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セラミックスコーティングによる基体の強化

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Academic year: 2021

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(1)

長野工業高等専門学校紀要 ・第22 (1990) 31

セラミックスコーティングによる基体の強化

森山実 鎌田喜一郎

Strengthening of Materials by Ceramic Coatings Minoru MORIYAMA and Kiichiro KAMATA

Oneof仙emethodsmostfrequentlyusedforstrengtheningceramicsorglass materials(substrates)istointroducecompressivestressesat仇esurface.Weprepared amorphousSiNxC,(Si3N一Sic,SiNxSic ,)filmsatalowtemperatureof400oCbythe plasmaCVDme仇odforapplicationtoprotectingcoatingmaterials.Thepreparedfilms showedastrongcompressivestressatthevicinityofSiccomposition.Asanapplication of仏estudyon也eintemalstressofthesefilms,weexaminedtheflexuralstreng仙 of crownglasssubstratescoatedwith仇efilms.Sicfilm(5JJmthick)hasbeenobservedto increasegreatlytheflexuralstrlength oftheglasssubstrate(1.2mmthick)totwicethat operatingbycompressiveintemalstressinitself.

1. . 看

セ ラ ミックスや ガラス基板 (基体) を強化す るためにしばしは用 い られてい る手法 の一つ は,基板 の表面 に圧縮応力 を生 じさせ ることであ る(l(3).この よ うな応力 は.熱強化(ther maltoughening)(4), イオソ交換(5)(6), ゆ う掛 (glazing)(7),応力誘起変態(8)等 に よ り働かせる

ことがで きる.

筆者 らは,先 にプラズマCVD法 を用 いてSi3NrSiC系 の混合膜(SiNxCy膜)を低温(400° C)で合成 した(9)が, この合成膜 中の内部応力 は,膜組成 によってはかな り強い圧縮 内部応力 を示す ことがわか った(10). そ こで本膜 をクラウンガラス基板上 に コーテ ィング し,そ の曲 げ強度 (抗折強度)を調べた.その結果,1.2mm厚 の ガ ラス基板 に約5JJm厚 のSiNxCy を コーテ ィングす ると,圧縮応力が働 くSiCに近 い組成 で は,基板 を含む全体 の曲げ強度 が約2倍 にも向上す ることがで きた.以下,その詳細 な結果 について報告す る.

2. 2‑1試料の合成

SiNxC,膜 は,容 量 結合 型 プ ラズ マCVD装置 を用 い て,10%SiH.(Ar希 釈),NH,,C2H4 及 びH2原料 ガスよ り合成 した(9).表 1.に,実験 で用いた ガス流量,エチ レンガスの流量比

●昭和61514日 窯業協会年会にて発表

= 機械工学科 助教授

=●長岡技術科学大学

原稿受付 平成291

(2)

32 森 山 実 ・鎌田喜一郎

Table1Gasflowrates(F),gasflowrateratioofC2H.(Rx)andcomposition forSi3NrSiCandSic,filmspreparedbyp‑CVD.

system spec. F(SiH490%Ar) F(NHS) F(C2H一) F(H2)

(mlmin‑1) (mlmin‑り (mlmin‑1) (mlmin‑1) Rx● Composition

1234561234 000000000011111111179999990998日H

20.0 0.0 30.0 0.0 SiNl."

16.0 4.0 30.0 0.20 SiNl.23Co.29 8.0 8.0 30.0 0.50 SiN 。.6SC 。.62

4.0 9.0 30.0 0.69 SiN。.。C。.,2 0.0 10.0 30.0 1.00 SiCIJ"

0.0 6.0 30.0 SiC..72

0.0 10.0 30.0 ̲ SiCIJ"

0.0 16.0 30.0 ‑. SiCl.20. 0.0 20.0 30.0 SiCI.38 'GasflowrateratioofC2H.: Rx‑F(C2H一)/〔F(NHS)+F(C2H一)

Rx及 び合成 した (コーテ ィングした)膜 の化学組成 を示す.合成膜 の組成 は,Si3N.‑Sic 系 と膜 中に強い圧縮応力が働 いていたSiC,系 とした.基板 は,約幅10… X長 さ26mmx 厚 さ1.2mmの長方形のクラウンガラス基板 を用いた.ガラス基板を選定 したのは,ガラス の表面粗 さは,あ らゆるセラ ミックス基板中で最 も小 さく,基板表面の影響 を無視で きるか らである.膜 の合成方法及び条件は以前の報告(9)と同 じであるが,合成 (コーチイソグ)に 先立 ち,基板表面 にH+イオンを照射 し,基板表面の付着物 を十分除去 した.

2‑2 曲げ強度特性の測定

コーテ ィングした試料の曲げ強度 は, 3点 曲げ法 (JIS R 1601) によ り測定 した.図1 に示す ように, クラウンガラス基板 の片面にSiNxCy膜 を コーテ ィングし,膜面に引張応力 がかかるようにコーテ ィングした側 と反対側か ら荷重を加 えた.加圧降下速度 (クロス

ド降下速度) は0.5mm min‑1,支持棒のスパ ン長 は15.2m とした.曲げ強度 は次式か ら 求めた.

3Ls

qf=(1)

但 し,qf:曲げ強度(Pa),L:荷重(N),S:スバん長(0.0152m),W :試料片の幅,t: 料 の厚 さ(〜0.0012m)である.基板表面 の粗 さは,触針式粗 さ計 を用いて10点平均粗 さRz

を測定 した.

3.結果及び考察 3‑1 曲げ強度の膜厚依存性

2に,'プ ラズマCVD法 に より合成 したSiNL.2(Rx‑0.0)(以下Si3N.膜 と呼 ぶ)及 び SiCl.0.(Rx1.0)(以下SiC膜 と呼ぶ)膜 をクラウンガラス基板上 にコーテ ィングした場合の 曲げ強度の膜厚依存性 を示す.SiC膜 をコーテ ィングした場合 は,膜厚 にほぼ比例 して曲げ 強度が向上 した.1.2mm厚 のガラス基板 に対 して,SiC膜 を約5JJmコーテ ィングした時 の

(3)

セ ラ ミ ックス コーテ ィングによる基体 の強化

0.5TT

T n ' m i n ‑ I

(つ Substrate

000 6200ll‑0q

),

uE=Tt!IntJ

Fig.1Schematicdiagram oftheflexural

33

2 6

Fllm EhLckneJS IpmI

8 10

test.Asingle(lower)sideofthesub・ Fig.2Relationships between flexural strate(crown glass)wascoatedwithp

CVDSiNICyfilm.Theo仇er(upper) sidewasloadedatthedescendingrate of0.5mm.min1.

strength(6,)andfilmthicknessforthe crownglasssubstratescoatedwi仇 p

CVDSiC1...(+)andSiNL.2(0)films. 曲げ強度 (180MPa)は,何 もコーチ イソグしていない時 の強度 (87Mpa)と比較 し て約2倍以上 に向上 した. これ は, ガラス基板 と膜 の厚 さの比240:1に対 して,曲げ強度 は約2倍 に強化 された ことに対応す る.Si3N膜 の場合 は,膜厚が大 きくなるほど曲げ強度 が減少 した. これ ら曲げ強度の増加あるいは減少の主 な原因は,膜中に働 く内部応力 (残留 応力)に基づ くもの(2)で,SiC組成膜では圧縮,Si,N4組成膜では引張の内部応力が働いて いるためである(10).

3‑2膜表面及び断面の観察

合成 したままの (曲げ強度試験前 の)Sic (膜厚4.9JJm)及 びSiN膜 (膜厚4.9〝m)の 表面を光学顕微鏡によ り比較 した.図3(a)に示す ように,SiC膜 の場合 は比較的均一な表 面であったが,SiN.膜の場合 は,図3(b)に示す ように,膜 中の強い引張応力 によ り膜表 面に微細なクラックが発生 していた. このクラックの単位面積当 りに発生 した数,即 ち, ク ラック密度 は,膜厚が大 きくなるほど多 くなっていた.膜表面 にクラックがあると,曲げ強 度試験時に膜部分に引張応力が働 き, このクラックを源 として, コーティングした基板 は容 易に破壊す る.従 って,クラック密度が高い方が,破壊する確率は高 くなる.図2に示 した Si,N.(SiNl.2)膜 の場合,膜厚が大 きいほ ど強度が低下 したのは, この表面 クラ ック密度 の 増加 に起因 しているものと推定 される.

4,SiC膜 とSi3N膜 を コーチソグした基板 の曲げ強度試験後 の膜破壊横断面比較 写真を示す.SiC膜の場合,膜 の破面上には小 さな粒の破片が多数観察 され, この様子 は, 風冷強化 ガラスの場合 と似 ていた(ll).一方,Si3N.膜 の場合 は, このよ うな粒状 の破片はほ

とんど見あた らず,膜 と基板の境界近傍に微細で細いクラックが観察 された.

3‑3膜組成による影響 3‑3‑1 Si3N4SiC

(4)

34 森山 実 ・鎌田鞍一郎

;耶りuiiiiiiiiiiiiiiiii川uii一一,

L コ・

Fig.3Optica一micrographsfortheasdepositedSic

. 、

.(il)andSiN..2(b)film surfaces.Bothfilmsare4.gJLm thick.

Fig.4SEM micrographsforthefracturedsurfacesacrossthefilm inthe caseofSiCl0.(a)andSiNl.42(b)coatingsafterflexuraltest.

5,SiN4(SiN..42)か らSiC(Sic..0.)まで組成 を変化 させ た場合 の曲げ強度特性 の変 化 を示す.膜厚 は約5J̀m及 び1/̀mに統一 した.膜 中 に引張応力 が働 いてい るSiN4側 よ り

も,圧縮応力 が働 いてい るSiC側 で大幅 な曲げ強度 の向上 が見 られた.Lawnらに よると, 膜 中の内部応力 とビッカース圧痕周囲の クラ ック長 さとは比例関係があ り, クラ ック長 さの 変化か ら,膜 中の内部 の内部応力 を推定 で きる(12).本法 に よ り,Si3Nか らSiCまで膜組成 を変化 させ ると,膜 中の内部応力 は,SiN膜側 の引張応力か ら,SiC膜側 の圧縮 応力 まで,

これ らの中間組成 の膜 で は一様 に変化す るこ とがわ か った(10). また,内部応 力 がゼ pとな

(5)

セラミックスコーティングによる基体の強化

0.2 0.LI 0.6 0.8 1.0

ts13N47 Rx ISLC)

Fig.5Relationships between flexural strength(OTE)andgasflowrateratioof C2H4(Rx)forthecrownglasssubstrate coatedwithp‑CVDSi3NrSiCfilms.

211

(edq)JD・qlBuaHStCJnXatJ

35

0.6 0.8 1.0 1.2 1.LI 1.6

Atomlc r81lo o【C/SI

Fig.6Flexuralstrength(qE)vs.atomic ratioofC/SiforthecroⅥmglasssub‑

stratecoatedwithp‑CVDSiCyfilms. る点は,Rx‑0.5の ところであった.図5において,内部応力 と曲げ強度 の関係 を対比す る と,膜中に引張応力が働いているSiN4側で曲げ強度が減少 し,圧縮応力が働いてい るSiC 側で曲げ強度が増加 しているが,膜厚が一定の時,最大曲げ強度 の点 は,Rx‑0.6‑0.8の と

ころであった. しか しSiCl.0.(Rx=1.0)SiNxC,(Rx‑0.6‑0.8)の点の強度を比較す ると,前 者の方が高い圧縮応力が働いているにもかかわ らず,やや低い強度 となった. この ことは,

AeD・q1eu:EnraTh oo000EU200211

0

0.4 0.8 1.2 1.6 2.0

SurraceRoughness.Rz (pm)

Fig.7Variationoftheflexuralstrength (OTE)asafunctionofsurfaceroughness (Rz)ofthecrownglasssubstratein bothth'ecasesofSic " .coated(+) substrate(5FLm thick)and uncoated (○).

強化の主因は膜中の圧縮応力 として も, この 他に別 の要因,例 えは付着力,膜 の表面状態 等の影響があるもの と推定 され る.

3‑3‑2SiC,

Si,N.‑SiC系 のSiC側 で大 きな強 化 が見 られたので,Sic,系 についてSiC原子組 成比 を変化 させた膜を コーテ ィング・し,曲げ 強度の変化を調べた.その結果 を図6に示す.

圧縮応力が強 く働 いてい るSiリッチな組成 ほど,曲げ強度 は向上 した(13).

3‑4 基板粗 さの影響

粗 さの異 なるクラウンガラス基板上 に,5

〃m厚のSiC膜 を コーティングした場合 ( 丸) とコーテ ィングしない場合 (白丸) につ いて,両者の曲げ強度を比較 した結果 を図7 に示す. ガラス基板表面は,種々の粒度 の‑

ミリーベーパを用いて荒 した. コーテ ィング

(6)

36 森山 実 ・鎌田喜一郎

した基板の曲げ強度 は,基板粗 さが小 さい時かな り向上す るが,基板粗 さが大 きくなると急 激 に低下 し,粗 さが比 較的大 きい範 囲 で は コ‑テ イソグ してい ない場 合 と比較 して10

‑15MPa程度の強化 しかで きなかった. このことは,基板表面に傷等が付 く前に コーテ ィ ング処理をす ると効果が高い ことを示 している.

3‑5 強化膜

前節 までに示 した ように,セラ ミックスや ガラス基板 に圧縮 の内部応力が働 く膜 をコーテ ィングすると,内部応力や膜厚 に比例 して曲げ強度が向上 し,膜厚が基板厚に対 してかな り 薄 くて も,大幅に コーテ ィングした基板 の曲げ強度を増加 で きることがわか った(14). この 技術 は,セ ラ ミックス基板 (基体)の強化法の一つ として極めて重要で,かつ,効果的であ るものと思われる.本法は,曲げ強度に対す る強化だけでな く,膜 が基板 よりも硬い材料で あれば耐摩耗 コーテ ィングとして,膜が基板 よりも柔 らかい材料であれは緩衝用 コーテ ィン グとして,着色 した膜であれは装飾用 コーチ イソクとして,また,化学的に安定な膜 であれ ば耐食性 コーテ ィングとして役立つ もの と思われる.

4.

プラズマCVD法を用いてガラス基板 にアモルファス構造 のSiNxC,膜 を コーティングし, 表面圧縮応力 による曲げ強度の向上を実験的に検討 した ところ,次の ことがわかった.

(1) ガラス基板 に対 しては,圧縮応力が働 くSiC組成域で曲げ強度の向上 が計 られ,Si3N.

組成域では逆 に低下 した.

(2) 1.2mm厚のガラス基板 に約5JJmSiC膜 をコーテ ィングした ところ,基板全体 の曲げ 強度 は,何 もコーテ ィングしていない場合 と比較 して,約2倍に向上 した.

(3)最大の曲げ強度の強化はRx‑0.7SiN。..C。.,2組成膜 の時 に得 られ,約5〟mの コーテ ィングよ り曲げ強度は約2.4倍 まで高めることができた.

(4)曲げ強度 は表面の粗い基板 (または表面 クラックが入 った基板) にコーテ ィングしても 大 きく向上できず,表面粗 さの小 さい基板 に対 して効果的であった.

参 考 文 献

(1)S..WARSHAW,Ceram.Bull.36(1957)28. (2) DJ.GREEN,∫.Mater.S°i.19(1984)2165.

(3) H.P.KIRCHNER,"StrengtheningofCeramics",MarcelDekkerlnc.(1979),13. (4) A.L.ZIJLSTRAandA.J.BURGGRAAF,J.Non‑Cryst.Solids1(1968)49.

(5) M.E.NoRDBERG,E.L MocHEL,班.M.GARFINKELand∫.S.OLCOTT,∫.Am.Ceram.Soc.

47(1964)215.

(6) H.P.KIRCHNERandR.M.GRUVER,J.Am .Ceram.Soc,'49(1966)330.

(7) D.A.DuKE,∫.E.MEGLES,∫.F.MACDOWELL and H.F.Bopp,∫.Am.Ceram.Soc.51 (1968)98.

(8) M.Ⅴ.SwAIN,∫.Mater.S°i.15(1980)1577.

(9) K.KAMATA,Y.MAEDAandM.MoRIYAMA,J.Mater.Sci.Lett.5(1986)1051. 鎌田喜一 郎,前田祐二,安井寛治,森山 実,窯協,94(1986),12.

no)K.KAMATA,N.AIZAWAandM.MoRIYAMA,J.Mater.Sci.Lett.5(1986)1055.

(7)

セラミックスコーチィソクによる基体の強化 37

ul) 作花済夫,境野照雄,高橋克明, ガラス‑ ソ ドブ ック,朝倉書店 (1975)484. 02)B.R.LAWNandE.R.FULLER,J.Mater.Sci.19(1984)4061.

43)K.KAMATA,N.AIZAWA,Y.MAEDAandM.MoRIYAMA,WorldCongressonHightech Ceramics(6thCIMTEC)(1987)2649.

a4)M.MoRIYAMAandK.KAMATA,J.Mater.Sci.Lett.6(1987)1141.

図 5 に ,Si 。 N4 ( Si N . . 4 2 ) か ら Si C( Si c . . 0 . ) まで組成 を変化 させ た場合 の曲げ強度特性 の変 化 を示す.膜厚 は約 5 J ̀ m 及 び 1 / ̀ m に統一 した.膜 中 に引張応力 が働 いてい る Si 。 N 4 側 よ り も,圧縮応力 が働 いてい る Si C 側 で大幅 な曲げ強度 の向上 が見 られた

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