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近赤外フィルタを用いた 衛星画像カメラの開発
1130078 篠原 貴紀
高知工科大学 システム工学群 建築・都市デザイン専攻
現在研究室では衛星画像解析の検証のために現地調査を行っている.しかし現地調査は森林内部から見た植生のため上空から 見た衛星画像で得られる情報とは異なる.衛星画像に近い画像をデジタルカメラで撮影することができれば衛星画像解析の検証 データに活用できる.自作の分光器で測ったカメラの近赤外における感度で,近赤外フィルタを用いて衛星画像のような画像を 撮像できることが示された,今後太陽光のもとでの実験を行ったうえで,現地調査に活用する予定である.
Key Words: 分光器,近赤外,デジタルカメラ,NDVI
1. はじめに
現在研究室では衛星画像解析の検証のために現地調 査を行っている4).しかし現地調査は森林内部から見た 植生のため上空から見た衛星画像で得られる情報とは 異なる.そこで森林から離れた場所から衛星画像に近 い画像をデジタルカメラで撮影することができれば衛 星画像解析の検証データに活用できる.衛星画像は,
太陽光の反射を感知して画像化している.光の波長の うち衛星画像として利用できるのは 400~650nm の可視 光と 700~900nm の近赤外域である.そこでデジタルカ メラにより近赤外のみの画像を得ることが出来れば,
衛星画像に近いデータを取得することが可能である.
そのカメラを開発するためには,カメラの近赤外にお ける感度を調べる必要がある.そこで各波長の感度を 測るために分光器が必要となる.
本研究の目的は分光器を作成し,デジタルカメラの 近赤外での感度を測り,近赤外のみを透過するフィル タを用いて,衛星画像に近い画像を取得し,植生判読 カメラを開発することである.
2. 使用機材 2.1 使用カメラ
今回,植生判読のためのカメラとして PENTAX の一眼 レフデジタルカメラ K-30,CANON コンパクトデジタル カメラ PowerShotSX200IS,天体用カメラ MEADE DSI1 を
使用した.しかしコンパクトデジタルカメラは自動ホ ワイトバランスの解除が出来ず安定した結果が得られ ないため除外した.天体用カメラは近赤外の感度が高 いと期待されたが思ったより高くないことと,取扱い が複雑であること,ノイズが多いことから除外した.
最終的に残った K-30 は,近赤外波長における感度は低 いものの使用できるレベルにあった.したがって本研 究では K-30 を使用することにする.
2.2 分光放射計
分光放射計 OceanOptics 社製の USB4000 と光ファイ バ(図 2.1)を用いる.光ファイバで光を取り込み光源 の放射量を測定する.測定した光源の放射量とフィル タで透過させた放射量を使いフィルタの透過率を求め るために使用した.
図 2.1 分光放射計
2.3 光源
今回光源として比較的太陽光に近い放射特性を持つ ハロゲンランプを使用した.放射量を図 2.2 に示す.
2 図 2.2 ハロゲンランプ放射量
2.4 自作分光器
分光器とは光を波長ごとに分解する機器のことであ る.光は波長ごとに屈折率が異なっている.そこでコ ンパクトディスクの表面にある細かな溝と光を反射す る特性が回折格子の役割になり,スリットから光を取 り入れることで光を分光させる.回折格子の原理を用 いた自作分光器の概要を図 2.3 に示す.作成した分光 器が図 2.4 である
図 2.3 分光器概要図
図 2.4 自作CD分光器
2.5 使用フィルタ
今回実験に使用するフィルタは,可視光の赤 650nm 付近のみを透過する IDAS 社製の UIBAR-III と Kenko 社 製の SR64 の組み合わせと,近赤外の 700~900nm のみ を透過する IDAS 社製の U-Filter を使用した.今後こ のフィルタを可視光赤フィルタ,近赤外フィルタと呼 ぶ.フィルタごとの透過率を図 2.5,2.6 に示す.この
図における透過率はハロゲンランプの各波長での放射 量を 1 とする割合で表した.
図 2.5 可視光赤フィルタ透過率
図 2.6 近赤外フィルタ透過率
3. カメラ分光感度特性 3.1 計測手法
図 3.1 のようにカメラと分光器を光源に対し直角に なるように固定する.カメラの絞りを 2.8,ISO 値を 400 に固定した.シャッタースピード 1/500sでフィルタを 装着せず画像を撮影する.次に同じシャッタースピー ドで可視光赤フィルタを分光器に装着し画像を撮影す る.次に近赤外フィルタに交換し画像を撮影する.こ の時シャッタースピード 1/500 では写らないためシャ ッタースピードを 1/50 まで遅くし撮影する.撮影した 画像が図 3.2 である.可視光赤フィルタの透過率のピ ークは 660nm である.一方近赤外フィルタの透過率が ピークとなるもっとも短い波長は 715nm である.画像 上のこれらの位置を読み取れば線形補間により各画像 での画素位置から波長を算出できる.各画素位置ごと に波長を計算し,画素の値を読み取ってグラフ化すれ ば感度を計測することが出来る.近赤外領域において は,シャッタースピードを 10 倍にし,できるだけ細か く読み取った.
3 図 3.1 計測環境
図 3.2 波長値を定義した画像
3.2 計測結果
感度計測結果を図 3.3 に示す.図 3.4 は,近赤外領 域を拡大したものである.近赤外にすこし感度あるこ とがわかる.したがって衛星画像カメラとして使用可 能であると判断した.
図 3.3 K-30 感度グラフ
図 3.4 K-30 近赤外感度グラフ
4. 衛星画像カメラのテスト撮影
ハロゲンランプを使用し白~黒を 11 段階に分けたグ
レ-ウェッジと葉っぱ,造花を撮影対象とした.すべ て映る位置でカメラの絞りは 2.8,ISO 値は 400 に設定 し,カメラを固定する.最初に可視光赤フィルタをカ メラに装着し撮像する.次に近赤外フィルタに交換し 撮像する.交換のときカメラや対象物を動かさないよ うにしなければならない.撮影されたカラー画像は R,G,B 分割し,感度の高い R 画像のみを使用する.撮影 画像を図 4.1 と図 4.2 に示す.撮影された画像は可視 光赤にくらべ近赤外のカメラ感度が低いため補正を行 う必要がある.補正値は可視光フィルタと近赤外フィ ルタの感度により求めることができる.図 4.3 のグラ フは可視光赤と近赤外の感度を示している.それぞれ の面積が同じになるように補正係数を算出した.補正 係数は 2.887 倍であった.
図 4.1 可視光赤フィルタによる画像
図 4.2 近赤外フィルタによる画像
図 4.3 可視光赤と近赤外の感度
4 5. 植生判読手法
衛星画像の植生判読方法を試してみた.
5.1 植物の分光反射特性
地物の分光反射特性を図 5.1 に示す.この図から植 物は他の地物に比べ可視光赤 600~690nm にかけては反 射率が少なく,近赤外 700nm 以上からの反射率が高く なっていることがわかる.図 5.1 には可視光赤フィル タと近赤外フィルタの透過する波長域を網掛けで示し た.
図 5.1 地物分光反射特性
5.2 植生指標計算
可視光赤の画像と近赤外の画像を使用して実際に植 生指標計算を行う.計算式として式 5.1 の NDVI 計算と いう植生指標計算式が利用されている.
近赤外+可視光赤 近赤外-可視光赤
NDVI (式 5.1)
この式から近赤外の反射が高い植物は指標値が高くな ることがわかる.補正を行った画像を用いて植生指標 計 算 を 行 う . 計 算 に は フ リ ー の 画 像 処 理 ソ フ ト HyperCube を使用した.二つの画像から NDVI を算出し た画像が図 5.2 である.
図 5.2 NDVI 演算後画像
図 5.3 は植物と造花の指標を頻度で表したヒストグラ ムである.図 5.3 より植物は指標数値が高く,造花は 指標数値が低くなっている.よって植生判読は成功し たと言える.
図 5.3 指標値ヒストグラム
6. 考察
分光器を作成した.自作の分光器で測ったカメラの近 赤外における感度で近赤外フィルタを用いて衛星画像 のような画像を撮像することが出来たため,自作分光 器でも十分な結果が得られることが示された.今後太 陽光のもとでの実験を行ったうえで,現地調査に活用 する予定である.
参考文献
1)津田智典 高知工科大学 2007 年度学士論文 シャー プカットフィルターを用いたデジタルカメラによる 植生判読画像生成方法
2)JAXA いろいろなスペクトルを観察しよう-CD-
分光器
http://edu.jaxa.jp/materialDB/detail/78877 3)大渕雄一 高知工科大学 2009 年度学士論文 放射計
による植物の分光反射測定の確立
4)久松亮太 高知工科大学 2009 年度学士論文 人工衛 星画像解析のための現地調査データベースの構築