ての可能性が大学には存在する。 このような構想をもとに、実際にこの仕組みが正しく成り 立つか、また、成り立たないとしたらどのような問題が起こ るのかという検討をするため、多摩美の学生と地域の間で いくつかのプロジェクトを立ち上げた。 大学周辺の文化施設のイベントで使用するテーブル、什 器のデザイン、制作(図1)や、鉄筋コンクリートのアパー トの一室の改装(図2)、町づくり協議会の会議のための地 形模型(図3)、築200年の蔵の改装(図4)など様々なプロジェ クトの規模や予算、運営方法の組合わせを試したことによっ て、大学が地域の問題を解決するデザイン機関になりうると いう結論に至った。 その一方で、この仕組みのもつ潜在的なリスクもはっきり と形を表した。このアイデアの核となる部分は、金銭の交換 ではなく、サービスを循環させることで成り立つ共生関係に あることは前述の通りであるが、サービスは金銭ほど明確な 価値の基準がないため、どこかで不平等が起こりやすいとい う性質がある。とくに、このなかでもっとも立場が弱い学生 は、無用なただ働きを強いられる可能性があるため、循環 を健全な状態に維持する仕組みが必要になる。 その仕組みの一つに、独自の採算ラインの設定がある。 学生にとっての報酬には大きく分けて二種類の報酬が存在し ている。一つは金銭でありもう一つは学習経験である。一 つのプロジェクトでこの二種類の報酬が合計でどれだけ学生 に与えられるのかを事前に確認し、採算ラインを超えている か否かによって再調整や、場合によってはプロジェクトの発 足を断念するかの判断を下すこと、これがまず第一条件で ある。健全な循環を維持するための方策として、もう一つは 学生からのプロジェクトの評価と、それを随時プロジェクト の運営にフィードバックする仕組みである。今回のプロジェ クトで試験的にプロジェクトを学生に評価してもらうための アンケートを作成し、回答してもらった。アンケートの構成 は学生にとって成長を実感できた項目を評価する質問群と、 プロジェクトの運営を評価する質問群で構成されている。評 価は数値化しやすいよう5段階で評価してもらい、同時に項 目に取りこぼしの無いように、自由記述欄を設ける、などの 工夫をし、この結果を集計し、改善点などをまとめ、次のプ ロジェクトに生かす。 このような学生の時間を搾取されない取り組みを導入する ことで、自浄作用を持った組織を作ることが第一目標である。 次に、現在、大学と地域の間に設けられている「窓口」 を見直す必要がある。今回、試験的にプロジェクトを始める にあたって地域のNPO団体や市が運営する文化施設、マン ションのオーナーに至るまでさまざまな人たちと話をする機 会があった。そのなかで特に言われることが多かったのが、 大学や大学生と何かプロジェクトをしたいと思ってもどこに 連絡すればいいのか分からない、ということだった。多摩 美は現在、相模原市と包括連携協定を締結したが、一方で、 個人で物件を所有しているオーナーなどは相変わらず大学と コミュニケーションをとる手段がない。今回、大学院在学中 に複数のプロジェクトを矢継ぎ早に実現できたのもこれまで 軽視され続けた結果、蓄積していた問題が一気に噴出した 結果だと考えられる。現在、一人の住人として大学とコミュ ニケーションをとる方法としては、大学や学生に対しての苦 情の連絡がほとんどになってしまっているのではないか。こ のように大学の窓口の設定を誤ったばかりに地域と大学の 間のコミュニケーションがネガティブなものに限定されてし まっている状況は直ちに改善する必要がある。 多摩美術大学周辺地域のうちの一つである相原町を例に とってみると、人口のうち約2パーセントが相原町に下宿し ている多摩美と造形の学生である。この人数は決して多くは ないが、毎年そのうちの0.5%が卒業して転出、同じように 0.5%が入学という形で転入、というサイクルを繰返している ため、数字上は少ない数だがこれまでの累計では相当数の 学生がこの地域に暮らしたことになる。その一方でこの地域 もまた空き家が目立ち駅前の商店街にはシャッターが下りて いる店舗も散見される。もし、学生が地域とのつながりを強 め、在学中にこの地域で自立的に生活してゆける方法を見 つけ出すことができれば、定着した若年人口として地域の活 性化につながるだろう。実際にアーティストとして活動して ゆこうとする学生にとっての制作のための安価なアトリエ兼 住居を提供するだけでも町にとって様々なメリットが発生す るだろう。 以上のように、大学が地域の建築ストックを活用する鍵と なりうること、それが実現可能であることが分かった。同時 に、その仕組みの運営には健全な運用がされているか監督 する仕組みや、そのデータをまとめ継続的に活用してゆくこ と、そしてこれまでになかった地域との窓口が必要になるこ とも分かった。今後はこれらの機能を持つ組織を大学内か あるいは地域内に開設し、実際に運営することが求められ る。実施には計画段階では分からない多種多様な困難が現 れるだろう。しかしそのときには「健全なサービスの循環を 作る」という大原則にさえぶれがなければ着実に地域、学生、 大学それぞれにメリットをもたらすことができるだろう。 多摩美術大学周辺をモデルとして
地域と大学の連携による建築ストックの活用
ENAMI, So江波 蒼
本研究は、近年社会問題となっている空き家などの建築 ストックの活用をテーマとしている。 現在、空き家問題が深刻化する中で建築ストックを活用 しようという動きは活発化しているが、全体からみると空き 家などの活用されていない建築は増加し続けている。大学 院で環境デザインを学ぶ立場から見ると、まだまだ建築そ のものの寿命には達していないと思われる建築であっても、 所有者側の都合などで解体されてしまったり、手つかずのま ま風化しているものが多く見られる。 空き家などの再利用のためには、新たな用途の為に建築 自体に手を加えることが多く、これらのデザインやコストの 調整、再生後の運営など、デザインの力が必要になる部分 が多く存在している。しかし、経済活動から置いてゆかれて しまった結果、存在している空き家は、経済活動の流れの 中にあるデザインの現場までなかなか到達できない。これ はデザインの商業芸術としての側面からくる問題である。し かしデザインのもつ「問題解決」という側面からみると、資 本の大きな場所にデザインが流入し、飽和する一方で、解 決するべき深刻な問題に対してはデザインが供給されない という問題を引き起こしている。 この現状を変えるためにはデザインの現場と建築ストック を繋ぐ仕組みが必要になる。前述のデザイン供給の不均等 という問題に対して、大学という機関にその問題解決の切り 口があるのではないかと考えた。今回は多摩美術大学とそ の周辺地域をモデルケースとして、その実現の可能性を探っ た。 大学は学生への学習体験の提供を業務の一つとして行う 機関である。顧客である学生はここで提供される教育の独 自性や専門性に学費を支払う。大学のこの仕組みで分かる ように、大学は経験を価値に転換できる機関という特徴を 持っている。例えばここに、地域から解決するべき問題を持 ち込み、それを教育と言う形で学生に提供し、学生は地域 にデザインを提供する、という循環を作ることができれば、 この循環の中では金銭のやり取りではなく、サービスの交換 によって成り立つ関係性が作られる。資本の多寡に関わらず、 解決するべき問題に取り組むことができるデザイン組織としUtilization of building stock through collaboration between the local authorities and university
図1
図2
図3
空間における思春期の心理の表現
14歳Ⅱ
WANG, Yunjiao王 韻姣
「思春期」と呼ばれる時期は、人生においてとても短いが 大切な時期である。自分の身体的、精神的な変化に戸惑い、 迷い、それを乗り越えるから一歩大人になれるのだ。その 前向きな変化を、周りの人にはどうか支えて欲しい。そこで、 自分の思春期の気持ちを思い出してもらう、または思春期 になる人にもっと関心を持ってもらうための空間を生み出し た。Fourteen Ⅱ, Expression of adolescence psychology in space
に定められ、多くの国家が領事館を開設した。住人は音楽 好きで知られており、住宅街で耳を澄ませばピアノの音が聞 こえてくるといわれた。近年、旅行業の発展と共に、島民達 はその伝統と興味を徐々に失っている。 目的 コロンス島の島民文化会館の設計を通して、中国伝統民 家の空間的特徴をデザインに活かすことによって、島民が伝 統的建築に興味を持ち、見直すようになることが目的である。 コンセプト 建築はコロンス島の西側の静かな海岸に設定した。理由 は歴史保護区ではなくて、静かな住宅エリアであり比較的 観光客が少ない。 そして、美しい海岸風景と他の施設に近 い位置である。敷地は3つの建築によって分けられている。 開放的空間を象徴するコーヒー店、半開放的空間を象徴す る文化センター、プライベートな空間を象徴する図書館であ る。そして、屋根は赤い瓦とする。その理由はコロンス島で は江南民家の白い壁と黒い瓦の組み合わせと違い、赤い瓦 と白い壁による西洋との折衷建築が多いことへの景観的配 慮である。そして、ボリュームは福建省のビンナン民家の形 態を考えて、曲線の屋根を用いて、民家の空間を象徴した い。壁や窓には多様な幾何図形を使った。そのディテール は中国の伝統パータンから抽出して、機能やサイズに合わ せて新しいデザインに活かせるように配慮した。また、中国 の伝統的民家の中庭が持つ光をコントロールする機能を取 り入れ、3階の窓からの光の流れに応用した。 私は日本の伝統民家の歴史や空間などの研究を、日本 の現代住宅建築デザインに活かす方法に感心している。そ の経験から中国現代建築デザインの問題点を探して日本の 建築界のデザイン手法と融合してみた。この修士制作は国 の伝統的文化が持つ雰囲気を表現するための試みである。 Research on traditional dwellings through analysis of Chinese modern architectural design
ワークショップを構想・企画・実践し、実際に子どもたちと 触れ合う中で彼らの活動領域や年齢別の特徴を観察すると ともに、ワークショッパー ※1としての視点から以下のような 考察を行った。1.子どもたちにワークヨップを体験してもら いたいが、積極的に活動できる拠点の場がない。2.活動場 が離れている場合はあまり十分に試すことができない。3.活 動場に画材店や資材店などが近くにあったり、創作活動が できる道具、素材が豊富に揃っていて欲しい。4.他のワーク ショッパーと交流の場が欲しい。以上の考察結果から、修了 設計の空間構成につながる重要なデータを獲得した。 3.提案 本研究「木いろの庭」は、子どもたちと作家(アトリエリスタ・ ワークショッパー )が自由に創作活動のできるアトリエ、さら に周辺地域に住む人々と子どもたちがアートやデザインに触 れ合えるパブリックスペースを設計した。アトリエリスタのい るアトリエは子どもたちがアーティストやデザイナーと共に 育みそれぞれのアトリエリスタが考えたプログラムや講座を 体験できる場をつくり、子どもたちが自由に創作活動を楽し める拠点となる場を提案する。 4.設計概要 東京都台東区、東京藝術大学付近の谷中清水町公園を 建設地とした。ここは美術館や芸術大学などが密集し、子ど も達にとって沢山の刺激やアートとふれあれる様々な可能性 を持っている場であると考え、この場所を選んだ。公園とし ての機能を継承しつつ様々な創作プログラムを想定し、外 部空間を有効的に活用することで内と外の関係性をつくり だし、通りに対しては、ここを訪れる子どもたちや地域に住 んでいる人へのアートファサードになるような建築の配置と なっている。 引用・参照 [1]レッジョ・エミリア幼児教育の紹介(佐藤 朝美) p.3 [2] 解体と構築のあいだレッジョ・エミリアの幼児学校にお ける学びの生成(宮崎 薫) p.4 [3]同上 p.4 ※1 ワークショップを主体的に行う人 「木いろの庭」環境・空間・プログラムを考える
子どもたちの学びのデザインについて考える
SATO, Sayaka佐藤 沙也加
1. 研究の動機・問題 近年、「新しい学びの場」( 石戸奈々子 :2014)として子ど もたちの想像力や創造性を育み、様々な場所で創作ワーク ショップが行われるようになった。私は2013〜ʼ15年にかけ て3才~小学校低学年を対象とする幾つかのワークショップ に参加してきた。また、私自身が主催する子ども向け創作 ワークショップも開催してきた。これらの経験を通して、そ の場に発生するコミュニケーションの輪と熱量はそれを行う 環境・空間に実に密接に関係していると感じる。整った環 境があったとしても、他者とのコミュニケーションや参加者 たちの創造性を引き出す「仕組み」と「空間」の両者が連 動していなければ人の心情を動かすことは出来ないという のが、私の体験に基づく実感である。また図画工作の時間 の削減や都市化によるあそび環境の減少など、自然に存在 していた子どもたちの学び舎が消えつつある。以上のような 問題意識が本研究に至った経緯と動機である。 2.先行研究 2-1.アート教育の実践 イタリア北部発祥の『レッジョ・エミリア』という未就学 児を対象に行われているアート教育がある。幅広い創作活 動を中心にカリキュラムが構成されており、世界最高水準の 幼児教育として注目されている。この教育の特徴は、各園に 「アトリエリスタ」という芸術専門家が配属されている。彼 らは創作プロジェクトを行う中で、子どもたちにヒントを与 え、教育活動をサポートしている。教育環境の面では「ピ アッツァ (広場)」と「アトリエ」を必ず有しており、「広場」 は町と学校をつなぐ共有スペースとなっている。[2]「広場」 の周りには「アトリエ」、各クラスには「ミニアトリエ」がある。 この「アトリエ」には創作活動に必要な画材や道具、素材 が豊富に揃っている。[3]環境そのものが道具箱を散りばめ たような構成になっており「広場」、「アトリエ」そして「ア トリエリスタ」の関係性をつなぐことで子どもたちの創造性 を掻き立てるような環境を、学校の講師とアトリエリスタだ けでなく、保護者や様々な共同体からつくりあげられている。 2-2.創作ワークショップの実践 2014~ʼ15にわたり3才~6才の年齢を対象に4つの創作 Study on design of learning environments for children図3:建築外観・内観 図2:敷地模型
公園2 公園3 屋外ステージ 南側アトリエ外観
北側外観 アートデッキ2F アートデッキ 公園1
私のデザインは、自由に家の面積を増減できることと自由 に住宅を移動することの二つの方面から考え始めた。 キーワードは有機的・生命力・生態 有機的:有機体のように、多くの部分が集まり強く結びつ いて一個の全体を形作り、その各部分の間に緊密な統一と 連関があること。 生命力:生物が生物でありつづける根源。いのち。 生態:生物が自然環境のもとで生活している。 この三つのキーワードは、変化すると成長ができるという 意味が表している。今回のデザインでは、建築が先ほど言っ た条件を満たした上、居住者たちに最適な住環境も確保で きることが私の目的である。建築本体と環境は一体になり、 敷地の面積に関わらず、必要な都市や地方で建てられる住 宅システムである。今回のデザインの対象は、家を持って いない、固定の仕事がない外来の人々である。彼らの基本 的な住宅を満足させると同時に、家族や仕事が原因となっ ている住宅に対する要望と地域の変化からの不便を解決さ せようと思っている。 まず、建築の形を決める。住戸のプライバシーを守った 上で日照 、 換気などの条件を配慮した結果、建築は上昇し た螺旋状の形とし、建築と環境を融合させるため二つの螺 旋状を巻きつける。建築と地面の間に空いている空間も環 境とすれば、建築と環境の関係はさらに親しくなると思う。 The organic structure and architectural freedom of the modern metropolis
くの外国人を受入れることを目的とする。 現在日本で設置されている外国人観光案内所のシステムを 考察し、観光庁による外国人観光案内所の認定制度を調べ た。 そうして認定観光案内所で現地リサーチをし、運営者へイン タビューを行った。現時点で改善の可能性のある点を挙げる と、以下3点となる。⑴インフォメーションセンターの立地を 考え直し、2020年オリンピックに際して多くの外国人観光客 を受け入れる施設の可能性を引き出す。⑵インフォメーショ ンセンターを単体ではなく面的なシステムを整える必要があ る。⑶入りやすさを重視した、開放感あるオープンなスペー スであることが求められる。 コンセプト TOKYO 2020に向けて多くの外国人を受け入れ、オリンピッ クを目的とした訪日観光客を対象とするインフォメーションサ イトを作る必要がある。そのために旅行、交通などの情報提 供及び日本文化の発信、日本と海外の相互の理解を深める施 設として、多目的なインフォメーションスポットシステムを作り 出す。 一つのメインスポットと複数のサブスポットにより、インフォ メーションセンターシステムを提案する。
Consideration on foreign resident information center in Tokyo and proposal for information center system
東京における外国人インフォメーションセンターに関する考察
及びインフォメーションセンターシステムへの提案
ZHAO, Jinxiu趙 瑾秀
研究背景 日本では2011年東日本大震災の影響のため、訪日人数が 減ってしまったのだが、2011年から訪日外国人数が年平均 200万人ずつ増加し、2013年には初めて1000万人を超えた。 その背景にはアジア諸国の経済成長により海外旅行費用を負 担可能な所得層が増えた事や、日本政府がビザの緩和政策 を実行した事が挙げられる。その上、東京が2020年夏季オリ ンピックの開催都市に選ばれたことで、インバウンド観光は いっそう発展する見込みがあると考えられる。今までにない 勢いで日本に来る外国人観光客を適切に受入れるのは今後 の日本政府にとって重要な課題だと考えられる。 研究目的 2020 年に向けて、3000 万人の高みを目指すためには、 「2020 年オリンピック·パラリンピック東京大会」の開催の際、 世界に通用する魅力ある観光地域づくりを行うことが重要とな り、外国人観光客の受入環境整備を促進する必要があると考 えた。外国人観光案内所は、この環境整備の重要な一環とな り、実際に外国人観光客と直接話し合い、フェース·トゥ·フェー スコミュニケーションで、適切な情報やサービスを提供して いる。本研究では、現在日本で設置されている外国人観光案 内所を考察し、訪日外国人 3000 万人時代を見据え、より多 メインスポットの提案 東京駅丸の内駅前広場 リサーチを行った観光案内所 JNTO 観光案内所の立地による分類 駅構内 駅前広場 駅前のビル内部(街路に面した1F) 駅前のビル内部(2F以上) 駅前のビル内部(地下) 駅から離れたビル内部 TIC TOKYO Tokyo City I 青ガエル観光案内所 TOKYO Tourist 浅草観光センター「Uglers」 スポーツバー兼宿泊総合施設
「SHARE」をキーワードとしたパブリック空間の分析と研究
ZHENG, Kai鄭 凱
私は感動をシェアするための空間を設計することにした。 人を感動させるものといえば、書籍、映画、音楽など様々で ある。その中で、スポーツには永遠の魅力があると感じる。 いいスポーツは映画のように、人のこころを感動させること ができる。素晴らしい試合は忘れられない。ただゴールや逆 転の瞬間を見るだけではなく、どのような環境で、誰と一緒 に見たのかも忘れられない。試合が終わった直後、その感動 を誰と共に分かち合ったのか、その興奮はどれほどのものだっ たのか、こころに残る感動は、何年後になっても誰かに話し て聞かせたくなる。スポーツバーで観戦することの興奮と感 動は、スタジアムへいく以外の唯一の選択となる。 しかし、現代生活と時差の原因で多くの海外試合はバーで 見ることが難しくなっている。深夜帰宅して、盛り上がる気持 を抑えながら、スポーツを見るより、都内で試合前後の空き 時間を利用して、仮眠を取りながら、何も気にせず大いに盛 り上がれる環境で試合を見ることのほうがより豊かな時間とな るのではないだろうか。 敷地は、渋谷3丁目にある渋谷川と明治通りに挟まれた角 地である。そこは渋谷駅再開発計画(南街区)の端部でもあ り、代官山や恵比寿方面への接合地点にもなっている。建築 は完全に地下にして、地上部分は都市のポケットパークとし て計画することで、建築以上の役割を果たすような、都市に 開かれた場所をデザインできないかと考えた。さらに、渋谷 まさに街路の一部のように感じとれる。建築を地下化するこ とにより、少し膨らんだ形をしていても視界が抜け、周囲をよ り見渡すことができるが、この建築としての存在感は保ってい る。屋根から伸びる吹抜けが、この街の新しいランドマーク となるだろう。 カウンターバー:入口から近く、気軽に入って、話しながら 試合を見られるところである。観戦席:劇場のような型をして おり、臨場感があふれ、盛り上がって観戦できるところである。 席も広めに設計し、靴を脱ぎ、あぐらをかいて家にいるよう なリラックスした状態で試合を楽しめる。ビリヤードエリア: 落ち着いてビリヤードをしながら静かに試合を見られるところ である。東の面は全面ガラスで、外部を取り入れ、スポーツ バーで盛り上がる以外に、もう一つ違う雰囲気を持った違う 空間を提供する。ラウンジ1:建築の中心にあり、休憩、入 浴する前のスペースである。ロッカーを設け、試合が終わり、 盛り上がっている気分を持ったまま、ラウンジでしゃべりなが ら、休憩、入浴の準備ができる空間を提供する。仮眠エリア: 試合前後、服を脱がず、仮眠ができる空間である。Energy podというマシンを導入し、より効率的に睡眠をとることがで きる。 駅周辺で唯一地上に顔を出してる渋谷川で、並木橋周辺まで 賑わいと潤いのある良好な水辺空間を創り出す渋谷南街区プ ロジェクトがあり、この場所はこの “渋谷のオアシス” で人が たまれるところになる。高い壁がなく、交差点のどこから見て も視線が抜け、周辺の視界を広げることができる。このデザ インは敷地が持っている景観をシェアしている。 設計はUglersというスポーツバー兼宿泊総合施設である。 Uglersとは英語の造語で、Under ground level peoples意味 はアンダーグラウンドで夜更かしている人々である。 建築面積は365㎡あり、両側に吹き抜けと、中心に二つの 天窓を設け、光を建築内部に取り入れるようにした。上層は スポーツ観戦ができるバー、中層が仮眠エリア、最下層は浴 場とカプセルホテルである。バーは地上から続くイメージを 取り入れ、明るい、自然の素材を使用し、レベルが深くなる ほど仕上げは、濃く無彩色でシンプルな素材を使い、落ち着 いた雰囲気をつくった。浴場の西側の吹き抜けからは芝生が 見え、カプセルホテルから、東側の吹き抜けに出ることがで きる。このふたつの吹き抜けのデザインで最下階にいる人が 地下の閉鎖感を感じることなく、むしろここでしか感じること のできない特別な空間にいるような体験ができる。 屋根は公園としての機能があり、この場所が、目的がない と来られない場所ではなく、渋谷という土地において、街路 の延長に緑地として存在し、自然と建築に近づくことができる。 ラウンジ2:浴場とカプセルホテルの間にあり、風呂上がり に一番リラックスした状態で、雑誌を読んだり、テレビを見た り、雑談したりすることができる空間である。お風呂:建築 最下層の西側にあり、吹き抜けからは芝生と光が見え、都心 部に自然を感じられる贅沢な浴場である。カプセルホテル: 建築最下層の東側にあり、きちんと睡眠を取れる場所を提供 する。出入口は東の吹抜け側に設け、水盤からの反射が三 角形の吹抜けにきれいに映り、寝起きの人が自然の光と時間 を感じることができる。 私はスポーツには永遠の魅力があると感じている。私が年 を取ったとき、時々孫を膝の上に座らせて、若い時に見た忘 れない試合を孫に話すだろう。あの伝説的な試合はどうだっ たか、あの瞬間、選手がどんな信じられないプレーをしたか、 あの日のバーはどんな雰囲気だったか、何杯の生ビールを飲 んだか、誰と何を話したか。逆転の瞬間、隣にいる知らない 人と抱き合って叫び、どれほど感動したか・・・ 渋谷の土地にこの建築が建つことによって、スポーツによ る感動がより大きなものとして存在し、現代に生きる人々に とって、生活がより豊かで、よりすばらしく、より忘れられな い思い出を作れるものになればと思う。Analysis and research on public spaces using SHARE as the keyword "Uglers"sports bar and accommodation
敷地所在地 敷地と建築の模型 建築模型断面
伝統的な建築に対する新たな考え
空間再生
ZHENG, Haizhou鄭 海洲
背景 まず再生というと、伝統建築/歴史的建造物の保護・再生 に関することをよく聞くが、周囲の環境を含め空間を積極的 に取り組むことは少ないように思う。一方で、伝統を感じさ せる斬新なデザインを取り入れた現代建築が日本には多い。 今の中国は高度成長期で、伝統的な建築ならびに室内装飾 だけが注目されている。さらに本当の古い建築ではなくて、 アンティークのように新築した建物が増えている。伝統を重 んじた再利用や再生といっても、現代の素材でコピーしたも のや格好のよくない装飾を施す方法がほとんどである。 伝統は国によって違い、それぞれを論述したものは多数 ある。歴史的な面から、文化的な面から、風土から、また 共通性も分析されている。雄壮な中国建築に対し、日本建 築は洗練され、優雅さを持ち、建築構造の構造美と材料の 質感の表現に長けている。このほか、日本建築は自然美を 再現するための構想と技巧をより重んじている。 戦後の日本に生まれた多くの庁舎建築には、欧米の建築 様式が取り入れられた。庁舎は地方行政の中心であり、市 民の活動の場でもある。香川県庁舎(丹下健三設計、1958 年)は民俗色の探究と新たな庁舎の創造を実現した成功例 である。庁舎外の廊下のコンクリートの柱は、日本の伝統 的な木造建築の素朴な美しさが溢れている。1975年以降、 建築スタイルは西洋と東洋の融合へとシフトし、新材料の活 用や伝統文化の継承、新たな形式の創造などにおいて大胆 な試みを行う建築家も多く現れた。例えば、東京の中銀カ プセルタワービルは、黒川紀章がメタボリズム(新陳代謝) という建築理論に基づいて設計したカプセル型のマンション で、カプセルユニットを片持ち梁の方式で中央のコンクリー トの支柱に固定したものである。 日本の伝統的な建築ならびに独特かつ自然な様式や形 式、建築手法や細部の処理、およびその中に息づく哲学は、 現代の建築と室内環境の設計に深い影響を及ぼしている。 これを基礎として、日本は世界レベルの建築家を多数輩出 し、世界建築史に重要な影響をもたらすとともに、世界の 建築芸術の発展に大きく寄与している。中国は、今の「高 度成長期」において、現代的な建築の実験と次世代に活躍 する建築家の輩出とがまだ少ないように思う。 Space regenerationNew thoughts on traditional architecture
空間配置:現代空間、伝統空間、自然空間とそれぞれの各 区間を結び付ける庭を造る。呈したいイメージは現代から、 自然に戻るような感じである。そして空間のイメージに合わ せた詩を作った、一文ずつを一つ空間のテーマに設定して 空間をデザインすると考えている。 ❶濃陰小道通幽処 ❷林間茶坊径庭深 ❸万般空無心禅静 ❹一花一葉皆菩提 テーマ❶目切り坂からカフェに行く途中の並木小道と駐車場 からカフェに行く途中の森から空間の演出が始まり、にぎや かな通りから、静かなところに導く。 テーマ❷現代空間に使う、禅の美を参考しながら空間デザ インする、中には玄関、受付、販売、和カフェとギャラリー が配置されている。ギャラリーは小さい庭を通って、入り口 は、躙口、貴人口、普通のサイズの引き戸3つ配置してい る、この3つの入り口から、自分で選んでギャラリーに入る ことになる。ギャラリーの中は茶道の歴史、茶道と禅、茶道 具の制作と展示、茶道の知識などを展示する。 テーマ❸茶道を体験できる伝統茶室にする。伝統茶室は八 畳の広間と四畳半の小間、水屋、台所、トイレを配置して いる。この空間を作る理由は禅の美簡素、静寂、幽玄は伝 統茶室で完璧に表現している。現代の新しい空間を探すこ とが必要であるが、伝統的の建築にも伝えたい、そして今 ある伝統的の茶室で、入れるところが少ない、ここに来る外 国人が若者に伝統的な茶道を体験できる場所を作りたいと 考えている。 代官山にあるZENカフェ・ギャラリーの空間提案
禅の美がインテリアデザインに与える影響について
LI, Wei李 薇
研究目的 禅意が醸し出した空間の雰囲気とは、「物質を軽視して、 魂を重視する」という禅宗の理念をもって、「素、簡、美」 の精神への追及及び空間の持続性を伝えることにある。禅 宗美学と近代インテリアデザインの接点を探り出し、禅宗 美学がインテリアデザインに与える影響と啓発を明らかにす る。室内装飾における発展傾向と方向性、並びに設計の原 則、理念、設計方法等を総括し、禅宗美学をどのように近 代室内装飾の設計に活用するかという課題を軸に研究した い。そこで、近代室内装飾設計における禅宗美学の活用に ついて理論的根拠を分析し、室内装飾設計の中での禅宗美 学の発展に少しでも貢献できればと考える。 これらの美学思想を参考に室内装飾に設計のインスピ レーションを与え、室内装飾設計の美学理念と文化の向上 を啓発することが、近代室内装飾設計の発展を高め、伝統 美学を伝承させることに対して重要な現実的意義があると考 える。 提案:代官山にあるZENカフェ・ギャラリー 代官山のイメージは最新モードの発信地、高級住宅地区、 大使館や外国人住居なども点在し、異国的な雰囲気が漂っ ている。街の象徴的存在であるヒルサイドテラス、個性的 なショップやレストランが点在し、ショッピングもグルメも楽 しむことができる。また、都心でありながら大木が残り、緑 が多く、広い道は散策にも最適で、ファッショナブルな街に 佇む伝統建築「旧朝倉家住宅」にもある。外国人と若者の 人気の町である。 結論 この辺のレストランやカフェは洋式の方か多い、日本の雰 囲気が弱くなっている。この現代的おしゃれなところで伝統 と現代の融合を探す、禅カフェの制作をチャレンジする。敷 地は旧朝倉家住宅を通る目切り坂の奥になる。観光者に日 本の伝統文化を伝えたいと思う。旧朝倉家住宅の雰囲気を 借りて、セットの空間を作ろうと考えている。そこを見学した らちょうどこちらの ZENカフェにたどりついて、伝統文化を 体験しながら、心を落ち着いた場所を提供することを目指す ものである。 テーマ❹最後の自然空間を使って、季節茶室を作る、前の 空間で食べたり飲んだり、ここは休憩の空間になる、よく周 りの環境と融合させ、自然の香り、音、風の流れ、温度な どを感じで、心が静かになると、目の前の花ども、葉ども菩 提になれるような。伝統的な草庵茶室の構造要素を減らし て、柱4本だけ残っている、壁は表面の土を捨てて、中身の 竹小舞下地を裸になるような麻から作る、自然と素朴をよく 表現している。そして、麻壁にのれん棒をつけて、上に巻いて、 框景になる、巻いた高さによって、景色が変わる。そして、 壁の素材にも季節に対応して変わられる。庭には、旧朝倉 家住宅の庭の雰囲気を使って、現地の植物を利用して、四 季折々の変化を見せる雑木の美しさを表現し、野趣を重視 した自然の庭、雑木の庭になる。On the influence of ZEN aesthetics in interior design Proposal for ZEN cafe gallery in Daikanyama