Abstract
In this paper, we discuss a leapfrog filter with very low cut-off frequency such as 0.1
[Hz]featuring simultaneous low-pass and high-pass outputs. At first, we introduce a complementary characteristics in a lossless 2-port by means of the scattering matrix and obtain a complementary high-pass output circuit for the leapfrog filter. Next we discuss time-constant expansion using a prescaled integrator. The entire schematic of the proposed simultaneous low-pass and high-pass leapfrog is given and we proved its validity by means of circuit simulations and actual circuit evaluations.
1 まえがき
近年,携帯型電子機器の普及と機能増大の要求が進む中,集積回路の設計製造技術はま すます大規模化,微細化が進められている。最先端の製造プロセスは 32[nm] にまで達し ているが[1],このような超微細プロセスで製造された回路の動作電源電圧は1[V] 以下 となってきている。信号振幅は差動処理をして電源電圧の 2 倍が最大であるため,超微細 プロセスで設計するアナログ回路のダイナミックレンジは低電圧下に伴い低下する。
橋梁やビルディングといった大規模構造物の振動計測の分野では,センサで取り込んだ 信号を AD 変換して PC に取り込んで解析するのが主流である。このような用途では対象 とする信号周波数が1[Hz] 未満となることも多く,電源周波数や他の信号成分を除去する ため,遮断周波数の非常に低い低域通過フィルタ(LPF)が必要となる。ここで用いられる LPF には,16[bit] 精度の AD 変換が要求する 100[dB] のダイナミックレンジを確保する 必要がある。また,計測対象によっては LPF だけではなく,高域通過フィルタ(HPF),
帯域通過フィルタ(BPF),帯域除去フィルタ(BEF)が必要となり,遮断周波数や通過帯域,
除去帯域は計測案件ごとに自由に設定できることが望ましい。信号振幅も振動センサが出 力する 20[Vpp] 程度を想定しており,±15[V] の電源で動作する回路が用いられている。
一般にフィルタ回路の遮断周波数は使用する素子の値に反比例し,1[Hz]以下では[μF]
級以上の大きなキャパシタ,[MΩ] 級以上の大きな抵抗が必要となる。このような値の素
低域通過特性及び高域通過特性を同時に出力可能な 超低周波遮断周波数のリープフログフィルタ
武 藤 浩 二
*A Very Low Frequency Leapfrog Filter with Simultaneous Low-pass and High-pass Outputs
Cosy MUTO
*教育学部生活健康講座(技術)
(平成 22 年 10 月 29 日受理)
子を集積回路上に実現した場合,物理的寸法が非常に大きく,素子値誤差が 10[%] 以上も あるため,現実的ではない。また個別素子で実現する場合においても,超低周波領域を取 り扱うフィルタ回路を実現する際に部品精度及びコストの面で問題となる。
一方,一つの回路で複数のフィルタ出力を得るような回路についても検討されている
[2]−[7]。これらは 2 次伝達関数区間について複数出力を実現するものであり,3 次以上の 高次フィルタについて直接 LPF や HPF を同時に出力するようなものではない。またこの 方式で高次フィルタを構成する場合は 2 次伝達関数区間を縦続接続しなければならないが,
ダイナミックレンジを最大にするための各区間伝達関数設計の方法が明らかにされていな いだけでなく,各区間の誤差が累積して出力される欠点も有する。
本論文では,演算増幅器を用いて構成する高次の能動フィルタについて,LPF と HPF を 同時に得る手法を提案する。まず最初に,通過域で低感度であることが知られている両終 端型 LPF 各部の電圧及び電流の関係を模擬する能動フィルタの構成法について述べる。
次に,入力信号と LPF 出力の減算で HPF 特性を得ることが 2 次以上ではできないことを 示し,無損失 2 ポート回路の散乱行列を用いて LPF と HPF を同時に構成する方法を示す。
さらに,実用的な素子値の範囲で遮断周波数を 0.1[Hz] 級の超低周波領域にまで拡大する 手法を提案する。回路シミュレーション及び実験により,提案手法の有効性を確認している。
図1 両終端型 フィルタ(LPF)
図2 ブロック線図
2 リープフログフィルタ
図 1 に示すような両終端型の フィルタを考える。直列枝の電流及び並列枝の電圧を 同図のようにとると,
が成立する。
式 (1) を構成する各式右辺の分数項は複素角周波数 =σ ω の一次関数であり,これら を ( )( = 1, 2, . . . , ) とすれば図 2 に示すブロック線図を得ることができる。
図 3 は演算増幅器を用いて構成した積分回路及び減算回路である。完全積分回路,不完 全積分回路の電圧関数をそれぞれ ( ) 及び ( ),減算回路の出力電圧 とすれば
(a) 完全積分回路 (b) 不完全積分回路 図3 演算増幅器による要素回路
図4 リープフログフィルタ
(c) 減算回路
1
1 3
1 1
1 1
2
2
−1
−1 −1 1
2
−1 −2
=
=
=
=
−
−
−
+
+
となるので,これらを用いれば式 (1) の各要素を実現できることがわかる。すなわち,図 3 の ( )( = 1, 2, . . . , ) に完全積分回路または不完全積分回路を,減算に減算回路を用い ることで図4 の回路構造を導出することができ,両終端型 フィルタ(LPF)の並列枝電圧,
直列枝電流の関係を模擬する。このような能動フィルタの構成方法をリープフログ構成[8]
と呼ぶ。
一般的なリープフログフィルタの実用回路では,図 2 のブロック線図に対して等価変換 を施して減算要素を加算に変換し,積分要素を式 (2) あるいは (3) の反転型で構成すること で回路規模の縮小を図っている。しかしながら本論文では後述の理由から回路規模縮小は 図らず,図 4 の基本構成を基に超低周波遮断周波数を実現する回路を検討する。
3 高域通過特性の実現方法 3.1 減算による実現
高域通過特性を実現する最も簡単な方法は,入力信号から低域通過出力を減算する方法 である。
例として 1 次 HPF を考える。遮断角周波数ω の高域通過伝達関数を 1( )とすれば,
となる。右辺第2項目は1次 LPF の伝達関数であるから,入力信号から1次低域通過出力 を減算することで高域通過特性を得ることができる。
しかしながら,2次以上の伝達関数ではこの性質は成立しない。2次の場合を例にとると,
2 次低域通過伝達関数 2( )及び2次高域通過伝達関数 2( )は,回路の尖鋭度を Q としてそれぞれ
で与えられるので,
となる。
( )2
=
−
2 2
+
ω+
ω21 ( )2 ( )2
( )
( )
1 2
1 1 1
1 2 1 2
( )1
( )2 2
ω
ω 1 ω
+
+ +
=
=
= −
ωω2 ω2
+
=
=
=
− +
−
− −
したがって,入力信号から低域通過出力を減算する方法は1次伝達関数の場合以外には 適用できない。
3.2 散乱行列に基づく相補特性の実現
図5に示すような回路を考える。この回路において,端子 1−1 は入力ポート,2−2 は 出力ポートを示す。
回路への入力電流 1は
で与えられる。ただし Z は入力ポートから右側の全回路を見た入力インピーダンスである。
これより V /2− 1 を求めると
となる。ここで 11は入力ポートにおける反射係数である。
のみで構成された無損失2ポート回路の散乱行列を
とおけば,図5において各ポートの反射電力|1|2 及び|2|2はポート1の入射電力を|1|2 として
となる。一方,無損失2ポートの消費電力 は
であるから,これより
1
1
=
=
=
=
=
=
− −
−
+
11
11 12
21 22
+
+
2
1 1 2
2 2
S
0
|1|2 |11|2|1|2
|1|2 |1|2
|1|2 |1|2 |2|2
|2|2
=
= − =
−
=
+
|2|2 |21|2|1|2
を得る。すなわち,ポート1での反射電力は入射電力とポート2の反射電力(この場合,
負荷抵抗 の消費電力)の差に等しい。したがって,回路が低域通過フィルタであれば,ポー ト1の反射電力はその低域通過フィルタと相補な高域通過特性となる。
式(10) は電力に換算するとポート1の反射電力,すなわち式(14) に他ならないから,直 列枝電流と並列枝電圧の関係を模擬するリープフログフィルタにおいて V /2− 1 を得れ ば,これと相補な特性を有するフィルタを同時に実現することができる。
図 4 のリープフログフィルタにおいて演算増幅器 1 の出力は 1となっているので,こ れを 倍し,入力電圧 V を 1/2 倍したものから減算すれば,低域通過フィルタと相補な 特性を持つ高域通過フィルタを同時に構成することができる。一般性を失うことなく は 1とすることができるので,図 6 の構成により低域通過及び高域通過を同時出力するリー プフログフィルタを得る。同図において, 及び はそれぞれ低域通過出力電圧及び 高域通過出力電圧を表す。
渡辺らは図2のブロック線図をさらに簡略化したシグナルフローグラフと 行列の操作 から逆チェビシェフ特性のリープフログフィルタを導出しているが[9],本手法は無損失2 ポート回路一般について散乱行列と入射電力・反射電力の関係から相補特性の低域通過・
高域通過同時出力形フィルタを導出しており,渡辺らの手法を包含する。
低域通過・高域通過同時出力フィルタとしてみた場合,フィルタ特性の近似方式はバタ ワース近似または Zolotarev 近似[10]が都合よい。これらの近似を用いた場合,振幅自乗 応答の極大点ω と零点ω との間に ω ω = ω の関係があり,LPF 及びこれと相補な HPF の周波数応答が遮断周波数で対称となるからである。
(a) 時定数を拡大した積分回路 (b) 時定数を拡大した入力減算型積分回路 図7 積分時定数を拡大した積分回路
図6 低域通過及び高域通過を同時出力するリープフログフィルタ
4 遮断周波数の超低周波化 4.1 積分時定数の拡大
1で述べたとおり,フィルタ回路の遮断周波数は使用する素子の値に反比例し,1[Hz]
以下では[μF] 級以上の大きなキャパシタ,[MΩ] 級以上の大きな抵抗が必要となる。こ のように大きな素子値の 素子は精度が非常に悪くなり,フィルタ回路で必要とする時定 数の安定かつ高精度な実現には不向きである。
図7(a)のような回路を考える。この回路の伝達関数は
で与えられ,時定数 を積分回路単体の場合の から 1/ 2倍に拡大することができる。
図7(a)では反転積分回路に反転増幅器を前置した形式にしているが,反転増幅器の代わ りに加算回路や同図(b) のように減算回路を前置することもできる。減算回路を前置した場 合の出力電圧 は
で与えられる。
図4及び6で示したリープフログフィルタの各要素は図7(b) と同一構造であり,減算回 路の利得の逆数が積分時定数の拡大係数となる。したがって 1及び 2の値を適切に選べば,
遮断周波数 1[Hz] 以下のフィルタ回路を精度・安定度の高い 素子で実現することが可 能となる。
5 設計例
5.1 基準 LPF 及びリープフログフィルタの素子値
設計例として,4次バタワース LPF 及びこれと相補な HPF の構成を取り上げる。4 次バ タワース LPF の回路及び遮断角周波数をω =1.0[rad/s] とした場合の基準素子値[11] を,
それぞれ図8及び表1に示す。実際に構成するリープフログフィルタの実回路を図9に示 す。実構成回路と図6との違いは,
図8 4次 LPF
( )
=
1=
11
2
1 1
2
1 2
1 2
= −
図9 低域通過・高域通過同時出力リープフログフィルタ実回路
• 全ての積分回路を完全積分回路としたこと
• 完全積分回路の採用に伴い,一部の減算回路の接続構造を変更し,低域通過出力端のオ フセット電圧調整ができるようにしたこと
• 低域通過出力の後段に利得2の増幅器を付加したこと
• 高域通過出力のための差動回路の構造を変更して2倍の利得を持たせるとともに,高域 通過出力端のオフセット電圧調整ができるようにしたこと
である。各出力回路に利得2(6[dB])を持たせたのは,両終端型 フィルタの通過域出 力電圧が入力電圧 の 1/2(−6[dB])となるので,これを補償するためである。
これまで述べてきた手法により,様々な遮断周波数 =ω /2πに対するリープフログフィルタ 表2 設計素子値例
(a) 低域通過特性
(b) 高域通過特性
図 10 フィルタ周波数特性のシミュレーション結果
の素子値設計結果を表 2 に示す。この設計数値は E24 系列の抵抗値およびキャパシタ値(誤 差等級 ±5[%])による。0.1[Hz]という超低周波遮断周波数を 0.1[μF]以下,100[kΩ]
以下の 素子値で実現できることがわかる。
1〜 の値は,表 1 の 1〜 4に対応するように選定しており,ここがフィルタ周 波数特性を決定している。 , 及び の値はリープフログフィルタを構成する各段で共 通にし, で遮断周波数の仮数部を, 及び で遮断周波数の指数部をそれぞれ制御でき るように構成すれば,外部から遮断周波数を自由に設定することが可能となる。
5.2 シミュレーション結果
図 9 の回路に表 2 の素子値を用い,回路シミュレータ Spice3f5 により出力の周波数特性 をシミュレーションした結果を図 10 に示す。低域通過側,高域通過側ともに設定した遮断 周波数どおりの周波数特性を得られていることがわかる。
5.3 実測結果
図 9 の回路を,遮断周波数 =5[kHz]のものについてソルダーレスブレッドボードに 実装した。各抵抗及びキャパシタは,±5[%]級の同一ロット品から無選別で取り出したも のを使用しており,個別に素子値を測定して合わせ込むようなことはしていない。
実測結果を図 11 に示す。同図には実線及び破線でシミュレーションによる理想特性もあ わせて表示しているが,低域通過特性については 40[kHz] 付近以下,高域通過特性につい ては 2[kHz]付近以上の周波数範囲で理想特性とよく一致している。
遮断周波数の測定結果は低域通過側が 4.94[kHz],高域通過側が 5.17[kHz] であった。
またクロスオーバー周波数は 5.05[kHz] であった。低域通過側遮断周波数及びクロスオー バー周波数は ±1.2[%] 以内の誤差であり,これは両終端型 フィルタの低感度特性 [12]
をよく示している。一方,高域通過側遮断周波数は 3.4[%] の誤差であったが,使用素子の 誤差範囲内に収まっており許容範囲といえる。
低域通過側の高域特性は 40[kHz] を過ぎたあたりから理想特性からのずれを示している が,これは実装に使用したソルダーレスブレッドボードの漂遊容量の影響によるものであ る。FR−4 基板に実装してガードリング等の処置を施せば,100[dB] 以上のダイナミック レンジを確保できることが期待できる。
図 11 フィルタ特性実測結果( =5.0[kHz], =4.0[V])
高域通過側の低域特性は−60[dB]程度のダイナミックレンジしか確保できておらず,ま た理想特性からのずれも大きい。これは高域通過出力を得るための減算誤差で,図9の演 算増幅器 1 の出力が基準 LPF の入力電流 1に対しごくわずかな誤差を持ったこと及び減 算回路の抵抗 1の相対誤差に起因している。この誤差は 1 の出力を受ける 1を微小に 可変できる構造として調整することで除去することができる。100[dB] 以上のダイナミッ クレンジを得るために基板実装時にガードリングを設ける等の処置をすることは,LPF の 場合と同様である。
シミュレーション並びに実測の結果より,本構成法の有効性を確認することができた。
6 むすび
本論文では, フィルタの直列枝電流及び並列枝電圧の関係を模擬するリープフログフィ ルタについて,低域通過特性と同時に高域通過特性も出力する回路構造を散乱行列を基に 導出した。また,その遮断周波数を 0.1[Hz] の超低周波領域まで拡大する手法についても 示し,回路シミュレーション及び実験により有効性を確認した。
本手法では基準 フィルタの素子値を減算回路の入力抵抗に割り当てることで他の 素子値を同一にすることができ,これにより遮断周波数を数桁のオーダーにわたって自由 に設定できる特性可変フィルタに適用することができる。
今後の課題として,特性可変フィルタを実際に構成する場合の積分回路抵抗 の構成要 領について検討すること,基板実装による評価を行い遮断域での特性改善を行うことがあ げられる。
文 献
[1](社)電子情報技術産業協会半導体部会半導体技術ロードマップ専門委員会,国際半導 体技術ロードマップ 2009 年版概要,May 2010.
[2]C.M.Chang, Novel universal current-mode filter with single input and three outputs using only five current conveyors, vol.29, pp.2005‒2007, 1993.
[3]C.L.Hou and J.S.Wu, Universal cascadable current-mode biquad using only four CCIIs, vol.82, pp.125‒192, 1997.
[4]H.Y.Wang and C.T.Lee, Versatile insensitive current-mode universal biquad implementation using current conveyors, vol.48, pp.409‒413, 2001.
[5]V.K.Singh, A.K.Singh, D.R.Bhaskar and R.Senani, New Universal Biquads Employing CFOAs, vol.53, no.11, pp.1299‒1303, Nov. 2006.
[6]H.P.Chen, Universal voltage-mode filter using only plus-type DDCCs, vol.50, no.2, pp.137‒139, Feb. 2007.
[7]H.P.Chen and P.L.Chu, Versatile voltage-mode multifunction biquadratic filter employing DDCCs, vol.5, no.18, pp.769‒775, Sept. 2008.
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[9] 渡辺弘道,菊池久和,佐々木重信,浦部康弘, 相補特性を用いた逆チェビシェフ能動
RC フィルタの構成, 電学会 電子回路研資,ECT‒94‒17,June 1994.
[10]A.I.Zverev, Handbook of filter synthesis, John Wiley, New York, 1967.
[11]M.E. van Valkenburg(柳沢健 監訳),アナログフィルタの設計,秋葉出版,1985.
[12]H.J.Orchard, Inductorless Filters, vol.2, pp.224‒225, 1966.