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親子の心の診療マップ作成に関する研究

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Academic year: 2021

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厚生労働科学研究費補助金 (成育疾患克服等次世代育成総合研究事業)

分担研究報告書

親子の心の診療マップ作成に関する研究

研究代表者 永光 信一郎(久留米大学小児科学講座)

研究協力者 松岡 美智子(久留米大学神経精神科学講座)

千葉 比呂美(久留米大学神経精神科学講座)

石井 隆大 (久留米大学小児科学講座)

分担執筆者・協力者(所属は報告書末尾に記す):内山有子、浦部富士子、大西雄一、岡 明、岡 田あゆみ、荻田和秀、片岡弥恵子、川名 敬、甲賀かをり、小柳憲司、鮫島浩二、清水知子、関口 進一郎、田原由起子、藤内修二、平林優子、三牧正和、村上佳津美、山崎知克、山下 洋、片柳章 子、堀越 勝、道端伸明、重安良恵、藤井智香子

A.研究目的

現在の子どもを取り巻く社会環境は、少子化、

経済格差の拡大、SNSに依存した生活習慣、母 子保健課題の地域格差拡大など10年前に比べ

大きな変容を認める。子どもの心の問題もライ フステージに沿って多彩な様相を呈している。

妊娠期~新生児期は、特定妊婦、要保護児童、

虐待死、特別養子縁組の問題を認め、乳幼児期 研究要旨

子どもの心の問題の診療には、親を含む家族の心の支援または診療が必要である。親や家族が 抱える問題を、子どもが心身の症状として表すこともあれば、子どもの心身の症状が親の心身の 状態に影響することもある。子ども虐待数は増加の一途をたどっているが、子育て支援が得られ にくい現在の生活環境では、保護者の誰もが躾と称して体罰を加える可能性さえある。子どもの 心の問題への対応には、親を含めた家族・保護者の支援が必要である。しかしながら、保護者が 妊娠期・産褥期にあり、保護者の心の問題に産婦人科医が気づくこともあれば、子育て期の親が 育児疲弊から精神科受診が必要であると小児科医が気づくときもある。また、精神科に通院中の 保護者を診療している精神科医が、保護者の子どもの様子を気に掛けることもある。いずれもひ とつの診療科では対応が困難か、限られた対応しかできない状態と思われる。子ども自身も乳児 期、幼児期、学童期、思春期と発達していくライフステージの中で、あるライフステージに生じ た心の課題が解決されないならば、次のステージでその問題は複雑化していくことが予想され る。その解決には小児科医、産婦人科医、精神科医、心療内科医、心理士、保健師、助産師、 看 護師、養護教諭などの多職種の連携が不可欠であることである。本年度は小児科医・産婦人科医・

精神科医・心療内科医の連携についてマニュアル(親子の心の診療マップ)を作成した。診療マ ップは、女性の心版、子どもの心版、親の心版の3パターンを作成した。地域により医療資源、

連携機関は異なるため、本診療マップに沿った診療行為は標準的に実施されるものではなく、地 域での医療体制と本マップとの相違点を地域で検討し、対策を講じていくことが期待される。

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は発達の偏りを軸にした育てにくさの問題、

そして思春期には自殺率の上昇や不健康なや せの増加を認めている。これらの問題に共通す る点は、1) それら問題は親を含む家族の心の 問題が背景に存在すること、2) その解決には 多職種(小児科医、産婦人科医、精神科医、心 理士、保健師、助産師、看護師、養護教諭)と 行政の連携が不可欠であることである。本研究 班の目的のひとつである、「親子の心の診療マ ップ・ガイドライン / 保健指導プログラムの 作成」について本年度検討した。

B.研究方法 1. 草案作成

研究代表者が所属する久留米大学で、小児科医 2 名(代表者と研究協力者 1 名)、精神科医 2 名(研究協力者2名)による親子の心の診療の フローチャート草案を2週間に1回に開催する 会議で検討した。2名の精神科医は各々4年、3 年、久留米大学小児科病棟での小児心身症の病 棟係としての臨床研修経験をもつ。1名の精神 科医は海外在住のためインターネット通話電 話(skype)で会議に毎回参加した。上記精神 科医2名は、小児科病棟研修中に子どものみな らず親への支援を要する症例も担当し、上記精 神科医自らが精神科外来で保護者の診療を担 当することや、子どもが入院中に保護者を精神 科病棟に入院させることもあった。また久留米 大学では平成17年より子どものこころカンフ ァレンスを2週間に1回実施している。小児科 医2~3名・精神科医4~5名、臨床心理士7

~8名から構成されており、診療連携が必要な 症例を小児科、精神科から持ち合って症例カン ファレンスを実施している。症例カンファレン スの症例は現在までに300例以上になる。さら に毎週開催されている新生児科医と産婦人科 医による周産期カンファレンスにも精神科医

が参加して妊婦の精神疾患への対応について 検討を行っている。また研究代表者は平成 29 年度の親子の心の診療のための多職種連携の 課題抽出に関するアンケートを実施する際に、

日本産婦人科医会会長、日本小児科医会会長、

福岡県精神神経科診療所協会会長、福岡県小児 科医会会長、大分県小児科医会会長、大分県産 婦人科医会会長、大分県精神科病院協会会長、

福岡県精神科病院協会会長および同理事会、福 岡県産婦人科医会会長および同理事会、福岡県 医師会副会長、福岡県小児科医会会長、大分県 福祉保健部、福岡県健康増進課母子保健係、久 留米市保健所母子保健課と直接面談し、親子の 心の診療における多職種連携の課題等のヒア リングをおこなった。以上の経験を踏まえ、親 子の心の診療におけるフローチャート草案を 作成した。フローチャートは、子どもの心版、

と周産期領域を中心とした女性版に加え、親自 身が精神疾患の加療を受けている際の子ども の心の支援に着目した親版の 3 パターンを作 成することとした。

2. 班会議における意見交換と名称の選択 久留米大学でたたき台を作成、平成306月 の班会議で班員よりフローチャートに対する 意見交換を行った。班会議では1)対象者(職 種、プライマリケア医/研修医/専門医)を明確 にすること、2)エビデンスを十分集めること が難しい領域のため Minds ガイドラインに沿 うことは難しいこと、3)学校等の連携を十分 に盛り込むことなどが討議された。対象者はプ ライマリケア医から子どもの心の診療医を目 指す医師とした。ガイドラインに代わる名称と して、診療フローチャート、診療アルゴリズム 等の名称が提案されたが、診療マップとした。

フローチャートやアルゴリズムはその方向性 が矢印で一方向に示されていたり、定式化され

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ている印象が強く、心の実診療では両方向性

(不足している情報を再度取り直したり、連携 のため関係機関と幾度と連絡を取りあうなど)

の流れが重要であることを鑑み、名称をマップ とした。地図を見ながら探索していくイメージ を想定した。

3.診療マップ項目のキャッチコピー制作と分 担執筆者の選定

3 パターンにおける診療マップの構成と診療 の流れが決定した後に、各々重要な診療ポイン トにおける原稿項目のキャッチコピーを作成 した(例:マップ項目;予期せぬ妊娠の場合 原稿キャッチコピー;赤ちゃんを任せられるで しょうか?)。その後、研究代表者により分担 執筆の割振りを行った。分担研究者・研究協力 者が得意とする分野について執筆を依頼した。

4.親子の診療マップの構成

各診療マップは以下の7項目から構成されて いる

1) 親子の心はどんな風につながっているの?

2)親子の心の診療ってどういうこと?

3)親子の心の診療マップってなんですか?

4)どの診療マップを選べばいいの?

5)診療マップはどんな風に使ったらいいの?

6)診療マップ(女性の心版、子どもの心版、

親の心版)

7)各項目原稿

1) 親子の心はどんな風につながっているの?

親子の心の相関(親の心や行動が子ども の心に影響するのと同様に、子どもの心 や行動も親の心に影響していることにつ いて関連図を用いて説明

2) 親子の心の診療ってどういうこと?

親子両者の心に配慮しながら診療し支援

につなげることについて説明。

3) 親子の心の診療マップってなんですか?

親子の心の診療マップの使用方法につい て解説。「気づき」パートと「つなぐ」パ ートがあることを解説。

4) どの診療マップを選べばいいの?

女性の心版、子どもの心版、親の心版3 パターンについて解説。

5) 診療マップはどんな風に使ったらいいの?

診療マップの番号またはマップのタイト ルから選ぶことについて解説。

6) 診療マップについて

女性の心版、子どもの心版、親の心版 3 パターンの実際とマップタイトルを掲載 7) 各項目原稿

各項目について300~600字内で解説

C.研究結果

1)~5)および7)について参考資料として

報告書末尾に示す。6)について3つの診療マ ップの解説を下記に示す。

【女性の心版】

思春期・妊娠出産期・産褥期の女性を担当す る産婦人科医の医師が、『診療の中で患者の心 の問題に気づいたとき』をコンセプトに、親子 の心の診療マップ(女性の心版)を作成しまし た。思春期における心身の変化に始まり、ライ フイベントとしての結婚、妊娠、出産などとと もに女性の身体や心はめまぐるしく変化して いきます())。異性との関係、親との関係、子 どもとの関係などの人間関係も女性の心を変 化させます。このパンフレットは、女性の心の 変化に気づくためのポイントや気づいたとき の評価方法,対処方法についてまとめた診療マ

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ップです。

親子の心の診療マップは「気づき」と「つな ぐ」の2パートに分かれ、「気づき」パートで は思春期・妊娠・出産期・産褥期における女性 の心のリスク因子に気づき、「つなぐ」パート ではそのリスクを支援するための連携部署へ、

つないでいく過程を記載しています。妊娠をす る前の思春期女性、あるいは妊娠と思って受診 した思春期女性の心の支援が必要と気づいた 時())、どのように声をかけるかが記載されて います())。一方で女性がDVや性的な被害を 受けていた場合の対応も記載されています(,

)。女性が妊娠をしている場合は、保健師・

助産師との情報共有が重要で())、社会的ハイ リスク妊婦のアセスメント())や出産後の子 どもの成育チェック())も、保健師・助産師と 実施していきます。3点セットが有効なアセス メントツールになります())。また、アセスメ ントによって判明した、予期せぬ妊娠())、虐 待の可能性())、経済的な問題()、産後うつ をはじめとした精神疾患の合併()、育児不安 ()、患者の子どもに要因がある場合()への 対処方法について記載されています。それぞれ の問題点に沿って、各連携機関()につないで いくことが理想的ですが、どの部署に連絡をす ればいいのかわらかない時もあります。そのた め、各市区町村に設置することが努力義務とさ れた母子健康包括支援センター(子育て世代包 括支援センター)()が連携機関の要になるこ とが期待されています。子ども虐待の窓口は主 に児童相談所()ですが、児童とその保護者の 支援には地域での情報交換と支援内容の協議

(要対協⓴)が重要です。加えて、様々な事情

から家庭で暮らすことのできない子どもを守 るための特別養子縁組・里親斡旋の制度もあり ます()。家庭機能や地域機能の低下など、時 代の変化に伴い、各連携機関での横のつながり が今後さらに大切になってきます。さらに産婦 人科で行われてきた出産期・産褥期の母親の継 続的な支援を心療内科・精神科に依頼し、子ど もへの支援を小児科に依頼していくことが必 要になってきます(~)。思春期から妊娠・

出産期を経て産褥期における女性の心の支援 には、産婦人科医による「気づき」と「つなぎ」

から始まり、小児科医・精神科医・心療内科医 と多職種による支援の継続が求められていま す。地域で多職種による情報共有システムがで きることが望まれます。

【子どもの心版】

小児科医、児童精神科医など子どもの心の診 療を担当する医師が、『子どもの心のみならず、

親を含めた家族の心の支援もしながら、親子の 心の診療を行う』ことをコンセプトに、親子の 心の診療マップ(子どもの心版)を作成しまし た。子どもの心の発達や、心の問題は、子ども が育つ環境や、養育者との関わりなどと深い関 係があります。また養育者自身がどのような環 境で育ってきたか、子育てについてどのような 思いを持っているかなども大切になってきま す。これらの視点で診療を進めていくためのマ ップです。

「子どもの心の問題」では、子どものライフ ステージ(周産期・乳幼児期・学童期・思春期)

によって様々な症状や疾患があります())。親 子の心の診療マップは「気づき」と「つなぐ」

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の2パートに分かれ、「気づき」パートでは子 どもと家族のアセスメントを行い(,))、「つ なぐ」パートではアセスメントに基づいた支援 の依頼方法や、連携部署について記載していま す。子どもの心版の「気づき」パートでは、ど のような場合にも自殺の危険性())と虐待の 可能性())について考えておく必要がありま す。そして家系図を作成して())、誰がその家 庭でキーパーソンになりうるのか考えます。病 気について子どもと親に説明()をしたならば、

子どもや親自身の支援者や相談者が身近にい るのかを確認(,))し、さらに子ども、親それ ぞれと学校・園との関係についても確認をしま す())。これらを評価した後に親子関係の影響 や親御さんの気持ちが子どもの症状にどう関 係しているのか確認をします().それらの情 報を元に、子どもへの支援を中心に行うのか (,)、学校・園など環境への働きかけを優先 するのか()、もしくは経済的な問題も含め家 族の支援を中心に行うのか(~)、その判断 と方法が記載されています。問題点が複数に渡 ることもあります。

子どもの心の問題の解決のために、医師 1 人ができることは限られているので地域の社 会資源()を活用して、それぞれの特徴を活か しながら連携機関に「つなぐ」ことを実施して、

診療を継続していきます。その様な中、子ども の心の問題の解決に親への個別な診療が必要 な場合は親カルテを作成し()、親自身の生育 歴を踏まえて支援を継続し、さらに専門的な治 療が必要な場合は心療内科や精神科への紹介 を行っていきます()。同様に子どもの心の問 題の解決に、各種機関との連携に加えて、より

専門的な治療が必要な場合は子どものこころ 専門医への紹介を行います()。また、婦人科 との連携も重要です(~)。慢性腹痛や集中 力の低下など婦人科的疾患が隠れていること もありますし、月経や性の問題なども心の問題 の原因になることがあり産婦人科医の支援が 必要になります。産婦人科医・小児科医・児童 精神科医・心療内科医・精神科医の連携は、子 どもや親御さんのみならず、行政機関、学校、

支援機関にとっても心強いものになります。

【親の心版】

心療内科医、精神科医など成人の心の診療を 担当する医師が、『精神疾患の治療を受ける患 者の子育てや子どもの様子に注目をしながら 親子の心の診療を行う』ことをコンセプトに、

親子の心の診療マップ(親の心版)を作成しま した。成人患者を診療している医師が行う親子 の心の診療としては、精神疾患を持つ成人患者 の子育てが、これから生まれてくる子どもや今 いる子どもへどのような影響を与えるのか、逆 に子どもの発達や行動が親の精神疾患に影響 していることはないのか、ということに注意を 払う必要があります。このパンフレットはその ような視点で診療を進めていくための診療マ ップです。

「親の心の問題」では精神疾患を持つ親が子 育てや子どもに関して抱く思いや、親の精神疾 患に対して子どもが抱く思いの基本をまとめ ています()。親子の心の診療マップは「気づ き」と「つなぐ」の2パートに分かれ,「気づ き」パートでは患者の評価を記載し「つなぐ」, パートでは評価に基づいた支援の依頼、連携部

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親子の心の診療マップ(親の心版)

❶親の心の問題

気づ き つ な ぐ

心療内科・精神科

児童精神科 小児科

産婦人科

子育て期の

女性患者のアセスメント 子育て期の 男性患者のアセスメント 家族図の作成

育児の支援者/相談者の確認 家族の支援者/相談者の確認

患者・家族への心理教育 挙児希望〜周産期の

女性患者のアセスメント

 

⓫ 子どものアセスメント

挙児・妊娠・子育て

についての話し合い 子どもの家庭での様子、通園・通学状況確認 親の病気を子どもへ伝える

親の病気に対する子どもの様子を確認

向精神薬の調整

産後の 体調不良 がある場合

育児不安・子育て支援 家庭の見守り などが必要な場合

虐待の 可能性が ある場合

子どもへの 直接支援が 必要な場合

学校・園の 理解が 必要な場合

経済的な 不安が ある場合

産科、小児科、行政、教育機関等との連携状況を確認

連携機関 子育て支援拠点 子育て短期支援 放課後児童クラブ

保健所小児科

生活保護課 障害者福祉課 子育て支援課 生活自立支援センター

学校保健課

学校・園 教育委員会

(SSW)

保健室

療育センター カウンセリング室

フリースクール 放課後等デイサービス

小児科・児童精神科

児童相談所 要保護児童対策

地域協議会

子育て世代包括支援センター

連携 連携 連携

連携 連携

21

26 25

24

22

23

親の精神疾患が子育てを通して、今から生まれてくる子どもや、今生活してい る子どもの心に影響することがあります。一方で、こどもの発達や行動が親の 精神症状に影響することがあります。子育てのことも聞いてみてください。

産婦人科へ紹介

小児科相談 継続支援依頼

訪問依頼

情報共有配慮依頼 通告 保護依頼子どもの 加療開始治療施設

紹介 支援依頼

産婦人科へ相談 行政機関へ へ相談

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署について記載しています。親の心版の「気づ き」パートは家族図()、育児の支援者や相談 相手の有無、家族の支援者相談相手の有無(,

)、患者・家族への心理教育()、向精神薬の 調整()など、普段の診療に追加できるような 具体的なポイントをまとめています。また、評 価する患者を「挙示希望〜周産期の女性患者」

()、「子育て期の女性患者」()、「子育て期 の男性患者」()の3つに分け、それぞれで注 意すべき点についても記載しています。特に

「挙示希望〜周産期の女性患者のアセスメン ト」()については家族と情報を共有し、一緒 に整理することや特定妊婦として産婦人科や 行政との連携について話し合うことの意義を 解説しています()。「子育て期の女性患者の アセスメント」()、「子育て期の男性患者の アセスメント」()の後半では、患者の子ども のアセスメントを行います()。患者から子ど もの様子をどのように聞くのか、さらに、子ど もたちと親の情報を共有し、フォローする具体 的な方法が⓫~⓮に記載されています。全ての 評価が終わったところで⓯では改めて、その家 庭の支援状況を整理し、⓰~㉑を参考に問題点 の判定を行います。問題点が複数に渡ることも 少なくないでしょう。⓰~㉑ではそれぞれの問 題点の解説と、問題を見つけた際に連携できる 部署、あるいは連携できる職種の探し方が記載 されており、それを参考にご自分の診療地域で の資源を見つけ、㉒を参考に連携して、またそ の連携を生かして診療に役立てていきます。㉓ に記載される子育て世代包括支援センターは 平成29年から設置が努力義務とされ、親子の 心の支援には欠かせない行政機関です。最後に

産婦人科、心療内科・精神科・児童精神科、小 児科それぞれの特徴をまとめています(~㉖)。

親子の心の診療における役割分担を記載して います。お互いの役割を意識しながら連携でき れば、医師にも患者やその子どもにもメリット があるのではないでしょうか。

D.考察

今後の課題として以下3項目をあげた。

1)診療マップの妥当性・実用性の検討 2)連携機関との連携マニュアルの作成 3)診療マップの効果の検証

1)診療マップの妥当性・実用性の検討 診療マップの構成は、平成29年度の親子の 心の診療のための多職種連携アンケート調査 から抽出された課題と研究代表者が各診療科 の医師会長・理事会から得られた情報、班員に よる専門的意見、および実臨床が得られた経験 をもとに作成された。診療方法はその診療機関 の規模により診療時間、医師以外のパラメディ カルスタッフの数など医療資源や連携機関が 限られており、本診療マップの流れが標準な診 療の流れとは言い切れない地域もあると思わ れる。地域ごとに本診療マップとの相違点など を検討できることが望ましい。不足している部 分をどのように補填していくか地域毎での対 策を講じていく事が望まれる。一方で本診療マ ップより優れている連携や診療の流れについ ても地域で検討することが重要と思われる。

診療の流れの妥当性や、連携に関しての有用 性など客観的な根拠は本診療マップでは示さ れていない。Mindsで認定されるようなガイド ラインレベルには達しておらず、今後論文的な 考察を踏まえて診療連携や他機関との連携の 効果を示して客観性のある診療マップに改訂

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していく必要がある。

本マップの対象はプライマリケア医または 子どもの心の診療を目指す医師に利用される ことが望まれる。本パンフレットは多くの医師 に活用してもらうためには、診療マップをアプ リ化して、診療医のスマートフォンから閲覧で きるようにすることが望まれる。マップの任意 の箇所をタップするとその項目の解説が閲覧 できるようにする。一方で書籍化をして幅広い 層に活用してもらえることも検討する。

2)連携機関との連携マニュアルの作成 今回の親子の心の診療マップは、対象を産婦 人科医、小児科医、精神科医、心療内科医とし た。診療科の異なる医師が共有意識をもつこと が最も効率的に連携が整うと考えたが、実臨床 ではパラメディカルスタッフの連携が重要と なってくる。他職種間での連携で問題となるこ とは、行政機関においてはどの部署が担当にな るのか、他職種への連絡のタイミング、伝える べき情報は何であるのかなど、互いに知り得て いることが大切と思われる。このマップが有用 に活用されるためにも、次年度の本研究班の目 標として親子の心の診療における多職種の連 携マニュアルを作成することと思われる。

3)診療マップの効果の検証

3つの本診療マップを活用することで、親子 の心の診療体制が円滑になり、子ども達、ある いは親を含む家族の心の問題の予後が改善さ れることが期待される。診療マップ導入後のア ウトカム改善を数字的に測定することは困難 であるが、子どもの心の診療医の数が増えるこ となども診療マップの効果検証として用いる ことができるかもしれない。

E.結論

親子の心の診療マップ3パターン(女性の心 版、子どもの心版、親の心版)を作成した。本 診療マップがプライマリケア医や子どもの心 の診療医に活用されることが期待される。今後、

診療マップの妥当性、実用性、や効果の検証が 望まれる。

分担執筆者・協力者

石井隆大(久留米大学小児科)、内山有子(東 洋大学ライフデザイン学部健康スポーツ学科)、 浦部富士子(久留米市保健所)、大西雄一(東 海大学医学部専門診療学系精神科学)、岡 明

(東京大学小児科)、岡田あゆみ(岡山大学病 院小児医療センター)、荻田和秀(りんくう総 合医療センター産婦人科)、片岡弥恵子(聖路 加国際大学大学院ウィメンズヘルス・助産学)、 川名 敬(日本大学産婦人科)、甲賀かをり(東 京大学大学院産婦人科学講座)、小柳憲司(長 崎県立こども医療福祉センター小児心療科)、

鮫島浩二(さめじまボンディングクリニック)、 清水知子(久留米市子ども未来部)、関口進一 郎(慶応義塾大学小児科)、田原由起子(久留 米市子ども未来部)、千葉比呂美(久留米大学 神経精神科)、藤内修二(大分県福祉保健部)、

平林 優子(信州大学保健学科)、松岡美智子(久 留米大学申請精神科)、三牧正和(帝京大学小 児科)、村上佳津美(堺咲花病院心身診療科)、

山崎知克(浜松市子どものこころの診療所)、

山下 洋(九州大学病院子どものこころ診療部)、 片柳章子(国立精神・神経医療研究センター認 知行動療法センター)、堀越 勝(国立精神・

神経医療研究センター認知行動療法センター)、 道端伸明(東京大学大学院ヘルスサービスリサ ーチセンター)、重安良恵(岡山大学病院小児 医療センター小児科子どものこころ診療部)、

藤井智香子(岡山大学病院小児医療センター小

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児科子どものこころ診療部)

F.研究発表 1.論文発表

Nakamura M, Tanaka S, Inoue T, Maeda Y, Okumiya K, Esaki T, Shimomura G, Masunaga K, Nagamitsu S, Yamashita Y.Systemic Lupus Erythematosus and Sjögren's Syndrome Complicated by Conversion Disorder: a Case ReportKurume Med J. 2018 Jul

10;64(4):97-101. doi:

10.2739/kurumemedj.MS644005. Epub 2018 May 21.

野々山未希子, 永光信一郎, 服部律子. 高校生 の対人関係への認識と性に関連する悩み.日 本性感染症学会誌2018;29:43-52.

永光信一郎.親子の心の診療に携わる人材を育 成 し て い く た め に . 小 児 の 精 神 と 神 経 2018;58(3):194-7.

永光信一郎. オールジャパン体制で挑む子ど も の 心 の 臨 床. 子 ど も の 心 と か ら だ. 2018;26:414-417.

永光信一郎.不登校【今日の診断指針 私はこ う治療している 2019】医学書院

2.著書

永光信一郎、松岡美智子.思春期の患者・保護 者への接し方のコツ.小児科.金原出版,

2018;59(5):496-502.

永光信一郎.起立性調節障害【今日の診断指針】

医学書院(印刷中)

永光信一郎.不登校【今日の診断指針 私はこ う治療している 2019】医学書院

永光信一郎, 三牧正和. 健やか親子21(第2次)

「すべての子どもが健やかに育つ社会」を目 指して 小児科(印刷中)

永光信一郎.【被虐待児における学童・思春期 の精神症状】特集:児童虐待の実態を知ろう 思春期学(印刷中)

2.学会発表

永光信一郎.小児神経科医が知っておくべき思 春期神経発達症・心身医学.第60回日本小 児神経学会学術集会 2018.5.31(千葉)

永光信一郎.親子の心の診療に携わる人材を育 成していくために.第119回日本小児精神神 経学会 2018.6.10(東京)

永光信一郎.親子の心の診療のための多職種連 携.(特別企画 演者) 第 121 回日本小児 科学会学術集会 2018.4.22(福岡)

Ishii R, Nagamitsu S, et al. Adverse factors affecting sleep in children and validation the Children’s Sleep Habit Questionnaire – Japanese version2018 Pediatric Academic Societies Meeting 2018.5.5(トロント)

Shimomura G, Nagamitsu S, et al. Association between problematic behaviors and individual/environmental factors for a difficult child2018 Pediatric Academic Societies Meeting 2018.5.5(トロント)

Nagamitsu S, Fukai Y, Uchida S, et al. Validation

(12)

Study of a Novel Childhood Eating Disorder Outcome Scale for Outcomes at a 12-Month Follow-Up.AACAP's 65th Annual Meeting 2018.10.24(シアトル)

Yuge K,,,,Nagamitsu S et al. Explore evaluation methods of treatment efficacy on spinal muscular atrophy.International Child Neurology Congress Mumbai 2018 2018.11.15(ムンバ イ)

永光信一郎.思春期の希死念慮に影響を与える 因子の解析 中高生 2 万人のアンケート 調査から59 回日本心身医学会総会 ならびに学術講演会 2018.6.9(名古屋)

永光信一郎.思春期やせ症アウトカムスケール の開発.第37回日本思春期学会.2018.8.18

(東京)

永光信一郎、作田亮一、岡田あゆみ、石井隆大、

山下裕史朗.思春期健診とモバイルテクノロ ジーを活用した思春期ヘルスプロモーショ ンに関する研究.第36回日本小児心身医学 会学術集会 2018.9.7(さいたま)

永光信一郎、村上佳津美、小柳憲司、岡田あゆ み、山崎知克、関口進一郎、石井隆大、松岡 美智子、山下裕史朗.ライフステージから見 た親子の心の診療のための多職種連携に関 する研究.第36回日本小児心身医学会学術 集会 2018.9.7(さいたま)

石井隆大、永光信一郎、山下裕史朗.子どもの 心の診療体制について 多職種との連携 10年の軌跡.第36回日本小児心身医学会学 術集会 2018.9.7(さいたま)

石井隆大、永光信一郎、井上建、大谷良子、作 田亮一、松石豊次郎、山下裕史朗.子どもの 睡眠習慣質問票-日本語版-の標準化研究 とその分析.第36回日本小児心身医学会学 術集会 2018.9.8(さいたま)

須田正勇.5 歳児の睡眠習慣が行動・認知・習 癖に及ぼす影響について.第121回日本小児 科学会学術集会 2018.4.20 (福岡)

石井隆大.久留米大学病院 子どもの心のクリ ニック10 年の軌跡.第121回日本小児科学 会学術集会 2018.4.21(福岡)

石井隆大.起立性調節障害の睡眠ポリグラフィ ーを用いた新たなアプローチ.第60回日本 小児神経学会学術集会2018.6.1(千葉)

-3.研究会・学会地方会

石井隆大、山下大輔、須田正勇、弓削康太郎、

石原潤、高木裕吾、水落建輝、永光信一郎、

山下裕史朗.特発性脊柱側弯症を伴った摂食 障害の一例.第 14 回 日本小児心身医学会 九州沖縄地方会 2018.3.18(沖縄)

山下大輔、石井隆大、千葉比呂美、永光信一郎、

山下裕史朗、日本小児心身医学会摂食障害ワ ーキンググループ.日本語版小児摂食態度調 査票(ChEAT-26)神経性やせ症と回避・

制限性食物摂取症との比較から用途を考え る―.第 14 回 日本小児心身医学会九州沖 縄地方会 2018.3.18(沖縄)

永光信一郎、酒井さやか、山下美和子、下村豪、

須田正勇、石井隆大、弓削康太郎、山下裕史朗.

周産期メンタルヘルスにおける小児科医の

(13)

役割について.第 14 回 日本小児心身医学 会九州沖縄地方会 2018.3.18(沖縄)

-4.その他-

永光信一郎.親子の心の診療のための多職種連 携に関する調査研究報告 行政・精神科・

小児科・産婦人科の連携29回九州・

沖縄社会精神医学セミナー2018.1.13(福岡)

永光信一郎.思春期の子どもの理解を深めよう

~話さない息子よ、娘よ、何を考えてるの?

~ 久留米大学高次脳疾患研究所第16回市 民公開講座 2018.3.3(久留米)

永光信一郎.思春期の保健課題と心身症につい て 平成30年度八女筑後地区学校保健会総 会特別講演 2018.6.13(八女)

永光信一郎.思春期の心身の発達と保健課題に ついて.筑豊子ども問題研究会.2018.6.15 (飯 塚)

永光信一郎.思春期健診、思春期アプリ等を活 用した思春期のヘルスプロモーションの向 上を目指す介入研究について久留米市思春 期保健意見交換会 2018.7.27(久留米市)

永光信一郎.小児科医・産婦人科医・精神科医・

心療内科医のための親子の心の診療マップ.

久留米精神科医会学術講演会.2018.10.1(久 留米)

永光信一郎.周産期から子育て世代の切れ目の ない支援.平成30年度 第1回『筑後かか りつけ医・産業医と精神科医連携研修』.

2018.10.16(久留米)

永光信一郎.思春期の保健課題の克服~中高生 2万人のアンケート調査から.日本小児科医 会 第 18 回 思 春 期 の 臨 床 講 習 会 . 2018.11.4(東京)

永光信一郎.思春期の子どもの理解を深めよう

~話さない息子よ、娘よ、何を考えてるの?

~.平成 30 年度日田市家庭教育講演会.

2018.11.16(大分)

永光信一郎.思春期の親子のかかりつけ医制度 に 向 け て . 大 牟 田 小 児 科 医 会 講 演 会 . 2018.11.28(大牟田)

G.知的財産権の出願・登録状況

1.特許取得 なし

2.実用新案登録 なし

3.その他 なし

参照

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