はじめに
一般に慢性気道感染症において感染が遷延化し た場合,mucoid 型緑膿菌が気道壁に定着し,それ 自身が病態のさらなる難治化の要因になることが 知られている
1).これら mucoid 型緑膿菌は non- mucoid 型 緑 膿 菌 に 比 し,外 毒 素 で あ る elasta- se
2)3),protease
2)4),phospholipase C
5),Exotoxin A
5)さらには,DNAase
3)などの産生に乏しく,in
vivo 実 験 感 染 に お い て も 起 炎 性 は 顕 著 で な い6)7).一方,菌体周辺に産生された mucoid-algi- nate は菌体を被覆し,いわゆる細菌 biofilm を形 成し,その結果抗菌剤の菌体内への透過性や生体 側食細胞の干渉作用がともに低下し,かかる細菌 の肺局所での長期生息を可能としている
6)7).これ ら biofilm 形成菌の長期生育の結果として,細菌 biofilm の主成分である mucoid-alginate は抗原性 を獲得し,これに対し生体側では抗 alginate 抗体 が産生され,これらが気道内壁に局在する抗原
(mucoid-alginate 産生菌) と反応し,いわゆる algi-
Alginate 免疫複合体の BALF 細胞におよぼす 影響にかんする実験的検討
杏林大学大学院医学研究科内科系内科学 1(指導:杏林大学第 1 内科教授 小林宏行)
林 志 文
(平成 12 年 8 月 3 日受付)
(平成 12 年 10 月 11 日受理)
慢性緑膿菌気道感染症の病態におよぼす alginate に誘導された免疫複合体(alginate IC)の意義につい て実験的に観察した.すなわち,alginate 免疫マウスと非免疫マウスを用い,alginate IC 気管内注入後の BALF 中炎症細胞と肺組織の経時的観察を行った.
その結果,注入 2 日後,両群で炎症細胞が増加したが,免疫群で好中球 Fc-
γ
受容体表出の増加の抑制 と CD8+,CD8+CD11b−リンパ球の優位増加がみられた.組織では肺胞壁肥厚と同部位の炎症細胞浸 潤がみられ,免疫群で顕著であった.5 日後,両群で回復傾向が示されたが,免疫群で好中球 Fc-γ
受容 体表出の抑制が持続し,CD4+CD45+リンパ球が増加した.16 日後,非免疫群は回復し,免疫群で好中 球数の回復遅延と好中球 Fc-γ
受容体表出の抑制がみられ,CD4+CD45+,CD8+,CD8+CD11b−リ ンパ球が増加した.組織は非免疫群は正常に復し,免疫群で肥厚した肺胞壁と同部位のリンパ球浸潤が みられた.以上の成績から alginate 免疫状態では Fc-
γ
受容体の表出が減少し好中球の alginate IC 排除が阻害さ れ IC の組織沈着遷延化が示された.これにより細胞障害性 T 細胞集積と記憶 T 細胞による防御免疫が 惹起され,これら生体反応は alginate 感作状態での特異的免疫応答の一つと考えられ,臨床的に mucoid- alginate 産生菌を伴った慢性気道感染症をさらに難治化する要因と考えられた.〔感染症誌 75:20〜35,2001〕
要 旨
別刷請求先:(〒181―8611)三鷹市新川 6―20―2 杏林大学大学院医学研究科内科系内科学 1
林 志文
Key words: alginate, immune complex, bronchoalveolar lavage fluid cells
nate に起因する抗原抗体反応が発現し,その結果 気道周辺にリンパ球が集積され,さらにこれら反 応の反復はリンパ球集積とこれによる濾胞形成に お よ び 細 気 管 支 レ ベ ル で の 気 道 変 形 を 招 来 す る
6)8).さらに, 気道内壁における biofilm 形成に伴 う alginate 産生菌の長期局在という抗原過剰の 病態 は alginate お よ び 抗 alginate 抗 体 か ら 成 る 免疫複合体(alginate IC)を宿主側に形成する
6)8). これら免疫複合体の肺組織への沈着は補体を活性 化し局所への好中球走化を発現し
6)9),この結果好 中球産物により肺の組織破壊が招来されるものと 考えられる.また,実際臨床面において慢性緑膿 菌気道感染症とくにびまん性汎細気管支炎をみる とき,そのほとんどは mucoid 型菌であり,肺の組 織所見においては肺胞内に好中球の集積が認めら れるのに対し,末梢気道周辺にはリンパ球集積と リンパ濾胞,さらにはマクロファージを含んだ肉 芽腫形成などの所見がみられている
10).このこと からリンパ球を中心とした免疫反応も慢性緑膿菌 気道感染症の病態形成に強く関与しているものと 推定される.さらに近年,びまん性汎細気管支炎 の気管支肺胞洗浄液(BALF)中に T 細胞の集積 が有意にみられるという Mukae ら
11)の成績から もこれらリンパ球集積が濾胞形成に関与している との推測に難しくない.しかしながら,これらリ ンパ球集積と免疫複合体の相互作用に関しては本 疾患を背景とした場合不明な点が少なくない.
かかる背景から,著者は慢性緑膿菌気道感染症 における alginate により誘導された免疫複合体 の意義を,とくにリンパ球系反応との関連の上で 明確にする目的で実験的検討を行った.
対象と方法
1)概要
mucoid 型緑膿菌の菌体外成分である alginate を精製し,この alginate により免疫マウスを作製 し,これらマウスの血清より免疫複合体(IC)を 抽出した.次いで免疫マウスおよび対照とした非 免疫マウスのそれぞれの群に抽出 IC を気管内注 入し,気管支肺胞洗浄液所見および肺組織所見を 経時的に比較検討した.
2)対象
JCL:ICR4 週齢マウス雌 (日本クレア KK) ,体 重 20±2.4g,40 匹を用い alginate で免疫後,免疫 複合体を抽出した.
JCL:ICR4 週齢マウス雌 (日本クレア KK) ,体 重 20±2.4g,24 匹を用い alginate で免疫後,免疫 複合体の気管内注入を行った.うち 4 匹は肺組織 所見の観察に供した.
JCL:ICR11 週齢マウス雌(日本クレア KK) , 体重 25±2.0g,24 匹を用い免疫複合体の気管内 注入を行い対照群とした.うち 4 匹は肺組織所見 の観察に供した. ここで 11 週齢マウスを用いたの は上記免疫マウスの免疫成立期間を加味したもの である.
3)alginate 免疫マウス作製
(1)alginate 精製
Pedersen ら
12)の方法を一部改変し行った.mu- coid 型緑膿菌 PT1,252 株を Pseudomonas isolation agar (DIFCO) に接種し,37℃,48 時間培養した.
こ こ で 得 ら れ た 菌 体 を Phos-phate Buffered Sa- line(PBS) (DIFCO)に 懸 濁 後,4℃ に て 20,000
×g で 4 時 間 遠 心 し,上 清 を 0.2 µ m フ ィ ル タ ー
(Millipore)で濾過し菌体を除去した.その後,80
℃で 30 分間加熱し,混在する蛋白を熱変性させ,
遠心(20,000×g,30 分,室温)により除去した.
得 ら れ た 粗 alginate を 80% エ タ ノ ー ル で 洗 浄 後,凍結乾燥した.この粗 alginate を 10mM Mg- Cl
2-1mMCaCl
2添 加 PBS に て 溶 解 後,type IV DNase I 100 µ g ml (SIGMA) ,1A RNase A 100 µ g ml (SIGMA) を加え,37℃ にて 4 時間反応させた.
こ の 反 応 液 を 80℃ で 30 分 間 加 熱 し DNase,
RNase を不活化した後,室温にて 20,000×g,60 分間遠心し,上清に再度 80% エタノールを加え,
析出した粗 alginate を凍結乾燥した.この粗 algi- nate を 0.025M 炭 酸 ア ン モ ニ ウ ム で 溶 解 後,
DEAE-TOYO-PERAL 650 S( TOSOH )を用い
0.025M から 1M の直線的濃度匂配によって分画
した(流速 0.5ml min).得られた各分画を Bitter-
Muir 法にて alginate を定量し,alginate 含有分画
を分取し,PBS にて 24 時間透析した.さらに algi-
nate 中の lipopolysaccharide(LPS)を除去する目
的で,これらを PBS にて平衡化した AFFI-PREP
POLYMYXIN(Bio-Rad)を加え,4℃ で 16 時間 撹拌し,LPS を除去し,エンドスペシー法を用い,
LPS が混在していないことを確認した.最後に 4
℃にて 10,000×g,30 分間遠心し担体を除き,精 製 alginate を得た.
この精製 alginate を Bitter-Muir 法で定量後,
以下の操作に用いた.
(2)免疫方法
ICR4 週齢マウス雌(体重 20±2.4g)40 匹を免疫 複合体の抽出に,24 匹を免疫複合体の気管内注入 に 使 用 す る た め,こ れ ら 64 匹 の マ ウ ス に algi- nate,80 µ g body を,1 回 1 週間,5 週間にわた り,Freund adjuvant(Difco)とともに腹腔内注射 し,6 週目,20µg body を尾静脈注射した.以後,
経時的に尾静脈採血し,血清中抗 alginate 抗体価 を測定し,抗 alginate IgG 抗体価 1,000 倍以上を 確認した後, その抗体価が 32 倍以下に低下するの を待ち,免疫マウスとした.
(3)抗 alginate 抗体 IgG 測定
Coating Buffer(Na
2CO
31.6g,Na
2HCO
32.92g,
NaN
30.2g l ) で alginate を溶解し,96 穴 Nunc im- muno plate を用い,5 µ g 100 µ l 濃度の alginate を 各ウエルに 100µl づつ分注した.これを,4℃,16 時間静置後,PBS にて 1 回洗浄し,1% 牛血清アル ブミン加 Coating Buffer で反応 を 停 止 し た 後,
0.05%Tween20―PBS(PBS-Tween)にて 3 回洗浄 し, さらに PBS-Tween を満たし 30 分静置した.
その後,被検血清希釈系列を作製し,37℃,1 時間 反応させ,PBS-Tween にて 3 回洗浄した.抗 algi- nate IgG 抗体価測定には,2 次抗体として Peroxi- dase conjugated affinity purified goat anti-mouse IgG(Fc fragment,Gamma Chain Specific;Cap- pel)を,各ウエルに 50 µ l 満たし,37℃,1 時間反 応させた.PBS-Tween にて 5 回洗浄後, TMB Per- oxidase Substrate Kit(Bio-Rad)を各ウエルに 50 µ l づつ分注し,37℃,10 分間反応させ,1N の硫酸 で反応停止後,Microplate reader MPR A4 で波長 450nm の吸光度を測定した.2 次抗体無添加の吸 光度をブランクとして,その 2 倍以上を陽性とし 抗体価とした.
4)免疫複合体(IC)の抽出
IC は alginate 免疫マウス 40 匹それぞれの血清 より,ポリエチレングリコール(PEG)沈殿法に て抽出した. PEG はポリエチレングリコール 6000
(和光純薬)を使用し,ホウ酸緩衝液に溶解し 12.5
%と 2.5% の PEG 溶液を作製した.まず alginate 免疫マウスの血清 0.6ml を血液用分離管に注ぎ,
次に 0.2M EDTA 100 µ l を加え撹拌後,ホウ酸緩衝 液 100 µ l を加え,再度撹拌し,さらに 12.5%PEG 0.2ml を加え撹拌した.これを 4℃,90 分間静置 後,4℃,1,700×g で 10 分間遠心し沈渣を得た.
この沈渣に 2.5%PEG 2ml を加え,PEG 溶液に浮 遊させた.再び,4℃,1,700×g で 15 分間遠心,
沈殿させ,上清を完全除去した.次に 37℃ に加温 したゼラチンベロナール緩衝液(GVB)60µl を加 え沈殿物を溶解させ IC 溶解液とした.
5)IC 気管内注入
上記 IC 溶解液 40 µ l body を 27G の注射針付き の 1ml の注射筒を用い alginate 免疫マウス 24 匹
(11 週齢に成長)および対照である非免疫マウス 24 匹(11 週齢)に対して気管露出した後気管内注 入し,露出部は瞬間接着剤で閉鎖した.
6)検体採取
(1)気管支肺胞洗浄液(BALF)
上記の IC を気管内注 入 し た 非 免 疫 マ ウ ス と alginate 免疫マウスの 2 群について,それぞれ IC 気管内注入前, および 2,5,16 日後に各群よりそ れぞれ 5 匹ずつを無作為に抽出, 頸椎脱臼した後,
BALF を採取した.
なお,検体採取時期の選定は従来の本研究室で の成績
13)14)から 2 日後を急性期,5 日後を急性期回 復期,16 日後を慢性期発現期と想定し行った.
BALF は,気管を露出し,三方活栓を装着した 18G 金属カニューレを挿入し,この三方活栓の一 方に 1% ヘパリン加生理食塩水 10ml で満たした 注射筒を付し, その 1ml づつをゆっくり注入し,
他方に付した 10ml の注射筒でゆっくり吸引し,
10ml 注入終了まで反復洗浄し採取した.採取した
洗浄液をナイロンメッシュで濾過し,200×g で 2
分間遠心後,沈渣を 2%fetal calf serum 加 RPMI
1,640 培養液(LIFE TECHNOLOGIES)3ml に浮
遊させた.この浮遊液をさらに 200×g で 2 分間
遠心後,沈渣を同培養液 3ml に浮遊させ,再度 200
×g で 2 分間遠心後,沈渣を同培養液 1.5ml に浮 遊させ検体とした.
(2)肺組織標本
IC 注入 2 日後と 16 日後に各群 2 匹づつマウス を抽出し,頸椎脱臼後,腹腔動脈より脱血し,開 胸にて両肺を摘出後, 組織を PBS にて洗浄した.
その後ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色標本 を形のごとく作製しそれぞれの組織所見を観察し た.
7)BALF 細胞の総数および分画
採取した BALF 細胞浮遊液の一部から,血球計 算盤にて総細胞数を算出した.他の一部は脱脂ス ライドガラスに塗抹し,室温風にて乾燥させ,ラ イトギムザ染色により, 細胞分画の観察に供した.
8)免疫担当細胞 subpopulation 解析
免疫担当細胞として以下の細胞を観察対象とし た.CD4+リンパ球,CD4+CD45+リンパ球,CD 8+リンパ球,CD8+CD11b−リンパ球,CD16 32
+好中球(Fc- γ 受容体表出好中球) .
検体の BALF 細胞浮遊液を微量検体用試験管
(Fisher s tube)に 100 µ l づつ分注し,あらかじめ 検定したモノクローナル抗体:抗 CD4 抗体,PE 標 識;PharMingen,抗 CD45 抗 体,PE 標 識;
PharMingen,抗 CD8a 抗体,PE 標識;PharMin- gen,抗 CD11b 抗体,FITC 標識;PharMingen,
抗 CD16 32 抗体,FITC 標識;PharMingen をそ れぞれの至適濃度になるよう加え,撹拌後暗所に て 4℃ 氷冷下で 30 分間反応させた.反応後 PBS 1ml を加え洗浄し,高速微量遠心器 (Fisher s cen- trifuge)にて 1,000×g,30 秒間遠心後,上清を吸 引し再び PBS にて同様な洗浄をした.次いで溶血 剤(NH
4Cl:8.29g,EDTA-2Na:37mg,KHCO 3:1g を脱イオン水 1l に溶解したもの)を加え撹 拌後 5 分間室温に静置した.高速微量遠心器にて 1,000×g, 30 秒間遠心後,上清を吸引し,再び PBS にて 3 回 洗 浄 し,1.5ml の 2%FCS 加 RPMI 1640 培 養 液 に 再 浮 遊 さ せ,flow cytometer(FCM,
FACScan:Becton Dickinson)にて解析した.
9)統計学的処理
得られた成績は,統計学的検討を行い数値は
mean±SD で表示し,非免疫群と免疫群の 2 群間 比較は,Mann-Whitney の U 検定を行い,IC 注入 前値との比較は,t 検定を行いそれぞ れ P<0.05 を有意とした.
成 績
1)BALF 細胞の経時的変化(Table 1)
(1)総細胞数
IC 注入前値は,非免疫マウス (非免疫群) ,algi- nate 免疫マウス(免疫群)の両群間に有意差は示 されなかった.
IC 注入 2 日後,両群の値は IC 注入前値に比し 有意に増加 (非免疫群 p<0.01, 免疫群 p<0.01) し,
さらに免疫群の値は非免疫群のそれに比し有意に 高値(p<0.05)となった.
5 日後,両群の値は 2 日後の値に比し減少した が,免疫群での値は IC 注入前値に比し有意に増 加(p<0.05)し,また,非免疫群のそれに比し有 意に高値(p<0.01)であった.
16 日後,両群の値はさらに減少傾向が示された が,この時点においても免疫群の値は,非免疫群 のそれに比し有意に高値(p<0.05)であった.
(2)細胞分画数および分画率 a:マクロファージ
マクロファージの IC 注入前値は,実数の上で は両群間に有意差がみられなかったが,比率にお いては非免疫群に比し免疫群で有意に低値(p<
0.05)であった.
IC 注入 2 日後,両群ともに IC 注入前値に比し 実数の上で有意に増加 (それぞれ p<0.01) したが,
比率においてはともに有意な減少(それぞれ p<
0.01) が示された.また,免疫群での値は比率にお い て 非 免 疫 群 の そ れ に 比 し 有 意 に 低 値(p<
0.01)であった.
5 日後,両群の値は 2 日後に比し実数において 減少し,比率においては逆に増加した.このうち 免疫群の値は IC 注入前値に比し比率において有 意減少(p<0.01)が持続した.また,非免疫群に 比し免疫群の値は実数において有意に高値(p<
0.01),比率においては有意に低値(p<0.01)が示 された.
16 日後,両群ともに IC 注入前値への回復傾向
Table 1 Changes in cell analysis in BALF after intratracheal injection with alginate induced immune complex.
Day16 Day5
Day2 Day0
Total cell count
± 0.15 1.70
± 0.14 1.81
± 0.15◇◇
3.73
± 0.21 1.62
(× 105/ml)
Non immunized Mice
± 0.32 * 2.20
± 0.28◇** 3.02
± 0.60◇◇*
4.31
± 0.37 1.81
(× 105/ml)
Immunized Mice
Macrophage
± 0.09 1.41
± 0.19 1.43
± 0.10◇◇
2.42
± 0.15 1.37
(× 105/ml)
Non immunized Mice
± 3.2 83.2
± 4.0 79.1
± 1.5◇◇
65.0
± 2.6 84.6
(%)
± 0.30 1.67
± 0.16 * * 1.90
± 0.33◇◇
2.52
± 0.35 1.45
(× 105/ml)
Immunized Mice
± 3.5◇*
75.6
± 3.7◇◇* * 63.1
± 3.6◇◇* * 58.6
± 2.9 * 79.7
(%)
Neutrophil
± 0.01 0.06
± 0.01◇◇
0.10
± 0.07◇◇
0.76
± 0.02 0.05
(× 105/ml)
Non immunized Mice
± 0.6 3.8
± 0.5◇◇
5.5
± 1.4◇◇
20.4
± 0.9 2.8
(%)
± 0.02◇◇* * 0.12
± 0.08◇◇* * 0.44
± 0.29 ◇◇*
1.01
± 0.02 0.07
(× 105/ml)
Immunized Mice
± 0.5** 5.5
± 3.0◇◇* * 14.7
± 4.1◇◇
23.3
± 1.5 4.2
(%)
Lymphocyte
± 0.07 0.22
± 0.09 0.28
± 0.05◇◇
0.54
± 0.02 0.20
(× 105/ml)
Non immunized Mice
± 4.5 13.1
± 4.3 15.4
± 1.3◇ 14.4
± 0.6 12.6
(%)
± 0.17 0.38
± 0.17◇ 0.48
± 0.20◇◇
0.66
± 0.11 0.25
(× 105/ml)
Immunized Mice
± 5.0 16.6
± 5.7 15.8
± 3.8 15.1
± 4.0 13.8
(%)
Cell Analysis was observed on each day after intratracheal injection with 40 μl of alginate induced IC solution.
Neutrophil count on the day 2nd after intratracheal injection was increased in both the immunized group and the non-immunized one (p < 0.01). It was more increased in the immunized group than that in the non-immunized one(p < 0.05) . It was gradually decreased as time passes. At final stage (on 16th) the sig- nificantly higher value was still remained in the immunized group (p < 0.01).
Lymphocyte count was also increased in both groups(p < 0.01)on the day 2nd, but it was decreased in both groups.
Macrophage count was also increased in both groups on the day 2nd.
The mark ◇ means significant differences comparing with the value on the day 0.(◇ :p < 0.05, ◇◇: p < 0.01)
The mark * means significant differences bwtween both the immunized group and the non-immunized one.(*: p < 0.05, **: p < 0.01)
がみられたが,免疫群の値は比率において IC 注 入前値に比し有意減少(p<0.05)が持続した.ま た,非免疫群に比し免疫群では比率において有意 に低値(p<0.05)であった.
これらマクロファージの変化における実数と比 率の解離は,後に述べる好中球やリンパ球増加に よる比率としての低下によるものと解せられた.
b:好中球
好中球の IC 注入前値は,両群間に有意差は示 されなかった.
IC 注入 2 日後,両群ともに IC 注入前値に比し 実数および比率において有意(それぞれ p<0.01)
に増加した.また,免疫群での値は非免疫群との
比 較 に お い て 実 数 に お い て 有 意 に 高 値(p<
0.05)であった.
5 日後,両群ともに 2 日後の値に比し減少した が,この時点でも両群の値は IC 注入前値に比し 実数および比率とも有意(それぞれ実数,比率と も p<0.01) に高値が維持されていた.なお,免疫 群での値は非免疫群に比し実数,比率ともに有意 に高値(それぞれ p<0.01)であった.
16 日後,両群とも 5 日後の値に比しさらに減少
し IC 注入前値への接近傾向が示されたが,免疫
群では実数において IC 注入前値に比しなお有意
に高い値(p<0.01)が持続した.また,免疫群で
の値は非免疫群に比し実数,比率ともに有意に高
Table 2 Changes in CD4 + lymphocyte after intratracheal injection with alginate induced immune complex
day16 day5
day2 day0
± 4.2 34.3
± 3.2◇◇
24.8
± 3.9◇◇
40.8
± 2.7 36.0
(%)
non-immunized mice
± 0.02 0.08
± 0.01 0.07
± 0.03◇◇
0.22
± 0.01 0.07 cell count(× 105/ml)
± 2.0** 46.7
± 2.6◇◇* 30.0
± 1.9◇ 37.7
± 3.2 ** 44.9
(%)
immunized mice
± 0.08** 0.18
± 0.05* 0.14
± 0.07◇◇
0.25
± 0.05 0.11 cell count(× 105/ml)
CD4 + lymphocyte was observed on each day after intratracheal injection with 40 μ l of alginate induced IC solution.
Each value was calculated from the ratio of CD4 + lymphocyte to total lymphocyte.
In the non-immunized group, the ratio of CD4 + lymphocyte was increased on the day 2nd (p < 0.01) and it was decreased on the day 5th (p < 0.01). On the day 16th, it was recovered to the value at the base line.
In the immunized group, the value was decreased on the day 2nd and the day 5th (p < 0.05, p < 0.01). On the day 16th, it was recovered.
The value in the immunized group was significantly higher than that in the non-immunized group on the day 5th and the day 16th.
The mark ◇means significant differences comparing with the value on the day 0. (◇:p < 0.05,
◇◇:p < 0.01)
The mark * means significant differences between both the immunized group and the non- immunized one. (*:p < 0.05,* * :p < 0.01)
値(それぞれ p<0.01)であった.
C:リンパ球
リンパ球の IC 注入前値は,両群間に有意差は 示されなかった.
IC 注入 2 日後,両群ともに IC 注入前値に比し 実数において有意に増加 (それぞれ p<0.01) した.
これらを比率で観察すると免疫群では有意増加は なく非免疫群でのみ有意に増加(p<0.05)した.
しかしながら,両群間には有意差は示されなかっ た.
5 日後,実数の点で両群とも 2 日後の値に比し 減少したが,免疫群でのみ IC 注入前値に比し有 意に高い値(p<0.05)が維持されていた.しかし ながら両群間に有意差は示されなかった.また,
比率においては両群とも IC 注入前値との間に有 意差は示されず,かつ両群間の有意差も示されな かった.
16 日後,両群の値は実数および比率とも IC 注 入前値への回復傾向がみられ,両群間に有意差は 示されなかった.
(3)小括
以上,両群ともに総細胞数およびマクロファー ジ,好中球,リンパ球各々の総数は,IC 注入 2 日 後で増加を認め,以降は減少し回復傾向がみられ たが,免疫群のほうが全体的に回復が遅延し特に 好中球での回復が遅延してみられた.
2)BALF 細胞表面マーカーの解析
(1)リンパ球 CD4+細胞の変化(Table 2)
全リンパ球に対する CD4+細胞の比率は,IC 注入前値で免疫群が非免疫群に比しすでに有意に 高値(p<0.01)であった.
IC 注入 2 日後,非免疫群の値は IC 注入前値に 比し有意に増加(p<0.01)したが,免疫群の値は 逆に IC 注入前値に比し有意に減少(p<0.05)し た. しかしながら, 両群間に有意差は示されなかっ た.
5 日後,両群の値は IC 注入前値に比し有意に減
少(それぞれ p<0.01)した.また,免疫群での値
は非免疫群のそれに比し有意に低値(p<0.05)で
あった.
Table 3 Changes in CD4 + CD45 + lymphocyte after intratracheal injection with alginate induced immune complex
day16 day5
day2 day0
± 3.7 13.0
± 3 .2 8.0
± 9.6 13.2
± 3.4 12.1
(%)
non-immunized mice
± 0.01 0.03
± 0.00 0.02
± 0.06 0.07
± 0.00 0.02 cell count(× 105/ml)
± 2.0◇◇ * * 36.7
± 2.6◇* * 20.0
± 1.9 16.0
± 3.2 13.9
(%)
immunized mice
± 0.06◇ * * 0.14
± 0.04◇ ** 0.10
± 0.02◇◇
0.10
± 0.02 0.04 cell count(× 105/ml)
CD4 + CD45 + lymphocyte was observed on each day after intratracheal injection with 40 μ l of alginate induced IC solution.
Each value was calculated from the ratio of CD4 + CD45 + lymphocyte to total lymphocyte.
In the immunized group, the ratio of CD4 + CD45 + lymphocyte was increased on the day 5th and day 16th(p < 0.05,p < 0.01).
The value in the immunized group was significantly higher than that in the non-immunized group on the day 5th and the day 16th(p < 0.01,p < 0.01).
The mark ◇ means significant differences comparing with the value on the day 0.(◇:p < 0.05,◇◇:p < 0.01)
The mark * means significant differences between both the immunized group and the non- immunized one.(*:p < 0.05, ** :p < 0.01)
Table 4 Changes in CD8 + lymphocyte after intratracheal injection with alginate induced immune complex
day16 day5
day2 day0
± 4.8 35.0
± 5.1◇◇
18.0
± 4.7◇◇
43.5
± 3.7 35.0
(%)
non-immunized mice
± 0.04 0.08
± 0.03 0.05
± 0.04◇◇
0.23
± 0.01 0.07 cell count(× 105/ml)
± 2.4◇◇* * 51.0
± 2.3◇ ◇* * 31.3
± 3.6◇◇
48.6
± 3.4* 40.5
(%)
immunized mice
± 0.09◇*
0.20
± 0.06* * 0.15
± 0.10◇◇
0.32
± 0.05 0.10 cell count(× 105/ml)
CD8 + lymphocyte was observed on each day after intratracheal injection with 40 μ l of alginate induced IC solution.
Each value was calculated from the ratio of CD8 + lymphocyte to total lymphocyte.
In the non-immunized group, the ratio of CD8 + lymphocyte was increased on the day 2nd(p < 0.01)and it was decreased on the day 5th(p < 0.01). On the day 16th, it was recovered to the value at the base line.
In the immunized group, the value was increased on the day 2nd(p < 0.01). On the day 5th, it was decreased(p < 0.01). It was increased again on the day 16th(p < 0.01).
The value in the immunized group was significantly higher than that in the non-immunized group on the day 5th and the day 16th.
The mark ◇ means significant differences comparing with the value on the day 0. (◇:p < 0.05,◇◇:p < 0.01)
The mark * means significant differences between both the immunized group and the non- immunized one.(*:p < 0.05, ** :p < 0.01)
16 日後,両群の値は IC 注入前値への回復傾向 が示されたが,IC 注入前値同様免疫群での値は非
免疫群のそれに比し,有意に高値 (p<0.01) であっ
た.
Table 5 Changes in CD8 + CD11b − lymphocyte after intratracheal injection with alginate induced immune complex
day16 day5
day2 day0
± 3.9 20.2
± 11.0 17.7
± 6.3◇◇
27.3
± 5.4 16.4
(%)
non-immunized mice
± 0.02 0.05
± 0.02 0.05
± 0.04◇◇
0.15
± 0.01 0.03 cell count(× 105/ml)
± 3.9◇◇ * * 31.4
± 2.0◇ 21.3
± 3.4◇◇* * 38.1
± 3.3* 25.7
(%)
immunized
mice
± 0.07◇*
0.12
± 0.04* 0.10
± 0.10◇◇*
0.25
± 0.03 0.07 cell count(× 105/ml)
CD8 + CD11b − lymphocyte was observed on each day after intratracheal injecton with 40 μ l of alginate induced IC solution.
Each value was calculated from the ratio of CD8 + CD11b − lymphocyte to total lymphocyte.
In the non-immunized group, the ratio of CD8 + CD11b − lymphocyte was increased on the day 2nd(p < 0.01). On the day 5th and the day 16th, it was recovered to the value at the base line.
In the immunized group, the value was increased on the day 2nd and the day 16th (p < 0.01,p < 0.01).On the day 5th, it was decreased(p < 0.05).
The value in the immunized mice was significantly higher than that in the non-immunized mice on the day 2nd and the day 16th.
The mark ◇ means significant differences comparing with the value on the day 0. (◇:p < 0.05,◇◇:p < 0.01)
The mark * means significant differences between both the immunized group and the non- immunized one.(*:p < 0.05, * * :p < 0.01)
(2)リンパ球 CD4+CD45+細胞の変化(Table 3)
全リンパ球に対する CD4+CD45+細胞の比率 は,IC 注入前値で両群間に有意差は示されなかっ た.
IC 注入 2 日後,両群の値は IC 注入前値に比し 有意な変化はみられなかった.
5 日後,免疫群の値は IC 注入前値に比し有意に 増加(p<0.05)し,非免疫群のそれに比し有意に 高値(p<0.01)であった.
16 日後,免疫群の値は IC 注入前値に比しさら に増加(p<0.01)し,非免疫群のそれに比しても 有意に高値(p<0.01)であった.
(3)リンパ球 CD8+細胞の変化(Table 4)
全リンパ球に対する CD8+細胞の比率は,IC 注入前値で免疫群が非免疫群に比しすでに有意に 高値(p<0.05)であった.
IC 注入 2 日後,両群の値は IC 注入前値に比し 有意に増加(それぞれ p<0.01)した.両群間の比 較においては有意差は示されなかった.
5 日後,両群の値は IC 注入前値に比し有意に減 少(それぞれ p<0.01)したが,免疫群での値は非 免疫群のそれに比し有意に高値(p<0.01)であっ た.
16 日後,非免疫群の値は IC 注入前値に復した が,免疫群で IC 注入前値に比し有意に増加(p
<0.01) し, その値は非免疫群のそれに比しても,
有意に高値(p<0.01)であった.
(4)リンパ球 CD8+CD11b−細胞の変化(Ta- ble 5)
全リンパ球に対する CD8+CD11b−細胞の比 率は,IC 注入前値で免疫群が非免疫群に比しすで に有意に高値(p<0.05)であった.
IC 注入 2 日後,両群の値は IC 注入前値に比し 有意に増加(それぞれ p<0.01)したが,免疫群で の値は非免疫群のそれに比し有意に高い値(p<
0.01)が維持された.
5 日後,両群の値は 2 日後のそれに比し減少し,
非免疫群で IC 注入前値への回復傾向がみられた
が,免疫群での値は IC 注入前値に比し有意に減
Table 6 Changes in CD16/32 expression on neutrophil after intratracheal injection with alginate induced immune complex
day16 day5
day2 day0
± 3.7 34.4
± 6.5◇ 39.1
± 7.7◇◇
57.2
± 6.2 31.5
(%)
non-immunized mice
± 0.00 0.02
± 0.01◇◇
0.04
± 0.08◇◇
0.44
± 0.01 0.02 cell count(× 105/ml)
± 3.6◇*
25.3
± 5.9* 24.8
± 3.9◇◇** 15.5
± 4.0 31.2
(%)
immunized
mice
± 0.01◇ 0.03
± 0.03◇◇** 0.11
± 0.09◇** 0.17
± 0.01 0.02 cell count(× 105/ml)
CD16/32 expression on neutrophil was observed on each day after intratracheal injection with 40 μ l of alginate induced IC solution.
Each value was calculated from the ratio of CD16/32 positive neutrophil (with the expression of Fc- γ recepter on it) to total neutrophil.
In the non-immunized group, the ratio of CD16/32 expression on neutrophil was increased on the day 2nd and the day 5th (p < 0.01,p < 0.05).On the day 16th, it was recovered to the value at base line.
In the immunized group, the value was decreased on the day 2nd and the day 16th (p < 0.01,
p < 0.05).
The value in the immunized group was significantly lower than that in the non-immunized mice at all points.
The mark ◇ means significant differences comparing with the value on the day 0. (◇:p < 0.05, ◇◇:p < 0.01)
The mark * means significant differences between both the immunized group and the non- immunized one.(*:p < 0.05, * * :p < 0.01)
少(p<0.05)した.
16 日後,免疫群の値は IC 注入前値に比し有意 に増加(p<0.01)し,その値は非免疫群のそれに 比し有意に高値(p<0.01)であった.
(5)好中球表面マーカー CD16 32 の変化(Ta- ble 6)
全好中球に対する CD16 32 の発現の比率は, IC 注入前値で両群間に有意差は示されなかった.
IC 注 入 2 日 後,非 免 疫 群 で 有 意 に 増 加(p<
0.01)し,一方,免疫群で有意に減少(p<0.01)し た.すなわち免疫群の値は非免疫群のそれに比し 有意に低値(p<0.01)であった.
5 日後,両群とも IC 注入前値への回復傾向がみ られたが,非免疫群は IC 注入前値に比し有意に 増加(p<0.05)した.また,免疫群での値はこの 時期においても非免疫群のそれに比し有意に低値
(p<0.05)であった.
16 日後,非免疫群において IC 注入前値に復し たが,免疫群での値は IC 注入前値に比し有意に
減少(p<0.05)が持続した.また,免疫群での値 は非免疫群のそれに比し有意に低値(p<0.05)で あった.
(6)小括
非免疫群において IC 注入 2 日後,CD4+細胞の
比率は増加したが,CD4+CD45+細胞の比率には
変化がみられなかった.CD8+細胞,CD8+CD11
b−細胞の比率はともに増加し,また好中球中の
CD16 32(Fc- γ 受容体)の表出率も増加した.5
日後,CD4+細胞の比率は IC 注入前値に比し減少
したがやはり CD4+CD45+細胞の比率は変化が
みられなかった.CD8+細胞の比率は IC 注入前値
に比し減少, CD8+CD11b−細胞の比率は IC 注入
前値に復した.好中球 CD16 32(Fc- γ 受容体)の
表出率は 2 日目の値に比し減少したが IC 注入前
値に比してはいまだ高い値であった.16 日後,CD
4+細胞,CD8+細胞の比率,および好中球 CD16
32(Fc- γ 受容体)の表出率も IC 注入前値に復し
た.
Fig. 1 Microscopic findings of the mice lung tissue on the day 2nd.
The pictures show the histological findings of mice lung on the day 2nd after intratracheal injection with 40µl of alginate in- duced immune complex. In the non-immunized mice, slightly thickening of the alveolar wall and the infiltration of macro- phages and lymphocytes into the alveolar wall were seen(1a). But these findings were remarkably in the immunized mice
(1b). ×200
Fig. 2 Microscopic findings of the mice lung tissue on the day 16th.
The pictures show the histological findings of mice lung on the day 16th after intratracheal injection with 40µl of alginate in- duced immune complex. There were no abnormal findings in the non-immunized mice(2a).In the immunized mice, the al- veolar wall thickening and the infiltration of lymphocytes into the alveolar wall were seen(2b). ×200
免疫群においては IC 注入 2 日後,リンパ球 CD 4+細胞の比率は IC 注入前値に比し減少したが CD4+CD45+細胞の比率は変化がみられなかっ た.CD8+細胞,CD8+CD11b−細胞の比率は増加 し,好中球 CD16 32(Fc-γ 受容体)の表出率は IC 注入前値に比し減少した.5 日後,CD4+細胞の比 率はさらに減少したが,CD4+CD45+細胞の比率 が IC 注入前値に比し増加した.CD8+細胞,CD 8+CD11b−細胞の比率は IC 注入前値に比し減 少し,2 日目に一度減少した好中球 CD16 32(Fc- γ 受容体)の表出率は回復傾向がみられた.16 日 後,CD4+細胞の比率は IC 注入前値へ回復した が,CD4+CD45+細胞の比率はさらに増加し,さ らに CD8+細胞,CD8+CD11b−細胞の比率も IC 注入前値に比し増加した.一方好中球 CD16 32
(Fc- γ 受容体)の表出率は IC 注入前値に比し減少 した.
以上の成績を概括すると,IC 注入 16 日後,非免 疫群で各細胞が IC 注入前の状態に回復したのに 対し,免疫群では,CD4+CD45+細胞,CD8+細 胞,CD8+CD11b−細胞の比率の増加と好中球表 面上の CD16 32(Fc- γ 受容体)の表出率の減少が みられたものといえよう.
3)肺組織学的変化
(1)非免疫群:2 日後,肺胞壁の軽度肥厚と,マ クロファージ,リンパ球の軽度浸潤がみられた
(Fig. 1a) .16 日後,肺の組織変化においてとくに 病的変化はみられなかった(Fig. 2a) .
(2)免疫群:2 日後,肺胞中隔の有意肥厚が出 現し,マクロファージ,リンパ球の浸潤がみられ た (Fig. 1b) . 16 日後, これら変化は軽減したが,
肥厚した肺胞壁と同部位へのリンパ球の浸潤が残 存した(Fig. 2b) .
考 察
一般に慢性気道感染症において,侵入した緑膿 菌は mucoid 型へ変異し,その菌体から産生され た algitate を核とし細菌 biofilm が形成され,肺局 所に長期定着することが多い.その結果,生体側 においては抗 alginate 抗体が産生され,alginate と抗 alginate 抗体間の免疫反応
6)8)が生じ,これら を含んだ免疫複合体(alginate IC)が形成される.
そしてこの IC が肺組織に沈着することによって 肺組織が破壊され病態の遷延化に関与すると考え られている
1)15).
H φ iby ら
9)は,mucoid 型 緑 膿 菌 感 染 を 伴 っ た cystic fibrosis において LPS に誘導された血液中 IC が肺組織へ沈着することにより,補体が活性化 され好中球の走化および IC への結合がおこり,
これら好中球の遊離物質により肺の組織障害が惹 起され病態が進行することを示した.さらに Ko- bayashi
6)は,mucoid 型緑膿菌感染を伴なったびま ん性汎細気管支炎においては alginate に誘導さ れた IC によって同様の機序で肺の組織障害が発 生することを示している.
一方,びまん性汎細気管支炎の病理組織像は,
呼吸細気管支壁へのリンパ球浸潤と肥厚が特徴的 とされ
10),かかる病理所見とさきの著者による実 験成績を勘案するとこのような所見は長期にわた る mucoid 型緑膿菌感染にともなう alginate に起 因する免疫反応にもとづくものと解されよう.
また,近年,Mukae ら
11)により報告されたびま ん性汎細気管支炎患者の BALF 所見における T 細胞の増加,さらに同じくこれら BALF 中の T 細 胞 は CD8+CD11b-T 細 胞 と CD4+CD29+T 細胞の増加が主体であるとした Kawakami らの 報告
16)などから,これら慢性緑膿菌気道感染症の 病態形成における T 細胞系の関与が重要視され よう.
かかる背景から,本研究は,alginate IC に起因 する気道局所での生体反応を T 細胞との関連の 上で解明する目的で,マウス実験モデルを用い解 析を行った.
今回著者らが実験に供した alginate は LPS を 除去して お り POLYMYXIN 処 理 後 の LPS 濃 度 は 1,725pg mlと CONTROL の純水 2,000pg ml に 比し低値であり,この値は免疫マウス作製に使用 した alginate の総量 420 µ g body に比し極く微量 であり,得られた成績は LPS の影響を受けていな いものと理解された.
以下,得られた成績を順次考察する.
(alginate IC 気管内注入 2 日後)
IC 注入後の急性期変化としてこの時点で観察
した.
BALF 中細胞は,非免疫群,免疫群ともに総細 胞数が増加し, その内訳においてマクロファージ,
好中球,リンパ球とも増加したが,実数において 好中球増加が顕著であった.
田ノ上ら
17)は,卵白アルブミンで免疫したウサ ギ IgG より作製した免疫複合体をモルモットに 気管内注入した実験で, 注入後 24 時間の初期にお いて BALF 中で好中球の有意増加を認め,その後 マクロファージと単核球を中心とした炎症像に変 化したことを報告し,Ward ら
18)も,子牛血清アル ブミンとウサギ IgG にて作製した免疫複合体を ラットに気管内注入した実験で,注入 6 時間後で は,肺胞内に多数の好中球の集積を伴った出血性 肺胞隔炎の所見を認め,24 時間以降で単核球を中 心とした炎症に変化したとしている.さらに武 田
19)はマウスに各種菌および菌体成分を注入した 実験系においても同様な現象を報告し,本実験で の BALF 中総細胞における結果をこれら成績と 照合した場合もほぼ同様な変化といえよう.した がって,これら初期の時点における好中球を主体 とする各細胞成分の増加は,alginate IC 注入によ る特異的変化ではなく,むしろ異物侵入に対する 肺局所の非特異的な急性反応と解することが妥当 であろう.
しかしながら,好中球表面上の Fc- γ 受容体 CD 16 32 の表出は,非免疫群で増加したが,免疫群で は,その増加は非免疫群に比し有意な抑制がみら れた.
一般に Fc- γ 受容体は,オプソニン化された抗原 を認識する事による貪食あるいは細胞障害性物質 の産生に重要な役割を有しているとされる.しか し,好中球と alginate の間の干渉作用はきわめて 乏しく,alginate 存在下では好中球走化性やスー パーオキサイド産生活性も有意に乏しいことが報 告されており
15)20)21),また坂川
14)は,alginate 免疫 マウスに alginate を気管内注入した場合,好中球 Fc- γ 受容体の発現は有意に減少することを示し て い る.し た が っ て,本 実 験 す な わ ち alginate 免疫複合体注入で観察された好中球 Fc- γ 受容体 の抑制は渡辺ら
15)21)および Pedersen ら
20)が別の実
験系で指摘した alginate に対する好中球の走化 性と活性化の低下に起因する反応と考えるのが理 解し易い.すなわち免疫群におけるこの時点での 好中球増加は数値の上ではみられたもののむしろ 貪食作用を有する CD16 32 表出好中球の値は低 く,注入された IC の排除に対する作用はむしろ 低下した結果となったといえよう.
一方,リンパ球反応について,非免疫群で CD 4+リンパ球,CD8+リンパ球,CD8+CD11b−リ ンパ球の有意な増加がみられたが,免疫群では CD4+リンパ球で IC 注入前に比し細胞数の増加 はみられたが,全細胞数に対する比率は減少し,
一方で CD8+リンパ球および CD8+CD11b−リ ンパ球は,非免疫群に比し増加した.すなわち非 免疫群ではすべてのリンパ球の増加が顕著であっ たのに対し, 免疫群においては CD8+リンパ球,
特に CD8+CD11b−リンパ球の増加が特徴的で あり,いわゆる CD4 CD8 比の低下 (非免疫群:前 値:1.0→2 日 後:0.9, 免 疫 群:前 値:1.1→2 日 後:0.8)が観察された.このこと は alginate IC 気道内注入に対し,CD8+リンパ球,主に CD8
+CD11b−リンパ球を中心とする特異的細胞性 免疫応答優位状態と解することができる.
また,CD8+リンパ球はサプレッサー T 細胞と 細胞障害性 T 細胞に分類され,前者は CD8+CD 11b+
22),後 者 は CD8+CD11b−
23)と 識 別 さ れ て おり, この BALF 中 CD8+リンパ球の増加は主に 細胞障害性 T 細胞の増加と解せられる.一般に細 胞障害性 T 細胞はウイルス,クラミジアなど細胞 内感染微生物に対して特異的に作用するとされ,
MHC-1 抗原を介する免疫応答と考えられている.
すなわち,免疫群においては一般細菌などの侵入
にともなう MHC-II 抗原を介する反応と異なる
MHC-I 抗原を介する反応が考えられる.しかしな
がら,臨床例において過敏性肺炎を検討すると夏
型は BALF 中 CD4 CD8 比が低下し,農夫肺,鳥
飼病はむしろ CD4 CD8 比は増加することが知ら
れ,抗原の性状により細胞性免疫応答が異なるこ
とが考えられている
24).つまり,異なった抗原に
よって感作された病態においてはそれぞれ異なっ
た細胞性免疫反応が出現することが示唆され,本
実験成績における免疫群での BALF 中 CD4 8 比 の低下は alginate IC 対する alginate 免疫マウス における特異的な生体反応とも解釈できる.
もちろん現時点でその詳細な原因は明らかでな いが,このような理解は免疫群で BALF 中 CD8
+リンパ球の増加が顕著であったことを説明する 一端となりうるものであろう.
一方,肺組織所見は,非免疫群で肺胞壁の軽度 肥厚とマクロファージ,リンパ球の軽度浸潤,こ れに対し免疫群では肺胞壁の有意肥厚とマクロ ファージ,リンパ球の浸潤が認められ,これら変 化が顕著であった.
これらのことから,この期においては両群とも に急性期反応が惹起されたが,免疫群においての 反応は非免疫群に比し顕著であり,alginate を含 む IC に対する CD8+リンパ球を介した特異的急 性反応が含まれているものと解される.
(alginate IC 気管内注入 5 日後)
IC 注 入 後 の 急 性 期 反 応 の 変 化 を 追 跡 し た.
BALF 中細胞は,両群ともに 2 日後に比し総細胞 数,細胞分画のマクロファージ,好中球リンパ球 のそれぞれは減少傾向を示し,すなわち急性炎症 の回復期といえよう.事実,好中球は両群とも IC 注入前値より増加は示したものの 2 日後の値に比 し著明に減少しており,マクロファージについて も同様であった.しかしながら,免疫群において は好中球,マクロファージは非免疫群に比し高値 であり,この群においては急性初期反応の寛解修 復が遅延傾向にあるものと考えられた.
なお,好中球表面上 Fc- γ 受容体の表出は,非免 疫群では 2 日後に比し減少し,回復傾向がみられ たが,免疫群では 2 日後に比し比率は回復傾向が みられたものの表出細胞数は,未だ抑制傾向に あった.免疫群では,2 日後の好中球表面上 Fc- γ 受容体の表出低下により alginate IC の排除が遅 延し,5 日後もこれら変化が持続したものと考え られた.
BALF 中リンパ球については,両群とも CD4
+リンパ球数は前値へ復したが, 比率では減少し,
免疫群における CD4+CD45+リンパ球数は,前 値に比し増加を示した.また,CD8+リンパ球数お
よび CD8+CD11b−リンパ球数は両群とも前値 へ復したが,CD8+リンパ球の比率は両群で減少 し CD8+CD11b−リンパ球の比率は免疫群で減 少した.両群における CD4+リンパ球,CD8+リ ンパ球の比率の減少と免疫群での CD8+CD11b
−リンパ球の比率の減少は,Th1 優位状態から Th2 優位へと一時的にスイッチされ rebound 的 に免疫反応が抑制された結果とも推せられるが,
詳しい機序は不明といわざるを得ない.また,免 疫群での CD4+CD45+リンパ球の増加は CD45 が抗原感作の際に出現する細胞表面蛋白質である ことから, 残存した alginate IC に対し CD4+リン パ球の一部で再活性化が惹起された.すなわち記 憶 CD4T 細胞が出現した現象
25)と解釈できよう.
以上,この期において alginate IC に対する急性 期反応は回復傾向にあったと考えられたが,両群 でリンパ球の反応が rebound 的に抑制された可 能性も残された.また,免疫群では好中球表面上 Fc- γ 受容体の表出低下と CD4+CD45+リンパ球 の出現は前者により残存した alginate IC に対し て記憶 CD4T 細胞が出現したと考えられた.
(alginate IC 気管内注入 16 日後)
IC 注入後の慢性期変化の発現時点として観察 した.
BALF 中細胞は,両群とも総細胞数,細胞分画 のマクロファージ,リンパ球数は,ほぼ IC 注入前 値へ復し,非免疫群においては好中球数も前値に 復した.しかし,免疫群において好中球数は回復 傾向にあるものの,IC 注入前値に比しその数値は 高値が継続していた.このことは免疫群において 好中球表面上 Fc- γ 受容体の表出が低いことから 好中球の alginate による干渉低下が存在し,この ため注入 IC の長期存在による好中球集積の結果 と考えられた.
一方,BALF 中リンパ球は非免疫群でそれぞれ IC 注入前値へ復したが, 免疫群では CD4+リンパ 球が IC 注入前値へ復したものの,CD4+CD45+
リンパ球,CD8+リンパ球,CD8+CD11b−リンパ 球の増加がみられた.
CD8+CD11b−リンパ球は,細胞障害性 T 細胞
と考えられており
23),免疫群においては,IC 残存
に伴う CD8+リンパ球,特に細胞障害性 T 細胞を 中心とした T 細胞系の特異的反応が惹起されて いると考えられた.一方,CD4+CD45+リンパ球 すなわち記憶 CD4T 細胞の増加の意義について は現時点で明らかでないが,IC 沈着に対する記憶 CD4T 細胞の出現は,再度の抗原刺激に対し過剰 な防御免疫反応を惹起するものと推測されよう.
これら所見は,この期においては少なくとも alginate 免疫状態における慢性期での特異的な生 体反応の可能性を示唆するものであり,またこの 時点での肺組織所見において,非免疫群では病的 変化はみられず,免疫群では肥厚した肺胞壁にリ ンパ球の集積がみられたことを含め,これら反応 が alginate に端を発する気道炎症の慢性期への 成立機序を示唆したものといえよう.
(総括)
免疫群におけるこの一連の反応は,まず好中球 の alginate に対する干渉低下により好中球の Fc- γ 受容体の表出低下が生じ,好中球は集積するも のの alginate IC の排除が十分行われず,組織沈着 した alginate IC にリンパ球が持続的に反応し,急 性期反応後である IC 注入 5 日後から,残存した alginate IC に対し記憶 CD4T 細胞が出現し,さら に慢性期変化の発生時点と考えられる IC 注入 16 日後には CD8+T 細胞の活性化,特に細胞障害性 T 細胞の活性化が惹起されるという一連の生体反 応と解釈できる.
以上,得られた実験的成績および文献的考察か ら緑膿菌気道炎症の慢性・遷延化の病態を総括す ると初期段階の alginate に対する好中球系反応 の低下,またその結果としてもたらされた algi- nate IC の組織内残存による T リンパ球系作用の 誘導もその一因として重要であることが考えられ た.さらに記憶 T 細胞の出現は反復する気道炎症 への関与が推測され,これら所見は本症の進展病 態を考える上で重要な一因であることが考えられ た.
稿を終えるにあたり,終始御指導を賜り,また論文の校 閲を賜りました第一内科,小林宏行教授ならびに河合伸助 教授に深甚なる謝意を表するとともに直接的に御指導い ただいた渡辺秀裕講師に深謝いたします.また,御協力い
ただいた研究員の皆様に感謝いたします.
文 献
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Motofumi LING
First Department of Internal Medicine, Kyorin University, School of Medicine