• 検索結果がありません。

会社設立と均衡分析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "会社設立と均衡分析"

Copied!
22
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

−β9一   125  

会社設立と均衡分析  

−  ビジネス・エコノミックスの  

課題分析を中心として一  

井  上  勝  人  

Ⅰ序  

企業は一つの経営社会を形成し,制度的存在として持続し成長・発展する。㌧  

それが一つの社会であるかぎり,見る人に・よりどここに・重点をおくかに・よって−さ   まざまな見地と方法が採られ,どのような解釈も許されることとなる。けだし  

いろいろな学派の生ずる所以である。しかし,何といっても,企業が経済的存在   であり,経済単位としてその最も重要な機能の一を果すことは何人も否定し得   ないところであろう。かくして企業に閲す・る研究はさまざまな見地と方法でお  

(1)  

こなわれ得るが,その経鱒学的研究は企業の部分的全体(Teilganzes)を構成す   るところの価値の流れの側面を対象とし,極申て重要な分野を形成している。   

ところで企業を経済学的に理解しようとする考えは長い伝統を有し,それ自   体決して一新しい試みではない。そしてそれはまずマルクヌ経済学に基礎をおく   個別資本説と近代経済学紅依拠する近代経済学派に大別できるであろう○しか  

しわれわれはかかる企業に関する経済学的研究のうち,後者すなわち近代経済   学の成果を積極的に援用するグループとして一所謂ビジネス・エコノミツクスに   ついて研究しようとするものである。   

ビジネス・エコノミックスは主として第二次大戦後,アメリカに於て開花し   た企業に関する経済学的研究であるが,わが国に於てほ企業に・関する技術的・  

社会的研究に比しあまり吸収されておらず,昨今のリニヤ−・プログラミング  

(1)技術的施設としての経営,経済的設備と↓ての経営,心理的問題としての経営,法的   

施設としての経営,何れの経営もー雇の見地から見られたる部分的全体としての経営で   

ある。山本安次郎著「経営管理論」108肩:。   

(2)

126   第4Ⅰ巻 第2号   

ー4ク ーー  

などオぺレーションズ・リサーチの展開を思うとき,より一層の研究が痛感さ   れるのである。けだしORの研究はmethodNOrientedなものであり,それ自体   意味のつながりを有しないので,function−Orientedなるビi7ネス・エコノミッ  

(2)  

クスに.沿って整序される必要があるからである。ところでど汐一ネス・エコノミ   ックスは,前述した如く企業に.関する経済学的研究であり,その対象とすると   ころは所謂企業の経済過程である。従って−ビジネス・エコノミックス自体も数   豊的分析をそのうちに含み,そ・の量的規定の問題も解決しようとするものであ   るが,さらに付言すべきは,ビジネス・エコノミックスが単に企業の経済過程   を数量的に分析するにとどまらず,更紅加え七経営の藷制度との関連におい   て,特に.経営者の意思決定機能との結びつきにおいて;、企業の経済現象を理解   しようとする努力を示していることである。他方に於て,経営に・おけるORは   その名の示す如く経営のオぺレーションズの探求であ¢,オぺレ−リヨンズ   は,一・V3乃至p・組の指令から結果される活動(activity)である。括動は指令に 

より規定され,指令は経営における意思決定から生まれるから,ORは.意思決  

し3)  

定のための未知のものの探究を意味することとなる。換言すれば,オぺレーシ   ョンズとはあらかじめ計画をたて,準備をしておこなう行動であり,これらの   行動を研究することに.よって−経営の意思決定に資するものである。かくて意思   決定に関する科学化という点を媒介としてど汐.ネス・エコノミックスとORと   は相互に補充し合う関係にあることは明らかである。即ち,ビジネス・エコノ   ミックスは経営に関するORの対象乃至内容の具体化的方向に.於ける位置づけ   を志向し,経営に関するORはビジネス・エコノミックスの方法の深化を斉ら   すであろう。換言すれば,ビジネス・エコノミックスはOR紅内容を提供し,  

ORはビジネス・エコノミ.ツクスに数塁的解決の理論的根拠を提供するともい  

い得よう。かくの如くであるから,両者互に相倹って初めて企業紅於ける数鼠   的研究は完うせられるのである。  

(2)宮川公男稿「ManagerialEconomicsにおける最近の文献について」BusinessReview    VOlい11No.4pp..52−57参照。  

(3)横山保稿「オぺレーションズ・リサーチ」高宮晋編「体系経営学辞典」の内。   

(3)

会社設立と均衡分析  

127    −−jリ ー   

それはとも角として,以下に.於けるわれわれの努力はど汐ネス・エコノミッ   クスの理解特に.ORとの関連乃至結びつきの検討に中心をおくことにする。と   ころで,かかる見地からど汐ネス・エコノミックスを研究するとき,アメリカ   に・於ける斯学の展開の創始者的立場にあるとともに,ビジネス・エコノミック   スに於ける考え方の一・典型を示すものとして,われわれほプカナ・ンをとりあ  

(4)  

げ,ビジネス・エコノミックスにおける問題の所在を明らかにし,さらに.これ   らを比判的に.考察しようと思う。けだし,プカナンほ後述するように.ピ汐ネス  

し5\ ・エコノミックスを未来に.関する経営計算制度樹立の学としてとらえ,しかも  

そ・れを理論的に・取扱える最初の仙人と思われるからである。   

さて,上述の如く,【アメリカに於て初めて企業に関する経済学的研究の重要   性を意識し,理論的に・これを研究せる一一人として,われわれはプカデンの所説   を検討するが,彼紅於て−は,その全体系を統轄するものとして,均衡慮理乃至  

(6)  

最適原理を挙げることができる。蓋し,均衡原理は数晶分析に於ける基本的原   理を構成すると共に,われわれはその法則的把捉を通してのみ諸経営政策の樹   立の基準としてこれを役立たしめることができるからである。  

ところで,均衡原理ほ既に古くから経済学に於て考究せられたところであ   る。すなわち,凡そ経済諸患の相互関係を考察するとき,それらの基本的な要  

(4)Buchanan,N。S.,The Economics of Corporate Enterprise,1940巾   Bucbananの所論については,古く高橋昭三稿,経済的経営価値計算の原理とそ・の意    義−アメリカ把・おける経営「経済学」の展開過程の一偏−,福島大学経済学会商学論    集,第26巻第4号,があるが,それほ個別資本説からの批判で,ORとの関連を追求す   

るわれわれの見解とは大部距離があるよう笹思われる。しかし,この稿を書くに当っ    て,相当参考になったこ占をお断りしておく。  

(5)経営に関する数量的接近法に・は,既に・古くから会計的方法があるが,会計的方法は,   

特紅その財務会計的側面は,回顧的事後的(retrospective)である紅射し,ビジネス・エ    コノミ.ックスの数塩分析は,すぐれて未来志向的(pIOSpeCtive)である。このことは,   

ビジネス・エコノミックスの経済管理的側面が経営内制度的沿革としては腰準思想を中    核とするengineeI萬思考からの発展を意味し,測定・実験。設計を有力な分析方法と考    えている。したがって,ビジネス・エコノミックスほ工学的な経済分析(engineering    economicanalysis)をも固有な領域として‥いるのである。かかる見解については,Rau−   

tenstrauch and Villers,The Economics ofIndustrialManagement,1949.,を参照。  

(6)B11Chanan,ibid,pp.、5−7 

(4)

128  

第41巻 澤2号   

ー 42・−  

真の一−・定の総合として把握する態度乃至考え方として,程度の差はあれあらゆ  

(7) る経済理論にこれを看ることができる。就中,経済諸星の均衡値としてこれを  

(さ)  

連立方程式の解として把握したワルラスの功績ほ,経済学の発達の重要な一里   標として遍く人の知るところである。しかのみならず均衡の原理は,ひとり経済   学のみならず,隼物学・物理学などあらゆる科学に於てそれらの主要課題を形   成し,したがってまたど汐ネス・エコノミックスに於ても当然に.政策樹立に‥お  

(9) ける基本原理をなすことは論を倹た 

数嵐規定の考察として,まずかかる均衡の原理をプカナンに.於て検討し,それ   がビジネス・エコノミックス紅於て如何なる形紅おいて把握ざるべきかを明ら   か軋しょう。  

プカナンは.均衡原理を規定するために.,先ず,経済学(formaleconomics)  

(10)  

とど汐ネス・エコノミックスの差異を論ずることから出発する。蓋し,均衡原   理は経済学の主要課題であり,且つ企業の経済的側面に関する研究もー・応は体   系化されているに.も拘らず,それ紅加えて−ビジネス・エコノミックスを主張す  

るとすれば,当然そこ紅は何らかの積極的意義が存在する筈であり,それに・よ   って均鱒のあらわれ方乃至把嘩の仕方も規定されると考えられるからである。  

而して,彼に.よれば,経済学は代替的な種々の目的紅役立つ稀少財貨の配分の   問題を対象とするものであって,生産と消費の部分的乃至全体的均衡条件を限  

(1り 界分析方法に.よって解明することを目的とする。そしてこの場合の均衡とほ,  

−・のバランスであり,究極的紅は需要と供給の結合する市場現象について構想  

(7)殊に.近代経済学はすぺでその理論構造に.おいて均衡分析の性格を有することほ周知の    とおりである。そしで又,必ずしも均衡へめ収叙位をもたぬところの経済発展の現象さ    えも均衡論的に把撞されていることは,均衡分析の本質から当然に帰結せられるところ    である。けだしその本質とは麿局に.おいて経済現象の−・般的相関関係を把捜する手段に    求められるからである。これらの見解について−は,例えば,中山伊知郎箸「経済学−・般    理論」第4章参照。  

(8)Le旬nWalras,E!le′zzlentSd′e†conomiepoユitiq11e pure,1926.手塚訳,純粋経済学    要論,第4窟参照。  

(9)かかる意味の均衡原理は,根本的に.ほロゴスを意味し,最適均衡,最適釣合を意味す  

0  

る  

日仏 Hu  

P.. 5 

p.  

(5)

129   会社設立と均衡分析   ーー4∂ −  

(12)   

されて.いる。すなわち,経済学はこ.の場合の経済諸鼠の内部依存関係ならびに  その相互変化過程を記述するものと考えられている。ところがビジネス・エコ    ノミ.ックス軋於ては,このような均衡に重大な反作用を及ぼすところの個別企   業の設立から解散にし、たるまでの仝経済過程を対象とし,かかる企業の全経済  

(13) 過程と均衡分析とが考察される。かくて,彼ほ経済学の企業理論がその対象性  

、に.おいて狭陰なることを主張し,ビジネス・.エコノミックスに.おける企業の設立   から解散にJ、たる仝経済過程の分析の必要性を説くと共把.,その際の分析視角    として均衡分析を導入するのである。これを要するに.,プカナンめ主張すると    ころほ,ビジネス・エコノミックスの存在意義として(1)企業の設立から解散に   至るまでの仝経済過程の研究が必要であり,(2)それらと関連せしめつつ分析の   用具として均衡概念を援用することである。われわれほこれらの2点につい    て,特に.企業の新設問題と均衡分析とを中心紅彼の所説を検討する。   

上述の如く,  プカナンがピ汐ネス・、エコノミックスを近代経済学の企業論に  加えて積極的紅主張する論拠は,ビジ.ネス・羊コノミックスが企業の設立から   解散に・至るまでの全経済過程を対象とするということが,その一つであった。  

すなわち,彼はビジネス・エコノミックスを企業の経常的活動に・おける経済分   析を扱うのみならず,それ紅加えて企業の新設・拡張・解散など中経済分析を   対象とするものとして展開するのである。この企業の新設・拡張・解散などの    いわゆる組織化問題を中心に.・その劃つの過程として企業の経常的行動を考察す    るところに.彼の所説の特色が見られる。われわれは彼の組織化問題のうち企業    の設立(promotion)に焦点を絞り,彼がビジネス・、エコノミックスの持つ,近   代経済学の企業論に対しての相対的独良性と主隠する論拠を検討する。けだし    企業の組織化問題は資本設備そのものの改変を扱う領域として,いわゆるマ  

(14)  

一打ヤルの謂う長期均衡の問題でありそ・のことは企業の新設問題を代表として   考察することに.より,ビジネス・エコノミックスの存在意義を主張する論拠の   a2)Op.cit.,pp。6−7.  

u3)Op.cit.,p.3.,p.142小  

(14) Marshal1,A,PrinciplesofEconomics,8th ed.,1920,BookV,Chs,iii−V・   

(6)

130   寛41巻寛2号   

ーJJ−  

考察としてほ足りると考えるからである。  

ⅠⅠ会社設立と均衡分析  

われわれがビジネス・エコノミックスの代表者としてここに登場せしめるプ  

(15)  (16)  

カナンの著書ほ時間的にはそれに.先立つクラー・クやダーグェンボー・トと同列に  鹿かるぺきものと思われる。けだし,著者の意図はとも角,後述するように,  

明確に管理問題との関連を意識せず,内容的紅は経済学の企理理論ど殆んど差   別なしに企業の経済問題を取扱え.る山人であるからである。しいてそ・れらの区   別を求めれば,資本市場・資本調達・資本効率・資本会計など組織化財務の問   題として展開され,いわば経済学と会計学との混血児的内容に.ある。それ闇と  

も角,プカナ・ンの企業新設と均衡分析に.関する意見は次の如くである。   

彼は企琴の新設を先づ或る業種もしくほ産業への新競争者の参入として把捉  

(17) する。そしてかかる参入は,当初は当該産業に.於ける既存企業の獲得している  

利潤の 

と,・そ・こには経済資源の再配分がおこなわれる結果,何らかの不均衡状態を招   来するから,新参者の市場流入はかかる意味で均衡からの逸脱に鳳するものと  

(18)  

みる。そこで彼は企業設立の経済問題を論ずるに当り,均衡分析の意味を考察  

(19)  

することから出発する。  

、均衡分析とは,彼によれば,生産技術などの与件の変化せぬ限りこれ以上の   適応が何ら利益を斉らさないような生産物,生産費真の需給量ならびに価格の  

(20)  

決定に.存する。その為に・は生産物・生産要素などの多くの市場均衡が論ぜられ   ると共紅,企業自体の均衡を解明することが必要である。而して企業は価格機構   を媒介として市場経済の網の目に.織込まれるから,市場均衡と企業均衡とを遵   仏5)Clark,J.,M.,The Economicsof Overhead Cost,1923  u6)Davenport,H.,J.,The Economics of Enterprise,1923.  

u恥u8)Buchanan op.cit。,p。143。企業新設の問題は,それ自身紅特有の複雑性から,   

−・般化することは困難であるけれども,プカナンはこれの経済問題に.限定して考察する。   

しかし,これとても,市場形態,独立心や予想といった心情の問題など雑多な要因が影    響するが,プカナンほ理論的紅してかつ実際的な考察で推論を進める。  

u9,(鋤 Op.,Cit.,p。142 

(7)

会社設立と均衡分析  

131    −−4鳩 −  

(21) 結する共通項ほ価格体系である。従って均衡分析とほ隼産物であれ生産要素で  

あれ財の需給畢をも含めて,かかる価格体系の決定を論ずること紅あると云え   る。さて,企業新設は上述した如く,−・の不均衡的事象に.属するが,かかる不   均衡状態はいずれ消滅する性質のものであって,しかる後新たなる均衡へと達  

(22)  

する。従って企業の新設は均衡から不均衡へそして又均衡へと連鎖するそれ自   体均衡概念,特に.資本設備の増廃に.関係するところの長期均衡概念に密着せる   概念であって,新設の経済問題の考察ほすぐれて市場ならびに.企業自体の均衡   分析としての性格を有するのである。   

さて,われわれが市場均衡を問題とするとき,そこに・如何なる市場形態を考   えるかに.よって,以後の分析に重大なる影響をうけるのであるが,彼はこれを  

(23) 大規模企業による独占的競争を前提として出発する。けだし,彼によれば,経  

済学における純粋競争と完全知識(purecompetitionandperfectknowledge)  

は多分に仮想的モデルに過ぎず,他の市場形態との論理的脈絡を持っていない  

(24) からである。而してかかる競争構造紅おいては,彼の定義する企業は存在する  

余地ほなくかかる場合はすべて価格機構に.よって\スムースに生産が規制される   とす・る。けだし企業とは価格機構の枠内で経営者の意識的支配のもとに.おかれ   ている生産体であり,そ・こに市場均衡に反作用を及ぼす主体的構造として把握  

(25) されるとき概念されるものであるからである。   

ところで 

ilibrium of the firm)に.到達していなければ,市場均衡はもとより成立しな   いことは明らかである。彼のど汐ネス・エコノミックスは,かかる市場経済均   衡に資すべき経営実践の原理的基準としての経営計算制度の確立紅あるのであ   C21)Op.,Cit.,pp.10−15・  

e2)Op.,Cit.,p.6.,p..143u  

脚 Op.,Cit.,pp.25−26・p.449.われわれの感覚では,現実的には最もティピカルな    市場形態ほ生産物の差別化をともなったオリゴポリ−であ卑と思われるのであるが,プ    カナンはオリゴポリ−という言葉を使わない。いわゆるカLリゴポリ−をもmonopolistic    COmpetitionの中紅含めて考えているようである。  

錮 Op.,Cit.,p.144.  

佗5)Op.,Cit.,p.13 

(8)

132   第41巻 第2号   

ー46 −  

るが,それは後述する卑して,次に彼の主体的均衡軋関する見地を,企業新設   と関連する限りにおいて関説しよう。   

企業の主体的均衡は,元来新設問題に続く企業の経常的再生産活動に・関連し   てそ・の固有の領域を与えられるものであるが,ここでほ市場均衡を成立せしめ   る要件としての意味で,ある特定産業の既存企業の条件を,彼に従ってみよう0  

(26)   

企業の主体的均衡吟味の基本的思考ほ限界原理に求められる○すなわち,既   存企業の生産討画ほ与えられた生産関数のもとに生産物の供給患と生産要素の   需要鼠とを決定することであるが,生産要素の価格を与え.られたものとし,任   意の生産鼻祖おける最少費用の組合わせと,生産物の価格を与えられたもの  

として最大利潤を斉らす生産豊とが決定される。しかしてこれらが彼において  ほ独占的競争と長期的思考とに.よって貫徹されて:いるとすると,如何なる命題   を与えるであろうか。彼に.よれば,市場への新競争者の出現が許されるのは,  

もとより特許などによる法律的制限が存在しないことほ勿論であるが,既存企  

(27)  

兼が新競争者の参入の余地を残しておくことに.求められる。すなわち,独占的   競争払おける既存企兼が限界費用と限界収入が等しい生産塵において生産を決   定しているならば,そしてこの点より平均費用が逓昇的であるならば,これ以   上の規模の拡張ほ純所得の増加にほならない。換言すれば,規模の不経済が経   喝を越えるのであって,各々の既存企業は生産豊か生産規模のどちらをも変化   せしめる誘因を持たないのである。而してかかる産業へ新競争者か出現するの   は,新競争者の投下資本の獲得する所得が代替的用途に・おいて稼得し得る報酬  

(28)  

より高いからであり,このような所得が期待される限り後発企業の参入は続く   のである。従って,産業内に.おける企業数の決定を通じて,既存企業の生産物   の平均生産費と価格とが等しいという条件が付加されなければならない。この   Q6)qp.,Cit.,p.8 

閻 OpりCit.,p.、143.  

但劫 OpりCit.,p.143・・企業者自身の所有する生産資源が代替的用途に・おいて獲得し得皐報    酬,換言すれば,企業者資源の代替費用(displacementcost)或は機会費用(OppOrtunity    cost)は正常利潤と云われるものに外ならない。したがって,これを越えるとは,超過利   

潤の存在を意味する。これについての詳細は,例えば,熊谷尚大著,厚生経済学の基礎   

理論,185貫参照。   

(9)

133   会社設立と均衡分析   −47 −   場合,平均生産費は長期紅かかわらしめて逓降的であることが前提とされるこ  

(29)  

とは勿論である。   

次紅,何人も知る如く,かかる企業の新設紅はある価値額の貨幣資本が必要   である。したがって,鹿ず以てこれらの資本を入手できるかどうかが問題とな   るであろう。彼はこれを組織化財務の問題として,投資収益の問題,総投資額  

(80)  

の決定,資本調達と財務計画の三つに分けて考察する。  

(イ)投資収益の問題 この場合の投資は長期的視点の導入からして当然資本   財の購入ないし生産を意味し,■耐久期間が経過するまでは完全に回収されるこ  

とはできない。そして,かかる新設がおこ.なあれるのは,一首にして言えばそれ   が生産費を超える余剰収益があると期待されるからおこなわれることは前述し   たところであるが,資本の限界生産性(marginalproductivityof capiね1)ない   し投資の限界効率(marginalefficiency ofinvestment)が利子率に等しいと  

(31)  

き,かかる資本の入手が保証されるのである。  

(ロ)総投資額の決定 生産過程に拘束される資本ほ,長期資本のみならず原   料および労働等に.投下される運転資金をも含めた総投資額が決定されなくてほ   鋤 Op.,Cit.,p.300・かかるプカナンの論述は,簡単紅次の如く定式化して考えると便利   

である。  

生産患∬を生産するための平均生産費を好,生産物の価格を♪とすれば,  

♪コ方   であり,また  

(・ガβ)=(郡)   

すなわら,  

頼意=れ媛   

であるが,♪=打の条件を考慮すれは   d♪_d方  

d.方  d∬   

が導かれる。かくて,均衡の条件としては,限界収入曲線と限界生産費曲線とが相交わ    るのみならず,同時紅個別需要曲線と平均生産費曲線とが相接するのでなければならな   

い。これらの点についての詳細は,熊谷尚夫,前掲寄,186−190頁:参照。実際に・おし\て   

は,超過利潤の存在は,多分,既存企業の拡張と新競争者の出現との両方を招来するで    あろうが,理論的に.は,ニ者択一の問題となる。  

C;O)Op.,Cit.,pp.145−1771 

釦 Op.,Citりp.229.,p.280.   

(10)

第41巻 第2号   134  

−4β−  

ならない。かかる流動資本に投下される資本ならびに・運転資金も,生産時間が終   了するまでは回収するこ・とができず,種々なる形態で生蜃準程で拘束される。  

従って−かかるゆとりを持たしめた額を(イ)に付加する必要があり,かかる需要量  

(32) の決定ほ,限界生産力原理に.よって決定される。   

レ→ 資本調達と財務計画 かくして一決定された新設企業の資本計画ほ,さま   ざまな調達源泉に.もとづき,対応する証券市場を通じて調達される。かくして  

(33)  

資本運用に・立脚する統一・的な資本調達証券論が展開される0   

以上の如くして,資本投資の問題一長期的,・短期的,手段的−はそれぞ   れ限界原理にもとづき部分市場的関連をもって考察されるが,かかる問題と均   衡分析との関係ほ次の如くである。   

資本計画に・おける重要な問題は,資本の限界効率に・関する側面と,利子率に 

(34) 関する側面とに求あることができる。資本の限界効率は企業の新設問題に限定  

するならば,これを新企業の投資の限界効率と既存企業の資本ストックに・おけ   る資本の限界効率に.分けて一考えると便利である。利子率は,言うまでもなく,  

長期的には資本の限界効率ないし利潤率に規制されるとしても,新設企業の資   本建設た.対する賃貸料として与えられたものとして考えられている。かくして,  

前者における既存企業の資本の限界効率が利子率に.等しいとき,純投資がゼロ   となるから当該産業における静態均衡が成立する。また−・方,新企業の投資限界   効率は,・−・定期間の投資額とそれにもとづく限界収益率に依存するがら収益率  

との関係に.還元される。そして,利子率を越える収益率が存在する産業分野に  おいては,新らしい資本の流入が生ずるから,投資限界効率も利子率との均等  

(35)  

に於て均衡が達成される。かくして何れの場合に.おいても,利子率を挺子とし   C32)Op.,Cit:,p.145.,p.198 

鯛 Op.,Cit.,p..170.  

(34),脚 Op.,Cit.,pp。280−281 なお限界効率概念紅ついては,Keynes,J..M.,The    GeneralTh90ry Of Employtnent,Interest and Money,1936,ChS.11passim.い    ま資本設備の限界単位の建設から期待される毎期の予想純収益の流れを点1,点2,・Ul・,点拍    とし設備の建設費を5とするならば,  

5=・2+㌻ト…    行てi 

の関係を成立させるような割引率βは資本の限界効率と名づけられる。   

(11)

会社設立と均衡分析   − 〃ク ー   135  

て限界原理に.よる均衡条件の吟味が彼の主張の中心をなしていることがわか   る。   

既に.各所で関説した如く,彼によれば,企業の主体的均衡は市場の客体的均   衡と連立せしめられて,同時充足的に・条件づけられることを王張する点に・あり,  

このことほど汐ネス・エコノミックスが国民経済的均衡に資すぺき経営実践の   基準となる計算偏理の究明を核心的課題としていることを物語るものである。  

而して−,これを達成するため紅は,数豊規定に.おいては根本問題と思われる極   大原則につき一応の概括を示しておくことが必要であると思われるし,かつ資  

l  

本の調達のためには,企業の収益力を担うことなく正当に配当に.分野し得る利   潤を確認することも大切と思われるので,彼の所説の展開の最後に,彼の利潤   に.関する見地を述べよう。  

(3(芦)   

彼は,企業の目的を長期利潤の極大化に.おく。このことは,彼が論述の対象   を企業の新設・拡張・解散などの資本設備ゐ増廃に.求めるこ.との当然の帰結と   云い得るが,それはとも角,長期的利潤は・それの実現する時間の長短によって   価値を異にするから,それを現在価値で割引くことによって評価基準とし,し   かも資本調達のために.はそれの期間的確認の計算が必要であるからして次の如  

($7)  

き公式に.よって−,期間利潤をすべきだとする。   

β=(㌢±αト(7覧)  

ガ=−・定期間紅おける価値形成部分  

γニ将来の収益力巧もとづいて評価された期首財産価値  

Ⅴ=将来の収益力にもとづいて評価された期末財産価値  

g=−】・定期間の割引率   α=変動分  

Ci6)Op.,Cit.,p.180.プカナソほ利潤を,将来に・おける純所得項目の流れ(the stream    of、netincomeitems running forwardinto the fut11e)と定義する。  

(37)Opり,Cit.,pp.212−213.かかる将来の所得の現在価値なる概念は,最近把・おける企   

業成長理論の等しく扱うところであって,プカンナの卓見の一つである。詳しくは,山   

田保稿,企業と国民経済,岡村正人編経営学総論のうち,参照。  

(12)

136   第41巻∵第2号  

ー50 −  

かくて彼の長期利潤の確定は将来の収益力紅関する長期予想を革礎としたも    のであり,主要な考慮事項ほ(1)収益力に.もとづく期首財産価値,(2)収益力にも    とづく期末財産価値(期首財産の運用から得られると期待される純収益を含   

む)および(3)利子率である。  

以上紅よってプカナンの均衡分析と企業の新設に関する見地を概観したので    あるが,彼の均衡分析が客体均衡と主体均衡の両面を中心目標としつつ展開さ    れている如く,彼の企業新設の経済問題もこれら両面に.わたり,限界原理と長    期的思考を以て分析がすすめられていることがわかる。これらに対するあれわ    れの見解ほ次節に.まとめて展開されるであろう。  

ⅠⅠⅠプカナン会社新設論の批判  

われわれは以上において,∴プカナンの企業設立と均衡分析に.関する見解の紹    介を試み,ビジネス・1エコノミックスの経済学の企業理論忙対する相対的独自    性と彼が主張する論拠を考察する手がかりとしようとすると共に・,ビジネス・   

エコノミックスとORとの関連ないしORの経営的位置づけのための考察の足が    かりとしようとしてきた。今やこの二つの問題を,プカナンの所説を吟味する   

ことに.より展開しよう。  

先づ琴−・の点であるが,思うに・,  プカナンのビジネス・1エコノミックスに・関    する研究は,彼が経済学者であるところから分析の視角を対象領域の広狭に.も  

′ とめ,ビジメス・エコノミックスの存在意義を企業の設立から解散に.至るまで    の全経済過程の分析に求めた。このこと自体は直ちにそれが誤りであるとは云   えないに.しても,全く正当であるとは云い得ない。けだし経済学に.おいても,   

企業の新設・拡張・解散などの問題は自体として−は対象としないにしても,長    期的思考のもとにあるいは生産の理論に・おいて,あるいは資本の理論に・率いて    扱うところであるからである。しかし設立から解散に.至る企業行動を首尾一食   

して扱わんとする態度は,まさに彼のど汐ネス・エコノミックスに.固有な問題   

意識であるとも云えよう。それにしても,設立や解散はある特定の企業紅とっ   

てほd度限りの行為であり,本稿の冒頭でも述べた如く,企業はgoing concern   

(13)

会社設立と均衡分析  

137    −∂J−  

として成長・発展するものでなければならない。この意味にて,われわれは企   業の正常事態における基礎的論理を追求することのうちに.,ビジネス・エコノ  

ミックスの独自性を明らかにすべきだと思う。したがって彼の根本的見地であ   るところの企業の設立・拡張・解散などの組織化問題を扱うことだけを以て,  

経済学の企業理論から自律し得るという彼の主張に.は与し得ないのである。し   かしながら反面,彼のこの主張に.は経済分析における長期的視野殊に景気変動  

(38)  

に対する適応の理論のごとき見地がこの組織化問題を対象とすることのうちに   含められていることをわれわれは見落してほならない。当時として長期的視野  

という見地を,表面的に.ほ企業の組織化問題としてではあるが提出した彼の着   眼に対してはこれを高く評価しなければならない。けだし経済学の企業理論に   於て大抵の場合は属与とされて小た技術や規模の変化∈・そが最も重要であり,  

かかる把撞の仕方に於てのみ企業の国民経済における役割が正しく評価できる   ものと考えられるからである。   

かくして彼はビジネス・、エコノノックスの特性を論ずるに当り,企業の設立  

・拡張・解散などの全経済過程の分析をま張したが,このことは,期せずし   て,彼の推論の長期的見地を物語るものであり,彼の試みは企業理論を動態的   に再構成する試みであったとも言い得るのである。而して彼の長期的思考ほ,  

利潤概念に端的にみることができる。けだし,企業理論を動態的に.再構成する   ことは,技術や規模の変化を変数として取扱うものであり,従来の期間的利潤   極大化の原理から,長期的な収益力を基礎とする原理に移行することを意味す   るからである。そしてさらに,長期的利潤の導入は近時紅おける利潤極大化原  

(38)本稿では対象を彼の企業新設に.関する見解に限定したので,かかる問題は考察しなか    ったが,彼の所論を理解する上紅有益であるので簡単に記す。プカナンの景気変動紅対    する適応の理論は,変動費のみの回収を計る,いわゆる経営中止点の発想紅基礎をお   

く。そこにおいては,一定の与えられた設備条件のもとで,変動費の増分のみに着目す    るもので,現代経営の特質を根本的紅認識隠しめる考え方である。けだし現代経営は固    定性の増大,したがって景気変動に対する適応性の減退のうちに認められ,それ故た,   

価格政策や生産蕊の決定に関して沈下費用(sunkcost)としての固定費を含ましめない   

のである。而して長期的には,沈下費用は高収益の時には多額紅低収益のとき紅は低額   

に収益紅賦課され,常に.設備の最良の利用状態を確保し,投資の安定化を図るべきだと   

する。Ibid.,p.195 

(14)

第41巻 第2号   138  

− 52 −  

(39) 則に対する批判に.,一・義的に.答え得るものであり,企業の経済的問題に.対する  

数豊的規定を内容とするビジネス・エコノミゝクスにとっては好ましいもので   ある。けだし経営過程の客体的把捉従ってその壷的規定の問題を内容とするビ   ジネス・エコノミックスでは,ある制限条件のもとに.極大ないし極小問題を扱  

(40)  

うことを本旨とするから,一∵元的に.長期利潤の極大化として企業目的を措定せ  

(41)  

ざるを得ないからである。もとより企業目的は複数であってよいのであり,殊   に.企業の社会性・公共性などは考慮すべき目的性であるが,これら由複数目的   は長期利潤の極大化のもと把・処理できるのである○われわれほ多元論的目的の   導入に.よる混乱よりも,長期的利潤の−・元化を主張する。プカナトン以降の展開 

(42) において,長期的利潤の−・元化の貫徹はそ・のまま継承されており,われわれは  

プカナ・ンの主張の正当性をみることができる。他方において,数藍分析におけ  

(43) る極大化ないし極小化は不可避であり,科学的計画法に.よる最適値は,内容的  

(44)  

にみれば最大点の追求であり,これは計画案としで一つの情報を構成する。而  

(39)近時,伝統的に経済学の仮定として.きた利潤極大化原則は大巾に修正を迫られてき    た。すなわち,企業の目的に.は,極端紅云えは,人生における大抵の目的をすぺて包含   

せしめるはどの多極の論議がなされているが,そのなかでも,最大の挑戦は行動科学者    の満足原理の主張である。Ci。Dean,,.,ManagerialEconomics.,p.28二  

(4功 経済問題はすぺてある制限条件のもとでの極大化問題と/しての性格を有する甲であっ    て.,そのような制限条件は結局のところ資源構造と技術と阻帰せしめられるであろう。   

限界分析もORもその例外ではない。熊谷尚夫著,近代経済学,22貢参照。  

㈱ しかし,極大化問題に関しては,馬場敬治博士の反論があり,OR研究者のみならず    各論的研究が低調なのは,このような目的措定の単純さが原因であるとしている。馬場    敬治稿,経営学の動向,高宮晋編体系経営学辞典のうち,参照。  

(42)例え.ば,かかる利潤の長期的安定性はJ.Dean,L小A.Doyle,G.J.Cady,J.D.   

Coppock,L.Siegelman等にみられる。もっとも,これはプカj・・ンP正当性というよ    りは,数畳分析のため仕方がないと云㌧た方が適切であり,得られた最適値を計国英と   

して評価する経営者の判断とは区別することが重要である。数塩分析は経営者の判断を    補充するものであって,それに代わるものではない。  

(4諸 科学的計画法とは,誰でも知っているように,数学的モデルを使用して経営に.おける    決痘を下す方法であるが,本来数学は現象の質的側面をいっさい玲象して,盈的関係だ    けを考察の対象とする高度に.抽象的な学問である。したがって,質的規定を主内容とす    る社会科学は,とくに政策的学問は,アメリカ流軋云えは科学とは呼んでもらえなかっ   

た。数学を導入したとき,はじめてこれを科学と呼声考え方には,われわれ隠素直には    与し得ないのであるが,それはとも角,生産力の高度化した経営の現場に・ほ,益々数学   

利用の蔚芽はふえつつあると云える。  

舶 本来,最適と最大とは異なる概念である。すなわち,マキシマムとかミ.土マムという   

(15)

会社設立と均衡分析   ・一−53 −   139  

(45) して,以後のプロセスに.おける決定は,経営者ないし管理者の判断であり,この  

判断の領域においてそれぞれの地位に・より大所高所から社会的諸要因を考慮す   べきなのである。したがって,数量分析を内容とするど汐ネス・・エコノミック   スに対す・る利潤極大化批判は,意思決定プロセスの機能と関連せしめれば解消   するように思われる。   

われわれはプカナ・ンのビジネス・エコノミックス自律性の論拠を,まず彼の   根本的見地であるところの企業の新設・拡張・解散紅求める長短を論じてこ・こ  

に.至った。すなわち,かかる問題意識は長期的思考の導入という長所はあるに  しても,当面する企業の新設や解散ほ・−−・回限りの現象であり,経営過程の極限  であって,それらを扱うことがプカナソの言う如き全経済過程を意味すると解   しないのである。それはプカナンの如く,企業の全生涯という意味でなしに,企  業の過程的構造的活動の仝経済という意味で企業の経済分析を考えるかちであ  

る。第Ⅰ節に.おいて・,われわれほ.ピ汐ネス・、エコノミックスが総じて経営の管  

(46)  

理時に意思決定過程に・役立つ数鼠分析を示そうと努力していることを触れた   が,かかる経営管理の本来的領域は,設立や解散などの如き極限的現象にではな  

く経営の経常的再生産感動において与えられるのである。したがって,ビジネ  

′ことほ抽象的であり,形式的であってオプティマムを媒介とするときにのみ現実の具体    的な問題となる 。最適概念は鼻的規定のみならず餐的規定をも含み,また結果の最大の   

みならず過程の合理性をも含む。したがって,数学的モデルから抽出した最大値ほ,現    実の目的一手段の具体的関係において最通性が考慮される。したがって,最適性は最    大を含むが,最大ほ必らずしも最適であるとは云えない。かかる見解の詳細について    はj 山本安次郎,経営管理論,247−251頁凝照。  

脚 意思決定のプロセスとしてほ,一・般に・(1)目標の設定(2)可能な計画案の認識(3)   

各計画其の評価(4)1つの計画案中速択である。1っの選択的計算プロセスにおいて    も,もとよりかかる意思決定過程がみられるが,ここで言っているのは,組織的意思決    定プロセスを意味し,決定者は目的関数ならびに制限条件を多少変形したところの多数    の最適解群の全体的鳥撤図のなかから,ネ・の時の状況に最も適した解を,彼自身の判断   

に基づい:7:決定することを指している。Jones,Mu且,ExecutiveDecisionmaking・  

1957,p.5..参照。  

㈹ 管理と意思決定の関係は,意思決定がいかなる計画が必要であり,どのような方法で    計画案を作成し,評価するか,換言すればいかなる決定をどのよう紅なすぺきかに関す   

るものであり,管理は,決定された事項をいかに・具体的計画紅表わし,執行するかに関   

するものである。意思決定は文字通り決定機能であり,管理は執行機能である。   

(16)

籍41巻 欝2号   140  

− 54 −−  

ス・エコノミ.ックスの自律性もかかる経常的活動庭おいて,経営管理との関連   紅おいて追求さるぺきであろうと思われる。かくして,われわれほプカナ・ンの   会社新設論を媒介とし,これを批判的に.考察することによって,ビジネス・1エ  

コノミ.ックスを展開すべき方向を理解することができるであろう。   

プカナンの企業新設論紅潤する次の問題点は,彼が新設の経営問題分析に.授   鳳する均衡原理についでである。均衡原理に・関しての批判は,第一・に・分析用具   としての限界原理についでであり,第二は均衡原理そのものについてである。   

先ず限界原理であるが,われわれは.これの代表として一生産論に.おいても分配   論に‥おいても核心とせられる限界生産力説隼・ついて吟味しよう○限界生産力説   の前提とするところは,限界生産力があるということである。限界生産力は,  

たとえばある一つの生産要素の限界単位を増加させれば;生産物数量は増加す   ると規定するが,果してこのような関係がビジネス・、エコノミ.ックスの対象と   する近代的大工共に.おいてみられるであろうか。われわれは限界分析の論理的  

(47) 厳密性を論証するために,′次のような定式化を試みる。   

制限条件を生産関数と資金の有限性紅仮定し  されるとすれば,次のように.なる。   

(1)./■(れ,.ガ2,‥…・,‰;の,〝ゎ   ,〝仇)=0   

(2)∬=¢1ぴ1+卵仇十…・‖ …+恥び刑   

ク石  勇払   

(3)G=康一・C=ざれ芳名−g留プぴク  

名=1  慮=1   

ここに,鶴=生産物数盈   が仇=生産要素数患   仔=利用し得る資金の総額   曾.グ=生産要尭単価  

勿=生産物単価  

G=利潤   点=総売上高  C=総原価  

抑 以下の数式は若干の点紅おいてほ異っているが,下記の有益な論文紅よる。森嶋瑛子   

限界生産力説と線型計画論,大阪大学「経済学」算4巻第3号。   

(17)

会社設立と均衡分析   −− 55 −  

141  

(1)式ほ微分可能であり,−及び二次の偏微係数は連続であるとすると,ラグ   ランジ.ユ㌧乗数ゐ,烏を用いて解くことがだきる0   

極大又は極小のための必要条件は,新関数の偏導関数を0としている0   即ち   ▲  

(4)れ−・ゐ意=0(才ニ1,2,  ,〃)  

(5)−(1ヰ軌プ・−・=0(・グ=1,2,  ,∽)  

こ.れらの(射,(5ほ(1),(2)との(椚+搾十2)偶の連立方程式は,すべての・敬,i丹お   よぴゐ,点なる(∽+乃+2)個の未知数を決定するのに・必要かつ十分である○  

_三上/−_  

かくして,(4)式の中の任意の比を考えると惹=豊を得,任意の二塵産物  

a∬ブ   

の限界代替率ほそれらの価格比に.等しくならなければならない。また,(5)式に  より,   

盟   且・= 

射   を得,任意の二要素間の限界代替率埠それらの価格比硝しくな   否打  

ければならない。(4),t5)の式より  

少  £  

1+ゐ  

の特定生産物で表わしたこの要素の限界生産力と資金の限界生産力の比に・等し   くなければならない。   

かくの如くしてニ,限界分析は,すべての事象相互間の非直線性の連続関数  

占   的関係が存在していることを前提とするものである。そして何よりも限界生  

産力が各要素について存在するということが大前提であるが,これらの前線  

限界生産か/   

は普遍的現実妥当性を持ちうるものであろうか。事実,  

(18)

142  

第41巻 算2号    ー56−  

意が各要酢ついて存在するということは,極めて特殊な場合に・限られるの  

(48)  

であって近代的産業の実態と搾程遠いと云わねばならない。かかる事態を指輪   して,コポックほ「必要なことはこの理論の改善である。これほ分析体系への   付加的変数の導入,あるいほ少なくとも所与の変数紅関する異なちた仮定の導  

(49)  

入を必要とする。」と去っている如く,ここに限界分析に.おける反省の上に,新   らしい代替理論を必要とする紅至った。この要求を満たすものが線型計画論で   ある。従って実用的見地からは,生産過程(production process)の線型性を大略   に.仮定し,単体表を駆使して機械的計算をおこなう線型計画法がサーぐれている   と1監われる・。しかしながら,意思決定の原理つまり管理原理として論理的基準   を与えるという点では,われわれほ依然として限界分析を主張したい。この点   の考察は,われわれをして次の均衡原理の吟味に.向わしめるのである。   

かくして−,第二に.,彼の均衡原理の把握の仕方が問題となる。均衡原理は,  

前紅屡々述べた如く,経済現象を把握しかつこれを理解するところの武器であ   ると共に.,−・のバランスセあり釣合であるという意味では極端に云って総ての   経験科学を通ずる概念である。かかる意味で,彼が次の如く云うとき,それは   正当であると云わねばならない。すなわち,魔営実践の基準となるべき乗釆志   向的経営計算機構を限界価値計算として規定すると。けだし企業の経済分析   は,・その法則的把握を通じて−のみ実践の拠り所たり得るからである。企業の経   済過程における鼠的把握の基礎理論ほ.,これを限界価値計算に・よる厳密性を不   可敏とし,かくして企業行動の基準原理として作用するのである。われわれ   は,かかる意味で,企業の主体的均衡の理論ほ,ビ汐ネス・エコノミックスの   核心をなし,この原理的基準を基礎紅して,もろもろの数量的管理が位置づけ   られると思われるのである。線型計画法をはじめとするOR技法は,かくして  

く50) それぞれの地位を与えられることに・なる。  

㈹生産関数の1次および同次性をめぐって,種々の論議のあるところであるが,それを    別としても,計算の難易,応用的実用価値から考えて,新らしい生産理論−LPの理論   

−の考え方が必要であるように思われる。これらの点紅ついては次稿紅顔みる。  

舶)Coppock,J.D.,Economics of the Business Firm,pい359 

翻 すなわち,管理原理としての限界分析に基づく生産の理論を中心紅,その実用的方法   

(19)

会社設立と均衡分析  

143    −57・−   

われわれは以上紅おいて,プカナンの企業設立に関する見解の吟味を試み,  

まずビジネス・エコノミ.ックスの相対的独自性は,企業の設立・拡張・解散を   扱うところに求められるという彼の主張を批判して,ビジネス・.エコノミック   スの相対的独自性は対象領域の広狭に求めるぺきではなく,観点に.求められる   べきであるととを示した。すなわち,ビジネス・エコノミックスと経済学の企   業理論とは対象領域が全く共通であって差支えなく,対象は同じであると1して  

も,企業理論ほあくまでもその目的は国民経済を理解するための必要なまわり   道であるのに対し,ビジネス・エコノミックスは,企実の基礎的な経済過程を   理解することによって,最適討画編成への役立ちに・資する、牢・ある○ 換言すれ   ば,同じく企業行動を対象とするに.しても,前者は市場均衡を成立せしめるた   めの条件として企業行動をみ,後者は企業行動そのものせそのもののために.み  

ることにある。   

而してかかるど汐ネス・エコノミックスは.企業行動の管理的基準として,限   界価値計算に.よる経済過程の法則的把握を試み,その実用的展開としてORの   諸技術がど汐ネス・エコノミックスの体系紅別して位置づけられることを示し   た。   

プカナソの見解は,以上に.よって−多少の論点はあるにせよ,当時において,  

経済学的視野に立脚して企業の行動原理を市場経済の価格機構と関連して考察   し,均衡分析を用具として,長期的見地の導入を意図したことに対し,それが   爾後の斯学の展開にとって大きな影響を与えたことからみて,われわれは高く   評価しなければならないであろう。すなわち,その後のビジネス・エコノミ.ッ   クスに.関する研究ほ,ディー・ンをはじめとして優れた文献の存在することほ周   知の通りであるが,われわれは企業の経済問題を統一・的に整理し,初めて理論   的なビジネス・、エコノミ.ックスへの道を拓いた点紅プカナンの巧績を認めたい   と思う。  

として線型軍画法ならびに諸種のOR技術がそれぞれの扱う不確実性の構造紅基づいて  

整序される。例えば,prOgrammingされない不確実性処理は経営機能に,prOgramming  

された危険処理は管理機能に.の如く,主体的構造と不確実性構造との対応に・おいて位置  

づけられるように.思われる。   

(20)

第41巻 第2号   144  

・−∂β −  

ⅠⅤ 結  

以上われわれほプカナンの企業設立に.関する経済問題紅関する見地を吟味す   ることに.って,実はビジネス・・エコノミックスの課題を展開しようと努力して   きたのである。そのことによって,最初にプカナ・ンが企図したように,ビジネ   ス・エコノミックスの経済学の企業理論に対しての自律性を明らかに.し得ると   恩われたからである。いまやわれわれは,プカナンの研究を終る紅当り,かか   る課題に.ついて考察しなけれはならない。われわれは以下に述べるところをも   って上述したプカナンのど汐ネス・エコノミックスめ自律性に関する見解を補   いたいと思う。   

ビ汐ネス・.エコノミックスは企業の経済過程に.関する経済学的研究であるか   ら,その対象とするところほ当然経済学の企業理論と共通となり,・その点だけ   から云えば,両者のあいだに差別を設けることほ不必要であると云えるかもし   れない。しかし対象ほ同じであるに.しても,両者のちがいは企業の把担のしか   たであり,つまり主体性の有無に戒められるよう紅思われる0ここ紅草体性と   は,経営を行為的に主体性をもった活動体としてとらえることであって,ちの  

ような意味からはビジネス・エコノミックスは最適経営計画編成の実際的解法   の研究を主眼とするのに・対して,経済学中企業理論ほ企業の主体的均衡を吟   味するとは云っても,それほ非人格的な市場機構のカによって均衡が連環され  

るメカニズムを研究することを主眼とする。したがって−,かかる意味では,ビ   ジネス・・エコノミックスは経済学的でほあっても,その観点鱒著しく経常学に   傾斜していると云わざるを得ない。かくして−,ビ汐ネス・.エコノミックスは企   業理論の管理的展開を志向するも 

究の内容とするとも云えるであろう。プカナう/に.おいては,まだかかる管理  

的意識を充分に自覚し得ず,したがってその自律性の根拠を企業の新設・拡  

張・解散などの全経済過程紅求めざるを得なかったのであり,管理論的見地は  

せいぜい資本の調達を内容とする財務的問題に載られるに.すぎない。われわ  

れは全経済過程の意味を,プカナンの如く設立から解散に.至るまでの単、に.時間   

(21)

会社設立と均衡分析  

145    一一β9−  

の長さとのみ考えず,経営構造にかかわらしめて設立であれ解散であれ全体性   紅おいて把捉する,つまり主体的構造の全経済過程と考えるのである。かかる   立場において初めてビジネス・エコノミックスが成立するのであって,それ以   外の根拠に.求めても,それは結局に.おいて経済学の企業理論に包摂されざるを   得ないであろう。   

かくして,ビ汐ネス・エコノミックスを企業理論の管理的展開と規定したわ   れわれは,それが実用的最適経営計画の編成を内容とするところから,次の如  

き課題をに.なうものと考える。   

企業理論の主体的均衡条件は,いわば管理原則として企業行動の基準を形成  するものであるから,ビジネス・エコノミックスにおいても,実践的基準とし   てそのまま導入する。け・だし管理原理は.,客体的法則の行為的把握を通しての   み原理たり得るからである。かくして,主体的均衡における限界原理は,一つ   の論理的基準として意味をもち,それから出づる実際的計画法はわれわれはこ   れを,線型計画法をはじめとする各種のOR技法に−求めざるを得ない。けだし;  

限界分析ほその厳密な適用のために.は生産関数の連続性と,生産係数の非画定   性とが仮定されなくてはならず,論理的であるが非実際的であるに㌧反し,線型   計画法では生産過程の数が有限で,非連続的であり,生産係数の比例性を前提  

とするから,事象間の関係を近似的に表現することに.おいて,経営的応用紅は   すぐれているよう紅思われる。   

かくして,ビジネス・・エコノミックスの体系,それほ、資本予算を頂点とする   将来志向的な計数管理制度と企業の主体的構造との統合を意味するが,と企業   の直面する不確実性の構造との計慮に基づいて,経営紅関するORの諸技術揉   整序され,体系化されるのである。かかる上に・おいて,初めて企業理論の管理   的展開を課題とするビジネス・エコノミックスの自律性が主張され得るであろ  

う。   

われわれがプカナ・ン企業新設論の批判を媒介として,ビジネス・エコノミッ  

クスの課題として主張したい点ほ,経済的思考と管理的思考の結合の必要性で  

あり,かかる必要性からの意思決定機能を媒介とする経営の諸計算制度特紅   

(22)

第41巻 第2号   146  

ー 6クー  

OR技術の体系化であった。  つまりど汐ネス・エコノミック.スは,経済学の企  

q 業理論に‥おけるよう紅企業を対象的に外観するのではなく,経営管理機能を中  

心とする主体的構造に.おいて行為的にみるとき,相対的独自性を主張し得るの   である。而してビジネス・エコノミックスの課題は,管理的思考の基礎である   意思決定機能の−・過程としての方法の科学化,つまりOR手法の,不確実性構   造に.基づく主体的体系化に.ある。   

まことに,企業の経営と牲,かかる経済的思考を基調としたもろ、もろの対境  

関連に.対する計慮であり,ビジネス・エコノミックスはこのような経営の経済  

学として,かかる課題に答えなければならないのである。   

参照

関連したドキュメント

ところで,このテクストには,「真理を作品のうちへもたらすこと(daslnsaWakPBrinWl

が前スライドの (i)-(iii) を満たすとする.このとき,以下の3つの公理を 満たす整数を に対する degree ( 次数 ) といい, と書く..

しかし私の理解と違うのは、寿岳章子が京都の「よろこび」を残さず読者に見せてくれる

最愛の隣人・中国と、相互理解を深める友愛のこころ

本論文での分析は、叙述関係の Subject であれば、 Predicate に対して分配される ことが可能というものである。そして o

これら諸々の構造的制約というフィルターを通して析出された行為を分析対象とする点で︑構

モノづくり,特に機械を設計して製作するためには時

3月 がつ を迎え むか 、昨年 さくねん の 4月 がつ 頃 ころ に比べる くら と食べる た 量 りょう も増え ふ 、心 こころ も体 からだ も大きく おお 成長 せいちょう