294条2項 類 推 適 用 の 登 場 と外 形 自 己作 出 型 の 展 開 3意 思 外 形 非 対 応 型 の 登 場

4外 形他 人 作 出 型 の 登場

5外 形他 人作 出 型 に お け る 「承 認」 要 件 の 分 析 (1)外 形 他 人作 出 型 に お け る94条2項 類推 適 用 の 要 件 121判 例 の 紹 介

(3)分 析 (41ま とめ

皿 近 時 の 判 例 に み る94条2項 お よび110条 の 類 推 適 用 IV他 の 第 三 者 保 護 法 理 との 関 係

V評 価 及 び 展 望

(以 上 本}ナ)

1問 題 の 所 在

登 記 簿 に所 有 者 で あ る と記 載 され た 者か ら不 動 産 を購 入 した と こ ろ,実

は そ の 登 記 名 義 人 に所 有 権 が な か っ た と い う場 合 に,登 記 を信 頼 した 善意

の 第 三者 を 保 護 す る た あ,判 例 ヒ発 展 して き た 法 理 と して,94条2項 類

(2)

推 適 用 が あ る。 この法 理 は,い くつ か の段 階 を経 て拡 大 ・発 展せ られ(94 条2項 と110条 の 重畳 的 な 類推 適 用 もその 過 程 で生 み 出 され た もの で あ る), 今 日で は,わ が 国 の 不 動 産 登 記 に公 信 力 が な い こ とを 補 う機 能 を 持 つ もの と して,あ た か も一 個 の 条 文 で あ るか の ご と く裁 判 上 定 着 をみ て い る。

しか し,こ れ ほ ど確 立 した法 理 で あ りなが ら,類 推 適 用 と い う解 釈 手 法 ゆえ か,そ の適 用 要件 は い ま だ曖 昧 な点 を 多 く残 して お り,他 の 第 三 者保 護 規定,例 え ば96条3項 や 表 見 法 理 と の適 用 領 域 の 住 み 分 け も あ ま り明 確 で は な い。 一 方で,こ れ ま で の 判例 は,94条2項 類 推 適 用 に際 して,94 条2項 の要 件 で あ る 「 通 謀 」 を,真 の権 利 者の 意思 的 関与 と して の 「承認 」 へ と緩 和 す る こ とに よ り,真 の 権 利 者 の 最 小 限 の 関 与 で 類 推 適 用 を 認 め る 方 向 に拡 大 し,一 時 は94条 の 文 言 か らか け離 れ た 限 界 に近 い と ころ まで きて い た 。 しか しな が ら,一ド級 審 レベ ルで は,あ る時 期 を境 に して,真 の 権 利 者 の 意 思 的 関 与 を厳 格 に 解 して 類 推 適 用 を 否 定 した り,あ る い は94 条2項 と110条 を併 せ 類 推 適 用す る こ とに よ り,第 三者 保 護要 件 を厳 格 に

要求 し,結 果 と して 類推 適 用 を 否定 す る判 例 が 多 く見 られ るよ うに な って お り,こ れ を受 け る形 で ご く最 近,最 高 裁 判 決 が 出 され る に至 って い る。

この よ うに,判 例}̲,94条2項 類 推 適 用 は,か つ て の拡 大 の ピー クを 超 え て,む し ろ制 限 的 な 方 向 へ 収 束 しつ つ あ り,そ こ に94条2項 類 推 適 用 の 限 界 を読 み取 る こ と の で き る状 況 が生 まれ て い る よ うに思 われ る。

こ の よ うな 状 況 を踏 ま え て,本 稿 は,94条2項 類 推 適 用,あ るい は94 条2項 お よ び110条 類推 適 用 の 諸 判 例,と りわ け近 年 多 く見 られ る類推 適 用 を 否定 した 判 例 群 の 分 析 を 通 じて,同 法 理 の 適 用 要 件 を よ り明 確 化 す る

と と もに,民 法 の 他 の 第 三 者 保 護 規 定 との 整 合 性 や 均 衡 を 考 慮 しつ つ,同 法 理 の 妥 当 な 適 用 領 域 を 探 る こ とを 目的 とす る。

そ こで,以 下で は,次 の よ う に検 討 を 進 め る もの とす る。 まず,94条2 項 類 推 適 用 法 理 の 登 場 か ら現 在 に至 る まで の 展 開 過 程 を,判 例 の 紹 介 を 通

じて 明 らか にす る。 これ に よ り,各 段 階 にお け る判 例 の 特 徴,と りわ け近

(3)

94条2項 類推 適 用 あ る い は94条2項 ・110条 重 畳 的 類 推適 用 の 限 界11)

年 見 られ る同 条 項 類 推 適 用 を制 限的 に解 した判 例 の特 徴 を浮 き彫 りにす る と と も に,同 法 理 の 適 用 要 件 を で き る限 り一 般 的 ・客 観 的 に抽 出す る よ う 試 み る。 さ らに,こ の よ う に して 明 らか に され た 同 法 理 の 適 用 要 件 を,他 の 第 三者 保 護 法 理 の 適 用 要 件 と比 較 検 討 す る こ と に よ り,前 者 の 妥 当領 域 を 明確 化 して い き た い。

な お,94条2項 類 推 適 用 法 理 の展 開 過 程 につ い て は,す で に学 説 に よ っ て数 多 くの整 理 ・分 析 が 行 わ れ て お り,本 稿 も こ う した 先 行 業 績 に負 う と こ ろが 大 き いq1。 しか しなが ら,本 稿 は,こ れ らの 先 行 業績 に よ りフ ォロー さ れ て い な い比 較 的 新 しい判 例 群 類 推 適 用 に否 定 的 あ る い は 制 限 的 を 分 析 対 象 に 加 え る こ と に よ り,現 在 に お け る 同 法 理 の 帰 着 点 を 明 らか にす る こ と,そ こ に現 れ た 同法 理 の適 用 を 限 界 付 け る 要 素 を 抽 出 す る こ と に重 点 を 置 い て い る と い う点 に お い て,先 行 業績 に よ る 分析 を 更 に 深 化 させ る こ とが で き る もの と 考 え る。

II判 例 にお け る94条2項 類 推 適 用 法 理 の展 開

194条2項 類 推 適 用判 例 の 分 類

94条2項 が 類 推 適 用 され た 判 例 は, 学 説 に よ り次 の3類 型 に整 理 分 類

(Dこ の 問題 に 関 す る 先 行 業 績 は 枚 挙 に暇 が な いが,中 舎寛 樹 『1」 本民 法 の 展 開(3)

判 例 の 法 形 成 一 無 権 利 者 か らの 不 動 産 の取 得』 「民 法 典 の 百 年(1)」(1998年)

397頁 以 下,な らび に同 『登 記 と民 法94条2項 類推 適 用 』 「新/不 動 産 登記 講座 ・

第 二 巻 総 則n」(1997年)172頁 以 下 は,こ う した 先 行 業績 を 踏 まえ た 上 で 判

例 の 総 合的 横 断 的 な 分 析 を 行 った もの と して 非 常 に優 れ て お り,本 稿 も これ に 依

拠 す る と こ ろ が 大 き い。 中 舎 論 文 以 前 まで の 先 行 業 績 につ いて は,同 論 文 を 参照

され た い。 同 様 の 判 例 分 析 を 中 心 と した 研 究 と して は,高 森 八 四 郎 「 民 法94条2

項 と民 法110条 虚 偽 表 示 と表 権 法 理 」 関 大 法 学 論 集45巻2・3号(1995年)

3頁 以 下 が あ る。

(4)

され て い る。

第 一 に,「 外 形 自己 作 出 型」。 これ は,真 の権 利 者 と仮 装 登記 名義 人 との 間 に虚 偽 の 意 思 表 示 は な いが,真 の権 利 者 自身 が虚 偽 の 登 記 名義 を 作 出 し た 場 合 で あ る。

第 二 に,「 外 形 他 人 作 出 型 」 。 他 人 が 真 の 権 利 者 か ら 自 己に 勝 手 に登 記 名 義 を移 転 して虚 偽 の外 形 を 作 出 した が,そ の 外 形 を 権 利 者 が 承 認 して い る 場 合 で あ る。 真 の権 利 者 自身 が 虚 偽 の 外 形 を 作 出 して い な い 点 で 第 一 類 型

と異 な る。

第 一類 型 ・第 二類 型 は い ず れ も,権 利 者 自身 が 外 形 を 作 出す る,あ る い は他 人 が作 出 した外 形 に権 利 者 が 承 認 を 与 え る と い う形 で,外 形 作 出 に対 して 真 の権 利 者 の 意思 的 関 与が 何 らか の 形 で 認 め られ る場 合 で あ り,そ う した 真 の権 利 者 の 意思 と第 三 者の 信 頼 の 対 象 と な っ た外 形 とが 対 応 して い る た め,両 類 型 を ま とめ て 意 思 外 形 対 応 型 と称 し,次 に示 す 第 一三 類 型 と 区 別 され る。

第 三 に,「 意 思 外 形 非 対応 型」。 真 の権 利 者 が 虚 偽 表示 をす る こ と につ い て 合 意 し,い った ん 権 利 者が 承 認 した虚 偽 の外 形 が作 出 さ れ た 後,仮 装 登 記 名 義 人 の 背 信 行 為 に よ って,合 意 の範 囲 を超 え る 第 二の 虚偽 の 外 形 が 作 出 され て しま っ た場 合 で あ る。 第 三類 型 で は,第 二の外 形 に 対 す る 真 の 権 利 者の 意 思 的 関 与が 認 め られ な い の で,意 思 外 形 対 応 型 と同 じ論理 で 権 利 者 に 責 任 を 負 わ せ る こ とが で き な い こ とか ら,判 例 は94条2項 に併 せ て 110条 も類 推 適 用 し,意 思 外 形 対応 型 と は 異 な る扱 い を して い る。

こ の類 型論 は,1986年 に 四 宮 教 授 に よ り示 され て 以 来'2幽,数多 の 論 文 で 引用 さ れ て き た もの で あ る。 近 年 の 判 例 の動 向 に1照らす と,必 ず しも適 合 的 とは 言い難 い 部分 が あ る もの の,判 例 の流 れ を追 う には この類 型 論 に従 っ て 整 理 す る の が最 も便 宜 で あ る と考 え る。 以 下 で は,こ の 類 型 論 を 基 本 と

(2)四 宮=能 見 「民 法 総 論 第7版 」(2005年)170頁 。

(5)

94条2項 類 推適 用 あ るい は94条2項 ・110条 重畳 的 類推 適 用 の 限 界(1)

しつ つ,判 例 の 展 開 を 検 証 す る こ と と す る。

294条2項 類 推 適 用 の 登 場 と外 形 自 己作 出 型 の展 開

94条2項 の 類 推 適 用 を 判 例 上 初 め て 明 言 した の は,最 高 裁 昭 和29年8 月20日 判 決(民 集8巻8号1505号)で あ る。 事 案 は,Xの 夫 が,そ の 妾Yか ら不動 産 を 買 って くれ る よ うに頼 ま れ,Xの 同 意 を得 てXの 出 摘 に よ り不 動 産 を 買 い 受 け た と こ ろ,夫 とYが 協 議 の 上,Y名 義 で 売 主か ら直 接 移 転 登 記 を 経 由 し,そ の 後Yか らZに 売 却 され た た め,Xか らZ に 登記 抹 消 請求 がな され た と い う もの で あ り,外 形 白己作 出型 の事 案 で あ っ た。 判 決 は,売 主か ら直接Y名 義 に所 有 権 移 転 登 記 した こ とが,Xの 意 思 に 基 づ く もの な らば,実 質 に お い て は,Xが 売 一i三 か ら い った ん 所 有 権 移 転 登 記 を 受 け た 後,所 有 権 移 転 の 意 思 が な い に もか か わ らず,Yと 通 謀 して虚 偽 仮 装 の 所 有 権 移 転 登 記 を した場 合 と異 な らな い もの と して,94 条2項 を類 推 適 用 した。 この 事 案 にお いて 「 類 推 適 用 」 とい う表現 が 用 い

られ た の は,Y名 義 に 移 転 登 記 した こ とがXの 意 思 に 基 づ く とは い え, XがYの 名 義 を 利 用 して 移 転 登 記 した に 過 ぎ な い た め,厳 密 な 意 味 で XY間 に 外 形 的 に虚 偽 の意 思 表 示(法 律 行 為)が あ った とは い え な いか ら で あ る と解 され て い る。 も っ と も,こ の 判 決 以 前 に も,昭 和29年 判 決 の よ うに 「 通 謀」 は あ るが,外 形 的 に は 「虚偽 の 意思 表 示」 が な い とい う事 案 は存 在 して は い るが,い ず れ も 「 類 推 適 用 」 とい う表現 は 用 い られ ず ,

も っぱ ら94条2項 そ の も の の 適 用 の 可 否 が 問 題 とな って い る に過 ぎ な い[:41。 こ う し た 判 例 の 流 れ の 中 で,昭 和29年 判 決 が ど の よ うな 経 緯 で

「類 推 適 用 」 を 明 言 す る に 至 っ た の か は 必 ず し も明 らか で は な い が,そ の 表 現 に こ め られ た意 図 が な ん で あ れ,こ の 判 決 が そ の後 の 「 類 推 適 用 」 判

(3)大 判 明 治42年1月26日(民 録15輯28頁),大 判 大 正11年5月23日(新 聞

2011号21頁)。

(6)

例 展 開 の契 機 とな った こ とは 間違 い な い。

そ の 後 しば ら く して,最 高 裁 昭 和37年9月14日 判 決(民 集16巻9号 1935頁),最 高 裁 昭 和41年3月18日 判 決(民 集20巻3号451頁),最 高 裁 昭 和44年5月27日 判 決(民 集23巻6号998頁)川 と,最 高 裁 にお いて 立て 続 け に94条2項 を 類 推 適 用 す る判 決 が 出 され た 。 これ らは い ず れ も 外 形 自 己 作 出 型 の 事 案 で あ り,昭 和29年 判 決 と同 じ く,当 事 者 間 に 「 通 謀 」 な い し名 義 人 の 「了解 」 が あ り,虚 偽 の 外 形 が存 在 して い る が,当 事 者 間 に虚 偽 の意 思 表 示 が な い こ とか ら,類 推 適 用 とい う表現 が 用 い られ た

もの で あ る。

外 形 自己 作 出 型 は,虚 偽 の 外 形 を 作 り出 した の が 権 利 者 自身 で あ り,本 来 の 虚 偽 表 示 に近 く,権 利 者 の 帰 責 性 も強 い こ と か ら,94条2項 を 最 も 類 推 適 用 しや す い 類 型 で あ った こ と もあ り,こ の 類 型 に 対 す る94条2項 の 類推 適 用 は,こ の 三つ の最 高裁 判 決 に よ り判例 上 ほぼ定 着す る に至 った。

も っ と も,こ の 時 期 に は,昭 和41年 判 決 で 示 され て い る よ うに,「 虚 偽 の 意 思 表 示 」 の 要件 に代 え て 「 通 謀 」 か 「名義 人 の 承 諾」 が必 要 で あ り,こ れ を 欠 く場 合 に は94条2項 の 類 推 適 用 で は処 理 で きな い と解 され て お り, 虚 偽 表 示 との ア ナ ロ ジー が 相 当意 識 され て い た 点 に注 意 が必 要 で あ る。

しか しなが ら,最 高 裁昭 和45年7月24日 判 決(民 集24巻7号1116頁)

(4)最 高 裁 昭 和37年9月14日 判 決 の 事 案 は,XがYを 代 理 人 と して 不動 産 を 購

入 した が,契 約 書がY名 義 に な って い た の で,Y名 義 の ま ま所 有 権 移 転登 記 請 求

の 勝 訴 判 決 を 得,そ れ に 基 づ い てY名 義 で 登 記 した と こ ろ,Yの 相 続 人 がZに

売 却 して しま った と い う もの 。 最 高裁 昭 和41年3月18日 判 決 の 事 案 は,XがY

名 義 で 融 資 を 受 け て 建 物 を 建 て,Y名 義 で 建 物 保 存 登 記 を した と こ ろ,YがW

と 共謀 してYか らZへ,Zか らWへ 売 却 され て しま っ た とい う もの 。 最 高 裁 昭

和44年5月27日 判 決 の 事案 は,Xは,競 売 に 付 され た 自己 の 不 動 産 が他 人 に 競

落 され る の を 防 ぐた め に,実 弟 の 妻 の 母で あ るY名 義 で 競 落 した と こ ろ,YがZ

に売 却 して しま った とい う もの 。

(7)

94条2項 類 推 適 用 あ る い は94条2項 ・110条 重畳 的 類 推 適 用 の 限 界(1>

に至 って,類 推 適 用 の た め に は名 義 人 の 承 諾 は不 要 で あ る こ と が 明示 さ れ た 。 事 案 は,Xが 自 ら買 い受 け た 山林 に つ い て,相 続 税 対策 と して息 子Y の 承 諾 な くY名 義 で移 転 登 記 を受 け た と こ ろ,YがZに 売 却 して しま っ た とい う もの で あ る。 判 決 は,仮 装 登 記 名義 人 の 承諾 の 有 無 に よ って,真 の 権 利 者 の 意 思 に基 づ い て作 出 さ れ た 虚偽 の外 形 を 信 頼 した 第 三者 の 保 護 に 差 等 を 設 け る理 由 はな い と して,虚 偽 の登 記 に つ い て 名義 人 の 承 諾 が な い 場 合 で も,そ れ が 真 の 権 利 者 の 意 思 に基 づ く もの で あ る場 合 に は,94 条2項 を 類推 適 用 す るべ きで あ る と した。 こ の 判決 を契 機 と して,当 事 者 間 の 「 通 謀」 を 構 成 す る一 方 の 要 素 た る 「 名 義 人 の 承 諾 」 が 不要 とな った こ と か ら,実 質 的 に94条2項 の 要求 す る 「 通 謀 」 要 件 の拘 束 が 外 れ た た め,94条2項 類 推 適 用 法 理 は,同 条 項 の 文 言か ら離 れ て よ り自 由 に 理 論 展 開 が 可能 に な っ た。 こ れ と同 時 に,同 条 項 類 推 適 用 の 判 断 に 当た って,

も う一・ 方 の 構 成 要 素 で あ る 「真 の権 利 者 の 意思 」 に 基 づ く虚 偽 の 外 形 の 作 出 に 要 件 が 集 中 す る こ と と な った結 果,真 の権 利 者 の 帰 責性 を 責 任 の 根 拠

とす る方 向性 が よ り明 確 に な っ た と い え る。

そ の後 は,下 級 審 も含 め,昭 和50年 代 後 半 ま で,昭 和45年 判 決 を 引 用 して94条2項 の 類 推 適 用 を 積 極 的 に 肯 定 す る 判 例 が 多 く見 られ る よ う に な った が兜 後述 す る外 形 他 人 作 出 型 の 事 案 が 増 え る に つ れ,外 形 自 己作

(5)類 推 適 用 を 肯 定 し た 判 例 と して,岡 山 地 判1昭 和46年1月27日(判 時629号79 頁),最 判 昭 和47年2月17日,大 阪 高 判 昭 和47年8月2日(r集23巻

5=6=7=8号414頁),最 判 昭 和50年4月25日,大 阪 地 判 昭 和50年11月17

1](判 時818号79頁),名 古 屋 高 判 昭 和51年10月27日(金 商815号31頁),

東 京 高 判 昭 和55年11月18日(判 タ435号107頁),東 京 地 判 昭 和56年8月31

Fl(判 時1031号132頁),東 京 地 判 昭 和58年2月25日(判 時1090号137頁),

東 京 高 判 昭 和58年10月31日(行 集34巻10号1879頁)が あ る 。 ま た,当 該 事

案 に お い て 要 件 を 欠 く と し て,結 果 と し て 類 推 適 用 を 否 定 して は い る が,一 般 論

と し て 類 推 適 用 を 肯 定 して い る 判 例 と して,大 阪 地 判 昭 和48年2月26日(訴 務

(8)

出 型 の 裁 判 例 は 次 第 に 減 少 す る 傾 向 を 見 せ て い る。 ま た,そ こ で は,も は や 「真 の 権 利 者 」 対 「仮 装 登 記 名 義 人 か ら の 譲 受 人 」 と い う 典 型 的 な 対 立 が 問 題 と は な っ て い る の で は な く,94条2項 類 推 適 用 事 案 の バ リエ ー シ ョ

ン と し て ど こ ま で が 許 容 さ れ る の か が 争 わ れ て い る 。 例 え ば,94条2項 類 推 適 用 に よ っ て 善 意 の 第 三 者 に 対 抗 で き な い 真 の 権 利 者 に は,真 の 権 利 者 か ら の 譲 受 人 も含 ま れ る か(最 判 昭 和47年2月17fl金 商643号32頁), 担 保 権 者 が 権 利 者 名 義 を 偽 っ た 場 合 に も94条2項 が 類 推 適 用 さ れ る か

(最 判 昭 和50年4月251」 裁 判 集 民114号649頁),建 物 賃 借 権 の 対 抗 問 題 に94条2項 類 推 適 用 が 及 ぶ か(最 判 昭 和47年2月241]民 集26巻1号 146頁,最 判 昭 和61年11月18日 裁 判 集 民149号115頁),94条2項 類 推 適 用 に い う 「第 三 者 」 に 以 ドの 者 が 該 当 す る か 国(最 判 平 成9年12

月18日 訴 月45巻3号693頁),第 三 者 の 抵 当 権 者(福 岡 高 判 平 成11年6 月2911判 タ1026巻201頁),仮 装 登 記 名 義 人 の 一 般 債 権 者(東 京 高 裁 平 成12年7月27日 判 時1723号51頁),譲 渡 担 保 権 が 設 定 さ れ,不 動 産 の 所 有 名 義 が9年 間 も 担 保 権 者 に 移 転 した ま ま に な っ て い た 場 合 に 94条2項 が 類 推 適 用 さ れ る か(東 京 地 判 平 成10年3月31日 金 法1534号 78頁)な ど で あ る。

3意 思 外 形 非 対 応 型 の 登 場

外 形 自 己作 出 型 へ の94条2項 類 推 適 用 の 展 開 と併 行 して,判 例 は,虚 偽 の 外 形 が 真 の 権 利 者 に よ り作 出 され た の で は な い場 合 に も,同 条 項 を類

19巻5号51頁 ・第 三 者 に 該 当 せ ず),東 京 地 判 昭 和57年3月19日(判 タ475

号116頁 ・第 三 者 悪 意),大 阪 高 判 昭 和58年2月16日(判 タ496号110頁 ・不

動 産 の 事 例 で は な い),東 京 地 判{成4年4月14日(判 時1425号61頁 ・第 一 三者

悪 意),名 占 屋 地 判 平 成10年1月30日(税53巻10号20頁 ・第 三 者 悪 意),東

京 高 判 ・F成10年10月28口(判 タ1006号207頁 ・第 三 者 悪 意)が あ る 。

(9)

94条2項 類推 適 用 あ る い は94条2項 ・110条 重畳 的 類推 適 用 の 限 界q)

推 適 用 す る よ う に な っ た。

最 高 裁 昭 和43年10月17日 判 決(民 集22巻10号2188頁)は,Xが

Yか ら取 引 先 の 信 用 を 得 る た め に 不 動 産 の 登 記 名 義 を 貸 して ほ しい と 頼 まれ た た あ,売 買r'約 を 仮 想 して 仮 登 記 を した と こ ろ,Yが 勝 手に 本 登 記 に してZに 譲 渡 し,さ ら に転 々譲 渡 され て しま っ た 事案 に お いて,民 法94条2項,同 法110条 の 法 意 に照 ら し,外 観 尊 重 お よ び 取 引保 護 の 要 請 か ら,真 の 権 利 者 は 善 意 無 過 失 の 第 三者 に 対 抗 で き な い と判 示 して い る。 ま た,最 高 裁 昭 和44年10月16口 判 決(判 例 集 未搭 載 の た め,野 田宏 「最 高 裁 民 事破 棄 判 決 の 実 情(4)」判 時592号20頁 参 照)は,Xが 自 己 の 財 産 を保 全 す る た めYと 通 謀 の 上,建 物 の売 買 予約 を 仮 装 して 仮 登 記 を した と こ ろ,Yが 勝 手 に本 登 記 に してZに 譲 渡 した 事 案 に お い て, 前掲 昭 和43年 判 決 を 引 用 して 同 様 の 判 示 を して い る。 さ ら に,最 高 裁 昭 和45年6月2i‑i判 決(民 集24巻6号465頁)は,Xが 融 資 を受 け る た め にYと 通 謀 して 不 動 産 の 登 記 名 義 を移 転 した が,Yが さ らにZに 対 し 融 資 の 斡 旋 方 を 依 頼 してXか ら預 か って い た 書 類 等 を 預 け た た め,Zが この 書類 を 用 いて 自 己 に 虚 偽 の 登 記 名 義 を 移 転 したi二,Zか らWに 譲 渡 され た 事 案 に お い て も,昭 和43年 判決 を 引 用 して 同 旨 の 判示 を して い る。

これ らの裁 判 例 は い ず れ も,意 思 外 形非 対 応 型 の 事案 で あ る。 こ こで は, 真 の権 利 者 が 作 出 ・承 認 した 外 形 を 基 に,仮 装 登 記 名 義 人 が 勝 丁一 に そ れ を 超 え る外 形 を 作 出 して お り,過 大 な 外 形 の 作 出 に 真 の 権 利 者 が 直 接 関 与 し

て い な い 。 当時 は,外 形 自 己作 出 型 の 事案 に お い て も,94条2項 を類 推

適 用 す る に 当 た って は 「 通 謀 」 あ る い は 「名義 人 の 承 諾」 が必 要 と され て

い た こ と もあ って,通 謀 を 超 え る 外 形 を 信 頼 した 第{者 を 外 形 自己 作 出 型

と 同 じ論 理 で94条2項 に 引 き付 けて 処 理 す る こ と は 困 難 で あ っ た。 そ こ

で,判 例 は,真 の権 利 者 が 作 出 ・承 認 した 外 観 を 超 え て,よ り過 大 な 虚 偽

の外 形 が作 出 さ れ て い る 点 を,ち ょ う ど本 人 が 代理 人 に 与 え た 基 本 代理 権

の範 囲 を超 え て 代理 行 為 が な さ れ た 場 合 の ア ナ ロ ジー と捉 え,代 理 権鍮 越

(10)

に 関 す る110条 を 併 せ て 類 推 適 用 す る と い う理 論 で 第 三 者 の 保 護 を 図 っ た ㈹。 そ の 意 味 で は,当 時 存 在 して い た94条2項 の拘 束 を 免 れ るた め の 法 律 構 成 上 の 工 夫 にす ぎず,ま た,こ の類 型 に お い て 第三 者 に要 求 さ れ て い る善 意 無 過 失 と い う 要件 も,真 の権 利者 と第 三 者 との 利 益 調整 の必 要 上 要 求 され た と い う よ り も,単 純 に110条 が 要 求 して い る とい う理 由 か ら導 か れ た もの に過 ぎな か った 。 しか しな が ら,意 思 外 形 非 対 応 型 に94条2 項 を 類 推 適 用 した イ ンパ ク トは 予想 を遥 か に 超 え る もの で あ り,後 に 外 形 自 己作 出 型 に お い て 「 通 謀 」 要 件 が 要 求 され な くな った こ と と相 ま って, 真 の権 利 者 の意 思 的 関 与 が 限 りな く低 い 場 合 に も責 任 を 肯 定 す る方 向 で 同 条項 の類 推 適 用 が拡 張 して い くこ とが 危 惧 され る よ う にな り,こ れ に限 界 を画 す る 要件 と して 第 三 者 の 「善 意 無 過 失 」 に積 極 的 な 意 味 が 与 え られ る よ うに な っだ0

そ の 後,意 思 外 形 非 対 応 型 の 裁 判 例 と して は,最 高 裁 昭 和47年11月 28日 判 決(民 集26巻9号1715頁),最 高 裁昭 和52年12月8日 判 決(裁 判 集 民122号303頁)̀8'が 現 れ た が,外 形 他 人 作 出型 へ の 類 推 適 用 判 例 が 急 激 に 増 え た 時 期 に対 応 して,こ の 類 型 は裁 判 上姿 を消 して い き,そ の後

16)こ の 論 理 は,外 形他 人 作 出 型 の 事 案 で は あ るが,東 京 地 裁 昭 和40年3月16日 判 決(ド 民 集16巻3号450頁)に お い て す で に 示 され て い た。 事 案 は,XがY

に 金 融 を 得 させ る 目的 でYに 担 保 権 設 定 の 代 理 権 を 与 え,印 鑑 や 書 類 を 交 付 し た と こ ろ,Yが 印 鑑 を 冒 用 してX名 義 の 委任 状 を 偽 造 し,Yに 移 転 登 記 した 上, Zに 譲 渡 した もの 。

(7)星 野 栄 一 「判 批 」 法 協88巻11‑12号(1971年)1023頁,川 井 健 「判批 」 民 商64巻3号(1971年)481頁 。

(8)最 判 昭 和47年11月28日 は,Xが 暴 力 団 か ら恐 喝 され るのを 防 ぐた め に,Yに 仮 登 記 をす る ことを依 頼 したが,Yが 勝 手 に移 転 登 記 を してZら に 売 却 した 事 案 。 最 判昭 和52年12月8日 は,Xら が 買 い入 れた{:地 につ き,民 法 止の 組 合 を結 成 し, 便 宜 上Yら のみの 共 有 名義 で 登 記 して お いた とこ ろ,Yら が これ をZら に虚 偽 の移

転 登 記 を し,そ こか らさ らに第 三 者 に 譲渡 された 事案 。

(11)

94条2項 類 推 適 用 あ る い は94条2項 ・110条 重 畳 的 類 推 適 用 の 限 界(1》

は,随 分 間 を お い て 最 高 裁 平 成12年12月19日 判 決(判 時1737号35 頁)1!1)が1件現 れ た き りで あ る。 そ の 理 由 と して は,意 思 外 形 非 対 応 型 に 見 られ る よ うな,通 謀 の 相 手 方が い っ たん 通 謀 に基 づ く虚 偽 の 登 記 を した うえ で,そ れ を 改 ざん して よ り過 大 な虚 偽 の外 形 を作 出 した場 合 よ り も, 外 形 他 人 作 出 型 に見 られ る よ う な,通 謀 に基 づ く登 記 をせ ず に,直 接 通 謀 を 超 え る登 記 を した 場 合 の ほ うが 事 案 と して現 れ や す い こ とが 考 え られ る。

現 に,昭 和47年 判 決 の 事 案 は,Xが 暴 力 団 か ら不 動 産 を 喝取 され る こ と を 防 止 す る た め,通 謀 の1‑̲Yに 仮 登 記 を す る こ と を 依 頼 して 書 類 を 交 付 した と こ ろ,こ の 書 類 を用 い てYが 勝 手 に 自 己 に移 転 登 記 を した うえ,Z に 譲 渡 した とい う もの で あ り,通 謀 に基 づ く虚 偽 の 外 形 が一 度 も作 出 さ れ て い な い。 この 点,事 案 と して はむ しろ外 形 他 人 作 出型 に分 類 され るべ き 事 案 で あ る と こ ろ,110条 が 併 せ 類 推 適 用 され た の は,真 の 権 利 者 の 関 与 が低 い 点 を第 三者 の無 過 失 を 要求 す る こ とで調 整 しよ うと考 え た ため で あ っ た と解 され て い る。 この 視 点 は,外 形 他 人 作 出型 の 近 時 の 判 例 に 多 く見 ら れ る よ うに な って お り,そ の 魁 と も いえ る判 決 とな って い る。

4外 形 他 人 作 出 型 の 登 場

外 形 他 人 作 出 型 の 判例 も下級 審 レベ ルで は古 くか ら存在 して はい た がnu, 最 高裁 レベ ル で は意 思 外 形非 対 応 型 の 最 高 裁 判 例 に 少 し遅 れ る形 で,最 高

(9}Xが 新 築 建 物 につ き税 金 対 策 の ため に息rY名 義 で 建 築 確 認 申 請 を行 い,Y名 義 で 家 屋 補 充 課 税 台 帳 に登 録 された が,Xは11年 間,Y名 義 のま ま固 定 資 産 税 を 支払 い,か つ家 屋 補 充 課 税 台 帳 の 登 録 につ いて 異 議 を述 べ な か った ところ,Yが 勝 手に 白己 名 義 の保 存 登記 を した うえ,第 三 者に 譲 渡 した 事案 。

(10)横 浜 地 判 昭 和34年7月25日(下 民 集10巻7号1566頁),大 阪地 判 昭 和39年

5月11日(判 時381号41頁),東 京 地 判昭 和40年3月16日(下 民 集16巻3号

450頁),東 京 高 判 昭 和40年6月17日(判 夕180号122頁),大 阪 高 判 昭 和42

年1月23日(判 時490号56頁)な どが あ る。

(12)

裁 昭 和45年4月161̲1判 決(民 集24巻4号266頁)が 登 場 した 。 事 案 は, Xが 贈 与 を受 け た 未 登 記 建 物 に つ き養 母 の 名義 とす る こ と を許 容 した が, 養 母 が そ の 息 子Yを 所 有 者 と して 家 屋 台 帳 の 登 録 を 行 い,Xは これ を 知 りな が らY名 義 の ま ま建 物 の 固 定 資 産 税 を 支 払 っ て き た と こ ろ,Yが 自 己 名義 で 建物 の 保 存 登 記 を し,Zの た め に停 止 条件 つ き 代物 弁済 契 約 を締 結 して 仮 登 記 を 経 由 し,結 局 条 件 成 就 に よ りZに 本 登 記 が な され た とい う もの で あ った。 判 決 は,虚 偽 の 外 形 が 保 存 登 記 で あ る とい う点 で 共 通 す る最 高 裁 昭和41年3月18日 判 決(外 形 自己 作 出 型)を 引 用 しつ つ,未 登 記 建物 の所 有 者 が,家 屋 台 帳 に 他 人 の 所 有 名 義 で 登 録 され て い る こ とを 知 りな が ら,こ れ を 明 示 ま た は 黙 示 に承 認 した 場 合 で あ って も,94条2項 の類 推 適 用 に よ り,登 記 名 義 人 が そ の 所 有 権 を 取 得 しな か った こ とを も っ て,善 意 の 第 三 者 に 対 抗 す る こ とが で きな い と した 。 そ の 理 山 と して,未 登記 建物 に つ い て は,家 屋 台 帳1:の 所 有 名 義 が 建 物 の 所 有 権 帰 属 の 外 形 を 表 示 す る もの で あ り,建 物 所 有 者 が 右 外 形 の 表 示 につ き事 前 に承 認 を 与え た場 合 と事 後 に 承 認 した 場 合 とで,そ の 外 形 を 信 頼 した 第 三 者 の 保 護 の 程 度 に 差 等 を 設 け るべ きで は な い とす る。

そ の 後,こ の 判 決 に続 く形 で,同 旨の最 高 裁 判 決 が2件 出 され た 。 最 高

裁 昭 和45年9月22ri判 決(民 集24巻10号1424頁)は,妻Xが 他 か ら

取 得 した 建 物 につ き,夫Yが 勝 手 に 自 己 名義 の 移 転 登 記 を 経 由 した が,X

は 事 情 を 知 っ た 後 も4年 余 り こ れ を 放 置 し,Xが 融 資 を 受 け る 際 に も

そ の ま まの 登 記 名義 で 根 抵 当権 を 設 定 して い た と ころ,YがZに 譲 渡 し

て しま った と い う 事案 に つ き,不 実 の 登 記 がXの 承 認 の も と に 存 続 せ し

め られ て い た と して,ま た,最 高 裁 昭 和48年6月28R判 決(民 集27巻

6号724頁)は,Xは,自 己所 有 の 未 登 記 建物 に つ き,固 定 資 産 課 税 台 帳

に 夫Yの 所 有 名 義 で 登 録 さ れ て い る こ と を 知 りな が ら,長 年Y名 義 の

ま ま 税 金 を 支 払 っ て き た と こ ろ,Yの 債 権 者Zが これ を 差 し押 さ え た

と い う事 案 につ き,Xは 建 物 が 家 屋 台 帳 にY名 義 で 登録 され て い る こ と

(13)

94条2項 類 推 適 川 あ る い は94条2項 ・110条 重畳 的 類推 適 用 の 限 界(1)

を知 りな が ら,こ れ を 明 示 ま た は 黙 示 に承 認 して い た と して,い ず れ も先 の 昭 和45年41」16日 判 決 を 引 用 しつ つ94条2項 を類 推 適 用 して い る。

これ らの 一 連 の 判 決 に お いて 注 日す べ き は,「 通 謀」 な い し 「真 の 権 利 者 に よ る外 観 の作 出 」 とい う要 件 に 代 え て,真 の 権 利 者が 仮 装 登 記 名 義 人 に よ り作 出 され た 虚 偽 の 外 形 を明 示 ま た は黙 示 に 「承 認 」 して いた こ とが, 94条2項 類 推 適 用 の 根 拠 と され て い る点 で あ る。 そ して,そ の 「承 認 」 は

事 前 で も事 後 で も よ く,か つ 明 示 で も黙 示 で もよ い とす る。 つ ま り,真 の 権 利 者 と仮 装 登 記 名義 人 の 間 に意 思 的 な連 絡 が 全 くな く,虚 偽 の外 形 が真 の権 利 者 の 全 くあず か り知 らな い と ころ で 作 出 され た 場 合 で あ って も,真 の 権 利 者 の 事 後 的 な 「承 認 」 さえ あ れ ば類 推 適 用 を 肯定 で き,か つ 「黙 示 」 の 承 認(=す な わ ち 「 放 置」)の よ うに 限 りな く消 極 的 な場 合 で あ って もよ い と解 す る余 地 を残 す もの で あ る。 こ こで は もは や,真 の 権 利 者 に 「虚 偽 表 示 」 に近 い 行 為 が あ った こと は 要求 されず,「 承 認」 とい う最 小 限 の 意 思 的 関 与 の み で責 任 を 負 わ せ る もの で あ り,読 み よ うに よ って は,真 の権 利 者 の帰 責 性 が 限 りな く小 さい 場 合 で も,取 引 安 全 の た あ に 第 三者 の 信 頼 を 保 護す べ き とす る一 般 的 な権 利 外 観 保 護 の法 理 に展 開 す る 可能 性 が あ る。

で は,そ の 後 の 判 例 は どの よ う に展 開 して い っ た の で あ ろ うか。 最 高 裁 レベ ル で は,先 の 判例 の 流 れ を 受 けて 出 され た判 決 と して は,最 高 裁昭 和 62年1月20日 判 決(訴 月33巻9号2234頁)が1件 あ るの み で あ る。 妻 Xか ら融 資 を 受 け る 手 続 を 委 任 され た 夫Yが,融 資 を 得 や す くす るた あ にXの 承 諾 を得 る こ と な くY名 義 に 移 転 登 記 し,抵 当権 を 設 定 した が, Xは これ を知 りな が ら4年 間 放 置 して い た と こ ろ,国 がYに 対 す る滞 納 処 分 と して 差 し押 さ え,Zに 競売 され て しま った 事案 に お い て,最 高 裁 昭 和54年4月16日 判 決 並 び に 同 昭 和45年9月22fi判 決 を 引 川 して,94 条2項 を 類 推 適 用 して い る。

一 方 ,下 級 審 レベ ル で は 昭 和50年 代 か ら60年 代 に か け て 集 中ri勺 に

判 例 が 出 さ れ て お り,そ の 後 も 平成12年 ご ろ ま で コ ン ス タ ン トに判 例 が

(14)

出続 けて い る。 注 目す べ きは,肯 定 判 例 ・否 定 判例 と も数 の 上 で ほ ぼ 拮 抗 して い る と い うこ とで あ り,こ こか ら,下 級 審 で は,一ヒ述 した よ うな94条 2項 の 類 推 適 用 を よ り広 く適 用 して い こ う とす る最 高 裁 の傾 向 に逆 行 して,

同 条項 が よ り限定 的 に類 推 適 用 され て い る こ とが伺 われ る。 下 級 審 判 決 に お い て は,ど の よ う な要 素 が 類 推 適 用 を 限 界 付 けて い るの で あ ろ うか 。

そ こ で,以 下で は,最 高 裁 昭 和45年4月16日 判 決 を は じ め と す る 外 形 他 人 作 出 型 に 属 す る 最 高 裁 ・下 級 審 の 各 判 例 に お い て,具 体 的 に どの よ うな 事 情 が 類 推 適 用 の 可 否 を 決定 付 け た の か を,細 か く検 討 して み た い 。

な お,外 形 他 人 作 出 型 の 事 案 につ い て は,平 成12年 以 降 に も最 高 裁 判 決 が2件,下 級 審 判 決 が2件 出 され て い る。 最 高 裁 判 決 につ い て は,い ず れ も昭 和45年4月16日 判 決 以 降 の流 れ と は事 案 の 性 質 も適 用 法 理 の 理 解 も明 らか に異 な る もの で あ る の で,こ れ らにつ いて は章 を 改 め て 取 り止げ る こ とす る。 また,下 級 審 判 決 の うち,1件 は不 動 産 の 事 案 で は な いの で 本稿 で は取 り上 げ な い こ と と し曲,残 りの1件 を以 ドの分 析 の対 象 に含 め る こ と と した。

(11)東 京 地 判 平 成16年9月15日(判 例 集 未 搭 載)。 事 案 は,Aが 取 得 した特 許 に

つ い て,Bに 出 願 名 義 人 変 更届 お呼 び し出願 審 査 請 求 の 手続 を依 頼 し,委 任 状,

印 鑑 登 録 証 明 書 な ど を 交 付 した と こ ろ,Bは これ を 利 用 してAか らBへ 特 許 権

の 移 転 登 録 を経 た上,Cに 対 して 本 件 特 許 につ き専 用実 施権 を 設定 した とい う も

の で あ る。94条2項 及 び110条 の 重畳 的 類 推 適 用 に よ り,善 意 の 第 三 者 と して

保 護 さ れ る とのCの 主 張 に 対 して,判 旨 は,AはBと の 間 で 特 許 権 の 譲 渡 に 関

す る なん らの意 思 表 示 を した こ と もな く,Bに 対 して特 許権 の 移 転 に 関 連 して な

ん らの 代 理 権 を授 与 した こ と もな い こ と,ま たAが 本 件 移 転 登 録 の 作 出 に 関 与

し,あ る い は 本 件 移 転 登 記 に よ りBが 特 許 権 者 で あ る こ と を 示 す 外 観 を容 認 し

て い た こ とを うか が わ せ る事 情 も認 め られ な い と した 。

(15)

94条2項 類 推 適 用 あ る い は94条2項 ・110条 重畳 的 類推 適 用 の 限 界(1)

5外 形 他 人 作 出 型 にお け る 「 承 認 」 要 件 の分 析 (1)外 形 他 人 作 出 型 に お け る94条2項 類 推 適 用 の 要件

判 例 の 分 析 に入 る前 に,こ こ で 改 め て 外 形 他 人 作 出 型 の事 案 に94条2 項 を 類 推 適 用 す る際 の 要 件 を確 認 して お こ う。

第 一 に,虚 偽 の 外 形 が 存 在 す る こ と。 真 の権 利 者 と仮 装 登 記 名 義 人 の 間 に 虚 偽 の 法 律 行 為 が あ る こ と は必 要 な い が,少 な く と も虚 偽 の 外 形 は必 要 で あ る。 何 を も って 虚 偽 の 「 外 形 」 とす る か につ い て は,判 例 は か な り緩 や か に解 して お り,土 地 の 所 有 権 移 転 登 記 は そ の典 型 で あ る が,建 物 の保 存 登 記tl'?や 家 屋 台 帳q31ない し固 定 資 産 税 課 税 台 帳q1',仮 登 記 肺 もこ れ に含

む もの と して い る。

第 二に,他 人 が作 出 した 虚 偽 の 外 形 につ き,真 の 権 利 者 の 承 認 が あ る こ と。 以 下 で は,ど の よ うな 事情 を持 って 「承 認 」 が あ った と認 定 され るの か を 検 討 す る こ と に な る。

第 三 に,第 三 者 が 善 意 で あ る こ と。 上 述 した 意 思 外 形 非 対 応 型 で は, 110条 を 併 せ て 類 推 適 用 す る結 果 と して,第 三 者 は 無 過 失 で あ る こ と も要 求 され る が,94条2項 の み の 類 推 適 用 で は,善 意 の み を 要 件 とす る こ と につ き,判 例 上な ん ら問 題 と され て い な い"9。 しか し,学 説 で は,外 形 自 己作 出型 に比 べ,真 の 権 利 者 の 帰 責 性 要 件 が さ らに希 薄 と な って い る(虚 偽 の 外 形 が 「 真 の権 利者 の 意思 に 基 づ い て 作 出」 され た こ とか ら,真 の権 利 者 の 単 な る 「 承 認」 へ)状 況 を踏 まえ て,ま た 他 の 権 利 外 観 法 理 と のバ ラ ン スを と るた あ に,善 意 だ け で な く無過 失 も要 求 して 調 整 を 図 るべ きで

(12)最 判 昭 和41年3月18日 。 (13)最 判 昭 和45年4月16Ei。

(⑳ 最 判 昭 和48年6月28日 。 (15)最 判 昭 和45年11月19日 。

(16》 最 判 昭 和43年11月19日 は, 第 三者 は善 意 のみ で足 りる と して い る。

(16)

はな いか が 議 論 さ れ て い る肺 。 下級 審 レベ ル で は,外 形 他 人作 出型 の 事案 にお い て も110条 を併 せ 適 用 して 第 三者 に無 過 失 を 要求 す る判 例 も見 られ, 平 成15年 な らび に平 成18年 の最 高 裁 判 決 は い ず れ も110条 を併 せ適 用 す る立 場 を採 用 して い る。 そ こで,第 三の 要 件 に つ い て は,こ れ らの 最 高 裁 判 決 を検 討 す る中 で 扱 う こ と と しよ う。

以 一Lより,(2》お よび(3)では第 二の 要 件 を 中心 に分 析 を す る こ と とな る。

(2)判 例 の 紹 介

まず,94条2項 類 推 適 用 が 肯 定 され た 判 例 に つ い て,そ の 簡 単な 事 案 と,肯 定 を決 定 付 け た と思 わ れ る 事情 を紹 介す る。

① 最 判 昭 和45年4月16日(民 集24巻4号266頁)

事 案 は,Xが 贈 与 を受 け た 未 登 記 建 物 につ き 養 母 の 名 義 とす る こ と を 許 容 した が,養 母が そ の 息 子Yを 所 有 者 と して 家 屋 台 帳 の 登 録 を 行 い,X は これ を 知 りな が らY名 義 の ま ま 建 物 の 固 定 資 産 税 を 支払 って き た と こ ろ,Yが 自 己 名義 で 建物 の保 存 登 記 を し,Zの た め に 停 止 条 件 つ き 代 物 弁 済 契 約 を締 結 して 仮 登 記 を 経 由 し,結 局 条 件 成 就 に よ りZに 本 登 記 が な

され た とい う もの 。

Xが,家 屋 台 帳 上Yの 所 有 名 義 に登 録 され て い る こ とを 承 認 して い た か 事 実 を 確 定 す るた め,原 審 に差 し戻 して い るの で,原 審 に お いて どの よ

うな 判 断 が な され たか は不 明 。

(17}星 野 英 一 「判 批 」 法 協87巻6号(1970年)731頁,同 「判 批 」 法 協89巻7号 (1972年)866頁,米 倉 明 「判 批 」 法 協92巻2号(1975年)183頁,半 田 正 夫

「民 法94条2項 の 類 推 適 用 」 内 田=黒 木=子i川 先 生 還 暦 記 念 「現 代 民 法 学 の 基 本

問 題(一 ヒ)」(1983年)113頁 。

(17)

94条2項 類 推 適 用 あ るい は94条2項 ・110条 重 畳 的 類推 適 用 の限 界(1)

② 最 判昭 和45年9月22日(民 集24巻10号1424頁)

事 案 は,妻Xが 他 か ら取 得 した 建 物 につ き,夫Yが 勝 手 に 自 己名 義 の 移 転 登 記 を経 山 した が,Xは 事情 を 知 った 後 も4年 余 りこれ を 放 置 し,X が 融 資 を 受 け る際 に もそ の ま ま の 登記 名 義 で根 抵 当権 を設 定 して い た と こ ろ,YがZに 譲 渡 して しま った とい う もの 。

虚 偽 の 登 記 が な され て い る こ とを 知 りなが ら,4年 間 放 置 した こ と,Y 名 義 の ま ま根 抵 当 権 を 設 定 した こ とが,Xの 承 認 の ドに不 実 の 登 記 が 存 続 せ しめ られ て い た とい う評 価 につ な が って い る。

③ 最 判 昭和48年6月28日(民 集27巻6号724頁)

事 案 は,Xが,自 己所 有 の 未 登記 建 物 に つ き,固 定 資 産 課 税 台 帳 に夫Y の 所 有 名 義 で 登 録 され て い る こ と を知 りな が ら,長 年Y名 義 の ま ま税 金 を 支払 っ て き た と こ ろ,Yの 債 権 者Zが これ を 差 し押 さ え た とい う もの 。

虚 偽 の 登 録 が な され て い る こ と を知 りなが ら長 年 放 置 して い た こ と が, 決 め 手 とな って い る。

④ 東 京 高 判 昭和49年5月29日(金 商426号8頁)

夫Xが 所 有 す る不 動 産 に つ き,妻YがXの 承 諾 を得 な い で勝 手 に 自 己 名 義 の移 転 登 記 を し,そ の 直 後 にY名 義 の権 利 証 をXに 示 した と こ ろ, Xは 怒 った もの の,誰 の 名義 に して お い て もか ま わ な い と い って12年 間 もY名 義 の ま ま と し,固 定 資 産 税 もY名 義 の ま まXが 支 払 って い た と い う もの 。

虚 偽 の 登 記 が な され て い る こ と を知 りな が ら12年 間 もの 長 期 に わ た っ て これ を 放 置 して い た こ とが,決 め 手 とな って い る。

⑤ 大 阪地 判 昭 和54年12月5日(判 時967号95頁)

共有 地 の 所 有 権 一 部移 転 登 記 を受 け た 買 主Xが,地 積 更 正 ・分 筆 の た

(18)

め に売 註と通 じて い った ん 登 記 を 抹 消 した と こ ろ,Xに 無 断 で他 の 共 有 者Yに 共 有 地 全 部 の所 有 権 移 転 手 続 が 行 わ れ,Yか ら更 に 第 三 者Zに 移 転 登 記 が な され た事 案 。

判 旨 は,Xが 売 主 と通 じて 登 記 を抹 消 した こ と を,虚 偽 の 意 思 表 示 を した の に等 しい と解 して94条2項 を 類推 適 用 して い る。 しか し,こ こ で 問 題 とす べ きZが 信 頼 した 虚 偽 の 外 形 と は,Xと 売 主 との 間 で 登 記 の 抹 消 に よ り作 出 され た,あ た か もXに 所 有 権 が 移 転 して い な い か の よ う な 外 観 で は な く,そ の 後,売 主 がXに 無 断 でYに 共 有地 全 部 の 移 転登 記 を した 結 果 と して 生 じた外 形 で あ る か ら,前 者 を 虚偽 の 意思 表 示 とみ な して 94条2項 を 類 推 適 用 す るの は お か しい。 む しろ,共 有 地 の一 部 を所 有 し て い る真 の 権 利 者Xに 無 断 で,元 売 主が 便 宜 的 理 由 の た め 自 己 に 所 有 名 義 を移 転 し,こ れ を 第 三者 に 譲 渡 した とい う,典 型 的 な 外 形 他 人 作 出型 の ケ ー ス と して 理 解 す べ き で あ る。 そ の よ う に捉 え る と,こ の 事 例 で は,Y へ の 全 部 移 転 登 記 に 対 す るXの 承 認 は 全 く認 め られ な い の で あ る か ら, 結 論 と して94条2項 類 推 適 用 が 否 定 され るべ き 事案 で あ った と考 え る。

⑥ 東 京 地 判 昭 和56年3月3111(判 タ448号115頁)

Xは,不 動 産 を購 入 した が,そ の 資 金 をYら か ら借 り受 け る際,信 用 を 裏 づ け 保 証 す るた め に 不 動 産 の 権 利 証,Xの 印鑑 証 明 お よ び 白紙 委 任 状 をAら に交 付 した と こ ろ,Aら はYら か ら金 融 を得 る担 保 と して こ れ ら の 書 類 を 差 し入 れ た た め,Yら が こ れ を 利 用 して 白 己 に移 転 登 記 を し た 上,さ らにZに 譲 渡 さ れ た 事 案 。94条2項 の 法 意,外 観 尊重 及 び取 引 保 護 の 要 請 な い し信 義 則 を 適 用 し,Xは 登 記 の 無 効 を も って 「善 意 無 過 失 」 のZに 対 抗 で き な い と した。

判 旨 は,次 の2点 を も って94条2項 類 推 適 用 を 肯定 して い る。 第 一 に,

Yら の 移 転 登 記 に気 づ い たXが,Aら を 刑 事 告 訴 す る と と も に,同 人 ら

と 登 記 名 義 をXに 回 復 す る こ と を 条 件 に告 訴 を 取 り 下げ る示 談 を して い

(19)

94条2項 類 推 適 用 あ る い は94条2項 ・IIO条 重畳 的 類推 適 用 の 限 界(D

る こ とか ら,XがYら の 登 記 の 存 在 を知 り なが ら これ を 承 認 した と ま で は 認 め られ な い と しな が ら も,登 記 名 義 人 とな って い るYら に 対 して, 示 談交 渉 に 参 加 させ,あ るい は 速 や か に処 分 禁 止 の 仮 処 分 等 自己 の 権 利 を 保 全 し,そ の 後 の 登 記 名 義 の 移 転 を 防 止す るた め の 法 的 措 置 を と る こ とが ト分 可 能 で あ っ た と認 め られ る の に,Yら の 登 記 の 存 在 を知 りな が ら, そ の後 約1年2ヵ 月 間,示 談 成 立後 か らで も約5ヵJJ近 くの 間,な ん らの 措 置 も執 らず に放 置 した た め,Zへ 登 記 が 経 山 され る結 果 とな った と して い る。 第 二 に,紛 争 の 発 端 は,Xが 権 利 証 の み な らず 印 鑑 証 明 書 と 自 紙 委 任 状 を も不 用 意 に他 人 に交 付 し,そ の所 持 人 が 事実1一登 記 手続 を と る こ とが で き る状 況 を作 り出 した こ とを挙 げ て い る。

⑦ 東 京 地 判 昭 和58年2月2511(判 時1090号137頁)

Xは,自 己 が 購 入 した 土地 につ き,跡 継 ぎ で あ るY名 義 に 登 記 を 移 転 した が,そ の 上 に建 て られ た 建 物 につ い て は未 登 記 の ま ま10年 が 経 過 し た ころ,YがXに 無 断 で 建 物 につ い てY名 義 で 保 存 登 記 を した う え,Y の 債 務 を担 保 す る た め 土 地 建 物 に つ きZの た め に 根 抵 当権 設 定 登 記 が な され た と い う事案 。

判 旨 は,Xが 土 地 を 買 い 受 け,そ の ヒに 建 物 を 建 築 した 際,Xに は 妻 子 もな く病 弱 で あ った た あ,rlら が 経 営 して い る工 場 の 従 業 員 で あ るY に 跡 を継 が せ るつ も りで,上 地 をY名 義 と し,建 物 に つ い て も,建 築 確 認,工 場 許 可 をY名 義 で 取 り,取 引 先 に もYを 跡 継 ぎ と して 紹 介 し,ま

もな く営 業 をYに 任 せ て 自 らは 別 の 場 所 に 移 住 した もの の,土 地 建 物 に

つ い て は そ の ま ま放 置 され て い た 点 を も っ て,xは 建 物 に つ い て もi二地

と同 様 にY名 義 とす る こ とを 容 認 して い た もの で あ っ て,保 存 登 記 はX

の 意思 に 反 した もの と は認 め られ な い と した。

(20)

⑧ 大 阪 高判 昭 和59年11月20日(高 民 集37巻3号225頁)

XがYか ら購 入 した 不 動 産 につ き,登 記 移 転 手 続 を しな い で い た と こ ろ,Yか らAへ,Aか らZへ 移 転 登 記 が な され た 事 案 。94条2項 類 推 に は 言及 さ れ て お らず,禁 反 言 も し くは 権 利 外 観 法 理 に よ り,Xは 善 意 の 第 三者 に 対 抗 で きな い と して い る。

Xは,移 転 登 記 に 必 要 な 一 切 の 書 類 を受 領 して い た に もか か わ らず, 上 地 を 買 い受 け て か ら10年,そ の 後Aへ の 不実 の 登 記 の 存 在 を知 る も, さ ら に5年 にわ た って これ を放 置 して お り,こ の 放 置期 間 は き わ め て 長期 間 で あ る と評 価 され た こ と が決 め 手 と な って い る。

⑨ 大阪 高 判 昭和60年1月29f=1(判 タ550号146頁)

Yはi地 開 発 業 者 で あ り,X所 有 の 一 ヒ地 を 宅 地 に造 成 し,第 三者 に 販 売 した 上,そ の 販 売 金 の 中 か ら 土地 の 分 量 に 見 合 う売 買 代 金 をXに 支 払 う こ と,ま た 支 払 い を 受 け た と き に 当 該 土 地 の 所 有 権 をYな らび に 買 主 に 移 転 す る と い う所 有権 留 保 の 約 定 が な され て い た と ころ,Yは 対 象 土 地 の 分 筆 ・合 筆 ・地 積 訂 正 に必 要 で あ る と称 してXか ら対 象 土地 の 権 利 証,Xの 白紙 委 任 状 ・印 鑑 証 明 書 の 交 付 を 受 け,こ れ らの 書 類 を 利 用 し て 無 断 で 譲 渡 担 保 権 や抵 当権,根 抵 当権 を 設定 した事 案 。 民 法94条2項,

110条 の 法 意 に 照 ら して,Xは 善 意無 過 失 の第 三者 に対 抗 で きな い と した。

XはYと の 関係 で は 所 有 権 を留 保 しつ つ も,対 外 的 に はY所 有 の 土 地

と して第 三者 に 分譲 販 売 す る こ とを 承 諾 して い た こ と,対 象 土地 の 登 記 手

続 を 司 法 書 士 に 委 任 す る事 務 をXがYに 広 く委 任 して い た こ と,当 初 は

分 譲 宅 地 の 買 受 人 へ の 移 転 登 記 の 必 要 をYが 連 絡 して き た 都 度,登 記 移

転 に必 要 な 書 類 を 交 付 して きた が,途 中 か ら は未 分 譲 の 土 地 全 部 の 権 利 証

を 交 付 し,か つ必 要 以 上 の 枚 数 の 白紙 委 任 状,印 鑑 証 明 書,白 紙 売 渡 証 書

を 交 付 し,そ れ らの 返 還 を 求 め る こ と も しな か った こ とが,不 実 の登 記 を

発 生 させ,第 三者 に 本 件 土 地 がYの 所 有 で あ る と 誤 信 させ た 重 大 な 原 因

(21)

94条2項 類 推 適 用 あ る い は94条2項 ・110条 重 畳 的 類 推 適 用 の 限 界{1)

に な っ て い る と し た 。

⑩ 最 高 裁 昭 和62年1月20日(訴 月33巻9号2234頁)

妻Xか ら融 資 を受 け る手 続 を 委 任 され た 夫Yが,融 資 を 得 や す くす る た め にXの 承 諾 を 得 る こ と な くY名 義 に移 転 登 記 し,抵 当権 を設 定 した が,Xは これ を 知 りな が ら4年 間放 置 して い た と こ ろ,国 がYに 対 す る 滞 納 処 分 と して 差 し押 さえ,Zに 競 売 され て しま っ た事 案 。

Xは,YがXと の 間 で 不動 産 の売 買 契 約 を仮 装 して 銀 行 か ら融 資 を受 け よ う と して い る こ とを 知 りな が ら,銀 行 の 担 当者 に対 して もなん ら異 議 を 述 べ る こ と も な く,Yの 保 証 人 とな るべ く申 し込 ん だ もの と して 銀 行 担 当者 と 面 接 して い る こ と,4年 間 の放 置,法 務 局 よ りXか らYへ の 移 転 登 記 申 請 が あ った こ と を 知 らせ る通 知 書 がXの 自宅 に到 達 し,ま た 固 定 資産 税 の通 知 書 も来 な くな っ た が,な ん らの 手続 も執 らな か った こ と, 税 務 署 か らの売 買契 約 に 伴 う譲 渡 所 得 申 告 の指 導 に対 し,な ん ら異 議 を述 べ な か った こ とを理 由 と して 挙 げ る。

⑪ 高 松 高 裁 昭 和63年3月31Fl(判 時1282号125頁)

上地 開 発 に絡 み,地 権 者 で あ るXら は,r .地開 発 業 者Yに,分 筆 及 び 所 有権 移 転 登 記 手 続 の た め に必 要 で あ る とい わ れ て,委 任状,印 鑑 登録 証 明 書,土 地 権 利 証 等 をYに 交 付 した と こ ろ,Yが これ らの 書 類 を 用 い て 交 換 を 原 因 とす る 移 転 登 記 を した うえ,Zに 譲 渡 した 事 案 。94条2項 , 110条 の 類推 適 用 に よ り,Xは 善 意 無 過 失 の 第 三者 に 対抗 で き な い と した 。

Xは,分 筆 及 び 所 有 権 移 転 手 続 だ け で な く,交 換 を原 因 とす る 登 記 移 転 手続 につ い て も,上 地 開 発 に 必 要 な 手続 の 一 環 と理 解 し,そ れ に 協ノJす

る趣 旨で 押 印 の承 諾,権 利 証 の 交 付 を 行 った もの で あ る と判 断 され た。

(22)

⑫ 東 京 高 裁 平 成2年2月13日(判 時1348号78頁)

Xは,当 該 建 物 が 義 理 の 甥 で あ るY名 義 に保 存 登 記 が な さ れ て い る こ と を 知 り な が ら8年 間 放 置 して い た と こ ろ,Yが こ れ をZに 譲 渡 し移 転 登 記 を した 事案 。

Xは 不動 産 登 記 に つ い て 相 当 の 知 識 を 有す る こ と,Xは 会 社 の 経 営 を Yに 委 ね て い る とい う 関 係 に あ る こ とか ら,Yの 保 存 登 記 の 抹 消 登 記 手 続 を実 行 させ る こ とは き わ め て容 易 で あ った と考 え られ る の に,こ れ を あ え て せ ず,8年 間 放 置 した こ と,そ の 間,何 度 も 当該 建 物 に抵 当権 が 設 定

さ れ た 際Xは 抹 消 登 記 を 求 め る な ど適 当 な 措 置 を 講 じた もの の,Y名 義 の保 存 登記 につ い て は,実 体 関係 に符 合 させ る よ うな措 置 を と る こ と を

要求 しな か っ た こ とを も って,XはY名 義 の保 存 登 記 を 明 示 的 に 容 認 し て い た と評 価 さ れ た。

⑬ 東 京地 裁 平成9年12月25口(金 商1044号40頁)

Xは,自 己所 有 の 上地 上に ア パ ー トを 建 築 す る こ とをYに 依 頼 した が, YがAか ら建 築 資 金 の 融 資 を 受 け る 便..F1̲E:,Yに 上地 の 登 記 名 義 を移 転 す る と と もに,同L地 に つ きAの た め に抵 当権 設 定 登 記 を経 て い た と こ ろ,一 一 方 で,こ の 登 記 に基 づ い て 税 務 署 がYに 対 す る滞 納 処 分 と して 差 押 登 記 を した が,そ の 後,Xが 真 正な 登 記 名 義 の 回 復 を 原 因 と して 所 有 権 移転 登 記 が 経 由 され,さ ら にZに 移 転 登 記 が な され,Zが 差押 登 記 の抹

消 登 記 手 続 を 求 め た 事案。

XはYが 無 断 で 所 有 権 移 転 登 記 を した と主 張 して い るが,YがAか ら

融 資 の受 け る 際 に な さ れ た 確 認1F続 に お い て,Y名 義 と な って い る こ と

に つ き なん ら異 議 を 述 べ な か っ た こ と,ま た 執 行 官 に対 し,電 話 でYが

融 資 を 受 け る た め に一 時 的 にXか らYに 所 有権 が 移 転 した もの で あ る 旨

応 答 して い る こ とか ら,Xは ヒ地 の 登 記 名義 がYに 移 転 して い る こ とに

つ い て 承諾 して い た もの と判 断 した。

(23)

94条2項 類推 適 用 あ るい は94条2項 ・110条 重 畳 的 類 推 適 用 の 限 界(1)

⑭ 東 京 地 裁 平 成11年9月27日(高 民 集53巻2号199頁)

Xは,自 己所 有 のL地 に つ き,Y名 義 に な って い る こ と を 知 りな が ら これ を8年 間 放 置 して い た と こ ろ,YがAの た あ に 当該 上 地 に根 抵 当 権 を 設 定 し これ を 登 記 した が,結 局 根 抵 当権 が実 行 さ れ てZが 買 い 受 け た とい う事 案 。

XとYは 同 族 会 社 で あ る こ と,Xは 所 有 権 移 転 登 記 抹 消 登 記 手続 訴 訟 を 提 起 した もの の,当 該 土 地 の 抵 当権 実 行 手続 に お い て は な ん ら 手続 停 止 の た め の 措 置 を 講 じる こ と な く経 過 した こ とが 考慮 さ れ て い る。

⑮ 最 高 裁 平 成12年12月19Fl判 決

Xは,自 己所 有 の 土 地 上 に 建 物 を 建 て,税 金 対 策 の た め これ をY名 義 で 建 築 確 認 申 請 した た あ,家 屋 補 充 台 帳 に はY名 義 で 登 録 さ れ て い た と こ ろ,YがXに 無 断 で 建 物 に つ い てY名 義 の 所 有権 保 存 登 記 を 行 った う え,こ れ をTに 譲 渡 した 。Tは 当該 建 物 に根 抵 当 権 を 設 定 した が,根 抵 当権 が実 行 さ れZが 買 い受 け た とい う事 案。

こ こ で は,益 と して,建 物 に抵 当 権 を 設 定 したTが 敷 地 の 賃 借 権 を 有 しな い 場 合 に,建 物 の 買 受 人Zが 敷 地 の 賃 借 権 も取 得 で き る か が 争 点 と な って お り,そ の 前 提 と して,Zが 本 件 建 物 につ い て所 有 権 を取 得 で き る か が 論 じ られ て い る。Yの 作 出 した 不 実 の 登 記 は,Xが した 家 屋 補 充 台 帳 ヒの 不実 の登 録 を 利 川 す る こ とに よ って 初 め て 可能 と な るの で あ る か ら, 不 実 の 登録 名 義 の 作 出 に関 与 し,こ れ を 承 認 して い たXは,そ の 後 の 保 存 登 記 ま で承 認 して い な か った と して も,94条2項,110条 の 法 意 に よ り, 善 意 無 過 失 のZに 対 抗 で き な い と した。

⑯ 人 阪 高 裁 平 成16年11月17日 判 決(判 時1897号17頁)

Xが 当該 ヒ地 に つ い て 共 有 持 分 権 を 有 して い た と こ ろ,右 持 分 権 に つ

い てXに 無 断 でYら へ の 共 有 持 分 移 転 登 記 が され,さ らにZの た め に 当

(24)

該 上 地 全 体 につ い て根 抵 当権 設 定 登 記 が な さ れ た事 案 。

XがYに 実 印 や 印 鑑 登録 カ ー ドを 預 け て い た こ と,持 分 権 移 転 登 記 の 存 在 を 知 った 後 も,約9年 近 く これ を 放 置 して き た こ と,Xが 破 産 宣 告 を 受 け た 際,Xは 破 産 管 財 人 に対 して 当該L地 に関 す る共 有 持 分 権 を破 産 巾 立 書 に 記 載 す る な ど して説 明 して お らず,こ れ はXが 不 実 の 持 分 権 移 転 登 記 の 外 観 を 承 諾 して 利 用 した とい う ほか な い こ とが,94条2項 類 推 適 用 を 肯 定 す る根 拠 とな って い る。

次 に,94条2項 類推 適 用 が 否定 され た 判例 を紹 介 しよ う。

① 東 京 地 裁 昭 和57年2月811(訴 月28巻5号952頁)

X(国)がYか ら 自作 農 創 設 特 別措 置 法 に よ り買 収 し,そ の 旨 表 題 部 欄 外 登 記 が な され たf:地 につ き,登 記 官 が 右 登 記 を 看 過 してY1を 被 相 続 人 とす る相 続 登 記 を した 後,Yの 相 続 人Y2がAに 対 す る債 務 を 担 保 す るた め に 当該 上 地 に抵 当権 を設 定 した が,結 局抵 当 権 が実 行 され,Zが 競 落 した とい う事 案。

本 件 にお け る虚 偽 の 登 記 は も っぱ ら登 記 官 の 過 誤 に よ り作 出 され た もの で あ って,Xの 意 思 に 淵源 を 有す る と 認 め られ な い こ と を根 拠 と して,94 条2項 は類 推 適 用 され な い と判 示 して い る。 な お,登 記 官 も国 の 機 関 で あ るか ら,登 記 官 に よ る行 為 も国 の処 分 行 為 と 同規 で き る ので,虚 偽 の 登 記 の作 出 が 国 の意 思 に 淵源 を 有 す る とい え る との原 告 の 主張 に 対 し,登 記 官 は あ くまで 登 記 事務 とい う一 の 公 証事 務 を分 掌 す る に過 ぎな い の で あ って, 登 記 官 の 行 為 に 国 の 財 産 に つ き処 分 意思 を 認 め る こ とは 論理 の 飛躍 で あ る

こ と も明 らか に して い る。

② 東 京 地 裁 昭 和58年7月19日(判 時1102号77頁)

① と 同 一 当 事 者 の 別 事 件 。 判 事 事 項 も ほ ぼ 同 じ。

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94条2項 類 推 適 用 あ る いは94条2項 ・110条 重畳 的 類 推 適 用 の 限 界(1)

③ 浦 和地 裁 昭 和58年11月18日(判 時1111号131頁)

XがYに 不 動 産 の 買 主 の 斡 旋 を依 頼 した と こ ろ,Yは 転 売 利 益 を 得 よ う と,不 動 産 の 所 有 名 義 を い った んYに 移 転 した 上 で転 売 す る形 式 を と ろ う と図 り,Xを 騙 してXか ら不 動 産 の権 利 証,印 鑑 証 明 書 お よ び 白 紙 委 任 状 を取 得 した 上,Yに 移 転 登 記 を した と こ ろ,Yに 対 す る 市税 滞 納 処 分 と してZ市 が 不動 産 を 差 し押 さえ た とい う事 案。

不動 産 買 主 の 斡 旋 を す る場 合 には,便 宜1,,登 記 手続 に必 要な 書類 を あ らか じめ仲 介 人 に 交 付 して お くの は 一 般 的 で あ る こ と,YはXの 会 社 の 非 常 勤 取 締 役 で あ り,人 的 信 頼 関 係 が あ った こ と,Zに よ る差 押 処 分 がY へ の所 有権 移 転 登 記経 由 の わず か3ヵ 月 足 らず 後 にな され て い る こ とか ら, Xが 登 記 簿 を 点 検 し,Yに 所 有権 移 転 登 記 の な され た こ とを 知 り,か つ,

直 ち に そ れ を 除 去 す るか,ま た はそ の 後 の 登 記 名 義 の 変 動 を 防 止す るた め の 法 的 手 段 を 講 ず る こ とが 可能 で あ った もの とい う こ と もで きな い こ とを も って,Xが 虚 偽 の 外 形 の 作 出 に つ い て,事 前 も し くは 事 後 に関 与 した こ とを 認 め る こ とが で きな い と して い る。

④ 東 京 高 裁 昭 和60年1月29[1(判 時1144号92頁)

Xは,Yに 当 該 不 動 産 売 却 の仲 介 を 依 頼 した と こ ろ,当 該 不 動 産 に つ い て い る抵 当権 と保 険 契 約 を 解 除 す るた め に必 要で あ る とい わ れ て,実 印 を押 した 白 紙 委 任 状 と印 鑑 証 明 書,固 定 資 産 課 税 台 帳 登 録 証 明 書を 交 付 し た が,さ ら にYは 銀 行 に 預 託 して あ っ た 当 該 不 動 産 の 登 記 済 証 も不   L 段 に よ り入 手 した 上,こ れ らの 書 類 を 利 用 して 白 己へ 移 転 登 記 を した ヒ, 借 金 の 担 保 にZの た め に 当該 不 動 産 に抵 当権 を設 定 した 事案 。

判 旨 は,登 記 の 外 観1何 らか の 不 実 登 記 を 作 出 す る意 思 がXに 少 しで

も あ った もの と は 認 め られ ず,か つXに お い て 不 実 の 登 記 を知 りな が ら

これ を 存 続 せ しめ る こ と を明 示 ま た は黙 示 に承 認 して い た もの と も認 め ら

れ な い こ と,ま た,Xが 交 付 した 各 書 類 は,右 登 記 手続 と は な ん ら関 係

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な い 別 個 の 目的 の た め に交 付 した もの で あ り,こ れ らの書 類 が不 実 登記 に 冒 用 され る こ と をXが 予知 しえ た もの と は認 め が た い と した。

⑤ 東 京 高判 昭 和60年4月24日(東 京 高 裁 判 決 時 報 民36巻4=5号77頁) Xは,Yの 借 金 の 担 保 と してX所 有 の 不動 産 に抵 当権 を 設 定 す る こ と を 了 承 した 上 で,設 定 登 記 手続 に必 要 な 書 類 をAに 交 付 し,Aが こ れ ら の 書類 を 冒 用 してYに 所 有 名義 を 移 転 して い た と こ ろ,Yの 債 権 者Zが 当該 不 動 産 に抵 当権 を設 定 した 事 案。

こ の 判例 で は,本 人 の 「承 認」 が あ った か ど うか は 論 じられ て お らず, も っぱ ら第 三 者Zが 保 護 に 値 す る 者 か ど うか が 問 題 と され て い る。 す な わ ち,「94条2項,110条 の 基 礎 に あ るい わ ゆ る権 利 外 観 な い し禁 反 言の 法 理 を援 用す る こ とは,登 記 とい う権 利 の 外 形 の 存 在 に原 因 を 与 え た もの と して の 責 を 問 う こ とに よ って 真 実 の 権 利 者 の 主張 を 排 し,登 記 を 信 頼 し て取 引 関係 に 人 った 第 三 者 の 保 護 を 図 ろ う とす る もの で あ るか ら,右 法 理 の援 用 が 肯定 され るた め に は,そ の 結 果 と して 真 実 の 権 利 者 が 失 権(本 件 に 則 して い え ば,抵 当権 等 の 負 担 の 引 き受 け)の 不 利 益 を こ うむ らされ て もや む を え な い と認 め られ る よ うな,保 護 に値 す る事 情 が 第 三 者 につ いて 認 め られ る場 合 で な けれ ば な ら な い 」 と して,本 件 の 場 合,ZがYの 登 記 を 信頼 し,当 該 不動 産 を担 保 に と って 融 資 を した わ けで は な く,融 資 後, た ま た まYの 所 有 名 義 と さ れ た 不 動 産 を担 保 に取 った だ けで あ る か ら, か りにYの 所 有 権 取 得 が 否 定 さ れ,当 該 不 動 産 か らZの 債 権 回 収 が で き な くな っ て も,当 該 不 動 産 を 回 収 の 引 き 当 て と は しな い で 融 資 を したZ

に と って,不 慮 の 損 失 は存 しな い か ら,真 の権 利 者Xの 利 益 を 排 して ま でZの 利 益 を 保 護 す べ き事 情 は認 め られ な い と して い る。

⑥ 東 京 高 判 昭 和60年4月24日(判 時1154号85頁)

XがYか ら訴 外 不 動 産 を購 人 す るた め に,本 件 不 動 産 をYに ド取 りに

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94条2項 類 推 適 用 あ る い は94条2項 ・110条 重 畳 的 類推 適 用 の 限 界(1)

出 す こ とに した と こ ろ,Yは 訴 外 不 動 産 の 登 記 手続 に必 要 だ と 称 して 印 鑑 証 明 書,白 紙 委 任 状 お よび 登 記 済 権 利 証 の 交 付 を受 け,こ れ を用 い て 自 己 に 移 転 登 記 を した 上,Zか ら金 融 を 得 る に 際 して 当該 不 動 産 を担 保 に供 した とい う事 案。

XはYが 自 己名 義 に 不 動 産 の 移 転 登 記 を す る こ とを 容 認 して い た も の で は な い し,Xが 不 実 の 登 記 を さ れ た こ とを 知 りな が ら これ を存 続 せ し め る こ と を是 認 して い た 事 実 も存 在 しな い こ と,ま た 本 件 不 動 産 につ いて は,Y名 義 の移 転 登 記 と抵 当 権 設 定 登 記 が 同 時 な さ れ て お り,ZがYの 所 有権 移 転 登 記 の 存在 を 信 頼 して 抵 当権 を 取 得 した とい う関 係 にな い こ と か ら,Xが 関 係 書 類 をYに 交 付 した とい う行 為 だ けで は94条2項 類 推 適 用 に よ りZを 保 護 す べ き場 合 に 当 た らな い と して い る。 後 半 の 判 示 は,

④ 判 決 と ほ ぼ 同 旨。

⑦ 横 浜 地 裁 昭 和61年2月26日(判 夕605号55頁)

Xは,地 番 の 認 識 を 誤 っ て い た た め,自 己 の 所 有 地 に つ きY名 義 の 登 記 が な さ れ て い る こ と に 気 づ か ず,是[正 措 置 を と り え な か っ た と こ ろ,第

モ 者Zが こ れ を 取 得 した 事 案 。

94条2項 を 類 推 適 用 す る た め に は,真 の 所 有 者 が 誤 っ た 登 記 一 ヒの 表 示, 外 観 を 自 ら 作 り 出 した か,そ う で な くて も 右 表 示,外 観 を 認 識 の 上,こ れ を 承 認 し て い る こ と を 要 件 と す べ き で あ る と し て,Xは 登 記 の 誤 り に 長

ら く 気 づ か ず,し た が っ て 是iC措 置 も と り え な か っ た の で あ る か ら,X は 右 表 示,外 観 を 認 識 承 認 し て い た と は い え な い と した 。

⑧ 名 古屋 高裁 昭和62年10月29日(判 時1268号47頁)

X所 有 の 不動 産 に つ き,息rYがXの 承 諾 を 得 る こ とな く不動 産 の 権

利 証 や 印 鑑 を 持 ち 出 し,Yの 妻 名 義 に移 転 登 記 を した と こ ろ,YはZら

に対 す る借 金 の担 保 と してZら に 所 有 名 義 を 移 転 した とい う事 案 。

参照