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4.弾性係数測定

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(1)

木材の弾性係数分布測定に関する研究

A measurement of the elastic modulus distribution for the wood

精密工学専攻 22 号 久我俊介 Shunsuke Kuga 1.緒言

木材は,伐採→植林→育林というサイクルを繰り返す過程 で,構造材料として利用されたり,木炭などのエネルギー資 源を持続的に供給出来る再生産可能な材料である.そして,

大量の金属材料やプラスチック材料が出回っている現在でも,

環境に対する負荷が小さいことや高い重量比強度などの多く の利点が活かされ,木材は生活の中のいたるところで使われ ている.木材の効率的利用と今後の育種を考えていくには,

実験データを蓄積することで樹種・品種ごとの材質や変動傾 向の差異を把握しある程度の分類がなされることや,その変 動要因を明らかにすることが必要である.しかし,現在ある 木材データベースは一本の木材としての大まかな値でしか表 記されておらず局所的な部位に関してのデータは少ない.材 料特性の個体差が大きい原因のひとつとして,木材は柔らか い早材部と硬い晩材部の交互の積み重ねで構成されているこ とがあげられる.さらなる有効利用のためには木材の早材部,

晩材部毎の微細構造を含む詳細な機械的性質を明らかにして いく必要がある.

嘉齋らはこれまで木材を削り取りながら三点曲げ試験を繰 り返すことで,試験片全体の弾性係数を変化させ,削り取っ た領域の早材部,晩材部別の弾性係数を求めていた(1).しか し,この方法では,測定精度に問題があるため,より簡便か つ精度の良い方法が必要である.一方,木材のミクロやナノ 構造に対する機械的性質を知る事も重要である.

そこで本研究では,国内で建築用材として主要な樹種であ るスギを供試材料とし,試験片表面に微小先端三角錐圧子を 押込むインデンテーション試験を用いて,マイクロ・ナノ領 域における機械的性質を解明する.本研究では木材の年輪に 着目し,早材部・晩材部別での弾性係数測定法を確立するこ とを目的とする.具体的に,押込み荷重と変位の曲線より弾 性係数を測定し,押込み条件の違いによって測定値がどのよ うに変動するか調べることで,測定値の構造や測定方法によ る違いを明らかにしていき,最適な試験手法の確立を行い,木 材組織の細胞構成に従った弾性係数分布のメカニズムの解明 を試みる.

2.インデンテーション試験概要

木材のインデンテーション試験を島津製ダイナミック超微

小硬度計DUH-211Sを用いて行う.Fig.1は圧子を試験片に押

し込む際の,荷重-押込み深さの線図である.試験は一定の速度 で圧子を押し込むことで,測定面を負荷し,最大押込み深さ

hmax[μm]に到達後,一定時間荷重を保持した後,除荷を行う.

ここで,Pmax[mN]は最大荷重,S(dp/dh)は接触剛性(除荷開始 初期の傾き),hc[μm]は押し込み深さ,hs[μm]は接触面の境界 での表面変位を示す.また,圧子には稜間隔 115°の三角錐

Berkovich圧子を用いた.試験結果より得られた荷重-押込

み深さ線図から,式(1),(2),(3)に示すDoerner, NixらによるDSI 法(Depth Sensing Indentation)を基にしたOliver-Pharrの方法(1) を用いて,局所的な弾性係数E/(1-ν2)[GPa]を算出する.

i i

eff E E

E

2

2 1

1

1

(1)

s

c h h

h max ,hshmaxhr (2) 97 2

. 23 c

proj h

A ,

proj

eff A

dh E S dP

2

(3)

ここで,Aproj[μm2]は接触投影面積,Eeff[GPa]は試料と圧子の 有効弾性係数,E[GPa]は試料の弾性係数,Ei[GPa]は圧子の弾 性係数,νは試料のポアソン比,νiは圧子のポアソン比である.

本実験では,Ei=1.14×1012[N/m2],νi=0.07とした.

Fig.1 The method of micro-indentation test.

3.試験片

スギはFig.2に示すように,年輪を構成する晩材と早材とが

円輪状に層を成して構成されている.スギの角材から試験片 を切り出し,繊維方向Lに垂直に荷重を加えるための試験片 を 作 成 し た . 寸 法 は 半 径 方 向(R)27.8[mm]× 繊 維 方 向 (L)4.0[mm]×接線方向(T)18[mm]とした.インデンテーション 試験は試験片の表面粗さによって測定値に影響を受けるため,

三百二十番と千番の紙やすりで表面を三十分間研磨し凹凸を なくした.

T(Tangent line direction)

R(Radius direction)

Load

L(Longitudinal direction)

Fig.2The wood specimen for the indentation test.

4.弾性係数測定

4.1 マイクロインデンテーション試験 4.1.1 放射方向における弾性係数の変動

木材のインデンテーション試験を,島津製ダイナミック超 微小硬度計DUH-211Sを用いて行った.Fig.3(a)に試験表面の 写真および押込み位置を示す.ここで,(x,y)座標の原点は

Fig.3(a)に示されるように晩材六本を含む領域の左端にとっ

た.試験位置および押込み速度をTable 1に示す.押込み深さ

hmax[μm]まで押し込み速度 v[mN/s]で圧子を押し込み,hmax

達後30[s]保持し,負荷時と同様に除荷を行う.完全除荷前に

第二保持として5[s]保持した.弾性係数E/(1-ν2)[GPa]はその際 に得られる荷重変位曲線から式(1)を用いて算出した.

Fig.3(a)の x=0~24.5[mm],y=0~0.6[mm]の領域において放射 方向に向かっての弾性係数の変動を測定した.Fig.4に半径方 向に沿った弾性係数の分布を示す.試験結果より,早材部に おいて弾性係数は2~4[GPa]程度となり,晩材部における弾性 係数は,それぞれ異なる値を示した.押込み深さ hmax=3[μm]

hs

hc

Indenter

hmax

h=0(Surface) S=dP/dh

hmax hr

hc Displacement m

Load N

Unloading Loading Pmax

(2)

時の測定値と比べhmax[μm]=6, 9[μm]の値は低く算出されたこ とから,押し込み深さが深くなるに連れ弾性係数は,低くな る傾向を持つことが分かった.

Fig.3(b)において,左端から晩材二本を含む 8.0×1.4[mm]の

領域内をx方向に0.1~2[mm]ずつ移動させ,その後y方向に

0.2[mm]移動し,測定を行った.Fig.5に得られたE/(1-ν2)[GPa]

の分布を示す.早材部において弾性係数は1~3[GPa]と晩材部 と比べて,低く算出されたが,晩材に近づくに連れて増加し ていき,早材と晩材部の境目において急激に減少した.Fig.6 に,木材の細胞を,KEYENCE VH-8000 を用いて,x=7[mm]

付近を千倍に拡大した写真を示す.木材のセルサイズは早材 から晩材に移行するに従って,細胞単体が小さく密になり,

それに伴い残留圧痕が形成された.また,晩材と早材の境目 で細胞構造が急激に変化していることが分かる.Fig.6のよう なセルサイズの変化と試験結果より得られる弾性係数の増減 関係は一致していることから,算出される弾性係数は押し込 み領域に含まれる細胞サイズや密度に依存していると考えら れる.また,圧子の接触投影面積Aprojは式(3)より押し込み深 さの二乗に比例するため,押込み深さが深くなるにつれ晩材 部の細胞数個にまたがった試験が行われる.このことから,

押込み深さの違いが,測定される弾性係数に影響すると考え られる.そのため,押込み深さをそろえた実験が必要である.

(a) (b)

Fig.3 The method of micro-indentation test and wood model.

Table 1 Indentation test conditions.

Fig.4 Distribution of elastic modulus in radius section by using micro indentation.

4.1.2 同一晩材部内のy方向における弾性係数の測定 条件を同一にし,y 方向の弾性係数分布を測定する.木口 面 の 垂 直 方 向 に 変 位 hmax=5[μm]に な る ま で 押 込 み 速 度

1.001[mN/s]で押込み,hmax到達後30[s]保持し,負荷時と同様に

除荷を行う.完全除荷前に第二保持として5[s]保持する.y 向分布を測定する前に Fig.7(a)の x=0~25.5[mm]の領域におい て早材部では0.2[mm]ずつ,晩材部では0.1[mm]ずつ移動させ

Fig.5 Experimental value of micro-indentation.

Fig.6 The cellular composition of a woody tissue.

放射方向に向かっての弾性係数の変動を測定した.Fig.8x 方向の弾性係数の分布を示す.試験結果より,弾性係数は晩 材 部 に お い て 約 9~14[GPa]と そ れ ぞ れ 算 出 さ れ た が , x=0~25.5[mm]にかけて晩材部毎の弾性係数が僅かに減少する 傾向を示した.そこで,同一晩材部での測定は,弾性係数が 比較的高い x=10[mm](約 15.8[GPa])と,最も低く算出された x=25[mm](約9[GPa])付近の2つの晩材において,y方向の弾 性係数分布を調べた.試験領域はFig.7(b)に示す.晩材部内の y方向に沿って7.2[mm]間を0.4[mm]ずつ(一部は0.2[mm]ずつ),

測定位置を移動させ測定を行い,それより得られた測定値よ り,同一晩材部内での弾性係数の分布を調べた.また,x 向の測定位置は,細胞密度の違いによる測定誤差を避けるた め,DUH-211S の顕微鏡で細胞組織を観察し,早材と晩材の

境目より 0.05[mm]手前に決定しそれぞれの試験を行った.

Fig.9に高弾性係数部位,及び低部位における,それぞれの晩

材部で測定された弾性係数をプロットした分布を示す.

高弾性係数部位(x=10[mm])の平均値は 12.9[GPa]標準偏差 0.915[GPa](標 本 数 22), 低 部 位(x=25[mm])の 平 均 値 は

7.73[GPa]標準偏差0.635[GPa] (標本数22)となった.弾性係数

の値はそれぞれの位置において異なった値を示したが,いず れの測定値も極端な上下差はほとんど見られないことから,

同一晩材部の弾性係数はほぼ一定であると考えられる.

Fig.10x=10[mm]とx=25[mm]の晩材部を測定した際の荷

重変位曲線の一例である.それぞれの部位における最大荷重

は約 120[mN]と同程度に関わらず,荷重に対する変位の進展

過程と除荷時の傾きが異なる.このような押込み荷重と変位

の関係性の違いにより,弾性係数が晩材部別で異なった.

(a) (b) Fig.7 The method of micro-indentation test and wood model.

0 0.4 0.8 1.2 1.6 2 ymm Elastic modulus GPa

x mm

12-14 10-12 8-10 6-8 4-6 2-4 0-2

0 0.4 0.8 1.2 1.6 2

y mm

Elastic modulus GPa

x mm

8.0mm

1.4 mm

0.1~2 mm 0.2 mm

y[mm] hmax[μm] Verocity[mN/s]

0 3 2.019

0.2 6 4.037

0.4 9 8.054

0.6 2 1.002

0.8 2 2.019

1.0 5 2.019

1.2 5 4.037

1.4 7 4.037

1.6 7 8.054

1.8 10 8.054

2.0 10 15.924

24.5mm 0.4mm

0

x y

0.4 mm

7.2 mm 25.5mm 0

x y

0 2 4 6 8 10 12 14

0 5 10 15 20 25

Elastic modulus GPa

xmm

=0[mm] =3[μm] =0.2[mm] =6[μm]

=0.4[mm] =9[μm]

y y

y

hmax hmax

hmax

(3)

Fig.8 Experimental value of micro-indentation

Fig.9 Distribution of elastic modulus(x=10[mm] and x=25[mm])

Fig.10 Load-depth line of indentation test

4.1.3 荷重保持時間の影響の測定

インデンテーション試験の結果ではいずれの場合も荷重 P[mN]を一定とした保持過程でhmax[μm]が増大した.弾性係数 の測定は除荷時の傾きより算出されるため,測定時の塑性変 形進展度合いによって,除荷時の傾きに違いが生じると考え られる.一定荷重を保持し続けることで,保持時間と押込み 深さの関係を調べ,その結果より,押込み深さがどの程度ま で増加し続け得るかを調べた.押込み深さhmax2[μm]にな るまで押込み速度1.001[mN/s]で押込み,hmax=2[μm]に到達後,

荷重を 600[s]保持し続け,その後に除荷を行った.また,比

較のために同様の条件で保持時間のみ 0,30,60[s]に変更し晩 材に対する荷重保持試験を行った.

Fig.12(a)に荷重保持時間を 0,30,60,600[s]に設定した際の,

押込み深さの時間変化を比較した結果を示す.また,Fig.12(b) に最大押込み深さ hmax=2[μm]に到達し荷重保持を開始した直

15~45[s]の曲線を示す.試験結果より荷重保持時間に従っ

て,変位が増加し続け,300[s]経過後はほぼ一定の変位を維持 し続けた.荷重保持を行った場合は,いずれの曲線において も,荷重保持の開始初期の 10[s]以内に変位が大きく増加し,

その後は一定の割合で増加したため,保持時間による影響は 10[s]以内が大きくなっていると分かる.また,除荷時の深さ

hc[μm]は保持なしの場合,荷重保持を行った場合と比べかな

り小さいため塑性変形による圧痕の形成が正常に行われなか った可能性がある.このことから,荷重保持時間は少なくと

15[s]以上に設定し試験を行うことが必要である.

(a)

(b)

Fig.11 Time variation of displacement by using micro indentation 4.2 ナノインデンテーション試験

木材の弾性係数は,押し込み領域の晩材密度に依存してい ると考えられるが,マイクロ領域のインデンテーション試験 では圧痕領域が大きく,数個の細胞にまたがってしまうため,

細胞単体での強度を解明することができない.Fig.12(a)はマ イクロインデンテーション試験を,Fig.12(b)はナノインデン テーション試験の押込み領域と細胞構造の簡略図である.木 材のL方向は,管状の繊維が集まって出来ている.この繊維 の壁は硬く,内部は柔らかい.一般に,晩材部の細胞の直径

10~30[μm],細胞壁厚は 3~7[μm]であるといわれている.一

方,早材の細胞壁厚は1~3[μm]である(3).そこで,押込み深さ ISO14577規格に則ったNano rangeh≦200[nm]に設定する ことで細胞単体に対する押込み試験を行い,より微小な範囲 における弾性係数分布について調べた.4.1.1節で用いた試験 片を用い,左端から二,三本目の晩材を含む,放射方向xに沿

った 5.5[mm]間において,早材部では 0.05[mm],晩材部では

0.02[mm]ずつ移動させ弾性係数の測定を行った.押込み深さ hmax=150[nm]になるまで押込み速度0.010[mN/s]で押込み,hmax

到達後30[s]保持し,負荷時と同様に除荷を行う.完全除荷前に

第二保持として5[s]保持した.試験結果をFig.13に示す.弾 性係数変動は,晩材部で15~40[GPa],早材部では2~10[GPa]

と算出された.しかし,早材・晩材ともにマイクロインデン テーション結果と比べ弾性係数の最大値が約三倍高く計測さ れる位置があった.この原因として以下のことが考えられる.

接触投影面積 Aproj[μm2]は式(3)より押し込み深さの二乗に比 例するため,押込み深さが深くなるにつれ晩材部の細胞数個 にまたがった試験が行われる.ナノインデンテーションの場 合,投影面積0.54[μm2](hc=0.15[μm])はこの壁の幅より小さく 壁の部分の押し込みを行えるため大きな弾性係数が測定され た.一方,マイクロインデンテーション試験では,投影面積

95.88[μm2](hc=2[μm])と壁を構成するいくつかの繊維にまたが

っていることから,低い弾性係数が計測されたと考えられる.

(a) Nano Indentation (b) micro indentation Fig.12 Micro fiber construction of wood and the indenter.

0 2 4 6 8 10 12 14 16

0 5 10 15 20 25

Elastic modulus GPa

xmm

0 2 4 6 8 10 12 14 16

0 0.8 1.6 2.4 3.2 4 4.8 5.6 6.4 7.2

Elastic modulus GPa

ymm

=10[mm] =25[mm]

x x

2 2.05 2.1 2.15 2.2

15 20 25 30 35 40 45

Displacement μm

Loading time s Hold time 0[s] Hold time 30[s]

Hold time 60[s] Hold time 600[s]

1.5 1.7 1.9 2.1 2.3

0 150 300 450 600 750

Displacement μm

Loading time s

Hold time 0[s]

Hold time 30[s]

Hold time 60[s]

Hold time 600[s]

0 20 40 60 80 100 120 140

0 1 2 3 4 5 6

Load mN

Displacement μm

=10[mm]

=25[mm]

x x

(4)

Fig.13 Experimental value of nano-indentation 4.3 三点曲げ試験による弾性係数の測定

Fig.14に示すスギ材試験片の幅bR方向に削り取りなが

ら三点曲げ試験を行い,はりの曲げ理論より見かけ上の縦弾 性係数を計測した.組合わせ梁の理論式(4)により早材・晩材 及び,早晩材の混合部の局所的な縦弾性係数を求めた結果を

Fig.15 に示す.早材を削ると弾性係数が増加し,晩材を削る

と弾性係数が減少していき早材部,晩材部の局所毎の弾性係 数を求めることができる.晩材付近では弾性係数が早材より 高く計算されたがこれは晩材に近づくにつれ細胞の密度が高 くなるためと考えられる.

(a) (b) Fig.14 The wood model for the bending and indentation test.

Fig.15 Experimental value of bending test.

4.4 マクロ・マイクロ・ナノ領域毎の試験の比較

Fig.14(b)に示すx=0~28[mm]間で,マイクロ・ナノ領域にお

ける試験を行った.マイクロ試験は押込み深さ hmax=3[μm],

押込み速度1.001[mN/s],ナノ試験条件は4.2節と同一にした.

Fig.16に三点曲げ試験結果を含めた,弾性係数の x方向分布

を示す.弾性係数の分布は定性的に一致している.また,局 所的には両試験の弾性係数が一致する晩材が存在した.

Fig.17に,マクロ,マイクロ,ナノの3種類の試験により

得られた弾性係数ER方向分布(x=0~10[mm])の拡大図を示 す.どの領域の試験結果も,縦弾性係数が高い領域と低い領 域が繰り返し見られ,高い領域が晩材部であると考えられる.

マイクロ試験と三点曲げ試験の弾性係数は,早材部において

は約1~2[GPa]程度と算出され晩材部においても概ね一致した

結果が得られた.ナノ試験結果はx=2~5[mm]において他試験 と同程度の値が算出されたが,その他の領域では最大値に二~

三倍程度の差が生じた.また,弾性係数の測定は除荷時の傾 きから行われるため,試験片表面の粗さや傾きなどが圧痕の 形成に影響を与えていることも考えられる.ナノ・マイクロ

試験より得られた弾性係数は異なったが,それらの測定値は 押し込み領域の密度だけでなく表面粗さに依存している可能 性がある.ナノ試験は押し込み深さが 150[nm]とマイクロ試

験の2[μm]と比べると1/10以下と極めて浅いため,押込む表

面層の粗さの影響を大きく受けてしまう.ナノ領域での試験 の場合,局所的には弾性係数が算出できるが,晩材部別での 比較や弾性係数分布の測定が困難になってしまった.そのた め,弾性係数の分布を測定する条件としては,マイクロイン デンテーション試験が適しており,押込み深さhmax=2~5[μm]

程度に設定することにより,細胞数個にまたがった測定を行 えるため,より精確に細胞密度の違いによる弾性係数変化を,

測定できる可能性がある.

Fig.16 Experimental value of micro and nano –indentation.

Fig.17 Elastic modului of three method.

5.結言

本研究では,スギの微小領域における弾性係数の分布をマ イクロ・ナノインデンテーション・三点曲げ試験によって求 めた.試験結果より,早材部の弾性係数は 1~10[GPa],晩材

部は 5~40[GPa]と試験手法の違いにより測定値は大きく異な

った.また,晩材部毎に弾性係数は異なり,晩材部ではセル サイズの変化に従って細胞単体が小さく密になると共に,細 胞壁が厚くなるため弾性係数は増加し,早材部との境目にお いて急激に減少した.また,インデンテーション試験の荷重

-変位曲線は,押込み領域の細胞密度に依存し,算出される 弾性係数が早材・晩材別で異なった.晩材の細胞壁は早材の 細胞壁と比べ小さく,細胞繊維密度が高い(5).そのため,弾 性係数が高く算出されたと考えられる.今後は,細胞構成や その密度の違いに着目し,より綿密な晩材部毎の弾性係数を 測定していく必要がある.

参考文献

1) 嘉齋,辻,機構論 No.07-1(2007),p.307.

2) Fischer-CripsA.C.,Nanoindentation,Springer-Verlag,(2004).pp47-51.

3) 日本木材学会編,木質の物理,文永堂,東京(2007)p.6-7.

4) 日本機械学会編,材料力学,丸善,東京(2007)pp.105-107.

5) 石堂恵, 石栗太,飯野和也,晩材仮道管S層ミクロフィブ リル傾角を材質指標としたスギ材におけるヤング率の早期 評価,木材学会誌,Vol55(2009),pp.10-17.

0 2 4 6 8 10 12 14

0 2 4 6 8 10 12

Elastic modulus GPa

x mm

Ea rly Pa rt La te pa rt Mix pa rt 0

5 10 15 20 25 30 35 40 45

0 1 2 3 4 5 6

Elastic modulus GPa

x mm

0 5 10 15 20 25 30

0 5 10 15 20 25 30

Elastic modulus GPa

xmm

Bending test Micro indentation Nano indentation

0 5 10 15 20 25 30

0 2 4 6 8 10

Elastic modulus GPa

xmm

Bending test Micro indentation Nano indentation

Early part Late part

Table 1 Indentation test conditions.

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