∵
責任保険契約を締結すると否とほ︑元来各人の自由であることはいうまでもない︒つけたいと思う者はつければ
よいし︑つけようと思わない者ほつけなくともよい︒この点において貴任保険は他の私保険と異るところはない︒
これは︑大きくいえほ︑今日の私法の大原則たる私的自治の原則の叫つのあらわれにはかならない︒しかし例外的
に︑立法者が法律により︑∵足の者について︑必ず責任保険をつけるべし︑と定める場合がある︒このような法律
上の義務にもとづいて締結される責任保険を︑義務的責任保険ということができる︒それに対し︑必ずつけねばな
らぬという法律上の義務なしに︑各人の自由な発意にもとづいて締結される茸任保険は︑これを任意的責任保険と
︵1︶ いうことができる︒わが国の私保険たる責任保険にその具体例を求めると︑自動車税嘗賠償保障法 ︵昭一ニ○法九七
号︶ による自動車損害賠償責任保険は義務的責任保険であり ︵同法五条参照︶︑それに.対し近時一・二の保険会社
が売出しているいわゆる賠償責任保険は任意的貴任保険たる性質を有する︒
義務的責任保険と任意的責任保険は︑たんに︑契約の締結が自由か否か︑という点においてのみ異っているのでは
ない︒義務的責任保険制度を採用している諸国の茸任保険法をみると︑とくにいわゆる第三者の地位に関する法則
において︑両者の問にほ相当大きな相違が認められるのが通常である︒そして実ほ︑この第三者の地位に関する特
義務的式任保険と任意的責任保険 ︵五九七︶三五七 義務的責任保険と任意的責任保険
中 明
第三十二巻 第三・四孟号 ︵五九八︶三五八
別の法則が︑義務的貴任保険法の中心問題をなしているといって差支えないのである︒
︵2︶
責任保険における第三者の地位いかんという問題は︑わが国でも相当以前から議論の対象とされている︒私自身
も幾度か論ずるところがあった︒しかしその際︑とくに私は︑一つの重要な視点を見落していたのではないかと恩
ぅ︒あるいは全然見落していたとはいわずともヾ少くとも充分に意識してはい庵かったように思う︒一つの重要な
視点とは︑第三者の地位を考えるについてほ︑右のような事情がある結果として︑義務的責任保険の場合と任意的
責任保険の場合とを区別して考えていく必要がある︑ということである︒この両場合では︑通常︑第三者の地位に
関する法則ほ興るのであり︑いわゆる第三者の地位の強化の意味も違っているのでほないかと思う︒本稿でほ︑こ
のような点について考えてみたいと思う︒
︵1︶ 同様のことは︑たん紅責任保険についてのみならず︑保険血般についてもい⊥うる︒締結義務が法律上定められている場合
ほ義務的保険またほ義務保険であり︑締結義務が法律上定められていない場合は任意的保険またほ任意保険である︒
なお︑ここでは締結義務が法律上定められている場合を義務保険といっているわけであるが︑このような場合を称して
強制保険ということも︑かなり広く行われているようである︵例えば運輸省自動車局編・自動車損害賠償保障法の解説︑
我妻・比較法研究山三号仙二貢以下︑伊沢・法学二二巻山笥以下︶︒義務保険でほ︑契約の申込をなすぺき義務及び︵多
くの場合には︶保険者の側で申込をむやみに拒絶してはいけないという義務が法律上定められているだけであって︑契約
が成立するためにほ︑やほり申込と承諾︑あるいほ少くも契約理論上それらと同視すべきものが必要である︒それ紅対し
当事者の申込・承諾を要せず︑保険関係が韓律上当然に成立するものとされる場合がある︵例えば自動車損害賠償保障法
により政府が行う同保険︑同法四則条参照︒あるいほ労働者災害補償保険法にいわゆる強制適用事業における労働者災害 乳㌦ 補償保険︑同法六条参照︶︒ここでほ︑当事者の申込・承諾の意堺表示ほ必要でない︒たとえ当事者がそれらをしても︑
それほよけいなものである︒保険関係ほ法律上当然に成立する︒締結義務が法律上定められている場合を指すのに強制保
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険という言共を使って悪いという法ほないが︵くg−・官uck・M望−er∵ぎmmentar zum宕r賢訂rungs諾rtragSge邑Nu
−綬由u Anm.∽∽.S﹂−e︑私ほ︑強制保険という言葉ほ︑むしろこのよう虹保険調係が法律上当然成立する場合
のみを指すものとして使用するのが適当であをと思う︒西島・東本大学法文論叢劇○号四四東上段参照︒
︵2︶ 大森・保険法二〇八百以下二二空風以下とく覧三云︑伊沢卜保険法三七九頁以下三八七貰以下︑中西・私法二言こ
〇七貢参照︒
二
日 保険者と保険契約者との間の私的な︑かつ自由な取引としての責任保険契約につい七考えると︑そこでは︑
保険者は︑被保険者が当該責任保険契約所定の法的責任を他人に対し負担した場合に被保険者に対し保険金の支払
をなすべきことを約し︑それに対し保険契約者は保険料を支払うぺきことを約束する︒被保険者は保険契約者と同
一人であることも可能であり︑まだこれと別人であることも可能であって︑甜の場合を自己のためにする保険契約
といい︑後の場合を他人のためにする保険契約というが︑自己のためにする保険契約においては﹂保険契約者と被
保険者は同一人であるから︑概念上厳密には被保険者というべきところを保険契約者ですましても︑実際上の結果
において異るところはない︒それ故︑以下本稿では︑とくに他人のためにする保険に特有の瀾題を考える場合のは
かは︑便宜上すべて保険契約者という言葉で考えていくこととする︒この用語法にしたがい冒頭に述べたところを
いいかえると︑次のように太る︒すなわち︑・保険者と保険契約者との間の私的.な︑かつ自由な取引としての責任保
険契約においては︑保険者は︑保険契約者が保険契約所定の法的責任を他人に対し負担した場合に保険契約者に対
し妹険金の支払をなすべきことを約し︑それに対し保険奥約者は保険料を支払うべきことを約束する︒従って︑保
険契約者は︑保険事故発生の場合︑すなわち第三者に対し保険契約所定の要件に該当する法的貴任を負担した場
︵五九九︶主五九 義務的蓑任保険と任意的茸任保険
■
合︑保険者に対し保険金の支払を求めうることとなる︒
このことをもう少し具体的に説明すると︑例えば映画館の所有者が映画館の所有者としての資格で責任保険をつ
ける︒映画館の所有者が保険契約者であり︑被保険者である︒映画館内の天井が落下して︑観客が怪我をする︒映
画館の所有者が︑怪我をした観客に対して損害賠償貴任を負担することとなる︒その時映画館の所有者ほ保険会社
︵1︶
に対し保険金の支払を求めうる\というわけである︒
この限りでほ︑責任保険ほ︑保険事放が保険契約者の第三者に対する法的責任負担にあるという点においての
み︑他の損害保険と異っているといえる︒
日責任保険の保険事故ほ︑右にも一言したように︑保険契約者が第三者に対し保険契約所定の法的責任を負担
することである︒保険事故発生の場合︑保険契約者に対して当該責任を問いうる立場にあるこの第三者を︑ふつ
ぅ︑被害者たる第三者︑またほたんに第三者︑あるいほ被害者といっている︒どれを使っても大した逢いはないが
本稿では第三者という言葉を使用することとする︒右にあげた例でいえは︑怪我をした観客がここにいう撃二者で
ある︒それに対し︑映画館の所有者に対し例えば電気供給契約にもとずく債権をもっている者ほ︑ことにいう第三
者でほない︒このように︑保険契約者の債権者であってここにいう第三者でない老は︑本稿でほ︑保険契約者の他
の任意の債権者︑あるいはたんに︑他の債権者と呼ぶこととする︒
臼 責任保険では︑この第三者なしにほそもそも保険事故がなりたたない︑という関係にあるが︑第三者ほ元
来︑茸任保険契約自体とほ直接関係のないいわゆる契約外の第三者であるにすぎない︒しかるに責任保険では︑保
険契約者が締結している保険契約の枠内においてこの第三者ほ一体いかなる地位にあるか︑ということがとくに問
題とされる︒これがすなわち︑責任保険における第三者の地位︑として論じられる問題にほかならない︒ 第三十二巻 第三・四・五号 ︵六〇〇︶三六〇
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拍 保険事故発生の場合責任保険契約にもとづき保険金の支払を請求しうるのは︑保険契約者である︒他人のた
めにする責任保険契約の場合にほ︑保険契約者とは別人であるところの被保険者である︒いずれの場合でも︑契約
の効果として当然に保険金の支払を求めうるのは︑他人に対し法的茸任を負担するという危険にさらぎれている側
の者でなければならない︒第三者は保険数的者に対し法的茸任を問いうる立場にあるが︑責任保険契約についてほ
へ
︵2︶ 当然にほ何ら法律的関係ほない︒とくに第三者と保険者との間には直接の法的関係は存在しない︒けだし︑着任保
険契紆では︑第三者に保険者に対する権利を与える眉の合意ほ行われていないからである︒後述のように︑責任保
険契約が締結されていると︑第三者ほ︑少くとも事実上の利益を受けることがあるのは確かであるが︑経済的に第
三者の利益に帰する契約がすべていわゆる第三者のためにする契約となるのでほない︒第三者が他人間の契約によ
って権利を取得するためにほ︑その他人間の契約にとくに第三者に直接権利を与える旨の合意が含まれて一いなけれ
へ3︶ ばならぬ︒
幽 界三者は保険契約者の債権者である︒従って第三者は︑・保険契約者の財産から自分の債権の満足を受けるこ
とができる︒保険契約者が受取る保険金またほ保険契約者が取得する保険請求権ほ︑保険契約者の財産の一構成部
分であるから︑責任保険契約が締結されているときは︑保険契約者の一\般財産ほそれだけ増加し︑その限りで︑第
三者ほ責任保険によって利益を受けるといいうる︒しかし︑第三者が安住保険から受けうる利益ほ︑このような事
実上の利益にとどまる︒第三者ほ保険契約者の通常の債権者にすぎず︑保険請求権から自分の債権の優先弁済を受
ける権利は当然にはこれを有しない︒
㈹ 責任保険における第三者の地位を伝統的契約痙論によって判断すれば︑それは以上盛ぺたようなものであ
る︒すなわち︑第三者は責任保険契約についてほいわゆる契約外の第三者にすぎず︑保険請求権に特別のカを及ぼ
義務的責任保険と任意的責任保険 ︵六〇こ三六一
したり︑また直接保険者に保険金の支払を求めたりすることほできない︒
しかし︑ここに︑責任保険契約の枠内における第三者の地位についての右のような契約理論当然の結論は︑これ
をそのまま認めるのは適当でない︑とする見地がある︒第三者に多かれ少なかれ右に述べたところと異る特別の法
的地位を認めて︑もって第三者が責任保険契約からより以上の利益を受けられるようにすべきである︑と考える見
地がある︒このような見地は︑実は︑今日相当多数の国においてひろく行われ︑第三者はすでに各国の実定法上種
々の形で特別の法的地位を認めもれるに至っノているのである︒これを総称して︑責任保険における第三者の地位の
強化ということができる︒
︵1︶ もっとも︑現行の約款の下でほ︑保険契約者︵本文例示の場合ならば映画飴所有者︶が保険金の支払を求めうるにめにほ︑ βノ
まず自分で︑第三者︵怪我をした観客︶に賠償をすますことが必要である︒東京海上・賠償責任保険普通保険約款二条︑
安田火災・賠償責任保険普通保険約款二条﹁項参照︒なおこの点紅つき︑大森・保険法二劃八頁︑中西・私法二言ヱ〇
九貫以下参照︒
︵2︶ 約款ほ︑保険契約者が第三者から損害賠償の摘求を受けた場合︑保険者ほ必要と認めるときほ保険契約者紅代ってその解
決にあたる権限を有するものと定める︵東京海上・前掲約款一山粂︑安田火災・前掲約款劇六条︶︒これにもとづき︑保
険者が例えば保険契約者の債務を引受ける旨の契約を第三者と締結すれば︑その効果として︑保険者と第三者の間に直接
の法樺関係が生ずる︒しかしこれは別問題である︒
︵3︶ 米川・契約総論︵新版︶ 山〇七貢以下︑柚木・債梅各論︵契約総論︶二〇〇貫以下︑来栖・民商法雑誌三九巷五劇三見︑
Senger−営eSteご巨㈹desgescb註igtenDritteninderHaftpf−icbt諾rS−C訂r亡n的.−霊草S.人岩ff.参照︒なお︑西
島・被害者の直接綺求権︵熊本大学法文論叢九号七〇貫以下山○号三五頁以下︶ほ︑多数の文献を渉猟し︑責任保険にお
ける第三者の地位について論じた近時の力作であるが︑選任保険に串ける第三者の地位の強化がとく鱒義務的責任保険に 第三十二巻 第三・四・五蔓 ︵六〇二︶ 三六二
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おいて問題になることを拇摘する点ほ正当である︒しかし︑値接請求権が責任保険に内在する不可欠・本質的なものであ ﹁
り︑そしてその﹁法理構成﹂ほ︑第三者が責任保険の被保険者である︑とみることによってのみ可能であると主張する点
は︑賛成しがたい︒この室張は︑例えば交通事故の被害者を救済する手段としてほ賓任保険よりほむしろ他人のためにす
る傷害保険を壕用すべし︑という意味ならば︑あるいは顧慮に催する問題視起というぺきであり︑また実際に責任保険の
名で行われているある確約が実時の確常ヒ喝隙間題ともてほ他人のためにする傷害保険たる実質を帯びるに至っているこ
とを指摘するのであるならば︑これもあるいほするどい観察であるといいうる︒しかし︑文字通り︑責任保険では第三者
が被保険者だというのならば︑それは責任保険という概念そのものの否定にはかならないのでほないかと思う︒なお︑商
法六六七条が適用される責任保険ほ︑︵意思琴不にもとづいてでほなく︶法律の規定によって民法上いわゆる第三者のた
めにする契約になる︑ということ咋あるいほ可能かと思う︒けだし︑商法六六七条により第三者は竃按保険者に対する権
利を取得するからである︒しかし︑そこでも第三者が被保険者になるのではない︒この点紅つき︑■中西・私法二喜一山
㌦ 六頁︑ぎenigu Schweizerisc訂sPriヨt諾rSic訂r喜gS琵ぎ︼誤−u S・監N参照︒
三
日 責任保険における第三者の地位の強化の法技術的形態は︑国.によってさまざまである︒わが国及び二・三の
︵1︶
外国の法律の規定を概観しよう︒
わが商法六六七条は︑保管者の責任保険はつき︑第三者ほ直接保険者に保険金の支払を求める権利を有すると定
める︒この規定の適用を受ける茸任保険でほ︑保険契約者が自ら第三者に賠償をするまでは︑第三者のみが保険金
の支払を求めることができる︵多数聾︒本条はわが商法巾貴任保険に特有なものとしてほ唯一の規定であるが︑
他の貴任保険にほ類推適用されない︵多数説︶︒次に︑わが日動車損害賠償保障法による賓任保険においてほ︑第
三者は直接保険者に対し保険金の支払を請求することができる︵同法二ハ条一項︶︒保険契約者ほ︑自ら第三者に
︵六〇三︶三六三 義務的召任保険と任意的責任保険
※ア
1一
第一二十二巻 男手四・五号 ︵六〇四︶三六四
賠償をした限度においてのみ︑保険会社に対し保険金の支払を求めることができる︵同法一五条︶︒保険契約者の
告知義務違反を理由として保険契約が解除されたときほ︑その解除は︑保険契約者が解除の通知を受けた日から起
穿して七日の後に将来に向ってその効力を生じ︑この七日の期間経過前に事故が発生した場合ほ︑保険会社は損害
を填補する資に任ずる︒この場合に重いて︑保陵者か損害を填補したときは︑保険契約者に対し︑その填補した金
額の支払を求めることができる︵同法十二条︶︒また︑保険期間中に危険が増加し︑またほ減少したときは︑責任
保険契約は新たな危険に対応する責任保険契約に変更されたものとみなされる︵同法二二条一項︶︒保険契約者ほ
危険の増加を知ったときは︑遅滞なくこれを保険者に通知しなけれほならない︵同法二二条二項︶︒保険期間中に
危険が増加した後に危険が発生し︑保険者が損害を填補した場合において︑保険契約者が危険増加の通知を怠って
いたときほ′︑保険者は牒険契約者に対し︑その頃補した金額の支払を請求しうる︵同法二二条三項︶︒
ドイツでほ︑保険請求権についてする処分ほ︑第三者に対する関係でほ無効である︒その処分が法律行為による
ものなると︑強制執行または仮処分によるものなるとを問わない︵保険契約法一五六条一項︶︒保険契約者破産の
場合にほ︑第三者は保険契約者の保険請求権について別除権を有する︵同一五七条︶︒第三者ほ責任保険契約の効
果として当然に保険者に対する請求権を取得するわけではない︵保険者にかかっていくためには︑保険請求権を差
押え転付をうけねばならない︶が︑保険契約者が第三者に対してなすぺき給付が和解︒承認または判決により確定
したときは︑保険者ほ予め保険契約者に通知をして第三者に支払うことができ︑保険契約者の要求があれば第三者
に支払をなす義務を負う︵同二竺ハ廃土項︶︒以上ほ責任保険仙般陀ついてであるが︑とくに義務保険では︑保険
者が保険契約者に対する給付義務の全部またほ脚部を免かれる場合でも︑保険者の義務ほ第三者に対する関係にお
いては存続する︵同一五八条のC山項︶︒保険関係の不存在またほ終了をきたす事情は︑第三者に対する関係にお
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いては︑保険者がそれを当該関係行政官庁に通知をして後︑山ケ月を経過することによってほじめてその効力海生
ずる︒保険幽怖が期間の満了により終了する場合も同様である︒∴ケ月の期間は保険関係の終了前ほ進行を開始し
ない ︵同一五八条のC二項︶︒一前二項による保険者の責任ほ︑行政官庁の定める最低保険金敬の範囲内にかぎり︑
また保険者が当該保険契約で引受けた危険の枠内にかぎっ七認められる︵同州五八条のC三項︶ノ︒なお︑他の責任
保険者がその保険契約者に保険保線を与えるときほ︑保険者の本条による責任ほない︵同一五八条のC四項︶︒保
険者が保険契約法二有八条のCにより第三者に保険金の支払をすると︑その限りで︑保険契約者に対する第三者の
請求権は保険者に移転する ︵同山五入条のF︶︒
スイスでほ︑第三者ほ傑険事故発生と同時に保険請求権上に法律上の質権を取得する ︵保険契約法六〇各二項仙
文︶′︒第三者は直接保険者に保険金の支払を求めることはできないが︑保険者は保険金を直接第三者に支払うこと
ができる ︵同六〇条山項二文︶︒とくに義務的責任保険たる自動車責任保険では︑第三者は直接保険者に保険金の
支払を求めることができ︵自動車交通法四九各二項︶︑しかも保険者は︑保険請求権の範囲を少くしたり全然なく
してしまったりするような抗弁を第三者には提出できない ︵同五〇条一項︶︒しかし保険者は︑そのために契約上
の義政を超えて第三者に支払をしたときほ︑保険契約者に対し求償権を有する︵同五〇条二項︶︒
フランスでは︑保険者は︑第三者が満足を受けないかぎり︑ノ第三者以外の者に保険金の支払をなすことをえない
へ保険契約法五三条︶︒判例・学説ほ︑本条をもって︑第三者に直接保険者に対し疎険金の支払を求めうるいわゆ
︵2︶ る直接請求権を認め鞍ものと解している︒
日 責任保険における第三者の地位の強化の法技術的形髄心は︑右にみた通り︑国によってさまざまである︒しか
義務的京任保険と任意的責任保険 ︵六〇五︶三六五
︵六〇六︶三六六 罪三十二巻 欝三・四孟号
し今度ほやや観点をかえ︑それらlこよって適せられる実質的内容を検討すると︑それは各国とも大体同じであるこ
とがわかる︒義務的責任保険と任意的責任保険とでほ相当違うが︑そのそれぞれにおける第三者の地位の強化の実
質的内容には︑各国と
抑 任意的責任保険では︑当該事故について保険請求権が具体化してくるにかかわらず︑保険契約者がそれを放
棄したり︑もしくほ自分で保険金を受取ったり︑またほ他の債権者が保険請求権の移転を受けたりすることによっ
て︑第三者が保険の利益を受けられなくなってしまう︑ということが防止されている︒しかし︑撃二者が保険の利
益を受けるについてほ︑保険契約が有効に存在し︑それから保険請求権が有効に具体化してくることが︑あくまで
も前掟となっているのであって︑自分に損害を与えた者か保険をつ八けていない場合︑あるいは保険ほつけてあった
が︑何らかの事由により当該事故について保険請求権か具体化してこなかった場合は︑第三者として保険の利益を
受ける可能性は全くない︒また第三者とし々は︑このような不利益が生ずべきことを自分で夢前に防止する手段
ほ︑これを有しないことが多い︒要するに︑任意的玉任保険について行われている琴二者の地位の強化の内容ほ︑
﹁保険契約が有効に存在し︑かつそれから保険謂求権が有効に具体化してくる場合には︑その保険請求権ほ︑第三
︵3︶ 者だけがそれから満足をえられるように留保される﹂というにある︒
㈲ 義動的貴任保険で惟︑これになお若干のものが付け加えられる︒すなわち︑舞一に︑第三者がある秤の損害
を襲ったときに︑その相手方が道悪く無保険着であったという事態が生じないよう配慮されるとともに︑第二に︑
保険契約は有効に存在しているが保険契約者に保険料遅滞・危険増加の通知義務違反・保険事故発生の通知義務違
反等の事由があるセめ保険者ほ保険契約者に対してほ扱苦境補の義務を負わ患い場合︑またほ︑保険契約ほ山日夜
締結されたが︑何らかの事由により︑それが無効であるか︵例えば意思無能力︑要素の錯誤のため︶︑取消された
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
か︵例えは行為無能力︑詐欺のため︶︑もしくほ解除された訂えほ告知義務違反︑保険料遅滞のため︶姶果へ契
約か不存在である坂合︑もしぐほ︑保険的係か終1した場合︑従って保険者は保険契約者に対しては損害項補の義 務を負わないような場合にも︑保険者は第三者に対しては嘉の限度で保険金の支払をなす義務を負うこととな っている︒保険契約者に対してほ義務はないが︑琴二者に対してほ保険金支払の義務ありとされる場合の範囲ほ︑ 細かくいうと︑困によって同じでない︒しかし︑保険者は︑保険契約者に対してほ義務を負わないときでも第三者 に対してほ保険金の支払をしなけれほならぬことがある︑という点は︑各国共通である︒そして保険者が第三者に 保険金の支払をすると︑第三考が保険契約者に対して持っていた権利ほ︑保険者に移転する︒以上要するに︑とく に義務的責任保険において行われている発三者の地位の強化の実質的内容ほ︑忘これを︑﹁保険契約から保険請 求権が具体化してこない場合でも︑保険者ほ第三者に対してほ毒の限度で保険金の支払をなす義務を負い︑それ につき保険者は保険契約者に対する求償権を有する﹂にあると要約しうると考える︒
︵1︶
︵2し
︵3︶