〈 論 説 〉
知 的財 産担 保法制 の最 近 の動 向(2)
2s知 的財産 担 保 法 制 の最近 の動 向(2)
一 英 国 ・米 国 に お け るWBSの 展 開 を 中 心 と して 一
中 島 正 寿
目 次
1.は じ め に
2,事 業 の 証 券 化 一WholeBusiness Securitization(WBS)‑
2‑1総 説
2‑2英 国 型WBS
(1)浮 動 担 保 お よ び レ シ ー バ ー シ ッ プ (receivership)の 概 要
(2)管 理 レ シ ー バ ー シ ッ プ ー 担 保 実 行 手 続 か ら倒 産 手 続 へ 一
(3)英 国 型WBSの 基 本 構 造 2‑3米 国 型WBS
(1)UCC第9編 の 制 度 に 関 す る 概 要 (2)米 国 連 邦 破 産 法 と 「自 動 的 停 止
(AutomaticStay)」
(3)米 国 型WBSの 基 本 構 造
2‑4小 括
3.わ が 国 に お け るWBS組 成 の 可 能 性
3‑1序 説
3‑2WBS組 成 に 関 す る 法 制 上 の 問 題 (DWBS組 成 に か か る 担 保 法 制 上 の 留 意 点 (2)WBS組 成 に か か る 倒 産 法 制 上 の 留 意 点
3‑3小 括
4.WBSと 知 的 財 産
4‑1序 説
4‑2知 的 財 産 に お け るWBST'ussauds 事 例 一
5.結 び に か え て
1は じめ に
近 年 、 欧 米 で は"事 業 全 体"を 証 券 化 の 対 象 と す るWholeBusiness
の
Securitization(以 下 、WBSと 略 記)と い う金 融 技 術 が 活 用 さ れ て い る 。 通 常 の 証 券 化 な い し 流 動 化 取 引 に 活 用 さ れ る ス ト ラ ク チ ャ ー は 、 オ リ ジ ネ ー タ (originator:原 保 有 者)が 保 有 す る資 産(Asset)の 中 か ら将 来 キ ャ シ ュ ・フ ロ ー を 生 み だ す 蓋 然 性 の 高 い も の を 選 定 し、 当 該 資 産 の 信 用 力 の み に も とつ い
21
て これ を構 築 す る 。これ に 対 し、WBSに お い て は個 々 の 資 産 価 値 で は な く事 業
自体 の 継 続 に よ る収 益 性 とい う点 に着 目 して ス トラ クチ ャ リン グ を図 る もの で
3)
あ り、 そ の プ ロセ ス に お い て は後 述 す る よ うに担 保 ・倒 産 制 度 が大 き な影 響 を 与 え て い る。
WBSは 、1990年 代 の 中 頃 に 英 国 の 老 人 ホ ー ム の 案 件 を は じ め と して 、 パ ブ (publichouse)、 ホ テ ル、空 港 、知 的 財 産 な ど多様 な財 産 に応 用 され て い る一
4)
方 、WBSの 組成 にお い て は各 国 が 通 常 の 証 券 化 を共 通 の ペ ー ス に そ れ ぞ れ の 担 保 ・倒 産 法 制 を と り こん で これ を構 築 して い る。 通 常 、 英 国 のWBSが そ の 典 型 例 と して 説 明 され るが 、 そ の ス トラ ク チ ャ ー を大 別 す る と、 後 述 す る よ うに真 正 売 買 を前 提 と した構 造 か 否 か とい う基 準 で 、 英 国 型 と米 国 型 に分 け る こ とが で き る。 か か る基 準 だ け に よれ ば、 わ が 国 は後 者 に属 す るが 、 担 保 ・倒 産 法 制
につ い て 顕 著 な違 い が み られ る こ とか ら単 純 に 同一 視 は で きな い。
現 在 、 わ が 国 の 証 券 化 市 場 は債 権 や 不 動 産 、 そ して 知 的 財 産 へ とそ の 対 象 を 拡 大 して い る。 そ の な か で 、WBSは 、 い わ ゆ る小 泉 改 革 が 目指 す 公 益 法 人 の統 廃 合 や 民 営 化 な ど経 済 の 活性 化 に貢 献 す る可 能 性 を もつ と期 待 され る一 面 も あ る だ け に 、 通 常 の 証 券 化 に つ ぐ次 世 代 の ス ト ラ ク チ ャ ー ド ・フ ァ イ ナ ン ス
(StructuredFinance:「 仕 組 み 金 融 」 ともい わ れ る)手 法 と して も注 目 され る。
しか し、 それ は通 常 の証 券 化 と同様 、 巧 妙 な ス トラ クチ ャ リン グ を要 す る こ と に加 え、 知 的財 産 を そ の 対 象 とす る場 合 は 当該 財 産 に由 来 す る特 殊 な諸 問 題 も 視 野 に入 れ て組 成 しな くて は な らず 、 そ う した 取 り組 み に つ い て は端 緒 につ い
s)
た ば か りで あ る とい っ て よ い 。 も っ と も、近 年 わ が 国 で も、 「 有 料 道 路 事 業 の証
7)
券 化 」 の事 例 が 現 れ てWBSに 対 す る関 心 は 急 速 に広 が っ て い る と こ ろで あ る。
筆 者 は 、 前 稿 に お い て わが 国 に お け る知 的 財 産 の 通 常 の証 券 化 ・流 動 化 取 引
8)
に つ い て考 察 した が 、 この続 編 と して、 本 稿 で は 今 後 の 知 的 財 産 の証 券 化 取 引 に お け る展 開 な い し可 能 性 とい う視 点 か らWBSを 中心 に考 察 す る も ので あ る。
そ の 素 材 と して 、1990年 代 にWBS形 態 の 発 祥 を み た 英 国 と、 これ を受 容 して 独 自のWBSを 形 成 して い る米 国 、 双 方 に お け る担 保 ・倒 産 法 制 の し くみ に つ い て 着 目 し、どの よ う に して両 国 がWBSを これ らの制 度 の 上 に構 築 して い るの か と い う点 につ い て 論 及 す る。 そ して、 これ を参 照 しな が ら、 わ が 国 にお け るWBS 一 般 の 問題 点 に つ い て取 り上 げ た後 、知 的 財 産 に 対 す るWBSの 可 能 性 と課 題 に
9)
つ い て 若 干 の コ メ ン トを 加 え て い き た い とお も う。
知 的財産担 保法制 の最近 の動 向(2)
272.事 業 全 体 の 証 券 化OWholeBusinessSecuritization(WBS)一
2‑1総 説
企 業 の 資 金 調 達 活 動 は 、 コ ー ポ レ ー ト ・フ ァ イ ナ ン ス と ア セ ッ ト ・フ ァ イ ナ
IQ)
ンス の2つ に大 別 され 、 そ れ ぞ れ に証 券 化 の方 途 が 用 意 され て い る。 それ は、
文 字 通 り証 券 発 行 の価 値 を"企 業"に 見 出 す の か 、 あ るい は"資 産"'に 見 出 す の か 、 とい う判 断 に裏 付 け られ た 金 融 技 術 とい う こ とに な る。 こ う した 証 券 化 の メ ル クマ ー ル は将 来 の キ ャ ッ シ ュ ・フ ロ ー を確 保 で き る の か ど うか とい う点 に か か っ て お り、 と りわ け後 者 につ い て近 年 多 く見 られ る証 券 化 事 例 は そ う し
ユリ
た工 夫 の証 左 で あ る とい って よい。 なお、知 的財産 の証券化 事例 につ い て は第 4章 で説 明 す る。
証 券化 は不動産 や金 銭 な どの多様 な資産 が生 み出す 収益 を裏 付 けに して証券
12)
を発 行 し、 投 資 家 か ら直 接 資 金 を調 達 す る こ とで あ るか ら、 本 稿 が 取 り上 げ る WBSも また そ の コ ン テ ク ス トに お い て 工 夫 され た 一種 の 金 融 技 術 で あ る こ と
ヱの
は疑 う余 地 もな く明 瞭 で あ る。 しか も、 それ は単 に そ の よ うな証 券 化 の 延 長 線 上 に位 置 づ け られ るだ けで は な く、(と くに 英 国 で 顕 著 な)既 存 の担 保 法 制 に通
14)
常 の 証 券 化 技 術 を 結 び つ け て い る 点 に 当 該 形 態 の 特 徴 を 窺 う こ とが で き よ う。
WBSは 、 担 保 付 コ ー ポ レ ー ト ・フ ァ イ ナ ン ス と ア セ ッ ト ・フ ァ イ ナ ン ス の 中 間 的 な 性 格 を も っ た 資 金 調 達 方 法 で あ る と い わ れ る 。 そ の 特 徴 は 、 後 者 の 方 に み られ る ス トラ ク チ ャ ー ド ・フ ァ イ ナ ン ス の 構 造 を 応 用 す る一 方 で 、オ リ ジ ネ.̲.̲
タ(ま た は ス ピ ン ・オ フ 〔spin‑off〕 等 に よ りオ リ ジ ネ ー タ か ら 対 象 事 業 の 移 転
ヱ ラ
を 受 け た 者)に 資 産 ・運 用 に 関 す る コ ン トロ ー ル を 留 保 し て い る 点 に あ る 。 通 常 の 証 券 化 に お い て は 、 そ の 引 当 て と な る 資 産 をSPV(SpecialPurpose
i6)
Vehicle)に 移 転 し倒 産 隔 離(BankruptcyRemote)の 処 置 を とるがVVBSの 場 合 、 「 継 続 す る企 業 」(90ingcOnCern)の 価 値 を確 保 す る こ とに主 眼 を置 い て い るか ら当該 引 当 て 資 産 を移 転 しな い で 事 業 の 信 用 力 を 隔 離 す る仕 組 み を採
I7)
用 して い る 。 も っ と も 、 次 節 以 下 で 説 明 す る よ う に倒 産 法 制 の 違 い か ら英 国 型 WBSと 米 国 型WBSで は仕 組 み が 一 様 で は な い 。英 国 型WBSは 、判 例 で 認 め られ た 浮 動 担 保 制 度(floatingcharge)と1986年 英 国 倒 産 法(InsolvencyActof
l986,c.45)上 の 管 理 レ シ ー バ ー シ ッ プ(administrativereceivership)を 組
み 合 わ せ た 特 殊 な ス キ ー ム で あ り、 倒 産 手 続 下 に お い て も担 保 権 者 に 強 力 な 地 位 を与 え る構 造 とな っ て い る。 これ に 対 し、米 国 型WBSに お い て は米 国 連 邦 破 産 法 上 す べ て の倒 産 手 続 に適 用 され る 同法362条 の規 定 に よ り、担 保 権 者 の権 利 行 使 は倒 産 手 続 の 開 始 に よ って 大 き く制 約 さ れ て い る。
ま た、 通 常 の典 型 的 な 証 券 化 にお い て は倒 産 隔 離 措 置 を講 じたSPVへ の真 正
18)
売 買(truesale)の 確 保 が ス キ ー ム の 上 で 重 要 に な る と こ ろ 、英 国 型WBSは 前
I9)
記 倒 産 法 制 の も とで これ を 前 提 と しな い仕 組 み を可 能 に して い る。 一 方 、 米 国 型WBSは 、通 常 の証 券 化 ス キ ー ム と同様 、あ くまで も真 正 売 買 が観 念 され る"事 業"の 譲 渡 、 あ るい は事 業 で 利 用 され る"資 産"の(売 買 等 の形 態 に よ る)譲
20)
渡 とい う従 来 の 手 法 を用 い て独 自の形 態 を構 築 す る に至 って い る。 そ の意 味 で はわ が 国 も また 、 米 国 と同 様 英 国 の よ う な倒 産 法 制 を有 して い な い か ら、 米 国 の 事 例 は 実 際 にWBSの 組 成 を検 討 す る に あ た っ て 大 い に参 考 とな ろ う。
以 下 、1990年 代 にWBS形 態 の 発 祥 とな っ た 英 国 の 当該 法 制 の し くみ と、 これ を独 自 の 担 保 ・倒 産 法 制 下 に取 り込 ん だ 米 国 の ケ ー ス を と りあ げ る。
2‑2英 国 型WBS
英 国 で は 、前 述 した よ うに1990年 代 の 中 頃 か ら多 様 なWBSの 事 例 が 現 れ て お り、 そ の ス キ ー ム構 造 は浮 動 担 保 制 度 と管 理 レシ ー バ ー シ ッ プ を組 み合 わせ る こ とに よ っ て これ を構 築 して い る。 した が っ て 、英 国 型WBSを 理 解 す る に は両 制 度 の し くみ を まず 概 観 す る こ とが 必 要 で あ る。な お、本 稿 で英 国 とい う場 合 、
21)
イ ン グ ラ ン ドお よ び ウ ェ ー ル ズ に限 定 して 用 い る。
(1)浮 動 担保 お よ び レシー バ ー シ ッ プ(receivership)の 概 要
英 国 は、 浮 動 担保 制 度 と これ にか か る担 保 権 実 行 の 最 も一 般 的 な法 的 手 段 と して レ シ ー バ ー シ ッ プ とい う特 殊 な制 度 を有 して い る。
浮動 担 保 は 、通 常 の 固 定 担 保(fixedcharge)と は 異 な り、(債 務 者 た る)会 社 の現 在 お よび 将 来 の(い わ ゆ る浮 動 状 態 に あ る)全 財 産 を対 象 と して 設 定 さ れ るエ クイ テ ィ(equity)上 の担 保 で あ る。 その 特 徴 的 な性 格 は、 以 下 に挙 げ
22)
る特 定 事 由が発 生 す る まで 自由 な財産 の処 分 がで きる こ とにあ る。
当該 対 象財産 の浮動 性 に終止 符 を うち、固定 担保 に転化 す る こ とを講 学上"結
23)
晶 化 す る(crystalize)"と 呼 ぶ が 、 そ の 事 由(特 定 事 由)と して4つ の ケ ー ス
知 的財産 担保法 制 の最近 の動 向(2)
29が あ げ られ る。 す な わ ち、 ① 会 社 が 清 算 手 続 に 入 っ た 場 合 、 ② 会 社 が 事 業 を停 止 した場 合 、 ③ 浮 動 担 保 権 者(社 債 権 者)が レ シ ー バ.̲̲̲(receiver)を 任 命 し た場 合 、④ そ の他 特 約 で 定 め た 事 由 が 発 生 した 場 合 、に結 晶 化 し、(当 該 結 晶 化
24)
の時点 で会 社 の所 有 す る財 産 が)固 定担保 にシ フ トす る。 ただ し、浮動 担保 は 原則 と して特定 の財産 を目的 とす る財産 よ り常 に"後 順 位"に 位置 づ け られ る ので、通常 浮動 担保権 者 は会社 の土 地や施 設 等 の固定 資産 に"固 定 担保"を 、
また現在 お よび将来 におい て変 動 す る財産 につ いて は"浮 動担保"を それ ぞれ
25)
設 定 し、 当 該 優 先 弁 済 権 の 確 保 を 図 っ て い る。
会 社(債 務 者)が 債 務 を履 行 しな い場 合 は 、 上 述 した レシ ー バ ー シ ッ プ に よ りこれ を満 足 させ る。 当 該 レ シ ーバ ー の任 命 につ い て は 以 下 の2つ の 方 法 が あ る。 す な わ ち、 ① 浮 動 担 保 権 者(社 債 権 者)が 裁 判 所 に訴 え を提 起 して これ を 任 命 す る方 法 と、 ② 社 債 発 行 条 件 な い し社 債 信 託 証 書 の記 載 事 項 に した が っ て 自 ら レシ ー バ ー を任 命 す る方 法 で あ る。 もっ と も、 前 者 は レシ ー バ ー の 権 限 が 裁 判 所 の監 督 ほ か 厳 しい制 約 が 課 せ られ るた め 、 後 者 の方 法 が 一 般 的 に用 い ら
26)
れ る よ う に な って い る。
任 命 され る レ シ ー バ ー は、 担 保 財 産 の管 理 、 賃 料 や 利 息 の 取 り立 て お よび 収 益 の分 配 を行 う権 限 の み を もち 、 会 社 の事 業 の 一 部 あ るい は全 部 を維 持 ・継 続 す る な どの 経 営 権 限 まで は も っ て い な い 。 そ こで 、 の ち に 当 該 権 限 も併 せ もっ た"レ シ ーバ ー兼 マ ネ ー ジ ャ ー(receiverandmanager)"の 形 態 が 一 般 化 す る よ うに な っ た 。 そ れ は 、 次 に説 明 す る管 理 レ シ ー バ ー シ ップ成 立 の 法 的 枠 組
27)
み に影 響 を あ た え て い る。
(2)管 理 レシ ー バ ー シ ッ プー 担 保 実 行 手 続 か ら倒 産 手 続 へ 一 管 理 レシ ー バ ー シ ップ は、1985年 倒 産 法(lnsolvencyActofl985,c.65)に
よ り導 入 さ れ 、1986年 現 行 倒 産 法 に 継 承 さ れ た 。 そ れ は 同 法 に 会 社 管 理 (administration)と い う再 建 型 企 業 倒 産 手 続 が 導 入 され た こ とに伴 っ て 新 設
2$)29}
され た制度 で あ り、 かか る倒 産 法的性 格 が正式 に付与 され た に もかか わ らず 、 債権 者全 体 のた め に集 団 的債 務処 理 を行 う手続 にはな って い ない。換 言 す る と
3d)
担 保 目的 物 の 相 当 な換 価 時 期 に つ い て 考 慮 しな い の で あ る。 そ して 、 倒 産 法 改
正 の プ ロセ ス に お い て 前 記 レシ ー バ ー シ ッ プ兼 マ ネ ー ジ ャ ー の 機 能 が こ れ に 求
め られ た 結 果 、 管 理 レ シ ーバ ー は(任 命 者 で あ る〉 浮動 担 保 権 者 の 利 益 の た め
31)
に 担 保 目的 物 を換 価 す る こ とが 最優 先 の 義 務 とな っ て い る。 そ の た め 、 同 法 は 管 理 レシ ー バ ー の 定 義 を と くに 設 け て 従 来 の レ シ ーバ ー と明 確 に 区別 し、加 え て これ に 倒 産 処 理 実 務 家(insolvencypractitioner)の 資 格 を要 求 す る に至 っ
32)
た 。 し た が っ て 、 管 理 レ シ ー バ ー は(倒 産 手 続 の 典 型 と も い え る)会 社 清 算 手 続(windingup)に お け る 清 算 人(liquidator)と 同 様 、倒 産 法 上 の 目 的 を 達
33)
成 す るoffice‑holderと 定 義 され な が ら特 殊 な 位 置 づ け とな っ て い る。
この よ う に、 英 国 で は コー ポ レー ト ・フ ァイ ナ ンス お よ び倒 産 処 理 の両 局 面 に お い て 浮 動 担 保 権 者 に管 理 レ シ ー バ ー シ ッ プ を通 じた 強 力 な 地 位 を与 え る結 果 に な っ て い る よ うで あ る。
(3)英 国 型WBSの 基 本 構 造
上 記(1)(2)を ふ ま え て 、英 国 に お け る典 型 的 な ス トラ クチ ャー を説 明 す る
34?
と以 下 の 通 りに な る。まず 、(a)会 社 の 事 業 の う ち、(将 来 の キ ャ ッシ ュ ・フ ロー を見 込 め る)優 良 な 事 業 を証 券 化 の 対 象 と し これ を継 続 して行 う こ とが 大 前 提 とな る。 な お 、 当該 事 業 会 社 にお い て 利 用 され る資 産 は そ の ま ま保 有 され て い る。 つ ま り、 証 券 発 行 体 で あ るSPVに は これ を移 転 しな い の で 、 こ こ に通 常 の 証 券 化 で い う"真 正 売 買"は 観 念 され な い。(b)証 券 発 行 体SPVを 設 立 し、 当
35)
該SPVか ら事 業 会 社 に対 し担 保 付 融 資 を行 う。 そ の 際 、 当 該 融 資 を担 保 す るた め に、 あ るい はSPVが 発 行 す る社 債 等 を 担 保 す るた め に当 該 事 業 会 社 が 有 す る
"全 て の 資 産"な い し"実 質 的 に全 て の資 産"に つ い て
、英 国法 上 の 前 記 固 定 担
36)
保 お よ び浮 動 担保 を設 定 す る。 な お 、 当 該 担 保 付 融 資 契 約 に お い て は、 資 産 の 維 持 ・管 理 の た め の 管 理 レシ ー バ ー の選 任 お よ び事 業 継 続 に か か る一 定 の 制 約
37)
事 由(covenants)を 規 定 す る。(C)事 業 会 社 が 倒 産 した場 合 の た め 、 バ ッ ク ア ヅ プ ・サ ー ビサ ー 等 が選 任 され る。 も っ と も、 当初 よ りバ ッ ク ア ッ プ ・サ ー ビサ ー が 準 備 され て い る必 要 は な い が 、 格 付 け に影 響 が及 ぶ 可 能 性 は あ る よ う
381
で あ る。(d)一 般 に 、SPVレ ベ ル に お い て信 用 補 完 措 置 、 流 動 性 補 完 措 置 の 手
39)
当 て が 施 さ れ る。
以 上 の ス トラ クチ ャー に は、通 常 の 証 券 化 と同様 、将 来 の キ ャ ッシ ュ ・フ ロ ー を維 持 す る方 法 に最 も特 色 が あ る。WBSの 場 合 は その 源 泉 が"資 産"で は な く
"事 業"で あ るの で
、英 国 で は 当該 事 業 を維 持 、管 理 す るた め に(1986年 現 行 倒
産 法 上 の)管 理 レ シ ーバ ー をお き、 浮 動 担 保 権 者 は これ を通 じて 倒 産 手 続 の 影
知 的財産 担 保法制 の最近 の動 向(2>
31響 を 回 避 し な が ら担 保 目 的 資 産 を コ ン トロ ー ル す る こ と が で き る。 そ の 意 味 で は 、 バ ッ ク ア ッ プ ・サ ー ビ サ ー と 同 様 の サ ー ビ シ ン グ業 務 を 管 理 レ シr..一 バ ー は
の
行 っ て い る と見 る こ と もで き よ う。 ま た、 事 業 会 社 が 倒 産 しな い こ とが 第 一 義 で あ るか ら、 オ リジ ネ ー タ等 に一 定 の 裁 量 を残 しな が ら も上 述 した コペ ナ ン ツ
(covenants)の 設 定 が 重 要 で あ り、資 産 処 分 、追 加 借 入 また は他 の業 務 参 入 に 関 す る制 限、 あ る い は0定 の 財 務 水 準 を充 た して い る こ とな ど、 詳 細 な制 約 事 項 を お くこ とが 必 要 で あ る。
わ が 国 の法 制 と較 べ る と、 上 記 の よ うな 英 国 に み られ る担 保 法 制 お よ び倒 産 法 制 は特 殊 で あ り、か か る法 制 の も とに組 成 され るWBSも 証 券 化 ス キ ー ム と し て は一 般 的 で は な い と見 られ る 向 き もあ っ た が 、 次 節 で み る よ うに 英 国 と異 な る法 制 を有 した米 国 に お い て も独 自のWBS形 態 を構 築 して キ ャ ッ シ ュ ・フ ロ ー一
ラ
の獲 得 に成 功 して い る。 以 下 、 米 国型 のWBSに つ い て 説 明 す る。
2‑3米 国型WBS
米 国 の 法 制 は、 周 知 の 通 り英 国 の 植 民 地 下 に あ る と き か ら コ モ ン ロ ー (commonlaw)を は じめ とす る英 国 法 制 の 多 大 な る影 響 を うけ て い る。と こ ろ が 、包 括 的 な動 産 担 保 法 制 と して広 く知 られ る統 一 商 事 法 典 第9編(Uniform
CommercialCodeArticle9;以 下 、UCC第9編)や 現 行 の 米 国 破 産 法(The
43)
BankruptcyReformActofl978)に お い て は それ ぞ れ 英 国 に見 られ な い 米 国 特 有 の法 制 度 を確 立 した 。 両 制 度 は証 券 化 ス トラ クチ ャー の柱 とな る法 制 で あ
るか ら、 そ の特 徴 を概 観 した後 米 国 型WBSの 形 態 につ い て論 及 した い。
(1)UCC第9編 の 制 度 に 関 す る 概 要
ま ず 、 米 国 の 担 保 権 を 概 括 す る と、 わ が 国 と 同 様 、 合 意 に よ る 担 保 権 (consensuallien;い わ ゆ る約 定 担 保 権)と 、 これ に よ らな い 担 保 権(概 ね 法
44)
定 担 保 権 に分 類 され る もの)の2つ に大 別 され る。
前 者 に 該 当 す るUCC第9編 は、 「 担 保 付 取 引(SecuredTransaction)」 とい う タ イ トル の も と に集 合 物 を ふ くむ 動 産 や 債 権 の 担 保 取 引 に つ い て も包 括 的 に 規 定 し、簡 便 な 手 続 に よ る担 保 権 の 設 定 を 重 視 した 制 度 設 計 を行 って い る。1999 年 の 法 改 正 で は、 銀 行 預 金 勘 定(depositaccounts)や 商 事 不 法 行 為 請 求 権
(commercialtortclaim)に か か る担 保 権 設 定 の合 意 につ い て も新 た に 適 用 対
45)
象 とした。 また、 同編 は、 担保 契約締 結 時 以降 に取 得 す る財産(前 記、 商事 不 法行 為 請 求権 は除 く)に つ いて も担 保 目的物 に含 まれ る旨を担 保 契約書 に記 載 して お けば別個 の契 約 を締 結 しな くて も当該 財産 上 に有 効 な担保権 が成 立 す る と規 定 す る。 つ ま り、浮動 担保 につ いて の規 定 で あ るが、将 来取得 物件 につ い
X61
て は か か る特 則 を設 け て倒 産 手 続 を 回避 す る例 外 を つ くっ た 。
この よ う にUCC第9編 は対 象 財 産 を 拡 大 す る一 方 、有 担 保 権 者 や 善 意 の買 主 に対 抗 す るた め に一 定 の 手 続 を も とめ る"担 保 権 の 完 全 化(perferction)"な
47)
る概 念 を規 定 して い る。 そ の 方 法 に は 動 産 の種 類 に応 じて4つ あ り、 対 象 財 産
48)
に 対 す る 担 保 権 の 有 効 な 成 立(attachment)を 前 提 と し て 、 ① 融 資 説 明 書 (financialstatement)の 登 録 担 保 目 的 物 の ② 「占 有 」 あ る い は ③ 「 支 配 」 を"取 得"す る こ と一 の い ず れ か の 方 法 を 必 要 と す る 。 た だ し、 ④ 担 保 権 の 成
49)
立 を も って 自動 的 に完 成 す る もの も あ る。 これ らの 方 法 の 先 後 に よ って 担 保 権
5D)
の"優 劣"を 決 定 す る こ とが 一 般 原 則 とな る。 担 保 権 設 定 者 が 債 務 を履 行 しな い と き は、 担 保 権 者 に代 物 弁 済 また は換 価 処 分 の い ず れ か の方 法 を と る こ とを
51)
認 め て い るが 、1999年 の 法 改 正 で 前 者 の 方 法 を一 層 容 易 に す る見 直 しを行 っ た 。 以 下 に説 明 す る米 国 連 邦 破 産 法 の規 定 は担 保 権 実 行 に 密 接 な 関 係 が あ るが 、 対 象 財 産 の 拡 大 と担 保 手 続 の 簡 便 化 を推 進 す るUCC第9編 の 方 針 に 少 な か ら ず 影 響 を与 え る結 果 とな っ て お り注 意 を要 す る。(2)で は、 この 点 を 中 心 に説 明
す る。
な お 、不 動 産(realproperty)に つ い て 付 言 して お く と、担 保 権 と して 譲 渡 抵 当(mortgage)が あ るが 、各 州 の 法 制 に委 ね られ て お りそ の 内 容 は一 様 で は
な い 。
(2)米 国 連 邦 破 産 法 と 「自動 的 停 止(AutomaticStay)」
米 国 で は 、 破 産 に関 連 す る法 律 が 社 会 ・経 済 的 背 景 を色 濃 く反 映 しな が ら推 移 して い る。 当初 、 米 国 で も前 述 した 英 国 の レシ ー バ ー シ ッ プ を概 ね 踏 襲 した が 、(連 邦 破 産 法 に お い て)会 社 再 建 手 続 きが 整 備 され て くる と、次 第 に それ は 存 在 意 義 を 失 っ た 。 倒 産 手 続 き と して の レ シ ーバ ー シ ッ プ に つ い て は現 行 法 に
52)
規 定 され て い な い 。1800年 に 当 時 の 英 国 破 産 法 を モ デ ル に は じ め て 制 定 され た
米 国 連 邦 破 産 法(BankruptcyActofl800,c.19)は 、 そ の後 何 度 も制 定 と廃
止 を繰 り返 して き た 。 そ の 主 た る理 由 は、 同法 が 当 初 商 人 破 産 主 義 を とっ た た
知 的財産担 保法 制 の最 近 の動 向(2)33
53)
め(農 民や 手工業 者等 の)債 務 者 の保 護 に欠 けて いたか らで あ る とい う。 そ こ で 、州 は そ う した債権 者 ・債 務 者 間の対 立 を調 整 す るた め に債務 者 救済 を 目的
64)
とす る州 法 を そ の 都 度 立 法 して 連 邦 法 を補 完 す る役 割 を担 っ て きた 。
1978年 に改 正 され た 現 行 連 邦 破 産 法 は か か る背 景 の も とに成 立 して お り、 同
らの
法362条 の 「自動 的停 止 」 も債 務 者 救 済 を反 映 した 規 定 建 て とな っ て い る。す な わ ち 、 自動 的 停 止 とは 自己 申 し立 て ま た は債 務 者 以 外 の者 の 申 し立 て に よ る と を 問 わ ず 、倒 産 開 始 の 申 し立 て が あ れ ば債 権 回 収 の た め の 一 切 の 行 為 を 自動 的
56}
に停 止 す る とい う機 能 を もっ 。 そ して 、 当 該 規 定 は担 保 権 実 行 を 中 止 させ る こ とに よっ て債 務 者 企 業 の再 建(更 生)を 図 り、 これ に よっ て 実 現 され る ゴー イ ン グ ・コ ンサ ー ンの価 値 を利 害 関 係 人 に 配 分 す る こ とを 目的 と して い る。 しか し、 それ は反 面 に お い て 担 保 権 者 に 損 害 を与 え るお そ れ も あ り、 円 滑 な 金 融 を 阻 害 す る こ と に もな りか ね な い 憾 み が あ っ た。 そ こで 、 か か る担 保 権 者 を保 護 す るた め に債 務 者 に 対 して代 担 保 等 の 提 供 を 求 め る 「 適 切 な保 護 」(adequate
57)
protection)に つ い て も議 論 され 、 これ を 同 法361条 に規 定 して い る。
米 国連 邦 破 産 法 の 立 法 過 程 に お け る議 論 に お い て は 、UCCが 制 定 さ れ て 以 降 、 浮 動 担 保 の 利 用 が促 進 され た結 果 、 債 務 者 の財 産 す べ て に 担 保 が 設 定 され て い る こ と も多 く、 代 担 保 と して 提 供 す る財 産 す らな い とい う状 況 も当 時 は み
5$)
られ た よ うで あ る。 つ ま り、 それ は 「自動 的停 止 」 を 申 し立 て る債 務 者 が す で に資 金 繰 りに窮 して い る とい う こ とで あ り、 そ の結 果 、 担 保 権 者 の方 もか か る 債 務 者 か ら 「 適 切 な保 護 」 を うけ る こ とが 困難 に な る、 とい う ジ レ ン マ を 生 じ る こ とに な っ た。 か くして 米 国倒 産 法 制 に お い て は、 企 業 再 建 の 見 込 み 、 担 保 権 実 行 の 停 止 に よ る債 務 者 の 保 護 、 担 保 権 者 の保 護 とい う三 者 関 係 の バ ラ ンス
を とる こ とに苦 慮 して い る。
以 上 の よ うに、動 産 に つ い て はUCC第9編 に よ っ て 包 括 的 な担 保 立 法 を実 現 した が 、 倒 産 手 続 の場 面 で は上 述 の よ うな 連 邦 破 産 法 上 の 自動 的 停 止 に よ る影 響 を視 野 に 入 れ な くて は な らず 、 必 ず し も担 保 権 者(な い し浮動 担 保 権 者)が 債 権 回収 を ス ム ー ス に 行 え る とは言 い 切 れ な い 事 情 も存 して い る。 な お 、 米 国
の場 合 、連 邦 破 産 法541条 が 真 正 売 買 に つ い て 明 定 して お り、証 券 化 ス キ ー ム を
59)
構 築 す る際 に は これ を 前 提 に ス トラ クチ ャ リ ン グ を行 う こ とが 不 可 避 とな る。
(3)米 国 型WBSの 基 本 構i造
上 記(1)(2)を ふ ま え て 、 米 国 に お け るWBSの 典 型 的 な ス ト ラ ク チ ャ ー を 、
60}
要 約 す る と以下 の よ う に な る。(a)オ リジ ネ ー タ(本 来 の 事 業 会 社)が 、 新 設 事 業 会 社 を"子 会 社"と して設 立 し、(b)当 該 会 社 に対 して 、"事 業"ま た は事 業 で 用 い られ る"資 産"が 「 売 買 」 等 の形 態 で 譲 渡 され る 〔 真 正 売 買 〕。続 い て (c)オ リジ ネ ー タ は証 券 発 行 体SPVを 設 立 し、(d)こ れ に対 して も、 新 設 事 業 会 社 の 株 式 の 全 部 あ るい は一 部 が譲 渡 され る 〔こ こ に お い て も真 正 売 買 〕。(e) SPVは 投 資 家 か ら募 っ た 資 金 を新 設 事 業 会 社 に 対 して 担 保 付 融 資 を行 う一 方 、
(f)新 設 事 業 会 社 は オ リジ ネ ー タ に業 務 委 託 また は経 営 委 任 を行 う。(g>な お 、 当 該 事 業 会 社 が 倒 産 した 場 合 の た め、 バ ッ ク ア ッ プ ・サ ー ビサ ー 等 の選 定 を行 い 、(h)外 部 ま た は 内部 の流 動 性 補 完 措 置 は講 じて お く。
以 上 の ス トラ クチ ャー か ら分 か る こ とは、 米 国 の 場 合SPVも ま た オ リジ ネ ー
61)
タ の"子 会 社"と 構 成 して い る点 に最 大 の特 徴 が あ る。 した が って 、 新 設 事 業 会 社 と同様 、SPVも オ リジ ネ..̲̲タの倒 産 か ら影 響 を受 け な い よ うな ス キ ー ム を 構 築 して い る 〔 前 記(b)(d)〕 。米 国 で は通 常 の証 券 化 に お い て もか か るス トラ ク チ ャ ー を採 用 す る こ とが 多 い よ うで あ るが 、 それ は す べ て の倒 産 手 続 に適 用 され る連 邦 破 産 法 上 の"自 動 的 停 止"条 項 の 影 響 に配 慮 した 結 果 で あ る こ とは 明 らか で あ ろ う。0見 す る と、UCC第9編 に よ り動 産 担 保 制 度 を促 進 させ る0 方 で 、上 述 した よ うな 制 約 が あ る こ とはWBSに 限 らず 証 券 化 一 般 の 障 壁 の よ う
に見 え な い こ ともな い が 、実 際 に 英 国 型WBSの よ うに 担保 権 者 に対 す る保 護 を 図 らな くて も多 数 の 証 券 化 事 例 が報 告 され て い る こ とか ら、 米 国 の証 券 化 と り わ けWBS形 態 に 示 唆 を得 る とこ ろ は大 きい 。
2‑4小 括
本 章 で は 、 英 国 型 と米 国 型 に お け るWBSの 組 成 につ い て 明 らか に した 。 WBSの 法 的構 造 に っ い て は 、両 国 と もに 固 有 の 担 保 法 制 と倒 産 法 制 を反 映 し た 特 殊 な 内容 を も っ て い る。 英 国 の場 合 は、 担 保 権 者(浮 動 担 保 権 者)に 強 力
な権 限 を 与 え るア プ ロー チ(以 下 、 英 国 型 ア プ ロ ー チ)を と って 当該"事 業"
と そ こか ら生 ず る"キ ャ ッ シ ュ ・フ ロ ー"に つ い て維 持 、 管 理 して い る。 これ
に対 し、米 国 の場 合 は、連 邦 破 産 法362条 の 「自動 的 停 止 」条 項 に か か る影 響 を
知的財産 担保 法制 の最近 の動 向(2)
35回 避 す る た め 「 真 正 売 買 」 を メ ル ク マ ー ル と した ア ブ,Q一 チ(以 下 、 米 国 型 ア プ ロ ー チ)を とっ て い る 。
た だ し、 英 国 型 ア プ ロ ー チ に つ い て は 、2002年11月 に 浮 動 担 保 権 者 の 能 力 を
62)
制 限 す るEnterpriseActが 制 定 さ れ て お り、 そ の 動 向 に は 注 意 し な くて は な ら な い 。 ま た 、 米 国 型 ア プ ロ ー チ に つ い て も 、 近 年 「自 動 的 停 止 」 に 関 す る 濫 用
ss>
問題 が 浮 上 して お り議 論 とな っ て い る。 そ もそ も 自動 的 停 止 条 項 の趣 旨 は 、 担 保 権 実 行 の制 限 に よ る債 務 者 の 再 建 な い し更 生 に あ っ た 。と こ ろで 米 国 型WBS は 、 当該 条 項 にか か る影 響 の 回 避 とい う前 提 の も とに 設 計 して い る の で 、 今 後 か りに前 記 「自動 的 停 止 」 に つ い て 見 直 し担 保 権 者 の 方 の権 限 を強 め る方 針 転 換 を図 る とす れ ぼ、 そ の ス トラ クチ ャー の 修 正 を 必 要 とす るか も しれ な い 。 つ ま り、か か る意 味 で は米 国型WBSが 英 国 型 ア プ ロ ー チ に近 づ く可 能 性 も あ る と い う こ とで あ る。
この よ うに 、現 在 、両 国 のWBSは 事 例 を徐 々 に積 み 重 ね て い る とは い え、 そ れ を支 え る担 保 な い し倒 産 法 制 の動 向 に よ っ て は 当 該 ス トラ ク チ ャ ー形 態 の 修 正 が起 こ り う る こ と も予 想 され るの で 、 必 ず し も これ を固 定 的 な もの と して み
る こ とは適 当 で な い とお もわ れ る。
な お 、わ が 国 に お け るWBS組 成 の 観 点 か らい えば 、後 述 す る よ うに 真 正 売 買 を前 提 とす る米 国 型 ア プ ロー チ に近 い と もい え る反 面 、 動 産 担 保 法 制 や 会 社 更 生 手 続 等 にお い て 齪 齢 して お り、 単 純 な 比較 の 問 題 とは な らな い 。 そ こで 、 以 下 わ が 国 にお け るWBS組 成 の可 能 性 に つ い て検 討 す る。
3.わ が 国 に お け るWBS組 成 の 可 能 性
3‑1序 説
本 章 で は、知 的 財 産 に お け るWBSの 可 能 性 に つ い て 検 討 す る前 に、わ が 国 の 担 保 ・倒 産 法 制 下 に お け るWBS組 成r般 の 問 題 点 につ い て と りあ げ る。
証 券 化0般 に共 通 す る法 的 問 題 と して 、真 正 売 買 、倒 産 隔 離 、(金 銭 債 権 の 証 券 化 にか か る)債 権 譲 渡 に 関 す る将 来 債 権 ・対 抗 要 件 の 問 題 お よ び サ ー ビ サ ー に関 す る問題 が あ げ られ る。 こ の うち、 債 権 譲 渡 に関 す る問題 につ い て は 筆 者
64)
が前稿 で一 部論 じて い るが、証 券化 問題 の中核 とな るの は真正 売 買 と倒産 隔 離
で あ り、サ ー ビサ ー の 問題 は そ の よ うな処 置 を行 う際 、あ るい は行 っ た後 の フ ォ ロー ア ッ プ を 目的 と した 付 随 的 行 為 で あ る とい え る。
わ が 国 にお い てWBSを 組 成 す る場 合 、将 来 キ ャ ッシ ュ ・フ ロー を 生 み 出 す"事 業"を(真 正 売 買 と観 念 され る譲 渡 に よっ て)新 設 事 業 会 社 に譲 渡 し、 オ リジ
ネ ー タ の 倒 産 か ら の 隔 離 お よ び 発 行 体SPVか らの 隔 離 とい うス キ ー ム を 講 じ て 事 業 の信 用 力 を確 保 す る こ とが 重 要 な課 題 とな る。 そ れ は資 産 を 対 象 とす る 場 合 で も同様 で あ るが 、WBSの 場 合 は か か る構 造 に加 え て 、担 保 法 制 と倒 産 法
制 の コ ラ ボ レー シ ョ ン に よっ て キ ャ ッシ ュ ・フ ロ ー の確 保 を可 能 にす る側 面 を 通 常 の 証 券 化 以 上 に有 して い る。 この点 につ い て は前 章 で 英 国 と米 国 に お け る WBSの 組 成 につ き それ ぞ れ検 討 す る中 で 、当該 組 成 に お け る上 記 両 法 制 の 重 要 性 と位 置 づ け を改 め て 確 認 で きた で あ ろ う。
以 下 、わ が 国 固 有 の 法 制 の も とで 組 成 され るWBSの 可 能 性 と諸 問題 につ い て 検 討 す る。
3‑2WBS組 成 に関 す る法 制 上 の 問 題
WBSの 組 成 可 能 性 につ い て も、担 保 法 制 と(清 算 型 と再 建 型 を含 む)倒 産 法 制 、 相 互 間 の 関 連 を明 らか にす る こ とが 重 要 で あ る。 以 下 、 これ らの法 制 に 関 係 す る限 度 で い くつ か の問 題 点 を簡 潔 に と りあ げ る。
(DWBS組 成 にか か る担 保 法 制 上 の 留 意 点
前 述 した英 国 と米 国 の両 担 保 法 制 に み られ る共 通 点 は、 多様 な種 類 の 財 産 価 値 を 包 括 的 に把 握 す る と い う方 針 に お い て 一 応 の成 功 を得 て い る と考 え られ
る。 す な わ ち、 英 国 は浮 動 担 保 とい う 「 法 形 式 」 に よ っ て これ を可 能 に す る̲̲̲̲.
方 、米 国 で はUCC第9編 が 債 権 担 保 の 機 能 を重 視 した 「 法 規 整 」 に よ っ て プ レ
65)
キ シ ブル に対 処 して い る。
これ に対 し、 わ が 国 に お い て も、 その よ うな 包 括 的 な担 保 法 制 が な い わ け で は な く、周 知 の 通 り財 団 抵 当 制 度 や 企 業 担 保 制 度 等 が 存 在 して い た 。 と りわ け、
66)
後 者 は英 国 の浮 動 担 保 を モ デ ル と して 立 法 され た とい う経 緯 が あ る。と こ ろが 、 両 制 度 は と も に適 用 範 囲 が 限 定 され て い る う え機 能 上 の 欠 陥 も指 摘 され る な
ど、 コー ポ レー ト ・フ ァイ ナ ンス とい う側 面 か らは ほ とん ど期 待 され て い な い
&7)
の が 現 状 で あ る。
知 的財産担保 法制 の最 近 の動 向(2)
37か か る意 味 で は、 前 述 した 英 国 と米 国 の例 に も見 られ る よ う に、 わ が 国 の WBSの 組 成 に お い て も財 産 を 包 括 的 に 把 握 す る何 らか の 法 整 備 を行 う こ とが 望 ま しい 。
とこ ろで 、2003年1月 に経 済 産 業 省 が 「 企 業 法 制 研 究 会(担 保 制 度 研 究 会)報 告 書 一 『 不 動 産 担 保 』か ら 『事 業 の 収 益 性 に着 目 した 資 金 調 達 へ 』」(以 下 、報
告書)を 公 表 して お り、 これ に よ る と、わ が 国 のWBSを 促 進 させ る と考 え られ
68)
る内 容 が い くつ か 提 案 され て い る。 す な わ ち、 ① 債 務 者 不 特 定 の 将 来 債 権 譲 渡 を容 認 し、 これ に対 応 した公 示 制 度 をっ くる こ と、 ② 株 式 の 担 保 化 に関 す る制 度 の 改 善 、③ 包 括 的 な 資 産 の 担 保 化 の創 設 、に つ い て 指 摘 して い る。 こ の うち、
69}
① は近 年 の 債 権 譲 渡 法 制 の 充 実 を一 層 図 る もの とい え る。 また 、 後 の 二 点 にっ い て は英 国 の浮 動 担 保(上 記 ③)と 管 理 レ シ ー バ ー(上 記 ②)の 制 度 に近 づ い た 内 容 を もっ て い る。 す な わ ち 、② は債 権 者 に よ る株 式 を通 じた 財 産 な い し経
70)
営 の コ ン トロ ー ル を示 して お り、 そ れ は英 国 の 管 理 レシ ー バ ー と似 た機 能 を も
71)
つ 。 実 現 す れ ぼ 、 わ が 国 の場 合 はサ ー ビサ ー が 当 該 機 能 を果 た す と思 わ れ る。
また 、 ③ は従 来 の 財 団 抵 当制 度 が"一 定 事 業 者"に だ け利 用 を 限 定 す るの に対 して 、 これ を"一 般 事 業 者"に 開 放 す る と提 案 して い る ほ か、 一 定 の 設 定 者 の 保 有 す る全 資 産 が 担 保 対 象 とな る制 度 の 創 設 を謳 っ て い る こ とな どか ら、 担 保
目 的 物 の特 定 性 とい う点 にお い て 英 国 の 浮動 担 保 概 念 に近 い こ とに な ろ う。
今 後 の動 向 が注 目 され るが 、報 告 書 の提 案 が 実 現 す れ ぼ わ が 国 のWBSは 英 国 型 に接 近 す る こ とに な るか も しれ な い。 しか し、 現 在 の担 保 法 制 の 枠 組 で 担 保 の 取 得 を考 え る と、 不 動 産 につ い て は抵 当権 を設 定 で き るが 、 動 産 に つ い て は 英 国 の 浮 動 担 保 に相 当 す る担 保 制 度 は今 の と こ ろ存 在 しな い。か か る意 味 で は、
わ が 国 に お け るWBSの 可 能 性 は、 英 国 型 ア プ ロ ー チ よ り も真 正 売 買 を メ ル ク マ ー ル とす る米 国 型 ア プ ロ ー チ の 方 が な じみ や す い と もい え る。 今 後 、 米 国 の UCC第9編 の よ うな 担 保 法 制 を参 考 とす る方 向 性 も選 択 肢 の1つ と して 模 索
ア ラ
され て よ い 。
(2)WBS組 成 に か か る倒 産 法 制 上 の留 意 点
わ が 国 の倒 産 法 制 に お い て は英 国 の よ うな 担 保 権 者 を保 護 す る規 定 を もた な
い の で、 米 国型 ア プ ロ ー チ と同 様 、 真 正 売 買 を基 本 に した ス トラ ク チ ャー を と
ら ざ る を え な い 。 前 稿 で もふ れ た よ うに 、 倒 産 隔 離 の 前 提 とな る真 正 売 買 は、
WBSに 限 らず 証 券 化 一 般 に共 通 す る重 要 な テ ー マで あ る。
こ こに"法 律 上"検 討 され る 「 真 正 売 買 」 とは、 当 該 対 象 資 産 を オ リジ ネ ー タ か らSPVへ 移 転 す る取 引 行 為 が 倒 産 手 続 の 上 で 譲 渡 担 保 等 の"担 保 取 引"と
73)
して 処 理 さ れ な い こ とを い う。
わ が 国 の場 合 、WBSに 関 連 す る倒 産 法 制 と して 破 産 法 、民 事 再 生 法 お よび 会 社 更 生 法 の諸 規 定 に 留 意 して お く必 要 が あ る。
まず 、 破 産 ・民 事 再 生 手 続 に っ い て は、 そ の組 成 に お い て 実 体 法 上 の 影 響 を 与 え る こ とは少 な い と考 え られ る。 す な わ ち、 破 産 法95条 お よび 民 事 再 生 法53 条2項 に よれ ぼ 、 双 方 の法 律 の 下 で 担 保 権 者 は それ ぞれ 手 続 外 で の"別 除権"
の行 使 を債 務 者(こ の場 合 、 有 限 会 社)に 対 して 認 めて い る。 もっ と も、 それ は無 制 限 な もの で は な く適 正 な換 価 が 行 わ れ る よ う に、 担 保 目的 物 に 対 して 破 産 管 財 人 のi提示 請 求 権 お よ び評 価 権(破 産 法 第195条1項 ・2項)を 認 め、 ま た 破 産 管 財 人 に よ る受 戻権(第197条1項14号)に っ い て も規 定 して い る。民 事 再 生 法 に お い て も再 生 債 務 者 等 が 裁 判 所 の許 可 を得 て 「 別 除権 の 目的 の 受 戻 し」
をす れ ば、当該 別 除権 を消 滅 させ る こ とが で き る(民 事 再 生 法 第41条1項9号)。
また 、 同 法 は再 生 債 務 者 の 事 業 な い し経 済 生 活 の 再 生 を意 図 して 相 当 期 間 の モ ラ ト リア ム を与 え るた め 、裁 判 所 が 担 保 権 実 行 の 中 止 を命 じ る こ と もで き る(同
ア4}
法31条)。
これ に対 し、(株式 会 社 に適 用 され る)会 社 更 生 法 はWBSの 組 成 に影 響 を 及 ぼ す こ とが 予 想 され る。 す な わ ち 、 担 保 目的 財 産 が 更 生 担 保 権 に認 定 され る と、
当 該 更 生 計 画 に拘 束 さ れ る(同 法 第47条1項)の でSPVの 把 握 す る資 産 価 値 に 影 響 を 与 えて しま う。 また 、 会 社 更 生 手 続 で は、 手 続 開 始 決 定 後 、 担 保 権 者 が 更 生 担 保 権 者 と して 当該 手 続 の 中 に取 り込 まれ るた め、 個 別 的権 利 の 行 使 は 中 止 さ れ る(同 法 第24条1項2号 、50条1項)。 当該 手 続 は米 国 連 邦 破 産 法 の 「自 動 的 停 止 」条 項 に類 似 して い る よ うに もみ え るが 、(担 保 権 者 に対 して)同 条 項
の よ うな厳 しい 内容 ま で 有 して お らず 、 これ と比 較 す れ ば弱 い規 定 建 て とな っ て い る。
な お 、 譲 渡 担 保 権 者 は更 生 担 保 権 者 と してi扱わ れ る との 判 断 を示 した判 例 と
して 最 判4L4.28が あ るの で 、 実 務 上 広 範 に利 用 され る譲 渡 担 保 に つ い て も留 意
しな くて は な らな い 。
知 的財産 担保 法制 の最近 の動 向(2)
39以 上 の こ とか ら、 今 後 、 証 券 化 一 般 に お け るテ ー マ と して は、 現 行 倒 産 法 制 の も とで 、 と くに更 生 担 保 権 と認 定 され な い よ うな ス キ ー ム を構 築 す る こ とが
zs)
肝 要 と な ろ う。
3‑3ノ 」、 括
前 款 で は 、WBS組 成 にか か るわ が 国 の 主 要 な 担 保 法 制 と倒 産 法 制 にっ い て取 り上 げた 。 まず 、 前 者 につ いて は従 来 か ら民 法 上 の担 保 物 権 の ほ か 、 財 団 抵 当 制 度 な どの特 別 法 が 用 意 され て い る に もか か わ らず 、 制 度 上 の 不 具 合 に よ っ て ほ とん ど利 用 され て い な い 。 わ が 国 に お け るWBSの 組 成 を視 野 に 入 れ た 場 合 、 不 動 産 に つ い て は抵 当権 の設 定 が 通 常 で あ ろ うが 、 動 産 に つ い て は英 国 や 米 国 の よ うな 包 括 的 な 動 産 担 保 法 制 を もた な い の で 検 討 す る余 地 が あ る。
ま た 、 後 者 に つ い て は、 い わ ゆ る通 常 の証 券 化 に よ る手 法 と同様 、 倒 産 隔 離 と真 正 売 買 が 主 要 な テ ー マ とな ろ う。 それ は、 前 記 米 国 型 ア プ ロ ー チ と同 じ方 向性 を と るわ けだ が 、 わ が 国 の倒 産 法 制 を前 提 とす れ ば オ リジ ネ ー一タが 倒 産 し た 場 合 に お け る更 生 担 保 権 の 認 定 に注 意 し なが らス トラ クチ ャー を構 築 す る必 要 が あ る。 無 論 、SPV自 体 の 倒 産 に つ い て も、 これ に備 え て 財 務 制 限 事 項 な ど の コベ ナ ン ツや トリガ ー 事 由発 生 時 の 対 処 につ い て 契 約 で 規 定 しお くな どの 予 防 措 置 を講 じ て お か な くて は な らな い。
な お 、 昨 年 経 済 産 業 省 か ら発 表 され た 報 告 書 は上 記 担 保 法 制 の 不 備 を意 識 し た 改 善 案 とな っ て お り、それ が 実 現 す る とWBSを 活 用 した資 金 調 達 法 に も弾 み を つ け る こ とに な ろ う。
以 上 の よ う に、WBSの 組 成 に お い て は主 に(そ の 国 の有 す る)担 保 法 制 と倒 産 法 制 の シ ス テ ム に よ る と こ ろ が大 き く、 現 状 の 法 制 度 の も とで 工 夫 を して 構 築 す るほ か は な い 。WBSは 「 資 産 」価 値 にで は な くこれ を 内包 す る 「 事 業 」価 値 の継 続 に よ る収 益 性 に視 座 を置 い て い るか ら、 資 産 自体 に有 す る性 質 に 左 右 され に くい メ リッ トが あ る。 か か る意 味 で は 、 従 来 の 知 的 財 産 担 保 融 資 で 指 摘 され て きた 知 的 財 産 特 有 の 性 質 一 た とえ ば 、 無 体 性 な ど一 に 由 来 す る価 値 評 価 の 困 難 性 な どの諸 問 題 にふ れ ず に、 当面 予 定 す る キ ャ ッシ ュ ・フ ロ ー の 確 保
を可 能 に す る こ とが 期 待 され る。
な お 、 知 的 財 産 の価 値 評価 に お け る問 題 に つ い て は、 近 年 一 部 の 金 融 機 関 に
77)
お い て 当 該 評 価 の シ ス テ ム づ く りの 開 発 が 進 ん で お り、実 用 段 階 に 入 っ て い る。
以下 、 知 的 財 産 にお け るWBSの 有 効 性 に つ い て 検 討 す る。
4.WBSと 知 的 財 産
4‑1序 説
わが国 の知 的財産 担保 融資 は徐 々 にその事例 が増 えて い る と ともに、近 年 日 本政策 投資 銀行 が設 立 され た こ とに よって 当該 融資 に対 す る積 極 的 な取 り組 み
もみ られ る よ うにな った。欧米 と同様 、 通常 の証券 化 につ いて も映画 ・娯 楽産 業 を中心 に年 々進展 が み られ たが 、昨年 は経 済産 業省 の主導 の も とに特 許 の証
78)
券 化 第1号 の 事 例 も報 告 され て い る。 今 後 の 知 的 財 産 の 証 券 化 取 引 に一 層 の 期 待 が 寄 せ られ て い る とこ ろ で あ る。
前 稿 で は従 来 の 知 的 財 産 権 担 保 融 資 の 問 題 に加 え て 、 そ の 証 券 化 ・流 動 化 取 引 に お け るス キ ー ム とそ の 法 的 留 意 点 に つ い て 論 及 した が 、 そ こで 明 ら か に な っ た課 題 は本 稿 の テ ー マ とす るWBSに お い て も同様 で あ る。そ して 、新 た な 証 券 化 形 態 で あ るWBSが か か る課 題 に対 して どの よ う に ア プ ロー チ し、そ して
ク リア で き る の か 、 注 目 され る。
そ こで 、本 章 で は第2章 で 検 討 した英 国 型 と米 国 型 に み られ るWBS形 態 の議 論 を ふ ま え て 、 わ が 国 の 担 保 ・倒 産 法 制 に 由来 す る特 殊 な 問 題 を視 野 に 入 れ な が ら、 知 的 財 産 に お け るWBSの 可 能 性 につ い て 論 及 した い とお も う。
4‑2知 的 財 産 に お け るCBSYussauds事 例 一
従 来 か ら知 的 財 産 権 に つ い て は他 の財 産 と異 な り、 無 体 性 、 法 的 安 定 性 の 欠 如 、 処 分 の 困難 さ とい う性 質 を有 して い る こ とか ら、 担 保 等 の 取 引 対 象 と して
の
はハ ー ドル の 高 い財 産 で あ る と説 明 され て きた 。 しか し、 これ らの うち"処 分 の 困難 さ"に つ い て は前 稿 で も取 り上 げ た よ うに 、 あ らゆ る資 産 を均 質 化 して 資 金 調 達 を行 う"証 券 化"手 法 の 活用 に よ って 、 これ に適 応 す る方 途 を多 少 な
80)
り と も見 出 した とい え る。
しか し、 知 的 財 産 担 保 融 資 の 場 合 と同様 、 か か る知 的 財 産 の証 券 化 に お い て
も障 害 にな っ た問 題 は、 ひ と り知 的 財 産 権 だ け を相 手 方(こ の 場 合 はSPV)に
知 的財産 担保 法制 の最近 の動 向(2)
41移 転 して も これ を 活用 す る こ とは難 しい とい う こ とで あ る。
知 的財 産 権 を活 用 す る場 合 、 当該 知 的財 産 権 と(そ の利 用 に お い て)必 要 不 可 欠 な 周 囲 の 動 産 、 ノ ウハ ウ な どの 無 形 資 産 、 さ ら に は これ に従 事 し た開 発 者 な どの 人 材 が 、 トー タ ル で 存 在 して こ そ 当該 価 値 が 十 分 に発 揮 され る もの で あ
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る。 知 的 財 産 担 保 融 資 や 資 産 に着 目 す る通 常 の証 券 化 取 引 に お い て は 、 これ ら に つ い て 詳 細 な契 約 を締 結 して お け ぼ 対応 で き る と もい え るが 、 煩 環 な手 続 を 必 要 とす るな ど契 約 当事 者 に負 担 をか け る結 果 とな ろ う。
と こ ろが 、本 稿 で 見 て きた よ うにWBSの 場 合 は"事 業 全 体"を 包 括 的 に証 券 化 す る こ とに よ り(無 論 、 上 記 の よ うな 事 項 を意 識 して ス トラ ク チ ャー を組 成 す る こ とは 当 然 と して)、 個 々 の資 産 価 値 だ け に拘 泥 しな い事 業 の ゴ ー イ ン グ ・
コ ンサ ー ン ・バ リュ ー の 上 か ら対 処 を す る こ とが 可 能 で あ る。
そ の リー デ ィ ン グ ケ ー ス が 、1998年 英 国 で 実 現 したTussaudsGroupに よ る
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初 のWBS事 例 似 下 、Tussauds事 例)で あ る 。TussaudsGroupはMadame
Tussaudの 蝋 人 形 で 有 名 で あ る が 、 そ の 他 に も テ ー マ パ ー ク 、 レ ジ ャ ー な ど多 くの 事 業 を 手 が け る 国 際 的 な 企 業 で あ る 。 当 該WBSの 組 成 に お い て は 、 そ う し た 複 雑 に し て 多 角 的 な 事 業(thecomplexityanddiversificationof
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business)を 拠 り ど こ ろ と し て 当 該 ス ト ラ ク チ ャ ー一を 構 築 して い る。
Tussauds事 例 は 知 的 財 産 を 引 当 て に し たWBSと し て 注 目 さ れ る ほ か 、 レ ジ ャ ー 資 産(leisureassets)を 引 当 て に し た そ れ と し て も は じ め て 実 現 し た こ
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とで 注 目 され た 。か か るWBSの 組 成 に お い て最 も重 視 され た こ とは、Tussaud の 有 す る資 産 に対 して 積 極 的 か つ 柔 軟 に マ ネ ジ メ ン トや 投 資 を行 え るス トラ ク チ ャー づ く りで あ っ た 。 そ の 種 類 と価 値 は 多 岐 に わ た っ て お り、 通 常 の 証 券 化 で は か か る対 応 を取 れ な い こ とが 予 想 され る こ とか ら、 キ ャ ッ シ ュ ・フ ロ ー の
見 込 み に つ い て も 予 測 が 困 難 で あ る と考 え た よ うで あ る 。TussaudsGroupが
担 保 資 産 の 対 象 と し た の は 、ロ ン ド ン の"MadameTussaud蝋 入 形 館"や ア ル トン ・タ ワ ー 等 の 著 名 な 有 形 資 産 の ほ か 、 商 標 、 意 匠 、 著 作 権 や ソ フ ト ウ ェ ア の よ う な 知 的 財 産 で あ り、 そ の 他 ラ ス ベ ガ ス や ニ ュ ー ヨ ー ク で 出 店 を 予 定 し て
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い る も の に つ い て も こ れ に 含 め る な ど、 そ れ は 国 際 的 な 規 模 に 及 ん だ 。 そ こ で
Tussauds事 例 で は 、 ヨ ー ロ ッパ で 一 般 的 に み られ る担 保 付 ロ ー 一ン の ス ト ラ ク
チ ャ ー(securedloanstructure)を ペ ー ス に 、 上 記 事 業 財 産 を 一 括 して 担 保
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を設 定 し、 併 せ て 浮 動 担 保 も これ に設 定 した。
か か るWBSの ス トラ ク チ ャー に よ り、 新 規 事 業 展 開 の 資 金 調 達 に成 功 した Tussauds事 例 の意 義 は、 ① 上 記 の よ う な知 的 財 産 を含 む複 雑 多 様 な 財 産 を基
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礎 と した"事 業"、 お よび② 世 界 各 地 で 展 開 す る国 際 的 な 事 業 、 とい うケ ー ス で あ っ て もWBSの 手 法 で これ らを い わ ぼ"1個 の担 保"と してパ ッ ケ ー ジ化 す る
こ とに よっ て 、所 期 の 目的 通 りの資 金 調 達 を 可 能 に した こ とで あ ろ う。
そ こで は知 的 財 産 を担 保 目的 と した場 合 に当 該"財 産 の不 安 定 さ"か ら必 然 的 に惹 起 され る諸 問 題 が ス トラ クチ ャー を構 築 す る際 に も障 害 と して過 大 に現 れ る こ とな く、 これ を 活用 す る"事 業"の 中 に包 摂 され る こ とに よっ て 、 か か るデ メ リ ッ トを緩 和 させ る こ とが で き る。 た だ し、 知 的 財 産 権 自体 の権 利 の確 実 性 を保 全 す る こ とに つ い て はWBSの 組 成 に お け る大 前 提 で あ るか ら、この コ
ンテ ク ス トに い う障 害 で は な く当然 に整 備 して お くべ き こ とで あ る。
欧米 で はTussauds事 例 をモ デ ル と して 、 知 的 財 産 がWBSを 含 む証 券 化 一般
ss)
に お い て 担 保 に供 さ れ る"通 常 の 財 産"と して期 待 され る よ う に な っ て お り、
そ の 一 層 の 進 展 が 予 想 され る。
5.結 び に か え て
わが 国 の担 保 法制 の歴 史 は、社 会経 済 の動 向の なかで 噴 出 して きた矛盾 を特 別法 に よ る対症療 法 で手 当て して きたの で、担保 法 一般 として は整合 性 の ない
so)