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義務的責任保険と任意的責任保険

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(1)

∵   

責任保険契約を締結すると否とほ︑元来各人の自由であることはいうまでもない︒つけたいと思う者はつければ  

よいし︑つけようと思わない者ほつけなくともよい︒この点において貴任保険は他の私保険と異るところはない︒  

これは︑大きくいえほ︑今日の私法の大原則たる私的自治の原則の叫つのあらわれにはかならない︒しかし例外的  

に︑立法者が法律により︑∵足の者について︑必ず責任保険をつけるべし︑と定める場合がある︒このような法律  

上の義務にもとづいて締結される責任保険を︑義務的責任保険ということができる︒それに対し︑必ずつけねばな  

らぬという法律上の義務なしに︑各人の自由な発意にもとづいて締結される茸任保険は︑これを任意的責任保険と  

︵1︶   いうことができる︒わが国の私保険たる責任保険にその具体例を求めると︑自動車税嘗賠償保障法 ︵昭一ニ○法九七  

号︶ による自動車損害賠償責任保険は義務的責任保険であり ︵同法五条参照︶︑それに.対し近時一・二の保険会社  

が売出しているいわゆる賠償責任保険は任意的貴任保険たる性質を有する︒   

義務的責任保険と任意的責任保険は︑たんに︑契約の締結が自由か否か︑という点においてのみ異っているのでは  

ない︒義務的責任保険制度を採用している諸国の茸任保険法をみると︑とくにいわゆる第三者の地位に関する法則  

において︑両者の問にほ相当大きな相違が認められるのが通常である︒そして実ほ︑この第三者の地位に関する特   

義務的式任保険と任意的責任保険   ︵五九七︶三五七    義務的責任保険と任意的責任保険  

中   明  

(2)

第三十二巻 第三・四孟号   ︵五九八︶三五八  

別の法則が︑義務的貴任保険法の中心問題をなしているといって差支えないのである︒  

︵2︶   

責任保険における第三者の地位いかんという問題は︑わが国でも相当以前から議論の対象とされている︒私自身  

も幾度か論ずるところがあった︒しかしその際︑とくに私は︑一つの重要な視点を見落していたのではないかと恩  

ぅ︒あるいは全然見落していたとはいわずともヾ少くとも充分に意識してはい庵かったように思う︒一つの重要な  

視点とは︑第三者の地位を考えるについてほ︑右のような事情がある結果として︑義務的責任保険の場合と任意的  

責任保険の場合とを区別して考えていく必要がある︑ということである︒この両場合では︑通常︑第三者の地位に  

関する法則ほ興るのであり︑いわゆる第三者の地位の強化の意味も違っているのでほないかと思う︒本稿でほ︑こ  

のような点について考えてみたいと思う︒  

︵1︶ 同様のことは︑たん紅責任保険についてのみならず︑保険血般についてもい⊥うる︒締結義務が法律上定められている場合  

ほ義務的保険またほ義務保険であり︑締結義務が法律上定められていない場合は任意的保険またほ任意保険である︒  

なお︑ここでは締結義務が法律上定められている場合を義務保険といっているわけであるが︑このような場合を称して  

強制保険ということも︑かなり広く行われているようである︵例えば運輸省自動車局編・自動車損害賠償保障法の解説︑  

我妻・比較法研究山三号仙二貢以下︑伊沢・法学二二巻山笥以下︶︒義務保険でほ︑契約の申込をなすぺき義務及び︵多  

くの場合には︶保険者の側で申込をむやみに拒絶してはいけないという義務が法律上定められているだけであって︑契約  

が成立するためにほ︑やほり申込と承諾︑あるいほ少くも契約理論上それらと同視すべきものが必要である︒それ紅対し  

当事者の申込・承諾を要せず︑保険関係が韓律上当然に成立するものとされる場合がある︵例えば自動車損害賠償保障法  

により政府が行う同保険︑同法四則条参照︒あるいほ労働者災害補償保険法にいわゆる強制適用事業における労働者災害   乳㌦   補償保険︑同法六条参照︶︒ここでほ︑当事者の申込・承諾の意堺表示ほ必要でない︒たとえ当事者がそれらをしても︑  

それほよけいなものである︒保険関係ほ法律上当然に成立する︒締結義務が法律上定められている場合を指すのに強制保   

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(3)

険という言共を使って悪いという法ほないが︵くg−・官uck・M望−er∵ぎmmentar zum宕r賢訂rungs諾rtragSge邑Nu  

−綬由u Anm.∽∽.S﹂−e︑私ほ︑強制保険という言葉ほ︑むしろこのよう虹保険調係が法律上当然成立する場合  

のみを指すものとして使用するのが適当であをと思う︒西島・東本大学法文論叢劇○号四四東上段参照︒  

︵2︶ 大森・保険法二〇八百以下二二空風以下とく覧三云︑伊沢卜保険法三七九頁以下三八七貰以下︑中西・私法二言こ  

〇七貢参照︒  

二   

日 保険者と保険契約者との間の私的な︑かつ自由な取引としての責任保険契約につい七考えると︑そこでは︑  

保険者は︑被保険者が当該責任保険契約所定の法的責任を他人に対し負担した場合に被保険者に対し保険金の支払  

をなすべきことを約し︑それに対し保険契約者は保険料を支払うぺきことを約束する︒被保険者は保険契約者と同  

一人であることも可能であり︑まだこれと別人であることも可能であって︑甜の場合を自己のためにする保険契約  

といい︑後の場合を他人のためにする保険契約というが︑自己のためにする保険契約においては﹂保険契約者と被  

保険者は同一人であるから︑概念上厳密には被保険者というべきところを保険契約者ですましても︑実際上の結果  

において異るところはない︒それ故︑以下本稿では︑とくに他人のためにする保険に特有の瀾題を考える場合のは  

かは︑便宜上すべて保険契約者という言葉で考えていくこととする︒この用語法にしたがい冒頭に述べたところを  

いいかえると︑次のように太る︒すなわち︑・保険者と保険契約者との間の私的.な︑かつ自由な取引としての責任保  

険契約においては︑保険者は︑保険契約者が保険契約所定の法的責任を他人に対し負担した場合に保険契約者に対  

し妹険金の支払をなすべきことを約し︑それに対し保険奥約者は保険料を支払うべきことを約束する︒従って︑保  

険契約者は︑保険事故発生の場合︑すなわち第三者に対し保険契約所定の要件に該当する法的貴任を負担した場   

︵五九九︶主五九    義務的蓑任保険と任意的茸任保険  

(4)

■  

合︑保険者に対し保険金の支払を求めうることとなる︒   

このことをもう少し具体的に説明すると︑例えば映画館の所有者が映画館の所有者としての資格で責任保険をつ  

ける︒映画館の所有者が保険契約者であり︑被保険者である︒映画館内の天井が落下して︑観客が怪我をする︒映  

画館の所有者が︑怪我をした観客に対して損害賠償貴任を負担することとなる︒その時映画館の所有者ほ保険会社  

︵1︶  

に対し保険金の支払を求めうる\というわけである︒   

この限りでほ︑責任保険ほ︑保険事放が保険契約者の第三者に対する法的責任負担にあるという点においての  

み︑他の損害保険と異っているといえる︒   

日責任保険の保険事故ほ︑右にも一言したように︑保険契約者が第三者に対し保険契約所定の法的責任を負担  

することである︒保険事故発生の場合︑保険契約者に対して当該責任を問いうる立場にあるこの第三者を︑ふつ  

ぅ︑被害者たる第三者︑またほたんに第三者︑あるいほ被害者といっている︒どれを使っても大した逢いはないが  

本稿では第三者という言葉を使用することとする︒右にあげた例でいえは︑怪我をした観客がここにいう撃二者で  

ある︒それに対し︑映画館の所有者に対し例えば電気供給契約にもとずく債権をもっている者ほ︑ことにいう第三  

者でほない︒このように︑保険契約者の債権者であってここにいう第三者でない老は︑本稿でほ︑保険契約者の他  

の任意の債権者︑あるいはたんに︑他の債権者と呼ぶこととする︒   

臼 責任保険では︑この第三者なしにほそもそも保険事故がなりたたない︑という関係にあるが︑第三者ほ元  

来︑茸任保険契約自体とほ直接関係のないいわゆる契約外の第三者であるにすぎない︒しかるに責任保険では︑保  

険契約者が締結している保険契約の枠内においてこの第三者ほ一体いかなる地位にあるか︑ということがとくに問  

題とされる︒これがすなわち︑責任保険における第三者の地位︑として論じられる問題にほかならない︒    第三十二巻 第三・四・五号   ︵六〇〇︶三六〇  

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(5)

拍 保険事故発生の場合責任保険契約にもとづき保険金の支払を請求しうるのは︑保険契約者である︒他人のた  

めにする責任保険契約の場合にほ︑保険契約者とは別人であるところの被保険者である︒いずれの場合でも︑契約  

の効果として当然に保険金の支払を求めうるのは︑他人に対し法的茸任を負担するという危険にさらぎれている側  

の者でなければならない︒第三者は保険数的者に対し法的茸任を問いうる立場にあるが︑責任保険契約についてほ  

へ   

︵2︶   当然にほ何ら法律的関係ほない︒とくに第三者と保険者との間には直接の法的関係は存在しない︒けだし︑着任保  

険契紆では︑第三者に保険者に対する権利を与える眉の合意ほ行われていないからである︒後述のように︑責任保  

険契約が締結されていると︑第三者ほ︑少くとも事実上の利益を受けることがあるのは確かであるが︑経済的に第  

三者の利益に帰する契約がすべていわゆる第三者のためにする契約となるのでほない︒第三者が他人間の契約によ  

って権利を取得するためにほ︑その他人間の契約にとくに第三者に直接権利を与える旨の合意が含まれて一いなけれ  

へ3︶   ばならぬ︒  

幽 界三者は保険契約者の債権者である︒従って第三者は︑・保険契約者の財産から自分の債権の満足を受けるこ  

とができる︒保険契約者が受取る保険金またほ保険契約者が取得する保険請求権ほ︑保険契約者の財産の一構成部  

分であるから︑責任保険契約が締結されているときは︑保険契約者の一\般財産ほそれだけ増加し︑その限りで︑第  

三者ほ責任保険によって利益を受けるといいうる︒しかし︑第三者が安住保険から受けうる利益ほ︑このような事  

実上の利益にとどまる︒第三者ほ保険契約者の通常の債権者にすぎず︑保険請求権から自分の債権の優先弁済を受  

ける権利は当然にはこれを有しない︒   

㈹ 責任保険における第三者の地位を伝統的契約痙論によって判断すれば︑それは以上盛ぺたようなものであ  

る︒すなわち︑第三者は責任保険契約についてほいわゆる契約外の第三者にすぎず︑保険請求権に特別のカを及ぼ   

義務的責任保険と任意的責任保険   ︵六〇こ三六一   

(6)

したり︑また直接保険者に保険金の支払を求めたりすることほできない︒   

しかし︑ここに︑責任保険契約の枠内における第三者の地位についての右のような契約理論当然の結論は︑これ  

をそのまま認めるのは適当でない︑とする見地がある︒第三者に多かれ少なかれ右に述べたところと異る特別の法  

的地位を認めて︑もって第三者が責任保険契約からより以上の利益を受けられるようにすべきである︑と考える見  

地がある︒このような見地は︑実は︑今日相当多数の国においてひろく行われ︑第三者はすでに各国の実定法上種  

々の形で特別の法的地位を認めもれるに至っノているのである︒これを総称して︑責任保険における第三者の地位の  

強化ということができる︒  

︵1︶ もっとも︑現行の約款の下でほ︑保険契約者︵本文例示の場合ならば映画飴所有者︶が保険金の支払を求めうるにめにほ︑ βノ  

まず自分で︑第三者︵怪我をした観客︶に賠償をすますことが必要である︒東京海上・賠償責任保険普通保険約款二条︑  

安田火災・賠償責任保険普通保険約款二条﹁項参照︒なおこの点紅つき︑大森・保険法二劃八頁︑中西・私法二言ヱ〇  

九貫以下参照︒  

︵2︶ 約款ほ︑保険契約者が第三者から損害賠償の摘求を受けた場合︑保険者ほ必要と認めるときほ保険契約者紅代ってその解  

決にあたる権限を有するものと定める︵東京海上・前掲約款一山粂︑安田火災・前掲約款劇六条︶︒これにもとづき︑保  

険者が例えば保険契約者の債務を引受ける旨の契約を第三者と締結すれば︑その効果として︑保険者と第三者の間に直接  

の法樺関係が生ずる︒しかしこれは別問題である︒  

︵3︶ 米川・契約総論︵新版︶ 山〇七貢以下︑柚木・債梅各論︵契約総論︶二〇〇貫以下︑来栖・民商法雑誌三九巷五劇三見︑  

Senger−営eSteご巨㈹desgescb註igtenDritteninderHaftpf−icbt諾rS−C訂r亡n的.−霊草S.人岩ff.参照︒なお︑西  

島・被害者の直接綺求権︵熊本大学法文論叢九号七〇貫以下山○号三五頁以下︶ほ︑多数の文献を渉猟し︑責任保険にお  

ける第三者の地位について論じた近時の力作であるが︑選任保険に串ける第三者の地位の強化がとく鱒義務的責任保険に    第三十二巻 第三・四・五蔓   ︵六〇二︶ 三六二  

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(7)

おいて問題になることを拇摘する点ほ正当である︒しかし︑値接請求権が責任保険に内在する不可欠・本質的なものであ ﹁  

り︑そしてその﹁法理構成﹂ほ︑第三者が責任保険の被保険者である︑とみることによってのみ可能であると主張する点  

は︑賛成しがたい︒この室張は︑例えば交通事故の被害者を救済する手段としてほ賓任保険よりほむしろ他人のためにす  

る傷害保険を壕用すべし︑という意味ならば︑あるいは顧慮に催する問題視起というぺきであり︑また実際に責任保険の  

名で行われているある確約が実時の確常ヒ喝隙間題ともてほ他人のためにする傷害保険たる実質を帯びるに至っているこ  

とを指摘するのであるならば︑これもあるいほするどい観察であるといいうる︒しかし︑文字通り︑責任保険では第三者  

が被保険者だというのならば︑それは責任保険という概念そのものの否定にはかならないのでほないかと思う︒なお︑商  

法六六七条が適用される責任保険ほ︑︵意思琴不にもとづいてでほなく︶法律の規定によって民法上いわゆる第三者のた  

めにする契約になる︑ということ咋あるいほ可能かと思う︒けだし︑商法六六七条により第三者は竃按保険者に対する権  

利を取得するからである︒しかし︑そこでも第三者が被保険者になるのではない︒この点紅つき︑■中西・私法二喜一山  

㌦ 六頁︑ぎenigu Schweizerisc訂sPriヨt諾rSic訂r喜gS琵ぎ︼誤−u S・監N参照︒  

三   

日 責任保険における第三者の地位の強化の法技術的形態は︑国.によってさまざまである︒わが国及び二・三の  

︵1︶  

外国の法律の規定を概観しよう︒   

わが商法六六七条は︑保管者の責任保険はつき︑第三者ほ直接保険者に保険金の支払を求める権利を有すると定  

める︒この規定の適用を受ける茸任保険でほ︑保険契約者が自ら第三者に賠償をするまでは︑第三者のみが保険金  

の支払を求めることができる︵多数聾︒本条はわが商法巾貴任保険に特有なものとしてほ唯一の規定であるが︑  

他の貴任保険にほ類推適用されない︵多数説︶︒次に︑わが日動車損害賠償保障法による賓任保険においてほ︑第  

三者は直接保険者に対し保険金の支払を請求することができる︵同法二ハ条一項︶︒保険契約者ほ︑自ら第三者に   

︵六〇三︶三六三    義務的召任保険と任意的責任保険  

(8)

※ア 

1一  

第一二十二巻 男手四・五号   ︵六〇四︶三六四  

賠償をした限度においてのみ︑保険会社に対し保険金の支払を求めることができる︵同法一五条︶︒保険契約者の  

告知義務違反を理由として保険契約が解除されたときほ︑その解除は︑保険契約者が解除の通知を受けた日から起  

穿して七日の後に将来に向ってその効力を生じ︑この七日の期間経過前に事故が発生した場合ほ︑保険会社は損害  

を填補する資に任ずる︒この場合に重いて︑保陵者か損害を填補したときは︑保険契約者に対し︑その填補した金  

額の支払を求めることができる︵同法十二条︶︒また︑保険期間中に危険が増加し︑またほ減少したときは︑責任  

保険契約は新たな危険に対応する責任保険契約に変更されたものとみなされる︵同法二二条一項︶︒保険契約者ほ  

危険の増加を知ったときは︑遅滞なくこれを保険者に通知しなけれほならない︵同法二二条二項︶︒保険期間中に  

危険が増加した後に危険が発生し︑保険者が損害を填補した場合において︑保険契約者が危険増加の通知を怠って  

いたときほ′︑保険者は牒険契約者に対し︑その頃補した金額の支払を請求しうる︵同法二二条三項︶︒   

ドイツでほ︑保険請求権についてする処分ほ︑第三者に対する関係でほ無効である︒その処分が法律行為による  

ものなると︑強制執行または仮処分によるものなるとを問わない︵保険契約法一五六条一項︶︒保険契約者破産の  

場合にほ︑第三者は保険契約者の保険請求権について別除権を有する︵同一五七条︶︒第三者ほ責任保険契約の効  

果として当然に保険者に対する請求権を取得するわけではない︵保険者にかかっていくためには︑保険請求権を差  

押え転付をうけねばならない︶が︑保険契約者が第三者に対してなすぺき給付が和解︒承認または判決により確定  

したときは︑保険者ほ予め保険契約者に通知をして第三者に支払うことができ︑保険契約者の要求があれば第三者  

に支払をなす義務を負う︵同二竺ハ廃土項︶︒以上ほ責任保険仙般陀ついてであるが︑とくに義務保険では︑保険  

者が保険契約者に対する給付義務の全部またほ脚部を免かれる場合でも︑保険者の義務ほ第三者に対する関係にお  

いては存続する︵同一五八条のC山項︶︒保険関係の不存在またほ終了をきたす事情は︑第三者に対する関係にお   

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(9)

いては︑保険者がそれを当該関係行政官庁に通知をして後︑山ケ月を経過することによってほじめてその効力海生  

ずる︒保険幽怖が期間の満了により終了する場合も同様である︒∴ケ月の期間は保険関係の終了前ほ進行を開始し  

ない ︵同一五八条のC二項︶︒一前二項による保険者の責任ほ︑行政官庁の定める最低保険金敬の範囲内にかぎり︑  

また保険者が当該保険契約で引受けた危険の枠内にかぎっ七認められる︵同州五八条のC三項︶ノ︒なお︑他の責任  

保険者がその保険契約者に保険保線を与えるときほ︑保険者の本条による責任ほない︵同一五八条のC四項︶︒保  

険者が保険契約法二有八条のCにより第三者に保険金の支払をすると︑その限りで︑保険契約者に対する第三者の  

請求権は保険者に移転する ︵同山五入条のF︶︒  

スイスでほ︑第三者ほ傑険事故発生と同時に保険請求権上に法律上の質権を取得する ︵保険契約法六〇各二項仙  

文︶′︒第三者は直接保険者に保険金の支払を求めることはできないが︑保険者は保険金を直接第三者に支払うこと  

ができる ︵同六〇条山項二文︶︒とくに義務的責任保険たる自動車責任保険では︑第三者は直接保険者に保険金の  

支払を求めることができ︵自動車交通法四九各二項︶︑しかも保険者は︑保険請求権の範囲を少くしたり全然なく  

してしまったりするような抗弁を第三者には提出できない ︵同五〇条一項︶︒しかし保険者は︑そのために契約上 

の義政を超えて第三者に支払をしたときほ︑保険契約者に対し求償権を有する︵同五〇条二項︶︒   

フランスでは︑保険者は︑第三者が満足を受けないかぎり︑ノ第三者以外の者に保険金の支払をなすことをえない   

へ保険契約法五三条︶︒判例・学説ほ︑本条をもって︑第三者に直接保険者に対し疎険金の支払を求めうるいわゆ  

︵2︶ る直接請求権を認め鞍ものと解している︒  

日 責任保険における第三者の地位の強化の法技術的形髄心は︑右にみた通り︑国によってさまざまである︒しか  

義務的京任保険と任意的責任保険   ︵六〇五︶三六五   

(10)

︵六〇六︶三六六   罪三十二巻 欝三・四孟号  

し今度ほやや観点をかえ︑それらlこよって適せられる実質的内容を検討すると︑それは各国とも大体同じであるこ  

とがわかる︒義務的責任保険と任意的責任保険とでほ相当違うが︑そのそれぞれにおける第三者の地位の強化の実  

質的内容には︑各国と 

抑 任意的責任保険では︑当該事故について保険請求権が具体化してくるにかかわらず︑保険契約者がそれを放  

棄したり︑もしくほ自分で保険金を受取ったり︑またほ他の債権者が保険請求権の移転を受けたりすることによっ  

て︑第三者が保険の利益を受けられなくなってしまう︑ということが防止されている︒しかし︑撃二者が保険の利  

益を受けるについてほ︑保険契約が有効に存在し︑それから保険請求権が有効に具体化してくることが︑あくまで  

も前掟となっているのであって︑自分に損害を与えた者か保険をつ八けていない場合︑あるいは保険ほつけてあった  

が︑何らかの事由により当該事故について保険請求権か具体化してこなかった場合は︑第三者として保険の利益を  

受ける可能性は全くない︒また第三者とし々は︑このような不利益が生ずべきことを自分で夢前に防止する手段  

ほ︑これを有しないことが多い︒要するに︑任意的玉任保険について行われている琴二者の地位の強化の内容ほ︑  

﹁保険契約が有効に存在し︑かつそれから保険謂求権が有効に具体化してくる場合には︑その保険請求権ほ︑第三  

︵3︶ 者だけがそれから満足をえられるように留保される﹂というにある︒   

㈲ 義動的貴任保険で惟︑これになお若干のものが付け加えられる︒すなわち︑舞一に︑第三者がある秤の損害  

を襲ったときに︑その相手方が道悪く無保険着であったという事態が生じないよう配慮されるとともに︑第二に︑  

保険契約は有効に存在しているが保険契約者に保険料遅滞・危険増加の通知義務違反・保険事故発生の通知義務違  

反等の事由があるセめ保険者ほ保険契約者に対してほ扱苦境補の義務を負わ患い場合︑またほ︑保険契約ほ山日夜  

締結されたが︑何らかの事由により︑それが無効であるか︵例えば意思無能力︑要素の錯誤のため︶︑取消された   

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(11)

か︵例えは行為無能力︑詐欺のため︶︑もしくほ解除された訂えほ告知義務違反︑保険料遅滞のため︶姶果へ契  

約か不存在である坂合︑もしぐほ︑保険的係か終1した場合︑従って保険者は保険契約者に対しては損害項補の義   務を負わないような場合にも︑保険者は第三者に対しては嘉の限度で保険金の支払をなす義務を負うこととな   っている︒保険契約者に対してほ義務はないが︑琴二者に対してほ保険金支払の義務ありとされる場合の範囲ほ︑   細かくいうと︑困によって同じでない︒しかし︑保険者は︑保険契約者に対してほ義務を負わないときでも第三者   に対してほ保険金の支払をしなけれほならぬことがある︑という点は︑各国共通である︒そして保険者が第三者に   保険金の支払をすると︑第三考が保険契約者に対して持っていた権利ほ︑保険者に移転する︒以上要するに︑とく   に義務的責任保険において行われている発三者の地位の強化の実質的内容ほ︑忘これを︑﹁保険契約から保険請   求権が具体化してこない場合でも︑保険者ほ第三者に対してほ毒の限度で保険金の支払をなす義務を負い︑それ   につき保険者は保険契約者に対する求償権を有する﹂にあると要約しうると考える︒  

︵1︶  

︵2し  

︵3︶  

︵六〇七︶三六七    教務的茸任保険と任意的責任保険   大森・保険法二〇入京以下二三頁以下︑伊沢・法学二二巻八頁以→︑中西・′香川大学経済論叢︵この雑誌ほ以下︑﹁香   経﹂と略称する︶二九巻三三六鼠以下︑同・私法二言エ〇八頁以→︑とくにドイツ法につき中川・蓮井・外国法典双書   ドイツ保険契約法二二四軍≡玉東二九五裏以下︑とくにフラシス法につき大森・外国法典双琶フランス保険契約法劇〇   九君以下六〇頁以下︑岩崎・香経三壷二じ嘉以下六二頁以下三二〇訊以下三九七頁以下参顆︒   フランス.ほ一九五八年から自動車芸任保険につき義務保険制度を採用した︒しかし義務的責任保険契約についてとくに第   三者の地位な強化する法則を認めているかどうか︑私ほ詳にしない︒高橋・法律時報三〇巷九七二京以下参照︒   ただフランスだけは︑これよりや1範囲が広い︒すなわち︑任意的芸任保険紅つき︑保険者は保険事故発生後生じた事由  

︵例えば事故発生の通知義務違反︶にもとづく抗弁咋第三者に対抗しえないことが︑完二田年以来判例法上認められて  

(12)

第三十二巻 第三・甲五号   ︵六〇八︶三六八  

いる︒その後常にこの時点が前にずらされ︑克三八年三月三〇日命令仙→五条ほ㌻二の式任保険につき︑事故発生 ヽヽヽヽ  

前に生じた事由にもとづく戎種の抗弁も第三者転対抗しえない旨の規定を約款に設けるべしと定め︑現時の約款もその旨  

の規定をとり入れているといわれる︒岩崎・香経三壷四三〇頁︑Sieg・宕rsicFerungsleCh=彗︐S・書こ琵︸S 

怠監f・参照︒これ紅ついてほ︑また後にふれる︒  

四   

H 任意的責任保険ほ︑元来︑他人に対し法的責任を負担することによって損害を蒙る危険にさらされており︑  

それを保険でカバーする必要を感じているものと︑保険者との間で行われる嘲つの私的な取引である︒従って︑契  

約当事者たるこの両者がとくに進んで第三者の地位を強化することを望んでいるのならばともかく︑そうでないと し  

きには︑横合から例えば﹁責任保険の合理的使命﹂などをもち出して︑第三者の地位を強化すべしなどとほいうべ  

\   ︸    きでないようにみえる︒しかるに右でもみたように︑各国でほ︑すでに実定法上︑この任意的責任保険についても   第三者の地位の強化が行われている︒任意的責任保険でも︑保険契約者はすぐには保険金ほもらえない︒保険請求   権は第三者だけがそれから満足季象れるように︑とっておかれることになっているのである︒これほ何と説明す   べきであるか︒思うに︑それほやはり︑各種の損害賠償問題の合理的解決という︑いわば社会的な役割を︑私的な   事某たる責任保険にもその血つの内容として盛込んでいこうという考え方が︑一般に行われるに至ったからにはか   ならない︒   

第三者の地位の強化のために使用せられる法技術ほ︑国によって異っている︒この相違ほ︑叫つにほ︑右にいわ  

ゆる社会的な役割にどの程度のク土イトをおく1かという点についての評価の相違にも由来するであろうが︑任意的  

責任保険で第三者の地位の強化のために各国が利用している各種の法技術︑すなわち直接請求権・法律上の処分禁  

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(13)

H 任意的責任保険における被害者の地位の強化の理由として右に述べたところほ︑一般的にほ︑義務的責任保  

険の場合についても妥当する︒しかし︑義務的責任保険では︑責任保険に損害賠償問題の解決の合理化なる使命を  

課することほ︑より直戒・︑明確な形であらわれている︒わが自動車損害賠償保障法における責任保険を例にとって  

説明しよう︒   

自動車損害賠償保障法においてほ︑自動車事故の被害者に充分の賠償をえしめるという課題が︑当面の最も重要  

な目標として立法者の念頭に存在している︵同法一条︶︒Lのような目標を設定すると︑それを達成するについて  

いかなる方法が適当か︑ということが当然次に問題になる︒責任保険ほ︑その方法の一つとして︑ここではじめて  

立法者の念頭に登場してくるにすぎない︒立法者ほ諸般の事情を考慮し︑私保険たる責任保険を利用することに決  

める︒自動車事故の被害者の保護ということほ︑今の場合は︑責任保険以前の︑あるいほ責任保険よりも上位の目  

的であり︑責任保険ほその日的を達する手段たる意味をもつにとどまる︒このように責任保険ほここでは自動車事  

故の被害者の救済という目的を達するために立法者が使用する手段なのであるから︑責任保険に関する従来の法則  

でこの目的に照らし不適当なものがあれば︑立法者としてほ当然それを改めてかからねばならない︒一第一に︑責任  

保険をつけると否とほ各人の自由であり︑また契約の申込を受けた者ほそれを拒絶するに何らの理由を必要としな  

い︑という原則が適当でない︒そこで︑責任保険の利用を確保するためには︑自動車所有者に責任保険の締結を義   

︵六〇九︶三六九    義務的責任保険と任意的責任保険   止・法律上の質権など︑をそのまま使うことによって適せられる実質的結果にほ︑さはど大きい差異はないと認め   一   i・︶   られるのであって︑大きな原因ほむしろ︑各国の契約法及び強制執行法などにおける伝統的観念及び責任保険の実   務のあり方にごれを求むぺきものと思う︒しかし本稿でほ︑これ以上この問題に立入る余裕はない︒  

(14)

︵六山○︶三七〇   欝三十二巻 讐子甲五号  

務づけるとともに︑保険者においても契約の申込を無暗に拒絶しえないと定めねばならぬ︒讐一に︑自動車事故の  

被軍者と自動車の所有者という関係に虫周任保険をあてほめてみると︑被害者はわれわれのいわゆる第三者の立場に  

立つこととなるが︑この第三者の地位についての契約法当然の結論あるいほ任意的責任保険においてある程度行わ  

れているその強化も︑右の目的からいっモ適当でない︒責任保険契約が締結されていても︑保険契約者などの作為︒  

不作為によって︑第三者が容易に保険の利益を奪われてしまうのは︑自動車事故の被害者の救済という目的のため  

に義務的責任保険を利用する趣旨からいって適当でない︒義務的責任保険制度を採用するからにほ︑どうしても︑  

第三者ほ他の債権者を排除して保険の利益にあずかりうる︑とするような法則︑また︑第三者は保険契約者の処分  

行為やその他の作為︒不作為によつて保険の利益を奪われることほない︑とするような法則を設けなければならな  

くなるのである︒   

立法者が義務的責任保険制度を採用するについて救済の対象として考えるのほ︑もとより自動茸事故の被害者に  

かぎるものではない︒そのはか︑例えば︑航空機の事故により損害を受くべきもの︑またほ原子炉の暴走により損  

害を受くべきもの等たりうる︒それらはそれぞれ特殊性をもっていることほいうまでもない︒しかし︑責任保険契  

約の構造とくに第三者の地位についで考えるためには︑それらの特殊性は一応捨象し計る︒それ故︑義務的責任保  

険における第三者の地位の強化ほ︑立法者が一定の者をとくに保護するという国の政策目的のためにその者を第一二  

者の位置にすえて責任保険を利用することに決めた場合︑第三者の責任保険の枠内における地位について従来の理  

論によって認められたところのうち右の目的にかんがみて適当でないのを改める︑というような意味において行わ  

れるもの上いえる︒  

︵l︶ ヰ.pica一打et謬ss㌢Traitかgかnか邑desass彗㌢cesterrestresこ︒meHHlこり缶︸n・N芦   

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(15)

五   

日 前節で述べたように︑義務的京任保険と任意的責任保険とでほ︑第三者の地位の強化が問題となる趣旨がや  

や違っている︒それに応じて︑第三者の地位の強化の内容にも︑両場合で差異が認められる︒   

義務的責任保険制度を採用するに際し︑第三者の地位について︑ほ任意的責任保険とさしたる違いを設けないとい  

ぅことも︑考えられないことでほない︒例えば︑責任保険契約の療結を義務づけるにとどめ︑責任保険契約の内部的  

構造ほそのままとし︑義務的責任保険と任意的責任保険とで何ら区別をしないというのも︑叫つの行き方として考  

えられる︒これによれば︑個々の第三者が責任保険契約から受けうる利益の程度にほ変化ほないが︑責任保険により  

利益を受ける老の範囲ほ拡大される︒そのかぎりでほ︑このようないき方でも︑第三者の地位ほ任意的責任保険にお  

けるよりもやや有利となる︒あるいはまた︑義務的責任保険における第三者の地位に関する特別としてほ︑義務的  

責任保険につき最低保険金額を法定する粧とどめる︑と仮定せよ︒任意的責任保険の保険金額がそれよりも低いも  

のでありうるかぎりにおいて︑第三者の立場ほ義務的責任保険でやや有利となる︒このように第三者の地位の強化  

ほ義務的責任保険と任意的責任保険で監的な差異を示すにとどまることも︑あるいほありうる︒しかし︑そのよう  

な体制ほ︑その実際的有用性ないし合目的性の点で︑大いに疑問があるといわねぼならない︒特定の分野について義  

務的責任保険制度を採用しなけれぼならぬ程ある種の被害者の保護が緊切であるならば︑義務的責任保険の枠内で  

の第三者の地位を任意的責任保険の場合とは区別しで扱わないと︑義務的責任保険制度を採用する趣旨が充分に適  

せられない︒あるいほ︑そめ趣旨を充分に達するためにほ︑任意的責任保険の方で︑非常な無理を敢てしなければな  

らぬ結果となる︒現行の義務的貴任保険紅おいて︑第三者の地位につき任意的貴任保険の場合とほ相当異った法則  

が設けられているのは︑相当の理由のあるこ・とといわねばならない︒  

義務的責任保険と任意的責任保険   ︵六一一︶三七一   

(16)

第三十二巻 第三・四・五号   ︵六二こ三七二   

日∵第三者の地位の強化の実質的内容は︑任藩的責任保険でほ︑﹁保険契約から保険請求権が具体化してくるか  

ぎり︑それほ︑第三者だけがそれから満足をえられるように留保される﹂というにあるに対し︑義務的責任保険で  

ほ︑それになお︑﹁保険契約から保険請求権が出てこないときでも︑一定の範囲で保険者ほ第三者に保険金の支払  

をなす義務を負い︑それにつき保険者ほ保険契約者に対する求償権を有する﹂ということが加わるのであること︑  

すでに述べた通りである︒今迄の議論でほ︑血応︑この両場合の間にほ相当の差異があり︑義務的責任保険の方が  

第三老蘇二段と有利ごある︑どいうような漠然とした把握の下に︑論を進めてきた︒しかし︑この両場合ほ一体ど  

のように違うのか︒それを今少し掘り下げて考えることにしよう︒   

義務的責任保険では︑保険契約から保険請求権が出てこないときでも保険者ほ第三者に対してほ二定の限度で保  

険金の支払をしなければならぬことがあり︑それにつき保険者ほ保険契約者に対する求償権を有する︒これほ︑保  

険契約者の側からみれば︑保険者が第三者に保険金の支払をしてくれても︑保険契約者の全面的な免責という結果  

を生じない︑ということを意味している︒ノ次に︑これを保険者の方からみれば︑保険者ほ契約上そうする義務はな  

いのに法の規定により第三者に保険金の支払をなすべく命ぜられ︑そのうめあわせがつかなくなる危険を冒さねば  

ならぬ︑ということを意味する︒以下︑款を分ってそれぞれもう少し細かく検討する︒   

8 任意的責任保険でほ︑保険者ほ保険契約上保険請求権が出てくるときにのみ︑保険金の支払をする︒そして  

保険者が ︵保険契約者との約定にもとづいて︑あるいほ第三者から請求を受けて︶ 第三者に保険金の支払をすれ  

ば保険契約者の第三者に対する債務ほ︑それによって消滅する︒けだし︑責任保険契約ほそのような趣旨で行われ  

ているからである︒廃険者が第三者に支払った額を保険契約者から求償する︑というような関係ほ生じてこない︒  

従って︑任意的資任保険でほ︑第三者に対する保険金の支払ほ︑保険契約者の利益に帰するわけであって︑このこ   

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(17)

とからいえば︑第三者の地位の強化のため第三者のみが保険金を受取りうることにしても︑︑保険契約者ほそれはど  

大きな不利益を蒙るわけで庵いといえる︒この事情は︑責任保険における第三者の地位の強化を比較萬容易に行い  

うるものとしている︒それに射し︑義務的責任保険でほ︑保険者が第て一者紅保険金め支払をしても︑保険契約者の  

第三者に対する債務は消滅せず︑そのまま保険者に移転して︑保険者が第三者に対して支払った金額を保険契約者  

から回復することになる場合もある︒保険者が契約上の給付義務なきにかかわらず法の規定により第三者に支払を  

命ぜられる場合である︒このような場合ほ︑保険契約者の立場からいうと︑第三者に対する傭険金の支払ほ一向に  

有難くない︒けだし︑第三者の方から請求を受けることほなくなるが︑その代り︑保険者が求償してくるからであ  

る︒保険契約者にとってほ︑たんに債権者の交替があるだけである︒しかも保険契約者ほ︑多くの場合︑より注意  

深くより有能でより手強い債権者を相手にしなけれぼならぬこととなる︒保険契約者の立場からいうと︑後で求償  

してくるのならば︑わざわざ払ってもらうにほ及ぼないわけである︒このように考えてくると︑義務的責任保険に  

おいて保険契約上の義務のないときに法の規定にもとづきなされる第三者への保険金の支払ほ︑保険契約者の利益  

においてでほなく︑専ら第三者の利益の 

囲 義務朗責任保険でほ︑保険者ほ保険契約で支払うべく約束したところよりも以上のものを支払わねばならぬ  

ことがある︒任藩的責任保険でほ︑このようなことほないといって差支えない︒もっとも︑任意的責任保険でも︑  

直接請求権︒法律上の質権・処分禁止などがあるときほ︑保険者が第三者の満足前に保険契約者に保険金の支払を  

しても︑それほ少くとも第三者に対してほ効力を有しないから︑後に第三者から請求を受けたときは︑更に第三者  

に支払わねばならず︑従って︑保険者は二重に支払をなすことを余儀なくされる︒しかし︑そのような場合ほ︑保  

れ1︶   険者とtてほ︑ほじめに保険契約者から保険金を支払うぺき旨の請求を受けたときほ︑支払を拒むことができる︒   

義務朝貢任保険と任意的責任保険   ︵六丁三︶三七三   

(18)

第三十二巻 第三・四・五骨   ︵六一四︶三七四  

それ故︑保険者ほ︑注意深く振舞えば︑二雷払の危険ほこれを避けることができるのである︒   

勧 保険者の求償権なるものは︑ひろく損害保除二般を通じて認められる制度である︒しかし︑義務的責任保険  

者が契約上の義務なきにかかわらず法の規定にもとづき第三者に保険金の支払をしたときに認められるところの求  

償権は︑′損害保険一般について認められる保険者の求償権とは︑全くその趣を異正している︒ふつう保険者に求償  

権ありとほ︑保険事故による損害が他人の行為によって生じた場合において︑保険者が保険契約者に対してその支  

払うぺき保険金を支払ったときほ︑保険者ほその支払った金額の限度において保険契約者がその他人に対して有し  

ていた権利を取得する︑ということである︵日本商法六六二条︶︒これを義務的責任保険の求償権と対比して考え  

る上で注意すべきは︑今の場合︑保険者が保険契約者に対して保険金の支払をしたのほ︑保険契約上の義務の履行  

としてであって︑それについてほ保険者ほ保険料という形セすでに対価を受取っているという点である︒当該保険  

串散の発生によって保険契約者が他人に対し損害賠償請求権をも一っている場合でも︑保険者ほその他人紅求償しな  

くとも︑勘定ほあうことになっているほずである︒保険者に求償権が認められるのほ︑もしそうでないと︑保険契  

約者が保険金を受取ることによりその全財産関係上却って利得を受ける結果となるが︑これほ保険の経済上の機能  

せ超えるものと考えられ︑またこのような結果を無制限に是認するときほ︑保険が不労の利得のための鰐博的行為   へ∴こ   に悪用される危険があるからにはかならない︒従っで保険者自身としてほ︑この求償権の行使において成功するか  

香か紅ついてほ︑それはど大きい直接的利害を有しない︑といって過言でほない︒   

それに対し︑義務的責任保険でほ︑保険者ほ保険契約上の填補義務がないときでも.法律の規定により第三者に  

は一定の範囲で保険金の支払をしなければならない︒保険契約上の義務なくして第三者に支払をするとほ︑一つに  

は︑第三者に対する支払についてほ保険者ほ対価を受取っていない︑ということを意味する︒従って︑この場合に   

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(19)

認められる保険者の求償権は︑ことの実質においては︑保険者が対価なしに支払を命ぜられた額を回復する︑とい  

︵8︶   う意味をもつものといえる︒保険者ほ︑営利事業を営む商人であるならば︑第三者に支払った額は︑保険契約者か  

ら取戻さねばならぬ︒もし取戻せない恵らほ︑それほ保険者にとって損失である︒しかし︑はたして取戻せるかど  

うかほ︑保険契約者の資力如何にかかっていることほいうまでもない︒保険契約者が無資力の場合ほ︑保険者は結  

局求償できない︒そのことからいえば︑保険者ほこの求償権の行使において成功を期すためには︑保険契約の申込  

を受けた際に︑充分の資力を有する者の申込に対してのみ承諾を与えることにすればよい道理であるが︑義務的責  

任保険では︑契約の申込があった場合︑承諾をすると否とについて保険者に認められる自由の鮎囲ほ極めて狭く︑  

保険者は保険契約者を自由に選好みできないのが通常である︵例えばわが自動車損害賠償保障法二四条参照︶︒ま  

た保険者として保険契約者に対する求償が功を奏しないことあるべきを予想し︑予め保険料を高率に定めておくの  

も一法であるが︑これも義務的責任保険でほ思うにまかせない︵例えばわが自動車損害賠償保障法二五条参照︶︒  

また︑保険契約者から求償でき計い額につき︑一般的に国が補償をすることは予定されていない︒このように考え  

克と︑義務的責任保険では︑法ほ︑ことの実質においては︑.自らの手数と回収できなくなるかもしれぬという危険  

において保険契約者に代って洲定欄限度で被害者に賠償をするという︑いわば社会的な任務を︑保険者に課してい  

るのであるといえる︒上くに自動貴所有者の義務的責任保険についていえば︑保険者は︑自らの労力と危険におい  

て自動車事故の被害者に可及的に充分な賠償を与えるという国の政策の一たんを担わされているわけである︒   

囲 義務的責任保険と任意的責任保険の基本的な相違ほ︑以上述べたところによりこれを明らか忙しえたと考え  

る︒義務的責任保険でほ︑保険契約上保険請求権が具体化してこないときでも︑第三者には保険金を払い︑それを  

保険契約者から求償するという︒これほ保険契約者の利益となることではないし︑保険者にとっても有利なことで  

義務的賃任保険と任意的資任保険   ︵六山五︶三七五   

(20)

︵六一六︶三七六   第三十二巻 欝三・四二五号  

はない︒右のような内容の合意を責任保険契約の当事者が自主的に行うことほ︑まず期待できないし︑またその旨  

の法の明文の規定がないときに解釈論として右のような結果を導くのほ︑極めて困難である︒右のような結果は︑  

法の明文の規定紅よってのみ︑そして申込義務と承諾義務のある義務的責任保険についてのみ︑これを認めうるの  

︵4︶ でほないかと考える︒  

︵1︶ フランス保険契約法恵三条ほこれを明言する︒ドイツでほ︑保険請求権の処分禁止の効果として認められる ︵Sie的︸  

A仁SStrah−ungen der Haftpf−icFt諾rSi昔erungu畠芦 S・−∽N︶︒スイスでは︑法定質権の効果として認められる  

︵Ca¢Sa阜Dasdir甘te句Orderung彗eCht des Gesc冨digtengeg2n den宕rsicFerer des A已OmObi−ha−ters−−豊中  

S.誓︶︒わが国の多数説も︑商法六六七灸の解釈として︑第三者の満足前は讐二者のみが保険金の支払を求めうるとす  

る︵大森・保険法二〇九頁及びニー〇頁註○ハ︶所掲の諸文献︶︒  

︵2︶ 大森・保険沌二七九頁以下︑間・続保険契約の法的構造八二百以下︒  

︵3︶ ドイツ自動車保険普通保険約款四条六項ほ︑﹁責任保険において︑契約が不存在またほ終了したにかかわらず保険者が第  

三者に対する関係において給付義務を負うときは︑保険者ほその義務負担の時についての保険料を取得する﹂と定めてい  

る︒これも︑とくに保険契約が不存在またほ終了の場合に保険者に讐二者に支払った保険金についての補償をえし曽三  

形式といいうる︵PienitヂA−−gemeine謬ding旨geロf箸die苧aftfahr記ugくerSicheぷng﹀−誤○﹀ 仰料Anm・↓︸S・  

告⁝TFees\Hagemann−DasRecEder苧aftfaFr諾ug・Haftpf−icht諾rSicF2rung﹀N・AufLbearbeitetくOnF−ei父旨mann  

und.Deiters.−票00︸S.ぴ○豊︒しかし︑このような規定を約款において︑有効かどうかほ︑大いに疑問であるとされて  

いる︒私もその通りと思う︒けだし︑約款ほ契約の内容をなすものであるから︑とくに保険契約が最初から存在しないと  

きに︑約款に拘束力を認めることほ困難であるからである︒また÷都の学説のように︑とくにこの約款に法令と同様の効  

力を認めるとし七も︑少くとも鹿二回保険料または時払保険料遅滞を理由とする保険契約の解除︵ドイツ保険契約法三   

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(21)

八灸一項︶の場合については︑かかる約款の規定の効力ほ疑わしい︒けだし︑ドイツ保険契約法四〇条二項正よれば︑こ  

の場合ほ保険者ほ︑相当の手数料を請求しぅるにとどまるからである︵この規定は保険契約者の不利益に変更を許さない  

強行規定である︒ドイツ保険契約法四二条︶︒どの程度の手数料が相当かについてほ︑従来のドイツの下級審の判例でほ  

二五%以下とか︑年間保険料の三〇%とかいった数字が出ている︵なお日本商法六五五条参照︶︒StiefeTWロSSOW−  

苧aftfaFr諾邑cherung︸∽.AufL−謡∽︶S・−N00Anm・−∽⁝句leiscFmann白eitersu a・a・〇∴P邑ss・宕rsicFe⊇I  

ngs諾rtragSgeSetN︑−−.A已−・−¢∽00︶S.∽NⅥAnm■㌣  

︵4︶ フランスでほ︑最近まで義務的賃任保険を採用しなかった結果として︑任意的貴任保険の方で非常な無理をしなければな  

らなくなった︒更に精密な検討を加えることを留保するが︑讐二節註︵3︶で述べたところほ︑私の立場からほ︑山応こ  

のような意味に理解することとなる︒   \   六   

以上︑本稿で述べたところを要するに︑責任保険における第三者の地位が問題とされる趣旨ほ︑義務的責任保険  

と任意的責任保険でやや違っている︒任意的責任保険では︑第三者の地位の強化ほ︑私的な事業として行われる資  

任保険に損害賠償問題の合理的解決という役割をもはたさせていこうという趣旨で行われている︒そしてここでほ  

保険者は保険契約上支払をなすべく約束したところよりも以上のものを給付しなくともよい︑ということが︑第三  

者の地位の強化の実質的限界をなしている︒それに対し︑義務的責任保険でほ︑第三者の地位の強化は︑国がとて  

に特定種類の損害を蒙る者に充分の賠償をえしめるという一つの政策の遂行のために︑積極的に責任保険を利用す  

る︑その過程において行われるものである︒それに応じて︑.第三者の地位の強化のための法則も任意的貴任保険の  

場合よりも更に数等おしすすめられ︑保険者ほ第三者に対してほ保険契約上の給付義務のない之きにまで保険金の   

︵六一七︶一一石七    義務的式任保険と任意的責任保険  

(22)

第三十二巻 第三・四・五号   ︵六山八︶三七八  

支払をしなければならないものとされる︒そして保険契約者ほ︑保険者の求償権の行使を受けねばならない︒これ 

ほ任意的責任保険で峰容易に認めることをえない性質のものである︒このような事情にかんがみると︑とくに義務  

的責任保険と任意的資任保険がならび行われ.ているところでは︑漠然と︑責任保険仙般における第三者の地位いか  

ん︑という形で議論することが必ずしも適当でないことは明らかである︒義務的責任保険と任意的責任保険の両場  

合を区別して︑考えていくことが必要であると思う︒両場合を通ずる仙般的理論をあみだすのほよい−が︑それほあ  

くまで︑両場合の相遵の正確な認識を基礎とするものでなければならぬと思う︒  

︵一九五九年九月稿︶   

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

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