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ロシ アの年金 制度 改 革

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ロシ アの年金 制度 改 革(小 崎)95

ロ シ アの年 金 制 度 改 革

小 崎 晃 義

は じ め に

2001年1月1日 か ら ロ シ ア で 新 しい年 金 制 度 が ス タ ー一ト した 。

この 新 年 金 制 度 の 特 徴 は,基 礎 部 分,保 険 部 分,積 立 部 分 とい う3層 構 造 を 持 つ こ とで あ り,賦 課 方 式 と積 み 立 て 方 式 を合 わ せ た統 合 制 度 で あ る こ と で あ る。

果 た して この 改 革 は,90年 代 の市 場 経 済 移 行 の プ ロ セ ス の 中 で,貧 困 状 態 に 置 き去 りに され て き た 年 金 生 活 者 の状 況 を,改 善 す る こ とが で き るの で あ ろ うか 。 そ の 疑 問 に答 え るた め に,本 稿 で は,新 しい年 金 制 度 を概 観 し,そ の 可 能 性 を考 察 して み た い。

1.旧 年 金 制 度 の 概 要 ソ ビエ ト時代 の年 金 制 度

ロシア革命 以前 の帝 政 ロシア時代 に も,国 家 に よる年金 制度 が存在 したが, それ は特 定 の職業(国 家 官僚,鉄 道 員,一 部 の工業 労働者 な ど)に 限定 され て い た1。

ソ ビエ ト政権 樹 立後,政 府 は全般 的 な不足 の状況 下 で も,労 働 者 の社 会保 障 に対 して相 当の注意 を払 って いた。大 部分 の労働 者 や職 員 に年 金 の給 付 は 始 まった のは,1920年 代 にはす で に開始 され た。 しか し,そ の制 度 は非 常 に

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複 雑 に細 分 化 され て お り,統 一 的 な年 金 制 度 が 形 成 され る ま で に はか な りの 長 い 時 間 を 要 した。 ソ連 に お い て 統0的 国 家 年 金 法 」 が 制 定 され た の は 1956年 で あ る。ま た,「 コル ホ ー ズ 員 へ の 年 金 と補 助 法 」が制 定 され た の は, さ ら に遅 く,1964年 で あ っ た 。

ソ連 の 年 金 制 度 の 最 大 の特 徴 は,一 一定 の 労 働 歴 を持 つ す べ て の 労 働 者 は, 年 金 を 受 け取 る権 利 を 有 して い た とい う こ とで あ る。 ま た,ソ ビエ ト時代 の 年 金 受 給 年 齢 は比 較 的 低 く,労 働 歴20年 以 上 の 女 性 は55歳,労 働 歴25年

以 上 の 男 性 は60歳 と定 め られ て い た 。 さ ら に,重 労 働 や 劣 悪 な 環 境 で の 労 働 者(炭 鉱 夫 等),厳 しい 自然 環 境(北 極 圏 等)に お け る労 働 者,ま た 社 会 的 に 重 要 な 仕 事 に従 事 す る者(医 師,教 師)な どに は,さ ら に受 給 年 齢 以 前 に 年 金 を受 け取 るが こ とで き る優 遇 期 間 が 定 め られ て い た り,年 金 受 給 に必 要

な 労 働 歴 が 短 縮 され た り して い た 。 これ らの 点 か ら,ソ 連 社 会 が 安 定 的(あ る い は 閉 鎖 的)で あ っ た 時 代 に は,ソ 連 国 民 は老 後 に対 して あ る程 度 の安 心 感 を持 て た と言 え るだ ろ う。

一方 ,ソ 連 時代 の 年 金 制 度 で は,労 働 期 間 中 に受 け取 っ た 賃 金 の総 額 は, 年 金 額 に影 響 を 与 え な か っ た し,ま た,追 加 的 な労 働 歴 も ほ とん ど影 響 を 与

え な か っ た 。 この よ うな制 度 の 下 で 年 金 額 が 決 め られ た た め に,老 後 に対 す る最 低 限 の 生 活 が 保 障 され て い た 一 方 で,国 民 に は い わ ゆ る 「悪 平 等 」 感 が 広 が っ て い た 。

年 金 支 払 い の た め の 資 金 は,一 一部 は,企 業 が 強 制 的 に 国 に支 払 っ て い た保 険 料 か ら賄 わ れ,大 部 分 は,そ の他 の連 邦 予 算 か ら賄 わ れ た 。 した が っ て,

この よ うな年 金 資 金 の 調 達 方 法 の も とで は,独 立 の機 関 と して の 年 金 基 金 を 創 設 す る必 要 性 は な か っ た 。

しか し,ゴ ル バ チ ョ フ に よっ て始 め られ た ペ レス トロ イ カ が 進 む 中 で,市 場 経 済 的要 素 が 順 次 取 り入 れ ら る に した が っ て,年 金 制 度 の 抜 本 的 改 革 の 必 要 性 が 叫 ば れ る よ うに な り,1990年 に は ソ連 年 金 基 金 が 設 立 され た 。しか し,

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ロ シア の年 金 制度 改 革(小 崎)97

それ も翌1991年 に は,ソ 連 政 権 の 瓦 解 と と もに機 能 す る こ とな く消 滅 した 。

1990年 代 の ロ シ ア の 年 金 制 度

ソ連 崩 壊 の 前 年,1990年 に ロ シ ア共 和 国 最 高 会 議 令 に よ っ て ロ シ ア年 金 基 金 が 設 立 され た 。 そ の 目的 は,ロ シ ア共 和 国 に お け る年 金 の運 営 で あ る。 そ

れ ま で は,年 金 は 直 接 国 家 予 算 か ら支 払 わ れ て い た が,以 後 は,年 金 基 金 が 年 金 保 険料 を徴 収 と給 付 の役 割 を 担 う こ とに な っ た。

90年 代 前 半 の 市 場 経 済 化 の 初 期 に は,私 有 化 され た 企 業 や 組 織 に対 して, 賃 金 の28%が 年 金 基 金 へ の 納 入 金 と して 課 され た 。公 式 に は そ れ は税 金 で は

な く,「予 算 外基 金 へ の 支 払 い 」 と呼 ぼ れ て い た が,そ の本 質 は税 金 と変 わ ら な か っ た 。 そ れ は後 に導 入 さ れ た,統 一・社 会 税 に含 まれ る こ とに な っ た 。

この よ うな 変 化 の 下 で も,比 較 的低 い 年 金 受 給 年 齢 とい う年 金 支 給 の原 則 は,ソ ビエ ト時 代 に決 め られ た ま ま に残 され た 。 しか しな が ら,急 激 な 市 場 経 済 化 の 中 で,こ の 年 金 制 度 の 有 効 性 が 極 め て低 い こ とが 明 らか に な っ た 。 す な わ ち,年 金 基 金 の 資 金 は,物 価 の 上 昇 に比 較 して 極 め て 緩 慢 に しか 増 加 せ ず,ま た,支 払 わ れ る年 金 の 指 数 化 も急 激 な イ ン フ レー一シ ョン に追 い っ く こ とが で き な か っ た 。 そ の た め,年 金 の遅 配 が 続 発 した。

ロ シ ア 社 会 の 中 で,年 金 生 活 者 は最 も厳 しい 貧 困 状 態 に置 か れ た 。 特 に 1998年 の金 融 危 機 直 後 で は,平 均 年 金 額 は 最 低 生 活 費 の7割 程 度,平 均 賃 金 の3割 程 度 に しか な らな か っ た(表1)。 この よ うな状 況 で,数 回 に わ た り法 律 の変 更 が 行 わ れ た が,そ れ は複 雑 で,補 償 と指 数 化 に 関 して 明確 に規 定 さ

れ な か っ た た め に,国 民 の 間 に 混 乱 を 引 き起 こ した 。 そ して,結 局,こ れ ら の 変 更 は 年 金 生 活 者 の状 況 を本 質 的 に好 転 させ る こ とは な か っ た 。

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2.改 革 の 背 景 と ね ら い

この よ うに,年 金 生 活 者 の 生 活 水 準 が 極 め て低 い こ とか ら も,年 金 制 度 の 改 革 の 必 要 性 は 明 らか だ っ た 。

ソ ビエ ト時 代 の年 金 生 活 者 の比 較 的 許 容 し う る状 態 か ら,今 日 の 非 常 に貧 しい 生 活 状 態 へ の急 激 な 変 化 は,複 合 的 な 原 因 に よ っ て もた らさ れ た と言 え る。 そ の 中 で も,も っ とも重 要 な もの は,ロ シ ア の 人 口状 態 の悪 化 と納 税 忌 避 問 題 で2つ で あ る。 さ ら に,そ れ 以 外 に も,政 府 が 年 金 改 革 の 実 施 を 推 し 進 め た 背 景 に は,ロ シ ア経 済 に お け る投 資 資 金 の 不 足 問 題 が あ る。

人 口 状 態 の 悪 化

従 来 の 年 金 の世 代 間 賦 課 方 式 は,勤 労 者 が 年 金 受 給 者 を著 し く上 回 っ て い る場 合 に は有 効 に機 能 す る こ とが で き る。 単 純 な試 算 で は,勤 労 者 と年 金 受 給 者 が4:1の 時,賃 金 の40%の 水 準 の年 金 を供 給 す るた め に は,賃 金 の 10%を 保 険 料 と して 徴 収 す れ ば よい 。 勤 労 者 と年 金 受 給 者 の割 合 が3:1に な る と,そ れ は13%,2:1で は20%と な り,雇 用 者 に とっ て は か な りの 負 担 に な る2。 と こ ろが,1990年 代 後 半 の ロ シ ア で は,勤 労 者 数 は年 金 受 給 者 数 の2倍 を下 回 っ て お り,約1.7倍 に過 ぎ な い(表1)。 そ して この 関 係 は,

ロ シ ア の 人 口構 成 の 推 移 か ら見 て,長 期 に わ た り改 善 す る見 込 み が な い3。

も ち ろ ん,こ の 問題 は ロ シ ア だ け の 特 徴 で は な い 。 同様 の 問 題 は大 部 分 の 先 進 国 で起 きて い る。 そ の 原 因 は,第1に 出生 率 の低 下 で あ り,第2に 平 均 寿 命 の高 齢 化 で あ る。 もっ と も,ロ シ ア に お い て は第2の 理 由 は 当 て は ま ら な い 。なぜ な な らぼ,2003年 で も ロ シ ア人 男 性 の平 均 寿 命 は58.82歳 で あ り, 年 金 需 給 年 齢 に す ら達 して い な い か らで あ る。 む しろ,ロ シ ア に お い て は,

1990年 代 に労 働 可 能 人 口 の 死 亡 率 が 急 増 した こ とが 大 き な原 因 と言 え る4。

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ロシア の年金 制 度 改革(小 崎)99

表1.ロ シア の年 金 制 度 に 関す る主要 指標

1992 1995

1996 1997

1998

1999 2aoa

2401

2002

20a3

年 金 受給 者 に対 す る就

業者 数(倍)

1'

1.80 1.76 1.70

1.66

1.67

1.68 .: 1.70 1.71

最 低 生 活 費 に対 す る平

均 年金 額 の 割 合(%) 119.3 101.0 116.0 113.2 114.7

702

76.4

..

10a.o 102.0

平 均 賃金 に対 す る平 均

年金 額 の 割 合(%) 26.0

.. 38.2

34.0 37.9 29.5 31.2 31.6 31.6

..

出 所:『 ロシ ア 統 計 年 鑑2004』P.187

一 方,ロ シ ア で は,ソ ビエ ト時 代 か ら 引 き継 が れ た,い わ ゆ る 「優 遇 年 金 」 が 存 在 した 。 つ ま り,本 来 の年 金 受 給 年 齢 に達 す る以 前 に,年 金 を受 け取 る 権 利 を与 え る,様 々 な仕 組 み が あ っ た 。 また,1990年 代 に は,さ らに深 刻 な 生 産 低 下 に よ る就 業 率 の低 下 が 見 られ た 。 これ らの要 因 が ロ シ ア年 金 基 金 の 資 金 状 況 を悪 化 させ た 。

納 税 忌 避 問 題

90年 代 の年 金 制 度 の事 実 上 の破 綻 状 況 は,前 述 の 人 口学 的 理 由 だ け で,も た ら され た わ けで は な い 。よ り深 刻 な 問 題 は,企 業 の納 税 忌 避 の体 質 で あ る。

当初,「 年 金 保 険料 率(統 一 社 会 税 の うち年 金 資 金 に振 り分 け られ る割 合)」

は,年 間 賃 金 が10万 ル ー ブ ル 以 下 の労 働 者 で28%と 定 め られ た5。 一・方, 平 均 的 な,あ る い は 「効 率 的 」な年 金 保 険 料 率 の 割 合 は約25%と され て い る。

も し も,勤 労 者 数 が 年 金 受 給 者 数 の1.67倍 で あ れ ば,理 論 的 に は そ の税 率 で 平 均 賃 金 の41.7%の 水 準 の 年 金 を供 給 す る こ とが 可 能 で あ る。 しか し,前 述 の よ うに,実 際 に は,平 均 賃 金 に対 す る平 均 年 金 額 の割 合(代 替 率)は30%

程 度 で しか す ぎ な い 。 そ の原 因 は 年 金 保 険 料 の未 納(あ る い は過 少 納 入)に あ る。

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多 くの企 業 に とって 年 金 保 険 料,近 年 で は そ れ を含 む 統 一・社 会 税 は,重 負 担 で あ る。 そ こで,多 くの 企 業 は,従 業 員 に賃 金 の 一・部 を 「闇(非 公 式)」

の,ま た は 「灰 色(半 非 公 式)」 の経 路 を通 じて支 払 う こ とに よっ て,そ の 負 担 を軽 減 し よ う とす る行 動 を と る。重 要 な の は,そ れ が,ど の よ うな方 法(「 闇 賃 金 」,架 空 の保 険 契 約,架 空 の 銀 行 口座 等)で 行 わ れ て い るか とい う こ とで は な い 。 重 要 な の は,そ れ らの 目的 が 常 に年 金 保 険 料 を節 約 す る こ とに あ る

とい う こ とで あ る。

従 来 の賦 課 方 式 に お い て は,年 金 給 付 額 は納 入 さ れ た保 険 料 に依 存 しな か っ た 。 した が っ て,従 業 員 は そ の よ うな雇 用 者 の や り方 に反 対 し なか っ た 。 しか しな が ら,そ の 結 果 と して,年 金 基 金 に十 分 な年 金 を供 給 す る た め の資 金 が 不 足 し,年 金 の遅 配 な どの 自 らの不 利 益 を もた ら した 。

この よ うな雇 用 者 と従 業 員 の悪 循 環 を断 ち切 る た め に は,企 業 に対 して 年 金 保 険 料 納 入 の 不 正 を追 及 す るだ けで は な く,労 働 者 に雇 用 者 が 年 金 保 険 料

を き ち ん と支 払 っ て い る か ど うか に関 心 を 持 た せ る こ とが 必 要 で あ っ た 。

投 資 資 金 の不 足

従来 の賦 課 方式 の年金 制 度 で は,原 則 的 に,資 金 の蓄積 は行 われ なか った。

す なわ ち,納 入 され た保 険料 は,通 常,現 在 の年 金 支払 い に利 用 され た。 も しも,年 金保 険料 の一部 分 が,恒 常 的 に貯蓄 に回 されれ ば,ロ シ ア経 済 に膨 大 な投資資 金 が 出現 す る こ とにな る。 もち ろん,そ の投資 が信 頼 性 と収益 性 を持 っ ため に は,そ れ らの資金 が,充 分 な資 金運 用能 力 を持 った専 門 家 の手 に委 ね な けれ ぼ な らな い こ とは言 うまで もな い。

今 回 の年 金 改革 にお け る積立 方式 の導 入 は,ロ シ ア経済 の投資 プ ロセ ス に 本 質 的 な変 化 を与 え る こ とが で き る可能 性 が あ る。 プー チ ン政 権 の掲 げ る, 長 期成 長 目標 達 成 の た めに は,巨 額 の投 資 が必要 で あ る。 も しtこ のメ カニ

ズ ムが順調 に機 能 す れ ば,長 期 的 な資本 回収 率 を前提 とす る巨大 プ ロジ ェク

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ロシ アの年金 制 度 改革(小 崎)101

トに資 金 を供 給 す る こ とが で き,長 期 に わ た る ロ シ ア経 済 の 成 長 を支 え る基 盤 とな り得 る。

年 金 改 革 のね らい

今 回 の年 金 改革 の特徴 は,賦 課 方 式 と積 立方 式 の混 合年 金 制度 を形 成 す る こ とで あ る。 この よ うな制 度 は,一 方 で,高 齢世 代 のた めの年金 の受 け取 り を保証 し,他 方 で は,若 い世 代 に将 来 の よ り多 い年金 受 け取 りの可能 性 を広 げ る こ とが で き るはずで あ る。 それ は また,国 家 に とって は,国 民 の老後 へ の責任 の一部 が取 り除 かれ,負 担 が軽 減 され る こ とで もあ る。

今 回の年金 改 革 の主要 な要素 は次 の とお りで あ る。

・従 来 の賦 課 方式 へ の保 険方 式 の導 入。

・労働 年金(強 制 年金)へ の積 立方 式 の導 入。

・任 意 年金 形 成 の た めの幅広 い可 能 性 の提供 。

以下 に,そ れ ぞれ の ね らい を達成 す るた めの具体 的 な方法 を見 てみ たい。

3.労 働 年 金 の3層 構 造

2002年1月1日 か ら実 施 され た 新 しい年 金 制 度 の 主 要 部 分 は 「労 働 年 金 」 と呼 ば れ て い る。 労 働 年 金 は,老 齢 年 金,障 害 年 金,扶 養 者 喪 失 年 金 の3っ に分 け られ る。 ま た,労 働 年 金 は,基 礎 部 分,保 険 部 分,積 立 部 分 の 三 層 か

ら構 成 さ れ る。

労 働 年 金 と とも に 「国 家 年 金 保 障 制 度 」と呼 ぼ れ る年 金 制 度 が 存 在 す るが, 本 論 で は,も っ ぱ ら労 働 年 金 の老 齢 年 金 を考 察 の対 象 と して 取 り上 げ る。 そ の理 由 は,第 一 に,そ れ が 大 部 分 の年 金 受 給 者 もっ とも重 要 で あ り,第2に, そ れ が 今 回 の 改 革 で も っ と も重 要 な対 象 だ っ た か らで あ る。

前 述 の よ うに,従 来 の賦 課 方 式 に お い て は,年 金 は労 働 期 間 に受 け取 っ た 賃 金 に は依 存 しな か っ た 。 そ の 方 式 で は,低 賃 金 の労 働 者 で も将 来 受 入 可 能

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な程 度 の年 金 を受 取 る こ とが で き る。 しか し,他 方 で は,年 金 額 の 差 は,賃 金 の差 に 比 べ て 著 し く小 さ く,さ ら に,90年 代 に,徴 税 率 が 低 下 し,年 金 基 金 の収 入 が 減 少 した 時 年 金 額 の 上 限 が 設 定 さ れ た た め,い っ そ うの年 金 額 の 平 準 化 が もた ら され た 。 そ の 結 果,労 働 者 は企 業 が 自分 た ち に対 して 保 険 料 を 支 払 っ て い るか ど うか に 関 心 を持 た な か っ た 。

そ の よ うな 状 況 を改 善 す る た め に,今 回 の 改 革 で は,賦 課 方 式 の 年 金 制 度 に,基 礎 部 分 と保 険部 分 とい う2っ の 異 な る仕 組 み が 導 入 さ れ た 。

基 礎 部 分 に よ る年 金 は,す べ て の 年 金 受 給 者 に ほ ぼ 同額 で あ り,国 民 の老 後 に対 す る社 会保 障 の一 種 と言 え る。 一 方,保 険 部 分 は労 働 期 間 に年 金 基 金 に支 払 わ れ た保 険料 に依 存 す る。 ま た,保 険 料 は賃 金 に依 存 す るの で,受 取 る年 金 は,賃 金 か ら密 接 な影 響 を受 け る こ とに な っ た 。

これ に よ っ て,仮 に,雇 用 者 が 非 公 式 な給 与 支 払 い に よっ て,従 業 員 の年 金 保 険 料 を 「節 約 」 しよ う と して も,労 働 者 は 将 来 の 年 金 額 を決 め る保 険料 に影 響 す る 「白い(公 式 な)」 賃 金 に,以 前 の よ うに無 関 心 で は い られ な い だ ろ う。

労 働 年 金 の 基 礎 部 分

労 働 年 金 の 基 礎 部 分 は,労 働 歴5年 以 上 の す べ て の 国 民 に供 与 さ れ る。 年 金 額 は す べ て の受 給 者 に ほ ぼ 同 額 で あ り,年 金 受 給 者 が80歳 を超 え るか, 身 体 障 害 者 とな るか,あ る い は稼 ぎ手 を喪 失 す るか な どの 特 別 な 場 合 に の み 増 額 さ れ る。 基 礎 部 分 に よ る年 金 額 は,労 働 歴,賃 金 また は 支 払 わ れ た 保 険 料 に依 存 しな い 。

2004年 末 に お い て,労 働 年 金 の基 礎 部 分 の老 齢 年 金 は598ル ー ブ ル で あ っ た 。 また,2004年8月 か ら,そ れ は660ル ー ブル に な り,さ ら に2005 年 の3月 と8月 の2回 に わ た っ て合 わ せ て468ル ー ブ ル が 増 額 さ れ て い る6。

この よ うに,こ の年 金 は経 済 状 況 な どに よ っ て た び た び変 更 され る。

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ロシ アの年金 制 度改 革(小 崎)103

と ころ で,労 働 年 金 の 基 礎 部 分 の役 割 は,す べ て の 年 金 受 給 者 に生 活 の た め の最 低 限 の資 金 を 供 給 す る こ とで あ る。 と こ ろが,実 際 に は,2003年 時 点 で基 礎 部 分 の年 金 額 は,最 低 生 活 費 の36.8%を 占 め る にす ぎ な い7。 従 っ て, 現 在,基 礎 部 分 は 自 らの使 命 を果 て して い る とは言 え な い 。

2004年 か ら は,基 礎 部 分 の形 成 の た め に,最 大 で 年 金 保 険料 支 払 い の半 分, す な わ ち 賃 金 基 金 の14%が 振 り向 け られ る よ うに な っ た(賃 金 が 増 加 す る に っ れ て そ れ は2%ま で 減 少 され る)。 そ の 資 金 は,ま ず 統 一 社 会 税 と して徴 収 され 連 邦 予 算 に 組 み 入 れ られ る。 そ の 後 に,年 金 支 払 い の た め に年 金 基 金 に 振 り替 え られ る。この仕 組 み に よ り,国 家 予 算 に組 み 入 れ られ た年 金 資 金 が, 年 金 の た め の み に利 用 され て い な い の で は な い か とい う疑 念 が 指 摘 さ れ て い

る8。

2005年 か ら,統0社 会 税 か らの 基 礎 部 分 へ の控 除 は急 激 に 削 減 さ れ,賃 金 基 金 の6%に な っ た 。 これ は年 金 基 金 の基 礎 部 分 の 収 支 の 恒 常 的 な 赤 字 を生 み だ した 。 この 赤 字 は,連 邦 予 算 か らの補 助 金 に よ っ て 補 わ れ て い る。

労 働 年 金 の 保 険 部 分

労 働 年 金 の 保 険 部 分 の年 金 額 は,年 金 基 金 に納 入 され た各 個 人 勘 定 に お け る 「計 算 上 の蓄 積 資 金 」 に よ っ て 決 定 され る。

2004年 に は,そ の 目的 の た め に,統 一 社 会 税 の一・部 と して賃 金 の10‑1 4%が 充 て られ た 。 そ れ は,統 一 社 会 税 の 逆 進 性 の た め に,賃 金 の 増 加 に伴 っ て0%ま で 削 減 さ れ る(表2)。

そ の 際 保 険 部 分 と して個 人 勘 定 に積 み立 て られ るの は,「 生 き た金 」で は な い こ とを考 慮 しな けれ ぼ な らな い。 す な わ ち,保 険 部 分 と して 年 金 基 金 に 納 入 さ れ た資 金 は,現 在 の 年 金 支 払 い に 当 て られ る の で あ っ て,各 個 人 勘 定 に は納 入 の 記 録 が 残 る の み で あ る。

(10)

表2.2004年 までの 労 働 年 金 の 保 険 部 分,積 立 部 分 の 原 資 形 成 の ため の 保 険 料 の 配 分

各 従 業 員 の 年 初 か ら の 累 計 賃 金(単

1952年 以 前 生 まれ の 男 性 お よび1956年 以 前 生 まれ の 女 性

1953年 か ら1966年 ま で に 生 ま れ た 男 性 お よび1957年 か ら1966年 ま で に 生 ま れ た 女 性

1967年 以 降 に 生 まれ た 者

位:ル ー プ

保険部分の 積 立 部 分 保険部分の 積立部分 の 保険部分の 積立部分の

ル) 形 成 の た め の 形 成 の 形 成 の た め 形 成 の た め 形 成 の た め 形 成 の た め

に た め に に に に に

100001

14%

0% 12% 2% 8% 6%

未満

100001 14000ル ー ブ ル

12000ル ー

ブ ル+

2000ル ー プ 8000ル ー プ 6000ル ー プ

以 上 300001 未 満

十100000ル ー ブ ル を 超 え る 部 分 の7.9%

aro

100000ル ー ブ ル を 超 え る 部 分 の

ル 十100000 ル ー ブ ル を 超 え る 部 分

ル 十100000 ル ー ブ ル を 超 え る 部 分

ル 十100000 ル ー ブ ル を 超 え る 部 分

の1.1% の4.5% の3.4%

・:'.

300aol

29800ル ー

ブ ル 十

25600ル ー

ブ ル 十 4200ル ー プ 17000ル ー

ブ ル 十

12800ル ー

ブ ル 十

ル 十300000

以上

.lllli

未満

300000ル ー ブ ル を 超 え る 部 分 の

0%

300000ル ー ブ ル を 超 え る 部 分 の

ル ー ブ ル を 超 え る 部 分

300000ル ー ブ ル を 超 え る 部 分 の

300000ル ー ブ ル を 超 え る 部 分 の

の0.65%

3.95 3.39% 2.26%

1.69%

・lll!i 41650ル ー 35770ル ー 5880ル ー プ 23780ル ー 17870ル ー

以 上 ブル

oi9

ブル ル ブル ブル

出 所:非 国 営 電 力 年 金 基 金(www.npfe.ur)

大 部 分 の 労 働 者 は2002年1月1日 以 前 に労 働 を 開始 して い る。 そ して そ の 問 に,旧 年 金 制 度 に お け る一・定 の年 金 受 け取 りの権 利 を保 有 して い る。 新 制 度 に お い て は,こ の 権 利 は各 人 の 計 算 上 の 年 金 資 産 に 「変 換 」 され る。

した が って,各 人 の年 金 の 総 額 は,旧 年 金 制 度 か ら変 換 さ れ た 受 け取 り権 と新 た に納 入 され た保 険料 に よ っ て決 ま る。 さ ら に,こ の額 は イ ン フ レー シ ョ ンを考 慮 した 毎 年 の 指 数 化(物 価 ス ライ ド制)に よ っ て も影 響 を受 け る。

一 般 に

,労 働 年 金 の老 齢 年 金 の保 険 部 分 の年 金 額 は次 の よ うな 公 式 で 決 定 され る。

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ロ シア の年金 制 度改 革(小 崎)105

IP=NDC/T

こ こで,IPは 年 金 支 給 額,NDCは 年 金 指 定 日現 在 の 計 算 上 の年 金 資 産, Tは 労 働 年 金 支 給 予 想 期 間(2012年 か ら,19年 ま た は228ヶ 月)で あ る。

労 働 年 金 の 積 立 部 分

保 険 部 分 と同 じ く,労 働 年 金 の 積 立 部 分 も年 金 保 険料 に よ っ て形 成 さ れ る。

しか し,2つ の 部 分 に は重 要 な 違 い が あ る。 そ れ は,積 立 部 分 の た め に統0 社 会 税 と して雇 用 者 か ら支 払 わ れ た 年 金 保 険 料 は,そ の後,年 金 基 金 に納 め

られ るが,現 時 点 で の 年 金 支 払 い に は利 用 さ れ な い とい う こ とで あ る。 そ の 資 金 は 積 み 立 て られ,運 用 され る。 そ して,こ の積 立 方 式 の 特 徴 は,国 民 が 積 み 立 て られ た 年 金 資 金 を どの よ うに運 用 す るか を選 択 で き る こ とで あ る9。

積 立 部 分 に振 り分 け られ る割 合 は,労 働 者 の年 齢 と賃 金 に応 じて 決 め られ る。改 革 初 期 の バ ー ジ ョ ンで は,「 高 年 齢 層(1952年 生 まれ 以 上 の 男 性,1956 年 生 まれ 以 上 の 女 性)」 は積 立 制 度 に は参 加 しな い 。 「中年 齢 層(1953‑1966 年 生 まれ の 男 性,1957‑1966年 生 まれ の 女 性)」 積 み立 て 方 式 に参 加 す る が, 義 務 的保 険料 の 支 払 い は2%を 超 え な い とい う制 約 が あ る。 た だ し,統 一 社 会 税 の逆 進 性 に よ り,賃 金 の 上 昇 に伴 っ て そ の 率 はゼ ロに ま で低 下 す る。「 年 齢 層(1967年 生 まれ 以 降 の 男 女)」 は,積 み 立 て 方 式 に 最 大 限 に 参 加 す る。

す な わ ち,そ の割 合 は2004年 は4%ま で,2005年 は5%ま で,そ して2006 年 か らは6%で あ る(表2)。

しか し,後 述 す る よ うに,2005年 か らの統 一 社 会 税 の減 税 措 置 の結 果,中 年 齢 層 の 国 民 は積 立 制 度 か ら除 外 され る よ うに 変 更 され た 。

4積 立 年金 資金 の運 用 資金運 用方 法 の選 択

仮 に,積 立部分 の年金資金が単 に年金基金 に蓄積 され るだ けだ とすれぼ,

(12)

今 回 の 改 革 の意 義 は さ ほ ど大 き くは な い で あ ろ う。 国 民 は 自分 の将 来 の 年 金 額 に責 任 を 感 じな い だ ろ う し,国 家 組 織 に よ る資 金 の運 用 効 率 は通 常 極 め て 低 い か らで あ る10。 年 金 資 金 が 民 間 の金 融 機関 に よ っ て運 用 され る方 が,国

民 に とっ て も ロ シ ア 経 済 に とっ て も よ り好 ま しい結 果 を もた らす は ず で あ る。

今 回 の 改 革 で は,ロ シ ア 国 民 は二 つ の タ イ プ の運 用 先 を選 ぶ 権 利 を得 た 。 そ れ は,民 間 の投 資 会 社 と非 国 営 年 金 基 金 で あ る。

この 方 式 は 国 民 に とって も国 家 に とっ て もメ リ ッ トが あ る。す な わ ち,国 民 は運 用 次 第 に よ っ て は,よ り高 額 の 年 金 を受 け取 る可 能 性 が あ る。 自身 の 老 後 に十 分 な年 金 を確 保 す る た め に は,国 民 は,国 家 よ りも 自分 自身 に頼 ら

ざ る を得 な い 。 以 前 の ロ シ ア に お い て は,そ の よ うな年 金 運 用 の 自 由 は無 か っ た 。 この 自由 は,ロ シ ア人 の 自身 の 将 来 の年 金 に対 す る考 え方 を変 え る か

も しれ な い。

国 家 に とっ て も,年 金 に対 す る責 任 が 部 分 的 に緩 和 さ れ,そ れ を 国 民 と金 融 機 関 に転 嫁 で き る こ とは都 合 が 良 い 。 ま た,民 間 金 融 機 関 と非 国営 年 金 基 金 に は大 きな ビ ジ ネ ス ・チ ャ ン ス が 与 え られ る。 そ れ は,国 民 経 済 全 体 とっ

て は長 期 的 な投 資 資 金 を得 る こ とが で き る こ とを 意 味 して い る。

期 待 さ れ る 成 果

以 上 の 点 を ま とめ る と,年 金 の積 立 方 式 の導 入 に は,次 の よ うな成 果 が 期 待 され て い る と考 え られ る。

・年 金 受 給 者 の将 来 の福 祉 を 向 上 す る(年 金 の 増 額) 。

・長 期 の 投 資 資 金 の 導 入 に よ っ て,国 民 経 済 の 高 い 成 長 率 を達 成 す る。

・国 家 の年 金 制 度 に対 す る 負 担 を軽 減 す る。

・「白 い(公 式 の)」 賃 金 の割 合 を増 加 させ,労 働 市 場 を活 性 化 す る。

・金 融 市 場 と金 融 機 関 の 発 展 の た め の可 能 性 を広 げ る。

これ らの 項 目 は,経 済 お よ び社 会 生 活 の す べ て の分 野 に関 連 して い る。 し

(13)

ロ シアの年 金制 度 改 革(小 崎)107

た が っ て,今 回 の 年 金 改 革 は,ロ シ ア に お い て も っ とも重 要 な 改 革 で あ る と 言 え る。 そ して,そ の 目標 を達 成 す るた め に は,新 しい 年 金 制 度 の 持 っ 潜 在 力 を完 全 に利 用 す る こ とが 重 要 で あ る。 しか しな が ら,年 金 制 度 の主 要 な 参 加 者 で あ る国 家,国 民,民 間 投 資 会 社,非 国 営 年 金 基 金 な どの 改 革 へ の準 備 は,必 ず し も十 分 で あ る とは言 え な い 。 特 に,年 金 の運 用 先 を選 択 しな けれ ば な らな い 国 民 に対 して,今 回 の改 革 に つ い て の十 分 な説 明 や キ ャ ンペ ー ン が 行 わ れ なか っ た た め に,多 くの人 々 は改 革 の 中身 や,あ る い は改 革 そ の も の が 行 わ れ て い る こ とす らを知 ら な い ま ま の 状 態 に置 か れ た11。

5.さ ら な る 改 革

2004年,ロ シ ア政 府 は税 制 改 革 の 一と して,統 一 社 会 税 の減 税 を決 め た 。 この措 置 は,ロ シ ア経 済 全 体 に とっ て も企 業 に とっ て も好 ま しい もの で あ っ た が,当 然,年 金 基 金 へ の 資 金 の流 れ は大 き く減 少 す る こ とに な る。 す な わ ち,年 金 保 険 料 率 は28%か ら20%へ 低 下 し,中 で も,労 働 年 金 の基 礎 部 分 へ の料 率 は14%か ら6%に 低 下 した 。そ の 結 果,年 金 制 度 の基 礎 部 分 は恒 常 的 な資 金 不 足 の状 態 に な っ た 。

この 資 金 不 足 を補 うた め に,『ロシ ア 政 府 は積 み 立 部 分 か ら 「中年 齢 層(1953

‑1966年 生 ま れ の男 性,1957‑1966年 生 まれ の 女 性)」 を 除 外 す る と発 表 した 。 す な わ ち,こ れ らの 人 々 の年 金 保 険料 はす べ て 保 険 部 分 に 向 け られ, 現 在 不 足 して い る年 金 の支 払 い に充 て よ う とい うの で あ る。 この 政 府 案 は激

しい議 論 を呼 ん だ が,結 局,必 要 な法 律 の改 正 手 続 きが と られ,2005年 か ら の 新 しい保 険 部 分 と積 み 立 て 部 分 の保 険 料 率 が 決 め られ た(表3)。

しか し,お そ ら くこ の決 定 は最 良 の措 置 とは 言 え な い で あ ろ う。 な ぜ な ら ぼ,こ の方 法 で 得 られ る資 金 で は,年 金 基 金 の 赤 字 を埋 め合 わ せ る こ とは で きず,結 局 は,連 邦 予 算 か ら補 助 金 を 受 け ざ る を得 な い か らで あ る。 また, 多 くの 人 々 と資 金 を積 み 立 て 方 式 か ら除 外 す る こ とは,新 しい 年 金 制 度 の 発

(14)

達 に否 定 的 な影 響 を与 え るで あ ろ う。

表3.2005年 か らの 労働 年 金 の 保 険 部 分,積 立部 分 の形 成 の た め の 保 険 料 の配 分

各 従 業 員 の 年 初 か ら の 累 計 賃 金 (単位:ル ーブ ル)

1966年 以 前

生 ま れ の 人 1967年 以 後 生 ま れ の 人

2005年 一2007年

保 険部 分 の 形成のために

保 険 部 分 の 形成のために

積 立 部 分 の 形 成 のた め に

保 険 部 分 の 形 成 の ため に

積 立 部 分 の 形 成 の ため に

280000ま で

14.0%

・̀1・̀/ 6.0%

10.0% 4.4%

280001か ら 600000ま で

14000ル ー ブ ル 十280000 ル ー ブ ル を 超 え る 部 分 の 5.5%

22400ル ー ブ ル 十280000 ル ー ブ ル を 超 え る 部 分 の 3.1°/a

16800ル ー ブ ル 十280000 ル ー ブ ル を 超 え る 部 分 の 2.4%

28000ル ー ブ ル 十280000 ル ー ブ ル を超 え る 部 分 の 3.9%

11200ル ー ブ ル 十280000 ル ー ブ ル を 超 え る 部 分 の 1.6%

600000以 上

56800ル ー ブ ル

32320ル ー ブ ル

24480ル ー ブ ル

40480ル ー ブ ル

16320ル ー ブ ル

出 所:非 国 営 電 力 年 金 基 金(www.npfe.ur)

お わ りに

本 論 で述 べ た年 金制 度 改革 の各要 素 は,す べ て強 制(国 家)年 金制 度 に関 す る もの あ る。しか し,今 回 の年 金 改革 はあ らゆ る形 の年 金 に関 わ って お り,

その 中 には,任 意 の年金 形 成 の問題 が あ る。

現在 の賃 金水 準 と年金 保 険料 で は,強 制 年金 制度 のみ に頼 って いて は,老 後 の生活 を保 障 す る充分 な資金 を確 保 す る こ とが で きな い。低賃 金 の人 々 は 退 職後,年 金 が生 活資 金 の相 当部分 を 占め る こ とにな るが,そ の絶 対額 は非 常 に少 い。逆 に高 い賃金 を得 て い る人 々 は,保 険部 分 と積立 部分 へ の控 除 の 割 合 は統一・社会 税 の逆進 性 か ら極 めて低 い。 したが って,彼 らの賃金 に対 す る年金 の割 合 は低所 得 また 中所得 層 よ りも低 くな る。 そ の結果,そ の よ うな 人々 に とって年 金 生活 に入 る とい うこ とは,深 刻 な生活 水準 の低 下 を意 味す

る。

前述 の とお り,今 日,平 均 年金 額 の平均 賃 金 に対 す る割 合(代 替 率)は30%

程 度 で あ る。労働 年 金 の改 革 は,こ の割合 を15年 一20年 か けて35%‑40%

(15)

ロシ アの年金 制 度改 革(小 崎)109

程 度 に上 げ る こ とを 目標 と して い る。一 方,ILOに よ る と,こ の代 替 率 は65%

‑70%程 度 で あ る こ とが 望 ま しい とさ れ て い る。

現 行 制 度 の下 で,ロ シ ア の 普 通 の 勤 労 者 が この 数 値 に近 づ くた め に は,方 法 は0っ しか な い 。 す な わ ち,強 制 年 金 以 外 に任 意 年 金 の形 成 に 取 り組 む こ

とで あ る12。 この 努 力 な しに は 自身 の 安 定 した 老 後 は 望 め な い で あ ろ う。 し か し,米 国 な ど とは違 い,多 くの ロシ ア 人 に とっ て そ れ は な じみ の な い こ と で あ り,大 き な 困 難 と長 い 時 問 が 必 要 で あ る。

い ず れ に して も,今 回 の年 金 制 度 改 革 は,短 期 的 に は,年 金 生 活 者 の貧 困 状 態 を改 善 させ る こ とで き な い で あ ろ う。む しろ,次 の 世 代 の 年 金 生 活 者 が,

さ ら に悪 い 状 況 で 暮 らさ な くて も よ い よ うに す る こ とを 目指 す しか な い。 し た が っ て,こ の年 金 改 革 が そ の よ うな 成 果 を 上 げ る こ とが で き るか ど うか は, 時 間 を か け て 注 目 しな けれ ば な らな い 。

1ロ シ ア で,特 定 の 職 業 に 対 し て,最 初 に 年 金 制 度 が 制 定 さ れ た の は,1720年 の ピ ョ ー トル1の 治 世 で あ っ た と さ れ て い る(ロ シ ア 大 百 科 事 典,p.559)。

2こ の 試 算 は 非 国 営 電 力 年 金 基 金 の ホ ー ム ペ ー ジ(www.npfe.ur)に よ る 。 31990年 の ソ 連 に お い て は2。3倍 で あ っ た 。

41990年 代 の 労 働 可 能 人 口 に つ い て の 詳 細 は,拙 論 「ロ シ ア に お け る 経 済 体 制 移 行 に よ る 社 会 的 損 傷 一 人 命 の 損 失 一 」 『 創 価 大 学 外 国 語 学 科 紀 要 』 第9号 を 参 照 さ れ た い 。

5賃 金 の 増 加 と と も に そ れ は2%ま で 低 下 す る(統 一 社 会 税 の 逆 進 性)。

6"HHTepBb1〈)Hpe江ce耳aTeJIHrlpaBJ[eHH且r[excHOxxoroΦoH再aPΦrel{Ha几HH FaTaxoB",PIMA且oBocTH,2005.7.29,http:〃www.rian.ru!

7『 ロ シ ア 統 計 年 鑑2004年 』p.187

8篠 田 優 「ロ シ ア の 新 年 金 制 度 」『プ ー チ ン 政 権 に お け る ロ シ ア 社 会 ・労 働 法 制 の 改 革 』,日 本 国 際 問 題 研 究 所,2003年http://….jiia.or.jp/indx.research.1.html

9こ の 運 用 の た め に2003年 に は283の 非 国 営 年 金 基 金 が 登 録 さ れ て い る(『 ロ シ

(16)

ア統 計 年 鑑2004年 』p.188)。

10こ れ につ いて は 日本 の厚 生 労 働 省 が もっ とも よい例 で あ ろ う。

11田 中信 世 ロ シ ア経 済 の現 状 と今 後 の 課 題 」 『国 際 貿 易 と投 資 』 国 際 貿 易 投 資 研 究 所,2004年,No.56。

12例 え ば,2003年 に お け る非 国 営 年 金 基 金 か ら年 金 を受 け取 って い る人 は,全 年 金 受 給 者 の1.1%に 過 ぎな い(『 ロ シア統 計 年鑑2004年 』,p.188)

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