奈良教育大学学術リポジトリNEAR
滲透抑制に関する研究
著者 太田 ?敏
雑誌名 奈良学芸大学紀要
巻 4
号 2
ページ 97‑103
発行年 1954‑12‑25
その他のタイトル Studies on the control of Percolation water
URL http://hdl.handle.net/10105/5062
(97)
渉 透 抑 制 に 関 す る 研 究
太 田 頗 敏 (農業工学教室)
(昭和29年9月1日受理)
Yorituslli ela消山dies on the control of Percu】alion water
.f.緒 論。
甘.異致装置、材料及び方法。
I.ベントナイトの性質。
∬・ベントナイト混合試料の性質。
Ⅴ.アrスダムに対するゲラウトについCo
W.結 論。
ト 緒 論
土は多くの間隙を持っているから水を適すことが出来る。透水に際しある断面を通る流量は、
断面積をA、圧力勾配をiとすれば
Q=k.i.A
なる関係がある。但しkは透水係数と呼ばれる定数である。この関係をダルシーの法則という。
土の中の間隙は甚だ不規則なる形をしているから、この様な管中の水の流れを、ナビコ ̄・ストー クスの式を用いて解くことは到底望むべくもない。従って上武の様な平均的な法則は土中の水の 流れを考える場合には甚だ重要なものである。この式では土の断面全体で考えているから Q/A から求めた流凄Yは水の速さを表わさない。間隙率をnとすれば水の部分は、AT=n・Aの部分 のみを流れるから、蕗透水靖の速さVsは
Q=A、▼.Vs=k.LA
よ。即ちVs=窓よ。求められる0
この流速が大きくなると流れは層流から乱流になる。流れが乱流になるとダルシーの法則は成立 しなくなる。叉流れによって土中の細粒が流出して土構造物の崩壊を招くこともあるからアース グム等ではこの流速を十分に小さくなる僕にする必要がある。使用する土は粒度分布の適切なも のを選んだり、十分締め固めたりすることの一つの理由はここにある。所で最近施工されている アースグムは潅漑事葉の大規模化、発電、水道、洪水調節のための貯水事業の急激な進展に伴っ て米国に於ては1出mの高さを有するTlhCOl】1之もD払Ⅶの出現、叉日本に於ては農林省の行った山 王壷(岩手県紫波郡)の37mの如く非常に大規模化して来たことである。この事は一所士に関 する物埋、工学的な研究が大いなる役割を演じて来ていることも事実であるが、更にアースグム の理論、設計法及び魔工法に関する工学的な研究が著しい進歩をなしとけたことを如実に証明し たも力と考えられる。この僕に高いダムが造られると当然水圧は非常に犬なるものとなり結局施 工後何牢か漣の状態も考え辞せ災害の起らざる様充分な注意が必要となる。この為堤体内を遽透 する水の流速を如何にして微小なものにコントロールするかの工夫は相当必要性の大なるものと 考える。土そのものの持つ弱点、即ち大小様々の粒子の骨髄よりなる為の間隙の存在と、蓼透流
讃艮学芸大学紀要 飴4奄第2号 昭和2ヲ寧12月90日
(98) 太 田 頼 政
速を支配する大なる要素である間隙含有微粒子が水溶性であること等、これは避け得ぬ所の自然 の有する弱点であり、これをカノヾ−するのが締め固めの工夫とか、中心刃金の組成に対する考慮 であると考える。極端ではあるが此の大レ、なる役割を演ずる後粒物質が水に雑溶性であり、従っ て流水より粒子骨髄を堅固に守り得る物盤が出現すれば余程この方面の発展に寄与しうるものと 考える。この様な考えの上に立ったとき自然に存在する粘土物質のすべてについてその点から検 討する必要も大いにあるものと考える。本研究は縮こ発表したベントナイト、普通粘土、P−ム 等の混合による鯵透抑制の効果を更にややくわしく調査した結果を発表したものである〇本研究
に多大の御援助を賜った県農地部北川課長、窪田係長、須藤技師に厚く感謝する○
皿.実験装置、材料及び方法
実験装置としては透水係数測定用に向井製作所製の変水位透水試験器(Pig.1)を使用し、試 Eig.1三圧水位透水試験器 Eig.2 突固め試験器 料成形の為に突固め試験器
ン一、珪藻土を使用した。ベントナイ る。
何分散剤として大阪窯業セメン ト株式会社製ポートランドセメン
トを使用した。
遼遠試脇の方法吼一順か、豊井グ ム用土共滞二 211)0g を揺り、之に 重量比で0.5%より6%遥夫々0.5
%のオーダーで抑制材料を増加し て行ったのである。侍抑制材料に
Jis.A.1210(Fig.2)を使用 した。付秋某式透水試験器 を同時肝用した。
試演は本学共鹸盤で主と して行ったものである。材 料としては川砂と豊丼ダム の用土を用いた。粒度分析 の結果はPig.3の如くであ る。佃蓼透抑制の材料には 大部分ベントナイトを使用 したが、この他にはカオリ トは三重県宮川産で豊順鉱業株式会社製で商品名は妙義であ
F辱3 討料の抱壬周織曲線
触 壬 初.虎.
埠 増 量
− お
対し悪意比で20%のセメントを混合した。・試験器のモールドには試料を充分水と況和し三岡に分 けて均等に抱き固めて充壊したのである。佃実験前に試料中の空気を追出す為水槽中にて逆遽透 を行い気泡の発生終了後実験を行うことにした。係数披グ)算出法については省略するが、この Pig・1の試験器を使用すると、試料が水中で膨張するカを余程防止出来る特長があり、この点本 研究には好適であった。
I.ベントナイトの性質
遼遠抑制に関する研究 (99)
ベントナイトとはモンモリヨナイトを主成分とする粘土の一種であって、著量の水を膨潤して 著しく体積を増大する特性を有しているので、この特性に因んで内田氏は膨潤土と命名したので ある。1930年米国のT一.Pauling氏に依って、Ⅹ線分析法の導入が試みられて以来、粘土科学は劃 期的な進歩を遂げ、その結果粘土醸物を最も基本的な原子配列に基礎を置く結晶構造式に依って 極めて明瞭に分類整理する事が出来た。斯様にして粘土癖物は主としてカオリン系のものと、モ ンモリョナイト系の二種類に分濁され、前者を主成分とするものが普通粘土であり、膨潤性は微 弱であり、・後者のモンモリヨナイトを主成分とする粘土が既述の如く顕普な膨潤性を持ち、ベン
トナイトと呼ばれるものなのである。
侍この吸水膨潤能もP脚lndlich氏の実験に依れば吸収する液体がI.iOIl,yaO上I等のアルカ リ溶液である場合には最大10倍近くも吸収膨潤し、初めて平衡すると発表している。本ベントナ イト甲実験式の近似形はAl203・5SiO2.nIT20である。本試験に供したベントナイトは前述の 如く商品名は妙義であるが、これの大体の性質は粉末度 200メッシュ、見掛比重0.弧 責比重 2.0,膨潤鹿こ且5−4、水分5.2%、可溶性珪酸約5%、桂沓土比7.0である。
ベントナイトはそのままでは封水性の大なる為容易に水に溶けないが、セメントを微量混合す ると水溶性になる。
5%分散液ではP・且・領主程度であり、静置するとコ.ロイド部と沈澱部とに分離するが、この コロイド部分になる比率は全体の34.7%である。水比を4倍位に少なくすると流動性を失う。こ のベントナイトのコロイド部分は重要な性質を持ち、この部分が膀潤性、粘性を交配しイオン交 換反応を行う。而してベントナイトにセメントを混合するとセメントの水和作用に依って生する Ca とのイオン交換が問題となるのである。多くの学者が実験の結果、粘土購物結晶の残肖原子 価能を飽和している月イオンと金罵成分の交換に於て、Ⅳ払,Ca,Kイオン等は最も容易に交換
しうるが、Mgイオンは比較的困難であることを発表している。
さて今、セメントーベントナイト混合物を水に溶解すると粘重な液を作る。而して之を静賞す るとゼリー状の沈澱を生する。セメントベントナイトの各単独液の比重は大差なく、この液の比
Pig.4 重も殆んど両者に近い。
粘性はベントナイト及びセメント各単 独液の中間位である。ゼリーの生成は濃 度や混合比によって異なるが大体10〜30 分程度で液と完全に分離し流動性のない ものを生する。過剰の水分を与えて静置 したものがPig.4に示す如くで、左端 より臆にセメント、ベントナイトの配合 量を次表に示す如くした。結局水中に於 てはベントナイトの比率が大きい程ゼリ ーの容積が大になることが分る。
(望位はgr.)
(100) 太 田 頓 放
而して試験管を倒置しても動かない。このゼリーは振接すると流動するが、之を揺度と名付け るより固化の一過程と考えられる。
乾燥及び養生と共にかなりの固さのものになるが、そ¢潤さ及び固化速度は勿論セメント量に 比例する。生成したゼリ1−は、水に対しては非可逆で一且乾燥したものは之に水を加えても再び 膨潤は示さない。これは混合ゼリーを自然乾燥力後200メッシュの粉末として水に投入すると膨 潤せずにそのまま早急に沈澱することによウ容易に知り得る。乾燥による重量の減少の程度は最 初の2〜3日間は急で後、大いに緩慢である。乾燥物は非常に繊細な多孔質で、水浸すると5分
以内で略完全に吸水する。
Ⅳ・ベントナ.イト混合試料の性質
遽透水流動に於て対豪とする土壌空隙は、ZLIIlker氏の指摘した如く、自由に藩透水が流動し うる空膵(有効空爆或いは自由空隙等と定義されている)であって一般に砂土は粘質土に比べそ の空隙の大いさが犬であり、従って港透係教は大である。佃砂土は比較的微粒分を含まないので
各陸微粒物質の試料に対する空隙充填の影響を直接的に観察するにはこの点良好であり、特にこ の巽験に於ては川砂を用いた。実験結果はPig.5 に示す。
図の如くカオリン、珪藻土、ベントナイトの順 に蓼速度減殺の効果が犬となっている。
実験中カオリン、珪藻土に於ては試料を蕗透し 終った水液中に溶出されるのが見られた。舷潤性 に於てベントナイトは三者中最大でありこれが一 番大きな遼遠減殺の原因であろう。叉ベントナイ ト混合に於て3%を趨えると混合体か水による崩 壊度が眼に見えて減少した。薗ベントナイトの粘 質土に対する影響は.Pig.6の如くであり、勿論 砂に比べて間隙の大きさが小さく、為にその量的 効巣は大なるものがある。佃本実験では特に注意 を要すべき点として試料をモールドに充填後水圧 を加え相当時間経過した後でなければ係数値が安 定しないことである。その点につき参考のため Pig.Sを示す。之は矢張り試料の持つ空隙は遽 透水が流過するにしたがって周囲から引きしめら れて所謂透水による圧密化現象が起る為と思う。
今一応各憶の士の透水係数のオーダを示すと次表の如くであり、砂を原土としても実用上不透 水の程度迄改変することは左程困難でなく精々5.6%の混合比で済むことになり、砂質ロームを
原土とすれば1%程度で良いことになる。
次に安定性についてであるが、之はベントナイトに於ては試料空隙に充壊し乾燥した後は水に
非可逆性であり、他の粘土物質の混入の場合に予怨する如き危険性は左程大きくないと考えてよ
いと思うが、特に水に対する安定性、分り易く云えば水によってこの混合体が崩れはしないかと
迭透抑制に関する研究 (ltll)
透水係数1.02 10 1・0 1〇車110−310−810−410−510−蒋10−710−810−n 透 水 度l 高 l 偲 l 不 透 水(実用的)
土 質 例l砂 利l砂、砂利混り砂I慧欝:豊、粘土。混合土l票霊莞毒呈如き いうことであるが、之の貴も大なる鼠点を持つと思われる砂を試料として簡単な実験を行った。
債づ砂を夫々1,2,3,4,5%の配合比によってベントナイトを混合し(同時にセメント混合)之 を含水率1.4.3%(摘き固め良好な状態)で突固めた。
装置にはPig.2の突固め試験器を用いた。
後これを成形し大気中に自然乾燥したのである。このとき1%のものは乾燥中やや崩れる傾向 を持った。試料は混合比の犬なるものより順に乾燥し易く、特に4.5%になると表面の粗さも少 なくなり混合ゼリーの乾燥し美しく白変した物質が試料の周りにカバーされるのを見た。成形試 料の状態をPig.8に示す。
Fig.8 成 形試 料 之を水中に約30分間浸した結果の崩壊状況を観察したので ある。水中浸漬後的5分で1%試料は周りより崩れ始めたが Pig.9 浸水後の萌壊状況 5%試料は30分後 といえど大体の形 態を操持した。
排水後の状況を Fig.9に示す。
試杵ナ法は痙10
cm、高さ12二Tc一一一、
で体積約1000璧董
ある。
(102) 太 田 帝 放
Ⅴ.アースダムに対するゲラウトについて
今道のべたのは主として用土の改良を目的として工事施工前及び施工中の問題としてベントナ イト混合による水野性の改良に関する実験を行ったものであるが、次に既に櫛工された後、特に 施工上の不備等により漏水した場合等にこれの対軍としてグラウトの問題について述べる。以下
現在実施中の本県の倉橋湘池事業に於ての実施試験を基にして説明する。
本草葵に於ては注入作業は債づロータリー、ロッド、ポーリングで以て基礎岩を内1.5nl遥穿 孔し、ボーリング、ロッドをそのま」注入管となし、注入圧力は堤頂に於て2kg!Pm2 として注
イ
入を行ったのである。施工は堤頂に於て2列の千鳥形に長大亜m、黄小10−11、平均深度ご;0】n、
孔数240孔のグラウト孔について行ったのである。注入を完了した孔の附近のポーリング或は一 部掘返し等で半径2m位は確実な注入効果をあげていると考えられるのであるが、土に対するコ アーポーリングが容易でない為にはっきりした調査を行えないのは事実であり、結局港透水の減 少壕を以て結果的に判定するのが近道でもあり又実際的であると考える。ともかく現段階ではポ
ーリングの圧力水の圧力上昇の程度、穿孔の手応え、ロッドの先端から孔の上端へ還流する水 量、更にグラウチングに於て一定圧力に達する迄の注入量の差異等によってそのグラウト効果の 発展を見出すことが出来る機である。セメント及びベントナイトを混合してゼリー状となし注入 して同化したものは、セメントの様に固くはならす、土に近い性質を持っている上、栂水に会っ ても非可逆で再溶解せず極めて安定でアースグムの注入には最も通した材料と考えられるのであ るが以下本注入についての利点を掲げると次の通りである。
(1)第1にその経済性を特筆すべきである。ベントナイトの価格はセメントの持%であり、雨 も佃注入した後の固形物もベントナイト混入では容積を増している。即ちセメントのみでは比重 2・2、セメント〜ベントナイト1:1では1.5となるので注入効果を注入固形分の体積に比例すると 仮定すると1:1混合注入で注入材料費は6割ということになる。
(2)水比を変化することによりセメントのみの場合よりも注入液の伸びを大きく変化せしめ得 る。叉、土に対する注入に於て地上に逆境する場合は一般にその処置に非常に困るものであるが セメントーベントナイト比1:1の割合では伸びが少なくなり、この様に濃度を極めて濃くするこ とによって容易にその箇所のみの逆境を止めることが出来る。
(3)固胎が遅く且つ余り固くならないことは機械の掃除、手人を極めて楽にする。餌セメント のみの注入の場合は−孔完γする迄中絶することが出来ないが本混合注入に於てはかかる不便が
ない。
肛 結 論
ベントナイトはその持つ著しい膨潤性と乾燥後水に対する非可逆性によって他の粘土物質に比
.4
べて溶透抑制乃材料として最適である。使用に際してはセメントを分散剤として使用するのが艮 いが、その混合比によって体積膨張に大差を生する。
溶透減殺の効果は微量混合で直ちに表われる。原土が砂の場合、特に著しく表われる。
水に対する耐賦壊性も混合比の増大に伴って強化される。この点につき今後セメント比の増加 が如何に影響されるかを遼遠抑制試験と併行して試験すべく準備中である。佃叉混合物の耐圧試 験も同様な観点から行い更に安定性について種々吟味したく思っている。
グラウトの実用性は現場に於ける冥施試験の結果より大いに将来性があると考える。
遼遠抑制に関する研究 (101)
本研究は未だ緒についたばかりで不充分な点が甚だ多い。更に今後の追究の必要性を痛感して いる。
.