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―仕口ダンパーによる補強効果の検証― 

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Academic year: 2022

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キーワード : 既存不適格建物、耐震診断、木造,耐震補強、ダンパー  

連絡先:〒153-8505  東京都目黒区駒場4-6-1東京大学生産技術研究所B棟  目黒研究室  Tel: 03-5452-6437

ポータブル起振器を用いた木造住宅の耐震診断法の検討

―仕口ダンパーによる補強効果の検証― 

中央大学大学院       学生会員 ○江島 潤一郎 中部電力株式会社 (元 東京大学大学院) 正会員 佐藤 芳仁 東京大学生産技術研究所     正会員  大原 美保 東京大学生産技術研究所       正会員     目黒 公郎  1.  はじめに 

地震被害を軽減するための最も効果的な対策は,既存不適格建物の 耐震性を向上させることである.これを促進するには,耐震補強の重要 性の認識を高めると共に,社会制度として耐震補強にインセンティブを 与える環境を整備することが重要である.また技術的な課題としては,

簡便で効果の高い耐震補強法の開発と簡便で高精度な耐震診断法の 整備が求められる.  

2.  ポータブル起振器を用いた簡便な耐震診断法の提案  筆者らは,従来の耐震診断法1)の欠点を補うべくポータブル起振器を 用いて建物を高精度に制御しながら振動させ,そこから得られた建物 応答とそれを精度高く再現する解析法により,簡便かつ高精度で耐震 性能を評価する方法の提案を行っている2).耐震性能を評価する際に は,建物の応答波形から得られる建物剛性,エネルギー減衰に着目す る.建物剛性K は,建物の応答波形データから得られた固有振動数F,

最大応答変位A を用いて,式(1)により算出する.エネルギー減衰h は、

ω

を固有円振動数,Pを振幅が1 A 時の円振動数として,式(2)か ら算出する. 

K m F

T =1 = 2π   (1) 

2 1 2

2

{ ( ) }

4 hpp ω

pi =2

π

fi  (2)   本研究は,ポータブル起振器を用いた木造住宅の耐震性評価に関 する研究の一環として実施しており,ここでは1/5スケールの木製フレ ームおよび木造住宅模型を用いて仕口ダンパーによる補強効果の検 証を行った結果を報告する. 

3.  木製フレームによる引張試験 

まず初めに1/5スケールの木製フレーム模型を作成し,引張試験を 行った.試験を行うにあたり,市販されている仕口ダンパーの仕様を基 に,手作りで木製フレームと仕口ダンパーを作成した(図 1).フレーム は,「軸組のみ,軸組に仕口ダンパー4 つ設置,軸組に片筋交いを設 置,軸組に片筋交いと仕口ダンパー4 つを設置」の 4 パターンとした.

これら4パターンでの応力と層間変形角の関係をに示す(図 2). 引張 試験においては,仕口ダンパー設置前後の変位の変化から変位抑止 効果を確認した.また筋交いの入った壁の偶角部に仕口ダンパーを設 置しても,筋交いの効果で変形が抑止されるので,仕口ダンパーの効 果は小さいこともわかった. 

40 20

40

40 20

40

  図1  手作り仕口ダンパーと木製フレーム 

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 軸組

仕口ダンパー4個 片筋交い(圧縮)

片筋交い(圧縮)+仕口ダンパー

層間変形角[rad]

[N]

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 軸組

仕口ダンパー4個 片筋交い(圧縮)

片筋交い(圧縮)+仕口ダンパー

層間変形角[rad]

[N]

  図 2  応力と層間変形角の関係 

 

4.  ポータブル起振器を用いた模型実験とその結果    次に、1/5 スケールのミニチュア木造住宅を作成し,高精度に制御さ れたポータブル起振器を用いて建物を振動させ,得られた建物応答 から耐震性能評価を試みた.ミニチュア木造のサイズは床面 182.0×

127.4[cm],高さ150.5cm,総重量70.01kgである(図3). 

ポータブル起振器のサイズは底面が 76×130mm,高さが 149mm,

重さが1.6kgである.起振器を2階床中心に設置し,内部の左右の扇形 の錘(84g×2個)をPC制御で回転させ,振動数を4〜15Hzと変化させ ながら 1 軸方向に加振力を加え.さらに起振器の台数を 1,2,3 台と増や

図 3  1/5 スケールミニチュア木造住宅 

1-449 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)

-897-

(2)

し加振力を変化させた. またミニチュア木造を 1.5×1.5[m]の振動台の 上に設置し,振動台による加振も行った.模型の図面を図4に示す.図 中の赤線部分は筋交いの設置箇所である. 

起振時の建物応答データから,仕口ダンパー設置前後でのエネル ギー減衰能および剛性の変化を分析した.図5と図6は仕口ダンパー を,それぞれ1F,2F,全体に設置して起振器で建物をX方向に並振さ せた際の実験結果である.図の網掛けの色は,建物の応答を計測震度 に変換した値である.エネルギー減衰能は,建物全体に仕口ダンパ ーを設置した場合に最も大きく,続いて 2F,1F に設置した場合となっ た(図5).図6は,さらに振動台で震度5強から震度6弱程度の応答が 出る揺れを与えた場合の結果である.さらに約 30%のエネルギー減 衰能の上昇が見られ,起振器では制御できなかった大きな揺れに対し ても,仕口ダンパーが効果を発揮していることが確認された.また仕口 ダンパーの設置数を変えて起振し,設置数の影響も検証した.結果は 図7 のようになり,ある程度以上の数(図7では 12 個)を越えると仕口ダ ンパーの効果が頭打ちになることがわかる.図7は 1 階に仕口ダンパ ーを設置した結果であるが,2 階に設置した場合も同様の傾向を示し た。 

 

Y

:仕口ダンパー設置位置 1F 2F

Y

Y

Y

Y

:仕口ダンパー設置位置 1F 2F

  図 4  仕口ダンパー実験設計図 

~2 3 4 5- 5+

起振器1台 起振器2台 起振器3台

最大振幅[μm]

エネルギー減衰h

― 起振器加振

‐‐ 振動台加振

0.030 0.035 0.040 0.045 0.050 0.055 0.060

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 筋交いなし

仕口ダンパー1F設置 仕口ダンパー2F設置 仕口ダンパー全体設置

~2 3 4 5- 5+

起振器1台 起振器2台 起振器3台

~2 3 4 5- 5+

起振器1台 起振器2台 起振器3台

最大振幅[μm]

エネルギー減衰h

― 起振器加振

‐‐ 振動台加振

0.030 0.035 0.040 0.045 0.050 0.055 0.060

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 筋交いなし

仕口ダンパー1F設置 仕口ダンパー2F設置 仕口ダンパー全体設置

  図 5  仕口ダンパーの減衰効果 

~2 3 4 5- 5+ 6-〜

起振器1台相当 起振器2台相当 起振器3台相当

約30%

最大振幅[μm]

エネ減衰h

0.030 0.035 0.040 0.045 0.050 0.055 0.060 0.065 0.070 0.075 0.080

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600

筋交いなし 仕口ダンパー1F設置 仕口ダンパー2F設置 仕口ダンパー全体設置

~2 3 4 5- 5+ 6-〜

起振器1台相当 起振器2台相当 起振器3台相当

約30%

~2 3 4 5- 5+ 6-〜

起振器1台相当 起振器2台相当 起振器3台相当 起振器1台相当 起振器2台相当 起振器3台相当

約30%

最大振幅[μm]

エネ減衰h

0.030 0.035 0.040 0.045 0.050 0.055 0.060 0.065 0.070 0.075 0.080

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600

筋交いなし 仕口ダンパー1F設置 仕口ダンパー2F設置 仕口ダンパー全体設置

  図 6  エネルギー減衰と最大振幅の関係(振動台) 

仕口ダンパー個数

エネルー減h

1F

0.035 0.037 0.039 0.041 0.043 0.045 0.047 0.049 0.051 0.053

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22

起振器1台 起振器2台 起振器3台

仕口ダンパー個数

エネルー減h

1F

0.035 0.037 0.039 0.041 0.043 0.045 0.047 0.049 0.051 0.053

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22

起振器1台 起振器2台 起振器3台

  図 7  仕口ダンパーの数による減衰効果の違い  最後に仕口ダンパーの設置位置による効果を,図 8のような設計図 において,仕口ダンパーの数は変えずに設置する位置を変えた実験 により分析した.今回は回転運動も生じているため,応答変位での比較 を行う.図9から仕口ダンパーの設置で応答が小さくなることがわかる.

最も効果が表れたのは 1 階南側に 6 個,2 階南側12 個であった.この 場合に筋交いのみの時に比べて約 20%の変位抑制が見られた.この 結果は適切な位置に設置することの重要性を示している. 

5.  まとめ 

本研究ではポータブル起振器を用いた耐震診断法の検討の一環と して,仕口ダンパーによる補強効果の検証を行った.1/5 スケールの 木製フレーム試験とミニチュア木造住宅実験により,振動時の建物応答 波形,またそこから算出される減衰定数を算出することにより,仕口ダ ンパー設置前後での動的挙動の変化から耐震補強効果を定量的に評 価することが可能となった.  

参考文献 

1) 財団法人日本建築防災協会:木造住宅の耐震診断と補強方法−木 造住宅の耐震精密診断と補強方法(改訂版),2004. 

2) 佐藤芳仁・目黒公郎ら:ポータブル起振器を用いた耐震診断法の 検討,土木学会年次学術講演会,2008. 

Y

:仕口ダンパー設置位置

:仕口ダンパー設置数

1 1

2 2 3 4 2 3

1 1

2 2

1 1

2 2

Y

Y

Y

:仕口ダンパー設置位置

:仕口ダンパー設置数

:仕口ダンパー設置位置

:仕口ダンパー設置数

1 1

2 1 1 2 3 4 2 3

2 2 3 4 2 3

1 1

2 2

1 1

2 2

  図 8  仕口ダンパー設置図 

0 200 400 600 800 1000 1200

0 1 2 3 4

南側筋交いなし 1F12個+2F南側6個 1F南側6個+2F南側12個 1F南側12個+2F南側6個 1F南側6個+2F12個

起振器台数(台)

最大応[μm]

0 200 400 600 800 1000 1200

0 1 2 3 4

南側筋交いなし 1F12個+2F南側6個 1F南側6個+2F南側12個 1F南側12個+2F南側6個 1F南側6個+2F12個

起振器台数(台)

最大応[μm] 約20%約20%

  図 9  仕口ダンパーによる変位抑制効果 

1-449 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)

-898-

参照

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