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壱岐尾 優太 論文内容の要旨 主

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Academic year: 2022

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壱岐尾 優太 論文内容の要旨

主 論 文

Efficacy of combined hand exercise intervention in patients with

chemotherapy-induced peripheral neuropathy: a pilot randomized controlled trial

化学療法誘発性末梢神経障害患者に対する複合的な手指運動介入の有効性:

パイロットランダム化比較試験

壱岐尾優太 佐賀里昭 中島輝 松田大輝 澤井照光 東登志夫

(Supportive Care in Cancer, in press)

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻

(主任指導教員:東登志夫教授)

緒 言

化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は,化学療法の主要な有害事象の一つであり,

日常生活動作(ADL)や QOL に悪影響を及ぼす.上肢に関しては,着替え等のセルフ ケア,調理等の家事,趣味,仕事など,様々な場面で手指の巧緻性や筋力が必要な動 作が困難になる.しかしながら,CIPN に対する運動の介入効果に関する先行研究では,

下肢筋力やバランス能力などの下肢機能に着目したものが多く,上肢機能に関する介 入効果は報告されていない.そこで本研究の目的は,CIPN を呈した患者の上肢機能,

CIPN 症状,QOL に対する複合的な手指運動介入の有効性を検討することとした.

対象と方法

対象は,2017 年 2 月から 2021 年 3 月の間に当院で化学療法を実施し,神経障害毒 性のある抗癌剤を使用した造血器腫瘍と消化器癌患者とし,介入群と対照群に無作為 に割付けた.評価は,ベースライン(T0),化学療法 1 クール後(T1),2 クール後(T2)

に実施した.主要アウトカムは,T2 での Michigan Hand Outcomes Questionnaire(MHQ)

で測定した上肢機能とし,副次アウトカムは,T1 での上肢機能,T1 および T2 での 筋力(握力,ピンチ力),感覚機能,巧緻性,症状の程度,破局的思考,QOL とした.

介入は,筋力,感覚,巧緻性に関する内容を非監視下で実施し,1 日約 30 分,週 3 日以上行うよう指示した.統計解析は,混合効果モデルを用いて intention-to-treat

(ITT)解析および as-treated(AT)解析で,各評価の T0 からの変化量を両群間で比 較した.

結 果

341 名をスクリーニングし,42 名が介入群と対照群に 21 名ずつ割り付けられた.

T0 評価前に,介入群で 2 名,対照群で 1 名が除外され,T2 で 39 例中 29 例(介入群:

15 例,対照群:14 例),T1 で 39 例中 35 例(介入群:17 例,対照群:18 例)が ITT 解析対象となった.AT 解析では,介入群のうち介入頻度が週 2 日未満の 2 名が解析か

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ら除外され,全く介入を実施しなかった 2 名が対照群として解析され,対照群のうち 1 名が介入を実施したため,介入群として解析された.ベースライン特性は,ITT 解 析では両群間で類似していたが,AT 解析では年齢のみ有意差を認めた(介入群:中央 値 72 歳,対照群:中央値 63 歳).

ITT 解析では,主要アウトカムにおいて,MHQ の「ADL」の低下が対照群と比べ介入 群で有意に抑制された.副次アウトカムにおいて,T1 の「ADL」の低下が対照群と比 べ介入群で有意に抑制され,ピンチ力は T1 および T2 で介入群が対照群よりも有意に 改善した.

AT 解析では,主要アウトカムにおいて,「ADL」の低下は対照群と比べ介入群で有意 に抑制され,MHQ の「痛み」は介入群が対照群よりも有意に軽減を認め,これらは ITT 解析時よりも大きな差を示した.また,MHQ の「総得点」においても有意差を認めた.

副次アウトカムにおいて,T1 の「ADL」の低下が対照群と比べ介入群で有意に抑制さ れ,T1 の「痛み」が対照群よりも介入群で有意に軽減を認め,「総得点」においても 同様に有意差を認めた.また,ピンチ力は T2 で対照群よりも介入群で有意に改善し た.

考 察

本研究では,対照群と比べて介入群でピンチ力の有意な改善および CIPN 症状の軽 減を認めた.先行研究では,手指筋力は ADL 障害と関連し,CIPN 症状が強いほど ADL が低下することが示されており,本研究の結果を裏付けている.CIPN 症状に対する運 動の有益性のメカニズムとしては,抗炎症作用と中枢神経系への作用が考えられる.

神経炎症は CIPN の主要な基礎メカニズムの一つであり,また,CIPN は中枢感作を引 き起こすとされている.運動は様々な病態において抗炎症効果を示し,がん生存者を 対象としたメタ解析でも同様の効果が示されている.げっ歯類を対象とした基礎研究 では,運動が軸索数の減少を一部抑制し,神経障害性疼痛の軽減,神経線維の再生を 促し,また,運動が中枢感作を抑制し痛覚過敏を改善させたとの報告がある.したが って,本研究では,手指運動により筋力低下を防ぎ,炎症および中枢感作が抑制され たことで症状の増悪を軽減させ,ADL の低下を抑制できた可能性が考えられる.

CIPN に対する運動処方に関しては,筋力運動や有酸素運動,バランス訓練等の複合 的介入が有効であると報告されている.しかし,負荷量や介入期間,頻度等は各報告 で様々であり,ガイドラインにおいても有効な運動処方は明らかとされておらず,負 荷量や介入時間等の効果的な運動処方の臨床的実現可能性についても今後検討する 必要がある.

本研究はパイロット試験であるため,今後は他の癌種や抗癌剤も含めた大規模な無 作為化比較試験を行うことで,本介入の有効性を確認する必要がある.

参照

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