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インターネットによるクレジットカード 会員外使用の民事責任(2・完)

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4.クレジットカード会員外使用に関する判例の分析と検討

裁判所は、カード会員規約によるクレジットカード会員外使用の民事責任 の妥当性について、どのように判断しているであろうか

これまでに述べてきたように、クレジットカード会員外使用における預金 者保護法のような特別法がないかぎり、カード会社の保険による責任負担

(カード会員の免責)とカード会員に対する免責除外を定めるカード会員規 約の有効性は認めるべきと考える。

下級審の判例でも、基本的には、カード会員外使用におけるカード会員規 約の有効性を認めた上で、カード会員の責任制限を認めており、とくに、

インターネットによるクレジットカード 会員外使用の民事責任(2・完)

蓑 輪 靖 博

1.本稿の目的

2.カード番号の通知によるクレジットカード取引

3.クレジットカード取引における会員外使用と民事責任の考え方(以上前号)

4.クレジットカード会員外使用に関する判例の分析と検討 5.まとめ(以上本号・完)

福岡大学法学部教授

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(1)

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カード使用限度額の範囲でカード会員の責任を制限した判例と、加盟店の 調査義務違反をもって過失相殺を認めた判例が注目される。いずれも、家 族による会員外使用であり、カード会員規約における家族の使用の際のカー ド会員免責除外規定の適用を有効とした上で、一方では利用限度額による制 限を認め、他方では過失相殺を認めたものである。

以下では、この二つの判例を順に紹介し、分析・検討する

!

使用限度額の範囲で責任制限を認める判例とその検討

事実の概要

カード会員 X は妻 A・長男 B(21歳)と事務所を開設して事業を営んで いたところ、長男が事務所内で窃取した X のカードを不正使用した事案で ある。

本件カード会員規約によれば、a)カード会員はカードの使用・管理につ き善管注意義務を負い(4条)、カード貸与時に自己で署名する義務を負う こと(6条)、b)カードの紛失・盗難による使用代金は会員の負担とする

(14条1項)こと、とした上で、c)会員が紛失・盗難の事実を所轄の警察

公表されているものとして筆者が知るものは、①東京地裁昭和59年4月20日判 決(判 タ51号14頁)、② 大 阪 地 裁 昭 和61年7月15日 判 決(判 時12号17頁)

③大阪高裁平成元年1月26日判決(判時10号54頁・判例②の控訴審判決)、④東 京地裁平成3年8月29日判決(判時11号10頁)、⑤大阪地裁平成5年10月18日 判決(判時18号12頁)、⑥大阪地裁平成6年10月14日判決(判時14号75頁)

⑦札幌地裁平成7年8月30日判決(判タ92号19頁)、⑧東京地裁平成10年9月2 日判決(金商10号49頁)、⑨東京地裁平成11年2月26日判決(判タ19号22頁)

⑩浦和地裁平成11年10月29日判決(金商15号35頁)、⑪東京高裁平成12年2月2 日判決(金商18号3頁、判例⑨の控訴審判決)、⑫名古屋地裁平成12年8月29日 判決(金商18号54頁)、⑬長崎地裁佐世保支部平成20年4月14日判決(金商1 号71頁)

前掲注22)判例⑤。

前掲注22)判例⑦。

本稿脱稿後に、前掲注22)判例⑬が示され、インターネットを通じた親子間の 会員外使用における会員規約を修正解釈していることから、その是非を論じる必 要があるが、これについては、別稿で触れることにする。

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署へ届出し、所定の届出をカード会社に提出した場合、その受理日の60日前 以降のカード使用による会員の支払を免除する(同2項)が、d)紛失・盗 難が会員の故意または過失による場合(同項イ)、会員の家族・同居人・留 守人等会員の関係者による会員外使用の場合(同項ロ)、会員規約の違反に よる紛失・盗難による場合(同項ニ)等には、代金の支払を免除しないとさ れている。

そこで X は、①カードの紛失届(無効通知)以後のカード使用代金の支 払義務がないこと、②会員の責任に基づかない紛失・盗難によるカード使用 や家族等によるカード使用をカード会員の責任とする会員規約は公序良俗に 違反すること、③これに対し、紛失・盗難が会員の故意または重過失がある 場合のカード会員の責任は合理性がないわけではないが、本件では故意また は重過失はなく、本人確認が不十分であるカード会社の過失による過失相殺 をおこなうか、またはカード利用限度額内にカード会員責任を縮減すべきこ とを理由に、債務不存在の確認を求める等の請求をした。

これに対し、カード会社は、①加盟店への無効手配完了以後はカードが無 効となること、② X はカード保管につき善管注意義務に違反していること、

会員規約14条は公序良俗に違反しないこと、③カード会社には本件カードの 紛失・盗難届以後の無効手配について過失がないことを主張した。

判決要旨

請求一部認容・一部棄却。

①については、会員の申出によってカードを無効とする規約でないこと、

全加盟店がコンピュータに連動する端末機(CAT)を備えていれば、会員 の申出によって直ちにカードを無効とすることができ、それが望ましいもの の、現状では百貨店は備えていないほか、一般加盟店の大多数もこれを備え ていないことを考慮すれば、「本件カードが無効となるのは被告による無効 手配が終了した時点と解さざるを得ないし、右時点が加盟店によって異なる

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のもやむを得ない」として、X の主張をしりぞけている。

②については、会員規約14条は公序良俗に違反しないとした上で、X が カード券面に署名をしていないことから、「X が規約に定める署名義務及び 次の通り、善管注意義務に違反した状況下で生じたものといわざるを得な い」とする。すなわち、「原告ら夫婦は、B には、前記の、カード持ち出し や窃盗歴があるにもかかわらず、本件カードを同人の職場でもある事務所の ダンボール箱の中に、施錠できない鞄に入れて保管していたのであり、また、

A は随時、右鞄から銀行通帳等の出し入れをしていたというのであるから、

本件カードの保管は善管注意義務に違反する(事務所の机を、施錠できる抽 き出しのついたものにしたり、金庫を設置する等何らかの配慮ができたはず である)。さらに、事務所の戸締りが前記の通り不完全なものであり、右状 況を B は知悉していたのであるから、本件盗難は原告の重過失によって生 じたものといわざるを得ない。」として、規約14条1項3項イロのいずれに よっても X が支払義務を負うとしている。

さらに、③については、カード会社の無効手配に過失はないとしながらも、

カードの使用限度額(本件では50万円)を超える使用を注意したり、カード の引き上げを行なうことができることを考慮して、次のように述べ、代金支 払義務を50万円に限定した。すなわち、「右に述べた使用限度額の制度に照 らすと、会員において、これを超える使用をした場合に代金支払義務を免れ るものではないが、カードの不正使用があった場合にも、会員に同様の支払 義務を負わせてよいかについては、個別具体的に考慮するのが相当であると 解される。本件においては、前記の通り、過去の月間カード使用額は高々数 万円に過ぎず、原告は被告に対し、速やかに本件カードの盗難を申出たこと が認められるうえ、被告は、本件カードの使用代金の請求を、右限度額の五 十万円に留める旨の意向を表明していること(被告は、本件口頭弁論期日に おいて、反訴請求の趣旨を五十万円及びこれに対する付帯請求に減額する旨

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の申立をしたが、原告はこれに同意しなかった。)を併せ考慮すると、原告 の代金支払義務を五十万円に限定するのが相当である」

検討

①の点については、不正使用の結果を回避できない時点の損害を負わせる ことはそもそも過失責任の考えに反するものであり、そのような責任を負う 合意もない以上、本判決の結論は正当な判断と考えるべきである。

カードが紛失・盗難された場合に、その旨を知ったカード会社が当該カー ドの無効措置を講ずる義務を負うことは、カードシステム提供者が行なうべ きカード不正使用によるリスク回避措置として当然である。カードの無効手 配が行なわれれば、それ以降は、加盟店段階でカードの不正使用が防止でき ることになる。カード会社によって無効措置が適切に行なわれなかった場合

(手配が遅延した結果、不正使用が行なわれた場合等)には、カード会社が カード会員に対して不法行為責任ないしは債務不履行責任を負うことになる か、カード会社のカード会員に対する支払請求額算定の際の過失相殺要因と 考えるべきであろう。

②の点については、カード会員にカード保管についての善管注意義務違反 があること、またカード紛失がカード会員の重過失によるとしたことについ ては妥当と考える。しかし、会員規約14条が公序良俗に違反せず、有効なも のと判断したのであれば、本件のような長男による不正使用は、会員規約1 条3項ロを直接適用して、カード会員の責任を認めてよかったのではない 。すなわち、家族による不正使用の責任はカード会員にあると判示すれ ばそれで十分であったと考える。

この点についてはおそらく、本件訴訟が X による債務不存在確認請求に 始まったものであること、X は、会員規約14条3項ロが公序良俗違反にあた

和田正隆「家族が不正使用したクレジットカードの代金支払義務とカード規約」

手形研究49号(14年)17頁も同様の趣旨と思われる。

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ると判断をされたとしても同項イの「重過失」に該当する可能性があるとの 認識から、カード会員の重過失の不存在を強く主張したことから、裁判所も これを受けて、重過失の存在を正面から判断・認定することになったという 個別事情があったのではないかと思われる。なお、重過失の認定としては、

カード情報を知らせる行為があれば、それをもって重過失(カード管理義務 違反)とすべきであると考える。

ところで、家族等の不正使用の場合に使用代金の支払免責を除外する条項

(本件14条3項ロ、以下家族使用による免責除外条項)の有効性については、

本判決によっても容認されている。学説は、カード会員との密接な関係のみ を理由とすることは合理的でないとして否定する見解、近代市民法の大原 則たる個人責任や自己責任に反するとして否定する見解がある一方で、家 族による不正使用の容易性、家族との通謀による不正使用をカード会社が立 証することの困難性、カード会員の家族に対する監督責任などを理由にあげ ながら、有効性を認める見解もある

尾島茂樹「長男が無断使用したクレジットカードの代金の支払義務をカードの 月間使用限度額五〇万円に限定した事例」判例評釈49号45頁も、本判決は、会員 規約14条3項ロによる責任を否定するものではなく、『家族』による不正使用に 重い責任を課す条項を有効とした点(免責の例外とする点)、及び紛失・盗難に関 する会員の重過失の判断(善管注意義務の内容)については先例的価値があろう」

としている。同様に、会員規約の有効性を認めた点で先例的価値があるとするも のに、沢野直紀「下級審民事判例研究(平成八年度(一)(10)クレジットカー ドの不正使用と損失負担―長男の無断使用(代金合計約一三〇万円)に対する会 員(父親)の支払義務がカードの月間使用限度額五〇万円に限定された事例」西 南学院大学法学論集(16年)15頁。

朝見行弘「クレジットカードの無断使用と代金支払義務」消費者取引判例百選

(別ジュリ15号)13頁は、「カード使用者と密接な関係にあることの一事をもっ て、他人の不正使用による使用代金を会員に負担させることに合理性を認めるこ とはできないであろう」とする。

島川勝「クレジット・カード規約では、どのような点が問題となるか」椿寿夫 編『講座・現代契約と現代権の展望6巻新種および特殊の契約』日本評論社(1 年)12頁など。

尾島・前掲注15)45頁。

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私は家族使用による免責除外条項の有効性を認める見解が妥当と考える。

上記見解を概観すると、否定的見解はいずれも、一般論であるのに対し、

肯定的見解は家族関係の実態を十分に検討した上での具体論となっているよ うである。

まず、否定的見解が指摘するように、個人責任や自己責任が近代市民法の 大原則であるとしても、近代市民法における契約自由の原則に基づく合意が あれば、契約上の義務を負うこともまた当然の原則であろう。そうであるな ら、家族使用による免責除外条項が民法90条の公序良俗に違反せず、消費者 契約法により無効とされないかぎり、有効となるはずである。また、クレ ジットカード取引においては不正使用が不可避な構造となっており、この取 引によって利益を得る各当事者が不正使用リスク・損失を負担すべきである ことに合理性があること、不正使用の原因者が責任を負うことにも合理性が あることもすでに指摘したとおりである。

つぎに、家族使用による免責除外条項が有効であることの具体的な根拠の 第一にあげるべき点は、家族による不正使用は他人による不正使用に比較し てはるかに容易に行われ得るという点である。このことを考慮すれば、カー ド会員の管理義務をより重く考えなければならない。家族の不正使用は家族 という会員の管理下で生じるものであるから、カードシステムのみによって 防止することは不可能である。原因者負担の考え方から、不正使用のリス ク・損失をカード会員に負わせてよいであろう。そうでなければ、家族によ る不正使用は後を絶たないことになり、カード取引全体に及ぼす影響も決し て小さくない。またこのようにしたとしても、カード会員がカードの自己管 理をしておきさえすれば、このような不正使用は容易に防止できることを考 えれば、このような義務は決して重いものではない。たとえ家族に対しても

(むしろ家族であるからこそ)カード情報については一切知らせないことに すればよいからである。したがって、カード情報を知らせた以上は不正使用

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のリスクを引き受けたと考えるべきであろう。

また、家族による不正使用自体、証明するのが困難という問題も大きな根 拠である。家族で口裏を合わせさえすれば、他人による不正使用と同様にカー ド会員の責任はないと考えるのは、現在の社会的法感情からも妥当でないば かりか、不正使用リスクの増加によるカード取引コストの増加とモラルハ ザード等を招き、カード取引に与える影響は大きい。むしろ、家族による不 正使用の責任をカード会員が負担すべきとするほうが、社会的法感情に合致 するのではないか。これを他人の不正使用と同視すべきではない。

とりわけ、同居して生計を共にする親子の場合で、特に子が未成年者で親 権に服する状態にあるときに、その子が親のカードを窃取して使用するとい うケースは、家族使用による免責条項の典型的なケースである。このような 親子関係がみられる場合は、単なる家族以上に経済面でも監護・教育面でも より密接な生活関係にあるといえるから、上記根拠がいずれもより積極的に 当てはまるケースといえよう

なお、法律上の親族や単なる同居人による不正使用のすべてについてカー ド会員に責任を負わせることに対し、その範囲がやや広すぎるとの指摘 ある。たしかに、別居状態にあり事実上の離婚状態にある者がカードを窃取 して使用した場合等には、法律上は夫婦であるが、夫婦の信頼関係が失なわ れている状況のしたでは、事実上他人と同様であるから、他人による窃取と

仮に、同居し生計をともにする親子であって、子が親の扶養家族である場合に、

親の責任を認めないとすると、紛争解決に無駄な費用と手間を要するとの問題が 生ずる。

この場合、子の不正使用の責任を経済的に負担するのは親になるから(カード 会社が子に不正使用の不法行為による民事責任を追及しても、その賠償金は結局 のところ親が負担することになるから)、カード会社が直接親に責任を求めること ができるようにした方が、解決に無駄な費用と手間を使わないですむ(効率的な 解決が図れる)のである。

この点からも、家族使用の免責除外条項は合理的といえる。

この点は、尾島・前掲注15)45頁にも指摘されている。

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同視してよい場合があろう。しかし、これは特殊な場合である。上述のよう な典型的な家族関係が維持されている場合は、家族使用による免責条項は有 効と考えるべきである。

③については、原告たるカード会員の債務不存在確認請求訴訟たる本件に おいて、原告の同意なしに、請求の縮減を認めた点で問題が指摘されている が、その結論については、肯定的に評価するものがある。これに対し、カー ド使用限度額はそれほど厳格に運用されていないこと、カード会員自身が限 度額を超えて利用した場合に全額を支払うべきであることから、限度額への 縮減に対して否定的評価を与えるものもあるが、この見解も一定の制限を与 えることを主張している。これに対し、本判決では、カード会社が使用限 度額相当の損失負担を事実上表明していたことがこのような判示の実質的根 拠とみられ、必ずしも使用限度額のもつ意味を十分に考慮したものとはいえ ないのではないか。

そこで、本判決のような事情に関わりなく、使用限度額の範囲でカード会 員の責任を制限する考え方の是非を考えると、使用限度額のもつ意味、すな わち、使用限度額がどの程度厳格に用いられているのかという点が重要と考 える。

限度額を超える取引を停止させるシステムが出来上がっているとすれば、

限度額による制限は合理性がある。むしろ、限度額を超える会員外使用は現 実にありえないといえよう。しかし、現実のシステムでは、かならずしも限

尾島・前掲注15)45頁〜46頁、朝見・前掲注16)13頁。

尾島・前掲注15)47頁、土田亮「家族によるクレジットカードの無断使用と支 払義務(商事判例研究)」ジュリスト15号(17年)17頁、山本豊「民法判例 レビュー47②重過失によって家族に盗まれたクレジットカードがカード会社への 盗難通知後に不正使用された場合のカード会社の責任(大阪地判平5・10・18判 タ八四五号二五四頁)」判例タイムズ83号(15年)29頁等。

和田・前掲注14)18頁。これは、信義則に基づき、使用限度額の2〜3倍ない し数倍を限度とすべき旨主張する(同20頁)

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度額を超える会員外使用を防止できる仕組みなっておらず、現実に限度額を 超えるカード使用が行なわれている。会員も、自らが限度額を超えるカード 使用を行なった場合には、使用代金を全額支払っているのであり、そもそも カード会社によって自己の売買代金相当分を支払ってもらっている以上、そ れを支払うのは当然であろう。このようなシステムの下では、限度額を超え る会員外使用のリスクも同様に存在しているから、限度額に会員の責任を縮 減する根拠はない。

!

会員の責任について過失相殺を認めた事例

事実の概要

カード会員 Y の夫 A がカードを窃取し、協議離婚の直前にカードを使用 した事案である。

判例!1と同様、①家族使用の免責除外条項の有効性、②会員の責任の利用 限度額への限定、③過失相殺が争点となった。

判決要旨

①については、「家族・同居人という会員と社会生活上密接な関係にある 者は、一方で、カードの使用が他の第三者と比してはるかに容易なものであ り、他方で、会員としても、カード保管上、盗難等はもとより、右のような 者の不正利用についても、原告に対して保管義務を負うべき立場にあると解 されるから、クレジットカードの性質及びその予定されている利用状況等に 照らすと、右のような者による使用について、それ以外の第三者による使用 と区別して会員により重い責任を課すことを内容とする右規約には一応の合 理性があり、それが直ちに公序良俗に違反するとはいえない」とする。

②については、「一般に、カード契約における利用限度額の趣旨は、信販 会社がカード契約を締結するにあたって、会員となるべき者の信用・支払い 能力を考慮して、加盟店がその限度額以上のカードの使用を拒絶できるとい

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う趣旨と解されるから、特別な事情のない限り、会員の支払責任をその限度 額に限定するものではなく、本件において別意に解すべき特別な事情は認め られない」として、カード会員の責任をカードの使用限度額の範囲に制限す ることを否定している。

③については、本件カード規約におけるカード会員の責任が家族等の不正 使用による損害賠償請求権に関することから、損害の発生にカード会社の過 失があれば、過失相殺することができるとしたうえで、「本件カードは、い わゆる個人カードであることから、本人でない者の使用は、本件カード規約 上、禁じられており、そのことはカードの記載されているカード番号によっ て容易に知り得べきものであるから、本件カードの提示を受けた加盟店とし ても、その者が本人(又は少なくとも本人から利用権限を得ている者)であ るかについて合理的な疑問がある場合には、まず、その旨の確認をすべき義 務があり、その結果次第では、カードの利用を拒絶することも考えるべきで ある」とする。本件では、「本件各取引が行なわれた際、本件カードに被告 による署名があったことが窺われ、かつ、その名前は、一般的には女性名で あるから、各加盟店としても、前記合理的疑問をもってしかるべきであると ころ、各加盟店において、本人確認等について適切な処置をしていないこと は明らかであり、その点において各加盟店には前記義務違反があったという べきである」としている。その上で、「原告としても被告との関係で、各加 盟店をして本人確認を徹底させるべき義務を負っていると考えられるととも に、各加盟店は、原告の被告に対する債務の履行を補助するものと評価でき るから、右事情を前記損害の算定に斟酌することができると解されるところ、

前記義務違反は、加盟店として基本的な義務違反であるから、その過失割合 は五割をもって相当とする」と判示している。

検討

本判決も、判例!1と同様に、家族使用の免責除外条項についての有効性を

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認めている。一方、判例!2と異なり、使用限度額による責任制限は否定して、

加盟店における署名確認義務違反をもって、カード会社の過失とし、過失相 殺を認めている。

判例!1では、カード会社の過失がないとされているから、過失相殺を認め ている点は判例!1と整合性が認められるが、使用限度額による責任制限を認 めていない点は判例!1との重要な違いである。本判決では、使用限度額はこ れ以上与信できない上限として機能しているのではなく、むしろ特別な事情 がないかぎり限度額を超えた与信は可能であるとされている。限度額は、カー ド会社が、経済的信用や支払能力を欠く者に対して、いざというときに与信 拒絶できる最後の手段として機能しているにすぎないとされている。限度額 を超える与信を拒絶できるシステムが完全に存在しているとはいえない当時 の CAT システムの普及度合い、限度額を越えたカード利用が可能な経済力 を持つカード会員による限度額を超えたカード利用の実態(すなわち、現実 には限度額を超えた利用と返済がスムーズに行なわれ、このような事例の方 が多いこと)、カード会員外使用の不可避なリスクとカード会員による簡単 な防止対策でその大部分が回避可能であること等を考慮すれば、このような 判断は現状を適確に反映したものといえよう。

すでに述べたとおり、判例!1の使用限度額による責任制限はその理論的根 拠の面で批判が多かったこと、本件事案ではカード会社の過失を認めること ができたことからみれば、本判決の方がクレジットカード取引の実態に即し たものと評価できるかもしれない。

問題は、加盟店における署名確認義務違反をもって直ちにカード会社の過 失といえるかである。カード会社と加盟店は独立した別個の契約主体である ことを考えれば、最終的には加盟店に過失責任を負わせるべきである。しか し他方では、加盟店のカード取扱い業務行為は機械的かつ手続的内容とはい え、カードシステム運用のための重要な一部である点をどのように考慮する

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かである。また、会員外使用の損失が一次的には、カード会員とカード会社 間のカード使用代金の損失処理としてあらわれてくるという特質も考慮する 必要がある。

加盟店の過失による会員外使用リスクをカード会員とカード会社のどちら に負わせるかという視点で考えれば、社会的経済的関連性の程度からみて、

カードシステムにおける本人確認業務にかかる加盟店の過失はカード会員の 過失とみるべきでなく、カード会社側の過失と評価すべきであろう。

また、この場合に、カード会社の損害拡大防止義務違反等の過失相殺が問 題となるのは当然である(本判決では、無効手配が適切であったとされてい るから、過失相殺の余地はなかった)

5.まとめ

これまでにみてきたように、クレジットカード会員外使用はカード取引に 内在する不可避のリスクであるが、キャッシュカード利用との様々な違いか ら、特別法によるカード利用者保護は図られてない。

クレジットカード会員外使用の損失分担については、カード会員契約の会 員規約に定めがあるから、これが合理的かつ適正なものかが問題となる。そ の判断は、クレジットカード取引の特質を考慮しつつ、受益者負担と原因者 負担の観点から考慮すべきものであるが、結論的にいえば、判例で争われた 現在の会員規約は有効と考えるべきである。家族使用による免責除外条項に ついても、すでに指摘したとおり、有効である。このことは上述した大阪地 裁、札幌地裁の判決も判示している。

利用限度額の範囲に損害を縮減する点については、クレジットカード取引 のシステム上、利用額の上限として厳格に運用されていない現状を考慮すれ ば、責任制限として用いることはできないと考える(札幌地裁判決同旨)

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このような制限はあくまでも立法措置によるべきである。

過失相殺の可否にあたっては、当該不正使用事例にかかる当事者の行為に 関連して、具体的に判断すべきである。クレジットカード利用における本人 確認手段は三者間取引であること等様々な特質から、より確実なシステムの 導入が適宜進められているところ、その過渡期における不正使用リスクは カードシステムに内在するリスクとして、すでに当事者が契約により引き受 けているものであるとともに、すべての当事者に共通する要素である。

このように考えれば、クレジットカードの会員外使用における会員の責任 を免責させるためには、それ相応の政策的理由に伴う立法対応によって行な うべきであると考える。問題は、免責させるべき政策的理由があるか否かと いう点と、その理由があるのに立法対応が行なわれない場合に司法的判断に よって会員規約の修正・制限的解釈が可能かという点であろう。後者の問題 については、肯定すべきと考えるが、政策的理由の存否については、契約実 態、社会経済的影響等を考慮しなければならない。その際重要と思われるの は、①銀行業務・銀行の金融機能との比較・関連性、②流通政策の観点、③ カード会員外使用の被害者保護と適正な会員保護のバランス、④カード使用 コストの負担者の問題、④市場競争と規制―契約自由と規制−の関係などで ある。今回の割賦販売法改正の総量規制に向けた動きなどはこのような検討 が十分に行なわれないまま、安易な妥協といった側面が見られないではない が、この点の詳細な検討は、今後の課題としたい。

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参照

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