奈 良
・ 石 神 遺 跡
所在 地 奈良 高県 市郡 明 日香 村 飛鳥 調査 期 間 第 一人 次 調 査 一一〇
〇 五年
︵平 17︶ 九 月
〜 二〇
〇 六年 月五 発掘 機 関 奈良 文化 財研 究 所 飛鳥 藤 原宮 跡発 掘 調査 部 調査 担当 者 代表 安 龍田 太 郎
・巽 淳 一郎 遺 跡 の種 類 宮殿
︒官 衛跡 遺 跡 の年 代 飛鳥 代時 遺跡 及 び木 簡 出土 遺 構 の概 要 石神 遺 跡 では ︑ 九一 人 一年 以 来 の継 続 調査 によ り A期 世︵七 紀前 半
〜中 頃︶︑
B 期
︵七 世紀 後 半︶︑
C期
︵七 紀世 末︶ の遺 構群 を検 出 し て いる 遺︒ 跡 最が も整 う のは A 3期 で︑ 斉明 朝 の公 的饗 宴 施 設と し て使 用さ れた うよ であ るが
︑ D
B
・C 期に は官 行的 な様 相 請
を呈 るす 第︒ 一人 調次 査区 は︑ 石神 遺 跡 の主 体 とな る
物建 群 の北 周外 部 あに た る場 所 で︑ 木簡 が多 数 出土 し た第 一五
・一 六次 調査 区 のす 北ぐ 隣 であ る︒ 調査 面積 は六 七 三ポ 検︒ 出 し た主 な 遺 構 は︑ 杭 列
︒石 垣
・礫 敷
・溝
・土 抗
・自 然流 路 な ど であ る︒ A期 には 調︑ 査 区 の大 部 分を 占 るめ 沼沢 地 S X四
〇 五〇 を埋 め立 て︑ 正方 位 には のら な い杭 列 S X四 二三
〇︑ 石組 列 S X四 二三 五
・ 四 二三 六 など が設 け られ る︒ 南 北溝 S D四 一二 七も
︑ A期 に遡 る可 能 性 があ る︒ 期B には 南︑ 北溝 S D四
〇九
〇
︒四 一二 一が 掘削 され る︒ C期 はに 南北 溝 S D 一三 七四 流が れ るが 溝︑ 自 体 の掘 削 は 期B 遡に る可 能性 もあ る︒ 期C 以 降 とし ては 中︑ 以世 降 の礫 敷 S X四 五 二九
︑ そ よれ り古 い礫 敷 SX 四二 五 五が あ る︒ 木 簡 は︑ S D 四〇 九
〇 から 三 人点 つ今 削ち 婿 一点
︶︑
S D四 一二 一 から 七 点
︑ S D 一三 四七 か ら 六 二点 つで 削ち 暦三 一百 ё︑ 遺 物包 含 層 か ら 二点 遺︑ 構 不 明 一点 計︑ 一 一〇 点 つ今 ち削 婿三 一一占一 が出 土 たし
︒ ここ では
︑ それ ら のう ち代 表的 なも の三 一点 紹を 介 す る︒ S D四 九〇
〇は 幅 一七
︒人 m最 大 深 さ○
・六 mの 南 北溝
︒ S D四 一二 一は 幅 一・ 一m 最大 深 さO
・三 mの 南 北溝 で︑ 二股 に分 かれ る︒ S D 一三 四七 は幅 三
・三 m最 大 深 さ○
・五 五 mの 南 北溝 で︑ 暗灰 色 粘 土
・黒 灰色 粘 土 の堆 積す るS D 三一 四七 Aと 灰︑ 色粗 粒砂 の堆 積 す るS D 一三 七四 B に区 分 でき る︒ 木簡 の内 訳 は︑ S D 一三 七四 A が 五 人点 つ今 ち削 暦一三 百じ
︑ S D 一三 七四 B 四が 点 であ る︒ また S D 一三 四七 Aか ら は︑
﹁寺
﹂水
﹁間 人内
﹂ の墨 書 土器 も出 土 し て るい
︒
2006年 出上の木簡
16 17次北
15。 17次南
13・ 14次
石神遺跡北部遺構変遷図
こ れ ら 三 条 の溝 は 第 一五
︒ 一六 次 調 査 で も 検 出 さ れ
︵S D四
一一 は第 一五 次 調査 では 未 検 出︶︑
多 量 の木 簡 が 出 土 し て い る
︵本 誌第 二 六
・二 七号
︶︒
8 木 簡 の釈 文
・内 容 南北 溝 SD 四〇 九〇
①
︒﹁ 己卯 年八 月十 七 日白 奉経
﹂ 名 観世 音経 十巻 記白 也 ﹂ P∞ 授
﹈撰 卜 寓マ
﹁﹃日
︱ ︱
□ □ □﹄聖御前白小信︹ 法鋼力︺
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︒﹁レ
素 留 宜 矢 田 マ調 各 長 四段 四布
□□ 六十
一﹂
︒﹁荒
皮 一合 六十 九 布 也
﹂
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Ⅷ 咽 ﹁ 口 □
□ □ 川 人
大 鳥 人 上 一下 一
﹂
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口
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×
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︒﹁玉 作 マ小 聞 馬甘 酬︹ 勲 ぼ
(9) l10 l101
︒﹁ 国
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以 三 月十 三 日 三桑 五十 戸
﹂
︒﹁ 御< 垣 守 漬 尻中
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﹂
︒﹁ 三< 一野 評凡 人 剛 ゴ
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▼ 一 3
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・× 月 廿 日
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⑬
︒﹁大 伴 マロ ロ
﹂
︒﹁.日
回
﹂
⑭
﹁< 物 マ君
⑮
<﹁ 主寸
﹂︵ 刻書
︶
南 北 溝 S D四 一二 一
⑭
□ 物 斎 ω 母 知 二斗 く﹂
⑬ 仏﹁ 仏
□ 南北 溝S D 一三 四七 A
⑬
︒﹁ 病 弥 以 回
□
・ヨ ロ回
□回
□回
﹄
⑭ ﹁ 親朧 続 ママ
﹂
金 こ
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2006年 出上の木簡
︹丙 戊 力︺
側
︒﹁
□
□ 年 月二 四
口 ︒ 希 陳 ﹄ 剛 配
﹁< 己 卯 里 年 戸力
︺
﹁原 五 十
□
﹂
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︹贄 力︺
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﹂
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﹁< 奈貴 下 黄
□ 五連
﹂ 和﹁ 布軍 十 五斤
﹂
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□嫡 嫡
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・ 識 識 識
﹂
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訪 匹
南 北溝 S D 一三 四七 B
⑩
﹁< 海 マ奈 々古
﹂
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×
﹈卜
×
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o
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× ヽ o
∞
︺
物遺 包含 層
①
﹁
□
□ 口
□ 結 足
︹短 期 力屯 X
︵刻 言
^こ 要× 馬 B 第
一五
︒一 六次 調査 様同 遺︑ 構 ごと の木 簡 の内 容 に顕 著 な差 異 は 認 めら れな いの で︑ 一括 し て概 要 を述 べる
︒ まず 紀年 銘木 簡 は︑
⑪
⑫ の
﹁己卯 年
﹂︵天 武八 年︑ エハ七 九︶ ︑ い の
﹁丙 戊年
﹂
︵朱鳥 元年 エハ︑ 八 六︶︑
0 の
﹁庚 寅年
﹂
︵持統 四年 エハ︑ 九〇
︶が りあ 既︑ 往 調 査 の木 簡 年 代観 とも 合う
︒ ω
〜O
⑬ は文 書 簡木
︒ ω 裏は 面 若に 干 削 り 残 り が あ る︒
﹁白 奉﹂
﹁記 白
﹂ の部 分 は複 数 訓の 読 案 が考 え ら るれ が
︑ ここ では
﹁己卯 年 月八 十 七 日︑ 白 し 慕 る っ 経 のこ と︒ 観 世音 経 十巻 記︑ 白し すな り﹂ と読 ん おで く
︒
﹁己卯 年 月八 十 七 日︑ 経 に関 す る事 柄 を 報ご 告 いた まし す 観︒ 世 音 経十 巻 を転 読
︵な いし 書写
︶し た こと を︑ 木簡 に記 し てご 報 告申 上し まげ す﹂ の意 とな る︒
② は
﹁信
﹂法 が
﹁聖
﹂ に上 申 たし 文 書
︒
﹁小
﹂ は謙 譲表 現 木︒ 簡 を 二次 利用 たし も ので
︑ 削 り 残 り 顕が 著 認に めら れ る︒ ま 具た 体的 用件 に関 わ る
﹁謹
﹂ と
﹁賜
﹂ の間 に︑ 現状 では 墨痕 は確 認 でき ず 正︑ 式 の文 書 では な い可 能性 も あ る︒
﹁仏
﹂ 字 を 習 書 し た
⑬
︑
﹁寺 水
﹂ 墨 書 土 器 と あ わ せ
︵他 に
﹁寺﹂ 字 のあ る木 簡断 片も 出土
︶ ︑遺 跡近 辺 に寺 院 あが たっ とも みら れ るが 現︑ 状 では 至近 の場 所 に古 代寺 院 は知 られ て いな い︒ む し ろ①
2006年出上の木簡
から は︑ 転読 ま たは 書 写を 依 頼 たし 貴族 な いし 皇 族 の邸 宅 が遺 跡 の 近 く あに たっ とも 考 え ら るれ
②︒ も貴 族
・皇 族 の邸 宅 に
﹁聖
﹂ 招が かれ た と考 え れば 説明 が つく
①︒ は 端下 折 れ︒ 材 の上 端 右寄 り 径に mm一
の小 孔 が あ る︒ 類 例 と し ては
︑
﹁此取 人 者 御 六 世酌︹
光
﹁此 取 人 者盗 妻人 成﹂ な とど 書 か れ︑ 小 さな 穿孔 のあ る長 屋王 家木 簡 あが り 翁平 城京 木簡
﹄ 一︑ 八八
〜九 一号
︶︑
く 引じ き 用 の札 推と 定 さ れ て い る
︵東 野治 之
﹁長屋 王家 木簡 の
﹃御 六世 ヒ
﹃日本 代古 史料
﹄学 岩波 書店
︑ 二〇
〇五 年︶︒
⑬ の表 面 は
﹁病 いよ いよ 以 てっ
⁝﹂ と訓 読 でき る︒ 一暴 面 文は 字 右が に寄 り︑ 整形 前 記の 載 と みら れ る︒ い
〜① い は帳 簿 類 側︒ は 四周 削り
︒
﹁素 留宜
﹂ は駿 河 る︵す が︶ で あ うろ 矢︒ 田部 も 駿河 に分 布 す る︒ 長 さ 四段 の調 布 の数 量 を記 載 す る︒ 布 の枚 数 を
﹁四布
﹂ のよ う に数 え るが 類︑ 例 藤は 原宮 跡出 土木 簡 にも あ る
︵﹃藤 原宮 木簡
﹄ 一︑ 三 ハ三 号︶︒
表 面 の
﹁六十 一﹂ の上 は
﹁三布
﹂ の可 能 性 あが り︑
﹁四布
﹂ 十
﹁三布
﹂ 十
﹁六 十 一﹂ 十
﹁荒 皮 一﹂
=
﹁合 六十 布九
﹂と な る︒ 矢 田部 集 団 によ る調 の貢 進 を 示す か︒ 表 面 一文 字 目
﹁レ
﹂ は合 点 であ うろ
︒
⑬ 左は 右両 辺 は 二次 的 削 り で︑ 三行 以 上 の記 載 か らな る︒
﹁上
﹂
﹁下
﹂ は上 香
︒下 呑 の意 か︒ 0 は表 面 が本 来 の記 載 で︑ 歴名 簡 であ ろう 裏︒ 面 は左 右両 辺を 二次 的 に割 裁 した 後 の記 載
⑦︒ は食 料 支給 に関 わ る帳 簿 であ ろう
︒
①の は歴 名簡 の 一部 か︒ 例 は元 来 文書 な いし 簿帳 か︒ 表面 を記 載 たし 後
︑ 下端 を 二次 的 に整 形 し て裏 面 記に す
︒
①
〜⑭ ω②
〜⑭
⑩ は貢 進 荷 札 など
①︒ は異 例 の書 式 を と る︒ 習 一 桑 五十 戸﹂ 美は 濃 不国 破 郡
・大 野 郡 の三 桑 郷 該に 当 し よう
︒
﹁御 垣 守
﹂ は衛 士 に相 当 す る︒ 当 地出 身 の衛 士 に対 す る資 養 物 に付 けら れ た荷 札 か 御︒ 垣 守 は
﹁漬 尻 中 ツ刀 自
﹂ を指 す と みら れ る が︑
﹁刀 自
﹂ は女 性 関に わ り︑ 検討 を要 す る︒
⑩
﹁三 野評
﹂ は
﹁凡 人﹂ の分 布 から 讃︑ 岐 国 の可 能 性 あが る︒ サ 名ト 相に 当 す る位 置 に
﹁凡 人﹂ と あ る のみ で︑ 凡 人 らか な る集 団 的ま と まり が想 定 さ れる が︑ 貢進 者 はと も に
﹁日 下 マ﹂ あで る︒ 一 般 某に 部を 冠し たサ ト に つい て︑ 某 部 の集 団的 編成 によ てっ 形成 され たと 考 え ちが だが 某︑ 部 が主 導 権 握を る こと あは てっ も︑ それ すが べて では な いこ とを 示す 裏︒ 面 は 二次 的 な墨 書
⑪︒ は養 米 の荷 札
⑫︒ 側 贄は の荷 札 側︒ は 五戸 か ら の貢 進荷 札 であ るが 貢︑ 進者 名 も 記す 点 が興 味 深 い︒ 贄 調と の互 換 性 を示 唆 す る史 料 と し て重 要
⑬︒ の裏 面 墨は 痕 と シミ と の区 別が つ き たが く︑ Ш
⑩と 同様 人︑ 名 のみ 記す 荷 札と も みら れ る︒
⑫ 塩は の 荷 札 か︒
⑬ は小 型 の荷 札︒ 上 端 は切 断 す る のみ
︒ 的
﹁奈 貴 下﹂ の
﹁奈 貴
﹂ は︑ 後 の山 城 久国 世 郡那 紀 郷 に相 当 し うよ
︒
﹁黄 布
﹂ に つ いて は︑ 布﹁
﹂ を メ﹁
﹂ と訓 ん で海 藻 類 と み るか 白︑ 貝 を意 味 す る
﹁於 賦
﹂
︵本 誌第 一一 七号
︶ の いず れ か の可 能性 があ る︒ ただ し
﹁布
﹂ では な く
﹁草
﹂と みれ ば︑ 黄 連 の別 名
﹁黄 草﹂ を指 す こと にな り
︑ 奈 癸 園
︵﹃ 廷喜 式﹄ 膳内 司︶ と の関 連 か もら 整 合 的 に理 解 でき る︒ の の 和﹁ 軍布
﹂ は ニギ メ ︒ 一度 貢の 進 量 と し ては 六︑ 斤
︵大 斤︶ な い
二
〇 斤
︵小 斤
︶ が 一般 的 で あ り
︑
﹁十 五 斤
﹂
︵小 斤︶ は や や 少 量 で る
︒
⑮
① 刻は 書
⑮︒ 付は 札状 呈を す るが 横︑ 幅 対に し て長 さ 極が 端 に い︒
﹁主 寸﹂ は スグ リ︒
① は厚 め の材 を 用 い︑ 上端 の左 右 両角 を り落 と し︑ 端上
︒左 右 両辺 の表 側 面を 取 り す るが 加︑ 工 は荒 い︒ 部 の文 字 は天 地逆
︒ 側 は地 名 を 記 した 削 層︒ いの 習は 書 木簡 い︒ は嫡 子 など 用の 語 に 係 す るも のか の︒ は上 端 二次 削的 り︑ 左 辺 二次 割的 裁 表︒ 面 習は がだ 裏︑ 面 は
﹁菓方
﹂ とあ り︑ 合点 が付 け ら れ て いる ので 物︑ 品 出 納 使に 用 さ たれ 木簡 の可 能 性 もあ る︒
⑩も
﹁物 齋﹂ とあ り︑ 何 か の物 納品 入と の関 連 が想 定 され る︒ 係関 文献 奈 良 文 化 財 研 究 所
﹃奈 良 化文 財 研 究 所紀 要 二
〇 七〇
﹄ 全 一〇〇 七 同
﹃飛鳥
・藤 原宮 発 掘 調査 出 土木 簡 概報
﹄ 二 一
︵一一〇
〇七 年︶
︵市 大樹
︶