リソース・ベ ースド ・ビューに基 づく 企業国際化に 関する 考察
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(2) 目次 1. 序章. 第1章 問題の所在 1 - 1:問 題 の 背 景. 6. 1 - 2:問 題 意 識 の 設 定 と ア プ ロ ー チ. 14. 1 - 3:本 稿 の 目 的 と 意 義. 15. 第2章 先行研究のレビュー 2 - 1:海 外 市 場 参 入 形 態. 22. 2 - 1 - 1 :海 外 市 場 参 入 形 態 選 択 行 動 に 関 す る 先 行 研 究. 22. 2 - 1 - 2:海 外 市 場 参 入 形 態 の 選 択 要 因 と 理 論 的 背 景. 30. 2 - 1 - 3:先 行 研 究 に お け る 課 題. 36. 2 - 2:マ ル チ ナ シ ョ ナ リ テ ィ と パ フ ォ ー マ ン ス. 38. 2 - 2 - 1:マ ル チ ナ シ ョ ナ リ テ ィ と パ フ ォ ー マ ン ス に 関 す る 先 行 研 究. 38. 2-2-2:先行研究における理論的背景. 42. 2-2-3:先行研究における課題. 44. 第3章. リソース・ベースド・ビュー. 3 - 1:は じ め に. 54. 3-2:企業の戦略研究の変遷. 55. 3 - 3:リ ソ ー ス・ベ ー ス ド・ビ ュ ー の 理 論 的 展 開. 56. 3 - 4:リ ソ ー ス・ベ ー ス ド・ビ ュ ー の 2 つ の 潮 流. 58.
(3) 3 - 5:リ ソ ー ス の 分 析. 59. 3 - 6:リ ソ ー ス の 移 転. 63. 3 - 7:リ ソ ー ス・ベ ー ス ド・ビ ュ ー の 批 判 的 検 討. 68. 第4章. リソース・ベースド・ビューに基づく国際企業行動. 4 - 1: リ ソ ー ス・ベ ー ス ド・ビ ュ ー か ら の 国 際 企 業 行 動 理 論. 73. 4 - 2:リ ソ ー ス の 静 的 分 析. 74. 4-2-1:リソ ースの相 対的価値評 価. 75. 4-2-2:リソ ースの価 値移転可能 性. 76. 4 - 3:市 場 細 分 化 の 議 論. 81. 4 - 4:リ ソ ー ス の 動 的 分 析. 84. 4 - 4 - 1:リ ソ ー ス の 活 用. 86. 4 - 4 - 2:リ ソ ー ス の 開 発. 87. 4 - 4 - 3:リ ソ ー ス の 獲 得. 89. 第5章. 海外市場参入形態に関する選択行動仮説. 5 - 1:は じ め に. 94. 5 - 2:海 外 市 場 参 入 形 態 に 関 す る 選 択 行 動 仮 説. 96. 5 - 3:研 究 開 発 力. 99. 5 - 4: ブ ラ ン ド 力. 10 1. 5 - 5: 海 外 経 験 度. 10 4. 5 - 6:サ ン プ ル 及 び デ ー タ の 抽 出 と 分 析 方 法. 105. 5-7:分析結果の報告と解釈. 10 9. 5 - 8:結 論 と 今 後 の 課 題. 11 6.
(4) 第6章. 企業のマルチナショナリティ拡大に関する仮説. 6 - 1: 業 種 の 選 定. 12 4. 6 - 2: 研 究 開 発 力. 12 8. 6 - 3: ブ ラ ン ド 力. 13 0. 6 - 4:販 売 力. 13 2. 6 - 5:サ ン プ ル の 収 集 と 分 析 方 法. 13 3. 6-6:分析結果の報告と解釈. 13 6. 6 - 7:結 論 と 今 後 の 課 題. 13 8. 第7章. 企業のマルチナショナリティとパフォーマンスに関する仮説. 7 - 1:は じ め に. 14 3. 7 - 2: 研 究 開 発 力. 14 6. 7 - 3:ブ ラ ン ド 力. 14 8. 7 - 4:サ ン プ ル の 収 集 と 分 析 方 法. 15 1. 7 - 5:分 析 結 果. 15 4. 7 - 6:結 論 と 今 後 の 課 題. 15 7. 第8章. 結論. 8 - 1: 企 業 国 際 化 理 論 と し て の リ ソ ー ス・ベ ー ス ド・ビ ュ ー. 162. 8 - 1 - 1:静 的 ア プ ロ ー チ の 応 用. 16 4. 8 - 1 - 2:動 的 ア プ ロ ー チ の 応 用. 16 6. 8 - 1 - 3:内 部 化 理 論 と の 違 い. 16 8. 8-2:実証結 果で明ら かになった こ と. 17 1. 8-2-1:海外市場 参入形態 の選択 行動仮説. 172.
(5) 8 - 2 - 2:企 業 の マ ル チ ナ シ ョ ナ リ テ ィ 拡 大. 175. 8-2-3:企業のマルチナショナリティとパフォーマンス. 17 7. 8 - 2 - 4:実 証 結 果 全 体 を 通 し て. 17 8. 8 - 3:リ ソ ー ス・ベ ー ス ド・ビ ュ ー の 再 考. 183. 終章. 結びにかえて. 19 0. 謝辞. 1 97. 参考文献. 19 8.
(6) 図表目次. 図 表 1:対 外 直 接 投 資 金 額 と 件 数 の 推 移. 7. 図表2:海外現地法人売上高推移(兆円). 8. 図 表 3 : 化 粧 品 ・ ト イ レ タ リ ー 主 要 企 業 の 売 上 伸 長 比 較( 指 数 ). 10. 図 表 4:化 粧 品・ト イ レ タ リ ー 主 要 企 業 の 営 業 利 益 率 推 移. 10. 図 表 5:家 電 製 品 業 界. 12. 主 要 企 業 売 上 伸 長 比 較( 指 数 ). 図表6:主要地域の製造業の国際競争力指数の推移. 13. 図 表 7:海 外 市 場 参 入 形 態 選 択 研 究 で 使 用 さ れ て い る 理 論 的 ア プ ロ ー チ. 25. 図 表 8:参 入 形 態 に 関 す る 主 要 研 究. 29. 図 表 9:マ ル チ ナ シ ョ ナ リ テ ィ と パ フ ォ ー マ ン ス に 関 す る 主 要 研 究. 41. 図 表 1 0:VRIO フ レ ー ム ワ ー ク. 63. 図 表 1 1: 多 国 籍 企 業 の ケ イ パ ビ リ テ ィ 分 類. 67. 図 表 1 2:活 動 別 の 配 置・調 整 問 題. 79. 図 表 1 3:国 際 マ ー ケ テ ィ ン グ 戦 略 の 決 定 要 因. 82. 図表14:参入形態選択に伴うリソースの動的態様. 98. 図表15:対外直接投資金額と件数の推移. 108. 図表16:基本 統計量と 相関マトリ ク ス(業種調整な し). 10 9. 図表17:基本 統計量と 相関マトリ ク ス(業種調整あ り). 10 9. 図表18:参入形態選択行動分析結果(1980年~2007年). 111. 図表19:参入形態選択行動分析結果(1980年~1997年). 11 3. 図表20:参入形態選択行動分析結果(1998年~2007年). 11 5. 図 表 2 1 :業 種 別. 費 用 対 売 上 高 比 率( 2 0 1 0 年 ). 12 6. 図表22:化学製造業 主要企業比較(2010年). 12 7.
(7) 図表23:基本 統計量と 相関マトリ ク ス. 13 6. 図表24:マルチナシ ョナリテ ィ拡大 の分析結果. 137. 図 表 2 5:マ ル チ ナ シ ョ ナ リ テ ィ と パ フ ォ ー マ ン ス の 分 析 結 果. 155. 図表26:内部化理論(取引費用理論)と リ ソ ー ス・ベ ー ス ド・ビ ュ ー の 比 較. 17 0. 図 表 2 7:リ ソ ー ス の 企 業 国 際 化 へ の 影 響. 1 81.
(8) 序章. 企 業の国際 競争が加速 するなか 、とりわ け国内市 場の成長が 鈍化して いる 日本 企業にと って 、今 後、海外市 場をどの ように取 り込み、事業を拡大 する かは 重要な課 題である 。そうした なか、同じ業種に 属してい ても、海外 で順 調に 事業を拡 大し 、高いパフ ォーマンスを 出して い る企業と、海外 市場への 進出 が遅れて いる 企業が 存在する 。本稿で は、企業 の国際化 において、なぜ 個別 企業ごと に国際経営 行動が異 なり 、国際化 におけるパ フォーマ ンスにも 違い が生じる のかについ て、その原因を探 り、企業の国 際経営行動 とパフォ ーマ ンスに関 する 戦略的 な仮説を 検証す ることを 目的とする。そ の際、仮説 を導 く理論背 景として本 稿で用い るのは 、企業 が保有する 経営資源 への着目 を行 う「リソ ース・ベー スド・ビ ュー 」 である。 リ ソース・ベー スド・ビューで は、企業 の保有す る経営資源 やケイパ ビリ ティ に着目し、そ れらのリソ ースが企業行 動を決定 し、その結果と して 企業 の経 営パフォ ーマンスも 決定され るもの と考える。し たがって、企 業の経営 行動 やパフォ ーマンスに ついて 、共通 要因 としてリ ソースを分 析するこ とで、 一体 的、統合 的に議論 を 展開する ことが 可能とな る。 企業 の国際化 に伴う具体 的な経営 行動と して 、先ず、海外 市場参入 形態選 択行 動に焦点 を当てる。海外 市場参入形態 の選択は、企 業の戦略的 動機と密 接な 関連を持 つものと考 えられる。通常、企業 が海外市 場に参入す る際 には、 参入先市場で優位性を確保し収益を最大化するために最も適切な参入形態. 1.
(9) を戦 略的に選 択するもの と考え ら れるか らである 。リソー ス・ベースド・ビ ュー の視点か らは、企業が特 定のリソース を保有す ることで、それ が海外市 場参 入の動機 とアドバン テージに なるも のと考え 、それら の動機や アドバン テー ジの考察 を行ったう えで、企業にとっ て最適な 参入形態が 何かにつ いて の仮 説を導き 出す。 次に、企業のマルチナショナリティ 拡大の側面に焦点を当てる。リソー ス ・ ベー スド ・ビ ュー の視 点か らは、 海 外市 場参 入形 態選 択行 動と 同様に 、 リソースが海外事業拡大のモチベーションとアドバンテージになると考え られ るため 、特定のリ ソースを 保有する企 業はマル チナショナ リティを 拡大 する 傾向にあ ることが説 明づけら れる。 更 に、そ の企業のマ ルチナシ ョナリティ 拡大が経 営パフォー マンス に どの よう な影響を 与えている のか、リソースの 分析を基 底として企 業のマル チナ ショ ナリティ とパフォー マンス の 関係性 について 焦点を当て る。リ ソ ー ス ・ ベー スド・ビュー の観点 から 説明すると、企業 が特殊資 産的価値を 有するリ ソ ー スを 保有 する こと によ り経 済的レ ン ト 1が 生じ 、マ ルチ ナシ ョナ リティ の拡 大により、そ こから派生 する利益を最 大化させ ることがで きる。その結 果 、経営パ フォーマン スに対し てもプラス の 影響を 与えるもの と考えら れる ので ある。 企 業の海外 市場参入形 態選択行 動や 、企業の マルチナシ ョナリテ ィ とパフ ォー マンスの 関係性につ いては 、国際企業 経営の分 野において も主要な 研究 テー マであり、先 行研究の蓄 積も多い。これら 先行研究 において理 論的背景 の支 柱として 存在するの は、取引 費用理論 、内部化 理論であ る。取引費 用理 論、内部 化理論で は企業取引 を分析対象と して、コスト の点から企 業行動を 説明 する。しか しながら、取 引費用理論、内 部化理論 は、必ずしも 企業の戦. 2.
(10) 略的 行動を導 くものとは いえない と考え られる 。コストの 低い参入 形態を選 択す ることや コストを削 減するた めに行 動すると いうこと が 、企業 の参入目 的や 戦略的動 機に必ずし も一致し ないか らである 。この点 、リソース・ベー スド・ビュー の視点で は、企業の リソース を分析す ることで 、企業の競 争優 位性 を軸に議 論を進める ため、企業の戦略 的行動や その結果と してのパ フォ ーマ ンスにつ いて、より良く 説明すること が可能で ある ものと 考える。そし て 、その前提 としては 、企業は競 争優位性 を最大化 する行動を とり 、競 争優 位性を実現することから派生する利益を最大化するために行動するという もの がある。 し かしなが ら、リソース・ベースド・ビュ ー は、未だ 発展段階に ある理論 であ り、企業国際 化への理論 応用について は、先行研究 にお いても 課題が多 い。本稿 において は、同理論の 応用につい て先行研 究の課題を ふまえた うえ で 、新たな視 点を加え ることで、より説明 力の高い 仮説を導い ていく。更に は、仮 説の実証 においても、リソース・ベー スド・ビュ ーの理論と しての特 徴か ら、一 連の企業国 際化にま つわる諸現 象につい て一体的な 議論と実 証を 進め る。 本 稿の構成 は、先ず 、第1章で 本稿のテ ーマ設定 に関して 、問題の所 在と 研究 目的につ いて整理を 行う。現実のビジ ネスで起 こっている 現象をと りあ げ 、とりわけ 、日本企 業の世界的 な競争優 位性につ いて言及す る。第2 章に おい ては、海外市 場参入形態 選択行動と、企業 のマルチ ナショナリ ティとパ フォ ーマンス の関係性 に おける先 行研究 のレビュ ーを行い 、その理 論的背景 や検 証内容を 検討しつつ、先 行研究が抱え る問題点 について 考 察する。続い て、第 3章では、本 稿におけ る理論的背景 となって いるリソー ス・ベース ド・ ビ ュ ーに つい て、 その 系譜 や意 義、分 析 フレ ーム ワー クに つい て概 観する 。. 3.
(11) ここ では、リ ソース・ベースド・ビューへ の批判的 見解につい ての検討 も 行 う。第4章では、第3章の 内容を受けて、リソース・ベ ースド・ビ ューの国 際企 業経営へ の応用につ いて 独自 の視点 も加えて 理論展開を 行う。第5章で は、第2 章から第 4章までの 内容をふまえ たうえで、リ ソースと企 業の海外 市場 参入形態 の関係性に ついて 仮 説を導 出しその 検証を行う。次 に、第6章 では、第 5章の分 析結果もふ まえつつ、リソー スと企業 のマルチナ ショナリ ティ 拡大の関 係性につい て仮説を 導出し 検証を行 う。更に 、第7章で 、第5 章 、第6章の 分析結果 を考慮しつ つ、リソ ースの存 在を背景と した 、マ ルチ ナシ ョナリテ ィとパフォ ーマンス の関係 性につい て 仮説検証 を行う。 第5 章から第 7章は、一貫し てリソースの 分析 から、企 業の国際経 営行動 とそ の結果と してのパ フ ォーマン スにつ いて仮説 を導出し 検 証する 。これは、 本稿 の意義の 1つである、リ ソースを分析 すること により、1つの リソース に起 因した企 業の諸々の 戦略行動 が論 理 的に導か れ、また、経営パ フォーマ ンス までも導 かれるとい う結果に ついて 、整合 性をもって 統合的に 説明づけ るも のである 。 以上 の構成を 通して、本稿に よって、リソ ースの視 点から企業 国際化の 諸 現象 の背景を 探り、その因果 関係を明らか にするこ とで、現実の企 業が抱え る諸問題にも対処できるインプリケーションを結論として呈したいと考え る。. 4.
(12) 注 1. Collis and Montgomery(1998)によると、経済学者は経済的レントを2種類に区別. している。. ・リカード的レント(希少性による利潤) 供給が本質的に限定されている貴重な要素によってもたらされる利潤、リカード的レン トは希少性によるものである。. ・シュンペーター的レント(企業家的利潤) 革新者によって獲得され、イノベーションの導入から成功して普及するまでの期間に発 生する利潤。イノベーションはやがて模倣されるであろうが、それまでは革新者にシュ ンペーター的レントがもたらされる。. 5.
(13) 第1章. 問題の所在. 1-1 問題の背景. 海 外の 経済 成長 国 1に 比較 して 国内市 場 の成 長が 鈍化 する なか 、海 外市場 をど のように 獲得するか は、多 くの日本企 業にとっ て 今後成長 していく うえ で重 要な課題 である。また、こ れまで日本 企業がグ ローバル競 争を優位 に展 開し ていた業 種において も、近 年では 海外 のグロー バル企業が 著しい成 長を 遂げ ており、 世界市場で の競争は ますま す激しく なっている 。 日本 企業の海 外への直接 投資は、図表1で 示される ように、80年 代後半 の 好 況や 円高 によ る影 響を 受け て一気 に 拡大 を見 せる が 2、 その 後、 件数ベ ース では90 年代は徐々 に件数が 下がり 、20 00年以降 はほぼ横 ばいの状 態で ある。金額ベ ースにおい ては、199 9年を除 いて大きく 変動する こと なく 推移して いる 3。. 6.
(14) 図表 1:対外 直接投資金 額と件数 の推移 (億円). (件数). 2,000. 50,000 45,000. 金額(億円). 40,000 件数. 35,000. 1,800 1,600 1,400. 30,000. 1,200. 25,000. 1,000. 20,000. 800. 15,000. 600. 10,000. 400. 5,000. 200 0. 0. (出 所:財務 省統計情報 より筆者 作成). その 一方で、海外 における事 業拡大という 点におい ては、図表2で 示すよ うに 、日本 企業の海外 現地法人 での売上高 は199 2年から2 007年 まで の1 5年間で 約3倍に伸 長してお り、海外 直接投資 が横ばいの 状況下に あっ て も 、2 00 0年 以降 で海 外現 地法人 で の売 上 高 は大 きく 伸び てい る 4。国 内市 場での大 きな成長が 見込めな いなか 、海外 市場 で売上 を拡大さ せること が、 企業の成 長にとって は不可欠 な要素 になって いるともい える 5。. 7.
(15) 図表 2:海外 現地法人売 上高推移 (兆円 ). (出 所:経済 産業省統計 情報より 筆者作 成). も ちろん、業種 の特徴とし て、世界的な 成長を実 現すること が難しい 業種 は 存 在す る。 エネ ルギ ーな ど国 の法規 制 によ るコ ント ロー ルの 強い 業種や 、 不動 産など経 営資源の属 国性が高 い業種 において は、世界 的な成長 を志向し 、 それ を実現す ることは困 難である 。ところ が、同 じ 業種内に おいて、世 界的 に大 きく成長 している企 業がある なかで、個 別企業に よって、成長 性や国際 化の 度合いが 大きく異な る場合が ある。それ は、業種とし ての特性で はなく、 個別企業の違いがそのようなパフォーマンスの違いを生み出しているもの と考 えられる 。この同 業種にお ける海外事 業展開や 成長性の優 劣につい ては、 国内 企業の比 較だけでな く、グローバル競 争が激し い業種にお いて、日本企 業と 海外企業 を比較する ことによ って顕 著に 確認 することが できる 。 例え ば、海外のグ ローバル企 業に比較して、か ねてより 日本企業の グロー. 8.
(16) バル 事業展開 が遅れてい る業種 の 1つと して、化粧品・ト イレタリ ー業界が ある 。図表3 は、化粧 品・トイレタリー業 界におけ る 日本の代 表的な企 業で ある 、花王、資生堂と 、世界の 代表的な企 業である P&Gの 売 上高推移 を比 較し たもので ある。と もに20 00年の売 上を10 0とし た指 数表記に おい て 6、 P& Gは 10 年間 で約 2倍 の 売上 規 模に 成長 し2 01 0年 の売 上は7 89 億ドルに 達している のに対し 、花王は 2007 年 に急に売 上を拡大 させ てい るものの、こ れはカネボ ウの買収によ るもので、グ ローバルな 成長であ ると はいえず、資 生堂の売上 もほぼ横ばい の状況に ある。2010 年での各 社の 海外売上 高比率を比 較すると、花王は 25%、資生 堂は37% であるの に対 し、P&Gの 米国以外で の売上構成比 は実に6 0%を超え ている。更に、 図表 4では、各社 の営業利益 率推移を比較 してみた。売 上高で圧倒 的な成長 を示 すP&G であるが 、利益率 においても 2000 年以降で更 に伸長し てお り 、近年にお いては2 0%に到達 している 。一方、花王はほ ぼ横ばいの 状態 で推 移してお り、2000年 当初、10% 以上の利 益率を持っ ていた資 生堂 は徐 々にその 数字を落と し、近年では、両社と もに 営業 利益率が1 0%を割 り込 んでいる。P &Gは、高い海 外事業構 成比と 高 い成長性を 実現して おり、 その パフォー マンスにお いて日本 企業を 凌駕して いる。そして、そ の背景に ある ものは 、同社の世 界市場に おける競争 優位性で あるものと 考えられ る の であ る。. 9.
(17) 図表 3:化粧 品・トイレ タリー 主 要企業 の売上伸 長比較(指 数). (各 社ホーム ページの財 務情報よ り筆者 作成). 図表 4:化粧 品・トイレ タリー 主 要企業 の営業利 益率推移. (各 社ホーム ページの 財 務情報よ り筆者 作成). 10.
(18) ま た、か ねてよりグ ローバル 展開におい て日本企 業が優位に 立ってい た業 種に おいても 近年では変 化が起き てきて いる。例え ば、家 電製品業 界におい ては 、韓国企 業の台頭 が著しく、日本企業 が劣位に なりつつあ る 。図表 5で は 、 韓国 の有 力企 業で ある サム ソン と 日 本の 有力 企業 であ るパ ナソ ニック 、 ソニ ーについ て、20 10年以 降の売上高 推移を 2 010年の 売上高を 10 0 と した 指数 表記 で 比 較し たも のであ る が、 成長 性の 差は 歴然 とし ており 、 20 00年か ら2010 年にかけ て、サム ソンは3 倍以上に 売 上を拡大 させ てい るのに対 し、パナソニッ ク、ソニー の 売上はほ ぼ横ばいで 推移して いる 。. 7. 20 10年の 海外売上構 成比をみ ると、パナ ソニック が48%、ソ ニーが 70 %となっ ており、先に検 討した化粧品・ト イレタリ ー業界に比 較すると、 家電製品業界は日本企業が世界的な競争優位性を構築してきた分野である ため、グ ローバル 化の度合い は高いが、近年に なってサ ムソンの成 長は著し く、サム ソンの海 外売上構成 比は8割を超 え 、グローバ ルでの成長 性におい て日 本企業を 大きく引き 離してい る。 業界 としての そもそもの 海外事業 構成比 の高さは 、裏を返 せば企業 がグロ ーバ ルでの熾 烈な競争環 境に晒さ れてい ることを 意味してお り、ど のように 世界 市場での 競争優位性 を構築す るかに よって 、業界内に おける企 業の成長 や凋 落が顕著 にあらわれ るものと 考えら れる。サムソンが 高い競争 優位性を 背景 に強烈に 成長してい る一方で 、日本企 業は相対 的に急速に グローバ ルで の優 位性を失 っている も のと考え られる 。. 11.
(19) 図表 5:家電 製品業界. 主要企業 売上伸 長比較( 指数). (各 社ホーム ページの情 報より筆 者作成 ). 以上 のように、グ ローバル競 争が激しい業 種におい て 、個別企業に よって その 成長性や 海外展開に は大きな 差が生 じている が、その背景に は、個別企 業の「 異質性」が あるものと 考えられる。企 業の異質 性とは、企業 の内部要 因で ある企業 固有の経営 資源によ って構 成さ れる 各企業の特 徴で 、世界市場 での 競争が激 しい環境下 にあって、国際的 な競争力 の高い企業 が、海外市場 で の 事業 を拡 大し 、成 長 し てい る国の 市 場を 取り 込ん でい くこ とに よって 、 高い 成長を実 現している ものと考 えられ る のであ る。 製 造業全体 で見たとき において も、日本 企業は他 の海外企業 に対して 徐々 に劣 位に陥っ ていること が窺える。図表 6 は、製造業の 業種ごとに 売上上位 5社 を抽出し、公 表されてい る財務諸表の 数字をも とに、世界の主 要地域に. 12.
(20) お け る企 業の 国際 競争 力の 推移 を示し た もの であ る 8。 これ によ ると 、 日本 企業は2000年代前半までは北米に次いで第2位の競争力指数を持って いた ものの 、2008 年にアジ ア以外の先 進国地域 で大きく指 数が落ち た際 に 最 下位 まで 落ち 込み 9、 そ の後 、他の 地 域同 様に 回復 させ つつ も、 201 0年 では未だ 最下位の状 況にある 。 そ の一方で、日 本を除くア ジア地域は堅 調に伸び ており、先進国 地域が不 況により競争力を落とした2008年においても大きな影響力を受けるこ とな く、北米 についで第 2位に躍 り出る 勢いであ る。. 図表 6:主要 地域の製造 業の国際 競争力 指数の推 移. 北米. 日本. 欧州. アジア. 出所 :(社)日 本機械輸 出組合「日 米欧機 械産業の 国 際競争力 分析」. 13.
(21) 1-2 問題意識の設定 とアプローチ. なぜ 、特定 の企業は国 際化にお いて他の企 業と その 進展の度合 いが異な る のか。同 じ業種に 属する日本 企業であって、国 際行動や 経営パフォ ーマンス に企 業間で落 差が生じて いるなら ば、それ は、企業が身 を置く外部 環境は等 し い 条件 下で ある ため 、内 部要 因に原 因 を求 めて いく 必要 があ る。 そして 、 企業 の内部要 因とは、企業が 保有する一切 の経営資 源、ケイパビリ ティに起 因す るものと 考えられ、そこ には有形的な 資産だけ でなく、ブラン ドなどの 無形 資産や知 識や経験 、組織的 なオペレー ションプ ロセスとい ったあら ゆる 要素 が含まれ るものと考 えられる 10。 こ の企 業の 内部 要因 たる 経営 資源に 着 目 し た理 論と して、「リ ソー ス・ベ ース ド・ビュー」が 存在する 11。リ ソース・ベ ースド・ビュ ーでは、企業の 保有 する経営 資源やケイ パビリテ ィに着 目し、そ れらのリソ ース 12が企業行 動を 決定し 、その行動 の結果と して企業の 経営パフ ォーマンス が 決定さ れる もの と考える 。したが って、企業 の経営行 動やパフ ォーマンス について 、そ れら の共通の 要因として リソース を分析 すること で、企業におけ る、複数の 種類 の国際経 営行動やパ フォーマ ンスに ついて一 体 的、統 合的に議 論を展開 する ことが可 能となる 13。 企 業国際化 の研究 にお いて主流 となっ てきた理 論は、取引費用 理論、内部 化理 論である 14。企業は中 間財、経 営資源な ど様々な ものを企業 組織間で取 引す るが、企業国 際化におけ る内部化理論 は、こうした 企業間での 取引を国 外で 実施する 際に発生す るコスト を、多国 籍企業の 組織を活用 して取引 を企 業組 織内に内 部化するこ とにより 節約す ると考え る。詳し くは 第2 章で後述 する が、企業国際 化を内部化 理論だけで説 明づける ことについ ては、企業は. 14.
(22) 必ずしも取引に付随する費用を最小化するためだけに国際化行 動をとって いる 訳ではな いため、企業の 戦略的動機と の結びつ きが弱いな ど、いくつか の問 題点が指 摘されてい る。 こ の点、リソ ース・ベース ド・ビューの 視点から は、企業の内 部要因へ の 着目 から、企業の 経営資源を 分析すること によって、企 業の競争優 位性につ いて の評価を 行い、そ こから導 かれる国際 化行動や 経営パフォ ーマンス につ いて の議論を 展開するこ とが可能 である。し たがって、先 に俯瞰した ような、 なぜ、同 じ業種に おいて、企業 ごとに国際 化行動や パフォーマ ンスが異 なる かを 説明づけ るには適し ているも のと考 えられる 。. 1-3 本稿の目的と意義. リ ソース・ベースド・ビューに おいては 、あらゆ る企業の 行動やパフ ォー マン スの原因 を企業の内 部要因た る経営 資源に求 める。本稿にお いては、企 業の国際化においてなぜそれぞれの企業によって国際化の行動や経営パフ ォー マンスが 異なるのか という問 題意識 に基づい て 、その 原因をリ ソースの 分析 から明ら かに するこ とを目的 とする 。 先 行研 究で 主流 とな って いる 取引費 用 理論 、 内 部化 理論 の課 題点 を鑑み 、 本稿 では、リソ ース・ベース ド・ビューの 観点から 、競争優位の 源泉とな る リソ ースを絞 り込み、そのリ ソース を分析 すること に より、企業国 際化に伴 う行 動やパフ ォーマンス について 説明づ ける。取引費 用理論、内部 化理論と の違 いは、企 業は競争 優位性を確 保するた めにリソ ースを増強 し、また 、リ. 15.
(23) ソー スを用い ることで利 益を最大 化する という前 提のもと 、企業の 戦略にと って 重要なリ ソースは何 で、そ れがどのよ うな特性 を持つのか という視 点で リソ ースの分 析を行い 、企業の 具体的な行 動や経営 パフォーマ ンスを導 き出 すこ とである 。そこで は、企業は 取引費用 の最小化 でなく、競争優位性 の最 大化 、競争 優位性から 派生する 利益 の最大 化を目的 として行動 すると考 える ので ある。 また 、企業 の競争優位 性はあら ゆる戦略行 動やパフ ォーマンス の源泉で あ ると 考えられ るため、リソー スの分析を行 うことか ら、企業の一連 の行動や パフォーマンスについて一体的に仮説を導き出すことができるものと考え る。企業 にとって、競 争優位性 を軸とした 戦略的動 機を実現す るという こと は 、同時に、収益性機 会 を実現す るという ことでも あるため 、リソース をベ ース として、企業 行動と企業 パフォーマン スについ て、一体的な議 論を進め るこ とが可能 なのである 。 本稿 において は、企業の国際 化をテーマと して、企業国 際化にまつ わる 一 連の 企業経営 行動の事 象 として、海外市場 参入形態 選択行動、マル チナショ ナリ ティの拡 大、経営パフォ ーマンスとい う3つの 側面に焦点 を当て、それ らの 事象の背 景にあって 共通する 因子と して 機能 として、競争優位 性をもた らす リソース を分析する ことによ り、それ らの事象 に対して 、リソ ースがど のよ うな影響 を与えてい るのかの 仮説を 構築し実 証を行う。 企業 の国際化 については、そ の 初期段階と して、海外市 場へ参入す る際に いか なる形態 を選択する かの戦略 的行動 があり、その 後の段階で、多国籍性 (マ ルチナシ ョナリティ )の拡大 がある 。そうした 行動の背 景として、企業 のリ ソースに もとづく競 争優位性 があり、そ して、特定の リソース を基底と して マルチナ ショナリテ ィが拡大 された 場合には 、企業パ フォーマ ンスに特. 16.
(24) 定の 影響を与 えるものと 考えるの である 。 ま た、本稿で の理論アプ ローチ、及び、実 証アプロ ーチにおい ては、取引 費用 理論、内 部化理論 の先行研究 課題に呼 応するだ けでなく 、リソース・ベ ース ド・ビュー の先行研究 課題にも 対処す る。リソー ス・ベースド・ビュー の研 究は未だ 発展段階に あり、企業国際化 への理論 的応用にお いて課題 があ り 、リソース・ベース ド・ビューから企業 国際化に おける 企業 行動仮説 やパ フォーマンス仮説を導くためには従来の代表的な理論フレームワークに加 えて 、追加的 な概念が必 要である ものと考 える。ま た、実証研 究におい ても、 リソ ース・ベースド・ビューの理 論的意義 に起因し 、より精 度の高い仮 説を 実証 する方法 論が取られ る必要が ある。そ の点、本稿に おいては、リソース・ ベー スド・ビュー の先行研究 の流れを踏襲 しつつ、追加 的な概念を 基底とし た仮 説導出と 分析方法を 用いる。 更に、リソース・ベースド・ビ ューの先行 研究では 、特定のテー マのみに 限定 した実証 研究 が多く を占め 、複数のテ ーマにつ いて共通の リソース から 仮説 を導き出 している研 究がない 。その点 、先述し たように リソース・ベー スド・ビ ューの特 徴は、共通の リソースを 原因とし た企業行動 とパフォ ーマ ンス の導出に ある と考え る。した がって 、本稿では 、企業の 国際化をテ ーマ とし て、企業国際 化にまつわ る企業経営行 動の 事象 として、海外市 場参入形 態選 択行動、マル チナショナ リティの拡大 、経 営パフォ ーマンス の 3つの側 面に 焦点を当 て、共通する因 子として リソ ースの分 析を行うこ とで、仮説相 互の関係性や実証結果内容を考慮した統合的な視点から企業の国際化行動 につ いての結 論を導く。 本稿 は、こう した アプロ ーチによ り、従来 の企業国 際化やリソ ース・ベー スド・ビ ューの先 行研究にお ける課題を克 服し、問題の 所在として 設定をし. 17.
(25) た 、なぜ企 業によって 国際化の 行動やパフ ォーマン スが異なる のかとい う 問 いに 関して 、現実の事 象をより 良く説明す る仮説の 導出とその 実証を目 的と する ものであ る。. 18.
(26) 注 1. 特に中国の経済成長が著しい。中国の名目国内総生産(GDP)は急激な成長を続け. ており、2009年には2001年の3倍以上にまで拡大した。今後も高い成長率の継 続が見込まれており、 IMF によると、 世界主要国・地域の名目 GDP に占めるシェアは、 2009年の8.6%から2016年には12.4%まで拡大すると予測されている。 経済成長に伴い、中国は、原材料や部品を最終製品に仕上げる役割から、最終製品を消 費する役割としての重みも増してきている。. 2. 『1993 ジェトロ白書・投資編』日本貿易振興会(1993)によれば、1986年度か. ら1990年度までの5年間の期間を第3波の海外直接投資のブーム期として位置付 け、この期間の投資額は2272億ドル(年平均450億ドル)となり金額的に前例の ない空前の規模であると述べている。この急増の要因として、(1)1985年9月のプラ ザ合意(5カ国蔵相会議におけるドル高是正のための合意)以降の円の急騰(1985 年初めに対ドルレートは250円超であったが、1990年末には150円を下回っ た)により、企業買収がより安価にできるようになったこと、(2)日本企業がコスト管理 を徹底的に行い、円高を乗り越え、輸出を増やした結果、経常収支の大幅黒字を招き、 そのために高じた貿易摩擦を回避しようとしたことをあげている。. 3. 1999年は製造業における直接投資金額が飛躍的に高かった。北米における活発な. 投資、大手たばこメーカーによる、米国たばこメーカー海外事業部門の買収、自動車企 業による欧州での生産拠点設立などが影響している。 4. 海外現地法人の売上高が2008年で減少しているのは、2008年の第3四半期に. 起こったリーマンショックによる影響が大きいものと考えられる。. 5. 企業の国際化が成長にプラスの影響を与えるのかどうかについて、第6章のデータを. 用いて補足的に分析した。東証1部上場の化学製造業を対象として(詳細は第6章本文 で説明) 、従属変数を2000年から2010年までの売上伸長率として、独立変数を 2000年から2010年の海外売上高比率の平均値とした単回帰分析の結果、3%水. 19.
(27) 準で有意性であった。企業の国際化と売上伸長の間には正の相関が認められた。 6. 指数表記において売上成長を比較した場合、そもそもの絶対値が相当程度に大きい企. 業の場合、絶対値の低い企業に比較して指数での成長度は逓減していくものと考えられ るが、この場合、P&Gは指数において売上を2倍程度伸ばしており、それは金額にす ると約400億ドルである。すなわち、花王程度の規模の企業3つ分くらいの伸びに相 当する。. 7. 2011年度の決算では、利益においてもパナソニック、ソニーがともに7700億. 円と4600億円の赤字であったところ、サムソンは日本円で約9000億円の大幅な 利益を出している。また、三洋電機に引き続き、シャープも極めて厳しい経営環境に陥 っている。. 国際競争力指数=売上高営業利益率×売上高シェアとして計算。製造業の各分野(家. 8. 電・空調、情報通信機器、コンピュータ、電子部品、重電・産業機械、建設・農業機械、 自動車、自動車部品、航空・宇宙、造船など機械産業)の売上上位 5 社を抽出し、公表 財務諸表を元に作成。. 9. 2008年で先進国地域の競争力が減少しているのは、2008年の第3四半期に起. こったリーマンショックによる影響が大きいものと考えられる。 10. 経営資源の定義に関しては種々あるが、Collis and Mongomery(2004)によると、. 経営資源は、 「有形資産」 、 「無形資産」 、 「組織のケイパビリティ」という3つの大きな カテゴリーに分類される。有形資産は最もその価値を評価しやすく、企業の貸借対照表 に表記される資源であることが多い。有形資産には、不動産、生産設備、原材料などが 含まれる。無形資産とは、会社の評判、ブランドネーム、文化、技術的知識、特許や商 標、蓄積された学習や経験である。無形資産は、使用しても消耗しないという特性をも っている。組織のケイパビリティとは、有形資産や無形資産と違って投入要素ではない。 それらは、組織がインプットをアウトプットへと変換するために用いる資産、人材、プ. 20.
(28) ロセスの複雑な組み合わせ方、組織ルーティンである。これらの組織ルーティンは、企 業が持つ製造またオペレーションの固有技術に適用され、企業活動の効率性を左右する。. リソース・ベースド・ビューという呼称を初めて使ったのは Wernerfelt(1984)で. 11. ある。日本語訳では、資源ベース理論という名称が使われることがある。. 12. 本稿では、経営資源、ケイパビリティ、リソースという用語について基本的に意味. のある区別をして使用していないが、ここでは、リソースを経営資源、ケイパビリティ を包含する概念としている。 13. Wernerfelt(1984)は、経営資源と企業の行動は表裏一体であると考え、経営資源. を分析することにより、企業の戦略的行動が特定できるものと考えた。. 14. Madhok(1997)は、分析対象を取引として、多国籍企業を企業間取引により発生. する取引に伴う費用を削減するために多国籍企業による企業の内部化構造を利用する ことで、企業外取引による外部不経済を回避し取引費用を削減すると考える点において、 取引費用理論と内部化理論は共通すると説明している。. 21.
(29) 第2章. 先行研究のレビュー 前 章におい ては、本稿で設 定する 問題の 所在につ いて整理を 行った。とり わけ 日本企業 のパフォー マンスを 他の海 外企業と 比較するこ とで、日本企業 の世 界的な競 争優位性が 失われつ つある ことにつ いて言及し 、同じ 業種にお いて も、なぜそう した企業行 動やパフォー マンスに 違いがでる のか、という 問題 意識を設 定した。また、企業の内部要 因に着目 するリソー ス・ベース ド・ ビュ ーから仮 説を導き 、企業の 国際化行動 とパフォ ーマンスの 違いの背 後に ある 要因を明 らかにする という 本 稿の目 的につい て も論じた 。 第 2章にお いては、そうし た本稿の研究 テーマに 沿って、先行研 究のレビ ュー を行い、先行研究 の課題につ いて検討 する。2 -1にお いては、海 外市 場参 入形態選 択行動につ いて、2-2にお いては、企業 のマルチナ ショナ リ ティ とパフォ ーマンス に ついてレ ビュー を行う。. 2-1 海外市場参入形態. 2- 1-1 海外市場参入形態 選択行動に関する 先行研究. 一般 的に、企業の 海外市場参 入形態はエク イティベ ースのもの(グ リーン. 22.
(30) フ ィ ール ド投 資、 ジョ イン トベ ンチャ ー 1、 買 収) とノ ンエ クテ ィベ ースの もの (輸出、 提携等)に 大別され る ( Delios and Beamish, 1999)。グリー ン フ ィー ルド 投資 2は 、 新し く参 入する 国 にお いて 何も ない とこ ろか ら完全 子 会 社を 設立 する もの であ る。 子会社 内 部の リソ ース やナ レッ ジに おいて 、 高いコントロールが可能となるが、一方で、コストは高くなる傾向がある ( Hennart and Park, 1994)。 コストは物 理的に設 備投資を行 う費用と 、参 入先 現地での 新しい環境 で効果的 にビジ ネスを展 開するため の、サ プライヤ ー、ディストリビューター、官庁などとの関係性を構築する費用がある ( Andersson, et al. 1997)。一方、現地企 業の買収 においては 、そ の企業の 知識 や技術、人的資源 といった経 営資源の 獲得と、現地の市 場、主な取 引先 と の 関係 性構 築が 可能 とな る。 また、 ク ロス ボー ダー M& A 3の 場合 は、子 会社 の資産に 対して、国際的な 業務提携以 上のコン トロールを 及ぼすこ とが 可能であるが、グリーンフィールド投資ほどのコントロールは出来ない ( Newberry and Zeira, 1997) 4。 グリ ーンフィ ールド投資 にせよ、買収にせ よ、現地企業 を内部化す ること は 、輸出や 提携など他 の緩や か な参入形態 に比較し て大きな投 資コスト が必 要と なり、容 易に撤退 出来るもの ではない 。一方で 、輸出や 提携だけで 海外 市場 へ関与す ることは 、後に述 べる取引先 の探索や 維持といっ た取引費 用や、 現 地 市場 で達 成で きる 内容 が限 定的と な るた めの 機会 費用 5が 生 じる ものと 考え られる。 ジョ イントベ ンチャーの 形態にお いては 、グリ ーンフィー ルド投資 や買収 のケ ースとは 異なり、単独企 業でなく複数 企業の所 有となり、投資 や経営資 源を 共有化す るため、参入障壁 や海外から の参入で あることの リスクを ある 程度 回避する ことが可能 となる。これによ り、リスクが プールされ て参入企. 23.
(31) 業 が 現 地市 場 と効 果 的に 向 き合 う こと が 可 能と な るの で ある ( Elango and Sambharya, 2004)。 一方で、 グリーンフ ィールド 投資や買収 とは異な り、 完全 な子会社 ではないた め、出資比率にも 依るが、本国 の親会社が 現地企業 をコ ントロー ル出来る度 合いは弱 まるも のと考え られる 6。 海外市場への参入形態選択行動の研究動向を知るうえで参考となるもの とし て、 Cannabal and White( 2008)が ある。こ れは198 0年から 20 06年までに発表された海外市場参入形態に関する論文を整理したもので ある 。これに よると 、例えば、図表7で示 される通 り既存研究 で最も多 く使 われ ている理 論的枠組み は「取引 費用理論 」で48 稿あり、2番目によ く使 われ ている理 論の2倍以 上で最も 頻繁に 使われて いる。次いで「OL I理論」 の 1 9 稿 、「 文 化 的 差 異 理 論 7」 の 1 5 稿 と な っ て い る 。 続 く 「 内 部 化 理 論 ( internalization)」 が 13 稿 とな って い る が、 取 引費 用 理論 と 内部 化 理論 は企 業国際化 の理論的背 景におい て同様 に扱われ ることがあ り、そ うした意 味に おいても 、取引費用 理論、内 部化理 論による 研究が多数 を占める 8。 本稿 での理論 的背景とな っている「 リソー ス・ベース ド・ビュー 」に 基づ く研 究は10 稿となって おり、そのうち8 稿は20 0 0年以降 に発表さ れた もの なので、先 行 研究に おいて「リソース・ベースド・ビュー 」は 近年出て きた 理論的枠 組みであり 、研究の 蓄積は そう多く ないと言え る。. 24.
(32) 図表 7:海外 市場参入形 態選択研 究で使 用されて いる理論的 アプロー チ (1 980~ 2006年 ). Number of studies. Theory Transaction cost analysis. 48. OLI / location factors. 19. Culture / cultural difference. 15. Control. 13. Internationalization. 13. Risk. 12. Institutional theory. 10. Resouce based view. 10. Foreign direct investment. 8. Organizational / competitive capabilities. 7. 出所 : Cannabal, White(2008). また、著 者別では、本 テーマに 関して最も 多くの研 究を発表し ているの が Brouthers, K.D.で あり 、リ ソース ・ベ ース ド・ ビュー から の理論 的な アプ ロー チをして いる研究者 ではない が、本稿 において 代表的な先 行研究と して 仮説 や分析手 法において 参照して いる。本 稿では他 に 、リソース・ベースド・ ビュ ーからの アプローチ を行って いる研 究者とし て、 Anand や Delios の論 文も 参考とし ている。 図表 8では、海外 市場参入形 態の選択に関 する主要 論文と、本テー マにつ いて レビュー を行ってい る論文を まとめ た。主 流の取引費 用理論を 中心に分 析 を 行 っ た 研 究 と し て は 、 Hennart and Reddy ( 1997)、 Brouthers and Brouthers( 2000)、Pan and Tse( 2000)が ある。Hennart and Reddy( 1997). 25.
(33) では 、19 78年から 1989 年の日本製 造業企業 による米国 市場への 参入 事例 を分析対 象として、無形 資産の活用が 期待 され ている場合 は、ジョイン ト ベ ン チ ャ ー の 形 態 が 選 択 さ れ る こ と を 実 証 し た 。 Brouthers and Brouthers( 2000)では、19 80年以降 の日本企 業による西 ヨーロ ッ パへ の参 入事例を サンプルと した分析 を行い 、研究開 発集約度 、海外 経験 、市場 伸 長 、リ スク 回避 文化 は、 グリ ーンフ ィ ール ド投 資に ポジ ティ ブに 関連し 、 企業 多角度と 商品関連性 は買収に ポジ テ ィブに関 連すること を実証し た 。そ の 研 究 の 意 義 は 相 関 性 の 高 い モ デ ル を 構 築 し た こ と に あ る 。 Pan and Tse ( 2000) で は 、 1 9 7 9 年 か ら 1 9 9 8 年 ま で の 中 国 に 対 す る 市 場 参 入 を 分析 対象とし て、参入形態の 選択は、エク イティレ ベル とノン エクイテ ィレ ベル の次元で 意思決定が 為されて いるこ とを示し た。 本 稿で用い るリソース・ベ ースド・ビュ ーの理論 から分析を 行った研 究と して は、 Hennart and Park( 1993)、 Anand and Delios( 2002) がある。 Hennart and Park( 1993)で は、197 8年から 1980年 と 、19 84 年か ら198 7年の日本 企業の米 国市場 への参入 事例を分析 対象とし 、技術 力の 強い企業 はグリーン フィール ド投資 を選択し 、伸長率 が高い市 場への参 入、異業 種への参 入、規模の大 きい投資で は それぞ れ買収が選 択される こと を実 証した。Anand and Delios( 2002)では 、1974 年~19 91年の、 イギ リス、ド イツ、日 本企業によ る米国へ の参入事 例を分析対 象として 、ホ ーム国の研究開発集約度がホスト国に比して高い場合はグリーンフィール ド投 資が選択 され、ホスト国 の 広告集約度、販 売集約度 が高い場合 は買収が 選択 されるこ とを実証し ている 。 Hennart and Park( 1993)の ように、い くつかの 理論を複合 的に展開 す るな かでリソ ース・ベースド・ビューにつ いてもふ れている先 行研究は ある. 26.
(34) もの の、 Anand and Delios( 2002)は、 リソース ・ベースド ・ビュー のみ に 依 拠し て仮 説を 導き 、 検 証を 行った 数 少な い研 究で ある 。取 引費 用理論 、 内部 化理論に よる先行研 究との差 異は、経営 資源につ いて、本国 の 親会社か ら海 外の子会 社に対して 経営資源 が移動 するだけ でなく、海外子会 社から本 国親 会社へも 経営資源が 移動する ことに 着目して 仮説を導い ている 。先行研 究に おいて、取引 費用理論、内 部化理論か らは本国 から国外 へ の一方向 的な 動き しか見て いないため 、リソー ス・ベー スド・ビューの立 場から双方 向的 な資 源の動き に基づいた 仮説を実 証 した ことは意 義が大きい 。しか しながら、 一方 では、データ の分析に個 別企業のサン プルでな く、製造業の各 業種平均 値を 使用して いる点で 、リソース・ベース ド・ビューの特色 である 個別 企業 の異 質性にも とづく仮説 検証とい う段階 には至っ ていない。 ま た、文 化的差異に 着目した 研究として 、Kogut and Singh( 1998)では 、 1980~1985年の海外企業による米国市場への参入事例を分析対象 とし て、企業多 角性、ホスト 国での経験、国 際経験は、参入形態選 択 に有意 な関 連性はな いこと、文化的距 離が大きく リスク受 容度が低い と買収よ り グ リーンフィールド若しくはジョイントベンチャーを選択することを実証し た。 参 入形態選 択行動につ いての研 究成果 を 整理す る研究とし ては、先に示し た Cannabal and White( 2008)と Shimizu, Hitt, Vaidyanath, and Pisano ( 2004)があ る。Cannabal and White( 2008)では、1 980年 から20 06 年までに 発表された 海外市場 参入形 態に関す る主要論文 について 、理論、 研究 者、発表 ジャーナ ル、統計分 析手法等 の点から 整理を行い 、どのよ うな 理論 や分析手 法が主流で 使われて いて、近年、注 目されつつ ある、あ るいは、 今後の研究課題として必要だと考えられる内容について述べられている 。. 27.
(35) Shimizu, Hitt, Vaidyanath, and Pisano( 2004)では、 クロスボ ーダーM &A に関する 主要論文を 、参入形 態、海外 文化 の吸 収過程、付加価値創 造戦 略の 3つのカ テゴリーで 分類して 整理し ている 。参入 形態に関し ては、後述 する が、さら に3つの 種類に分類 しており 、そのな かでも、企業要因に よる 参入形態選択行動についての研究蓄積が少ないということを課題として挙 げて いる。. 28.
(36) 図表 8:参入 形態に関す る主要研 究 研究者/理論. 分析対象. 主要結果. Anand and Delios (2002) ・資源ベース. 1974年~1991年の、 イギリス、ドイツ、日本企業による 米国への参入事例 (2175サンプル). ホーム国のR&D集約度がホスト国に比して、 高い場合はグリーンフィールド投資が選択され、 ホスト国の広告集約度、販売集約度が高い 場合は買収が選択される。. Hennart and Park(2003) ・取引費用 ・資源ベース. 1978~1980年と1984~ 技術力の強い企業はグリーンフィールド投資 1987年の日本企業の米国市場への を選択、伸長率が高い市場への参入、異業種への 参入事例。買収、若しくはグリーン 参入、規模の大きい投資では買収が選択される。 フィールド(214サンプル). Kogut and Singh(1988) ・取引費用 ・文化的差異 ・制度要因. 1980~1985年の海外企業 による米国市場への参入事例 (228サンプル). 企業多角性、ホスト国での経験、国際経験は、 参入形態選択に有意な関連性はない。 文化的距離が大きく、リスク受容度が低いと、 買収より、グリーンフィールド若しくは ジョイントベンチャーを選択する。. Brouthers and Brouthers(2000) ・取引費用 ・制度要因 ・文化的差異. 1980年以降の日本企業による 西欧への参入事例 (136サンプル). 研究開発集約度、海外経験、市場伸長、 リスク回避文化は、グリーンフィールド投資に ポジティブに関連し、企業多角度と商品関連性は 買収にポジティブに関連する。. Hennart and Reddy(1997) ・取引費用. 1978年から1989年の日本製 無形資産の活用が期待されている場合は、 造業企業による米国市場への参入事例 ジョイントベンチャーの形態が選択される。 (175サンプル). Pan and Tse(2000) ・取引費用. 1979年から1998年までの 中国に対する市場参入 (14,080サンプル). 参入形態の選択は、エクイティレベルと ノンエクイティレベルの次元で先ずは 意思決定が為されている。. Cannabal and White(2008) ・レビュー論文 1980年から2006年までに 発表された海外市場参入形態 に関する主要論文. 参入形態に関する既存研究を、 理論、研究者、発表ジャーナル、統計分析 手法等の点から整理を行った。. Shinizu, Hitt, Vaidyanath,and Pisano(2004) ・レビュー論文 クロスボーダーM&Aに関する 主要論文. クロスボーダーM&Aに関する研究を、 参入形態、海外文化の吸収過程、付加価値 創造戦略の3つのカテゴリーで分類。. (筆者作成). 29.
(37) 2-1-2 海外市場参入形態の選択要因と理論的背景. 企業 の海外市 場参入形態 選択は 、先行 研究 において 様々な要因 によって 示 され ている。理論 的背景とし ては、先に示 したよう に取引費用 理論に依 るも のが 最も多く を占めるが、一 方では、同じ 要因が異 なった理論 的背景か ら導 かれ ているケ ースもある 。そうし た背景も あり、Shimizu, Hitt, Vaidyanath, and Pisano ( 2004)で は、同テ ーマの過 去の研究 をレビュー して、そ の理 論的 背景に依 らず、既存研究 における参入 形態の選 択要因を、企業 レベルの 要因( 国際的な 経験、商品 の多様性、海外 戦略など)、産業レベ ルの要因(技 術 環 境、 広告 環境 、販 売環 境)、 国レベ ル の要 因( 文化 的な 隔た り、 被買収 企業 国の特定 の文化背景 )の3つ に大き く分類し ている。 例え ば、産業レベル の要因と して、Brouthers and Brouthers( 2000)で は、成長 市場にお いては、新た なグリーン フィール ドベンチャ ーが入り 込む 余地 が大きい ため 9、 「高い市 場成長率の国 への投資 においては グリーン フィ ール ド投資が 選択される 」ことを 実証し た。 国レ ベルの要 因として代 表的なも のでは 、Kogut and Singh( 1988)があ る 。「 ホス ト国 とホ ーム 国の 文化 的距離 が 大き い場 合や 、ホ ーム 国の リスク 受容 性が低い 場合は、グリーン フィールド 投資かジ ョイントベ ンチャー の形 態が 取られる 傾向にある 」ことを 実証し ている 10。 本稿 で着目し ようとして いる企業 レベル の要因で は、研究 の蓄積が 多くな いと 言われる ものの、Brouthers and Brouthers( 2000)で 幾つかの実 証が 為 さ れて いる 。先 ず、「 多角 的で ない企 業 はグ リー ンフ ィー ルド 投資 を選択 する」ことを示 している。そ の理由は、取引 費用理論 から、多角化 企業は洗 練さ れたマネ ジメントコ ントロー ルを有 しており 11、それは、買収企業のコ. 30.
(38) ント ロールに も活用でき ること ( Hennart and Park, 1993)、買 収により多 角 化し た企業は 、買収に 伴 う追加的 な取引コ ストが 下 がっている ため 12、知見 を蓄 積し更に 買収を行う ことを望 む(Wilson, 1980)というもの である。更に、 「規 模の小さ い海外投資 」、 「研究開発力が 高 い企業」、 「高いレベル で国際的 な経 験を有す る企業」におい ては、それぞ れグリ ー ンフィール ド投資が 選択 され ることを 示している 。何れ も企業要因 とも考え られるが 、Brouthers and Brouthers( 2000) では、これ ら全てを制 度的要因 として説明 している 。 先ず 、 「規模 の小さい 海外投資で はグリー ンフィー ルド投資が 選択され る」 理由 として 、規模の大 きなグリ ーンフィー ルド投資 は経営資源 の不足を 引き 起こ し( Hennart and Park, 1993)、買収は 親会社に 負担をかけ ずに新た な経 営資 源の供給 を可能にす る( Hennart and Park, 1993)ことを挙 げた 13。次 に、 「研 究開発力 の高い企業 がグリー ンフィ ールド投 資を選択す る」理 由として は、グリ ーンフィ ールドの方 が企業特有の 強み、組織に 根ざした技 術を浸透 させ やすい( Cho and Padmanabhan, 1995)ことを 示した。 最後に、「 国際的 な経 験を有す る企業がグ リーンフ ィール ド投資を 選択する 」ことに ついては、 経験 豊かな日 本企業は自 国に組織 的なル ーティン を持ってお り、そ れを海外 に 移行 するこ とを 望むた め、 グリ ーン フィ ールド を選 択する こと ( Cho and Padmanabhan, 1995) や 、高 い輸 出 比率 を 占め る国 際的 な 経験 豊か な企 業は グリ ーンフィ ールドを選 択する( Banerji and Sambharya, 1996)ことを理由 と して 示した。本稿 でも、これら 企業要因で の実証結 果や分析方 法を参考 にし てお り、理論 的背景は異 なれども 、仮説 や変数設 定で共通 す る 部 分 が 多 い 。 企業レベルの要因となる理論的枠組み の1つとして、リソース・ベース ド・ ビューが ある。 Cannabal and White( 2008) によると 、本研究 分野に おい て、リソ ース・ベースド・ビューか ら のアプロ ーチが為さ れたのは 主に. 31.
(39) 20 00年以 降であるが 、内部 要因として 組織のケ イパビリテ ィに焦点 を当 てた 研究とし ては、Hennart and Park( 1993)や Madhok( 1997)がある。 Hennart and Park( 1993)で は、日本か ら米国へ の投資に限 定したサ ン プル で、海外参入 の形態を理 論づける仮説 の検証を 行った。仮説を 裏付ける 理 論 は、 取引 費用 理論 、M &A 理論、 成 長理 論の 類型 で行 って いる 。結果 、 技術 力の強み を有する企 業はグリ ーンフ ィールド 投資により 、それ を海外へ 移転 すること を選好し 、伸長率が 高い市場 への参入 、異業種 への参入、規模 の大 きな投資 を行ってい る企業は 、それぞ れ買収の 形態を選択 する傾向 があ るこ とを検証 した。彼 らが成長 理論と呼ん でいる枠 組みは内部 要因に着 目し たも のであり 、実証さ れなかった が、人的 資本が薄 い企業の場 合は、買 収の 参 入形 態が選 択され ると する仮 説は、 新た な雇 用やト レーニ ング には制約 があ るため 、人的資本 に余裕が ない場合 は 既に人的 資本の存在 する買収 が選 ばれ るという 内部要因か らの理由 づ けで ある。 また、実 証がされ た、規模の大 きい投資で は 買収の 参入形態が 選択され る とい う仮説も 、規模の 大きなグ リーンフィ ールド投 資は経営資 源の不足 を引 き起 こす一方 で、買収 は親会社 に負担をか けずに新 た な経営資 源の供給 を可 能 に す る と い っ た 経 営 リ ソ ー ス に 着 目 し た 理 由 づ け で あ っ た 14 。 ま た 、 Madhok( 1997)に おいても、取引費用理 論と組織 のケイパビ リティ理 論か ら参 入形態選 択行動の分 析が行わ れてい る。 先に 述べたよ うに、リソ ース・ベースド・ビューの 観点 から 分析を行っ た 近年 の主要研 究として は 、 Anand and Delios( 2002)がある 。彼らは 、イ ギリ ス、ドイ ツ、日本 企業の米国 参入を事 例として 、経営資 源の アップ スト リー ムとダウ ンストリー ムの特性 から 、企業が 買収とグリ ーンフィ ールド投 資 の どち らの 参入 形態 を選 択す るかに つ いて 、仮 説を 構築 し実 証を 行った 。. 32.
(40) 支 持 され た仮 説は、「 ホ スト 国で の技術 優 位性 が強 い場 合、 買収 の参 入形態 が選 択され 、ホーム国 での技術 優位性が高 い 場合は グリーンフ ィールド 投資 が選 択される」、 「参入市場に おける広告投 資の競争 が激しい場 合、買収の参 入 形 態が 選択 され る」 とい うも の、「参 入 市場 にお ける 販売 投資 の競 争が激 しい 場合、買収の参入 形態が選 択される 」という ものである 15。先述 したが、 Anand and Delios( 2002)は リソース・ ベースド ・ビューの みに依拠 し、 先行 研究の取 引費用理論 の前提と は異な る、本 国親会社と 海外子会 社間にお ける経営資源の双方向的な動きを前提として仮説を導いたという点で意義 が大 きい。 参入形態選択行動の理論背景として、本稿で依拠するリソース・ベース ド・ビューに 関しては 次章以降で 詳しく述 べるため 、本章に おいては、代 表 的な 理論とな っている、取引 費用理論とO LI理論 について、以下 に 紹介を 行う 。. ■取引費用理論. 前述 の国レベ ル、産業 レベルの 要因を主に 説明する ものとして 既存研究 で 最 も 多 く 使わ れ てい る も のが 「 取引費 用 理 論 」で あ る ( Canabal and White, 2008)。 取 引費 用理 論 から は 、 取 引 費用 を 分 析す るこ と で 、 企 業は 国や 産業 の環 境に適応 するに最も 適した参 入形態 を選択す るものと考 える( Pan and Tse, 2000)。 取引 費用は、取引 に付随する 費用であり、これ が大きす ぎると取引 がなさ れな いことに なる。 Dahlman に よると、 その定義 は「模索と 情報の費 用、. 33.
(41) 交渉 と意思決 定の費用、監視と強 制の費用 」である 。取引費用 理論によ ると、 企業 は海外市 場に商品や サービス を供給 する手段 と して、輸出や戦 略的提携 によ り外部市 場を介在し た取引を 行うよ りも、直接に 現地に生産・販売拠点 を確 立し利用 するほうが 有利とな る。何故 ならば、市場 仲介者を通 すことに よる 不完全競 争市場にお いて発生 する取 引費用は 、企業内 部の構造 を利用し た取 引をする ことで節約 できるか らであ る。 取引 費用理論 の基本的な 枠組みは 、人的要 因として の限定され た合理性 と 機会 主義、環境 要因とし ての不確実 性と少 数性であ る( Williamson, 1975)。 取引 費用分析 の根底をな す人間の 行動仮 説で、限定さ れた合理性 は、取引当 事者 の予見、認知、判 断能 力の限 界を示し 、機会主 義は他人 を犠 牲にし てで も自 己利益を 上げようと する性向 を示す 。これ ら人的要因 と 環境要 因とが相 互に 結びつく ことで、市場で の取引コスト が高まる ことになる。多 くの学者 が多 国籍企業 の存在を説 明するた めに、 この理論 を発展させ ている。 一方 、Madhok( 1997)によると 、海外市場 参入形態 に関する理 論づけは 、 内部 化理論か ら出ている が、内部化理論も 取引費用 理論も、取引費 用の最小 化と 市場の失 敗に関する もので 、取引費用 最小化と 統治様式で 最も効率 的な 選択を行うために取引の特徴を分析している点は同じであるこ とを指摘し てい る。. 34.
(42) ■OLI理論. 取引 費用理論 に次いで多 く採用さ れてい る理論が OLI理論 である 。OL Iと は、企業多国 籍化の意思 決定に影響す る諸要因 を整理・分類す るための 3 つ の カ テ ゴ リ ー で 、 そ れ ぞ れ の 頭 文 字 に 対 応 し て い る 。 所 有 優 位 ( O: Ownership Advantages)は、技 術、知識、 ノウハウ など、他者に はない 差 別化 された経 営資源を保 有するこ とから くる優位 性で、企 業の競争 力の源泉 と なる。立 地優位 ( L:Location specific advantages) は 、経済活 動の場 と して のその国 の魅力度を 決定する 要素で 、輸送費 、関税 、技術基盤 などの供 給側 の要素と 、市場規 模や成長率 、発展段 階などの 需要側の要 素がある 。最 後に 、内部 化インセ ンティブ( I: Internalization incentives)は 、不完 全な 市場 での取引 を避けて 、企業内 に内部化し たほうが 有利となる ような要 因で、 取引 相手を探 索するコス ト、交渉 コスト 、買い手の 不確実性 、契約を実 施し 維持 するため のコストと いった 、すなわち 取引費用 の概念を援 用したも ので、 取引 費用を削 減すること への利益 に伴う インセン ティブで あ る。 この 理論によ ると、所有優位 を有する企業 が、外国の立 地優位を活 用した いと 考え、しかも 内部化する 利益を有する ときに直 接投資が行 われる。3つ 全て の優位性 が揃ったと ころで 、企業は海 外直接投 資を選択し 成功に導 くこ とが できるも のと考えら れる 。. 35.
(43) 2- 1-3 先行研究における課題. 海外 市場参入 形態の既存 研究にお いては 、産業 レベルと国 レベルで の実証 は比 較的強固 なものであ るのに対 し、未だ 企業レベ ルでの実証 は結論が 混在 し て お り 、 研 究 の 蓄 積 が 十 分 で は な い 。 例 え ば 、 先 に 示 し た Anand and Delios( 2002)に おいても、リ ソース・ベー スド・ビュー の立場から、企業 経営 資源の異 質性と固着 性に着目 して導 かれた仮 説であると いえども 、彼ら 自身 が同論文 で指摘して いるよう に、分析 データに 業種平均の 数値を用 いて おり、個 別企業を 対象に分析 していない点 で は課題 がある。企業の 強みや弱 みは 業種の特 性において 代表性を 持つと も考えら れ るが、それは業 種の異質 性に 着目をし たものであ り、個別企業の異 質性に着 目したもの ではない。リ ソー ス・ベースド・ビュー の前提 は、企業 はそれぞ れ個別の経 営資源を 所有 して おり、各 企業は根 本的に異な るという ものであ る。従っ て、本来的 には 同じ 業種にお いても、個別企業 の経営資源 の異質性 が戦略オプ ションの 選択 に影 響を与え るものと考 えられる 。 リソ ース・ベースド・ビュー から のアプロ ーチとし ては、そ れぞれの業 種 においてどのような経営資源構成になるかの特徴を抽出し戦略的意思決定 の仮 説を実証 するだけで は足らず 、合わせ て個別企 業の経営資 源構成か ら仮 説を 実証する ことが重要 である。 また、企 業レベル の実証 結果 による結論が 混在する 例として、海外 経験度 と参 入形態と の関係につ いて、海外輸出売 上高比率 を用いて示 す幾つか の研 究に おいては 、海外経 験の高さ はグリーン フィール ド投資と買 収のどち らに も結 びつくも のとして検 証されて いる ( Brouthers and Brouthers, 2000)。 さら に、Elango and Sambharya( 2004)による と、多 くの先行 研 究がエ. 36.
(44) クイ ティベー スの参入形 態である グリー ンフィー ルド投資、買収、ジョイン トベ ンチャー の3つ全て を分析の 対象と はしてお らず、そ のうちの 2つのみ を対 象として いることを 指摘し、自身の研 究におい ては、3つの形 態を分析 対象 として、グリ ーンフィー ルド投資と、買収 /ジョイ ントベンチ ャーの2 つに 分類した うえで仮説 の検 証を 行って いる。 本稿 において は、これら既存 研究が抱える 課題を鑑 み、グリーンフ ィール ド投 資、買収、ジョイ ントベン チャーの3 つの参入 形態を分析 の対象と しな がら 、参入 企業の経営 資源のみ に着目をし て個別企 業レベルの データか ら仮 説を 導き検証 を試みる。検証 においては、業種 間のリソ ース構成の 違いが参 入形 態選択行 動にどのよ うな影響 を与え るのかと いう点と 、個別企 業のリソ ース構成の違いが参入形態選択行動にどのような影響を与えるのかという 両 方 の視 点に より 仮説 に沿 った 検証を 行 うこ とが 必要 であ るも のと 考える 。 これ により、業種 間の強みと 弱みが行動に 影響を与 えることと ともに、個別 企業 間の強み と弱みが行 動に影響 を与え るという ことが確認 できる。. 37.
(45) 2-2. マルチナショナリティとパフォーマンス. 2 - 2 - 1 マルチ ナショ ナリティ とパフ ォーマ ンス に 関する 先行研 究. 企業のマルチナショナリティとパフォーマンスの関係性についての研究 は、多く の先行研 究が存在し、国際企業経 営の分野 において 中 心的な研 究課 題と なってい る。企業 の多国籍性(マルチ ナショナ リティ)が高まるこ とに よっ て、企業は経 営パフォー マンスを高め ることが できるのか 。こ の問いに つい ての答え は、未だ固定的 な結論に 至っ ていない とされる。多国 籍性は企 業の 経営パフ ォーマンス にプラス の影響 を与える とする 実証 研究、マイナス の影 響を与え るとする 実 証研究、何ら関係 性がない とする実証 研究と、先行 研究 における 結論 は混在 している 。 Delios and Beamish( 1997) では、39 9社の日 本企業を対 象とした 分 析により企業のマル チナショナリティとパフォーマンスには正の関係があ ると している。す なわち、企業 はマルチナ ショナリ ティを高め ることに よっ て、企業 パフォー マンスを高 められるとい う結論 を 導いたので ある。その一 方で 、 Michael and Shaked( 1986)では 、58社 の多国籍企 業と43 社の 非多 国籍企業 を分析対象 とした結 果、企業 のマルチ ナショナリ ティとパ フォ ーマ ンスはむ しろ負の関 係性を持 つ 、すな わち、マルチ ナショナリ ティが高 まる と企業パ フォーマン スは下が ること を示した。ま た 、Dunning( 1985) では、1 88社の 英国企業を 分析対象とし て、マルチナ ショナリテ ィとパフ ォー マンスの 間には有意 な関係性 が ない ことを示 している。 Tallman and Li( 1996)によ ると、企業 のマルチ ナショナリ ティの研 究. 38.
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