静岡大学教育学部研究報告 (教科教育学篇)第33号 (2002.3)195〜215
研究開発学校で英語 に接 した児童 の英語能力調査
An investigation into English abilities of the students who were exposed to English
at a model school
白 畑 知 彦 Tomohiko SHIRAHATA
(平成 13年10月 9日受理)
1.序 論
国際理解教育の研究開発学校 として、文部省 (当時)よ り3年間 (1997年 4月 〜2000年 3月)の指 定を受 けた小学校 (以下、A小学校 と呼ぶ)で「英語学習」を経験 した生徒の中学校入学後の英語能 力を、中学生 になってか ら英語学習を開始 した生徒の英語能力 と、 3つ の視点か ら実験 により比較調 査 した。 3つ の視点 とは、音素識別能力、英語発音能力、そ して英語の流暢性の3点である。その調 査結果を報告 したい。Cl)月 ヽ学校で英語教育を行な う場合、 どんな能力の伸長が期待で き、 どんな も のを期待 しない方がよいのか,客観的に把握する手がか りが提供できればと思 う。
筆者の知 る限 り、公立小学校で「英語教育」を受 けた子 ども達の英語能力の伸長を実験 により客観 的に調査 した研究 は、 これまでほとんどなか った。今後、小学校での英語授業の内容を質的に、そ し て量的に検討す る上で も、本研究成果 は重要な役割を果たすだろうと考える。小学校に英語を本格的 に導入す るかどうか という重要な問題を、有識者 と呼ばれる人達の個人的好みに基づいて決めてはな らない。客観的根拠な しに、良 い、悪いと議論 していて も実 り多いもので もない。 また、「 あなたは 英語能力がついたと思いますか」 といったアンケー ト調査 (意識調査)を、子 どもや父兄にい くら実 施 して も、英語能力が本当に身についているかどうか判定できない。本当に英語能力がついたかどう か知 るためには、客観的に言語データを収集 していかなければな らない。そのようなデータを基 に、
闇雲 に理想を唱えるのではな く、小学校での英語教育では何ができて何がで きないかを、教える側そ して行政が しっか りと把握 してい くことは重要な意義を持つ。
実験結果の解釈について最初 に一言述べておきたい。月ヽ学校の英語授業 とは言 って も、様々な形態 が考え られる。本稿での実験結果 は、A小学校での実践形態を取 ると、 このような結果 になったとい うことである。違 う授業形態を取れば、違 う結果 になる可能性 はある。それは別の実験を して確かめ なければな らない。様々な実験結果が蓄積 されれば、小学校での英語教育での成果がさらに一般化 し やす くなるだろう。
論の進め方が幾分前後するが、流れを円滑にす るため、最初 に本研究に協力 していただいた学校 と 被験者 について、その背景を若干紹介 しておきたい。国際理解教育の一貫 として、英語の授業を経験
したA小学校の児童 (Exと呼ぶ)は全員、B中 学校 に進学す る。B中 学校 には、A小学校卒業生 とほ ぼ同数の生徒がC小学校か らも加わる (こ この卒業生達をNon―Exと 呼ぶ)。 研究開発学校 としてのA
小学校の研究期間 は2000年 3月 に終了 した。 したが って、2000年度のB中 学校の在校生の中で、A小
n フ
196 白 畑 知 彦
学校出身者 (全校生徒の約半分)は、 1年 生が3年間、2年生が2年間、3年生が 1年 間、小学校で 英語の授業を受 けてきた生徒達である。
今回、B中 学校 とA小学校にご協力を頂 き、2000年12月か ら2001年 2月 にかけて、彼等の英語能力
(の一部)を測定する機会を得た。 そ して、互 いに関連 はす るが、独立 した実験を 3つ 実施す ること がで きた。 まず、実験1と して、音素識別 テス トを実施 した (2000年12月 1日 02日)。 このテス ト
は全学年で実施 された。 ただ し、本稿で紹介す るのは、その内の 1年 生の分だけである。C2)実験1 終了後、ExとNon―Exの 1年生の中か ら無作為に選んだ被験者 (それぞれ20名)に対 して、彼等の英 語発音能力を測定 し、両者の結果を比較 した (2001年 2月)。 これを実験 2と す る。 さらに、実験2
と同 じ被験者 に、5分間 自由に英語で話を して貰 い、量的視点か ら彼等の英語発話語数を比較 した (2001年2月)。 これを実験3とする。本稿では、 この 3つ の実験結果を紹介 したい。結果 として、全 ての実験 において、ExとNon―Exの 間には統計的に有意差がなか ったことを報告する。
2.A小
学校での英語授業概観国際理解教育の研究開発学校 として、3年間の指定を受 けたA小学校での英語授業について、 まず 述べ ることにす る。A小学校 は、1997年度か ら1999年度 までの3年間、国際理解教育の研究開発学校 として、文部省 より指定を受 けた。研究の主たる目標は、子 ども達が積極的に生 きるための国際的な 視点や態度を育成するには、 どのようなカ リキュラムを編成 していった らよいか考察することであっ た。 この目標を実現するために、同校では年間35時間の英会話学習の時間 (「国際交流科」)を設 け、
3年生か ら6年生 までをその対象 とした。C3)国際交流科では、子 ども達が英語の母語話者 と出会 う 経験を通 じて、外国人の方々と英語で積極的に交流する態度を育 もうと努力 した。 この時間に教科書
はな く、担当の教師達が自らの創意をこらして授業計画を作成 した。
したが って、英語能力の伸長は国際交流科の第一義的目標ではない。 しか し、積極的な態度面の育 成 に加えて、ALTと英語 を通 じて交流す ることによ り、児童が英語の音や リズムなど、 自然 な英語 能力を身につけることも副次的ね らいとしていたことも確かである。実際、A小学校の報告書で も、
「児童 は外国語学習に敏感な年齢であ り、母語話者の代表であるALTか ら、 自然な英語を吸収するに 違いない」 と述べ られている。
授業内容を概略すれば、文部科学省編 (2001年)『小学校英語活動実践の手引』(以下、『手引』)に
掲載 されている内容 とほぼ同一であると言える。すなわち、A小学校の授業では、外国の習慣を学び、
簡単 な英語で自分 自身を表現する活動 などを取 り入れ、ALTやクラスメー ト達 と、 ゲームや歌やス キ ットなどをす る活動が中心であった。年間計画は立ててあるが、文法を体系的に、かつ明示的には 教えない、そ して、文字の導入はできるだけ避 け、聞いたり話 したりする活動を中心 に行なうという、
研究開発学校 として指定を受 けた公立小学校の英語授業でよ く見 られる形態を採用 していた。少な く とも、筆者が直接的に、 またはマスメディアを通 して見た「公立小学校英語教育」の授業風景、 さら に、出版物などに紹介 されている「英語授業」の構成などと質的には同 じであった。「ALTと 共に英 語を聞いたり話 した りする活動を中心 に、積極的に交流する態度を身につけよう」 というのが英語学 習導入のね らいである。
国際交流科 は、 日本人のクラス担任教師と英語の母語話者であるALTのティーム・ ティーチングに よって行なわれる場合 と、 もう一人 日本人教師が加わり、 3名 で実施される場合が主流であった。C4) ただ し、英語の専科教員 はいなか った。実質上、ALTが中心 となって、授業のほとんどは英語で行 なわれた。5人のALTが月曜 日か ら金曜 日まで毎 日 1人 ずつ交代で来校 し、授業に参加するという、
研究開発学校 で英語 に接 した児童 の英語能力調査 197
恵 まれた学習環境であ った。 このため、子 ども達 は同 じALTと長期間交流す ることがで き、強い信 頼関係 も生 まれたようであった。英語の母語話者 と直接接触 し、会話 したり英語の音声 に触れたりす る機会が毎週 1回 与え られたわけである。上述 したように、A小学校の卒業生 (Ex)で、2000年度 にB中学校で1年生だ った生徒 は、 このような環境の下、国際交流科での英語授業を小学校4年時、
5年時、6年時に、1年間でそれぞれ35回ずつ、合計105回受 け、B中 学校に入学 した。
3.子
どもの第二言語習得 または外国語学習筆者 は、過去十数年間に、第二言語 として英語を習得する日本語を母語 とす る子 ども達や、第二言 語 として日本語を習得する非 日本語母語話者の子 ども達を縦断的に観察 し、データを取 り続 けてきた。
彼等の言語発達を目の当 りにし、その速度 と正確 さに、ある時は驚嘆 し、そ してある時は羨望を感 じ なが ら、子 ども達の第二言語習得過程を身をもって体験 してきた。 したが って、子 どもの言語能力の すば らしさを人一倍理解 しているつ もりである。 しか しなが ら、筆者が観察 してきた子 ども達 は、 日 標 とする言語が話 されている言語環境で第二言語を習得 した子 ども達である (これを第二言語環境 と 呼ぶ)。 例えば、 日本で非 日本語母語話者が、第二言語 として日本語を習得する場合などが、 この状 況に当てはまる。 日標言語が話 されていない環境 (これを外国語環境 と呼ぶ)で第二言語習得を行なっ た事例ではない。 この状況 は、 日本で 日本語母語話者が英語を学習する場合などが該当す る。
第二言語環境 と外国語環境 とでは、 その学習条件が極めて異なるのは言 うまで もない。最 も大 きな 相違は、 日標言語 に接触する量的な時間である。第二言語環境の場合、一体 どの くらいの時間、 日標 言語 に接触す るのであろうか。 このようなことを定量化 した研究がい くつかあり、その結論 も様々で ある (例えば、伊東 (1997)を 参照 されたい)。 実際、接触時間を計測す ることは、極めて困難な問 題であって、正確な解答は出そうにない。なぜならば、第二言語環境 とはいえ、個人の生活習慣によっ てかな り異なる状況が考え られるか らである。例えば、 日本人がアメ リカに住んでいたとして も、英 語 と接触 しないで、 日本人の友達 とだけ日本語で話を している可能性 もある。それで も最低限の生活 はで きる。 このような場合 は、たとえ第二言語環境 にいたとして も、 日標言語 との接触量 は極めて少 量 になる。一方、 アメ リカでの生活で、英語をかなり使用 して生活する場合 も考え られる。 したが っ て、第二言語環境だか ら一 日で何時間 ぐらい接触 しているという具体的な数字を明言することは極め て難 しい。
しか しなが ら、無理 を承知で、「平均的な」生活を していると考え られる小学生の目標言語 との接 触量 について数字を出 してみたい。現地校 に通 っているのであれば、学校 にいる間は少な くとも第二 言語環境 にいることになる。∈5)そ して、放課後、近 くの友達 と遊んだ りす るな らば、 その時間 も日 標言語 との接触の時間である。沈黙 していたりする時間 もあるため、計算 は難 しいが、少な く見積 もっ て、一 日で6時間 (360分)は日標言語 と接触する時間があると考えてみたい。±0日曜 日は母語ば か り話 していたとして も、 1週 間で30時間 (1,800分)になる。
それでは、外国語環境の場合 はどうであろうか。川ヽ学校で英語の時間が1週間に 1時 間 (45分)設
けられているとする。 この うち、実際に何分 ぐらい英語 に接 しているであろうか。私の これまでの授 業参観経験を踏 まえて見積 もれば、 日本人の先生が中心の授業な らば、 どうして も日本語が多 くなる
し、使用す る英語 も、OK,Good,He1lo,Thttk you,Good jobな どとい った定型表現がかな りの 割合を占める。C6)したが って、授業形態 によって も異 なるが、外国語環境での英語接触量 は多 くて 20分ぐらいである。 この数字 は、第二言語環境 とは大 きく異なる。
ここで、論理的には可能である 2つ の主張を考えてみたい。 1う目の主張 は、た しかに外国語学習
白 畑 知 彦
環境では非常 に少ない英語接触量 しかないが、幼年期に外国語の学習を開始 しさえすれば、第二言語 環境の学習者 とほとんど変わ らない レベルの言語能力に到達できるというものである。 これはかなり 強い主張であり、経験的にも受 け入れ難 いものと言わざるを得ないだろう。 もう 1つ の主張は、外国 語学習環境では、到達度 において第二言語環境下の学習者には及ばないが、幼年期に学習を開始 した 人 は、その期間学習を していない人 よりも、その後、おそ らく永続的に、より高い言語能力を維持す ることができる、 というものである。本稿 は、 この第2番目の主張が正 しいかどうか調査 しようとす るものである。
次に、それでは、 もし外国語環境での早期外国語学習経験者 (Ex)と非経験者 (Non―Ex)間で当 該言語能力に差が生 じるな らば、それは言語能力のどの側面 に差が生 じるのだろうか という興味深い 疑間が湧いて くる。 この疑間に対する答えは、 どの様な学習形態が取 られるかにより異なって くるだ ろうが、 ここではA小学校での学習環境下 に絞 って議論 していきたい。前述 したように、A小学校で は、文字の積極的導入 はしなかった。そ して、それに附随す るように、英文読解練習 もしなか った。
したが って、読解に関 しては、小学校での英語授業の直接的影響 は少ないと、 ここでは判断する。英 文を書 く練習 も同様である。単語 レベルでさえ も書 く練習を しなか ったので、生徒が英単語を正確に 書 けることに影響を与えている可能性 は低い。
やはり、最 も影響がありそ うな分野 は、聞 くことと話す ことの領域であろう。そ して、英語を使 っ て積極的に話 を しよ うとす る姿勢であろう。A小学校では、ALTを中心 とす るティーム・ テ ィーチ ングの授業が行なわれ、子 ども達 も英語話者の音声を耳にし、発話練習 も比較的多 く取 り入れ られて きた。加えて、英語を使用 して積極的にコ ミュニケーションを図ろうとする態度を養成 しようとした。
以上のような背景か ら、A小学校で英語授業を受 けた児童 (Ex)の英語能力 に関 し、以下の3点を 調査課題 (research questions)と して立て、実験を行ない、結果を分析することに した。
調査課題 :
英語授業を週 1回 3年間、合計105時間行なうと、次のような効果が期待できるのではないか。
(al ExはNon―Exよ りも音素識別能力に優れる。
(b)ExはNon―Exよ りも英語発音能力に優れる。
C)Exは
Non―Exよ りも英語で積極的に話そうとし、発話語数 も多 くなる。4。 実験
4。 1 全体の概要
私達人間の音素識別能力に関 して、現在 までに判明 していることの 1つ に、次のようなものがある。
人間は人間言語で使用 されるあ らゆる音を識別す る能力を持 って生 まれて くる。C7)しか し、生後、
周囲で話 されている自分が習得 しようとす る言語 に必要ない音 は、早い時期に必要な しとみなされ、
結果 として音を識別することが困難 になる。 したが って、 日本人の幼児 も、生後6カ月 日ぐらいの時 期であるな ら、/1/と/r/の識別ができるが、生後10ケ月か ら12カ月 日位 には、 もう両者の音の識別が 難 しくなっているのである (桐谷、1996,1997;白 畑、1997)。
このような事実は、 よ く吟味された実験方法に基づ く研究成果か ら次第 に明 らかになって きたもの だ。ただ し、興味深いことに、それでは自分の母語にはない音素の識別 または発話が、一生涯、完全 に困難であるか と言えば、 どうも事実 はそうではないことが、海外帰国子女の例などか らも明 らかに なりつつある。小学校年齢の子 どもであるなら、だいたい最低 2〜 3年間現地に滞在 していると再び
研究開発学校で英語に接 した児童の英語能力調査 199
/1/と/r/な どの区別ができるようになることが半J明 している (例えば、Shirahata,1992)。 この音素 識別能力の回復の速度 は、おそ らく年少者の方がより少ない労力で達成できるのか も知れない。また、
外国語のイ ン トネーションなどの超分節音素の習得 も、年少者の方がより低い労力で済んで しまうの か も知れない。
このような理由か ら、一般に、幼 い時期か ら外国語学習 (ま たは第二言語習得)を開始すると、特 に音声面の能力を身につけるのに、 より有効であるという主張が生 まれ る (例えば、伊藤、1994)。
もし、 この主張が外国語環境下での学習者 に も当てはまるのであれば、小学校でALTから英語授業 を受 けて きた生徒 (Ex)の音素識別能力や発音能力 は、小学校で英語教育を受 けて こなか った生徒
(Non―Ex)の能力 よりも優れていると予想で きる。以上の議論 を基 に、 まず実験 1か ら解説 してい
きたい。
4.2 実験1
上で も若干述べたが、実験 1は B中 学校の全校生徒 に対 して実施 した。 しか し、本稿では、3年間 という最 も長 い期間 (小学校4年時、5年時、6年時の3年間)英語学習を経験 した後、中学校に入 学 した中学 1年 生の実験結果のみを報告 したい。なぜな らば、最 も顕著な効果を期待で きそうなのが 中学 1年 生だか らである。有効被験者数 は、Ex:115人、Non―Ex:122人である。
4.2.1 実験 1の 被験者
被験者 としての候補者 は最初、B中学校の1年生308名であ った。彼 らの うち157名がEx、 残 りの 151名がNon―Exである。 しか し、回答形式 を十分 に理解で きずに答える生徒 も出て くる可能性があ る。そのような被験者のデータを除外するために、実験 1終 了後におこなったアンケー ト調査の中で、
次のような質問を した。
1。 まず最初 に、今 日行 った リスニ ングの調査 についてお聞 きします。 あなたの解答が正 しいかどう かは別 として、答え方を理解 して解答 しま したか ?
(あ)答え方をよ く理解 して解答 した。 (い )だ いたい理解 して解答 した。
(う)あまりよ く分か らずに解答 した。 (え )答え方が全然分か らず解答 した。
********************************************
生徒達の自己申告ではあるが、 この質問に対 して、(う)か (え)に回答 した生徒 は、調査方法を 正 しく理解 しないで解答 したと判断 し、分析の対象外 とした。 さらに、テス ト終了後のアンケー ト調 査の別項 目で、小学校時代 に塾や英会話学校等で英語を習 っていた生徒がいるかどうか も確認 した。
A小学校以外で英語学習経験のあることは除外因子 と考え られ、当てはまる生徒 も本調査の被験者か ら外す ことを予め決めておいた。結果 として、Ex157名 の内、適任者 と判断された生徒 は115名で、42 名が除外 された。Non―Exの 方 は、候補者151名中、122名が適任者 とな り、29名を考慮外 とす ること
になった。
筆者 は、被験者である生徒のみなさんに、今回の調査 は個人が何点取 るか ということが調査 目的で はない し、本実験の得点が学校の成績に加味されるわけで もないので、総ての実験を通 じて、実名を 公表 しないことを約束 した。 しか し、大変貴重な資料 になるので、力を抜かずにや って欲 しいことも
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合わせて伝えておいた。
4.2.2 実験1:問題1
上述 したように、実験 1は 音素織別能力を試験する問題であり、 2つ のパー トか ら構成 されている。
それ らを「 問題1」「 問題2」 とす る。 ある音を他の音 と識別できるということには2種類ある。例 えば、/1/と/r/の音を連続 して聞いたとしよう。識別の第1種類 は、 2つ の音のどち らが/1/でどち
らが/r/かは分か らないが、 とにか く2つ の音が異なる音だと分か るというもの。第2種類 は、両者 の音が異 なることが分か り、かつ、 どちらの音が/1/でどち らが/r/かも識別で きることである。 した が って、最終的にlightが/1alt/と認識で きるためには、/1/を他の音 と区別で きるだけでな く、音声 的にどのような特色を備えた ものが/1/なのか も認識 していなければな らない。 また、小学校で生徒 達 は文字を積極的に習 ったわけではないので、文字を介 さない問題 と介 した問題の2種類ある方が、
音素識別能力についてより深 く調査で きると考えた。
このような理由か ら、実験 1の 内容を問題1と問題 2に 分 けた。問題 1は 、純粋に 2つ の音素を聞 き分 ける能力があるかどうかを調べ るテス トである。 したが って、使用 される単語の音列の中には、
英語の単語 には存在 しない音列の もの も含 まれている。生徒達 はテープか ら流 される 2つ の単語の発 音を聞いて、それ らが同 じ音であるかどうかを判定する。同 じ音だと判断 したな ら○を、異なる音だ と判断 したな らば×を解答欄の所定の位置に書 き入れるよう指示を受 ける。音素識別能力に使用 され た音素のペアは、次の10項目 (母音のペアが2組、子音のペアが8組)である。
/r/― /1/,/s/― /θ/,/s/― /∫/,/z/― /0/,/z/― /dz/,/b/― /v/,/b/― /p/,/f/― /h/, /c/ ― / /, /c/ ¨ /o/
実験 1の 問題の吹込みは、英語の部分が、音声学/音韻論を専門とする静岡大学教育学部外国人教 師のJ.M.氏 で、 日本語の部分は、実験 1の 調査者の一人である芦田有紀が担当 した。実験問題 と指 示はテープに吹き込まれ、放送によって各教室に流された。 │
問題 1は 全部で27問から構成されている。各質問をそれぞれ 1点 ずつの配点とし、27点満点である。
実際の問題を解答する前に、解答形式に慣れるため、例題が3問用意されていたが、例題は省略 した い。実験1:問題 1の 指示内容と出題の一覧を以下に載せておく。表 1に は問題 1の 出題一覧を載せ ておく。
********************************************
これか ら、英語の聞 き取 りに関する簡単な調査をお こないます。 この調査 は、みなさんの学校の英 語の成績 には関係ありませんので、楽な気持ちで取 り組んで ください。 ただ し、 しっか りと調べたい ので、一生懸命やってみて ください。
それでは、調査を始めます。
今か ら2つ の単語が発音 されます。その 2つ の単語が同 じ発音だと感 じたな らば○を、違 うと感 じ たな らば×を、(1)〜帥の解答欄の中に書 き入れて下 さい。
同 じ問題が2回くりかえされます。(こ の後、例題が続 く)
答え方が理解できま したか。それでは、実際の問題 に入 ります。準備を して ください。
研究開発学校で英語 に接 した児童の英語能力調査
問題 1は 全部で27問あります。
********************************************
201
表1.実験1:問題 1の 出題一覧
(1) /ri:d/, /1i:d/ (2) /s ank/, /Oank/
(4) /c:rt/, /c:rt/ (5) /fa lv/, /h alv/
(7)/at/,/ct/ (8)/∫ oo/,/SOo/
10 /v e l1/,/v e l1/ CD /Oank/,/Oank/
031 /h alv/, /h alv/ CO /1i:d/, /1i:d/
00 /soo/, /soo/ u71 /Oen/, /Oen/
191 /o:rt/, /c:rt/ 201 /ni:dz/, /ni:dz/
囲 /at/,/at/ 23 /∫oo/,/∫Oo/
20 /zen/, /zen/ 261 /ve l1/, /ve l1/
(3) /Oe n/, /zen/
(6) /b e l1/, /b e l1/
(9) /ni:z/, /ni:z/
021 /pЭ:1/, /bЭ:1/
051 /s ank/,/s aηk/
1181 /pЭ:1/, /pЭ:1/
211 /ri:d/, /ri:d/
241 /fa lv/, /fa lv/
m /nl:z/, /nl:z/
注 :す べての項 目が /ri:d/,/1i:d/,/ri:d/,/1i:d/と いうように2度繰 り返 された。 1回日と2回目
の間には2秒間、項 目(1)と項 目(2)の間には、解答時間 も考慮 し、 5秒 の間隔をおいた。
4.2.3 実験1:問題2
問題 2で は、 テープに録音 された音列を聞いて、それが左端 に提示 されている英単語の発音かどう か答えさせる問題である。つまり、問題 2で は、ある英語の音素をどのように発音するかが分か り、
さらにその音を正 しい綴 りと結びつけられるかということをテス トするものである。生徒達の手元に ある解答用紙には、左側に、各質問につ き 1つ ずつ英語の単語が書かれている。表 2を 参照 されたい。
放送で(1)→ (2)→(31の順に 3つ の単語が発音 される。生徒達 はその 3つ の発音の中か ら、解答用紙の左
側 に書かれている単語を正 しく発音 しているものを選 び、番号 に○をつける。○の数 (正答数)は 1
つ とは限 らない。 1つ も正 しいものが含まれない場合 もあり、逆に全て正 しい場合 もある。
この問題形式についての指示 は、放送 テープにも吹 き込んであるし、問題用紙 にも明記 しておいた。
このような形式にすることで、憶測で正答を得 ることを困難に し、学習者の音素識別能力をより正確 に測定できるものと考えた。 テス トに使用 された英単語 は全て中学 1年 生の教科書 (B中 学校では開 隆堂 のSunshine English Courseを 使用)で 1学期 に学習 した ものか ら選んだ。問題 2は 全部で16 間である。問題 1同 様、質問形式 に慣れて もらうため、最初に例題が4問用意 されている。例題 は省 略 したい。 また、問題 1同 様、各質問はそれぞれ 1点 ずつの配点 とし、問題 2は16点満点である。実 験1:問題 2の 指示 と出題の一覧を下 に記 してお く。
一番左側に、各問題 につ き 1つ ずつ英単語が書かれています。今か ら1、 2、 3の 3つ の単語が発 音 されます。書かれている単語を正 しく発音 しているものに○をつけて ください。○は 1つ でない時 もあります。 もし、 1〜 3の 中に正 しい発音の ものがないな らば、その時は解答欄には何 も書かない で ください。問題 は2回繰 り返 されます。
まず、例題 1か らや ってみま しょう (例題 は省略)。
答え方が理解で きま したか。それでは、実際の問題 に入 ります。準備を して ください。問題 2は 全
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部で16問あります。
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4.2.4 手順
1年生の調査 は、2000年12月 2日 に行 った。生徒 は教室で実験 1を 受 けた。 1年 生のクラスは9ク ラスあり、いずれのクラスも35名程度の生徒数である。 テス ト問題 は、校内放送を通 じて、カセ ッ ト テープに録音 された ものを流 した。最初に問題 1が 流 される。問題 1は 約9分間で終了す る。次 に、
問題 2の 説明が流 される。問題 2は 約12分間で、音素識別テス トは全体で約20分間かかる。 テス ト終 了後、生徒達 は約10分間、関連す るアンケー トに回答 し、実験 1は 全て終了 した。 ア ンケー ト調査結 果 は本稿の主題 とは直接関連がないので、 ここでは必要な箇所以外 は言及 しないことにする。
以上か ら分か るように、問題 1で は文字を介 さないで、純粋 に 2つ の音素の違いを聞 き分 けられる かどうかを試験するものであ り、問題 2で は文字列 と音素を結 び付 けられるかどうか試験するもので ある。 どち らの問題の方が小学校での英語授業の効果を期待できるか と言えば、小学校では文字 との 結び付 けをほとんどしなか ったのであるか ら、問題 1の 方により大 きな差が出て くると予想できる。
表2。 実験1:問題2の出題―覧
番号 単語 出題音列 正 答
1. feel 2. slt 3. like
4. big
5. slster
6. hers
7. pen
8。 that
9。 room 10. thank ll. very 12. she 13. friends 14. he
15。 they 16. but
(1)/fi:1/
(1)/01t/
(1)/r alk/
(1)/v lg/
(1)/∫lstor/
(1)/ho:rz/
(1)/pen/
(1)/Oat/
(1)/1u:In/
(1)/s ank/
(1)/ver1/
(1)/si:/
(1)/frendz/
(1)/fi:/
(1)/Oe 1/
(1)/p At/
(2)/fi:1/
(2)/01t/
(2)/1 a lk/
(2)/v lg/
υ)/∫lSter/
(2)/hЭ:rz/
(2)/ben/
(2)/z at/
(2)/ru:In/
(2)/s aηk/
(2)/ver1/
(2)/si:/
(2)/frendz/
(2)/hi:/
(2)/ze1/
(2)/p At/
(3)/hi:1/ (1)(2) (3)/s lt/ (3) (3)/1 alk/ (2)(3)
(3)/v lg/ なし 暢)/s lster/ 暢) (3)/he:rdz/ {1)(2) (3)/ben/ (1) (3)/Oat/ (1)(3)
(3)/1u:rr1/ (2) (3)/s aηk/ なし (3)/ber1/ (lX2)
(3)/∫i:/ (3) (3)/frendz/ (1)(2)(3) (3)/fi:/ (2) (3)/ze1/ (1) (3)/b At/ (3)
表3。 実験1:問題 1の 平均点 (27点満点)
Ex Non-Ex
平均点 21.76 21.98
研究開発学校で英語に接 した児童の英語能力調査 203
4.2.5 実験1:問題 1の 結果
「被験者」の項で も述べたが、音素識別問題の解答の仕方を十分 に理解せずに解答 したと思われ る 生徒など71名を除 き、Ex:115名、Non―Ex:122名の音素識別テス トの平均点を出 した (表3参照)。
平均点 は、Ex:21.76点、Non―Ex:21.98点であった (満点27点)。 この両者の平均点が意味のある差 なのか、それとも偶然 による差なのかを調べるため、統計的処理を施 した。両側検定の結果、両被験 者 グループの平均点 には、統計的有意差 は認 め られなか った (z=0。91,p>0.36n.s。 )。 つ まり、実 験1:問題 1に 関 して、ExとNon―Exの 達成度 は同 じであったことになる。
また、ANOVAを実施 して、各 クラスの平均点間に有意差が認 め られるか どうか検査 したが、各 クラス間には有意差 は認め られなか った (F(8,106)=0。 4,p>0。91 nos.)。 すなわち、 どのクラス の達成度 に も差がないとい うことである。 ちなみに、 クラス別最高点 は、Ex:22.27、 Non―Ex:
23.06、 最低点 :Ex:21。17、 Non―Ex:21.08である。
次に、項 目別に結果を分析 してみたい。表 4か らも分かるように、ExもNon―Exも 最 も成績の悪か っ た項 目は/s aηk/― /Oank/の ペアであった。成績の悪 い 1番 か ら4番までが、ExとNon―Exで同順で あった。すなわち、2番目は/rid/―/1i:d/、 3番目は/Oen/― /zen/、 4番目は/ni:z/‐/ni:dz/である。C8) 80%以上の正解率を示 している項 目のほとんどが、同一音素のペアであることに注 目したい。例えば、
/1/と/r/の識男1を考えてみよう。表4から、/1i:d/―/1i:d/の ペアの正解率はExで89.6%で ある。 そ し て、/ri:d/―/ri:d/の ペアも同 じく89.6%で ある。 この 2つ の数字だけを見れば、被験者達 は/1/と/r/
の区別ができていると思われるか も知れない。 しか し、その認識 は誤 りである。 もし両者の音素が本 当に識別で きているのな らば、/rid/― /1i:d/の正解率 (つまり、両者 は違 う音だ と判定で きること)
も同様に高 くなければな らない。 ところが、実際は/ri:d/―/1i:d/の正解率 は12.2%で あった。 これは、
Exl15人 中、14人しか/1/と/r/を別の音だと識別で きていないことを示す ものである。
4。 2.6 実験1:問題 2の 結果
実験1:問題 2の 意図は、被験者が文字配列 に合わせて、 ある音素/x/を 本当に/x/と判定できる かを調査す るものである。つまり、他 の音 と相対的に異なると分か るだけではな く、/x/が/x/とい う音色を持つ ものであると識別 しているかどうかをテス トするものである。表 5は 、実験1:問題2
のExとNon―Exの 結果である。Exの 平均点 は6.07点で、Non…Exの 平均点 は6.27点であ り、幾分Non―
Exの 方が高か った。 この平均点の差が意味のある差かどうか調べ るため、再びZ検 定を用い両側検定 を行 な った。 その結 果、 実験 1:問題 1同様 、 両者 の平均点 には有意差 は認 め られ なか った
(z=0。95,p>0.34n.s。 )。 また、詳細 は しないが、問題 2で もクラスによる平均値の有意差 は生 じて いないことが判明 した (F(8,97)=1.8,p>0。 08 nos。)。
204 白
畑 知 彦
表4.実験1:問題 1の 結果 :音 素識別能カテス ト問題別難易度 (%)
<Ex> <Non―Ex>
順位 問題番号&項目 正答率 順 位 問題番号&項目 正答率
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
9.
11.
12.
12.
12.
12.
16.
17.
17.
19.
19.
21.
22.
22.
24.
24.
26.
27.
4.4 12.2 27.0 33.0
75。7
79。1 82.6 83.5 84.4 84.4 88.7
89。6
89。6 89.6 89.6 92.2 93.0
93。0 93.9 93.9 94.8
95。7
95。7 97.4 97.4 98.3
99。1
1 .
2.
3.
4.
/s ank/- /lank/
/r i:d/- /li:d/
/6e n/ -/z e n/
/n i :z/ -/n i :d z/
/b e l1/―/v e l1/
/Soo/- /s o o/
/ni:d z/-/ni:d z/
/0e n/-/6e n/
/at/-/at/
/f aw/-/haw/
/ni:z/-/ni:z/
/p c:l/-/p c:l/
/l i :d/ -/l i :d/
/zen/-/zen/
/r i:d/-/r i:d/
/f aw/-/f aw/
/v ei/-/v eI/
/lank/-/Qank/
/haw/-/haw/
/o:r t/-/o:r t/
/b eI/-/b ei/
/at/-/at/
/s a;nk/-/s a;nk/
/p c:l/-/b c:l/
/Soo/-/Soo/
/e:rt/-/o:rt/
/soo/-/soo/
2 1 3 9
/s ank/― /Oank/
/ri:d/― /1i:d/
/Oe n/―/zen/
/n i :z/ -/n i :d z/
/Oe n/―/Oe n/
/b e l1/―/v e l1/
/at/-/at/
/p c:l/-/p c:I/
/f aw/-/f aw/
/n i :dz/ -/n i :d z/
/l i :d/ -/l i :d/
/zen/-/zen/
/n i :z/ -/n i :z/
/haw/-/haw/
/v eI/-/v eI/
/r i:d/-/r i:d/
/bel/-/be:/'/
/at/ -/ ot/
/f aw/-/haw/
/s ank/-/s a;nk/
/lank/-/}ank/
/a:r t/-/a:r t/
/Soo/- /s o o/
/p c:l/ -/b c:I/
/e;rt/-/a:rt/
/Soo/ -/Sou/
/soo/-/soo/
5,7 23.0 35.4 41.8 77.1 81.2 83.6 83.6 84.4 86.9 86.9 87.7 88.5 89.3 91.8 92.6 92.6 92.6 93.4 93.4
95。9
95。9 97.5 97.5 99.2 99.2
100。0
5。 17:
6. 26:
7. 22:
7. 18:
9。 24:
10. 20:
10.
12.
13.
14.
15。
16.
16.
16.
19。
19.
21.
21.
23. 8:
23. 12:
25。 19:
25. 23:
27. 16:
注 :下 線を引いたペアは 2つ の音が異なるペアの ものである。
表5。 実験1:問題 2の 平均点 (16点満点)
Ex Non-Ex
平均点 6.07 6.27
研究開発学校で英語 に接 した児童の英語能力調査
ExとNon―Exの 結果を項目ごとにもう少 し詳細に検討 してみよう。表 6に はExとNon―Exの 問題別 難易度の結果が示されている。極めて達成度の低かった項目、すなわち正解率が10%に も満たなかっ
た項 目は、Exで16項目中7項目あった。 それ らは、lik e:/r alk/― /1a lk/―/1a lk/(0.0%)、 th at:
/Oat/―/zat/―/Oat/(0.9%)、 thank:/s ank/―/s ank/―/s aηk/(2.6%)、 room:/1u:n1/―/ru:n1/―
/1u:m/ (5.2%)、 they:/Oe 1/―/ze 1/̲/ze 1/ (8.7%)、 very:/Ver1/̲/ver1/― /ber1/ (9.6%)、
sister/∫lstЭr/̲/∫lster/̲/slster/(9.6%)で ある。 また、正解率を50%未満 までにす ると、si仕/∫lt/―
/∫lt/―/S lt/(20.0%)、 feel:/fi:1/―/fi:1/―/hi:1/(31.3%)も含 まれるようになる。
興味深 いことに、Non―Exの 方 も正答率10%未満の項 目、 そ して正答率50%未満 までに含 まれる項 目がExと 全 く同 じものであ った。ExとNon―Exが同様の難易度を示 していることがよ く分か る。 し か も、それは、以下の比較か らも明確なように、質的にもほぼ同 じである (%の1順序はEx:Non―Ex)。
す なわ ちlike:0.0%:2.5%、 th at:0.9%:0。 0%、 thank:2.6%:9。0%、 rOom:5。2%:5。7%、
they:8.79イ:7.49イ、 very: 9.69̀:7.49̀、 sister:9.69イ :7.49̀、 s it: 20.09イ:27.19̀、 fe el :31.3
%:26.2%。 つまり、同一項 目の達成度 において、必ず しもExの 方の正答率が高いわけではない。50
%以上の正答率を示 した他の7項目も同様の傾向があ り、表 6か らも明 らかなように、同一項 目でE
xの方が高い正答率を示 したものは3項目だけであった。
ここで、解答する正解選択肢数が問題の難易度 に影響 したかどうか考察 したい。表 6の「選択肢数」
の項を参照 されたい。各問題で正解を得 るために、解答すべ き選択肢の数が記入 してある。 この数字 と難易度を比較 してみよう。例えば、Exに おいて正答率が10%以下の問題の中には、選択肢数2が 3項目、 1が 3項目、 0が 1項 目含まれている。選択肢数 0は 全体で2項目しかないことも考慮 に入 れれば、片寄 った傾向がないことが分かる。他の箇所 も同様で、正解選択肢数 は全体に分散 していて、
選択肢数が問題の難易度 に影響を与えた可能性 は極めて低いと考え られる。
4.2.7 実験 1の まとめ
ExとNon―Exで、音素識別能力に差がなか った。 したが って、A小学校で行なわれた英語授業 は、
おそ らく生徒達の音素識別能力の伸長 に影響を与えなか ったと言えよう。次のような疑間があるか も 知れない。すなわち、「 問題 2に ついては音 と文字 (綴り)を結 び付 ける必要があるが、 このような 活動 はExもA小学校では行な っていない。 したが って、 たとえ音が分か ったとして も、 それを綴 り と結び付 ける能力 はまた別のものである。それはExもNon―Exも 中学校 に入学 してか ら学習 したもの である。 したが って、両者 に差がないのはA小学校の英語授業が効果がなか ったためではな く、別の 要因、例えば中学校の英語授業の影響、 とも考え られる。」 しか し、 もしそ うな らば、問題 1で は両
グループに差が生 じて もよいはずであるが、事実 は生 じていなか ったことが説明できな くなる。
以下か ら実験 2に 移 りたい。前述の通 り、実験 2で はExとNon―Exの 発音能力を比較 した。
表6。 実験1:問題別難易度(%) Exの 結果
難易度 問題番号
白 畑 知 彦
単語 と放送 された発音 選択数 正答率(%)
1 2 3 4 5 6 6 8 9 10 11 12 13 14 15 16
Non―Exの結 果
難易度 問題番号
like: /r ak/-/L ak/-/l ark/
th a t: /6*t/- /zat/- /6at/
th a n k: /s ank/-/s ank/-/s ank/
ro o m: /Iu:m/-/r u:m/-/Lu:m/
th e y: /6eJ-/zet/-/zer/
v e r y: /v er /-/v er t/-/b er r/
sister: / Srctar/ - / l;^ster / -/ s rster /
slt: /ift/-/|ft/-/s tt/
fe e l: /t i:l/-/t i:l/-/hi:l/
h e rs: /h e:rz/-/h e:rz/-/h e:rdz b ig: /v ts/-/v tg/-/v tg/
s h e: /si:/-/si:/-/|ri:/
friends: /f r e n d z/-/fr e n d z/-f. r e n d z/
h e : /f. i :/-/hi :/-/f i :/
b u t: /p t't/-/p tt/-/b fi/
p e n: /p e n/-/b e n/-/b e n/
単語 と放送 された発音
0.0 0.9 2.6 5.2 8.7 9.6 9.6
20。0 31.3 52.2 55.7 63.5 77.4 80.9 93.9 97.4
選択数 正答率(%)
3 8 10 9 15 11 5 2 1
6 4 12 13 14 16 7
2 2 0 1 1 2 1 1 2 2 0 1 3 1 1 1
1 2 3 4 4 4 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
8 3 9 15 11 5 10
1 2 4 6 12 13 14 16 7
2 2 1 1 2 1
0 2 1 0 2 1 3 1 1 1
0。0 2.5
5。7 7.4 7.4 7.4 9.0 26.2 27.1 58.2 61.5 63.1 73.8 84.4
95。1 95。9
th a t: /6at/- /zat/- /6at/
like: /r a ft/ -/l a tk/ -/l a rk/
ro o m: /lu:m/-/r u:m/-/lu:m/
th e y: /6er/-/zer/-/zer/
very: /v en/-/ver t/-/berr/
sister: /Srctar/ -/Srcter/ -/s tster/
th a n k: /s ank/-/s ank/-/s alnk/
fe e I: /f i:l/-/f i:l/-/hi:I/
sit: / Sft/ -/ I;ft/ -/ s rt/
big: /v rg/-/v rg/-/v rg/
h e r s: /h e:rz/-/h e:rz/-/h e:rd z/
s h e: /si:/-/si:/-/51:/
friends: /f rendz/-/fren dz/-/f rendz/
he: /fi:/-/hi:/-/fi:/
b u t: /p t't/-/p tt/-/b ft/
p e n: /p en/-/b en/-/b e n/