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奈良県産ツキノワグマの胃内容物分析の1例
著者 鳥居 春己, 高野 彩子
雑誌名 奈良教育大学附属自然環境教育センター紀要
巻 8
ページ 21‑22
発行年 2007‑03‑31
その他のタイトル Stomach contents of a bear killed in Nara prefecture
URL http://hdl.handle.net/10105/534
奈良県産ツキノワグマの胃内容物分析の1例
鳥居春己・高野彩子 (奈良教育大学)
Stomach contents of a bear killed in Nara prefecture
Harumi TORII and ㊥ako TAKANO
(Nara University of Education)
1.はじめに
ツキノワグマ(Urusus thibetanus)は近年になり九州からは棲息を示す確実な情報はなく、
絶滅した可能性が高く、現在では本州と四国に棲息する(阿部他, 1984)。しかし、四国山地 や紀伊半島などの個体群は絶滅の恐れのある地域個体群とみなされ(自然環境研究センター, 1993)、紀伊半島の推定生息数は1991年には137頭に過ぎなかった(若山・小舟, 2002)。 1994 年度からほ三重県・奈良県・和歌山県の紀伊半島3県では狩猟は自粛されている。しかしながら、
紀伊半島には彼らの棲息環境である天然林はわずかに残されているにすぎない(自然環境研究
センター, 1993)。
このような状況の中、奈良県上北山村で射殺された個体の胃内容物を分析する機会を得た。
情報のほとんど期待できない紀伊半島の個体であることから、 1例の分析結果であるが報告する。
冒内容物分析の機会を与えていただき、射殺までの経緯等をご教示いただいた奈良県庁森林 保全課の方々、上北山村猟友会員、自然環境研究センター黒崎敏文氏や昆虫類の同定をお願い
した橿原昆虫館中谷康弘氏に厚くお礼申し上げる。
2.試料と分析方法
分析に供した個体は2000年8月21日に奈良県吉野郡上北山村河合で射殺された雄である。
この個体は7月20日に同村河合において目撃され、その後10日間に数個の養蜂用巣箱に被害 を与え、その後も周辺に定着していることが知られていた。 8月18日には国道169号線脇で目 撃された後、 8月20日には人家に接近し、地元猟友会員により射殺された。体重57kg、犬歯
からの齢査定では17歳であった。
開腹後、胃内容物はすべて採取し、一旦80%エチルアルコール溶液に保存した。その後、
内容物を2mmメッシュの肺に入れ、アルコールを漣過してメスシリンダーに入れ、容積を量 った。さらに、ボイントーフレ‑ム法(Satoet.al.,2000)により、内容物を分析した。分析時 の交点数は422であった。
3.結果と考察
胃内容物はおおよそ1200ccの容積であった。内容物は表1に示したように大半がムネアカ オオアリ {Camponotus obscuripes)であった。ムネアカオオアリは比較的標高の高い地域に棲 息し、切り株などにコロニーを作る習性がある(安松, 1965)。胃から卵や蛸が検出されてい
ることから、当該個体がコロニーを襲ったことは明らかである。
当該個体は7月20日に目撃されてから、約10日間に数個の養蜂用巣箱を襲っていた(奈良 県森林保全課資料)。ツキノワグマは植物中心の雑食性であるが、春から夏にかけてはアリ類 やハチ類を好むことが知られている(高田・宮尾, 1978;鳥居, i99i;。これらのことは、
当該個体が夏期にアリ類やハチ類を好んで採食するという他地域の個体と同様の習性であった
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といえる。
その他にヒノキ樹皮や種不明の木屑、紐などが出現している。紀伊半島のツキノワグマはヒ ノキなど造林木の加害獣であるが(Watanabe, 1977)、胃からは混入したとみられる細分さ れたヒノキ樹皮や木屑が検出されており、ヒノキの切り株に営巣していたムネアカオオアリを 採食していた可能性が高い。
引用文献
阿部永・石井信夫・金子之史・前田喜四雄・三浦慎吾・米田政明. 1984.日本の晴乳類、東 海大学出版会、東京、 195pp.
Sato. Y., T. Mano and S. Takatsuki. 2000. Applicability of the point廿ame method for quantitative evaluation of bear diet. Wildlife Society Bulletin, 28(2) : 311‑316.
自然環境研究センター. 1993.平成4年度クマ類の生息実態等緊急調査報告書、 189pp、自 然環境研究センター、東京.
高田康司・宮尾羅雄. 1978.長野県中央山地におけるニホンツキノワグマの食性、晴乳動物 学雑誌, 8:40‑53.
鳥居春己. 1989.大井川上流域におけるツキノワグマの食性、日本林学会誌, 71 :417‑420.
若山学・小舟武司, 2002.紀伊半島におけるニホンツキノワグマ、森林防疫, (608) :9‑10.
安松京三. 1965.アリ科(朝比奈・石原・安松編)、原色昆虫大図鑑、 285‑286、北隆館、東京.
Watanabe, H. 1977. Damage to conifers by the Japanese black bear. 67‑70, Bear ‑Their Biology
and management一, in Paper of the Fourth International Conference on Bear Research and
Management, Bear Biology Association Conference series, (3) 375pp. U.S.
表1.奈良県上北山村で捕獲されたツキノワグマの胃内容物
ムネアカオオアリCamponotusobscuripes 成虫・桶繭 卵
ヽ ー ノ
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2
2
9 ハ r o r o 3
3
植物繊維(種不明) ヒノキ樹皮
木屑 紐
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ポイントフレーム法による
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