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ヘドニツク・アプローチの経済理論的基礎づけ

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(1)社学研論集 Vol. 12 2008年9月 論. 91. 文. ヘドニツク・アプローチの経済理論的基礎づけ. 河 合 伸 治* 1.はじめに 2.等価変分EVと補償変分(CV) 3.へドニック・アプローチ 4.需要者の行動(付け値関数の導出). 件を求めている人たちのヘドニツク関数を明ら 対象路線の拡大,分析対 かにすることである。 象の拡張(単身者用賃貸住宅のみから単身者. 5.生産者の行動(オファー関数の導出). 用・夫婦用・家族用賃貸住宅),説明変数の追. 6.市場均衡とヘドニック価格関数. 加・修正などを慎重に行うことにより比較的説. 7.へドニック・アプローチの問題点 8.むすびにかえて. 明力の高いモデルが推定されてきたものの,ヘ ドニツク・アプローチの経済理論的な基礎づけ が河合[2005a]では不十分であり,経済理論. 1. はじめに. 面の整理・基礎づけをより厳密に行うことによ. 本稿はへドニツク・アプローチの経済理論面. り,さらに説明力が高く経済理論と整合性のあ. について十分な基礎づけを行うことを目的とし. るへドニツタ・モデルの構築が可能になると. 筆者は河合[2005a]で先行研究を中 ている。. 本稿は,まず第2節で浅見 考えるに至った。. 心にヘドニツク・アプローチの理論面の簡単. [2001]が指摘しているように,ヘドニツク・. な整理を行ったうえで,河合[2005b]河合. アプローチは補償変分(CV)の考え方を価格. [2006]河合[2007二「河合[2008]において. 関数に適用したものであると考えることができ. ヘドニツク・アプローチを用いて賃貸住宅の実. るため,ミクロ経済学の分野で用いられる等価. 質家賃がどのような要因によって決まっている. 変分(EV)と補償変分(CV)について概観し. 一貫した問題意識は,賃 のかを推定してきた。. 第3節においてもう一度へドニツク・ ておく。. 貸物件情報誌から得られる情報を基に作成した. アプローチについて整理を行ったうえで,第4. データセットを用いて被説明変数である実質家. 節では需要者の行動を分析することによりどの. 賃と説明変数(物件の外部要因(利便性)や内. ようにして付け値関数(bidpricefunction)が. 部要因(物件の設備や仕様などの質)など)と. 導出されるのかを,第5節では生産者の行動か. の関係を推定したヘドニツク・モデルの構築を. らオファー関数(offerfunction)がどのように. 試みることにより,住宅情報誌をもとに賃貸物. 第6節では付 導出されるのかを整理している。. *早稲田大学大学院社会科学研究科 博士後期課程6年(指導教員 林 正寿).

(2) 92. け値関数とオファー関数との接線の軌跡が市場 価格関数であり,これは付け値関数とオファー. 環境改善. 関数との包絡線であることが示されている。 続 く第7節でヘドニツク・アプローチのいくつか. EV. めにいくら必要か. の問題点について触れた上で,最後の第8節で はむすびにかえて本稿のまとめを行なってい. CV. はじめに,ミクロ経済学の分野で用いられる. めにいくら 支払うか. W TP W TA 環境改善のためにい 環境悪化を受け入れ くら支払うか. る。 2. 等価変分(EV)と補償変分(cv). 環境悪化. W TA W TP 環境改善を諦めるた 環境悪化を避けるた. るためにいくら必要 か. 出典=奥山[2007]p.. 42を一部改編. 住環境の改善を例にとって,EVとCVにつ. 等価変分(EquivalentVariation:以下EVと略す) いて示したものが次の図(塾である。 と補償変分(CompensatingVariation:以下CVと. 図②. 略す)についてみておきたい。 浅見[2001]に よれば,公園の設置による住環境の改善などの 便益がもたらされる場合,EVは住環境改善が ある場合の効用を維持するという条件の下でそ の変化をあきらめるために家計が補償して欲し いと考える最小補償額(WillingnesstoAccept: 以下,WTAと略す)であり,CVは住環境の ∴.丁':""いサ・'*・'.". ・'. :. 改善がない場合の効用水準を維持するという条. 出典:浅見[2001]p.. 件の下でその変化を獲得するために家計が支払. 145. うに値すると考える最大支払顔(W皿ngnessto 一方,工場 図(塾では縦軸に所得I,横軸に住環境プロジェ Pay:以下,WTPと略す)である。 が移転してきたことによる空気の汚染などの被 クトによって影響を受けた所得以外の要因(住 害がもたらされる場合,EVは住環境悪化があ. 環境水準q)をとり,プロジェクトによって住. る場合の効用水準を維持するという条件の下で 環境が改善して家計の状態が点』から点βに また点』および その変化を避けるために家計が支払うに値する 変化する場合を考えている。 と考えるWTPであり,CVは環境悪化がない. 点βを通る無差別曲線(等効用曲線)をそれ. 場合の効用水準を維持するという条件の下でそ ぞれvA≡・vnおよびvB‑{ォ',!. ')と. するo縦軸上e(q,v)lま住環境水準qにおいて の変化を受け入れるために家計が補償して欲し この関係を簡潔にま 効用水準Vを達成するために必要な最小所得を いと考えるWTAである。 とめたものが図①である。 示しており,これは支出関数である(1)以上よ り,EVとCVは次の2つの方法で表すことが できる(2).

(3) ヘドニツク・アプローチの経済理論的基礎づけ ①次式を満たすEVおよびCVの値. Lancaster[1966]が分析しているように,この 仮定は差別化された財・サービスを扱う上で理. v(qA,IA+EV)‑VB=v(qB,IB)(2.1). 論的にまた実証分析を行う場合にも極めて不 都合であるといえるRosen[1974]の分析は, v(qA,IA)=VA‑v(qB,IB‑CV)(2.2). Tinbergen[1959]の提起した差別化された生産 物の市場均衡論を発展させたものであり,属性. ②支出関数による定義 EV‑etfsyiA. (2.3). の束である財・サービスの価格がどのような市 場メカニズムで発生するのかを理論的に解明し. CV≡f‑etfy). (2.4). た最初の研究であるといえるRosen[1974]は, 商品供給者のオファー曲線(offerfunction),商 品需要者の付け値関数(bid丘mction)およびヘ. 3. へドニック・アプローチ. ドニツク関数の構造との間の関係を厳密に検討. へドニツク・アプローチとは,ある財・サー. し,商品の市場価格を消費者および生産者の行. ビスの価格はその機能・性質といった価値の集. 動から特徴づけているRosen[1974]の問題点. 合体(属性の束)であるととらえ,統計学にお. は,需要と供給からなる構造方程式において同. ける回帰分析の手法を利用して財・サービスの. 時性バイアスが生じるケースを排除できない点. 価格を推定するものである。 財・サービスの価. である。もし,推定されたモデルにおいてある. 格は属性の束からなる方程式で表現されるが,. 重要な属性が観察されておらず,それらが観察. このような式をヘドニツク価格関数という。. こ. された属性と相関している場合には,推定され. のヘドニツク価格関数を求めることは,消費者. た係数は不偏性もなければ一致性もないという. が財・サービスの機能や性能に対して,どの部. ことになってしまう。 分析の際に必要な属性を. 分にどの程度の価値を見出しているのかを明ら. 全て観察してモデルに組込むことは難しいが,. かにすることと同じであるといえる。. 土地や住. ヘドニツク・アプローチを用いる際にはこの点. 宅なども様々な属性の束からなる財・サービス. は特に留意が必要である。. であると考えることができ,土地であれば広. この問題点に対して,Epple[1987]のモデ. さ,地形や地盤などの他に周囲の環境条件など. ルはいくつかの仮定をおくことによって観測誤. によってその価値が決定されると考えることが. 差を正確に処理できるヘドニツク価格関数を提. できる。また住宅であれば,これらに加えて部. 起している。効用関数に以下の先見的な仮定を. 屋数,庭やバルコニーの広さ,トイレ・台所・. おいた上で,閉じた市場均衡におけるへドニツ. 風呂などの水まわり設備や建築構造(木造か鉄. ク価格関数の推定を行った。. 筋であるかなど)などの属性が関連してくると. ①すべての消費者の効用関数の関数型が同質. 考えられる。. であること。. 伝統的な価格理論では,一物一価の法則が. 規分布に従う(共分散は非対角要素が0の. 市場分析を行う上での有効な仮定となるが,. 対角行列)。. ただし,選好パラメータは正. 93.

(4) 94. ②消費者の効用関数は属性変数が加法分離的. ここで,Pxは属性の1階微分を示しており,. で2次形式であること。. 最適な属性X*の選択は合成財に対する個々の. ③差別化された商品の供給が外生的に与えら. 属性の限界代替率が住宅市場価格の限界代替率. れていること。. と等しい所で決定されることが分かる。. 住宅. これらの仮定は,経済主体間の相互作用がない 価格の限界的価値は,需要者がその属性に支 こと,また市場均衡におけるへドニツク価格関 払ってもよい(WTP)と考える属性価値に等 数が描写できるように実現可能な関数型を想定しくなっているといえる。 これは2節で説明し しているため,ヘドニツク価格関数を推定する たCVそのものであるといえる。 上では重要な仮定となっているといえる。. したがって,. 個々の属性価値を調べるた捌こは市場価格関数 P何における各属性の微分係数を推定する必. 4. 需要者の行動(付け値関数の導出). 要がある。. へドニツク・アプローチの理論的枠組みを. ここで,ある一定の効用水準u*のもとで選. 清水・唐渡[2007]の論理展開を中心に,適. 択された最適な属性の東がX*であるとする. 宜肥田野[1997],浅見[2001]を参考にしな. と,. ここで がら,詳しく見て行くことにしたい。 は,Kxlの属性ベクトルXからなる住宅の需. u(i‑p(x*)X;A)‑u(4.3). 住宅の市場価格関数を 要を考えることにする。 P(考消費者の効用関数をu(c,X;A)と表す. ここで,需要者が住宅に支払ってもよ となる。 いと考える最大の価格である付け値(bidprice). ただし,Cは価格が1に基準化さ ことにする。. をβという記号で定義する。 すると,所得が1. れた価値尺度財(スカラー)であり,』は消費. であるタイプ』の需要者が効用水準〟*を達成. 者個人を特徴付ける選好パラメータのベクトルしなければならない時に,住宅属性ガに支払 消費者の所得をIとする時, である。. I‑P(X)+c. い得る最大価格(付け値)は, (4.1). u(I‑ 0,X;A)= u. が予算制約式である。 また消費者の所得と選好. より,これを陽表式で表したものが次式で表さ. の分布については,確率密度関数で考えると結. れる付け値関数(bidpricefunction)である0. 合確率密度閑&AIA)で表すことできるo. 0‑叫X;I,u,A)(4.5). (1)式で与えられた予算制的式のもとで, (C,刃について効用を最大化する時・次の最. 効用が最大化される時・任意の>f(lA)のもと. 大化条件が得られる。. で,d. ヽ1 2ほ 4じ ィ. l^d. 潔. のor ≡. 守.. 解. ゐ. けて. du(i‑ p(x* )X;A)'ax. px(ry^‑e(r‑i,u,A) dx(4.6) でなければならないp*(nは(4.2)式と 同様,市場価格関数の1階微分を示している。. (4.4).

(5) ヘドニツク・アプローチの経済理論的基礎づけ. 95. このことは,市場価格関数の勾配が所得の限界. なく生産者(供給者)の行動も措写しなければ. 効用に対する属性の限界効用に等しいだけでな. モデルが閉じられない。 ここでは,住宅のよう. く,付け値関数の勾配とも等しくなっていなけ. に差別化された財の費用関数を,. ればならないことを示しているといえる。. C(X, M¥B). ヘドニツク・アプローチは,各住宅価格を住. (5.1. 宅のさまざまな属性に回帰させたモデルを推定. と定義する。〟は建設される住宅の数を表し. することによって,各属性の価値を予測する手. Bは各生産者の技術条件等を特徴付け ている。. 法である。市場価格関数を1次近似すると,そ. るパラメータベクトルであり,分布は確率密度. れはさまざまな属性の限界的価値の線形結合式. 間数g(β)で与えられているものとする。. であると考えることができる。. 例えば,第i属. 性ベクトルxt‑(xa,xj2t‑>Xjk)に住宅市場. 生産. 者は住宅市場価格を所与として,次式のように 利潤7Tを最大化する属性の束を決定する。. 価格Piを回帰させた古典的な線形モデルは,. n‑P{X)M‑C{X,M;B)(5.2). K pi‑α+∑A**‑+ォ,(4.7). 生産者の行動は短期か長期かによって異なる. *=1. が,長期の経済の場合は費用関数を表している. で表される。ここでαは定数項,βhP2>一,Pk. (5.1)式の中に明示的に含まれていない固定資. は住宅属性の限界的価値を示す未知パラメータ. 本が可変的になる上,参入・退出の自由も考慮. であり,uiは撹乱項(誤差項)である。. しかし,. に入れなくてはならないため,ここでは短期の. この線形近似モデルだけでは多数の消費者の選. 経済を想定して分析を行う。 また,短期の場合. 好を反映したヘドニツク価格関数であるかどう. はRosen[1974]が示しているように,次の2. かは分からない。 後節で説明するように,市場. つのケースが考えられる。. での生産者が全て同質である場合は,市場価格. ①生産者にとって〟のみが可変的な短期経. 関数は生産者の限界費用関数そのものになり,. 済. (4.7)式はそのような場合の市場価格を推定し. ②生産者にとってMもXも可変的な短期経. ていることになる。 しかし全ての生産者が同質. 済. という仮定はかなり限定的といえ,より正確な. ②の短期経済を想定すると,次の最適化条件を. 推定を行うためには生産者の行動を考慮に入れ. 得ることができる。. る必要がある。 従って次節では,生産者の行動. ・*(*>去・孟C(x¥M*;5)(5.3). についての分析を行い,オファー関数を導出し たい。 p(f)‑孟C(x*M¥B)(5.4) 5. 生産者の行動(オファー関数の導出) (4.7)式の左辺は住宅市場の需給均衡によっ て決定される市場価格なので,需要者だけでは. (5.3)式より,各生産者は属性の限界価値が住 宅1単位あたりの限界費用に等しくなるよう.

(6) 96. に,また(5.4)式より与えられた属性の束の もとで,住宅の市場価格がβによって与えら. 6. 市場均衡とヘドニック価格関数. れた任意の生産技術を持つ生産者の住宅生産限. Xに対応したあらゆるタイプの住宅の需要と. こ 界費用と等しくなるように生産活動を行う。. 供給が等しくなるところで市場均衡が成立し,. のとき達成される最大利潤はパラメータβに. 市場価格P(句が得られるo(4.6)式と(5.10). 最適な属性の束X*と生産個数 よって異なる。. 式より,属性の付け値関数とオファー関数との. 〟*を生産者が選択している時に達成できる利. 接線の軌跡から市場価格P(弟を表すことがで. 潤が7T*であり,これは次式で表されるO. すなわち,市場によって決定される価格 きる。 関数は消費者の付け値関数と生産者のオファー. ,:PQT)が‑C(x*,M*;B)(5.5). 関数との包絡線でなければならないのである。 以上の関係を示したものが図③であるEpple. ここで,生産者が提示できる最低の価格(オ βで表される特徴 ファー価格)を尋とする。 をもつ生産者が利潤7T*を達成する時,属性X・. [1987]が指摘しているように,市場によって 決定されるへドニツク価格関数は消費者の所得. 生産個数〟の住宅に提示できるオファー価格. と選好の確率分布/¢A)と生産者のパラメー. は,7t‑¢M‑C(X,M;B)(5.6). タ分布g(坤こ依存して決まるo前に述べたよ うに,もし生産者が1タイプしか存在しない (すべての生産者が同質である)とすると,限. この(5.6)式を〟について微分し を満たす。. 界費用関数そのものが市場価格関数になる。. て0とおき,〟について解くと:. れは,限界費用と付け値関数の傾きが等しい所 (5.7). M‑ M(X, </r,B). こ. で市場価格が決定されるので,その包絡線が生 産者の限界費用関数と一致するためである。. さらに(5.7)式を(5.6)式に代入す となる。 7. へドニック・アプローチの問題点. ると,. 以上みてきたように,理論的には需要者の付 K‑秘(x,frB)‑C(X,M(X,0;B);B). け値関数と生産者のオファー関数の接線の軌跡 を結んだ包路線により市場価格関数を得ること. (5.8). ができる。しかし,現実的には付け値関数につ. となるから,オファー価格関数は, (5.9). 4‑ ¢(X;tc ,B) と表すことができる。. いては,所得や個人の属性に関するデータがな い場合はもちろん,データがある場合であって. ゆえに(5.3)式より,. もあらゆる属性のレベルに対応した付け値を測. 利潤が最大化されているときは,. 定することは非常に困難で,関数型を推定する. p*V>孟<w>方;b)(5.10). ことは非常に難しいといえる。. したがって現実. 的には付け値関数の代わりに市場価格関数の推 定を行うことによって代理せざるをえない状況 とならなくてはいけないことになる。.

(7) ヘドニツク・アプローチの経済理論的基礎づけ. 出典:肥田野[1997]p.. 97. 21を一部改編. がほとんどである。 この場合の評価が過大にな. はこれらの仮定が成立しない場合は,ヘドニツ. る傾向がある点には注意が必要である(3)この. タ価格法は過大評価をもたらすとしている(5). 関数型の問題に対しては,効用関数を先見的に. また,多くの論文で指摘されている多重共線. 仮定した上で付け値関数の形状を決定してから. 性(6)の問題も注意しなくてはならない問題であ. 推定を行うことによって解決を図ろうという論. 例えばある住環境を表す環境変数(例えば る。. 文がいくつか見られる(4)。. 自動車の騒音レベルと窒素酸化物で計測された. 金本[1992]はヘドニツク価格法が正確であ. 大気汚染濃度)はそれぞれ独立して動いている. るためには以下の条件が必要であるとしてい. のではなく共通のベクトルで動いている可能性. る。. が高いため多重共線性が生じ,説明力の低いモ. ①個人や企業の移転が自由である(地域の開. デルになってしまう危険性が高い。. 放性:open). ク・モデルを構築する際には,相関行列とVIF. ②その移転が他の地域に何の影響をもたらさ. (分散拡大要因)を用いるなどして,必ず多重. ない(プロジェクト規模が地域規模に対し. 共線性が生じていないか確認する必要がある。. all) て十分に小さいこと:sm: . これらは「open‑smallの仮定」と呼ばれるが,. これらの問題以外にも,栗山[1998]が指摘し. 現実的には非常に難しい。. 宅市場や労働市場などの市場が完全競争市場で. また,金本[1992]. へドニツ. ているように,ヘドニツク・アプローチでは住.

(8) 98. あることが前提とされているが,これは非現実 注 (1)支出関数eはu‑v(q,I)において,qとu与え 的な仮定と言わざるをえない(7)この間題に対 たときの1に対する逆関数を意味している。 しては,例えば太田[1975]は市場において企 (2)EVとCVについて,便益の定義としてはEVの. 方が望ましいという意見がある。 複数の効用水準 業が価格支配力を有しているとき,すなわち市 の変化に対して,EVは効用水準の順序保存性があ 場が完全でない場合を仮定して分析を行なっ る(大小関係を保つ)が,CVは順序保存性がな 彼は支配力のある企業の付ける価格は実際 た。 い(大小関係を保たない)ため,効用水準の順序 かかる費用に利潤を上乗せして価格を形成して 保存性を有していて大小関係を比較できるEVを. ただし,奥 使う方が望ましいというものである。 いるとして,この費用関数に対応する市場価格 山[2007]p. 40が指摘しているように,EVはあ 関数を仮定してから推定を行なうことによって くまで順序を示すのみであり,どのくらいの差が. 市場価格が導出できる可能性を提示した。 あるかは示し得ない点には注意が必要である。 ま. た,プロジェクトの社会的効率性を判定する際に 8.むすびにかえて. は社会的純便益(社会を構成する家計のEVの合計. ∑EVあるいはCVの合計∑Cのが正値となるこ 前節でみたような問題点はあるものの,ヘド ∑」V>0の条件はKaldor‑Hicks とが求められる。 ニツク・アプローチは経済理論による基礎づけ 基準の十分条件となるのに対して,∑CV>0の 条件は必ずしも十分条件とはならない。 したがっ がしっかりなされているため,ヘドニツク価格 てKaldor‑Hicks基準のチェックに使用できると のそれぞれの推定値に経済的意味が明解である う点からみてもEVの方が望ましいといえる。 こ. したがって,得られた推定結果を解 のKaldor‑Hicks基準とは,「プロジェクトの実施 といえる。 よって利益を得る人が,損失を被る人に対して補 釈するうえでも,ヘドニツク・アプローチは有 特に環境のよ 用な分析ツールであるといえる。. 償をしたとしても,なお利益が残るとき,そのプ. ロジェクトは社会的に望ましい」という判断基 うに市場がそもそも存在しないような商品(非 詳しくは浅見[2001]p. 146を参照。 である。 (3)詳しくは河合[2005a]p. 224を参照。 市場財)を属性として含めて貨幣尺度で価値を. (4)(higley[1982]・KanemotoandNakamura[1986 評価できる点がヘドニツク・アプローチの最大 などo詳しくは清水・唐渡[2007]p. 19を参照。 の利点であるといえ,住環境によって大きな影 (5)林山[1993]のように,「open‑small仮説」は. 立しているものと見なして議論を進めても構わ 響を受けると考えられる地価や家賃の推定を行 本稿でみ う際には強力な手法であるといえる。. いという見解もあるので,今後も検討が必要であ. る。 てきた理論的な厳密さと実証分析との親和性が (6)多重共線性は説明変数同士に強い相関関係が. 必ずしも高いとはいえないが,推定上のいくつ るため,回帰係数の推定値や回帰式による予測に 多重共線性のある 悪い影響を及ぼしてしまう0 かの点で,多くの研究者によって大幅な改善が データを使用してしまった場合には, 特に関数型の推定や観測誤差 行なわれてきた。 ①有力な変数についての回帰係数が有意でな の取り扱いについては大きな発展がみられる。 かったり,正負の符号が逆になったりしてしま. これらの研究成果を着実に取り入れながら,理 う。 ②観測値のわずかな変化や一部の観測値の除去 論・実証の両面で説明力の高いヘドニツク・モ あるいは一部の説明変数の追加・除去により, デルの構築を目指していきたい。 回帰係数の推定値が大きく変化してしまう。 〔投稿受理日2008. 5.24/掲載決定日2008. 6.16〕〕. などの問題が生じてしまう。 詳しくは久米・飯塚.

(9) ヘドニツタ・アプローチの経済理論的基礎づけ [1987]pp.. 193‑194を参照。. 99. 論集』,第10号pp.. (7)例えば住宅市場については投機的な行動による. 285‑294 ・河合伸治[2008]「へドニツク・アプローチによる. 異常な高騰や,住居を変更する際にかかる膨大な. 賃貸住宅価格の価格決定要因の推定一西武池袋線. 取引費用などにより市場は歪められている。 また 労働市場についても,賃金の下方硬直性や,例え. の賃貸住宅を事例として‑」『ソシオサイエンス』,. ば日本では終身雇用制などの慣行的制度が存在す. ・鈴木史郎[1995]「住宅市場における価格形成の. ることによってやはり歪められていると言える。. 分析」『ファイナンシャル・レビュー』,February. 第10号pp.. 49‑63. 1995,大蔵省財政金融研究所 参考文献 Epple,D.. ・浅見泰司[2001]『住環境評価方法と理論』,東. [1987]"HedonicPricesandImplicit. 京大学出版会. markets:Estimatingdemandandsupplyfunctionsfor differentiatedproducts,JournalofHousingEconomics, Vol. 95,pp.60‑109 Hough,D.. E. andKratzC.. G. [1983]"Cangood. architecturemeetthemarkettest? Economics,Vol. 14,pp.40‑54. ・奥山息裕[2007]『顕示選好データを用いた環境評 価』,御茶の水書房 ・栗山浩一[1998]『環境の価値と評価手法‑CⅥM. ,JournalofUrban. による経済評価』 ・清水千弘[2004]『不動産市場分析』,㈱住宅新報. Lancaster,k. [1966]Anewapproachtoconsumer. 社 74,pp.. theory,JournalofPoliticalEconomy,vol. 132‑157. ・清水千弘・唐渡広志[2007]『応用ファイナンス講 座4不動産市場の計量経済分析』,朝倉書店. Rosen,S. [1974]HedonicPriceandImplicitMarkets, ProductDifferentationinPureCompetition,Journalof. ・肥田野登[1997]『環境と資本の経済評価‑ヘド. PoliticalEconomy,Vol.82(1),pp. 34‑55. ニツク・アプローチの理論と実際‑』,動草書房. RobackJ. [1982]"Ⅵ毎;es,RentsandQualityofLife", JournalofPoliticalEconomy,Vol.90(6),pp. 1257‑1278. ・森杉蕃芳(編)[1997]『社会資本の整備の便益評. Tinbergen.. J. [1959]"Onthetheoryofincome. distribution,Klassen,L.. M. K. L. H. andH.. Witteveen,eds.,SelectedPaperoりanTinbergen, North‑Holland ・安部成治・石崎幸司[1997]「首都圏における民間 賃貸住宅の重回帰分析」『都市住宅学』,19号pp. 39‑44 ・河合伸治[2005a]「ヘドニツク・アプローチに関 する一考察」『社学研論集』,第6号pp.. 220‑230. ・河合伸治[2005b]「ヘドニツク・アプローチによ る単身者用賃貸住宅の価格決定要因の推定」,中央 114‑121 大学附属高校紀要,第19号pp. ・河合伸治[2006]「ヘドニツク・アプローチによる 単身者用賃貸住宅の価格決定要因の推定一西武 池袋線・東武東上線沿線の単身者用賃貸住宅を事 107‑116 例として‑」『社学研論集』,第8号pp. ・河合伸治[2007]「ヘドニツタ・アプローチによ る賃貸住宅価格の価格決定要因の推定一西武池袋 線・東武東上線・西武新宿線・小田急線・京王線 沿線の単身着用賃貸住宅を事例として‑」『社学研. 価一一般均衡によるアプローチ‑』,頚草書房 ・柳井久江[2005]『エクセル統計実用多変量解析. J.. 編』,㈲オーエムエス出版.

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