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雑誌名 教育実践研究指導センター研究報告

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(1)

メディアを活用した教育実習事前指導 −教卓実験 のビデオ作成によるマイクロティーチングの試み−

著者 松村 竹子

雑誌名 教育実践研究指導センター研究報告

巻 1

ページ 31‑38

発行年 1992‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10105/4482

(2)

松 村 竹 子

(化 学 教 室)

和文要旨

特設課程理科(化学)の教育実習事前学習を化学の専門科目の授業の中でヾ〔教卓実験のビデ オ制作によるマイクロティーチソグ〕として試みた。この試みの成果として、

教卓・演示実験技術の向上、教師としての話し方、説明の仕方、板書の仕方の向上、実験企画を 通しての能動的学習意欲(探求心、創造性)の向上、ビデオ撮影技術の向上等の教育実習事前指 導の教育内容を学習することが出来た。

Key word Visual Aid,Chemical Education l.はじめに

教員免許法の改正によって教育実習の事前事後指導が必修授業となり、奈良教育大学において もコソビュータとメディアの活用による授業の展開が検討された1)。

著者と化学科の3回生はこの3年間映像技術を活用し、高校及び大学初級向けの化学教卓実験 を企画し、ビデオ撮影を行なってきた。この取組みを教育実習の事前学習として活用するため、

これまでの経過をまとめて報告し、教育実習事前指導のケーススタディとして評価を行なった。

特設課程理科の教育実習は例年、学生の出身校で行なわれている。このため個別指導による実 習が多く、密度の高い指導に恵まれている。

一方、実習生の専門科目に於ける学力が教育実習の授業にそのまま反映されるため、高校の授 業内容や進度に関わって重大な問題を含んでいる。教育実習に先立って、自発的能動的な学習姿 勢の確立、専門に於ける基礎学力の深化、教授方法の訓練などの事前学習が必要である。

このような観点から、

1.教科内容についての理解度の深化(教育内容)

2.教授方法の企画(教育内容の選択、配列、時間配当)

3.教材提示方法の技術的修得(教授スキル)

を念頭において実験指導の事前学習をゆるい目的とした教卓実験のビデオ制作を行なった。

2.教育実習事前学習としての化学演示実験ビデオ制作の意義

高校化学の教科においては、実験による学習が化学概念の把握において重要な役割を果たすこ とは言うまでもない。化学演示実験ビデオ制作は、次の様な点で教育実習の事前指導に適してい ると考えられる。

*1つの実験テーマを設定して教卓実験を行なうことによって、化学の授業の教案作成、指導 方法を体験を通して学ぶ。

(3)

*実験のビデオ撮影によって、視覚教育技術を身につける。

*実験ビデオを見て、自己の教授法の客観的分析を行なう。

*実験ビデオの映写によって、相互に評価を行ない、実験技術の向上や教授方法における注意 点を明らかにする。

3.教卓実験ビデオ制作の展開方法

特理化学科3回生の無機化学実験(前期 過3時間)の後半および夏休みを利用して授業展開 を行なった。

この時期までに学生(実習生)の取得した専門の化学および実験の単位、および教育または教 育法の既修単位は表1の通りである。

これらの専門科目と教育関係の学力を下敷にして、企画、展開、評価を含んだ実験ビデオの制 作を課した。2人1組の斑毎に1つのテーマを選んでビデオ制作を行なった。テーマの設定は実 験書と高校化学の教科書を参考にして学生が行なった。ビデオ撮影は、β−ビデオカメラ(ソニー 製)およびⅥiSGX−2型ビデオカメラ(ビクター製)を用いて行なった。

表1 学生の既習単位

学   専    門    科    教 育 関 係 の 科 目

1

2

3 (前期 )

化学 (一般教 養 )、基 礎化 学 実験 教 育心 理学 、 青年心 理学

分析 化 学 I 教 育原 理 、理 科

無枚 化学 I 、 II 、分析 化学 II 、有 幾化 学 I 、 II 教 育法 I 、III

分析 化学 実験 、有 機化 学実 験 学 校経 営学 、 同和教 育 II 物理 化学 I 、構造 化学 I 、生物 化学 、化 学演 習

表2 教卓実験ビデオ制作の時間表 第1週(3時間)

第2〜4過(9時間)

(1回目)

(2回目)

(3回目)

(4回目)

第5〜6週

(2週、6時間)

第7過

実験計画とテーマ設定

2人1組の班毎に1つのテーマを選ぶ。テーマの設定は実験書と高校化学の 教科書を参考にして学生が行なう。実験書を参考にして実験計画をたて必要 な試薬や装置、実験手順をリポートし、教師の助言のもとに実験した。

予備実験

試薬や器具の準備と調整。

予備的な実験:実験書に沿って実験を行ない内容を理解する。

教卓実験の進めかたを考えた実験法の企画。

教卓実験とその批評。

教卓実験を行ない、ビデオ撮影をする。

ビデオの編集と評価

撮影したビデオを見て批評を行ない教卓実験を改良する。

再実験(1過、3時間)

再実験しビデオ撮影をする。

ビデオを上映し評価を行なう。

(4)

4.演示実験ビデオの題目(3年間)

平成1〜3年度までのビデオに制作された題名は次のとおりである。

A)錯体の溶媒抽出

B)自動ベル反応(時計反応)

C)硫化カドミウムを光電極とする光化学電池 D)色の変る錯体−CoZ+の錯体の構造変化 E)振動反応について

F)カメレオソエマルジョソ

G)洗剤について

H)濃淡電池と塩橋について I) ヨウ素の反応性

の 2NO22N20。の平衡に関する実験 K)アソモニアに関する実験

し)青銅の製造

M)鉄(II)イオソとクロム(III)イオソを使った二次電池 N)電気分解を用いない燃料電池の実験

0)振動反応 P)超伝導体の作成 Q) ヨウ素の酸化還元反応

R)色の変る錯体−Co2+の錯体の構造変化 S)Belousov−Zhabotinskii反応(空間振動)

T)ポリアニリソの合成とそのエレクトロミズムの観察

U)水質分析−モリブデソブルー法を用いたPO。3 ̄−Pの定量

Ⅴ)過酸化水素による銅の溶解 W)液体磁石(磁性液体)の調製

Ⅹ)水質分析−アソモニア性窒素の定量 Y)燃料電池

実験テーマの傾向

これらのテーマを分類するとつぎのようにまとめられる。

A:小学校から大学初級までの教科書や実験書に出てくる縦断的なテーマ I)ヨウ素の反応性

K)アソモニアに関する実験 Q) ヨウ素の酸化還元反応 B:高校の化学に即した実験テーマ

Ⅴ)過酸化水素による銅の溶解

J) 2NO2i±N204の平衡に関する実験 C:身近な化学物質や環境に関するテーマ

G)洗斉桐こついて

(5)

U)水質分析−モリブデソブルー法を用いたPO43 ̄−Pの定量

Ⅹ)水質分析−アソモこア性窒素の定量 D:化学教育教材

B)自動レベル反応(時計反応)

0)振動反応 E:色彩変化を伴う実験

F)カメレオソエマルジョソ

D)色の変る錯体−Co2十の錯体の構造変化 F:電池に関する実験

C)硫化カドミウムを光電極とする光化学電池

M)鉄(II)イオソとクロム(III)イオソを使った二次電池 H)濃淡電池と塩橋について

N)電気分解を用いない燃料電池の実験 Y)燃料電池

G:最近のトピックスに関連したテーマ P)超伝導体の作成

T) ポリアニリソの合成とそのエレクトロミズム

W)液体磁石(磁性液体)の調製

S)Belousov−Zhabotinskii反応(空間振動)

H:物質の製造に関するテーマ L)青銅の製造

5.教卓実験ビデオの評価 教師の評価

実験は高校から大学初級の程度のテーマである。これらの教卓実験の基礎となる化学的内容を どのように生徒に教授するかと言う点に着目して、全体の評価を行なった。

〔全般的批評〕

A)実験方法および実験技術

2回から3回の実験によって、実験自体の修得度が高くなった。

B)実験の構成および演示の方法

板書が活用された(ホワイトボードでなく、黒板の板書の方が見やすい。)

演示の方法は年度毎に上達したがまだ工夫の余地がある(試薬、ビーカーのラベリソグ等)

C)実験態度

最初は実験者個人の特有の癖が目立った。説明の間のア一、エー音は少なくなったが姿勢 にまだ問題がある。

E)実験を通して化学的内容の説明

全体を通して見ると内容把握と実験構成に個人差があった。

〔テーマ別批評〕

*実験が簡単で視覚的に捉えやすいテーマでは内容説明をもっと深化する必要がある。

(6)

*縦断的テーマに於いては化学的内容の説明に発展性が見られた。

*高校化学のテーマでは、化学的内容に説明に工夫が必要である。

*見近なテーマでは基本概念との組合せによって探求的学習への発展がみられたが企画において 工夫の余地がある。

*トピックスについては意欲的な取組みが多かったが実験的に難しいものもあり、実験が成功し なかった例もあった。化学的内容の説明には努力のあとが見られた。

*電池については多くの班がテーマとしてとりあげ、学生の探求心を惹き起こす題材である事が わかる。実験結果はあまり良好でなく電極、塩橋、連結、反応条件等でもっと工夫が必要であ る。

*色彩変化を伴う実験は視覚的に分かりやすく化学的内容の説明ともかみ合って題材として適当 であり、ビデオもよくまとまっていた。しかし、青〜赤紫の変化についてはカメラの色彩感度 が対応でき出来ず生実験のほうが良いことがわかった。

*物質の製造に関するテーマは青銅の製造の様子をドラフト内で行ない撮影したビデオは迫力が あり、ビデオ教卓実験の特性をいかした例の一つである。物質製造に関連したテーマは教卓実 験ビデオ制作のテーマとして発展が期待される。

〔学生の感想レポート(ほぼ原文どおり)〕

A)テーマの設定

5組の実験レポートを見て、題材は高校の化学の範囲内のものが殆どで、如何に教科書に沿い つつ分かりやすく興味をひくことが出来るかが最大のポイソトだと感じました。

例えば、私たちの実験の例は、石鹸という誰でも1日1度は目にする物質をただ見過ごすだけ ではなく、なぜ汚れが落ちるのか、なぜ泡立つのか、手に影響を与えないのか、あるいは成分は 何か、自分自身で作れないだろうか、  こういった好奇心を湧き立たせることが、高校化学教 育には必要であると思います。石鹸という題材を選んだのはそのためであり、また、自分達も本 当理解しているのかもっと深く調べてみたいと思ったからです。

B)実験の企画と実験内容について

そして、実験を行なうにあたって構想を練りましたが大きく3つの項目を分けることになり、

すべてを実験してみようと欲張ったがために、何のために実験をするのかという最大の目的を忘 れ、実験に見ていただいたように非常に内容の薄い、はっきりいって何を前でしているのか理解 出来ないものになりました。

この失敗を戒訓に第2回の実験について案を出し、行ないました。

結果は、1つの内容にしぼり、前後の関係に流れを持たせることに改善できたのですが、好奇 心を駆り立てるにはいたらなかったと思います。

C)実験態度

言葉も不明瞭で、手際も良いものではなく、一目で実験の主旨が把握出来るようなそんな実験 を目指したいと思います。私達の実験については、まだまだ改良すべき点が残されていると思い ます。

(7)

〔ビデオをみた学生の意見〕 (意見数)

*頼りがなく声が小さい。(2)

*目線が下に向きがち。(4)

*テーブルの上が混みあいすぎて整頓されていない。(1)

*色の変化などが見にくく紙を用いたり、対照物と並べてみる……などの工夫が必要である。

(5)

*結果を羅列するだけでなく、他に応用して出来る実験を紹介したり、実験を促したり、見てい るものに興味、関心を集めるようなまとめをする。(2)

*前もって実験のリハーサルをして必要な成功率の高い条件を見つけることも大切である。(2)

*板書をもっと活用して説明すればよかった。(2)

*説明の間のア一、エーが気になった。(2)

*説明が早すぎる。(1)

*演示方法に工夫が必要。(2)

*画面がぼけていたり、映したかたに工夫が必要。(3)

*反応式を示したり、意義や利用法、その他の説明がもっと必要。(6)

*よくわかった。(7)

*興味がわいた。(5)

*もっと実生活に関連したものにすれば面白いでは。(1)

*事前学習として大いに役立つ。(3)

*実験技術や教え方が身に付く。(6)

*自分の欠点をみく見直して、改善できる。(9)

5.メディアを活用した教育実習事前指導のカリキュラムとしての展開

前述した授業展開を1学期30時間として行なうと6時間の余裕がある。この6時間を高校化学 に必須の基礎化学概念、実験方法の学習にあて、次の様な展開を考案した。

1.教卓実験ビデオ制作を中心にした事前学習

時   間   割

第1週〜第2週 第3週

第4週〜第6週(9時間)

第7週〜第8週(2過、6時間)

第9週〜第10過(3時間)

高校化学に必須の基礎化学概念、実験方法の学習(サブテキ スト:高校教科書)

実験計画とテーマ決定 予備実験、実験とビデオ撮映 ビデオの編集と再実験 ビデオ再編集と評価(全員)

これまで制作したビデオを導入として活用した事前学習の授業展開を次のように考えてみた。

(8)

2.ビデオを導入として活用した事前学習

時   間   割

第1週(3時間)

第2週

第3週〜第4週 第5週〜第6週 第7週〜第8過 第9週〜第10週

制作ビデオを見て批評する。

演示実験における教授方法を考える。教授方法におけるメディアの役割活用 を具体例で学習する。(板書、ポスター、オーバーヘッド、コソピューター等)

教卓実験の企画(実験を含む)

班毎に教卓実験を行ない批評する。

教卓実験の再実験とビデオ収録 高校教科の単元についての基本学習

7.結

既存の無機化学実験のカリキュラム展開の中で〔教卓実験のビデオ作成によるマイクロティー チソグの試み〕に関する24時間の実験カリキュラムを展開することが出来た。3年間の実施結果 をまとめ、メディアを活用した教育実習事前指導のカリキュラムを展望した。

この試みは次のような点に特色がある。

*教卓・演示実験技術の向上

*教師としての話し方、説明の仕方、板書の仕方の向上

*実験企画を通しての能動的学習意欲(探求心、創造性)の向上

*ビデオ撮影技術の向上

一方、教育実習の事前学習として次の様な事項が重要である。

1.高校の化学における基本的化学の内容(概念)

2.全体の指導計画と配当時間

3.一テーマ(単元)の指導計画と実験の位置付け 4.一〜二時間の授業計画(指導案)と実験

説明、発間、討議と実験の関係

これらの全体的な事前学習の中での〔教卓実験のビデオ作成によるマイクロティーチソグの試 み〕を活用し、自発的学習を惹起する事前指導の在り方について今後更に検討したい。

謝  辞

教卓実験ビデオ制作を通して、学生は自己を客観化して、教育者として必要な様々な準備に目 を向ける事が出来るようになった。また、新しい実験テーマにふれ自己の探求心を惹起し、内在 する創造性を制作過程に発揮する事ができた。教育実習の事前指導のカリキュラムとして今後発 展するには、まだ検討すべき点が多くあるが、今回、教卓実験のビデオ作成によるマイクロティー

チソグの試みが教師と学生が協同した授業展開で行なわれ成果を見た事は自主的授業のプロトタ イプとして意義深い。夏休みの時間をあてるなど、熱心にこの試みに参加した化学科3回生(平 成元年度−3年度)に感謝する。

この報告について、全体的な教育実習の事前指導の観点からコメソトして頂いた小野拡男助教 授に謝意を表する。

(9)

この研究は平成2、3年度教育方法改善経費および平成3年度奈良教育大学教育実践セソター 研究費の補助を受けて行なわれた。なお、制作したビデオは一部貸出可能である。

文  献

1)奈良教育大学学生便覧 P12

参照

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