の利用の可能性を検討した。さらに、培養装置の大型化と培養条件の検討および様々な藻類 種への適用の可能性を調べた。 <結果·考察> 第1章 固相表面上微細藻類細胞のCO2固定の特性と固相表面の間隙構造の重要性 フィルターに P. kessleri を吸着させ、フィルターに乗せる細胞量と光合成速度の関係を求 めたところ、細胞密度が240 mg chl m-2以下では細胞密度と光合成速度がほぼ比例したが、そ れを超えると細胞を加えても全体のCO2 吸収速度はあまり増加しなかった。240 mg chl m-2 以下での高 CO2条件下のフィルター上でのクロロフィル(chl)あたりの光合成活性は、液相で の測定結果と同程度で、90 μmol mg chl-1 h-1であった。フィルター上では気相にさらされるも のの、細胞の周囲に少量の水があれば、光合成活性は十分に保持されることが明らかとなっ た。一方、低CO2条件下では固相上細胞の光合成活性は抑えられていた。 P. kessleri の固相上での光合成を弱光適応の高等植物葉の場合と比較すると光合成速度の 最大値は同等であったが、一般的に高等植物葉の細胞間 CO2-光合成速度曲線が 400 μmol CO2 mol air-1で飽和していることを考慮すると、P. kessleri の細胞は密集して積み重なってい
場合と同様に生育と同時にP を取り込むことができることが明らかになった。 このP. kessleri を利用した SSCC 型 P 除去システムを最適化して利用することで、閉鎖水域 のP 濃度を環境基準値 (0.1 mg L-1)以下に低減させ、微細藻類のブルーミングを引き起こす水 質汚濁を抑制することが期待できる。また、SSCC に富栄養化した水を使用することで、培養 液のコスト削減にも貢献できることが示された。 第4章 固相表面上培養系の大型化及び藻類種の拡大による社会実装化への取り組み これまで行なった小スケールでの結果が実用化の際の大スケールでも当てはまるか実証す るために、比較的大きなスケール(80 cm×90 cm)での固相表面培養を行い、小スケールのもの と比較したところ、研究室で通常培養実験で用いられる布面積 12.5 cm2の小型の培養装置と 同等の収量となり、大型化することによる生育阻害は見られなかった。しかし、光合成速度 から計算される細胞増殖速度約19 g DCW m-2 day-1と比べて生育速度は低い値になった。実際 の培養装置では細胞の密集により下層への光、CO2、栄養の供給が十分ではないために細胞 増殖速度が低く止まっている可能性が考えられた。 そこで、短時間での固相表面上での増殖を調べた。固相表面上では1.3 g DCW m-1 h-1で増殖 しており、4 時間で連続的に細胞を回収すると、24 時間あたりで 26 g DCW m-1 day-1以上の収 量が得られ、固相上での細胞の増殖速度を上げる余地があることが示された。 本研究で示されたSSCC の面積あたりの増殖速度は open pond と同等以上で、さらに装置の 拡張が容易という利点を持つ。この培養方法で1 m3の立方体に33 枚の布を配置すれば、計算 上ユニットとして設置面積あたりで1 kg m-2 day-1の収量が得られることになる。さらにこの ユニットを高さ10 m×面積 100 m2の施設として設置すると、この施設あたり1 ton day-1の乾 燥細胞収量が得られ、1.8 ton day-1のCO2が固定される計算になる。この施設を各都道府県に 500–1000 箇所、工場などの敷地に設置することで、3.3 千万 ton (2019 年国内排出量の約 3%) を固定できると見積もることができる。 SSCC は、非常に多様な種での培養に利用できる可能性が示された。さらに、SSCC では、 液体培養と比べ培地の交換による培養条件の変更が容易であり、細胞増殖と環境ストレス誘 導性の有用物質の蓄積という 2 つの異なる培養条件の組み合わせが容易になると考えられる。 今後、SSCC での有用物質生産の可能性を検討していきたい。 本研究では、付着細胞が固相上の環境に順応し、高い生理活性を維持していることが示さ れ、高いバイオマス生産性を示すことが明らかになった。それにより、固相表面培養系が微 細藻類によるCO2固定及びバイオ燃料生産系として実用化に近づいたと考えられる。 <研究結果が掲載された論文>
Miyauchi, H., Okada, K., Fujiwara, S., Tsuzuki, M. (2020) Characterization of CO2 fixation on algal