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Having Empathy with Each Other when Talking to Friends at Junior High Schools

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全文

(1)

問題と目的

中学生は,思春期を迎え,心も体も大きく変化し,ストレスを感じ苦しむことも多くなる時期で ある。そのため,中学生の悩み・心理的な問題などに関する研究は,大変重要であると思われる。個 人が行う悩みへの対処法の一つとして,他者への悩みの相談,というものが考えられる。悩みの開 示について片山(1996)は, 自己開示は,特に,否定的な心理状態にある人にとって,身体健康上,

また精神健康上,重要な効果を持つ と述べており,中学生にとっても,他者に相談をするという のは効果的な対処方法の一つであろう。

またこの時期は, 徐々に親(家庭)から距離を置き,それと反比例するかのように,「友人」へと ウエイトを注いでいく (宮下,1995)といわれ,同世代の友人との関係が大きな意味を持つ。悩み の相談においても,中学生が相談相手として友人を挙げる割合が多いことを数多くの研究が示して いる(ex.横倉・進藤・三輪,2003)

しかし一方で,子ども同士の関係の希薄化が指摘され,それにより様々な問題が生じているとい われている(松井,1999)。また,渡部・出谷(2006)は, 現在の中学生の友人関係は自分を率直に 出すことを恐れ,嫌われないように気を遣った友人関係であり,場面や状況に合わせて過度に自分 を変化させ,浅く一時的な人間関係にとどめるといった,ある種の危機状況にある と述べている。

こういった現状の中で,中学生の友達同士による相談はどのような意味を持ち,どのような効果を 与えているのだろうか。

そこで本研究は,中学生の友達同士の相談に焦点を当て,その与えている効果の実態を明らかに 中学生の友達同士の相談における共感について

半澤 歩

*・渡部 玲二郎 **

2007

11

30

受理)

Having Empathy with Each Other when Talking to Friends at Junior High Schools

Ayumi H ANZAWA * and Reijirou W ATANABE **

(Received November 30, 2007)

土浦児童相談所(〒

300‐0815 土浦市中高津 2‐10‐50 ; Tsuchiura Child Guidance Office,Tsuchiura 300

0815 Japan)

茨城大学教育学部人間環境教育教室(〒

310‐8512 水戸市文京 2‐1‐1 ; Laboratory of Human Environmental Education, College of Education,Ibaraki University,Mito 310

8512 Japan)

*

**

(2)

したいと考える。また,心理療法の中でも共感は重要なものであると考えられていること,道具的 サポートは専門家から与えられるのが効果的であるが,情緒的サポートは家族成員や友人など親密 な他者から供給されるのが望ましいといわれている(浦,1999)といったことから,アドバイスを 与えたり,解決策を与えたりする相談ではなく,本研究では共感することに注目する。

第一著者は,卒業研究(半澤,2005)で,共感を示すという行動が,相談を持ちかけた側に,ど のような効果を与えているのかということを明らかにするために,心理臨床の専門家のいう共感の 効果1)を参考に,質問紙を作成し,大学生を対象に質問紙調査を行い,「共感されることの効果」を 検討した。その結果,「自分に目を向けるようになるという効果」「相手からの支えを感じるという効 果」「自分の気持ち・悩みが明確になるという効果」「悩んでいる自分を受け入れるようになるという 効果」の

4

つの効果が明らかになった。つまり,身近な人同士で相談しあい,助け合うということ も,重要な支えとなる,ということを示唆することができた。そこで本研究でも,卒業研究で用い た質問紙を中学生用に表現を変えて使用し,中学生の「共感されることの効果」を明らかにしたい と考える。

ここで,前述したように子ども同士の関係の希薄化が指摘されていること,また発達的な問題か ら,果たして中学生は心理臨床の専門家のいうような共感(自分の感情・体験にとらわれない自他 の区別がついた共感)ができているのか,という問題が出てくる。しかし,ソーシャル・スキルの 中に,「人の話を聴くスキル」というものがあり,これは悩みを相談されたときに共感することと,共 通する部分が多い。そのため,効果的な共感をソーシャル・スキルとして身に付けて上手に相談に のることのできる生徒もいると考えられる。またそういった共感ができる生徒自体は少なくても,

人というのは相談を持ちかける際に相手を選ぶと思われることから,上記の共感をされた生徒もい るのではないかと考え,卒業研究で用いた質問紙を中学生に行うのは可能であると考えた。被調査 者全員が対象とならなくても,共感をされたことがあると感じる生徒を対象に質問紙調査を行うこ とで,中学生の感じる共感の効果を明らかにすることができるだろう。また,大学生の結果と比較 することで,中学生の特徴を明らかにすることもできると考える。

中学生の感じる共感の効果を明らかにすることで,例えば,共感性を育てる

SGE

といったプログ ラムを考えたときに,育てる部分を中学生に可能なものに絞り,効率のよいものにする,といった 中学生のできることを強みとして活かすことが考えられる。 スクールカウンセラーや学校心理士 に対して今後ますます予防的,開発的なプログラムの立案と実施が求められることは予想される

(松尾,2002)といわれているように,SCや相談員も,こういった視点が必要になっていくだろう。

また,前述の質問紙調査では,自分の感情・体験にとらわれない自他の区別がついた共感の効果 を扱う質問紙を用いるため,その経験がない中学生は調査の対象にならない。しかしそれだけでは 中学生の友達同士の相談の共感の効果全てを明らかにしたことにはならないと考えられる。なぜな ら,「時に感情的に巻き込まれることがありつつ,友人と同じ気持ちになり,友人に対して暖かい気 持ちを持ったり友人の気持ちを考えたりする中学生なりの共感」もまた,中学生の時期に必要であ り,彼らに何らかの効果・影響を与えていると考えられるからである。宮下(1995)によると, 青 年は,みな同じような悩みや不安を持っていることが多く,「自分だけなのではない」と分かること で,かなり緊張感が和らぎ,安心するという場合が多い という。中学生にとっては,利害関係の 無い友人が自分の気持ちを分かってくれることの意味は大変大きいであろう。また,友人のもらい

(3)

泣き・友人も同じように感じた経験があるという事実に救われることもあると考えられる。

そこで本研究では,共感を,自分の感情・体験にとらわれない自他の区別のついた共感である 真の共感 と,感情的に巻き込まれたりすることがあるような発達段階に見合った共感である 中 学生なりの共感 とに分けて考えていくことにする。

そのため前述の質問紙調査とは別に,中学生なりの共感 によってどのようなものを得たのか・変 化があったか,ということも明らかにすることにする。 真の共感 に関しては、大学生との比較が 可能な質問紙調査を行うが、このことについては,中学生なりの共感をされた経験を持つ者を対象 に,半構造化面接を行うことにする。それは,質問紙調査ではなく面接調査にしたほうが,自分の 気持ちの内省や,その時のことを思い出すことが可能であると考えたためである。

さらに,別の問題として,友達に相談をすることができる生徒を対象にして,共感をされた時の 効果を明らかにしたところで,相談しあえる関係ができていない生徒には意味がないとも考えられ る。そこで本研究では,積極的に「相談できる理由」を探っていきたいと考え,前述の面接調査で,

中学生なりの共感の効果を明らかにすると同時に,友達に相談ができるようになるためにはどのよ うなことが必要であるのかも聞くことにした。

以上のことを明らかにすることにより,中学生の日常生活にも関わっていく,スクールカウンセ ラー・相談員などの援助方略を考える際の手助けになればと考えている。中学生の相談できる理由 を明らかにすることで,今まであまりなかった,中学生同士の相談を促す,という関わりを考える ことができる。またその時に,真の共感・中学生なりの共感の効果を検討することにより,中学生 の時期にできる共感というものが明らかになっていれば,併せて発達に合った,共感性を育てるプ ログラムを実施する,という方法を探ることもできるのではないだろうか。また,相談ができる理 由と,共感の効果を明らかにすることで,中学生にとっての友達への相談の意味・重要性について も考察できるのではないかと考える。

方法

1.質問紙調査 

 調査対象:茨城県の公立

A

中学校

1

3

年生,計

405

名(男子

191

名,女子

194

名,性別不明

20

名)

 調査時期:2006

11

月上旬。

 手続き:担任教諭に,質問紙を入れ,教示文の書いた紙を貼った封筒を渡した後,質問紙をクラ スごとに実施するよう依頼し,後日回収した。

 調査内容:(1)友達に相談をする頻度:「あなたは,深刻な問題を抱えたり,悩みや不安が大き かったりしたときに,どのくらい友達に相談しますか?当てはまる数字に○を付けてください」と いう教示文に対して,「1.全く相談しない」から「6.よく相談する」までの

6

件法で回答を求めた。

これは,悩みを全く相談しないという人を分析から除くために設定した。本研究は,悩みを相談し,

共感されたときの効果を明らかにするのが目的であるため,相談を全くしないという人は被調査者 として適切ではないと考えたからである。また,面接調査の対象者を選ぶ,というねらいも持って

(4)

いた。「1.全く相談しない」と回答した被調査者には,「あなたは,深刻な問題を抱えたり,悩みや 不安が大きかったりした時には,どんな方法で対処しますか?」という質問を設定し,自由記述を 求めた。

(2)中学生なりの共感をされた経験の頻度(1)の質問に対し,「2.ほとんど相談しない」から「6.

よく相談する」と回答した被調査者を対象に,「相談をした友達が,あなたの話を聞いて,気持ちを 少しでも分かってくれたと感じたこと,もしくは,友達が心を動かされて自分と同じ気持ちになっ てくれたと感じたことはありますか?あてはまる数字に○を付けてください」という教示を行った。

「1.よくわからない」を加え,「2.全くない」から「7.よくある」まで,7件法で回答を求めた。

これは,面接調査のために,中学生なりの共感をされた経験の頻度の高い対象者を選ぶ,という目 的で設定した。

(3)真の共感をされた経験の頻度(2)の質問と同じく,(1)の質問に対し,「2.ほとんど相談しな い」から「6.よく相談する」と回答した被調査者を対象に,(2)とは少し違い,相談をした友達 が,友達自身の体験や気持ちにとらわれないで,あなたの立場に立って,あなた自身の気持ちを感 じ取ってくれたり,あなた自身の気持ちを理解してくれた,と感じたことはありますか?あてはま る数字に○を付けてください」という教示を行った。「1.よくわからない」を加え,「2.全くない」か ら「7.よくある」までの

7

件法で回答を求めた。ここで「3.ほとんどない」から「7.よくある」

と答えた被調査者にだけ,次の(4)の真の共感の効果に関する質問に答えてもらうことにした。こ れは,真の共感がよく分からない・されたことが全くないという人を分析から除くというねらいも 持っている。(4)の質問は,真の共感されることの効果を明らかにするのが目的であるため,真の 共感がよく分からない・されたことが全くないという人は被調査者として適切ではないと考えたか らである。「1.よくわからない」「2.全くない」と回答した被調査者には,「あなたは友達に相談し たときに,友達がどんな風にしてくれると嬉しかったり満足したりしますか?」という質問を設定 し,自由記述を求めた。

(4)真の共感の効果:半澤(2005)で用いた,共感されることの効果に関する

22

項目からなる尺度 を,中学生に分かりやすいように表現を一部変えて用いた。(例:漠然としていた感じ→ぼんやりと してはっきりしない感じ,など)「友達に相談をしたときに,相談をした友達が,友達自身の気持ち や体験にとらわれないで,あなた自身の気持ちを感じてくれているなぁと思った時,あなたがどの ように感じたか,どのような変化があったかを考えてみてください。そしてそれが次の項目にどの くらいあてはまるかを考えて,当てはまる所に○をつけてください。」という教示文に対し,それぞ れの項目がどのくらいあてはまるかを,「1.あてはまらない」から「5.あてはまる」までの

5

件法 で回答を求めた。

(5)面接調査の依頼:面接調査の協力者を募るために添付した。まず(1)〜(4)の質問紙とは切 り離すことを被調査者に伝え,面接調査についての説明をし,「協力してもいいという人は」という 但し書きをつけた上で,学年・クラス・氏名と,(1)(2)の質問にどう答えたか,を回答するよう求 めた。

(5)

2.面接調査

 調査対象

A

中学校

3

年生

6

名(男子

3

名,女子

3

名)。質問紙調査の際に面接調査への協力の意 思を示し,友達に相談をすることがあり,(1)の相談をする頻度の質問に「3.あまり相談しない」

「4.たまに相談する」「5.ときどき相談する」「6.よく相談する」のどれかに回答し,(2)の中学生 なりの共感をされた経験の頻度の質問に「5.たまにある」「6.ときどきある」「7.よくある」のど れかに回答した生徒。

 調査時期:2006

11

月中旬。

 調査内容:a.友達に相談できる理由「友達に悩みを相談できる理由について教えてください」

「こういうことがあれば,相談しづらい人もできるようになるのではないかということがあれば教 えてください」という質問をし,思いついたことから自由に語ってもらった。

 b.共感されて感じたこと・得たもの・変化したこと:「友達が,気持ちを少しでも分かってくれ たと思った時,友達が自分と同じ気持ちになってくれたと思った時に,感じたこと・何か得たもの・

変化したことを教えてください」という質問をし,思いついたことから自由に語ってもらった。

 データの分析:本研究では,面接調査で得られた中学生自身の発言データをなるべく活かし,分 析したいと考えた。そのため,データそのものに語らせ,整理されていないさまざまな情報の中か ら,ボトムアップ的に新しい概念やカテゴリーを形成していく手法である,KJ法(川喜多,1967)

を分析方法として用いることにした。KJ法は主にデータをまとめ,図解化するために用いた。

結果と考察

(1)真の共感の効果 共感されることの効果の

22

項目について,半澤(2005)と同様に,主因子 法・プロマックス回転により因子分析を行った。固有値の減衰状況と因子の解釈のしやすさを考慮 し,検討した結果,

3

因子構造が妥当であると判断した。因子負荷量が

.30

以下となる項目と,複数 の因子に同程度負荷している項目を除外し,再度プロマックス回転による因子分析を行った結果,

Table1

のような結果が得られた。

1

因子に含まれた

8

項目は,「目をそらしていたことを振り返ってみようと思った」「自分につい てじっくり考えてみようと思った」といった内容で,目を背けがちだったり,否定しがちであった りする自分自身のことに,関心を持ったり目が向くようになったりするという意味を持つ。これ は,抱えている悩みや問題を相手に相談していく中で,自分の気持ちを受けとめられたり,理解さ れたりすることで,自分自身が否定的であった部分を見ずに済ませてしまいたいという気持ちが少 なくなり,目をそらしていたことを振り返ってみよう,自分のいやな所も見つめてみようと思う,

ということだろう。また,相手から共感されることで,さらに相手にもっと分かってもらいたいと いう気持ちが湧いてきて,自分についてじっくり考えてみたり,悩んでいることをきちんと見つめ てみたりするようになるのだろう。以上のことから,「自分に目を向けるようになるという効果」の 因子とした。

2

因子に含まれた

5

項目は「相手との関係が近くなったと感じた」「この人なら自分のことを分 かってくれると思った」といった内容で,共感してくれた相手からの承認や支持,そしてそれに伴

(6)

う安心などを感じるという意味を持つ。これは,相手が共感しているということは,自分の言って いることが伝わっている,分かってもらえている,ということであり,それにより自分は一人では ない,この人なら自分のことを分かってくれる,と感じたり,相手から支えられている・受けとめ られていると感じたりするのであろう。以上のことから,「相手からの支えを感じるという効果」の 因子とした。

第3因子に含まれた2項目は,「悩んでいる気持ちをそれでもよいと思えた」「悩んでいる自分も自 分自身であると思った」といった内容で,悩んでいる気持ちや悩みを持っていること自体を肯定で きるようになったり,受け入れられるようになったりするという意味を持つ。これは,抱えている 悩みや問題を相手が共感してくれたということは,自分が受け入れられずにいた,悩んでいる気持 ちを,相手が受けとめてくれている,受け入れてくれている,と感じることであり,それにより,

悩んでいたり,それを気にしていたりする自分そのままを,それでもいいのだと受け入れられるよ うになるということだろう。以上のことから,「悩んでいる自分を受け入れるようになるという効 果」の因子とした。

各因子に負荷量の高い項目群の信頼性係数(Cronbachのα係数)については,「悩んでいる自分を 受け入れるようになるという効果」において若干値が低かったが,おおむね信頼性が保証されたと 考えられる。

Table 1 共感されることの効果の項目

3

共通性

2

項目内容

1

.584 .498 .452 .457 .463 .332 .436 .385 –.136

–.082 –.086 .003 .157 .101 .196 .263 –.147

–.010 .040 –.005 .051 .172 .198 .129 .901

.750 .688 .678 .554 .394 .392 .349

<1 自分に目を向けるようになる> α=

.853 22

.目をそらしていたことを振り返ってみようと思った

20

.自分についてじっくり考えてみようと思った

17

.自分のいやな所も見つめようと思った

21

.自分の気持ちが明確になった

14

.悩んでいることをきちんと見つめようと思った 2.自分を受け入れようと思った

11

.自分が感じていることと向き合おうと思った

13

.悩んでいる自分を認めることができた

.617 .461 .519 .541 .462 .042

–.030 .053 –.172 –.019 .774

.760 .728 .658 .645 –.012

–.130 –.053 .212 .067

<2 相手からの支えを感じる> α=

.839 16

.相手との関係が近くなったと感じた

6.この人なら自分のことを分かってくれると思った

12

.安心感を得た

18

.自分は一人ではないと思った 3.相手に認められたと感じた

.457 .541 .751

.667 .030

–.012 –.216

.202

<3 悩んでいる自分を受け入れるようになる> α=

.612

7.悩んでいる気持ちをそれでもよいと思えた

8.悩んでいる自分も自分自身であると思った

.431 .602

.511

因子相関行列 1

(7)

以上のように,因子分析の結果,自分の感情・体験にとらわれない自他の区別がついた共感の効 果として,「自分に目を向けるようになる」「相手からの支えを感じる」「悩んでいる自分を受け入れる ようになる」の

3

つの因子が抽出された。これらの因子はいずれも解釈可能なものである。このこ とから,中学生という時期であっても,友達に共感されることでいくつかの効果を得ていることが 分かる。これは,中学生の友達同士の相談によって共感されることは,実際に悩んでいる生徒に とって効果があるということを示していると考えられる。

また,半澤(2005)の大学生の結果と比較すると,大学生の共感されたときに感じる効果は,「自 分に目を向けるようになるという効果」「相手からの支えを感じるという効果」「自分の気持ち・悩み が明確になるという効果」「悩んでいる自分を受け入れるようになるという効果」の

4

つであった。

「自分に目を向けるようになるという効果」「相手からの支えを感じるという効果」「悩んでいる自 分を受け入れるようになるという効果」の

3

つが,大学生と中学生で共通であり,因子を構成する 項目もほとんど一緒であった。このことから,共感された際には,大学生でも中学生でも,目を背 けがちだったり,否定しがちであったりする自分自身のことに,関心を持ったり目が向くように なったりするという効果を感じたり,共感してくれた相手からの承認や支持,そしてそれに伴う安 心などを感じたり,悩んでいる気持ちや悩みを持っていること自体を肯定できるようになったり,

受け入れられるようになったりするという効果を感じるようである。

一方で,「自分の気持ち・悩みが明確になる」の因子は,中学生の効果としては得られなかった。

この効果が中学生の共感されたことの効果として抽出されなかった理由として,中学生にとって は,漠然とした悩みや不安を持っているときに,それを言語化して友達に相談するということが難 しいからではないか,と考えられる。大学生になると語彙も増え,それまでに悩んで相談した経験 などから,自分の現状や気持ちをある程度言葉にして表現することができるだろう。しかしなが ら,中学生の段階では,語彙の少なさ,悩みの経験の少なさなどから,混乱していたり,漠然とし たりしている気持ちを,言葉にして相談という形にすることすら難しいのかもしれない。もしそう であるならば,この点においては,言語表現を助けることが可能な,教員・相談員などからの介入・

援助が必要になってくると考えられる。

(2)中学生なりの共感の効果 面接調査で得られたデータを分析するために,言語データを切片化 し,ラベル作りを行った。内容に応じ,データから直接切片化したものと,データの内容を圧縮し,

要約してから切片化したものがある。ラベル作りの結果,全対象者の面接データから,67個のラベ ルが得られた。

67

個のラベルを対象に,学校臨床心理学を専攻している大学院生

4

名とともに

KJ

法で分析を行っ たところ,Figure1のような結果となった。これによると,「2人の関係が深まる」「共感されると安 心したり楽になったりする」「相手の気持ちに近づく・自分の心が開く」といった,真の共感の効果 と共通する部分もあったが,「その子みたいになろうと思って,それを実践した」「分かってもらえた ら,自分はおかしくない,間違ってないと思う」(この体験は)自分だけじゃないんだって思う」

といった,質問紙調査では得られなかった効果もみられた。

これらのことから,まず,中学生なりの共感であっても相談した生徒に様々な変化をもたらして いることが分かる。また,中学生なりの共感の特徴として,一体感やつながりを強める一方で,分

(8)

かってもらえなかったときの不安も大きいということも分かった。

さらに,因子分析で得られた「自分に目を向けるようになる」「悩んでいる自分を受け入れるよう になる」といった内容は,中学生なりの共感の効果としては語られなかった。このことから,中学 生なりの共感というのは,自分自身に関心を向けるというよりは,自分は間違っていない,自分だ けではない,ということが強く感じられるものであるということが推察される。

これまで,中学生を対象に,相談相手に誰を選ぶか,ということを調査した研究は数多くあった が,どうして相談相手として友達が選ばれるのか,そしてその相談がどのようなものをもたらすの か,といったことを明らかにしようとした研究は少なかったように思う。本研究により,友達に共 感されることにはいくつかの効果があり,友達同士の関係を深めたり,自分の理想像を得たり,自 分は間違っていない自分だけではないと感じたりすることができる,ということが明らかになっ た。このことが,友達への相談が中学生の相談の上位にくる要因のひとつである,ということを示 唆しているのではないだろうか。

また,本研究から得られた結果を活かす視点のひとつとして,学校で行うSSTやSGEのプロ グラムに活かす,ということが考えられる。 スクールカウンセラーや学校心理士に対して今後ます ます予防的,開発的なプログラムの立案と実施が求められることは予想される (松尾,2002)とい われているように,学校などの現場で働くSCや相談員にもこういった知識は役立つと思われる。

例えば,中学生の共感では「自分の気持ち・悩みが明確になるという効果」の因子が得られなかっ たことから,ここに教員・相談員などによる介入の必要性が示されたが,一方で「2人の関係が深

Figure 1 KJ

法による中学生なりの共感されることの効果の構造

(9)

まる」「共感されると安心したり楽になったりする」「相手の気持ちに近づく・自分の心が開く」「そ の子みたいになろうと思って,それを実践した」「分かってもらえたら,自分はおかしくない,間 違ってないと思う」(この体験は)自分だけじゃないんだって思う」といった効果は,中学生の持っ ている力として伸ばすことが可能であると考えられる。中学生という発達段階で友達にできる援助 の力を伸ばし,それを促すことで,相談しあう土壌が出来上がり,友達以外の,教員・相談員といっ た者への相談にもつながっていくのではないだろうか。

(3)相談ができる理由 相談ができる理由についても,中学生なりの共感の効果と同様に,まず面 接調査で得られたデータを切片化し,ラベル作りを行った。内容に応じ,データから直接切片化し たものと,データの内容を圧縮し,要約してから切片化したものがある。ラベル作りの結果,全対 象者の面接データから,138個のラベルが得られた。

138

個のラベルを対象に,学校臨床心理学を専攻している大学院生5名とともにKJ法で分析を 行ったところ,Figure2のような結果となった。また

Figure

2に入りきらなかった大グループの内 容について

Figure

3〜

Figure

5に示す。

友達に相談できる理由については,まず,「秘密を守ってくれる人」「信頼できる友人」「心理的に 近い人」,というように,相談相手に関する理由が多く挙げられ,中学生にとっては,相談相手がど のような人であるのか,ということが,相談するという行動に大きく関わっていることが分かった。

また,「悩みに合った相談相手」「物理的に近い人」,というように,悩みや問題の解決を優先し,そ のための相談相手を選ぶこともあるようである。

Figure 2

KJ

法による友達に相談できる理由

(10)

Figure 3

KJ

法による友達に相談できる理由の内容(

1

Figure 4

KJ

法による友達に相談できる理由の内容(

2

(11)

そして,「気にかけてくれる人」「自分が相談しやすい状況を作っていく」「部活の悩みを相談して いるうちに他の相談もできるようになった」「相談できない人は,なんかそういう,相談するってい うことなんかに慣れてないんだと思う」というまとまりから,生徒同士の関わりを増やす・関係を 深める・自己開示や感情表現を助ける,といった内容の,教員・相談員などによる,教育的なプロ グラムによる介入の可能性が示唆された。

また,「部活に入って相談できるようになった」という部活動の経験が重要であるものや,「関係を 保つために相談を利用する」という友達関係の難しさなど,中学生という時期特有の内容も明らか になった。そして,「友達との関係に気を使って相談しない」「相手をあまり疑ってしまうと,後に なって自分が嫌いになり,気分が沈んでしまうため,相談することに自分でブレーキをかけている」

というように,まさに友達に気を使って言いたいことが言えない,という状態もうかがうことがで きた。ここには教育的な介入とともに,現在の人間関係の希薄化の原因そのものを解消していくこ とも必要であるということが示された。

以上のように,相談ができる理由といっても,相談を促す,という目的で直接介入することがで きる理由と,もっと広く,中学生同士の人間関係の深まりが必要な理由とが見出された。また,相 談をただ促すだけでは,「関係を保つために相談を利用する」という内容にもあるように,相談しな ければならないということがストレスになってしまうこともある,ということも明らかになり,こ の点も考慮していかなければならないだろう。

Figure 5 KJ

法による友達に相談できる理由の内容(3)

(12)

まとめと今後の課題

本研究は,中学生の友達同士の相談に焦点を当て,友達に共感されることの効果と,友達に相談 できる要因について明らかにすることを目的に行われた。本研究では,共感を自分の感情・体験に とらわれない自他の区別のついた共感である 真の共感 と,感情的に巻き込まれたりすることが あるような発達段階に見合った共感である 中学生なりの共感 とに分け, 真の共感 については 質問紙調査, 中学生なりの共感 については面接調査を行い明らかにした。また,相談できる理由 についても面接調査を行い明らかにした。これにより,中学生が相談相手として友達を選ぶ意味,

相談を促し,それを効果的にするための介入方法などが考察された。

ここで,本研究では,想定する相談相手の友人について条件を加えなかった。そのため,調査対 象者が想定した友人が,同性であるか異性であるか,親しさの認知の違いはどうであるか,といっ たことは見ていない。実際には想定する友人の特徴によって,共感の効果の違いや,相談できる要 因なども変化することも考えられる。こういった点については,今後詳しく見ていく必要があると 考えられる。

また,今回は悩みの内容についても限定しなかった。例えば中学生の悩みを考えたときには,学 習の悩み・進路選択の悩み・友人関係の悩み・部活の悩みなど,悩みの内容を細かく分類すること ができる。悩みの中でも友達に相談しやすいもの,そうでないもの,友達同士の相談が効果的なも の,そうでないもの,といったものがある可能性もある。この点についても,今後検討する必要が あるだろう。

1)近藤(1981)によると,心理臨床の専門家が行う共感的理解とは, 解釈や批判や指示といった外側からの働きかけ とは対立する概念として提示されるとともに,治療者自身の感情や体験や先入見にとらわれない理解(投影の排 除)・自他の区別が維持されつつ行われる理解(同一視の排除),自分の理解が患者の感じているものと真に合致し ているか否かを絶えず確認していこうとする努力,などの諸点に重点が置かれている という。

引用文献

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16

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67

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pp

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宮下一博.

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4

自己への問い直し――青

(13)

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2003

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22

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渡部玲二郎・出谷浩一.2006.「中学生の友人関係において不適応をもたらす見せかけの自己行動−動機およびその形成

要因について−」『茨城大学教育実践研究』25,pp.213-225.

Figure 4   KJ 法による友達に相談できる理由の内容( 2 )

参照

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