原子核物理学
11.対称性の破れ
原子核を用いた
基本的対称性の破れに関する物理
3つの基本的な変換
C (charge conjugation)
荷電共役変換P (space inversion: parity)
空間反転T (time reversal)
時間反転CPT
定理:CPT = 1
パリティの非保存
空間反転対称性の破れ
異なる粒子? パリティの破れ?
2つの粒子の崩壊(弱い相互作用)
どちらの崩壊でも,相対運動の軌道角 運動量が
0
である成分が存在する。P = + P = −
πのスピン・パリティは
0
−終状態のパリティ
しかし,2つの粒子は,この崩壊以外に区別がつけられない。
もし,同じ粒子であるならば,弱い相互作用にパリティを保存し
擬スカラー量の測定を行わなければ,
パリティの保存に関する情報は得られない。
ベクトル:運動量
擬ベクトル:スピン,角運動量
パリティ非保存の検証
C.S. Wu, et al., Phys. Rev. 105 (1957) 1413
偏極した原子核のベータ崩壊
原子核の偏極の減少と ともに,放出される電子 の非対称が減少する。
Fermi 遷移と Gamow-Teller 遷移
弱い相互作用: V - A 型
どの型であるかは,実験で 検証するしかない。
粒子と反粒子の対称性の破れ
CP 対称性の破れ
ニュートリノ 左巻き
反ニュートリノ 左巻き
反ニュートリノ
C P
右巻きサハロフの条件
物質優勢の宇宙 宇宙は粒子に満ちた物質の世界で,反物質でできた銀河などはない。
もし存在したら,物質と反物質の対消滅が生じる。
サハロフの提案(1967
年) 宇宙は物質・反物質の対称状態から始まった。
その後の宇宙進化によって,非対称になった。
1.
バリオン数の非保存2.
C,CP対称性の破れ3.
宇宙の冷却宇宙の初期に生成されたバリオン数が宇宙の冷却によって凍結 素粒子レベルでみた
Big Bang
理論の基礎となるKメソンにおける CP 対称性の破れ
1964
年,ブルックヘブン研究所において偶然発見された。 当時、PやCは個別には破れていても,
CP対称性は保たれていると考えられていた。
K
メソンは粒子と反粒子が異なる:CPが破れていないと は禁止
CPが破れていると崩壊が可能 (振動)
B メソンにおける CP 対称性の破れ
BメソンはKメソンに似ているが,
その
100
倍もCPの破れが大きいKEK B
‐Factory
電気的に中性な
B
メソンと 反B
メソンの崩壊に差があ ることを検証崩壊寿命の 差が見られる
CPT定理が成り立つならば,
CP の破れと等価
中性子の電気双極子モーメント
時間反転対称性の破れ
ベータ崩壊の時間反転対称性を破る項
電気双極子モーメント (EDM)
電気双極子モーメントは電荷の偏りに起因 するベクトル量である。
中性子・陽子・電子に固有なベクトル量は スピンだけである。
従って、電気双極子モーメントはと表されると考えられる。
EDM
を測定する意義時間反転に対する変換
時間反転 に対して、電荷の偏り(電気双極子モーメントベクトル)は変化がなく、
一方、スピンは向きを変える。
従って、時間反転に対して、
電磁場との相互作用
スピンには磁気双極子モーメントが付随 し、磁場と相互作用する。電気双極子 モーメントは電場と相互作用する。
電場が磁場と平行な場合と、反平行な場 合では、スピンの歳差運動の角速度が異 なる。差は電気双極子モーメントに比例 する。現状
exp. < 0.63 × 10
-25SM ~ 10
-31SUSY 10
-26- 10
-27neutron EDM e・cm
atomic EDM
d
A : 10-9Z
2A
2/3 dn
中性子の寿命は短い
安定な原子核内の中性子は安定 しかし,裸の原子核を用いるのも 難しい
原子(原子核+電子)の
EDM
を測 定し,中性子のEDM
を求めたい 原子のEDMから中性子のEDMをSchiff の定理
L.I. Schiff, Phys. Rev. 132, 2194 (1963)
R.L. Garwin and L.M. Lederman, Nuovo Cim. 11, 776 (1959)
電気的に中性な系が,非相対論的な点状粒子からなり,
静電力のもとで平衡状態にあるとき,たとえ系を構成す る粒子が電気双極子モーメントをもっていても,それは 測定することができない。
ユニタリー変換で結ばれる2つのハミルト ニアンは同じエネルギー固有値をもつ。
すなわち,電場を加えてもエネルギーの
Hamiltonian
非摂動
Hamiltonian
と 摂動Hamiltonian
摂動項は摂動項は
電場と電場と
EDM の相互作用 EDM
の相互作用微小量での展開
原子核の広がり « 原子の広がり
Schiff の定理
原子核を点状の粒子とみなしたとき原子核を点状の粒子とみなしたとき 1次の項
2次の項
ここで より
Finite Size Effect (原子核の励起)
原子核の原子核のEDM は原子核の広がりを考慮して生じる EDM
は原子核の広がりを考慮して生じる
原子核の広がり « 原子の広がり 中性子(核子)の位置での電場 » 電子の位置での電場
原子核の励起による寄与 » 原子の励起による寄与
他の効果も考えられるが,現時点では,
Schiff shielding
から生き残る項が存在す るという理論的根拠は見出されていない。原子核は複合粒子であり,強い相互作用