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インターネットによるクレジットカード 会員外使用の民事責任(1)

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1.本稿の目的

クレジットカードが広く社会生活で利用されるようになったのは10年代 後半以降のことである

インターネット取引が社会に浸透するようになり、情報・電子通信技術が 急速に発展していく過程で、クレジットカードの利用形態は著しく変化して きた。利便性が飛躍的に向上するとともに、安全性の確保に向けた仕組みも

この経緯については、蓑輪靖博「クレジット販売の多様化と割賦販売法改正」

クレジット研究23号(20年)67頁を参照。

なお、わが国におけるクレジットカード取引の生成・発展史の詳細については、

!日本クレジット産業協会『わが国クレジットの半世紀』(12年)13〜10頁、

6〜22頁参照。

インターネットによるクレジットカード 会員外使用の民事責任(1)

蓑 輪 靖 博

1.本稿の目的

2.カード番号の通知によるクレジットカード取引

3.クレジットカード取引における会員外使用と民事責任の考え方(以上本号)

4.クレジットカード会員外使用に関する判例の分析と検討 5.まとめ

福岡大学法学部教授

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段階的に導入されてきた。しかし、会員外使用のリスクについてみれば、そ れを完全に排除できない上、新たなシステムの整備・導入も市場競争下での 限界があり、新たな利用方法を利用者に周知徹底させるためのタイムラグを 回避できない状況にあって、会員外使用の損失を誰に負担させるかという民 事責任に関する課題は立法論的な議論を含め、依然として解決しているとは いえない大きな問題である。

本稿では、この問題の現状を明らかにし、課題克服に取組みたい。

クレジットカードの利用は、加盟店に対する利用代金の支払に代えてカー ド媒体を提示することにより、行なわれてきた。現在でも、このような利用 方法は重要な地位を占めるといってよいが、インターネット取引の広がりに よって、カードの提示だけではなく、カード番号を通知する方法が広く利用 されるようになっている。

割賦販売法は、クレジットカード取引のすべてを適用対象とせず、2ヶ月 間以上にわたり3回払い以上の分割の場合に限定した総合割賦購入あっせん のみを適用対象としているが、この定義規定をみると、クレジットカードの 利用方法の拡大を受けて改正・変更されている。すなわち、2条3項1号は カードを証票と称し、「それと引き換えに、又はそれを提示」することを前 提としていた規定から、平成12(20)年改正(平成13(21)年施行)に よって、「それと引き換えに、又はそれを提示しもしくは通知し」たカード 使用を加えている

カードの提示は基本的に、加盟店が本人確認を行うと同時に、決済の都合 上カード番号の写しをとるために行なうものである。決済機能の観点から カード提示の意味を考えれば、カードの占有を移転すること自体が目的でな

「それと引換えに」とは、チケット販売方式を前提としたカード取引であり、当 初はこの方式から始まった。その後、割賦販売法の昭和47年改正によって、割賦 購入あっせんはチケット販売式にカード方式が加えられた(詳しくは拙稿・注1)

9頁)

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く、カード番号を知ることを目的としている。したがって、カード番号によ る使用という方法は、カードの提示の有無に関わらず、決済手段としての カード使用における本来の形態ということができるのである。カード番号は カードの送付により、カード会員のみが知りうるものであるから、カード番 号の通知は従来の方法であるカードの提示と同様の意味を持つものである。

なお、電話による物品販売やサービス提供の代金支払などにも利用されてい るもので、インターネット取引だけの利用形態ではない問題をも含んでいる。

ところで最近になり、インターネット取引において、カード番号の会員外 使用の問題がみられるようになった。ごく最近の例をあげれば、父親のク レジットカードのカード番号を盗用して、19歳の長男がインターネットサイ トの利用代金を決済したという事件において、暗証番号の利用を義務付けて いないネット上の決済システムは不正使用の排除に不十分であるうえ、カー ド会員に重過失は認められないとして、カード会社による利用代金の支払請 求を棄却した判決が報道されている

本稿ではとくに、このような最近の事例を参考としつつ、インターネット 取引を通じてクレジットカード番号の会員外使用が行なわれた場合、カード 会員がどのような民事責任を負うのかについて検討したいと考える。

とはいえ、これについては様々な論点があるので、そのすべてをここで論 ずることはできない。本稿では、インターネット取引におけるカード番号の 通知による利用の現状について紹介した上で、まずは、カードを媒体にした

本稿が「不正使用」ではなく、耳慣れない語である「会員外使用」を用いる理 由は、「不正使用」がクレジットカード会員による使用を含む余地があるからであ る。本稿では、カード使用権限をもたない者が使用(会員外使用)した場合に、

その使用代金にかかる民事責任を会員、カード会社、加盟店がどのように負うべ きかという視点から検討することを目的としている。

これは、長崎地裁佐世保支部平成20年4月14日判決である。この内容は平成2 年5月2日日本経済新聞夕刊、同日読売新聞夕刊の報道による(カード会社が控 訴)。なお、脱稿後、金商10号71頁以下に掲載されており、別稿で、論ずる予定 である。

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インターネットによるクレジットカード 会員外使用の民事責任(1)(蓑輪)

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決済手段として共通するキャッシュカードとの関わりを検討したい。暗証番 号による本人確認を前提とした仕組みであるキャッシュカードは、会員外使 用について、預金者保護法が存在しているのに対し、クレジットカードにつ いてはそのような特別法はなく、契約上の合意に委ねられていることから、

その異同に合理性があるのか、その理由をどこに見出すべきかについて検討 する。

つぎに、クレジットカード会員契約(会員規約)の合理性について検討す る。会員外使用の責任分担に関わる会員規約も多岐にわたっていることから、

本稿でそのすべてを検討することは差し控えることにし、さしあたり契約内 容の解釈によって責任分担が図られている現状について、判例で示されてい る過失相殺や利用限度額による責任制限の考え方の是非について検討する。

その際、暗証番号による本人確認手段等を講じていないクレジットカード取 引システムの提供をどのように法的に評価すべきかが一つの鍵になる。

2.カード番号の通知によるクレジットカード取引

!

クレジットカード取引の現状

物品・サービスの購入に際し、現金によって代金を支払うのではなく、

ローンやクレジットを利用する消費者信用取引にあって、クレジットカード 取引はその中心になりつつあるといってよく、その傾向は今後も強まりこそ すれ、弱まることはないと考えられる。

このことは、例えば、以下のような統計的データからもよく見てとるこ とができる。

さしあたり、平成以降に限定したデータによると、消費者信用全体の信用 供与額の増加率に比べて、クレジットカードの増加率は顕著である。例えば、

販売信用のデータでみれば、販売信用全体の信用供与額が平成元年の23.4兆

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円から同18年の45兆円と1.9倍増だったのに対し、クレジットカードでは、

平成元年の9.4兆円から同18年の34.7兆円と3.4倍に増加している。しかも、

販売信用のうちクレジットカードが占める割合でみれば、40%から77%とほ ぼ倍増しており、全体の8割近くを占めるに至っている。また、カード発効 枚数は平成18年で2億96万枚に達している。

クレジットカードを持つことがステイタス・シンボルであり、海外旅行の 際にクレジットカードを取得するケースが多かった時代があった。その後、

バブル経済の崩壊を経て格差社会問題が顕著となっている現在では、ごく一 般的な日常生活での消費活動にも多く利用されるようになっている。携帯電 話料金、高速道路料金、ガソリンスタンドでのガソリン代などの支払決済に も深く浸透し、大型店等での食料品・日用品購入での利用も日々目にする光 景となった。いまや、クレジットカードのない社会生活はありえないといっ てよい。

この理由を明らかにすることは、経済学や社会学的観点を含む本格的な研 究対象となりうる。カードを利用する側から見れば、ポイント制や支払猶予 等による利便性と現金払いの手間・危険性等がその原因と思われるが、それ を実現する背景には、いわゆる IT 化による生活形態・社会システム等の変 化があることはいうまでもない。これにより、現金と比較した場合の安全 性・利便性・経済効率性等における優位性が確保されることになったのであ

統計的数値については、!日本クレジット産業協会『日本消費者信用統計 95年 版』(15年)、同『日本の消費者信用統計平成15年版』(23年)、同ホームペー ジ(http : //www.jccia.or.jp)による。

なお、上記統計によれば、消費者金融の信用供与額については、平成元年の33. 兆円から増加していたが、平成9年の43.5兆円をピークに平成18年には30.5兆円 に減少している中で、クレジットカードでは、3.4兆円から7.5兆円に増加してい る。

ちなみに、昭和57(12)年に販売信用全体の信用供与額は13.3兆円で、クレ ジットカードは3.3兆円(3.3%)であったから、これと平成18(26)年を比較 すると、販売信用が3.4倍増であるのに対し、クレジットカードは実に10.5倍増に なる。

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る。

しかし、このようなカードシステムは当然のことながら、国が率先して提 供したものではなく、市場競争を前提とした経営戦略と企業努力による事業 活動として展開され、我々の社会に普及しているものであるから、その安全 性の確保に向けた取組みはあくまでも市場原理の枠内で行なわれるにとどま り、技術面とコスト面等からみて限界がある。たとえばカードが貨幣に代わ る手段として位置づけられていくとすれば、将来的には国際環境におけるわ が国の位置づけをも考慮しつつ、カードシステムのあり方を模索していく国 家戦略が必要となるが、現在ではそのような段階には至っていないことはク レジットカードの会員外使用における民事責任を考える上で、十分に留意す べきことと考える。

!

カード番号の通知による利用の問題点

インターネット取引を通じたクレジットカード会員外使用の問題について は、平成17年10月にインターネット商取引とクレジット事業研究会が示した

「インターネット商取引とクレジット事業研究会中間報告書」(以下、報告 書)によって検討され、事業者側の対応すべき方向性が示されている。

インターネット取引とクレジットカードの利用状況

報告書によれば、消費者向けの電子商取引の市場規模は、19年に3, 億円であったのものが、24年には5兆6,0億円と17倍に急増しているこ とを指摘している

同様に、このような取引は、ショッピングモールやインターネットオーク ションといった取引媒介を通じて実現されることが多いとされている。支

この研究会は経済産業省商務政策局商務流通グループ取引信用課が所管してい る。報告書の詳細については、経済産業省ホームページに掲載されている

(http : //www.meti.go.jp/press/21/21.html)

前掲注7)報告書3頁。

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払い手段としては、インターネット通販の決済手段のデータによれば、全体 の48%がクレジットカードとなっている

クレジットカードの利用が多い理由としては、インターネット上で決済を 完結できること、現金が不要であること、手数料がかからないこと等のほか、

「抗弁権の接続」規定の存在といった利用者側の利便性があげられている しかし、「抗弁権の接続」規定については、実際に消費者による利用頻度が 高いマンスリークリア方式のクレジットカードに適用されないため、その意 味では、利用者にとってどれだけ現実の利便性をもたらすか疑問と考える。

クレジットカード会員外使用の現状と課題

インターネット取引を通じたクレジットカードの会員外使用の統計的デー タはないが、クレジットカード取引全体の被害額は、平成16年で約16億円 とされ、その6割以上が偽造カード被害となっているが、30億円を超えた 平成12年をピークに大きく減少しているものの、インターネット上のカード 情報詐取等の新たな形態がみられるようになっている

インターネット取引における問題としては、加盟店による詐欺的行為等の 不適切な販売の問題と、情報漏えいの問題、不正使用の問題があると指摘し ており、不正使用問題については、本人確認手段の充実が指摘されている

具体的には、パスワード等の入力等が考えられるが、このためには例えば、

「3D-Secure」と呼ばれるシステムの導入が考えられる。これは、会員番号 とカード有効期限の入力後に、利用者がパスワードと ID を入力して本人確 認を行うものであり、キャッシュカードの暗証番号と同等もしくはそれ以上

前掲注7)報告書4〜5頁。

以下、代引きが19.6%、コンビニ支払いが12.9%と続いている(前掲注7)報 告書6頁)

前掲注7)報告書7頁。

前掲注7)報告書8〜9頁。以後、さらに不正使用は減少しているようである。

なお、不正使用の統計的データの詳細は、後掲注15)参照のこと。

前掲注7)報告書26頁。

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の安全性が期待できる。しかし、当然のことながら加盟店による導入が必要 であり、一つの加盟店で数百万円の費用が必要といわれている。将来的には 導入の方向に向かうと考えられるものの、費用負担の問題の他、手続内容を 利用者に普及・浸透させるための時間的問題などを考えれば、法的規制を講 じないかぎり、早い時期の導入は困難であるといわざるを得ない。

このような段階において、カード番号の入力による現在の利用方法を前提 とした会員外使用が行なわれた場合、誰に、どのような民事責任を負わせる べきであろうか。

3.クレジットカード取引における会員外使用と民事責任の考え方

!

カード取引と会員外使用問題

現代社会におけるカードを媒体とした取引の浸透はすでにクレジットカー ドにかぎられない現象である。具体的には、様々な名称がつけられている ようであるが、その機能面からみれば、キャッシュカード、デビットカード、

プリペイドカードのほか、サービス機能に限定された局地的な会員カード等 も含め、実に多くのカードが社会に氾濫している。

その中で、クレジットカードとの関わりでは、キャッシュカードが最も重 要である。なぜなら、いずれもコンピュータネットワークを通じて世界のあ らゆる場所で、金銭を取得するか、金銭の代わりに利用できるものであるう え、キャッシュカードの中にはクレジットカードやローンカードの機能を兼 備したものも多くあるからである。一枚のカード媒体が利用の仕方だけで

(例えば、機械に挿入する際の向きを変えるだけで)、預金払戻し行為と

経済誌等でも頻繁にカード特集が行なわれており、消費者がどのようなカード を選択し、どのように利用するかが豊かな消費生活の鍵を握っているといってよ い。

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ローン契約の締結行為に早変わりするものも多くあり、カード利用者にとっ ては、その違いを区別することが困難な場合も少なくないというのが実態で あろう。

すでに述べている通り、これらはカードの使用を許された者のみが使用で きるものであるから、カードの使用にあたっては、カード使用権限があるか どうかの確認(本人確認手段)をどのように行なうかはきわめて重要な事柄 である。

本人確認手段については、カードシステムの進歩・発展に伴い、多様な手 法が開発されているが、現在のところ、確実に本人を特定できる方法として は、キャッシュカード等で一部導入されている生体認証以外にないといえる。

しかし、技術的に可能であったとしても、設置に向けた費用・時間の問題、

利用者への認知・理解の問題等から、生体認証をすべての形態のカード取引 に普及させることは、到底困難といわざるをえない。そこで次善の(現実的 な)方策として、様々なシステムが開発、導入され、新たな会員外使用の防 止に向けた取組みが行なわれている。

一方で、会員外使用はカード会員のカード使用方法やカード管理方法に大 きく寄与しているから、会員以外の者による使用防止に向けたシステムを構 築しても、カード会員が会員以外の者による使用を招来し、誘発する行為を 行う場合にはその安全性が維持できない。会員外使用防止の取組みはカード 会社による安全なシステムの構築とカード会員の適正な利用方法の両者に よって可能となる点も忘れてはならない。

いずれにしろ、カードの使用権限のない者がカードを使用すること、つま りカードの会員外使用を完全に防止することができない以上、カード会員外 使用は基本的に、カード取引に内在する不可避のリスクというべきである このようなリスクから生ずる損失分担は特別法による処理が行なわれない以 上、市場競争社会における契約自由を前提とした契約当事者の合意を通じて

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決定されることになる。ここでの契約自由は、カード会社から提供された約 款をカード会員が受け入れるか否かという契約締結の自由ということになる が、その際には、カード会員は現金購入では得られない利益を獲得する一方、

会員外使用リスクを受け入れるか否かといった点を判断することになり、契 約締結後、その契約内容に拘束されることになる。当然のことながら、カー ド取引を締結しない自由もある。また、契約が有効であるためには、民法又 は消費者契約法に定める無効や取消し原因を具備しないことが前提となるこ ともいうまでもない。

!

クレジットカード取引の特質からみた会員外使用のリスク

ところで、キャッシュカードにおいては、いわゆる預金者保護法(偽造 カード等及び盗難カード等を用いて行なわれる不正な機械式預貯金払戻し等 からの預貯金者の保護等に関する法律(平成17年))によって、機械を通じ たキャッシュカード不正使用による預金者の保護が図られている。これに対 し、クレジットカード取引には、このようなカード会員保護に向けた特別法 は存在しないから、当事者間で合意された契約内容の解釈(すなわち、カー ド会員外使用に不可避のリスク・損失をどのように分担すべきかについての 契約内容の解釈)を通じて、カード会員外使用の責任が判断されることにな る。

この差異がどこにあるかといえば、被害の大きさや社会に対する影響等を 踏まえた国の政策判断の結果といわざるをえない。

カードの不正使用は、偽造カードによる被害と国内における被害の割合が高い。

前掲注2)の統計的数値によれば、平成9年〜18年の不正使用は、平成12年の38. 億円をピークに平成18年には15.3億円に減少しているが、偽造カードの割合はお おむね半分前後になっているし(平成12年が45.5%から徐々に増加したが平成1 年の60.5%をピークに18年は43.3%に減少している)、国内の割合は6〜8割を推 移している(平成9年は50%であったが、平成11年の83.8%以降ほぼ8割を超え ていたが、平成19年には63.9%に減少している)

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その違いは第一に、クレジットカード取引がカード会社による直接金融機 能の手段として用いられているのに対し、キャッシュカードを用いた預金契 約が銀行による間接金融機能の手段として用いられている点にある。基本的 に、直接金融は当事者の合意によって自由に行なわれればよい(もちろん、

行なわない自由もある)が、間接金融は広く国民が参加しなければ成り立た ないものであるから、国民の参加を確保する仕組みが必要となってくる。預 金者保護が求められる理由の一つはこの点にあるのである。

第二に、カード使用の法的性質の違いがあげられる。クレジットカード取 引の場合がカード利用者がカード会社から信用供与を受ける(資金の融通を 受ける)行為であるのに対し、キャッシュカードの利用はあくまでも預けて いる金銭の払戻しを求める債権の行使として行われるものであるという点を あげることできる。つまり、実質的には信用供与を受ける契約成立の手段と して利用されるクレジットカードと、預金契約による金銭債権行使の手段と して利用されるキャッシュカードでは、カード利用者保護の法的意味合いは まったく異なるのである。契約締結は当事者の自由に委ねるべきであるが、

いったん発生した権利の行使が妨げられないよう保護しなければならないの は当然であろう。

さらに、取引の構造や仕組みの違いもまた、このような政策判断を導く法 的根拠・理由といえよう。

すでに述べたように、キャッシュカードは預金契約に基づいて預金者が預 けている預金を払い戻す手段として用いられるものである。キャッシュカー ドにおいては、その利用の相手方が機械であり、その機械を用いるシステム は預金契約の当事者である銀行が構築し、提供するものである。したがって、

キャッシュカード利用における本人確認手段やセキュリティシステムの安全 性は基本的に銀行の対応に委ねられており、システムの変更や導入は比較的 容易でもある。銀行に対して、キャッシュカードの不正使用のリスクを負わ

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せることは合理的といえる。極端にいえば、生態認証を全面導入すれば、不 正使用リスクをほとんど存在しなくなるとも考えられる。この場合、カード 利用者の利用方法の是非も問題とならない。

これに対し、ショッピングに使われるクレジットカードはカード会員契約 に基づいて、商品やサービスの購入代金の支払(売買契約の代金支払義務の 履行)として利用される。これは、カードを利用して一定の信用供与を受け る(実質的に信用供与契約を成立させる)行為である。クレジットカードの 利用は、カード会員契約、商品又はサービス購入契約、加盟店契約という三 つの契約からなる取引(三者間取引)であることを前提とする。カード会社 が設置した機械を利用するキャッシングの場合はキャッシュカードに類似す るものの、ショッピングにおいては、カード利用者はカード会社と異なる独 立した主体である加盟店との間で、カード会社から受領したカードを使用す ることになるのである。この点は、電話やインターネットを使った取引にお いても、基本的に変わりはない。

そうすると、クレジットカードのシステムは銀行のように独立・排他的に 構築し支配できるものではなく、加盟店契約を通じて加盟店という別個の事 業主体の協力の下に実現しなければならないという限界を伴っている。カー ド不正使用の防止には、カード会社の取り組みとともに、加盟店の協力が欠 かせない。この点で、キャッシュカードの場合と同様の方法で、カード会社 に対し、クレジットカード不正使用のリスクを負わせることはできない。た とえば、新しい本人確認手段が技術的に可能となったとしても、その普及を 意図するカード会社からの協力要請に応じない加盟店も少なくない。そのよ うな加盟店を排除すべきだとの指摘もあるかもしれないが、特別法による保 護や安全性確保に向けた法的規制がない以上、カード会社と加盟店という対 等な事業者間の市場競争原理に基づく経済活動の中で、直ちにそのような結 果を期待することはできないであろう。

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このように三者間取引であること(クレジットカード利用は加盟店を介す る仕組みであること)は、キャッシュカード利用と比べて、不正使用リスク が一般的に高いとみることもできる。キャッシュカードを前提とする預金 契約を利用しない者はほとんど存在しないのに対し、クレジットカードの利 用とその前提となるカード会員契約の締結はあくまでも利用者の意思による ものであり、代金支払い方法の選択肢の一つにすぎない。このような契約 の締結を意思決定することは、不正使用リスクも引き受けたものと考えるべ きであろう。実際、現代のようなカード社会においては、貨幣と異なるクレ ジットカードの不正使用リスクは広く周知されているものといえるし、契約 締結時の説明(契約書の提示を含む)によっても知ることができるものであ る。

ところで、クレジットカードシステムにおける不正使用のリスクがキャッ シュカードの場合に比べて、相対的に高いということは、一方でカード会員 によるカードの使用方法やカードの保管方法等カード会員側による行為が、

リスクの高低に大きく関わってくるといえる。カード会員が他人にカードを 貸与することはもちろん、みだりにカードを見せる等カード番号等を他人に 知らせることは当然会員外使用のリスクを高めることになる。カード会員側 の注意義務は重いと見るべきであり、このような注意点は、契約書や契約締 結の際の説明のほか、カード社会の現在では広く周知されているものと見て

クレジットカードの本人確認手段は大きく変遷しているが、これも、三者間取 引であることが大きく影響している。二者間で行なわれる一般的な契約にすぎな いキャッシュカードの利用にあたっても新たなシステムの導入には時間を要して いるが、クレジットカードの場合には、技術的問題と設置費用・時間の問題、利 用者に対する周知徹底期間の問題から、新たなシステムの導入にさらなる時間を 要する。システム導入に至る過渡期においては、とくに不正使用のリスクは高ま る。システム導入は安全性を高める企業努力であるから、法規制がない以上、そ の取組みが早いか否かは不正使用の責任による損失分担の問題とは関係ない。

したがって、クレジットカードが貨幣と同等の利用価値をもつようになれば、

特別法による保護を行なうべきことになる。

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よいであろう。

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クレジットカード会員外使用における民事責任の考え方

民事責任判断の枠組み

クレジットカード会員外使用の損失分担が契約(カード会員契約)によっ て定められるとして、その内容の合理性はどのように判断すべきか。基本的 には、消費者契約法の規定や民法90条により無効や取消しとされないかぎり、

有効な契約内容の解釈がおこなわれる。現実には、無効とされるか否かの判 断と平行して、あるいはそれを通じて、契約内容が解釈・確定されることも 多い。

一般的には、「当事者が達成しようとしていた経済的・社会的目的を考慮 し、これに適合するように解釈されなければならない」とされ、当事者の意 図した目的、慣習、任意法規、信義則がその基準となる。その作業には、

「裁判官の価値判断によって、当事者の合意の内その内容が妥当でない部分 を合理的なものに修正する作業が含まれている」とされる(裁判官による契 約の改訂)が「当事者の自由な意思で定められた合意の効力が認められると する意思自治の原則からすれば、このような裁判官による契約の改訂が広く 認められることはあまり望ましい現象とはいえない」といわれている。と くに消費者契約の場合には消費者契約法によって、事業者と消費者間の情報 量・質や交渉力の格差に鑑み、客観的判断基準によって比較的容易に無効を 認める制度が導入されているのであるから、これらにより無効とされないか ぎり、契約書等を通じて明らかにされた契約内容にしたがった解釈をすべき ことになる。

野村豊弘「法律行為の解釈」星野英一編代『民法講座1民法総則』有斐閣(1 4年)33〜34頁。

野村・前掲注8)35〜36頁。

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そこで、現在の会員契約におけるカード会員外使用の損失分担が合理性を もったものかが問題となるが、その判断にあたっては、クレジットカード取 引の特質・内容を十分に考慮する必要がある。すでに述べたように、キャッ シュカードのような権利行使手段として利用されるのではなく、信用供与契 約締結の手段として利用されるクレジットカードの場合、カード会員には、

契約当事者として慎重かつ適正な判断と責任が求められる。すなわち、カー ド会員は、カード会員外使用のリスクが不可避であることや、そのリスクが キャッシュカードと比べて内在的に高いこと、そしてなによりもカード使用 はあくまでも、信用供与を受ける契約の締結であることを理解しておくべき ことは、現在に至るまでのクレジットカードの歴史的発展の経過や現在のク レジットカードの普及度合い等を考慮すれば、当然のことというべきである。

さらに、現在のカードシステムでは、たとえばカード会員がカードの他人に 貸与したり、カード番号等のカード情報を他人に知らせたことに起因する不 正使用を防止することはできないから、事実上カード会員のカードの管理義 務がカード会員外使用リスクの鍵を握っているともいえる。

だからといって、カード会社がカード会員外使用リスクのすべてをカード 会員に負わせるべき規約は、消費者契約法により無効とされる余地が高いか ら、合理的かつ適正な損失分担が図られなければならない。

そのためには、まず、カード会員はあくまでも、自分の意思決定によって、

上記のようなリスクを持ちつつ、一定の利益を得ることができるクレジット カード取引に参加するものであるという点から考える必要がある。このよう なカード取引が現代社会に浸透したことについては、カード会社の事業戦略 に負うところも少なくないが、基本的にはリスクを上回る利益が取引に参加 する者(カード取引の当事者)に与えられる結果といえる。カード取引の当 事者が一定の利益を得る以上、会員外使用のリスクも一定程度負担する(引 き受ける)ことは、論理必然的なことといえる。会員外使用によるリスクを

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インターネットによるクレジットカード 会員外使用の民事責任(1)(蓑輪)

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カード会社に対して負担させたとしても、カード会社の許容範囲を超える負 担となれば、カード会員に対しても適正な範囲で一定の損失を転嫁せざるを えない。これを認めない場合には、カードシステムの崩壊を招く結果となる し、このようにすることで、効率的なリスクの分散も実現できるはずである

(いわば受益者負担の考え方)

一方、不可避なリスクといえども、そのリスクを高めた者にその限度での 責任を負わせることも当然のことである。会員外使用の原因を作出した者に は、損失を発生・拡大した責任を負わせるべきであろう(いわば原因者負担 の考え方)。すでに述べたように、カードを他人に貸与したり、カード情報 を他人に知らせるといった行為はカード不正使用リスクを著しく高めるから、

一般的にカード会員にはカード管理義務がある。これに違反したような場合 に、カード会員に損失を負担させることは当然であろう。

この二つの観点から、適正な損失分担を行なうことが合理的かつ適正とい える。

伝統的なカード使用形態と民事責任

カード利用は現在でも多く行なわれているように、カード会員が加盟店に 対してカードを提示するという方法で始まったから、カード会員外使用の責 任についても、カード会員以外の者が加盟店でのカードの提示により使用し た場合が検討されてきた。カード会員が他人にカードを貸与することは、

カード会員がカード利用を認容していることもあって、カード会員に責任が あることは比較的容易に認められることから、紛失・盗難カードによる会員 外使用についてカード会員がどの程度の責任を負うべきかが議論されてきた。

クレジットカード会員契約では、会員規約で紛失・盗難カードの会員外使 用による損失のすべてをカード会員に負担させるものがあったが、これに対 しては批判的な学説が多かった。現在では、後に判例で解釈されるような 会員規約が作られている。そこでは、紛失・盗難カードによる会員外使用の

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損失をカード会員の責任に帰するものとしながらも、他方では、盗難保険に より損失のてん補を行なうものとしてカード会員を免責させたうえで、保険 でカバーできない範囲やカード会員に会員外使用の原因がある場合等一定の 条件の下で免責の除外を行なっている。受益者負担と原因者負担による損失 分担の実現として、基本的には合理的なものといえる。

なお、アメリカ連邦法を参考にしつつ、クレジットカードについてもカー ド利用者の責任を制限する立法提案を指摘する学説は有力である。将来的 には、クレジットカードの社会的意義・役割を考慮すれば、とりわけ貨幣に 近い決済手段として利用されるようになれば、預金者保護法のような立法措 置が求められることは当然であると考える。

竹内昭夫「クレジット・カードと消費者保護−信用取引における消費者問題の 一側面−」ジュリスト45号(11年)59頁がカード利用者の責任を制限すべきと するのに対し、清水巌「クレジット・カード販売の実態と問題点−消費者保護の 側面から−」ジュリスト65号(17年)58頁は、カード利用者に全損失を負担さ せる特約を公序良俗違反により無効とすべき旨主張する。これと同様の立場から、

保険制度による填補の必要性を指摘するものに、石井「クレジットカードの不正 利用と法律問題〈その4〉」手形研究(10年)77頁。

「カード不正使用の責任は、本質的には、カード制度を利用することによって構 造的に内在する危険であることからすると、カード制度を提供し、利益を得よう とする発行者によって負担すべきであるとの考えに立って、所持人の不注意や悪 用をどの程度考慮するかの観点からみるべきで、・・かかる見地からすると、無制 限な所持人責任条項は、契約自由の原則をもってしても許されるべきではない」

として、立法措置を求めるものとして、伊藤進「カード社会の今後の法的課題」

法律のひろば(14年)39頁。

アメリカ法を参考にした立法の必要性を指摘するものとして、竹内・前掲注5)

0頁、清 水・前 掲 注5)60頁、島 川 勝「カ ー ド の 不 正 使 用」法 律 時 報60巻10号

(18年)15頁、水野智幸「カードの不正使用」塩崎勤編『裁判実務大系第22巻 金融信用供与取引訴訟法』青林書院(13年)41頁等。

カード利用者に全責任を負わせる規定を解釈論によって無効とすることは困難 であるとして、立法論の検討を主張しつつ、カード利用者側の要素や被害状況等 事案に即した柔軟な対応ができない点などから、アメリカ法の安易な導入に批判 的なものとして、沢野直紀「クレジット・カード」『消費者法講座5消費者信用』

日本評論社(15年)10頁。

−17−

インターネットによるクレジットカード 会員外使用の民事責任(1)(蓑輪)

(17)

(18)

カード番号通知による形態と民事責任

これまでも触れたが、カード使用の方法は、カード提示に限られず、多様 化している。現在では、店舗での商品やサービスの購入以外に、電話やイン ターネットを通じた購入が多く利用されるようになり、それに伴ったカード 使用も盛んに行われている。カード使用方法が多様化すれば、それに対応し て不正使用も発生する。そこで、それを防止するために、カード会社は新た に開発された技術を導入しながら、本人確認のシステムをより安全性の高い ものに改善してきている。

店舗での利用でも、従来のような伝票への署名とカード番号のインプリン ト方式から、CAT システムの導入、IC カードの出現、暗証番号による本人 確認の導入と本人確認手段は改善を続けている。電話やインターネットによ る購入においては、カード本体を提示できないから、カード番号情報の提供 のみでの利用されている。このようなカード情報によるカード利用は、比較 的以前から電話等での申込みを通じて行なわれており、カード情報管理の重 要性は高まっている。カード情報の管理といっても、結局はカード本体の管 理と基本的には変わらず、カードを他人にみだりに見せたり、知らせたりし ないということで足りる。したがって、基本的な民事責任判断の枠組みは、

現在のカード会員規約の解釈によって行なわれるべきである。上述のように、

会員外使用の責任はカード会員にあるとしながらも、保険によってカード会 社が負担することを原則とし、カード会員が会員外使用に関与している場合 には免責除外とする考え方は基本的に有効とすべきである。

問題となりうるのは、すでに述べたとおり、3D-Secure 等の本人確認手段 の導入によって、かなりの会員外使用の防止が期待される中で、それを導入 しないことを会員外使用の民事責任判断でどのように評価するかである。

このような新システムの導入は基本的に、それ以前の不正使用リスクを軽 減するカード会社の企業努力であり、一定程度の安全性が法により義務付け

−18−

(18)

(19)

られていない以上、このようなシステムの新規導入の取組み自体は肯定的に 評価すべきである。一方で、新たなシステムの導入・普及はカード会社のみ の努力で達成できないことは、三当事者間取引であるクレジットカード取引 の特質であることはすでに述べた。市場競争の枠内で新たなシステムの導入 を期待する以上は、その導入・普及の遅れ自体をカード会社の過失とみるこ とはできない。例えば3D-Secure の普及が浸透していないことは、基本的に すべてのカード利用者に同様のリスクであり、そのことをもって、個別事例 の不正使用における損失分担に影響を与えるべきではない。そもそも契約締 結によって、カード会員はその時点のリスクを引き受けているし、そのよう に考えないと、契約締結時に存在している現状のリスクを前提にしつつ、そ の改善に向けたカード会社の企業努力が報われないことになるからである。

(続く)

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インターネットによるクレジットカード 会員外使用の民事責任(1)(蓑輪)

(19)

参照

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