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[ 月 ] 金融財政ビジネス第 3 種郵便物認可に買い入れてきた結果 民間銀行による準備預金が大きく膨張していることが分かる これらは民間銀行にとっては完全な 余剰資金 である 市場参加者全員がこのように 巨額のカネ余り 状態にある下では Fedが危機前のような少額の規模で金融

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(1)

大規模買

課題

  2008年9月のリーマン・ショ ック後の同年末から、Fedは約7 年間にわたり、数次の大規模な資産 買い入れ(LSAP、通称QE〈量 的 緩 和 〉) に よ る 金 融 政 策 運 営 を 展 開してきた。これは、政策金利であ るFFレートが、危機直後に早くも 「 ゼ ロ % 近 傍 」 に 達 し、 そ れ 以 上 の 引き下げ余地がなくなってしまった ため、それに代わる、さらなる緩和 策として展開されたものである。そ の目的は、開始直後は金融市場の危 機的状況を収束させることにあった が、その後は、米国経済の低迷状態 が、1930 年 代 の 大 恐 慌 以 来 の 〝 T h e  G r e a t  R e c e s s i o n 〟 ( 大 不 況)ともいわれるほどに深刻化し長 期化したことを受けて、景気の下支 えへと、次第に軸足を移していった。   その結果、Fedのバランスシー トは、危機前の約5倍という規模に 膨張した上、資産・負債それぞれの 構成内容も大きく変化したため、金 融市場との関係も抜本的な変化を余 儀 な く さ れ た( 図 表 1) 。 す な わ ち、 危機前にはFedの負債の大部分を 銀行券が占め、民間銀行による準備 預金(図表1中の「預金機関預金」 ) は所要最小限の規模で維持されてい た に す ぎ な か っ た た め、Fed は 日々の金融調節によって、短期金融 市場の資金需給を相対的にごく少額 で変化させれば、市場参加者の中に 資金不足先と資金余剰先とが生まれ て短期金融取引が成立し、市場金利 を簡単に引き上げ誘導、ないしは引 き下げ誘導することが可能であった。 しかも、Fedの負債は、他の中央 銀行と同様、基本的に、銀行券、準 備預金とも無利子であったため、金 融政策を運営する上で、財務運営上 のコストがかさむことなどあり得な かったのである。   ところが、LSAP展開後の状況 ( 15年 末 時 点、 図 表 1) を 見 る と、 Fedが財務省証券(米国債)やモ ーゲージ担保証券(MBS)を多額

金融正常化、

戦略

と示唆

「出

」の

財務運営悪化、

どう乗

り切

日本総合研究所上席主任研究員 河村小百合   米連邦準備制度(以下 Fed )は 2015 年 12月、金融危機直後から一貫して「ゼロ%近傍」に据え 置いてきたフェデラル・ファンド( FF )レートを、 7 年ぶりに引き上げ、金融政策運営の正常化に向 けたオペレーションについに着手した。 Fed は正常化戦略を、いつごろから、議論をどのように積み 重ねて練ってきたのか。正常化に向けての今後の政策運営には、どのような制約や課題があり、それを いかにして乗り切ろうとしているのか。そして、このような取り組みを参考に、わが国としては、今後 の金融政策運営をいかに考えるべきか。 か わ む ら ・ さ ゆ り   88年 3 月 京 大法学部卒、 同年日本銀行入行、 91年 2 月 日 本 総 合 研 究 所 入 社 (調査部) 、 14年7月から現職。 09 年 か ら 国 税 審 議 会 委 員 、 14年 か ら住宅金融支援機構事業運営審 議 委 員 会 委 員 、 15年 か ら 行 政 改 革 推 進 会 議 民 間 議 員 、同 歳 出 改 革WG座長代理をそれぞれ務め る。  

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に買い入れてきた結果、民間銀行 による準備預金が大きく膨張して いることが分かる。これらは民間 銀行にとっては完全な 「余剰資金」 である。市場参加者全員がこのよ うに「巨額のカネ余り」状態にあ る下では、Fedが危機前のよう な少額の規模で金融調節を行い、 資金需給を変化させたところで、 短期金融取引は発生せず、市場金 利を意図したように誘導すること はできない。では、どうすれば危 機 前 の よ う に、 中 央 銀 行 と し て 日々の金融調節を必要最小限の規 模で行うことで、政策金利を自由 に上げ下げできる状態、機動的に 金融政策を運営できる状態を回復 す る こ と が で き る の か ― 現 在 の Fed の み な ら ず、 同 様 に LSAPを展開してきた日銀やイ ングランド銀行が抱える最大の課 題はこの点にある。

Fed

正常化戦略

  ではFedは危機後、 「大不況」 状態に陥った米国経済の立て直し のためにLSAPを進めつつ、金 融政策運営を正常化させる方法を、 いつごろからいかに検討し、米国 民や市場に説明してきたのか。   米 連 邦 準 備 制 度 理 事 会(FRB) のバーナンキ前議長は、Fedがま だ〝QE1〟の終盤にあった 10年2 月、結果的には約7年間にわたるこ ととなったLSAPによる政策運営 を通じてみれば、まだその初期段階 と言えるこの時期、米議会の下院金 融サービス委員会において、早くも 「Fed の 出 口 戦 略 」 に 関 す る 証 言 を行っている。 その中で前議長は 「現 下 の 金 融 拡 張 策 が 成 熟 す れ ば、 Fedは、インフレ圧力の高まりを 回避するため、金融引き締めが必要 と な る 」「Fed は、 し か る べ き 時 が来れば、金融を引き締める幾つも の ツ ー ル を 有 し て い る 」「 最 も 重 要 なのは、 08年 10月に、米議会による 規定改正により、準備預金への付利 が可能になった点。これで、全ての 短期金利に押し上げ圧力をかけるこ と が 可 能 と な っ た 」「 多 額 の 超 過 準 備を圧縮(排出)するための追加的 なツールとして、リバース・レポや ターム預金なども開発中である」な どと述べている。前議長は「異例の 緩和がこのまま永続することは決し てあり得ない」と、まずクギを刺し た 上 で、 現 時 点 で の「 正 常 化 戦 略 」 預金機関預金 114億ドル (負債サイド) (資産サイド) 2007年12月末 総資産 約8,938億ドル (負債サイド) (資産サイド) 2015年12月末 総資産 約4兆4,866億ドル 発行銀行券 7,918億ドル 短期債 2,419億ドル 中長期債 4,710億ドル 財務省 証券 7,546億ドル 財務省 証券 2兆4,616億ドル 発行銀行券 1兆3,808億ドル 預金機関預金 2兆2,087億ドル リバースレポ約定等 4,985億ドル その他負債・資本 3,986億ドル 中長期債 2兆3,466億ドル インフレ連動債 1,149億ドル MBS 1兆7,475億ドル その他証券 2,065億ドル その他 710億ドル インフレ連動債 418億ドル リバースレポ約定等 405億ドル レポ約定等 670億ドル その他 722億ドル その他負債・資本 500億ドル 金 利 ゼ ロ 金利 ゼ ロ 超 過 準 備 付 利 引 き 上 げ F e d の コ ス ト 負 担 (注)インフレ連動債の計数にはインフレ変動による元本調整分 も含む

(出所)FRB, Federal Reserve statistical release, H.4.1 Factors Affecting Reserve Balances of Depository institutions and Conditions Statement of Federal Reserve Banks, December 27, 2007および December 31,2015の計数を基に日本総合研究所作成

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で実際に採用されている手段を、こ の時点でほぼ正確に認識し、米議会 という米国民や市場に対する正式な 説明の場で、具体的かつ明確に述べ ているのである。   その後、 11年には、Fedが実際 の金融政策運営を決定する連邦公開 市場委員会(以下FOMC)におい ても、正常化戦略の在り方が議題と された。同年6月には、その原則に 関して、FOMCで合意がなされた。 当時、FOMC内では、Fedが金 融政策のオペレーション上抱えるポ ートフォリオ(ニューヨーク連銀の シ ス テ ム 公 開 市 場 勘 定、 以 下 SOMA)の規模が巨大化し、かつ て は 皆 無 で あ っ た 多 額 の MBS を Fedが保有するに至っていること や、資産の肥大化の裏返しとして、 負債側では巨額の超過準備を抱えて いることを問題視する考え方が根強 かったもようである。この時点にお いては、正常化プロセスの第1段階 として、SOMA内で満期が到来し た債券の満期落ちの開始が掲げられ ていたり、その後の段階で、MBS を満期到来前に市場に売却すること も正常化の手段に含められていたな ど、現在、実際に採用されている正 常化戦略とは、一部異なる点も見ら れていた。   その後、Fedが累次のLSAP を断続的に展開しつつ、正常化戦略 に関する検討を深める上で、大きな 転機になったとみられるのが、 12年 12月のFOMCである。この会合に は、正常化局面に関するFRBスタ ッフによる試算結果が提示され、そ れを踏まえて議論が行われている。 その試算結果は、正常化局面におけ るFed自身の財務運営や連邦財務 省への納付金がどのような形になる の か に 関 す る 点 を 含 む も の で、 FOMCメンバーの多くが、かなり の 衝 撃 を 受 け た 様 子 が 議 事 要 旨 ( M i n u t e s ) か ら も う か が わ れ る。 その前回会合までは議論にも上って いなかった、先行きの政策運営に関 する慎重論が、この 12月のFOMC か ら 次 第 に 拡 大 し、 翌 13年 3 月 の FOMCにおいては「LSAPを同 年末まで継続すべき」との見解を表 明したのは、わずか2人のメンバー にとどまり、残りのメンバーは全員 「 そ れ よ り も 前 の 時 点 で 買 い 入 れ の ペースを落とす、ないしは終了させ るべきだ」と主張したほどであった。   なお、FedはFOMCにおける このような議論と並行して 13年1月、 対外向けにFRBスタッフによるデ ィスカッション・ペーパー(以下ペ ー パ ー) と い う、 い わ ば「 未 定 稿 」 ながら、正常化局面におけるFed の財務運営等に関する試算結果を公 表している。そしてこのような流れ の中、バーナンキ前議長は 13年5月、 米議会の上下両院合同経済委員会で 議 会 証 言 を 行 い、 「 超 低 金 利 の 持 続 が金融の安定を阻害する可能性を深 刻 に 受 け 止 め て い る 」「 副 作 用 の 監 視 を 強 化 す る 」「 13年 中 に も 資 産 買 い入れを縮小する可能性がある」な どと述べた。これを機に、米国の長 期金利は急騰し〝バーナンキ・ショ ック〟とも呼ばれる事態となった。   そして翌6月のFOMCにおいて は、 11年当時とはSOMAの規模も 内 訳 も 変 化 し た た め、 〝 正 常 化 政 策 の原則〟を一部、見直す方向で検討 することとされた。その後、同年末 にかけてFOMC内で議論を詰め、 14年1月から、資産買い入れ規模の 縮小( t a p e r i n g )が開始された。   そして、FOMCにおいては、実 際の正常化プロセスの在り方に関す る検討がさらに重ねられ、 14年には、 〝 政 策 正 常 化 の 方 針 と 計 画 ″ が 公 表 されている。これは、正常化プロセ スの手順、および実際に用いる手段 を、 11年時点の原則とは一部変更す るもので①FFレートの引き上げ誘 導開始②SOMAの保有資産の再投 資停止開始、という手順で進めるほ か、バランスシート規模を縮小させ、 超 過 準 備 を 解 消 す る 手 段 と し て、 MBS売却は基本的には想定しない こととされた。これは、市場金利へ の悪影響の可能性もさることながら、 スタッフの試算結果に基づき財務運 営上の悪影響を勘案した結果でもあ ったもようである。   イエレン現FRB議長は、この 14 年9月のFOMC後の記者会見にお いて、正常化のめどは 20年ごろを想 定していると説明している。そして 翌 10月をもって、資産買い入れは停 止された。その後も再投資によって SOMAの規模は維持されてきてい るが、 15年 12月、危機後初のFFレ ー ト 引 き 上 げ 誘 導( 上 限 0・ 25% →0・ 50%)が実施されたのである。

FRB

財務運営

試算

  ここで、FOMCにおける議論に もかなりの影響を与えたとみられる、 Fedの財務運営の先行きに関する

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試算結果がどのようなものであった のかを、 13年1月に一般に対外公表 され、その改訂版が同年9 月に公表されたペーパーの 内容から見てみよう。   FRBのスタッフは、試 算を策定した 12年時点にお いて、市場で形成されてい た金利見通し(図表2)を ベースに、当時のFOMC で実際に展開されていた議 論を勘案し①FFレートの 引き上げ誘導と、買い入れ 資産の再投資停止(満期落 ち)によってバランスシー ト規模や超過準備の縮小を 図るシナリオを「ベースラ イン」 とし②それに 「MBS 売却」を加えたシナリオや ③「失業率が6%に低下す るまでFFレートの引き上 げ 誘 導 開 始 を 待 つ 」( = 正 常化への着手を後ずれさせ る)シナリオ④オーバーナ イト・リバース・レポのよ うな、一時的に超過準備を 吸 収 す る オ ペ を 併 用 し、 Fedが超過準備に支払う 金利(IOER)が、市場 予測のFFレート水準を 50 ベーシスポイント(bp)上回らざるを得 なくなるシナリオや⑤市場金利がベ ースラインよりも200bp程度上 振れする「高金利シナリオ」等─を 合わせて検討している。この時点に おいては、FFレートの引き上げ誘 導開始は「ベースライン」では 15年 8月、最も遅いシナリオでは 17年6 月と想定されていた。また、再投資 停止(満 期落ち開 始) は「ベ ースライ ン」で 15 年2月、 最も遅い シナリオ では 16年 12月と想 定されて いた。シ ナリオご との試算 結果は、 具体的な 計数では なく、グ ラフの形 態のみで 公表されている。   試 算 結 果 の 一 部 を 見 て み る と、 SOMAの債券保有規模は、満期落 ちへの着手によって 20年前後までに 急速に縮小し、同年前後には超過準 備がほぼ解消する姿が示されている (図表3) 。また、FFレートの引き 上げ誘導によって、SOMAで保有 する資産の利回りとIOERとの間 0 1 2 3 4 5 6 7 10 12 14 16 18 20 22 24(年/期) 実際のFFレート (%) (%) ベースライン 高金利 引き締め後ずれ(失業率6%まで低下待ち) FFレート 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.55.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 10 12 14 16 18 20 22 24 ベースライン 高金利 引き締め後ずれ(失業率6%まで低下待ち) 10年物財務省証券 (年/期)

(出所)Seth B. Carpenter et al, The Federal Reserve's Balance Sheet and Earnings: A primer and projections , Finance and Economics Discussion Series(FEDS) 2013-01, Divisions of Research & Statistics and Monetary Affairs, Federal Reserve Board, September 2013, p24 Figure 1を基に、日本総合研究所が一部加筆

〈図表2〉2013年のFEDSの試算における、各シナリオの金利の前提(FFレート) 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500 5000 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 ベースライン ベースライン+MBS売却 引き締め後ずれ(失業率6%まで低下待ち) (10億$) SOMAの保有額 (10億$) 準備預金残高 08 11 14 17 20 23 (年/月) 08 11 14 17 20 23(年/月)

(出所)Seth B. Carpenter et al, The Federal Reserve's Balance Sheet and Earnings: A primer and projections , Finance and Economics Discussion Series 2013-01, Divisions of Research & Statistics and Monetary Affairs, Federal Reserve Board, September 2013, p25, Figure 2を基に日本総合研究所作成

〈図表3〉ニューヨーク連銀のシステム公開市場勘定(SOMA)の     保有額と準備預金残高の試算結果

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とでの順ざやの幅が次第に縮小する 等の事情により、Fedの収益基盤 が悪化し、Fedが正常化プロセス に あ る 間 の 2 〜 5 年 程 度 の 期 間、 連邦財務省への〝納付金ゼロ〟とな る姿も示されている (図表4) 。実際、 収 益 の 悪 化 は、 〝 納 付 金 ゼ ロ 〟 に よ っても賄い切れない程度にまで落ち 込むが、Fedの場合、損失分は会 計 上〝 繰 延 資 産 〟( d e f e r r e d  a s s e t s ) を 資 産 サ イ ド に 計 上 し て、 いわば、Fedの先行きの利益を先 食いする形で対応する制度となって い る。 そ の 最 大 の 幅 は、 「 ベ ー ス ラ イン」シナリオで 19年に200億㌦ 程 度、 「 高 金 利 + MBS 売 却 」 シ ナ リオでは売却損もかさむため、同年 に実に1400億㌦程度にまで達す るとの結果となっている。 この試算結果が、FOMC において提示された内容と 全く同じかどうかまでは定 かではないが、FOMCメ ンバーが相当な衝撃を受け たであろうことは想像に難 くない。   その後の実際の政策運営 は、この時点における前提 とはやや異なるパスをたど っている。しかしながら、 この試算結果は、正常化局 面における金融市場の姿や、 中央銀行であるFedの財 務運営がどの程度の影響を 受けることになるのかを把 握する上で、今もなお、大 いに参考になるものである と言えよう。   米国の場合、Fedと議 会との間には緊張関係が存 在し、とりわけ共和党は、 危機後のFedの超金融緩和政策に 批 判 的 な ス タ ン ス を と っ て い る。 Fedの首脳陣やFOMCメンバー は、正常化プロセスの進展に伴い、 先行きのFedの収益が悪化すれば、 金融政策運営上、政府からの独立性 が損なわれかねない点をかなり憂慮 しているものとみられる。

正常化

制約

  LSAPによる金融政策運営は、 それを実施している間、言い換えれ ば実体経済の回復基調がはかばかし くない間は問題が表面化しにくい。 ただし、いったん正常化プロセスに 入り、実体経済の回復の足取りが確 かなものとなって、市場金利が上昇 してくれば、中央銀行は財務運営上 の困難に直面する。FRBのスタッ フによる試算結果は、この点をまざ まざと物語るものとなっている。   Fedの場合、中央銀行として損 失を計上したり、連邦政府からの損 失補 ほ 塡 て ん を得たりすることは現行制度 上、想定されてはおらず、また、現 在、米国内でそのような対応が議論 の 俎 上 じょう に 上 っ て い る わ け で も な い。 前述の通り、そのようなケースでは Fedは制度上、自らの先行きの利 (10億ドル) 繰延資産 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 (10億ドル) 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 (10億ドル) 財務省への納付金 10 13 16 19 22 25 (年) 10 13 16 19 22 25(年) 25 (年末) 25(年末) ­20 0 20 40 60 80 100 120 140 ­20 0 20 40 60 80 100 120 140 (10億ドル) ベースライン ベースライン+MBS売却 引き締め後ずれ(失業率6%まで低下待ち) 超過準備付利水準FFレートに+50bp上乗せ ベースライン ベースライン+MBS売却 高金利 高金利+MBS売却 10 13 16 19 22 10 13 16 19 22

(出所)Seth B. Carpenter et al, The Federal Reserve's Balance Sheet and Earnings: A primer and projections , Finance and Economics Discussion Series 2013-01, Divisions of Research & Statistics and Monetary Affairs, Federal Reserve Board, September 2013, p26 Figure 3, p28 Figure 5を基に日本総合研究所作成

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17 2016.2.8[月] 金融財政ビジネス 第3種郵便物認可 益 を 充 当 し て 損 失 を 埋 め る 形 で の 「 繰 延 資 産 」 を 計 上 し て 対 応 す る こ とになっており、すでに、小幅の計 上ながらそのように対応した実績も ある。   今次「正常化局面」においては、 実際の金融情勢等の推移にもよるが、 この「繰延資産」は、どこまで計上 することが許されるのか、図表4の 「 繰 延 資 産 」 の 折 れ 線 で 示 さ れ た 部 分の面積(=Fedが被る損失の累 積額)がどの程度まで拡大すること が許されるのか、という点が焦点と なってくる可能性がある。ちなみに、 この点に関してFRBスタッフによ る前掲のペーパー( 13年公表)は、 決して「青天井」とはなり得ないと いう意味で「繰延資産が将来の収益 によってペイ・ダウンされることに 鑑 み れ ば、 〝 全 て の 将 来 の 収 益 を 割 引現在価値化した額″を超過するこ とは許されない、 と考えるのが妥当」 (P 13、 訳 は 引 用 者 ) と 述 べ て い る。 Fedが金融政策運営を正常化させ るためには、このような収益悪化状 態を限られた年数内で乗り切って、 超過準備を解消させることが必要と なるが、この点が正常化局面におけ る Fed の 政 策 運 営 の〝 重 い 制 約 〟 となってのしかかってくる可能性も ある。Fedは期近で満期を迎える 財務省証券や、繰り上げ償還になる であろうと想定されるMBSを相当 額保有している(図表5)が、この 〝 制 約 〟 を 何 と か 乗 り 切 る べ く、 FedはFFレートの引き上げ誘導 がある程度まで進めば、次のステッ プとして、保有する債券の再投資停 止に大胆に踏み切ってくるものと考 えられる。

示唆

  金融政策運営の正常化に向けた、 Fedのこれまでの検討の進め方 や実際の取り組みは、わが国にお ける今後の金融政策運営を考える 上で、重要な示唆を含むと言える。   LSAPは、ひとたび踏み切っ てしまうと、従来のような機動的 な金融政策を行い得る環境を、そ の中央銀行が取り戻すことは容易 ではなくなる、という性質のもの だ。そうであれば「何が何でも物 価目標が達成されるまでは、ひた すらLSAPを継続し、正常化に 関しては、物価目標が達成された 時点で改めて考えればよい」とい う筋合いのものでは決してないはず だ。LSAPの実行と同時並行的に、 正常化局面の政策運営の困難さの度 合い、国内経済全般や財政運営に与 える影響、正常化までに必要な年数 等を十分に考えるべきであろう。   とりわけ、中央銀行の財務運営に 与える影響を把握することは必須で あろう。Fedの場合にも、この試 算がFOMCに提示された 12年末か ら、FOMCでの議論は一変してい る。加えて、とりわけ重要なのは、 Fedがなぜ、財務運営の先行きに 関するFRBスタッフの試算結果を 一般向けにも対外公表したのか、と いう点だ。FOMCにおける議論の 内容は、現行制度上は、3週間後に 議事要旨のみが公表され、5年後に、 詳 細 な 議 事 録( t r a n s c r i p t s ) が、 当 日提出された資料と共に公表される。 Fedとしては、試算結果まで一般 向けにも対外公表しなければならな い制度上の義務はその時点ではなか ったが、恐らく首脳陣は、この試算 結果を併せて公表しなければ、先行 きの正常化局面における政策運営の 困難さの度合いを、正しく米国民や 市場に理解してもらうことはできな い、と考えたのではないか。そこに 25 23 21 19 17 15 100 200 300 400 500 600 700 2015年は満期落ちは 実施せず 0 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 (年) (10億ドル) (10億ドル) SOMAの年間満期到来額(左軸) SOMAの満期到来額累計(右軸、2015年分を含む)

(原資料)Federal Reserve Bank of New York and Blue Chip interest rate forecasts.

(注1)2014年12月31日時点のシステム公開市場勘定(SOMA)の 証券保有額に基づく

(注2)MBSのペイ・ダウンのパスは、足元(当時)の連邦準備の保有、 ブルーチップの金利見通し、およびRichard and Roll(1989) の早期償還モデルに基づく

(出所)Stanley Fischer, Conducting Monetary Policy with a Large Balance Sheet, Remarks at the 2015 U.S. Monetary Policy Forum Sponsored by the University of Chicago Booth School of Business, February 27, 2015, Figure 4を基に日本総合研究所が一部加筆

〈図表5〉SOMAの満期到来額の見通し

    (2014年末時点ベース)

時事通信社「金融財政ビジネス」2016年2月8日号

時事通信社「金融財政ビジネス」2016年2月8日号

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は、国の経済全体に影響を及ぼす金 融政策運営を預かる当局としての、 国民に対する責任感や使命感、誠実 さがうかがわれる。   日銀も金融政策決定会合で、正常 化局面での政策運営の在り方を、自 らの財務運営への影響や国の財政運 営への影響等の試算も踏まえて、き ちんと議論すべきである。わが国の 場合、米国とは異なり、財務運営へ の影響はとりわけ深刻であり、最終 的には国民負担につながる可能性も ある。日銀は今年度決算から、将来 の収益悪化に備えて引当金を計上す ることが認可されたが、そうであれ ば、そのような対応で先行き果たし て十分なのかどうかを、財政当局も 責任を持って検討する必要があろう。 日銀は去る1月 29日、超過準備の一 部(今後の新規積み立て分)にマイ ナス金利を適用することを決定した。 しかし、既存の巨額の超過準備には 何ら影響はなく、出口局面での財務 運営問題に対しては何の解決にもな らない。日銀はFedの取り組みに ならい、正常化局面において想定さ れる自らの姿や経済情勢について、 責任を持って国民に説明すべきであ ろう。

参照

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