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紙のリサイクルに伴う環境影響の定量評価

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Academic year: 2022

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紙のリサイクルに伴う環境影響の定量評価

−製紙汚泥焼却灰再利用の有効性の検証−

NTTアクセスサービスシステム研究所  正会員 ○佐々木 理 同  上        正会員  安田 眞弘 同  上        正会員  石本 弘治

1.はじめに 

 近年紙のリサイクルが進み,それに伴い製紙汚泥と呼ばれる廃棄物が年々増加している。現在製紙汚泥は焼 却して減量化を図り焼却灰として埋め立て処分されているが,その処分地を確保することが難しくなってきて いる。このような焼却灰の有効利用法の一つとして,ゼオライト等に転換して水質浄化材やガス浄化材等に適 用する試みがいくつかの研究機関で行われている。しかし現状では焼却灰をいかに有効利用するかということ に主眼が置かれ,紙のリサイクル全体を見たときに現状の埋め立て処分以上に環境負荷を及ぼすことはないか という検証はほとんど行われていない。 

 本稿では,製紙汚泥焼却灰の有効利用技術の一つとしてNTTが提案する多孔質材料「MPM(マイクロポ ーラスマテリアル)」を一つのケーススタディとし,環境負荷という観点での製紙汚泥焼却灰再利用の有効性 を検証したので報告する。 

2.紙資源のトータルリサイクルを実現するMPM 

再生紙 

 MPMは活性炭のように微少な孔が多数空い た多孔質材料であり,高い陽イオン交換性能と 大きな比表面積を有している。この特徴により,

窒素やリンを効率的に吸着する水質浄化材とし ての利用が可能となるほか,水浄化後のMPM を土壌に混ぜ合わせることにより,吸着した窒 素やリンを土壌の栄養分として還元することも でき,真の意味での紙資源のトータルリサイク

ルが可能となる1)(図1)。  図1 MPMによる紙資源のトータルリサイクル構想 

使用済みMPM  再利用  循環資源 

畑 

客土  MPM 

水浄化 

成形工程  乾燥工程 

ろ過工程  合成工程  資源  有効利用 

現状: 

埋立処分 

焼却灰 

【焼却処理場】 

【再生紙製紙工場】 

製紙スラッジ  回収 

古紙  市場  製紙工場 製品  粘土 

木 

他の用途 

● ガス浄化 

● 土壌改良 

● 劣化抑止 

3.環境負荷を指標としたMPMの有効性の検証  3.1 MPM生成に伴う環境負荷の定量化 

 環境負荷の定量化手法の一つであるLCAを用いて,焼却灰をM PMとして再利用することが有効であるかどうかを検証する。た だし,MPMは研究段階にありその使用や廃棄に関わる環境負荷 の定量化は困難である。ここでは工程が確立されているMPM生 成に関わる環境負荷をCO2排出量について定量化した(図1の太 枠部分)。計算に使用した各材料のCO2排出量原単位を表1に示 す2)。なお,定量化は焼却灰1tを生成設備に投入してからMPM が生成されるまでを対象とする。生成設備の処理能力は150kg/1 バッチ(2日)である。 

表1 使用したCO2排出量原単位2)

電力 0.533 kWh

灯油 2.678 l

苛性ソーダ 1.148 kg

硫酸 0.073 kg

上水 2.011 m3

項目 CO2排出量原単位

( kg-CO2/* )

単位 ( * )

 キーワード リサイクル,製紙汚泥焼却灰,多孔質材料,LCA,CO2排出量 

連絡先   〒305-0805 茨城県つくば市花畑1-7-1  TEL:0298-68-6240  E-mail:[email protected]  

土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月)

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(2)

   

 定量結果を表 2 に示す。MPM1t の生成に伴う CO2排出量は 3,932kgであることがわかった。 

表2 CO2排出量定量結果

焼却灰        1 t

苛性ソーダ        500 kg          574 灯油          69 l          185 電力      5,359 kWh        2,857 硫酸        267 kg        19 上水        148 m3          298

合計       3,932

排出CO2 ( kg )

項目 消費量 単位

3.2 焼却灰埋め立てとの比較 

 製紙汚泥焼却灰の埋め立て処分に伴う環境負荷は,焼却灰1tあ たり108kgである3)。焼却灰からMPMを生成することは,埋め 立て処分に比べ 40 倍近くの環境負荷を及ぼすことに相当すると いえる。つまりMPM生成により,廃棄物を有効利用して環境保 全に貢献している一方,新たな環境負荷を生み出していることに なる。これはMPMに関わらず,焼却灰再利用技術のほとんどす べてにいえることであると考えられる。新たな環境負荷を投じて 作り出したものが,それに見合う役割を果たすかどうかというこ とが重要になる。 

MPMは,水質浄化材として十分な性能を有していることが現 場試験等を通じてわかっており 4),NTTでは活性炭やゼオライ トに代わる材料として実用化を目指している。そこで,MPMが 市場において活性炭に置き換わる水質浄化材として確立された場 合を仮定する。このとき活性炭の製造に伴って生じる環境負荷量 が削減できる。活性炭製造に伴うCO2排出量は,諸性能に応じて 変わってくると思われるが,1tあたり6,207kgという一つのデー

タがある2)。これを参照すると,焼却灰1tの埋め立てと活性炭1tの製造に際し,トータル6,315kg のCO2

が排出量されている。これに対し,焼却灰1tからMPM1tを生成することに伴うCO2排出量は3,932kgであ り,前者に対し38%の削減効果があることがわかる(図2)。 

図2 現状との比較 6,315 kg

焼却灰埋め立て 

+活性炭製造  MPM生成 

38%の削減効果

108 kg/t 6,207

kg/t

3,932 kg/t

4.おわりに 

 製紙汚泥焼却灰から多孔質材料MPMを生成する際に生じる環境負荷をLCAを用いて定量化した。その結 果,MPMを生成することは焼却灰の埋め立て処分に比べると大きな環境負荷を及ぼすものの,MPMが活性 炭に置き換わるという仮定の下では環境負荷の削減が期待できることがわかった。活性炭製造に伴う環境負荷 は一つの参考データに過ぎないが,MPMの生成についても実用化に際しては製紙汚泥の焼却に伴う廃熱の利 用等により,さらに44%の削減が見込めMPM1tあたり2,208kgのCO2排出量に抑えることができる。この ことからMPMによる焼却灰の再利用は環境問題に対して有効な技術になり得るといえる。

しかし,これは環境負荷の中でも地球温暖化に関わる CO2排出量という一つの側面で見た場合のものであ る。環境負荷にはその他の大気環境や水環境,枯渇資源への影響等さまざまなものがあり,また焼却灰処分に 関しては埋め立て処分場の残容量とのかね合いも問題となる。これらのことに加え,焼却灰の処分だけでなく,

紙そのものの消費やリサイクルに伴う環境影響も考慮した検証を今後行っていく予定である。

参考文献 

1) 例えば,安田,石本,折口:製紙汚泥焼却灰から作られる水質浄化材の効果,第53回年次学術講演概要集  2) LCA実務入門編集委員会:LCA実務入門 

3) 佐野ら:都市ごみ焼却灰処理に伴う環境負荷の定量化,資源環境対策

4) 佐々木ら:製紙汚泥焼却灰から作る水質浄化材のフィールド試験による評価,第56回年次学術講演概要集   

土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月)

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