第 26 回星陵循環器懇話会
日時:平成 30 年 12 月 8 日(土)
第 26 回星陵循環器懇話会プログラム
15:00 開会の挨拶・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・下川宏明教授症例検討会(1演題10分、発表7分+質疑3分)
座長)遠藤 秀晃(15:05~15:35) 1) 当院における経カテーテル大動脈弁置換術後に発症した心不全の背景因子の検討 みやぎ県南中核病院 循環器内科 伊藤知宏、富岡智子、福井健人、田中修平、坂田英恵、 伊藤愛剛、塩入裕樹、小山二郎、井上寛一2) OCT と血管内視鏡を用いて観察した plaque erosion による急性心筋梗塞の一例
仙台市医療センター仙台オープン病院 循環器内科 丹野唯人、砂村慎一郎、瀧井 暢、 野田一樹、牛込亮一、川原翔太、浪打成人 3) 急性リンパ球性心筋炎既往のある患者が発症した急性好酸球性心筋炎の一例 大崎市民病院 循環器内科 和賀望浩、竹内雅治、田中智博、深澤恭之朗、辻 薫菜子、 山内 毅、高橋 望、岩渕 薫 座長)三浦 正暢(15:35~16:05) 4) 前壁中隔梗塞に合併した左室内血栓にワルファリンが奏功した一例 寿泉堂綜合病院 循環器内科 菊地健太郎、谷川俊了、水上浩行、金澤正晴 5) 血栓と疣贅により僧帽弁狭窄症が増悪し緊急手術となった一例 気仙沼市立病院 循環器科 阿部 央、迫田みく、圓谷隆治、小枝秀仁、及川卓也、 但木壮一郎、尾形和則 東北大学 循環器内科 青木竜男、杉村宏一郎、下川宏明 6) 約 20 年の経過で心臓移植へ至った拡張相肥大型心筋症の一例 岩手県立中央病院 循環器内科 和山啓馬、山田魁斗、門坂崇秀、加賀谷裕太、 佐藤謙二郎、金澤正範、近藤正輝、遠藤秀晃、高橋 徹、中村明浩、野崎英二
休憩 (16:05~16:15)
座長)圓谷 隆治(16:15~16:55)
7) 貧血により postcapillry pulmonary hypertension と diastolic ventricular interaction を呈した1例 仙台医療センター 循環器内科 鈴木亭子、高橋佳美、江口久美子、山口展寛、尾上紀子、 石塚 豪、篠崎 毅 8) 心嚢液貯留を呈した心臓脂肪腫の一例 平鹿総合病院 循環器内科 小松真恭、武田 智、小野優斗、林﨑義映、中嶋壮太、 深堀耕平、伏見悦子、高橋俊明、堀口 聡 平鹿総合病院 心臓外科 加賀谷 聡、相田弘秋 平鹿総合病院 病理診断科 高橋さつき、齊藤昌宏 9) 家族性地中海熱による心膜炎を発症した一例 いわき市立総合磐城共立病院 鈴木喜敬、野木正道、瀬川将人、渡邊俊介、崔 元吉、 工藤 俊、塙 健一郎、山下文男、山本義人、杉 正文 10) 当院での AMI 治療における 12 誘導心電図伝送システムの有用性の検討 みやぎ県南中核病院 循環器内科 今野周一、伊藤愛剛、福井健人、田中修平、塩入裕樹、 小山二郎、富岡智子、井上寛一 座長)杉村 宏一郎(16:55~17:35) 11) 急速な経過で死亡に至った胸痛の一例 国際医療福祉大学病院 循環器内科 藤川敦史、高木祐介、布田紗彩、齊藤大樹、 佐竹洋之、高田剛史、兼光伯法、湊谷 豊、福田浩二、武田守彦、柴 信行 国際医療福祉大学病院 心臓外科 吉永 隆 12) 冠攣縮性狭心症との鑑別を要したびまん性食道痙攣の一例 石巻市立病院 循環器内科 二瓶太郎、千葉貴彦、赤井健次郎 13) 東北大学病院における TAVI 症例のまとめ -AS 患者のご紹介のお願い-東北大学 環器内科 土屋 聡、松本泰治、菊地 翼、高橋 潤、下川宏明 14) 狭心症超音波治験 ~候補症例ご紹介のお願い~ 東北大学病院 循環器内科 進藤智彦、高橋 潤、松本泰治、白戸 崇、羽尾清貴、 菊地 翼、黒澤 亮、門間雄斗、一條貞満、中田貴史、坂田泰彦、下川宏明 17:35 閉会の挨拶・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・下川宏明教授
演題抄録
1) 当院における経カテーテル大動脈弁置換術後に発症した心不全の背景因子の検討 みやぎ県南中核病院 循環器内科 伊藤知宏、富岡智子、福井健人、田中修平、 坂田英恵、伊藤愛剛、塩入裕樹、小山二郎、井上寛一 【背景】重症の大動脈弁狭窄症(AS)患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術 (TAVI)は開心術と同等の成績が報告されている。しかしながら、TAVI 後数ヶ月以 降に、心不全を発症する例が当院にて散見される。 【目的】当院において TAVI 後心不全を発症した症例の背景因子について検討した。 【方法】2014 年 4 月1日から 2018 年7月1日までに TAVI を施行した AS 患者 25 症例を対象に、術後の心不全発症の有無で2 群に分け、その背景因子の違いについて 検討を行った。【結果】心不全発症群では非発症群に対して、術後の左室肥大、高い 駆出率 (EF)、罹患期間の長さで有意差を認めた。一方、術後弁輪径、大動脈弁通過 最大速度(Vmax)、術後弁口面積は両群で差を認めなかった。 【考察】TAVI 後に 生ずる心血管イベントの術前予測因子が左室肥大であるという報告があり、本検討に おいても術前後の左室肥大がいずれもTAVI 後の心不全発症と正の相関を示した。さ らに、より長い罹患期間と術後心不全発症も正の相関関係を示した。以上よりAS に より経時的に左室肥大が進行し、左室肥大が術後も残存し左室圧負荷低減が不十分で あることが術後心不全の一因であると考えられる。また、術後の左室肥大とEF にも 正の相関が認められた。EF が高い場合、より大きな弁口面積をあたえないと左心室 圧負荷が低減されない。しかし、本検討では TAVI 後 Vmax, 弁口面積は心不全発症 群、非発症群で差が認められなかった。このため左室肥大が進んだ患者において左室 圧負荷低減が不十分であり心不全に至りやすいと考えられた。【結語】左室拍出量に 見合った十分な有効弁口面積を確保すること。術後も左室圧負荷を低減させるために 至適血圧を維持することが必要であると考えられた。2) OCT と血管内視鏡を用いて観察した plaque erosion による急性心筋梗塞の一例 仙台市医療センター仙台オープン病院 循環器内科 丹野唯人、砂村慎一郎、 瀧井 暢、野田一樹、牛込亮一、川原翔太、浪打成人 症例は 45 歳男性、喫煙者。特記既往はなく、医療機関への定期通院もない。起床後 に突然前胸部絞扼感を自覚し、救急要請し当院搬送となった。心電図にて側壁誘導と 胸部誘導のST 上昇を認め、急性心筋梗塞を疑い緊急心臓カテーテル検査を施行した。 冠動脈造影検査では、右冠動脈と左回旋枝に狭窄はなかったが、左前下行枝#6 に血栓 透亮像を認め、引き続き同部位に対する緊急 PCI に移行した。OCT を用いて観察を
行うと、病変部には多量の赤色血栓を認めるが、内腔の狭窄やruptured plaque は確認 されなかった。更に血管内視鏡を用いて観察を行うと、白色プラークに付着した赤色 血栓を認めた。POBA 施行後に再度 OCT を用いて観察したが、やはり thin-cap fibroatheroma や ruptured plaque は認めず、plaque erosion による急性心筋梗塞と診断し た。ステントは留置せず、造影にてTIMI flow grade:3 を確認し、手技を終了とした。 術後、CK は 4,647 U/L でピークアウトし、心不全や不整脈などの合併症は認めなか った。今回、OCT と血管内視鏡を用いることにより、plaque erosion を機序とする急 性心筋梗塞の診断が可能であったため、文献的考察も踏まえ報告する。 3) 急性リンパ球性心筋炎既往のある患者が発症した急性好酸球性心筋炎の一例 大崎市民病院 循環器内科 和賀望浩、竹内雅治、田中智博、深澤恭之朗、 辻 薫菜子、山内 毅、高橋 望、岩渕 薫 症例は、66 歳、男性。2013 年に感冒症状のため、近医で治療していたが、呼吸困難 となり、当院へ救急搬送された。高血圧、頻脈、呼吸不全を認めた。心電図検査で右 脚ブロック、左脚前枝ブロック、QRS 幅の大幅な増大を認めた。超音波検査で EF20-30%程度の左室びまん性収縮障害、心筋逸脱酵素増加、炎症反応亢進を認め、 心筋炎による急性心不全として治療を行った。NPPV, ノルアドレナリン, DOB で治療 開始し、hANP 併用した。循環動態が安定した時点で心臓カテーテル検査を行った。 冠動脈造影検査では、有意狭窄を認めず、左室造影では、びまん性収縮障害を認めた。 心筋生検の結果、リンパ球性心筋炎と診断された。炎症が沈静化し、心機能が回復し たため、近医で高血圧治療を継続した。2018 年 8 月、同様の症状で近医を受診し、感 冒として治療されたが改善がなく、急性心筋炎疑いとして当院へ紹介、搬送された。 前回同様の所見であった。緊急心臓カテーテル検査では、冠動脈病変を認めず、心筋 生検を行った。心筋炎の再発による急性心不全として治療した。炎症反応、肺うっ血 の改善が思わしくなかったが、第5 病日に心筋生検結果から好酸球性心筋炎と診断さ れたため、ステロイド治療の併用を開始した。炎症反応の沈静化、肺うっ血の改善を 認め、第 21 病日に退院した。組織分類の異なる急性心筋炎の再発として、興味深い 症例を経験したため報告する。 4) 前壁中隔梗塞に合併した左室内血栓にワルファリンが奏功した一例 寿泉堂綜合病院 循環器内科 菊地健太郎、谷川俊了、水上浩行、金澤正晴 【症例】48 歳、男性【既往歴】高血圧・糖尿病の既往あるも治療を自己中断【現病歴】 2018 年 9 月、数日前から全身倦怠感あり、動悸・冷汗が出現し救外を受診した。HR200 の心房細動を認め血圧70 台のショック状態のため DC150J を施行し洞調律に回復した。
心筋逸脱酵素の上昇から数日前発症の梗塞が疑われたが、心電図でV1-6 での ST 上昇 を認めたため緊急 CAG を施行した。CAG では LAD#6 閉塞を認めステントを留置し て再灌流を得た。PCI 後の UCG では左室心尖部に 20x40mm の大きな血栓を認めたた めヘパリン点滴を開始した。ヘパリン2 万単位使用も APTT が延長せず心房細動も繰 り返すため第5 病日からヘパリンをダビガトラン 300mg に変更して経過をみたが、左 室内血栓の縮小を認めずD ダイマーも上昇したため第 18 病日からワルファリンに変 更した。PTINR を 3 程度でコントロールしたところ血栓の縮小と D ダイマーの低下 を認め、第 30 病日には左室内血栓の消失をみた。経過中に脳梗塞や全身塞栓症の症 状は認めなかったが、18 病日での頭部 MRI 検査では亜急性期の微少梗塞所見を認め た。【考察】心筋梗塞に合併する左室内血栓の治療はヘパリンやワルファリンの抗凝 固療法や手術での血栓除去術が選択される。ワルファリンの管理目標は PTINR1.6〜 2.6 とされるが、今症例ではワルファリンを PTINR3 程度で管理したところ、重篤な 塞栓症や出血性合併症を来さずに血栓の消退を認めることができた。 5) 血栓と疣贅により僧帽弁狭窄症が増悪し緊急手術となった一例 気仙沼市立病院 循環器科 阿部 央、迫田みく、圓谷隆治、小枝秀仁、及川卓也、 但木壮一郎、尾形和則 東北大学 循環器内科 青木竜男、杉村宏一郎、下川宏明 症例は 70 代女性、慢性心房細動にて外来加療中であった。2週間前より夜間の咳嗽 出現、1週間前より労作時の息切れも出現してきた。糖尿病でかかりつけの内科で心 不全の増悪と診断されフロセミド20mg 投与されたが、その後も症状改善なく当科外 来を受診した。心エコーにて僧帽弁後尖に疣贅を認め感染性心内膜炎が疑われ、当科 緊急入院となった。 疣贅の可動性低く、塞栓を疑わせる理学所見なく、僧帽弁閉鎖不全症も軽度であり、 まず保存的治療を行う方針とした。血液培養を施行後、SBT/ABPC 9g/日、CTRX 2g/ 日の投与を開始し、心不全に対してはフロセミド20mg の静注を行ったが、第4病日 より呼吸苦が増悪し胸部X 線にて肺うっ血の増悪を認めた。非侵襲性陽圧換気治療と ドブタミン持続静注を開始、フロセミド静注を60mg に増量し、うっ血改善を得られ たが、心エコーで僧帽弁後尖が疣贅により可動性低下、僧帽弁狭窄症様血行動態を呈 しており、これが心不全の増悪因子と考えられ、またこの時点で血液培養は陰性であ り疣贅の原因も不明であったため、第7病日精査加療目的に東北大学循環器内科へ転 院となった。 転院後第3病日に同院心臓血管外科にて僧帽弁置換術及びMaze 手術を施行、術中 所見では僧帽弁後尖 P3 にリウマチ性の硬化所見、弁下組織の癒合あり、腫瘤の主成 分は血栓で疣贅は一部であった。疣贅の PCR にて腸球菌が検出され、SBT/ABPC か ら PIPC 8g/日に変更したが、その後無顆粒球症を発症、VCM の投与を開始するも腎
機能障害あり、第 28 病日に中止した。術後の経過良好、リハビリテーション目的に 第38 病日に当院へ転院となった。 5ヶ月前に施行された心エコーで、僧帽弁は軽度の硬化を認めるのみであったが、 血栓と疣贅の付着により急速に進行し治療に難渋した一例であり、報告する。 6) 約 20 年の経過で心臓移植へ至った拡張相肥大型心筋症の一例 岩手県立中央病院 循環器内科 和山啓馬、山田魁斗、門坂崇秀、加賀谷裕太、 佐藤謙二郎、金澤正範、近藤正輝、遠藤秀晃、高橋 徹、中村明浩、野崎英二 【症例】60 代男性【既往歴】16 歳時:特発性心筋症【家族歴】特記事項なし【病歴】 28 歳時より心肥大を指摘、41 歳時に非対称性中隔肥厚を認めたことから肥大型心筋 症と診断。46 歳で EF42%と左室収縮能低下を認め薬物治療開始。2003 年 48 歳時に初 回の心不全を発症。心房粗細動の合併があり、カテーテルアブレーションを施行した。 2007 年より EF 30%台へ低下、心不全入院を繰り返し、心臓移植検討のため 2008 年 4 月東北大学病院へ紹介。しかし、カテコラミン非依存状態であり、Status 2 として心 臓移植登録は見送られた。2011 年 7 月に約 3 年ぶりの心不全入院。左前下行枝に PCI を施行し、在宅酸素療法を導入した。2012 年 7 月の心不全入院では CRTD 植込みとな るもカテコラミンからの離脱に難渋し、退院までに 2 ヶ月半を要した。2013 年 4 月心 不全増悪のため入院。LOS に伴う肝腎機能低下を認めカテコラミン離脱困難となり、6 月 20 日東北大学病院へ転院となった。転院直後、循環動態が破綻し IABP を挿入、CHDF 開始。転院 4 日後に心臓移植・LVAD 適応委員会が開催、承認を得てその翌日に LVAD 装着となった。2018 年 4 月ついに心臓移植が施行され、以後安定して経過している。 【結語】本症例は拡張相肥大型心筋症と診断、CRTD を含む内科的治療を行ったが心不 全入院を繰り返し、当科で管理中に INTERMACS2 まで進行した。最終的に心臓移植ま でたどり着いたが、心移植施設との連携が重要と考えられた一例を経験した。
7) 貧血により postcapillry pulmonary hypertension と diastolic ventricular interaction を呈 した1例 仙台医療センター 循環器内科 鈴木亭子、高橋佳美、江口久美子、山口展寛、 尾上紀子、石塚 豪、篠崎 毅 症例)52 歳、女性。現病歴)労作時息切れ、浮腫、著明な貧血(Hb 2.9g/dl)、胸水 から心不全と診断され入院となった。心電図と冠動脈に異常なく、UCG にて右室の著 明な拡大、肺高血圧(推定肺動脈収縮期圧 60mmHg)、重度の三尖弁逆流を認め、吸気 時に僧帽弁流入血流速度が 40%低下した(diastolic ventricular interaction, DVI)。 僧帽弁流入波形は restricitive pattern を示したことから postcapillry pulmonary
hypertension と診断した。貧血は子宮筋腫に伴う低球性低色素性貧血と診断された。 利尿薬と輸血により第 8 病日に Hb は 8.6g/dl まで改善し、上記の所見は全て消失し た。左室拡張末期径は初診時 51mm から第 8 病日に 54mm まで拡大し、右室横径(四腔 像)は 52mm から 39mm に縮小していた。貧血による高心拍出性心不全において、 postcapillry pulmonary hypertension と右室拡大に伴う心膜伸展が DVI を引き起こ したと考えられた。 8) 心嚢液貯留を呈した心臓脂肪腫の一例 平鹿総合病院 循環器内科 小松真恭、武田 智、小野優斗、林﨑義映、中嶋壮太、 深堀耕平、伏見悦子、高橋俊明、堀口 聡 平鹿総合病院 心臓外科 加賀谷 聡、相田弘秋 平鹿総合病院 病理診断科 高橋さつき、齊藤昌宏 症例は77 歳男性。10 か月前の胸部レントゲンでは異常を認めなかった。5 か月前か ら下腿浮腫を認め、1 か月前から労作時息切れが出現した。2 週間前から息切れが 100m 程度の歩行時にも認めるようになり当院を受診した。胸部レントゲンで心拡大 と胸水貯留を認め、心蔵超音波検査では全周性の心嚢液貯留および心膜腔内に左房に 付着する74×34mm の腫瘤様構造物を認めた。心不全症状が強く心嚢穿刺施行した。 心嚢液は血性であったが、細胞診はClassⅡであった。造影 CT では enhance されな いlow density の腫瘤様構造物を認めた。造影 MRI 検査では T2 強調画像で高信号、 脂肪抑制T1 強調画像で低信号の腫瘤様構造物を認めたため、心臓脂肪腫または脂肪 肉腫が疑われた。心臓カテーテル検査では冠動脈に有意狭窄なく、腫瘍への栄養血管 も認めなかった。初診より 48 病日に外科的腫瘍摘出術を施行した。術中所見では左 房壁に付着する80×100mm の有茎性充実性腫瘍を認めた。病理組織診断は脂肪腫で あった。心臓脂肪腫の多くは無症候性で剖検時などに偶発的に発見されることが多く、 心嚢液貯留を呈することは稀であるため文献的考察を交えて報告する。 9) 家族性地中海熱による心膜炎を発症した一例 いわき市立総合磐城共立病院 鈴木喜敬、野木正道、瀬川将人、渡邊俊介、崔 元吉、 工藤 俊、塙 健一郎、山下文男、山本義人、杉 正文 【症例】69 歳女性 【主訴】動悸、胸痛 【現病歴】平成30 年 3 月某日、動悸が出現し、近医受診。心電図にて発作性心房細 動および、Ⅱ,Ⅲ,aVF での ST 上昇見られ、急性心筋梗塞疑いにて当院搬送となった。 心臓カテーテル検査では冠動脈および壁運動に異常は認めず、先行する感冒様症状、 少量の心嚢液を認めたため、心膜炎との診断となり、洞調律復帰、症状改善後に退院
となった。2 ヶ月後、再び同様の症状が出現。外来で経過を診ていたが、38 度を超え る発熱、BNP 上昇、軽度うっ血を認め再入院となった。 【臨床経過】血液検査では自己抗体は上昇認めず、膠原病は否定的であった。また、 結核による心膜炎も否定的であった。好中球優位な白血球数上昇を認め、CRP も高 値であったが、血液培養からは細菌感染は否定的であった。入院後も半日程度で改善 する 38 度超の発熱を 5 回認め、フェリチン、IL-6 の上昇が上昇していたことから、 成人 still 病もしくは自己炎症性疾患の可能性が高いとの診断となり、NSAIDs 内服 で症状改善した後、県内の膠原病科へ紹介となった。遺伝子解析結果にて MEFV 遺 伝子の変異を認め、家族性地中海熱との診断となった。コルヒチン投与は行わず、 NSAIDs のみで症状は落ち着いており、現在経過観察中である。 【考察】心膜炎の原因はウイルス性によるものが最も多いが、繰り返す心膜炎の中に は、膠原病や自己炎症性疾患が原因となっている場合がある。しかし、自己炎症性疾 患に関しては不明な点も多く、診断に苦慮する場合が多いと考えられる。 【結語】家族性地中海熱による心膜炎を発症した一例を経験した。 10) 当院での AMI 治療における 12 誘導心電図伝送システムの有用性の検討 みやぎ県南中核病院 循環器内科 今野周一、伊藤愛剛、福井健人、田中修平、 塩入裕樹、小山二郎、富岡智子、井上寛一 【背景】当院では2015 年 6 月 1 日より救急隊による 12 誘導心電図伝送システムを導 入しており、AMI 治療における時間経過の短縮、予後の改善を目指している。以前 2017 年の心筋梗塞対策協議会パネルディスカッションにて経過を報告したが、その後 利用件数が順調に増加しており、改めて現状について検討した。 【方法】①2015 年 6 月から 2018 年 8 月までに救急隊による 12 誘導心電図伝送システ ムを利用した全698 例を解析した。②その内、循環器内科の症例 358 例について解析 した。③AMI 症例 177 例において、心電図伝送システム導入前後の来院後の時間経過、 予後を比較した。 【結果】①心電図伝送数はシステム開始後順調に増加しており、循環器内科の症例が 過半数を占めたが他科でも伝送システムの利用がみられた。②循環器内科症例では心 不全が最多で111 例、次いで AMI が 61 例であった。伝送システムの利用により、病 院到着前に約 19 分前もって心電図情報を得られることが分かった。③伝送システム 開始後、AMI、特に STEMI 症例において来院後の時間経過の有意な短縮を認めた。 心電図伝送開始前後で院内死亡数に有意差は認めなかったが、peak CK は優位に減少 していた。 【考察・結語】AMI 症例において、心電図伝送システムの導入により早期のスタッフ の招集、カテーテル室準備が可能となり来院後の時間経過、Door to balloon time が短 縮したと考えられる。本検討では心電図伝送システム開始前後で院内死亡数に有意差
を認めなかったが、症例数の不足も一因として考えられる。 11) 急速な経過で死亡に至った胸痛の一例 国際医療福祉大学病院 循環器内科 藤川敦史、高木祐介、布田紗彩、齊藤大樹、 佐竹洋之、高田剛史、兼光伯法、湊谷 豊、福田浩二、武田守彦、柴 信行 国際医療福祉大学病院 心臓外科 吉永 隆 症例は 70 代、女性。前日からの労作時胸痛を主訴に、近医から当科外来に紹介とな った。12 誘導心電図で前~側胸部誘導に ST 低下を認め、血液検査でトロポニン I が 上昇していたことから、不安定狭心症が強く疑われた。診察中、冷汗を伴う胸痛が出 現し、心電図でST 低下が増悪したため、不安定狭心症から急性心筋梗塞に移行した 可能性を考え、緊急冠動脈造影を行う方針とした。しかし、心臓カテーテル室に入室 した直後、意識障害を生じ、心肺停止となった。心肺蘇生法を行いつつ、寝台に移動 させ、経皮的心肺補助法、大動脈バルーンパンピング、経皮ペーシングを行った。心 臓超音波検査では、多量の心嚢液貯留と心表面の凝血塊が観察され、心嚢穿刺で血性 の心嚢液が採取された。冠動脈造影で有意狭窄を認めず、左室造影で上行大動脈の flap と造影剤の血管外漏出を認め、急性大動脈解離(Stanford A 型)と、それに伴 う心タンポナーデと診断した。心臓外科と対応を協議した結果、全身状態が重篤で、 手術による救命は見込めないと判断された。集中治療室で保存的に管理し、初診から 約7 時間で死亡確認するに至った。剖検、autopsy imaging とも、家族は希望しなか った。不安定狭心症を強く疑うも、急性大動脈解離であった症例を経験した。画像の 供覧、文献的考察を交えつつ、報告する。 12) 冠攣縮性狭心症との鑑別を要したびまん性食道痙攣の一例 石巻市立病院 循環器内科 二瓶太郎、千葉貴彦、赤井健次郎 【症例】76 歳、女性【主訴】前胸部絞扼感【既往歴】高血圧症、脂質異常症、逆流 性食道炎 【現病歴】昼食後に突然前胸部絞扼感が出現したため当院紹介となった。 【経過】心電図は洞調律で虚血性心電図変化は認めず、心筋逸脱酵素の上昇も認めな かった。以前から食後に同様の症状を自覚していたため、上部消化管内視鏡検査を先 行して行ったが、原因は特定できず、安静時狭心症の疑いで心臓カテーテル検査を施 行した。左右冠動脈に器質的狭窄病変は認めず、アセチルコリン(ACh)負荷試験を施 行した。左冠動脈へのACh 100μg 冠注 1 分後に左前下行枝#8 がびまん性に 75%狭 窄を呈し、その際に通常自覚する胸部絞扼感を訴えた。攣縮は自然解除したがその後 もしばらく胸部症状が持続、心電図変化は認めなかった。典型的な ACh 負荷試験陽 性例ではなかったが定期降圧薬をベニジピンに変更して経過観察したところ、約1 ヶ
月後の食事中に強い嚥下困難感と間欠的な胸部絞扼感が出現し、当科再受診。ニトロ ール頓服で症状は改善したが、非心臓性胸痛を疑い他院心療内科へ紹介した。食道運 動機能検査の結果、びまん性食道痙攣の診断で内服治療の方針となった。【考察】び まん性食道痙攣は食道運動異常症の代表的疾患の一つで、時として安静時胸痛を主訴 に循環器外来を受診する。本症例はカルシウム拮抗薬、硝酸薬で症状が軽減したもの の、経過観察中に食道通過障害が顕性化したことで診断確定に至った。狭心症として 非典型的な病歴や検査結果を呈した安静時胸痛症例においては、慎重な経過観察が必 要であることを示唆する一例と考えられた。 13) 東北大学病院における TAVI 症例のまとめ -AS 患者のご紹介のお願い-東北大学 環器内科 土屋 聡、松本泰治、菊地 翼、高橋 潤、下川宏明 東北大学病院では 2014 年 5 月から 2018 年 10 月で TAVI 100 例を施行した。 Clinical Outcome では 30 日死亡は認めず、1 年死亡は 63 人中 1 名(約 1.5 %) (非心臓死)、 症候性脳梗塞は認めなかった。初期には開胸手術への移行例も経験したが、以後約 3 年は大きな合併症なく良好な成績をおさめている。当院における TAVI ハートチーム の経験をまとめ、文献的考察を加え報告する。 14) 狭心症超音波治験 ~候補症例ご紹介のお願い~ 東北大学病院 循環器内科 進藤智彦、高橋 潤、松本泰治、白戸 崇、羽尾清貴、 菊地 翼、黒澤 亮、門間雄斗、一條貞満、中田貴史、坂田泰彦、下川宏明 当科では、低出力の超音波を用いた血管新生療法を開発し、重症狭心症患者を対象 とした多施設共同医師主導治験を行っています。 <狭心症超音波治験> 【目的】難治性狭心症患者の生活の質(QOL)を改善すること。 【対象】十分な薬物療法下でも胸痛発作があり、かつ、PCI や CABG による治療が 困難である狭心症症例(いわゆる“No-option”の狭心症症例) 【症例数】80 例(実治療群とプラセボ治療群 40 例ずつ) 【治験期間】2013 年 12 月~2020 年 3 月 【参加施設】東北大学, 順天堂大学,東京医科大学,東京女子医科大学,日本大学, 藤田保健衛生大学,国立循環器病研究センター, 兵庫医科大学,熊本大学, 久留米大 学 【治験調整医師】東北大学 下川宏明教授
狭心症超音波治験の低出力体外衝撃波治療(先進医療)との違い ① ニトロの使用頻度が週 1 回以上の患者が対象 [衝撃波治療では頻度に制限なし] ② 人工弁(機械弁)やデバイス植込(PM, ICD, CRT-D)患者も可 [衝撃波治療では適応 外] ③ 治験治療は無料 [衝撃波治療は 265,500 円]。 いわゆる“No-option”の狭心症症例がいらっしゃいましたら、まずは、メールやお電 話などでお気軽にご相談いただけましたら幸いです。