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(1)

   

     

論  文  概  要  書 

   

     

家庭科における調理技能の教育に関する研究 

−その位置づけと教育的意義の検討を中心に− 

       

   

        早稲田大学大学院  教育学研究科  博士課程 

指導:安彦忠彦

教授

   

3707A508  河村  美穂 

   

(2)

1.  論文題目 

家庭科における調理技能の教育に関する研究 

−その位置づけと教育的意義の検討を中心に− 

2.論文の目的 

子 ど も た ち を は じ め と し て 社 会 全 体 に お け る 食 生 活 の 問 題 状 況 が 叫 ば れ て 久 し い1。 2005年に は、食 育基 本法 が制 定 され、食の 教育 は、学 校教 育全 体 で取 り組 む 課題 とさ れ る よう にな っ た。 この よ うな 問題 状 況に 対し て は、 体験 的 に学 び食 生 活を 自律 的 に営 むこと を目 指す こ との 重要 性 が論 じら れ るこ とが 多 くみ られ る 。家 庭科 教 育で は、 食 生活 の自立 をめ ざす 教 育実 践の な かで 、調 理 実習 とい う 、作 って 食 べる 体験 的 な学 び2を長 年蓄 積して きて いる 。 しか し、 調 理実 習に 関 する 数多 く の先 行研 究 が体 系化 さ れる こと は なく 、教育 実践 に有 用 な知 見と し て活 用さ れ るこ とも な いと いう 状 況3にある 。

そこ で、 本 研究 では 家 庭科 で長 年 取り 組ま れ てき た調 理 技能 の教 育 を対 象と し て、調理 技能 の教 育 に関 する 理 論が 不在 で ある こと 、 およ び家 庭 での 調理 技 能の 継承 が 困難 な状況 にあ るこ と から 、学 校 で学 び生 活 に還 元す る こと を目 指 した 調理 技 能の 教育 に つい て、多 面的 に検 討 を加 える こ とと する 。 なか でも 、 これ まで の 研究 では 、 調理 技能 の 習得 を身体 的な 側面 か らの み捉 え るこ とが 多 く、 教育 的 な視 点か ら 検討 され る こと が少 な かっ たこと や、 身体 的 技能 の習 得 を認 知の 観 点か ら十 分 に検 討し て こな かっ た こと を問 題 とし て、調

理技 能の 教 育の 位置 づ けと 、教 育 的意 義を 明 らか にす る こと を目 的 とす る。      

3.研究方法 

  本 論で は 、調 理技 能 の教 育に つ いて 、多 面 的に 検討 を 加え るこ と から 、第 1 章か ら第 7 章ま での 各 章に 示し た 研究 内容 は 、章 の目 的 にあ わせ て それ ぞれ 最 適と 思わ れ る方 法をと って 行っ た 。第 1章 〜 第 5章 に関 して は、主 とし て、先 行研 究や 歴 史的 な資 料 、お よび学 習指 導要 領 、授 業実 践 記録 など 、 調理 技能 の 教育 に関 わ る多 様な 文 献、 資料 を 用い て、そ

(3)

れぞ れの 研 究目 的を 明 らか にす る ため に分 析 、検 討す る とい う方 法 をと った 。

  さ らに 、第 6章 と第 7章に 関し ては 、小 学 校 5年 生の はじ めて の 調理 実習 の 授業 を対 象 とし て、 質 問紙 調査 、 観察 調査 、 イン タビ ュ ー調 査を 行 い、 得ら れ たデ ータ を もと に、多 様な 研究 方 法を 用い て 分析 を行 っ た。 詳細 に 関し ては 、 5. 研究 内 容に おい て 、章 ごとに 示し た。

4.論文構成 

序章   問 題 の所 在                1.  本研 究に お ける 調理 技 能の 教育             2. 家庭 科 にお ける 調 理技 能の 教 育           

(1 )家 庭 科の 歴史 的 変遷 にお け る調 理技 能 の教 育 

(2 )家 庭 科に おけ る 調理 実習 と いう 授業 

3. 調理 技 能の 教育 の 再検 討を 必 要と する 背 景           

(1 )家 庭 科に おけ る 調理 技能 の 教育 に関 す る理 論の 不 在 

(2 )食 生 活問 題の 顕 在化 にみ る 家庭 にお け る調 理技 能 継承 の困 難 

4. 本研 究 の構 成        第1 章  先 行研 究の 到 達点 と本 研 究の 目的            1. 調理技能の教育に関する研究の到達点       

(1)調理実習研究における調理技能の教育に関する研究 

(2 )調理実習研究の変遷における特徴 

(3 )調 理 実習 研究 の 到達 点  1) 理論 研 究     

2) 歴史 研 究      3) 調理 科 学研 究    4) 授業 研 究 

5) 観察 研 究 

(4)

6) 調査 研 究 

2.本研究の目的と研究視点       

(1 )身 体 的技 能の 習 得の 意義 を 再考 する 

(2 )調 理 技能 の習 得 を認 知と い う視 点か ら 捉え る        第2 章  戦 前の 日本 に おけ る調 理 の教 授               1. 戦前 の 家事 科教 育 にお ける 調 理実 習の 歴 史的 変遷       

(1 )調 理 実習 の歴 史 的変 遷を た どる ため の 区分 

(2 )各 時 代区 分に お ける 調理 実 習  1) 調理 実 習萌 芽期    

2) 調理 実 習確 立期     3) 調理 実 習停 滞期 

2. 計量 を 重視 する 調 理の 教育 へ の転 換: 近 藤耕 蔵に よ る調 理の 計 量化 の再 評 価      

(1 )調 理 にお ける 計 量と いう 技 能

(2 )近 藤 耕蔵 につ い て

(3 )研 究 対象 とす る 資料

(4 )分 析 方法 

(5 )近 藤 耕蔵 が提 唱 した 調理 の 計量 化と 生 活の 科学 化 1) 近藤 耕 蔵に よる 生 活科 学の 視 点   

2) 近藤 耕 蔵に よる 家 事科 教育 の 科学 化      3) 近 藤耕 蔵の 考 える 割烹 教 育   

4) 近藤 耕 蔵の 目指 し た生 活改 善  

    5) 近 藤耕 蔵が 推 奨し た調 理 の計 量化 の 意味 

(3 )近 藤 耕蔵 によ る 調理 の計 量 を重 視す る 教育 の意 義    

(4 )現 在 の調 理実 習 に継 承さ れ た調 理の 計 量        第3 章  戦 後の 学習 指 導要 領に お ける 家庭 科 教育 の調 理 技能 の習 得      

 

1. 調理 技 能の 教育 の 位置 づけ に つい て検 討 する 視点         

(5)

2. 戦後 の 学習 指導 要 領の 変遷        3. 学習 目 標に みる 各 学校 段階 に おけ る調 理 技能 の教 育        

(1 )小 学 校家 庭科 の 学習 目標 に おけ る調 理 技能 の教 育  

(2 )中 学 校家 庭科 の 学習 目標 に おけ る調 理 技能 の教 育  

(3 )高 等 学校 家庭 科 の学 習目 標 にお ける 調 理技 能の 教 育 

4. 学習 内 容に みる 各 学校 段階 に おけ る調 理 技能 の習 得 の位 置づ け            

(1 )小 学 校 

(2 )中 学 校 

(3 )高 等 学校 

5. 学習 指 導要 領に お ける 調理 技 能の 習得 に 関す る問 題          

(1 )調 理 技能 を習 得 する こと の 意義 を再 検 討す る 

(2 )調 理 技能 の習 得 と児 童・ 生 徒( 学習 者 )の 生活 と の関 連を は かる 

(3 )調 理 に関 する 知 識と 技能 の 関連 をは か る   

6. 学習 指 導要 領に お ける 調理 技 能の 教育 の 位置 づけ と 教育 的意 義       第 4 章  家 庭科 の教 科 理論 およ び カリ キュ ラ ム研 究に お ける 調理 技 能の 教育        

1. 家庭 科 教育 の教 科 理論 およ び カリ キュ ラ ム研 究の 概 要      

(1 )日 教 組の 教研 活 動に おけ る 生活 技術 の 検討       

(2 )技 術 教育 的視 点 によ る家 庭 科の 教科 理 論に おけ る 生活 技術 

2. 教科 理 論に おけ る 生活 技術 の 位置 づけ      

(1 )生 活 主体 形成 を 目指 す家 庭 科の 教科 理 論に おけ る 生活 技術 

(2 )生 活 文化 の創 造 を目 指す 教 科理 論に お ける 生活 技 術 

(3 )生 活 主体 の育 成 、生 活文 化 の創 造い ず れも 目指 す 教科 理論 に おけ る生 活 技術  3. カリ キ ュラ ム研 究 にお ける 調 理技 能の 教 育の 位置 づ け         

(1 )食 生 活領 域の カ リキ ュラ ム 研究 にお け る調 理技 能 の教 育 

(2 )家 庭 科教 育の カ リキ ュラ ム 研究 にお け る調 理技 能 の教 育 

4.家庭 科 の教科理論 、カリキュ ラム研究に おける調理 技能の教育 の位置づけ と教育的意 義   

(6)

第5 章  家 庭科 の実 践 事例 に見 る 調理 技能 の 教育       1. 家庭 科 教育 にお け る調 理技 能 の教 育実 践 2. 実践 事 例に みる 調 理技 能の 教 育の 位置 づ け          3.  家庭 科の 食 生活 領域 の 教育 実践 に おけ る調 理 技能 の教 育      

(1 )飯 野 こう の教 育 実践 にお け る調 理技 能 の教 育 

(2 )小 松 幸子 の教 育 実践 にお け る調 理技 能 の教 育

(3 )立 山 ちづ 子の 教 育実 践に お ける 調理 技 能の 教育

4. 家庭 科 の教 育実 践 にお ける 調 理技 能の 習 得        第6 章  調 理実 習に お ける 調理 技 能の 習得 に 関す る調 査 研究       1. 調理 技 能の 教育 に 関す る先 行 研究 の到 達 点と 本調 査 研究 の目 的       2. 調理 技 能に 関す る 知識 の習 得 、調 理技 能 の習 得に 対 する 認知 、 調理 への 意 欲   

(1 )  調理 技能 の 習得 を目 指 す授 業を 分 析す る手 続 き

(2 )  調査 概要 と その 方法

1)  本研 究で 設 定し た調 理 実習 と調 査 の時 期  2)  質問 紙調 査

(3 )  結果 と考 察

1)  児童 の調 理 経験 と調 理 実習 に対 す る自 信

2)  調理 実習 に よる 調理 に 関す る知 識 の習 得― 仮 説 1の 検証

3)  調理 実習 に よる 技能 の 習得 に対 す る認 知の 変 化― 仮説 2 の検 証 4)  調理 実習 に よる 技能 の 活用 への 意 欲― 仮説 3 の検 証

5)  調理 実習 と いう 経験 に よる 児童 の 変化 

3.調 理技 能の 習得 に 対す る認 知 を促 す要 因      

(1 )  調理ができそうという自信 

(2 )  調査 の概 要 とそ の方 法 1)  観察 調査  

2)  イン タビ ュ ー調 査

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(3 )  結果 と考 察  

1)  観察 調査 の 群分 けと 分 析手 続き 

2)  調理 技能 の 習得 に対 す る認 知が 上 がる 要因 

3)  調理 実習 に おけ る調 理 技能 の向 上 ―観 察調 査 結果 から  4)  調理 実習 で の学 びに よ る意 欲の 喚 起― 仮説 3 に関 連し て  

(4 )調 理 技能 の習 得 プロ セス と 調理 実習 と いう 学習    1 )調 理 技能 の習 得 プロ セス      

2) 調理 実 習に おけ る 問題 解決 的 な学 び 

(5 )家 庭 科の 調理 実 習授 業へ の 示唆 

第 7 章  改 訂版 タキ ソ ノミ ーお よ び精 神運 動 領域 のタ キ ソノ ミー を 用い た調 理 技能 の習得 と知 識の 習 得の 関連 に つい ての 検 討           1. 調理 技 能の 習得 に 関す る認 知 的側 面か ら のと らえ 直 し 

2.教育目標の分類学を用いた調理技能の習得に関する検討       

(1 )認 知 領域 のタ キ ソノ ミー と 調理 実習 研 究に おけ る 応用 

(2 )調 理 に関 する 知 識の 習得 に つい ての 改 訂版 タキ ソ ノミ ーの 二 次元 構成 か らの 検討 

(3 )改 訂 版タ キソ ノ ミー にお け る 4 つの 知 識次 元 

3.調理実習における調理に関する4つの知識次元の習得状況 

(1 )質 問 紙調 査の 概 要 

(2 )調 査 方法 およ び 内容  1) 調査 方 法   

2) 調査 対 象    3) 実施 時 期    4) 調査 内 容 

(3 )調 査 内容 およ び 結果 ・考 察  

1) 事実 的 知識 、概 念 的知 識、 手 続き 的知 識 の習 得状 況     2) メタ 認 知的 知識 の 習得 状況 

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4.調 理技 能の 習得 に つい ての 精 神運 動的 領 域カ テゴ リ ーか らの 検 討 

(1 )調理技能の習得における模倣 

(2 )Simpson に よる 精神 運動 的 領域 のタ キ ソノ ミー 

(3 )調 理 技能 の習 得 場面 にお け る模 倣と メ タ認 知的 知 識 

(4 )観 察 調査 結果 か らみ る模 倣 の実 態  5. 調理 技 能の 習得 に 関わ るメ タ 認知 的知 識  

(1 )No.9【男 子】( UP 群) 児童 の例  1) 調理 実 習中 の様 子    

2) イン タ ビュ ー調 査 から     3) メタ 認 知的 知識 の 活用 状況 

(2 )No.7【女 子】( N 群) 児童 の 例    1) 調理 実 習中 の様 子    

2) イン タ ビュ ー調 査 から     3) メタ 認 知的 知識 の 活用 状況 

6. 調理 技 能の 習得 場 面に おけ る 知識 と技 能 の関 連    7.「 見て 学ぶ 」と い うこ との 教 育的 意義

8. 観察 調 査か ら示 唆 され た調 理 技能 の教 育 の教 育的 意 義 

(1 )調 理 技能 と認 知 的領 域の 知 識過 程次 元 との 関連 

(2 )調 理 技能 の習 得 にお ける 調 理実 習の 効 果 

終章   調 理 技能 の教 育 の教 育的 意 義        1. 戦前 お よび 戦後 の 家庭 科教 育 にお ける 調 理技 能の 教 育の 教育 的 意義 

(1 )戦 前 の家 事科 教 育に おけ る 調理 技能 の 教育 の教 育 的意 義 

(2 )戦 後 の家 庭科 教 育に おけ る 調理 技能 の 教育 の教 育 的意 義 

2. 調理 実 習に おけ る 調理 技能 の 習得 の実 態 から みる 調 理技 能の 教 育の 教育 的 意義  3. 本研 究 の概 要   

4.  本研 究の 成 果 

(9)

5.  本研 究に お いて 残さ れ た課 題   

5.研究内容 

序章   問 題 の所 在 

近年 、食 に 関す る問 題 状況 が社 会 的な 注目 を 集め てい る 。と くに 、 子ど もた ち の食の乱 れに よる 健 康問 題の 増 加、生 活の 乱れ など、食育 の必 要 性が 叫ば れ てい る4状況 につ いて は 、 流通 や消 費 の問 題を も 含め た食 生 活の 変化 に よる もの と 捉え て解 決 する 必要 が ある 一方で、

社会 全体 で 私た ちの 生 活を 見直 す 必要 をも 示 して いる 。 人類 が有 史 以来 欠か す こと なく行 って きた 食 物を 食べ る とい う行 為 にお いて 、重要 なプ ロ セス とさ れ てき た「 調 理」5は 、食 物を 購入 す るこ とで す む現 代に お いて 、必 ず しも 必要 と され るも の では なく な りつ つある。

この よう な 状況 にあ っ て、「 調理 技能 」を 学 ぶこ とが 、どの よう な 意味 をも つ のか について 再考 する 必 要が ある と 考え る。 

家庭 科教 育 は、 この 「 調理 技能 」 を、 学問 的 に体 系立 て て、 調理 実 習の 授業 に おいて教 授し てき て おり 、教 育 実践 およ び 調理 実習 に 関す る研 究 につ いて 、 長年 の蓄 積 があ る。た だし 、調 理 技能 の教 育 を、 単な る 身体 的な 技 能の 習得 と して のみ と らえ るの で はな く、現 代の 食生 活 の実 態に あ わせ てそ の 教育 的な 意 義を 明ら か にす るこ と が、 今こ そ 必要 とされ てい る。な お、本 研究 で検 討対 象 とす る調 理 技能 は、「 身 体的 に習 得 する 能力 を 中心 とし て、

そこ に学 習 者自 身の 生 活や 興味 が 深く 関わ っ たも の。 日 常生 活で 活 用す ると い うこ とを目 ざし て、 習 得す るこ と を志 向す る もの。」と 定義 する 。

第 1 章   先 行研 究の 到 達点 と本 研 究の 目的 

  こ れま で の調 理技 能 の教 育に 関 する 到達 点 を明 らか に する ため に 、主 とし て 調理 実習に 関す る研 究 を概 観し た 。そ の結 果 、調 理技 能 の効 率的 な 習得 を目 指 す研 究が 多 く行 われて きた こと や 、主 に自 然 科学 的な 手 法に よる 調 査研 究が 多 いこ とが 明 らか にな っ た。 また、

これ まで 、 調理 実習 に 関す る研 究 は、 数多 く 行わ れて い るに も関 わ らず 、そ れ らが 体系化 され 、教 育 実践 に有 用 な形 で蓄 積 され てい る とは 言え な い状 況に あ る。

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学習 者の 変 容を 検討 対 象と する こ とや 、実 際 の授 業を 対 象と する こ とが 少な か った こと、

調理 技能 を 習得 する こ とは 、当 然 のこ とと し て進 めら れ てい る研 究 が多 いこ と も問 題であ ると 考え ら れる 。

  そ こで 、 本研 究で は 、調 理技 能 の習 得に つ いて 教育 的 視点 から 検 討を 加え る ため に、二 つの 視点 を 設定 した。一つ は、身 体的 な調 理 技能 の習 得 の意 義を 明 らか にす る こと であ る。

二つ 目は 、 認知 とい う 切り 口か ら 学習 者が 調 理技 能を 習 得す るこ と を捉 える と いう 視点で ある 。

第 2 章   戦 前の 日本 に おけ る調 理 の教 授 

調理 技能 の 教育 が明 治 後期 以降 ど のよ うに 行 われ てき た のか、先行 研究6をも と に整 理し た。 当初 、 調理 (割 烹 )教 育で は 、調 理の 方 法を 教師 の 手か ら生 徒 へと 、手 習 いの ように 教授 して い た。 その 後 、昭 和初 期 に科 学的 な 考え 方が 取 り入 れら れ 、調 理に お ける 計量が その 具体 的 方法 とし て 行わ れる よ うに なっ た 。この 計量 とい う方 法 は、近 藤耕 蔵に よっ て、

調理 技能 を 効率 的に 習 得す るた め に有 用で 科 学的 な方 法7とし て、積 極的 に推 奨 され たもの であ る。 こ れは 、教 育 的観 点か ら する と、 そ れま での や り方 を伝 授 して いた 限 られ た範囲 での 手習 い のよ うな 教 授か ら、 広 くだ れに で も伝 達可 能 な教 育内 容 へと 転換 さ せた 出来事 とし て捉 え るこ とが で きる 。こ の こと によ っ て、 調理 に 関す る教 育 は、 単な る 事実 的知識 や手 続き 的 知識 を羅 列 して 教え る ので はな く 、調 理と い う現 象を 科 学的 に理 解 可能 な概念 的知 識と し て教 える こ とが 可能 に なっ たと 言 うこ とが で きる 。     

近藤 によ る この よう な 調理 の科 学 化と いう 考 え方 は、生 活改 善8の必 要性 を強 く 意識 して いた こと 、 とく に男 女 の別 なく 栄 養の 知識 を 習得 して 、 生活 に還 元 する こと の 必要 を痛感 して いた こ と、 その た めに は、 女 性の 地位 の 向上 も含 め て、 より 合 理的 な家 事 のあ り方を 追究 する 必 要9を認識 し てい たこ と など 、近 藤 の家 事科 教 育に おけ る 生活 主体 育 成10へ の 考 え方 が背 景 とな って い た。 

調理 を教 授 する 上で の 具体 的方 法 論と して 、 近藤 が示 し た調 理の 計 量は 、男 女 がともに 生活 主体 と なる こと を 目ざ した 生 活改 善の 考 えと の関 連 から 、現 在 の家 庭科 教 育に おいて

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再認 識す べ き、 重要 な 教育 的視 点 を提 示し て いる 。

第 3 章   戦 後の 学習 指 導要 領に お ける 家庭 科 教育 の調 理 技能 の習 得  

戦後 の家 庭 科教 育の 変 遷を 、学 習 指導 要領 を たど るこ と によ って 明 らか にし た 。学習指 導要 領は 、 戦後 の 1947 年以 来、 約 10 年ご とに 改訂 さ れ、 現在 ま でに 8期 の 学習 指導 要 領 が示 され て いる 。こ の なか で、家 庭科 の調 理 に関 する 内 容に つい て 言え ば、1951 年 および 1956 年に 改 訂さ れた 学 習指 導要 領 試案 に示 さ れた 調理 技 能に 関す る 内容 は、そ の後 の学習 指導 要領 の 原型 と考 え られ るも の であ り、 そ の範 囲と 分 量が 削減 さ れた こと に よる 違いは ある もの の 、知 識中 心 型の 配列 で ある こと 、 実践 力の 育 成を 目指 す もの であ る とい う点で は一 貫し て いた 。つ ま り、 食生 活 の変 化や 、 教育 に対 す る社 会的 な 要請 の変 化 があ るもの の、 内容 に 大き な変 化 は見 られ な い。 

ただ し、 学 校段 階に よ って 、そ の 位置 づけ は 異な り、 小 学校 の学 習 指導 要領 で は、男女 がと もに 身 近な 生活 技 術に つい て 学ぶ 教科 と して 、調 理 技能 が果 た す役 割、 必 要と される 社会 的な 状 況に つい て 、細 かく 記 載さ れて い た。 中学 校 の学 習指 導 要領 では 、 生活 技術を 対象 とす る 家庭 科と 、生産 技術 を 対象 とす る 技術 科と が 、「技 術・家 庭科 」と し て一 つの教 科と 位置 づ けら れ、 調 理に 関す る 体系 的な 知 識が 配列 さ れて いた 。 さら に、 高 等学 校の学 習指 導要 領 では、家庭 経営 の立 場 から、調理 に関 する 内 容の 配列 が 行わ れて い た 。小・中 ・ 高等 学校 を 通し てみ た 場合 には 、 調理 技能 の 教育 は、 実 践的 態度 を 育成 する こ とが その教 育的 意義 と して 示さ れ てい るこ と にな る。

近年 では 、 家庭 科の 時 間数 が削 減 され るに 伴 って 、調 理 に関 する 教 育は 縮小 お よび見直 され てき た 。た だし 、これ は調 理 技能 の教 育 の意 義を 根 本か ら見 直 すも ので は なく 、1950 年代 に必 須 と考 えら れ て示 され た 調理 に関 す る教 育内 容 を、時間 数 の減 少に 合 わせ る形で、

削減 して き たも のと 考 えら れる 。

その ため 、 学校 で教 え る調 理技 能 はな にか と いう 点や 、 調理 に関 す る知 識と 身 体的に習 得す る技 能 との 関連 に つい て検 討 する こと は 、今 後の 課 題で ある 。

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第 4 章   家 庭科 の教 科 理論 およ び カリ キュ ラ ム研 究に お ける 調理 技 能の 教育 

家庭 科の 教 科理 論お よ びカ リキ ュ ラム 研究 に おい ては 、 調理 技能 の 教育 が正 面 から取り 上げ られ て はこ なか っ た。1960年 代か ら行 わ れた 教科 理 論の 検討 に おい て、技 能に 関する 教育 は、 体 験す るこ と によ って 生 活を 認識 す るこ と、 つ まり 一つ の 手段 と位 置 づけ られ、

調理 技能 の 教育 もそ の 一つ とさ れ た。

また 、カ リ キュ ラム 研 究に おい て は、 これ ま で家 庭科 で 学習 され て きた よう に 、発達段 階に 応じ て 、基 礎的 な 調理 技能 か ら、 応用 の 調理 技能 へ と設 定さ れ るこ とが 多 かっ た。た だし 、な に を基 礎と す るの か、 ど こか らが 応 用な のか 、 とい った 点 は十 分に 示 され てはい ない 。そ の ため 、多 く のカ リキ ュ ラム 研究 に おい ては 、 従前 示さ れ てき たよ う に、 調理学 の専 門的 な 学問 体系 に よっ て、 細 分化 され た 内容 が用 い られ 、ほ ぼ 同じ 学習 内 容が 配列さ れて いる 。

調理 技能 に 関す る教 育 は、 教科 理 論に おい て は、 生活 を 科学 的に 認 識し 、社 会 的に認識 する ため の 手段 とさ れ てい る。 ま た、 カリ キ ュラ ム研 究 にお いて は 、自 立を す るた めに必 要と する 調 理技 能を 習 得す るた め のも の、 さ らに 生活 を 豊か にす る ため のも の と位 置づけ られ てい る 。す なわ ち 、調 理技 能 の教 育は 、 生活 認識 、 社会 的認 識 をす るこ と 、自 立を促 し、 生活 を 豊か にす る ため に調 理 技能 を習 得 する こと が 、そ の教 育 的意 義で あ る。

ただ し、 調 理技 能の 教 育に 関し て は、 カリ キ ュラ ム上 で は、 身体 的 な技 能と 、 調理に関 わる 知識 の 両方 が、 明 確に 区別 さ れて はい な い。 単に 調 理を する こ とだ けで は なく 、科学 的な 知識 や 食品 の知 識 、調 理方 法 の手 続と し ての 知識 な ども 合わ せ て学 び、 身 体的 な調理 技能 の習 得 と、調 理に 関わ る知 識 との 関連 を はか るこ と が、よ り重 要に なる と 考え られ る 。

第 5 章   家 庭科 の実 践 事例 に見 る 調理 技能 の 教育 

戦 後 の 家 庭 科 教 育 の 教 育 実 践 に つ い て は 、 民 間 の 研 究 団 体 が 重 要 な 役 割 を 担 っ て き てい る。 なか で も、 産業 教 育研 究連 盟 、家 庭科 教 育者 研究 連 盟の 自主 編 成活 動、 お よび 各地区 の研 究会 に おけ るカ リ キュ ラム 開 発の 取り 組 みは 、家 庭 科教 師の 実 践に 多大 な 影響 を与え た。 これ ら の実 践研 究 は、 子ど も たち の実 態 を起 点と し てい る点 が 特徴 であ る こと に加え

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て、 実践 を 裏付 ける 教 科理 論を 生 み出 す作 業 を同 時に 行 って きた 点 が特 徴と 言 える 。 そこ で、そ れぞ れの 団 体お よび そ の他 の実 践 の中 から、1)実践 事 例が 複数 報 告さ れてい る こ と 、2) 単 な る 事 例 報 告 で は な く 、 そ の 実 践 を 行 っ た 意 図 や 背 景 と な る 理 論 を 示 し て いる こと 、3)そ れぞ れ の属 する 研 究団 体の 教 科理 論を あ る程 度代 表 した 実践 で ある こと、

とい う条 件 を満 たし 、 調理 に関 す る教 育実 践 報告 をし て いる 実践 者 とし て、 飯 野こ う(小 学校)、小 松幸 子( 中 学校)、立 山ち づ子 ( 高校 )を 取 り上 げ、 実 践事 例の 分 析を 行っ た 。

これ ら 3人 の実 践事 例 に共 通し て いる のは 、 調理 技能 の 教育 にお い て、 社会 的 認識 を深 める 授業 を 実践 して い ると いう こ とで ある 。 調理 技能 を 学ぶ とい う こと は、 生 活認 識を深 める こと に はつ なが り やす いが 、 社会 的認 識 を深 める こ とに はつ な がり にく い 、と いう点 に関 して 、 教科 理論 お よび カリ キ ュラ ム研 究 では 、充 分 な解 決を み せて はい な かっ た。こ の 点 を 、 食 べ る こ と を 社 会 の で き ご と と 関 連 さ せ る こ と(飯 野 実 践)、 人 類 の 歴 史 の 中 で 調 理技 能が ど のよ うな 意 味を もっ て きた のか に つい て学 ぶ こと(小 松 実践)、地 域 社会 に固有 の料 理を 通 して 地域 と 自身 の関 わ りを 学ぶ こ と( 立山 実 践) など 、 調理 技能 の 教育 におい て、 社会 的 な視 点を 取 り入 れる こ とが 実際 に 行わ れて い た。

こ の よ う に 、 社 会 的 認 識 を 深 め る こ と を 、 調 理 と い う 食 生 活 と 密 接 に 結 び 付 い た 体 験を 通し て、 効 果的 に行 わ れる こと が 、調 理技 能 の教 育の 、 教育 的意 義 であ る。

第 6 章   調 理実 習に お ける 調理 技 能の 習得 に 関す る調 査 研究 

家庭 科教 育 にお ける 調 理技 能の 教 育に おい て 、技 能は 習 得さ れて い るの か、 調 理に関す る知 識は 習 得さ れて い るの か、 な ど、 実際 の 教育 実践 場 面に おい て 、そ の効 果 を明 らかに した 。

本章 では 、 教育 目標 の 分類 学( タ キソ ノミ ー )に よる 区 分で ある 認 知的 領域 、 情意的領 域、精 神運 動的 領域 を 参考 にし て 、小学 校 5年生 の、は じめ ての 調 理実 習を 対 象と して 調 査研 究を 行 った 。

(1 ) 調理 実習 と いう 体験 の 効果 

  調 理に 関 する 知識 は 、調 理実 習 の体 験の 有 無に 関わ ら ず講 義型 の 授業 によ っ て習 得され

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た。 一方 、 調理 実習 を 経験 する こ とに よっ て 、よ り高 い レベ ルで 認 知さ れる よ うに なるの は、 調理 技 能の 習得 に つい て、 お よび 調理 に 対す る意 欲 であ る。 こ れは 、対 照 群に 比べて 実施 群の 児 童が 有意 に 向上 した と 認知 して い るこ とか ら 示さ れた 。 すな わち 、 調理 実習で 調理 につ い て学 び、 実 際に 手を 動 かし て調 理 する とい う こと は、 学 習す る前 よ りも 調理技 能が 上手 に なっ た、身 につ いた、と有 意に 認 知す るよ う にな り、そ の後 の活 用 につ いて も 、 より 積極 的 に考 える よ うに なる と いう こと を 示し てい る。 

(2 ) 調理 実習 に おい て他 者 を見 ると い うこ との 効 果 

小学 校 5年 生の はじ め ての 調理 実 習に おい て 、児童 が調 理技 能を 習 得し たと 認 知す るこ と、つ まり 調理 がで き そう とい う 自信 をも つ 要因 を、主 とし て観 察 調査 をも と に検 討し た 。 

その 結果 、 児童 にと っ て、 学校 の 家庭 科の 調 理実 習に お いて 、調 理 がで きそ う な状態に なる こと に つい ては 、 調理 実習 中 に友 達の 手 元を 見る と いう こと が 、重 要な 意 味を もつこ とが 明ら か にな った 。 観察 調査 お よび イン タ ビュ ー調 査 にお いて 収 集し たデ ー タを 分析し た結 果か ら は、 友達 が 調理 をす る とい う場 面 は、 成熟 し た一 つの 絶 対的 な技 能 モデ ル(示 範) を見 て 学ぶ とい う こと では な く、 自分 と 同じ くら い でき ない こ とも あれ ば 、自 分より もで きる こ とも ある 、 とい う未 成 熟な 状態 の 調理 技能 を 見な がら 、 自分 だっ た ら、 自分の 番が きた ら と、 自分 が 調理 技能 を 使う 場面 を イメ ージ し て取 捨選 択 し、 自分 の 身に 引き寄 せて 学ん で いる のだ と 考え られ る 。

第 7 章  改訂版タキソノミーおよび精神運動的領域のタキソノミーを用いた調理技能

の習得に関する検討

調理 技能 の 習得 時に お ける 調理 に 関す る知 識 の習 得の 関 連に つい て 、3 点が 明 らかにな った 。① 調 理に 関し て 、講 義を う ける だけ で も習 得で き る知 識は 、 記憶 する だ けの 事実的 知識 、お よ び記 憶す る だけ の手 続 き的 知識 で ある 。② 調 理実 習を 経 験す るこ と によ って、

より 効果 的 に習 得す る 知識 は、 事 実的 知識 の 中で も、 調 整作 業を 体 験し て、 身 体的 に記憶 する タイ プ のも のと 、 理解 を伴 う 概念 的知 識 であ る。 ③ 調理 がで き ると いう こ とは 、高次 の( 複雑 な )手 続き 的 知識 やメ タ 認知 的知 識 を含 めて 、 総合 的に 技 能を 駆使 す るこ とが可

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能に なる と いう 状態 で ある 。

さら に、 身 体的 な調 理 技能 を習 得 する とい う こと を、 調 理に 関す る 知識 との 関 連で説明 する と、 調 理技 能は 、 友達 の調 理 の様 子を 見 るこ とに よ って 、自 分 もま るで や った ような 気持 ちに な って 疑似 的 に体 験し 、 さら に模 倣 して やっ て みな がら 、 試行 錯誤 す る、 という プ ロ セ ス を た ど っ て 、 よ り 習 得 さ れ る 。 こ れ は 、 精 神 運 動 的 領 域 の タ キ ソ ノ ミ ー

(E.J.Simpson)にお ける、3.誘導 的反 応 の 3.1模倣 、3.2試行 錯誤 の段 階 に相 当す る と 考え られ る 。

調理 実習 に おい て、 調 理技 能を 習 得す るこ と には 、メ タ 認知 的知 識 のな かで も 、自分自 身の こと を 振り 返っ て 理解 する こ と、 つま り 自己 認識 ( Dc) が充 分 に機 能し て いる のかど うか が関 わ って いる 。 これ は、 模 倣し 、試 行 錯誤 する と いう 調理 技 能の 身体 的 な習 得には 不可 欠な プ ロセ スで あ ると 考え る こと がで き る。 

 

6. 本研 究 の成 果 

本研 究に よ って 提示 し た成 果と し ては 、以 下 に示 す5 点 が挙 げら れ る。 

(1 ) 戦前 家事 科 の調 理技 能 の教 育に お ける 近藤 耕 蔵の 功績 の 再評 価 

  戦 前 家 事 科 の 食 物 の 教 育 に 関 す る 研 究11を も と に 、 調 理 技 能 の 教 育 と い う 視 点 で あ ら た めて 整理 し た。 その 結 果、 調理 技 能の 教育 は 、学 校教 育 の家 事科 で 手習 いと し て伝 授され るよ うに 行 われ てい た もの が、 特 に、 新し い 調理 を学 ぶ こと 、饗 応 食の よう な 日常 性の低 い料 理に つ いて 学ぶ こ とに 、目 的 が置 かれ 、 調理 技能 の 習得 につ い ては 、注 目 され ていな かっ たと い うこ とを 明 らか にし た 。

本研 究で は 、こ のよ う な、 手習 い とし ての 調 理の 学習 が 、学 校教 育 にお いて 教 育的な方 法で 教授 さ れる よう に なる ため に は、 近藤 耕 蔵に より 推 奨さ れた 調 理の 計量 化 が重 要な方 法で あっ た こと を示 し た。 近藤 耕 蔵に よる 調 理の 計量 化 につ いて は 、こ れま で 、調 理の科 学 的 教 授 を 広 め る 方 法 と 認 識 さ れ て お り12、 近 藤 は 、 石 澤 吉 麿 と と も に 、 調 理 の 科 学 化 を 推進 した 人 物と して 有 名で ある13

ただ し、 本 研究 では 、 これ まで 理 解さ れて い るよ うに 、 近藤 が調 理 の科 学化 に 功績のあ

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った とい う こと に加 え て、 調理 技 能を すべ て 科学 的に 説 明可 能な も のと して 、 一般 化して 教授 しよ う とし た点 に つい て、 教 育上 の意 味 を見 出し た 。近 藤は 、 調理 に関 す る断 片的な 知識( 事実 的知 識)を 、科学 的に 意味 のあ る 知識( 概念 的知 識)と して 体系 づ けて、従来 、 伝授 する し かな かっ た 調理 技能 の 教育 につ い て、 普遍 的 な教 授の 方 法を 示し た ので ある。   

すな わち 、 本研 究は 、 この 近藤 の 意図 する 調 理の 計量 が 、調 理の 科 学的 教育 を 体系づけ るこ とに 加 えて 、調 理 技能 の教 育 を、 普通 教 育と して 普 及さ せる こ とに 貢献 す るこ とにな った 、と い うこ とを 示 した 。あ わ せて 、近 藤 の論 考や 当 時の 記事 を もと に、 近 藤の 計量に 対す る考 え 方の 背景 に ある 、生 活 科学 的視 点 をも 明ら か にし た。  

 

(2 ) 戦後 家庭 科 にお ける 調 理技 能の 教 育の 多次 元 的な 様相 の 解明 

  本 研究 で は、 戦後 の 学習 指導 要 領、 教科 理 論研 究、 カ リキ ュラ ム 研究 、教 育 実践 におい て、 調理 技 能の 教育 が どの よう に 位置 づけ ら れて きた の かを 整理 し た。 調理 実 習に 関する 研究 は、 様 々な 分野 に よる 数多 く の研 究が あ るが 、一 定 程度 の体 系 を形 づく る まで には至 って おら ず 、調 理技 能 の教 育に 焦 点化 した 研 究は みら れ ない 。ま た 、戦 後の 家 庭科 の発足 時 に 、 技 能 教 育 で は な い と し た 経 緯14に も 関 わ っ て 、 調 理 技 能 の 習 得 を 積 極 的 に は 目 標 と はし ない こ とが 一般 的 であ った 。 調理 技能 の 教育 が、 家 庭科 でど の よう に位 置 づけ られて きた のか を 、そ れぞ れ の側 面に お いて 明ら か にし て、 総 合的 に検 討 をく わえ る こと が、家 庭科 にお け る調 理技 能 の教 育の 教 育的 意義 を 多面 的に 論 じる もの と 考え た。

その 結果 、 学習 指導 要 領に おい て は、 実践 力 の育 成と い う観 点か ら 調理 技能 の 習得が目 ざさ れて お り、 特に 小 学校 では 、 生活 上の 自 立を 目指 し て調 理技 能 を習 得す る こと の意義 が明 示さ れ てい るこ と 、中 学校 に おい ては 、 調理 に関 す る知 識が 、 すべ ての 調 理方 法を習 得す るよ う に体 系化 さ れて 、配 列 され てい る こと 、高 等 学校 にお い ては 、家 庭 経営 の観点 から 調理 技 能の 教育 の 必要 性が 示 され るこ と など 、調 理 技能 の習 得 を目 ざし た 教育 が重視 され てい る こと を改 め て示 した 。 つま り、 調 理技 能の 教 育は 、自 立 のた めに 基 礎と なる調 理技 能を 習 得す るこ と 、ま た、 調 理に 関す る 知識 を体 系 的に 習得 す るこ とと い う点 に教育 的意 義を 認 める こと が でき る。

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ただ し、1989 年告 示 の学 習指 導 要領 以降 、時間 的な 制 約の もと で 調理 の学 習 内容 が削減 され てい る が、 学習 指 導要 領で は 、学 習内 容 を時 間数 に 合わ せて 削 減し たと 考 えら れる。

つま り、 日 常的 に必 要 とさ れる 調 理技 能が 何 であ るの か 、基 礎的 ・ 基本 的な 技 能、 応用的 な技 能と は 何か など 、 内容 につ い ては 、充 分 に吟 味さ れ てい ない 。

一方 、教 科 理論 、カ リ キュ ラム 研 究に おい て は、 技能 の 教育 は、 生 活認 識を 深 めるツー ル15と し て 位 置 づ け ら れ て き た 。 こ の こ と は 、 先 行 研 究 に お い て も 、 調 理 技 能 の 教 育 は 、 技 能 の 習 得 を 目 指 す も の で は な く 、 生 活 主 体 の 育 成16、 生 活 文 化 の 継 承17を 目 指 し て 行 わ れる もの で ある とし て いる 。本 研 究で は、 近 年の カリ キ ュラ ム研 究 にお いて も 、こ のよう な考 え方 が 中心 であ る こと を改 め て示 すと と もに 、自 立 する ため に 、生 活を 豊 かに するた めに 必要 な 能力 を培 う こと を、 調 理技 能の 教 育に おけ る 教育 的意 義 とし て示 し た。

また 、教 育 実践 では 、 調理 技能 と いう もの が 、食 とい う 営み や社 会 とは 切り 離 せないも ので ある こ とを 実感 し 、理解 する こと が目 指 され てい た 。社会 的認 識を 深め る とい うこ と、

同時 に自 己 認知 をと お して 、自 分 との 関連 で 具体 的に 捉 える こと 、 これ が調 理 技能 の教育 の、 教育 的 意義 とし て 説明 可能 で ある 。

なお 、調 理 技能 につ い て学 校教 育 で学 ぶ意 味 を再 考す る とす れば 、 身体 的な 調 理技能の 習得 と、 調 理に 関す る 知識 との 関 連を どの よ うに はか る のか 、と い うこ とを 検 討す ること が必 要と さ れる 。こ れ まで 身体 的 な技 能の 習 得に つい て は、 カリ キ ュラ ム上 で 区別 して示 され るこ と はほ とん ど なく 、多 く が身 体的 な 技能 と調 理 に関 わる 知 識の 両方 が 未分 化な状 態で 示さ れ てい る。 生 活場 面で は 、調 理に 関 する 技能 と 知識 は総 合 的に 活用 さ れる が、教 育内 容や 配 列な どカ リ キュ ラム を 考え る場 合 には 、こ の 二つ を区 分 して 考察 し て、 より教 育実 践に 有 用な 知見 を 示す こと が 必要 とさ れ るこ とを 、 本論 は示 し た。

 

(3 ) 学習 者の 観 察調 査を も とに した 調 理技 能の 習 得の プロ セ スの 解明

調理 実習 に おけ る観 察 調査 研究 は 、これ まで にも 数多 く 取り 組ま れ てき てい る 。しか し、

いず れも 調 理実 習で 起 こっ てい る 事実 を詳 細 に示 すに と どま り、 調 理実 習と い う営 みが、

様々 な要 因 が複 雑に 絡 み合 って 成 立す るも の であ る、 と いう こと を 示し ただ け であ った。 

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本研 究は 、 この よう な 観察 調査 の 知見 を参 照 しな がら も 、こ れま で 調理 実習 の 研究では 用い られ る こと の無 か った 時間 見 本法18を援 用 し、調理 実 習の なか で 、学 習者 が「他 者(友 達)を 見る 」とい う1つの 視点 か ら、調 理実 習に おけ る 調理 技能 に 関す る学 び の事 実を 明 らか にし た 。そ の結 果 、家 庭科 の 時間 に行 わ れる 調理 実 習で は、「 他者 を見 る 」と いうこと が、 擬似 的 に体 験す る こと にな り 、一 方で 「 他者 を見 る 」こ とに よ って 、自 分 の調 理技能 の 状 態 を 振 り 返 る 、 メ タ 認 知19を 行 う こ と に な る と い う こ と が わ か っ た 。 さ ら に 「 他 者 を 見」 て、 自 分を 振り 返 り、 注意 深 く取 り組 む こと が、 結 果と して 調 理技 能を 向 上さ せてい る、 とい う 実態 も明 ら かに した 。

これ は、 家 庭で 親か ら 調理 を教 わ ると いう 場 面と は異 な り、 自分 と 同じ くら い できない こと もあ れ ば、 自分 よ りも でき る こと もあ る 、と いう 友 達の 未成 熟 な状 態の 調 理技 能を見 なが ら、 自 分だ った ら 、自 分の 番 がき たら と 、自 分が 調 理技 能を 使 う場 面を イ メー ジして 取捨 選択 し 、自 分の 身 に引 き寄 せ て学 んで い る、 とい う こと であ る 。わ ざの 伝 承に 関する 研 究 に お い て は 、 従 来 、 成 熟 し た 一 つ の 絶 対 的 な 技 能 モ デ ル ( 示 範 ) を 見 て 学 ぶ20と い う こと が言 わ れて いる 。 しか し、 本 研究 は、 こ の絶 対的 な 技能 モデ ル を見 て学 ぶ とい うこと では なく 、 友達 から 学 ぶと いう 、 調理 実習 に おけ る調 理 技能 の学 び の事 実を 示 した 。これ は、 特に 重 要な 本研 究 の成 果で あ る。  

学校 教育 に おい ては 、 友達 とと も に学 ぶと い うこ とが 重 要で ある こ とは 、す で に様々な 研 究21で 示 さ れ て お り 、 調 理 実 習 に お い て も 、 従 来 の よ う に グ ル ー プ で 取 り 組 む こ と の 効 果22は 、 実 践 者 に よ っ て も 広 く 認 識 さ れ て い る 。 た だ し 、 調 理 実 習 で 学 び あ う こ と に よ っ て調 理技 能 が習 得さ れ ると いう こ とを 、本 研 究の よう に 観察 デー タ を用 いて 示 した ものは、

管見 の限 り ない 。調 理 技能 の習 得 にお いて 、 学校 の調 理 実習 が効 果 的で ある こ とを 示した 調査 研究 と して 価値 が ある と考 え られ る。

また 、調 理 につ いて 学 び、 調理 技 能を 習得 す ると いう 点 から すれ ば 、本 研究 で 設定した よう なわ ず か2 回の 調 理実 習に お いて も効 果 があ ると い うこ とを 示 した こと も 、本 研究の 成果 の一 つ であ る。 友 達の 様子 を みて 、自 分 を振 り返 り なが ら調 理 技能 を習 得 する 、とい う本 研究 の 知見 を援 用 すれ ば、 自 己評 価や 相 互評 価を 取 り入 れた 調 理実 習を 工 夫す ること

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によ って 、 より 効果 的 な調 理技 能 の習 得を 目 標と した 授 業を 考え る こと が可 能 とな る。  

(4 ) タキ ソノ ミ ー・カ テゴ リー によ る 調理 技能 の 習得 にお け る知 識と の 関連 につ い ての 明確 化     

これ まで 、 調理 技能 の 教育 につ い て、 十分 に 研究 され な かっ た原 因 の一 つは 、 技能と知 識の 習得 に つい て、 区 別し て考 え ると いう こ とが 容易 で はな かっ た こと が挙 げ られ る。そ のた め、測 定可 能な 調 理技 能の 習 得実 態を 測 定す る研 究 が数 多く あ る一 方で 、第3章 の分 析で 明ら か にし たよ う に、 学習 指 導要 領の 特 にか つて の 中学 校の 女 子向 けの 内 容で は、習 得す べき 調 理技 能が 調 理に 関す る 知識 の体 系 とし て示 さ れる など 、 調理 技能 と 調理 に関す る知 識の 関 連が 検討 さ れて こな か った 。

  本 研究 で は、 これ ま で、 以上 の よう に調 理 技能 の習 得 につ いて 考 える 際に 、 調理 技能と 調理 に関 す る知 識が 、 未分 化の ま ま論 じら れ てき たこ と を踏 まえ て 、身 体的 に 習得 する調 理技 能と 、調理 に関 す る知 識と を 分け て考 え るた めに 、B.S.Bloom らに よる 教 育目 標の分 類学( タキ ソノ ミー)23をも とに、L.W.Anderson ら によ って 改訂 さ れた 認知 領 域の タキ ソ ノ ミ ー24の カ テ ゴ リ ー を 用 い て 、 調 理 に 関 す る 知 識 の 習 得 に つ い て 詳 細 に 検 討 し た 。 さ ら に、L.W.Anderson ら によ って 改 訂さ れた 認 知領 域の タ キソ ノミ ー と、E.J.Simpson に よ る 精 神 運 動 的 領 域 の カ テ ゴ リ ー25を 用 い て 、 身 体 的 な 調 理 技 能 の 習 得 と 、 調 理 に 関 す る 知 識 の 習 得 と の 関 連 を と く に メ タ 認 知 的 知 識26に 焦 点 化 し て 明 ら か に し た 。 こ れ ら タ キ ソ ノ ミー のカ テ ゴリ ーを 用 いた 検討 は 、第6章 で 得ら れた 質 問紙 調査 お よび 観察 調 査、インタ ビュ ー調 査 によ る、実 際の 授業 場 面の デー タ を用 いて 行 った こと が 、本研 究の 特徴 であ る 。   そ の結 果 、調 理実 習 を体 験す る こと によ っ て習 得さ れ やす い知 識 は、 身体 的 に記 憶する 一部 の事 実 的知 識、 理 解を 伴う 概 念的 知識 で ある こと が わか った 。 また 、調 理 技能 の習得 は、 精神 運 動的 領域 の タキ ソノ ミ ー(E.J.Simpson)に おけ る、 3 .誘 導的 反 応の 3.1 模 倣、 およ び 3.2試 行錯 誤の 段階 に ある こと を 示し た。

さら に 、L.W.Anderson らに よ っ て改 訂 され た認 知 的領 域の タ キソ ノミ ー のカ テゴ リ ー にお ける 、 D メ タ認 知 的知 識の な かで も、 自 分自 身の こ とを 振り 返 って 理解 す るこ と、つ

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まり Dc 自 己認 識  を 行う こと が 、誘 導的 反 応に おけ る 模倣 、試 行 錯誤 する と いう 段階の、

身体 的な 調 理技 能の 習 得に は不 可 欠で ある と いう こと を 理論 的に 示 した 。   

(5 ) 調理 技能 の 教育 につ い ての 教育 的 意義 の明 示  

① 戦前 の家 事 科教 育に お ける 調理 技 能の 教育 の 教育 的意 義  

  調 理技 能 の教 育は 、 元来 、家 庭 にお いて 親 から 子へ と 日常 生活 の なか で伝 授 され てきた もの 、お よ び、 徒弟 制 度の なか で 、師 匠か ら 弟子 へと 調 理に 関す る あら ゆる 知 識と ともに 教え られ て きた もの で ある 。こ れ らは 、体 系 的な 教育 内 容が ある わ けで はな く 、見 て学ぶ とい う方 法 をと った た めに 、一 定 程度 に習 熟 する こと に はあ る程 度 の時 間を 必 要と した。

とく に、 徒 弟制 度の な かで 専門 的 に技 能を 習 得す る場 面 にお いて は 、そ の技 能 が必 要とさ れる 文化 的 な背 景や 、 その 技能 の 活用 する 場 面な どに つ いて 、深 く 理解 する こ とが 求めら れる ため 、 非体 系的 な 教育 方法 が とら れて き てい たと も 言え る。

  戦 前の 家 事科 教育 に おけ る調 理 技能 の教 育 は、 この よ うな 非体 系 的な 徒弟 制 度に おける 調理 技能 の 習得 の方 法 を継 承し な がら 、学 校 教育 の一 つ の科 目の な かで 学ぶ べ き内 容とす るた めに、調理 とい う 領域 を技 能 の教 授と い う観 点か ら 、体系 化す るこ とが 必 要と され た。

学ぶ 場が 、 主と して 高 等女 学校 で あっ たこ と から 、近 い 将来 主婦 と なる 女子 学 生が 、家庭 生活 で活 用 可能 な調 理 技能 を学 習 内容 とし た 。た だし 、 生活 に身 近 な、 日常 的 な調 理を学 ぶと いう こ とで はな く 、西 洋料 理 や饗 応食 の よう な、 非 日常 的な 料 理を 学ぶ こ とで 、調理 技能 の教 育 に、 単な る 調理 技能 の 習得 とい っ たこ とと は 異な る意 義 を付 与し た ので ある。

学校 で学 ぶ 調理 技能 は 、新 しい 料 理を 体験 的 に学 び、 つ くり 方を 理 解す るた め のも のであ った 。つ ま り、 家事 科 で行 われ て いた 調理 技 能の 教育 は 、新 しい 料 理を 知る と いう 教育的 意義 があ っ た。

  そ の後 、 近藤 耕蔵 に よっ て計 量 によ る調 理 が推 奨さ れ た。 第2 章 で論 じた よ うに 、計量 とい う科 学 的な 方法 を 用い るこ と によ って 、 調理 は、 師 匠と 弟子 に みら れる よ うな 、見よ う見 まね で 学ぶ だけ の もの では な くな った 。 体系 的に 、 効率 よく 調 理技 能を 習 得す ること が可 能と な った ので あ る。 これ は 、調 理技 能 とい う伝 授 する しか 方 法が なか っ たも のを、

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学校 教育 で 学ぶ べき 内 容と して 位 置づ けた と いう こと で ある 。そ の ため 、こ の 時期 の調理 技能 の教 育 は、 新し い 料理 を知 る とい うこ と に加 えて 、 調理 を科 学 的に 捉え る とい うもの の見 方を 学 ぶ点 にそ の 教育 的意 義 を見 出す こ とが でき る 。家 庭で 親 から 子へ と 伝授 される 調理 技能 と は違 い、 一 つ一 つの 調 理操 作に つ いて の科 学 的な 意味 を 理解 し、 さ らに 、調理 を再 現可 能 なも のと し てそ の方 法 を学 ぶ、 と いう こと に 家事 科で 学 ぶ調 理技 能 の教 育的意 義が あっ た と言 える 。

 

② 戦後 の家 庭 科教 育に お ける 調理 技 能の 教育 の 教育 的意 義

戦後 の家 庭 科教 育に お いて は、 調 理技 能の 教 育に つい て は、 充分 に その 教育 的 意義を検 討さ れな い まま であ っ た。本 研究 では、学習 指導 要領、教科 理論 お よび カリ キ ュラ ム研 究 、 教育 実践 と 3つ の側 面 から 、調 理 技能 の教 育 の教 育的 意 義を 検討 し た。 その 結 果、 それぞ れの 側面 で は異 なる 教 育的 意義 が ある こと が 明ら かに な った 。

まず 、学 習 指導 要領 に おい ては 、 学校 段階 ご とに 調理 技 能の 教育 が 求め られ る 背景が異 なっ てい る 。小学 校で は、生 活上 の自 立を は かる ため に 、基礎 的な 調理 技能 を 必要 とし た 。 また 、中 学 校で は、 基 礎・ 基本 と され る調 理 方法 を学 び 、知 識を 習 得し て、 生 活上 で応用 でき るよ う にす るこ と が目 ざさ れ た。 さら に 、高 等学 校 では 、家 庭 生活 を経 営 する 立場か ら、 調理 技 能は 必要 と され た。 こ れら を概 観 する と、 学 習指 導要 領 にお いて は 、調 理技能 の教 育は 、 自立 のた め に基 礎と な る調 理技 能 を習 得す る こと 、ま た 、調 理に 関 する 知識を 体系 的に 習 得す るこ と とい う点 に 、学 校で 学 ぶ調 理技 能 の、 教育 的 意義 を見 出 すこ とがで きる 。こ れ は、 家政 学 にお ける 調 理学 の体 系 をも とに し て、 さら に 栄養 、食 品 など の知識 と関 連さ せ て学 ぶよ う 示さ れて い る。こ れら の調 理に 関 する 知識 や 、調理 技能 につ いて は、

体系 とし て 強固 であ る 半面 、生 活 との 関連 が 見え にく い とい う問 題 もは らん で いる 。 一方 、教 科 理論 にお い ては 、調 理 技能 の教 育 は、 生活 に 対す る科 学 的認 識や 、 社会的認 識を 深め る ため に必 要 とさ れ、 ま たカ リキ ュ ラム 研究 に おい ては 、 自立 する た めに 、生活 を豊 かに す るた めに 必 要な 能力 と され た。 こ れは 、そ の まま 調理 技 能の 教育 の 教育 的意義 と考 えら れ る。 この よ うに 学習 指 導要 領に 示 され た教 育 的意 義と は 異な り、 調 理技 能を習

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得す るこ と その もの で はな く、 調 理と いう 体 験を 通し て 、生 活者 と して の自 立 をは かると いう こと が 強調 され た ので ある 。 ここ で示 さ れて いる 、 生活 に対 す る科 学的 認 識か ら、社 会的 認識 へ とい たる 道 すじ は、理 論的 には 説 明可 能で あ るが、教育 実践 で考 え た場 合に は、

具体 化が 難 しい とさ れ た。 自立 す るこ と、 生 活を 豊か に する こと を 考え る前 提 とし ても、

自分 自身 や 、家 庭と い う枠 の中 で 狭く 捉え る ので はな く 、社 会全 体 のな かに お ける 生活、

調理 を考 え るこ とが 目 ざさ れて き たこ とは 、 家庭 科教 育 の歴 史上 、 周知 の点 で ある 。しか し、 社会 的 認識 を育 む こと と調 理 技能 を学 ぶ とい うこ と をつ なげ る ため に、 実 践を どうす るの か、 と いう 点は 、 教科 理論 や カリ キュ ラ ム研 究で は 充分 に示 さ れて はい な い。 

この 点か ら 考え ると 、 第5 章で 取 り上 げた 3 つの 教育 実 践は 、社 会 的認 識を 調 理技能の 教育 とど の よう につ な げる のか 、 とい う点 を 具体 的に 示 して いる 。 ここ に挙 げ た教 育実践 にお いて は 、調 理技 能 を習 得す る こと が主 目 的に はな っ てい ない が 、取 り上 げ た題 材につ いて 社会 的 な認 識を 深 める ため に は、 調理 と いう 体験 が 必要 不可 欠 であ った 。 つま り、こ れら の教 育 実践 では 、 調理 技能 と いう もの が 、食 とい う 営み や社 会 とは 切り 離 せな いもの であ るこ と を実 感し て 、理 解す る こと が目 ざ され てい た 。こ こで 言 う、 社会 的 認識 を深め ると いう こ とは 、ヒ ト ゴト とし て では なく 、 ワガ コト と して 考え る こと 、つ ま り自 分との 関連 で具 体 的に 捉え る こと が調 理 技能 の教 育 の中 で行 な われ るこ と であ る。 そ れは 、調理 とい うか ら だを 通し て 理解 する と いう 体験 が もつ 力で あ り、 調理 技 能の 教育 の 、教 育的意 義と して 説 明可 能で あ ると 考え ら れる 。 

 

③調 理実 習 にお ける 調 理技 能の 習 得の 実態 か らみ る調 理 技能 の教 育 の教 育的 意 義 

第6 章、 第 7章 にお い ては 、実 際 の小 学校 5 年生 の授 業 場面 を対 象 にし て、 学 習者がど のよ うに し て調 理技 能 を習 得す る のか を調 査 研究 した 。 その 結果 、 調理 技能 の 習得 におい ては 、グ ル ープ にお い て友 達同 士 で学 ぶと い うこ とが 、 大き な意 味 を持 つこ と が明 らかに なっ た。さ らに、調理 技能 の習 得 には、知識 の習 得が 密 接に 関わ っ てい るこ と もわ かっ た 。 そこ で、 こ の2 つの 章 で得 られ た 知見 をも と に、 本研 究 で定 義し た 調理 技能 を 詳細 に再検 討し たと こ ろ、 次の よ うに 説明 で きる 。

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調理 技能 と は、 なに よ りも 、身 体 的に 習得 す る能 力を 核 とし たも の であ る( コ アの調理 技能)。こ れ は調 理実 習 とい う体 験 を通 して 、実際 にか ら だを 動か し て習 得す る 知識 と分か ちが たく 結 び付 いて い る。 この 調 理技 能と 分 かち がた く 結び 付く 調 理に 関す る 知識 は、か らだ の感 覚 をと もな っ て身 体的 に 理解 する 事 実的 知識 、 概念 を理 解 して 習得 す る概 念的知 識、 一連 の 行程 とし て 理解 され る 手続 き的 知 識、 およ び 複数 の体 験 を振 り返 り 身に つける メタ 認知 的 知識 であ る 。こ れら は 、調 理と い う体 験を 通 して 学習 者 が身 につ け た知 識であ り、 身体 的 に習 得す る コア の調 理 技能 とと も にあ る。 さ らに 、こ れ らの 知識 と コア の調理 技能 が結 び 付く ため に は、 学習 者 本人 が、 自 身を 振り 返 って 、生 活 に使 えそ う とい う実感 や、自 分で つく って み たい と思 う 意欲、私に もで きそ う と思 う自 己 肯定 感が 不 可欠 であ る 。 

なぜ なら 、 コア の調 理 技能 は、 身 体的 に習 得 した だけ の もの であ る ため 、そ の ままでは 生活 上で の 活用 は充 分 では なく 、 実生 活を イ メー ジし な がら 、こ れ らの 実感 や 意欲 、自己 肯定 感が 結 び付 いて 始 めて 生き て 働く もの と なる から で ある 。本 研 究で 定義 し た調 理技能 は、 身体 的 な調 理技 能 を核 とし な がら も、 こ れら の知 識 や、 情意 を 含ん だよ り 広い 概念と して 説明 可 能と なる 。

  コ アの 調 理技 能と 分 かち がた く 結び 付く 知 識の なか で も、 調理 実 習を 体験 し て獲 得する メタ 認知 的 知識 が重 要 な役 割を 果 たし てい る 。さら に、学 校で 行う 調 理実 習と い う授 業は、

生活 に使 え そう とい う 実感 や、 自 分で つく っ てみ たい と 思う 意欲 、 私に もで き そう という 自己 肯定 感 を持 ちや す くな る学 び の場 であ る 。

また 、調 理 実習 は、 な によ りも 学 習者 が見 て 学ぶ とい う 能動 的な 学 びで ある と ころに特 徴が ある 。 これ は、 単 に見 てま ね るの では な く、 自己 認 識を 深め て 振り 返り な がら 学ぶと いう 点に 教 育的 な意 味 があ る。 調 理実 習と い う場 は、 友 達ど うし で 一つ の台 を 囲み 、自然 と見 合う 環 境に ある た めに、自分 と他 者(友 達)を 常に 見比 べる と いう 状態 が おき やす い 。 その ため 、 自分 を相 対 化し て、 自 己認 識を 深 める こと を 促し やす い ので ある 。 自己 認識を 行う こと に よっ て、 自 分の でき る こと 、で き ない こと を 、客 観的 に 理解 する こ とが 可能と なり 、自 分 の調 理技 能 を活 用す る 上で の課 題 を認 識で き ると 同時 に 、自 分の で きる ことを 認識 して 、 自己 への 肯 定感 も持 ち やす い。 こ れら 一連 の プロ セス は 、結 果と し て主 体的に

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調理 に向 き 合う 姿勢 を 育み 、ひ い ては 食生 活 を営 む主 体 性を 培う こ とに なる 。

この よう に 、調 理に 関 する 身体 的 な技 能( コ アの 調理 技 能) を習 得 する こと に 加えて、

その 技能 を 使お うと し て知 識と 結 び付 き、 生 活と の関 連 を意 識し た 意欲 まで を 含め たもの が、 本研 究 にお ける 調 理技 能で あ る。 学校 で 行う 調理 技 能の 教育 に は、 自己 認 識を 深める とい う教 育 的意 義が あ る。 これ は 、単 に自 分 のこ とが わ かる とい う こと では な く、 食生活 とい う文 脈 上で の自 己 認識 を中 心 とし てい る ため 、食 生 活に 主体 的 に関 わろ う とす る意識 を育 み、自 立へ と向 か う姿 勢を 培 うも ので あ ると ころ に 、その 特徴 を見 出す こ とが でき る 。  

 

           

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注お よび 引 用文 献・ 参 考文 献 

1 食の 問題 状況 につ い ては 、平 成 22 年 版の 食 育白 書( 内 閣府 )に お いて も、「 食を めぐ る 意識 と実 践 の現 状」 と して 示さ れ てい る。 

2 た と え ば 、 日 本 家 庭 科 教 育 学 会 編 『 家 庭 科 か ら ひ ろ が る 食 の 学 び 』 ド メ ス 出 版 ,2005,

には 、多 様 な調 理技 能 の学 びの 実 践が 示さ れ てい る。

3 河 村 美 穂 「 調 理 実 習 研 究 の 変 遷 と 今 後 の 課 題 」, 年 報 ・ 家 庭 科 教 育 研 究 ,( 大 学 家 庭 科 教 育研 究会 ) 第 30 集 ,2007, 2007 ,pp.1-10, 

4 食育 基本 法が 2005 年に 施行 さ れ、 各地 方 自治 体に お いて は、 食 育推 進基 本 計画 が策 定 され つつ あ る。 学校 教 育に おい て は、2005年に 栄養 教 諭制 度が 創 設さ れた 。

5  調 理と は 、「「食 品素 材の 栄養 効 果を 高め、衛生 的に 安 全な もの と し、味 や香 り、口 ざわ りを よく し 、食 欲を 高 める よう に 概観 をよ く して 、お い しく 食べ ら れる よう に 加工する こと」と定 義さ れて い る。( 山崎 清 子、島 田キ ミエ、渋川 祥子、下村 道子『 調理 と理 論(新 版)』 同文 書院 、2003,p2 )

6  調 理実 習 に関 する 歴 史研 究は、江原 絢子『 高等 女学 校 にお ける 食 教育 の形 成 と展 開』雄 山閣 出版 ,1998,にそ の全 容が 示 され てい る 。ま た 、野 田満 智子 に よる 一連 の 実習 室の 研究、(「 わ が国 にお け る家 事実 習 施設 の系 譜 (第 1 報 ) −源 流と し ての 伝統 的 家事実習 施設 −」 日 本家 庭科 教 育学 会誌 ,30(3),1987,p31−34.「わ が 国に おけ る 家事 実習 施設 の系 譜 (第 2報 ) −欧 米留 学 者達 によ る 近代 的家 事 実習 施設 導 入へ の模 索 −」日本 家庭 科教 育 学会 誌,34(2),1991,pp.9−13  「わ が国 にお ける 家 事実 習施 設 の系 譜(第 3報 )− 近 代的 家事 実 習施 設の 普 及− 」日 本 家庭 科教 育 学会 誌,34(3),1991,pp.1

−6)お よ び家 事教 育 に関 する 研 究(「『 斯民 家庭』誌に おけ る家 事 科へ の提 言(第1 報)

−家 事科 へ の期 待と 其 実践 −」日 本家 庭科 教 育学 会誌 ,25(2),1982,pp.13−17,「『斯 民家 庭』 誌 にお ける 家 事科 への 提 言( 第2 報 )− 欧米 家 事科 教育 受 容へ の模 索 −」日本 家庭 科教 育 学会 誌,25(2),1982,pp. 18−21)と して 、示 され て いる 。 

7近藤 耕蔵 『 女学 校に 於 ける 食物 教 育』1936,p.66

8近藤 耕蔵 「 家事 科内 容   改 善に 関 する 卑見 ( 一)」 家事 及裁 縫, 7(10),1933,pp.2−6

9近藤 耕蔵 『 女学 校に 於 ける 食物 教 育』1936,pp.68-69、

10近藤 耕蔵 「 家事 科の 傾 向と 将来 」 文検 世界 ,25(9),1939,p6.

11 江原 絢子 『高 等女 学 校に おけ る 食教 育の 形 成と 展開 』 雄山 閣出 版 ,1998

12 同前

13 井上 えり 子「『 文検 家事 科』 の 研究 」学 文 社,2009

14山口 寛子「 戦後 の家 庭 科教 育」大 学家 庭科 教 育研 究会( 編),現代 家庭 科研 究 所説.明 治

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図書 ,1972,pp.28-29.

15和田 典子「研究 の現 状 と課 題」  家庭 科教 育 研究 者連 盟 編『 民主 的 な家 庭科 教 育の 創造 』 明治 図書 ,1974 

16田結 庄順 子「家事 労働 と生 活的 自 立の 教育」村田 泰彦 編『生活 課題 と教 育』光 生館,1984

17村田 泰彦 『 自立 と生 活 文化 の教 育 』労 働教 育 センター,1992 

18 中澤 潤「 時間 見本 法 の理 論と 技 法」中 澤潤 、大野 木裕 明、南 博文『心理 学マ ニュ アル 観 察法 』北 大 路書 房,1997,pp.14-23

19 岡本 真彦「メ タ認 知 −思 考を 制 御・修正 す る心 の働 き 」森 敏昭 編『お もし ろ 思考 のラ ボ ラト リー 』 北大 路書 房 ,2001,pp.139-160

20 生田 久美 子「 模倣 か ら習 熟へ」『「わ ざ」 から 知る 』 東京 大学 出 版会 ,2007,pp.9−18

21仲間 どう し の教 え合 い につ いて の 研究 知見 に つい ては 、 瀬尾 美紀 子 、植 阪友 理 、市 川伸 一「 学習 方 略と メタ 認 知」 三宮 真 智子 編『 メ タ認 知、 学 習力 を支 え る高 次認 知 機能』北 大路 書房 、2008,pp.72-73 にレ ビ ュー され て いる 。

22武藤 八恵 子 、武 田紀 久 子、 河村 美 穂、 川嶋 か ほる 、小 西 史子 、石 井 克枝 「調 理 実習 にお ける 共同 的 な学 び( 第 2報 )− ケ ース スタ デ ィに みる コ ミュ ニケ ー ショ ンの 形 成−」日 本家 庭科 教 育学 会誌 ,46(2),2003,pp.146-155.

23 B.S.Bloom,D.R.Krathwohl and B.B.Masia, Taxonomy of Educational Objectives.

Handbook 1 :Cognitive Domain(David Mckay,1956)

24 L.W.Anderson and D.R.Krathwohl(eds.), A Taxonomy for Learning, Teaching, and Assessing:A Revision of Bloom’s Taxonomy of Educational Objectives (Addision Wesley Longman,2001 )

25 E.J.Simpson,The Classification of Educational Objective Psychomotor Domain.

U.S.Department of Health, Education and Welfare,1966

26 前掲 書 24  pp.238-239

参照

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