導坑を利用した大断面シールド機による岩盤掘削
阪神高速道路株式会社 正会員 ○崎谷 淨 阪神高速道路株式会社
高礒 徹 阪神高速道路株式会社 橋本 倫明 大林・佐藤・西武建設工事共同企業体 正会員 東出 明宏
1.はじめに
大断面泥水式シールド機により破砕帯を含む岩盤部を掘削中、潜在クラック等により大きな岩塊がチャンバ ー内に取り込まれて排泥口が閉塞し、掘進不能となった。これに対して、土砂と岩盤の層境部でのビット交換 用防護注入施工のために築造した水平導坑を利用し、掘削ズリをこの導坑から排出することにより掘進を可能 とした。本稿では、導坑を利用したシールド機による岩盤掘削について報告する。
2.シールド工事の概要
阪神高速 8 号京都線(山科〜鴨川東)のシールドトンネル区間の想定地質縦断図を図−1に示す。シールド 機が掘進する地質は、発進立坑から約
730m
区間は土砂部となっているが、残りの約120m区間は頁岩とチャ
ート主体の破砕帯を含む岩盤部である。土砂部と岩盤部の層境部付近において、土砂用ビットから岩盤用ロー ラカッタへの交換作業用の防護注入を行うため、到達側である既設NATM
トンネルの端部から水平導坑を推 進工法により築造した。防護工完了後にシールド機の掘進に支障となる推進管を引き抜き、導坑を裏込材で充 填している。1)図−1 想定地質縦断図
3.岩盤部施工時の問題
岩盤用ローラカッタへの交換を終え、破砕状態の厳しい区間、稲荷山断層主要部の粘土質区間などの岩盤部 を順調に掘進していたが、到達まで約
16mの地点でチャンバー閉塞(φ600
㎜排泥管吸込口)が発生した。チャンバー内の泥水を抜き、閉塞の原因となった岩塊を撤去後、何度か掘進を試みたが閉塞を繰り返すため、
流体輸送によるズリの排出を断念した。
キーワード : 泥水式シールド工法,道路トンネル,岩盤掘削,チャンバー内閉塞,ズリだし導坑
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琵 琶 湖 疏 水
京 阪 電 鉄
J R 奈 良 線 発
進 立 坑
Bk Dsc
Dg Dg
Dsg Dc
Bk
Osc
No.125 DL.(m)
Oc
Os Os Oc
Os Os Dc Oc Dsg
Dc
Og Og Oc Oc Og Oc Os dt
Bk
Oc
Oc Os Os
Oc Og
Oc Os
Og
中硬岩Oc Og
中硬岩
Oc
Os Oc
硬岩
稲荷山軟岩 断層
Bk
中硬岩 軟岩
No.120 No.115 No.110 No.105 No.100 No.95 No.90 No.85 No.80 No.75
Os
NATMトンネル端部
(シールド機転回部)
-30.0 -20.0 -10.0 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
縦断勾配 1.6875%
3.0%
Oc
Os
ビット交換地点地 質 凡 例 構 成 物
地質名 記号 盛 土
沖 積 層
洪 積 層 Bk Ac
Dc Dsc Dsg
粘性土 粘性土 砂・礫質土 砂・粘性土 礫混り粘土〜砂
礫質土 Ag
Dg 礫質土
崖 錐 層 Dt 礫混りシルト,砂礫主体
構 成 物 地質名 記号
大阪層群
Oc 固結粘性土 よく締った砂質土 Os
Osc 砂・粘性土 よく締った礫質土
伏見側
Og山科側
西行トンネル 掘進方向 土砂部 岩盤部
立坑 転回部
6-035
土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)-69-
今回の閉塞に関して、地質状況および施工状況から、以下のような 泥水式の排泥機能が機能しなかった要因が考えられる。
・ 当該地質は丹波層群に位置し、節理の多い頁岩層が主体。このた め頁岩は層状に崩れやすく、さらに当該箇所の節理が差し目であ るため、シールド機の掘削により 30 ㎝以上の大きな岩塊が崩れた。
・ 頁岩と頁岩の間に RQD 値がゼロでかなり破砕された状態の砂岩層 があり、この砂岩層がしっかりしていないためにシールド機が頁 岩を小さく小割に割ることができなかった。(写真−1)。
・ シールド機の切羽部は
NATM
トンネル端面に近く、地山は解放的 な状態にある。また、NATM
トンネルは平成13
年に施工完了し ており、施工による弛みがあった上に、経年劣化している。4.排土方法の変更
対策としては、到達側の既設
NATM
トンネル側から全断面で迎え掘りしてシールド機を引き出す方法も考 えられたが、工期及び工費等を考え合わせて、「導坑ズリ出し案」を選定した。対策案の概要は下記の通り。表−1 対策案の概要
概 要
既設
NATM
トンネルから施工済(充填済)の水平導坑をシールド機の面板まで(約16m)再掘削
し、この導坑を利用してシールド機の掘削ズリを前方に排出しながらシールド機で岩盤を掘削導坑掘削後の作業手順 (①〜③の繰り返し)
① シールド機掘進→ ②ダンプでズリだし → ③鋼製支保工撤去(@1m)
概要図
17 .5 ‑2 5‑20 P RL‑3
17 .5 ‑2 5‑20 P RL‑3
到達壁(エアモルタル)
n=27本 1500
ロードホールダンプ(3.0m3級)
薬液注入(二重管ダブルパッカー)
φ3.5m導坑 吹付けコンクリート+鋼製支保工 長尺先受け(AGF):φ100㎜,L=21.8m
既設NATM鏡吹付けコンクリート
この対策工法のポイントは以下の通りである。
・シールド機掘進によってズリ出し導坑が崩落することを防ぐため、導坑上部に長尺先受工および薬液注入 工を実施。
・シールド機により掘削したズリの多くは一度、シールド機のチャンバー内に取込まれた後、シールド機面 板のスリットを通じて導坑内に流れ出る必要があるため、チャンバー内に添加材(高分子系凝集剤 添加
量
20%を基本)を注入して掘削した岩塊や土砂の流動性を確保
5.おわりに
想定外のチャンバー閉塞により、シールド機の泥水式排泥機能が使用できなくなった。このため、充填済の 導坑を利用した排土方法に変更することにより、シールド掘進を再開し、約1週間で残り
16mを掘削して無
事、貫通に至った。参考文献 1):足立他 「推進工法によるビット交換部防護用注入導坑の施工」 土木学会全国大会第 62 回 年次学術講演会,2007年
9
月写真−1 水平ボーリングコア写真
掘削ズリ ズリ出し導坑 φ10.82m岩盤対応型泥水式シールド機
砂 岩 層