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大門 康子 学 位 の 種 類

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Academic year: 2021

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全文

(1)

氏 名 おおかど やすこ

大門 康子

学 位 の 種 類

博士(医学)

報 告 番 号

甲第 1646 号

学位授与の日付

平成 29 年 3 月 21 日

学位授与の要件

学位規則第 4 条第 1 項該当(課程博士)

学 位 論 文 題 目

Tumor budding and laminin5-γ2 in squamous cell carcinoma of the external auditory canal are associated with shorter survival

(外耳道扁平上皮癌における tumor budding および laminin5- γ2 の発現と予後との関係)

論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授

鍋島 一樹

(副 査) 福岡大学 教授

坂田 俊文

福岡大学 教授

竹下 盛重

福岡大学 講師

二村 聡

内 容 の 要 旨

【目的】

外耳道扁平上皮癌は非常に稀な疾患であり、進行癌で診断されることが多く、他の皮 膚扁平上皮癌と比較して極めて予後不良な悪性腫瘍である。稀な疾患であることから単 一施設での評価が難しく、未だ国際的な臨床病期分類や治療ガイドラインが存在しな い。現在、予後予測や治療選択の材料としては、Pittsburg 大学の staging system に従 った TNM 分類が用いられているが、臨床において早期癌にもかかわらず予後不良な症例 や進行癌での長期生存症例が経験され、より正確に予後を細分化できるマーカーが求め られている。

簇出(tumor budding、sprouting)は癌細胞と宿主細胞との相互作用が激しい癌発育 先進部に見られる病理学的所見であり、大腸癌における追加治療の適応基準とされてい る。食道扁平上皮癌や喉頭癌においても転移や再発、予後との関連が指摘されている が、外耳道癌での報告はまだない。

Laminin5-γ2(Ln5-γ2)は成人の基底膜の構成成分の一種となる laminin5 の三本鎖の 一つであり、様々な悪性腫瘍の発育先進部での発現が報告されており、budding cells と の関連も報告されている。

本研究では、未治療の外耳道扁平上皮癌の生検材料を対象として、簇出を評価し、さ

らに Ln5-γ2 の免疫組織化学検査を行い、外耳道進行癌における予後予測因子となり得

るか検討を行った。

(2)

【対象と方法】

同一プロトコールに従って治療を受けた原発性外耳道扁平上皮癌症例のうち、治療前 の生検材料が入手可能であった 46 例を対象とした。1998 年 1 月-2006 年 3 月に九州大学 病院で治療された 15 例及び 2006 年 4 月-2014 年 12 月に福岡大学病院で治療された 31 例 を対象とし、そのホルマリン固定・パラフィン包埋標本を用いた。臨床病期分類は Pittsburg 大学の TNM 分類を用いた。簇出の grade は大腸癌取り扱い規約 2013 年の分類 を改訂した当教室の佐藤ら(2014)の分類を用いた。Ln5-γ2 の免疫組織化学的検査は、悪 性腫瘍の細胞質に 10%未満のものを陰性とし、陽性と判断された腫瘍の発現パターン、発 現量を比較検討した。

【結果】

簇出と臨床病理学的特徴との関係では有意差の見られた因子はなかったが、簇出のない 症例には遠隔転移はみられず( p =0.100)、簇出の grade が高いものは全例が術後に再発し ていた ( p =0.071)。

Ln5-γ2 の発現パターンと臨床病理学的特徴との関係では、進行癌症例と低分化症例で Ln5-γ・diffuse type の症例が有意に多かった( p =0.0439, p =0.0200)。

簇出と Ln5-γ2 との関係では、簇出の有無は Ln5-γ2 の発現量と有意に相関していた ( p =0.044)。さらに、簇出の grade は Ln5-γ2 の発現パターン、量、とともに有意な相関 を認めた( p =0.045, p =0.001)。

Disease-specific survival は簇出の有無では有意な相関は認めなかったが、簇出の grade が高いもの、Ln5-γ2 の発現が diffuse type のもの、また発現量が多いものほど有 意に予後不良であった( p =0.0007, p =0.033, p =0.007)。さらに、stageIII, IV の進行癌 35 例のみでも同様に簇出の grade が高いもの、Ln5-γ2 の発現量が多いものは有意に予後 不良であり( p =0.002, p =0.048)、逆に簇出の grade の低いもの、Ln5-γ2 の発現量が少な いものは進行癌でも比較的長期生存していた。StageIII, IV の進行癌 35 例のみでの短変 量解析、多変量解析においても簇出の grade は独立した予後不良因子であった( p =0.012, p =0.010)。

【結論】

簇出の grade と Ln5-γ2 の評価は、TNM 分類に加えて、さらに予後を細分化できる因子

として、今後の外耳道扁平上皮癌の治療決定材料となり得る可能性を示した。

(3)

審査の結果の要旨

本論文は、大腸直腸癌において予後不良因子として確立している簇出(tumor budding/

sprouting)を、未治療の外耳道扁平上皮癌 生検材料を対象として評価を行った。さらに tumor budding のメカニズムの一つである laminin5-γ2 の免疫染色を行い、tumor budding の評価および laminin5-γ2 の発現が外耳道扁平上皮癌の予後予測因子として治療選択に 用いることができる可能性を示した。

1. 斬新さ

これまでに頭頸部癌領域において、口腔癌の組織学的評価の一つに小さな細胞集塊 による浸潤様式を評価した報告、また外耳道癌の発育先進部の浸潤様式についてリン パ節転移との関係を示した報告はある。しかし頭頸部癌の中でも、非常に稀であり、

かつ極めて予後不良である外耳道癌の予後因子として tumor budding、budding grade の評価を行った報告はない。

本研究では,外耳道扁平上皮癌の生検材料を対象として、現行の大腸癌取り扱い規 約に従い、浸潤する 5 個未満の細胞集塊を tumor budding と定義し,budding grade により tumor budding をさらに細分類して評価を行った初めての報告である。

2. 重要性

外耳道扁平上皮癌は発生率が年間 100 万人に1人と非常に稀であり、また極めて予 後不良な悪性腫瘍である。未だ国際的な臨床病期分類や治療ガイドラインが存在せず、

多くの施設で Pittsburg 大学の staging system に従った TNM 分類が用いられている が、臨床において早期癌にもかかわらず予後不良な症例や、進行癌での長期生存症例 が少なからず経験され、TNM 分類に加えて、新たな予後因子の追加が必要と考えられ る。

本研究では外耳道扁平上皮癌において budding grade、laminin5-γ2 の評価が TNM 分類に加えて予後を細分類できる因子であることを示し、今後の治療選択の材料とし て、日常の病理診断においても比較的簡便に用いることができる可能性を示した。

3. 実験方法の正確性

Tumor budding の評価は現行の大腸癌取り扱い規約(大腸癌研究会 大腸癌取り扱い 規約 2013 年 7 月[第 8 版])に従った。Budding grade は tumor budding の特性を詳し く検討した当施設佐藤ら(2014)の modified budding grade を使用した。Laminin5- γ2 の免疫組織化学検査はプロトコール通りに行い、発現量の評価は当施設濱崎ら

(2011)の報告に従い、病理医二人以上の評価により分類した。いずれも確立された

方法で 46 症例の検体を解析しており、十分な正確性があると考えられる。

(4)

4. 表現の明瞭性

本論文は英語論文であり、すでに SpringerPlus に掲載されており、研究背景、目的、

方法、実験結果、考察を簡潔・明瞭に記載していると考える。

5. 主な質疑応答

Q:外耳道扁平上皮癌はどのような経緯で死亡にいたるのか。発表者の調べた因子が table 1 の臨床病理学的所見との間に優位差がでなかったことについて。

A: 外耳道扁平上皮癌は局所再発により局所コントロールがつかずに死亡するケース が多い。過去にリンパ節転移との有意差を報告している論文が多いこと、外耳道癌の 死因に局所再発が多いことから、今研究でこの部分で優位差がでなかったのはリンパ 節転移や局所再発の症例が少なかったことが原因の一つに考えられる。今後、症例数 を増やして検討が必要と考えられる。

Q:生存曲線では high laminin5-γ2 expression level の症例は有意に予後不良であ ったが、多変量解析では予後因子として消えた理由は。

A:Table 2 で示したように tumor budding と laminin5-γ2 expression は強く相関し ており、tumor budding のメカニズムの一つとして予後に関わっている因子と考えら れる。そのため独立因子とはならず、多変量解析では優位差が出なかったと考えられ る。

Q:今回の症例は手術を受けているのかどうか、全例が放射線治療を受けているのかど うか。治療法による分類は。

A:本研究は全例手術前の生検材料で評価を行っている。術後効果判定や再発の有無を みた 18 例に関しては当科のプロトコールに従った治療を受けており放射線治療は全 例受けている。治療法による予後の評価は今回行っていない。

Q:リンパ管侵襲の有無は評価したかどうか。

A:本研究は生検材料を研究対象として用いており標本の大きさが小さいため、リンパ 管脈管侵襲の観察が難しい標本が多く、評価にいれなかった。

Q:多変量解析の交絡因子について、これ以上に因子に含めたものがあったのかどうか。

A:提示しているもののみで多変量解析を行った。

Q:生検材料での、低分化での tumor budding の標本はどのように見えるのか。消化管 では小胞巣を形成し、ばらけているものを低分化という。

A:たしかに低分化症例は全例 tumor budding が多くみられた。

(5)

Q:Laminin5-γ2 の marginal type の発現は中分化のものが多いのか。

A:Marginaltype の発現は中分化のものに多くみられます。統計学的には分化度が低い ものほど diffuse type のものが多いという結果は出ているが、発現量の高低では有意 差はでていない。

Q:浸潤と転移を分けると有意差が出なかったが、浸潤および転移あり、とすると予後 に差が出てきたと考えていいのか。

A:tumor budding は浸潤には関わっていると考えられるが、 リンパ節転移や遠隔転移、

局所再発との間に有意な相関は得られなかった。本研究の標本数が少なかったことが 原因かも知れない。局所浸潤や予後に tumor budding がどこで関わってきているのか、

ということについての研究も必要と考えられる。

その他、いくつかコメントがあったか、発表者はいずれについても的確に応答した。

以上の審査結果により、本論文は斬新さ重要性と的確な質疑応答により学位論文に値

すると評価された。

参照

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