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女 性 差 別 撤 廃 委 員 会
通報番号 1 5 / 2 0 0 7
人身売買によりオランダに連れてこられた中国人女 性に対する移民帰化局の対応が女性の売買からの搾 取を禁 じた条約6条に反するとの申立に対 し,国内 救済手続未了を理由に不受理 と判断された事例 通 報 者 ZhenZhenZheng
当 事 国 オ ラ ンダ
通 報 日 2007年 1月22日 見 解 採 択 日 2008年10月27日 条 約 発 効 日 1991年 8月22日
事案の概要
1 通報 者 は, オ ラ ンダ在住 の 中国人女性難 民認定 申請者 で あ り,弁護 士 が通報者 を代理 し てい る。通 報 者 は,1986年 中国 四川 省 生 まれ だが,生活 が厳 しく教育 をほ とん ど受 けてい な い。祖母 の死後, ホ ーム レス とな り, 中国で虐 待, レイ プ,売春 の強制等 を受 けてい た。通報 者 は,他 の数人 とともに売春 のた めにオ ランダ に連 れて こ られたが逃走 し,男性 と一夜 を過 ご した後 , 中国人女性 の家 で重労働 の家事 を させ られてい た。約8ヵ月後 ,通報者 の妊娠 が発覚 して路上 に追 い 出 され,2003年6月22日,女 児 を出産 した。
2 通 報 者 は, 出産 前 の2003年4月 に難 民 認定 を申請 し,2回 目の聴取 で脅迫 や レイ プを 含 む虐待 の経験 につい て話 したが,通報者 が 中 国か らオ ラ ンダにい た る経路 の詳細 を説 明で き ず,身分証 明書 を所持 してい ない こ と,入 国後 8ヶ月 を経 てか らの 申請 で あ るこ とを理 由に, 同5月1日, 申請 は移民帰化局 (IND)に よ り 却 下 され た。 同5月27日に は,‑ ‑ グ地 方裁 判 所Zwolle支 部 に よ り, 中国 に戻 って も危 険
はない とい う理 由で通報者 の不服 申立 が棄却 さ れた。
3 同5月1日,INDは,未成 年者 あ るい は 母親 で あ るこ とを理 由 とす る滞在許可 の 申請 に ついて も, 中国 に通報者 を受 け入 れ る施設 が整 ってい る として却 下 した。 同8月19日に は, 通報者 に よる見直 し請求 も理 由不十分 と宣言 さ れ た。 同9月16日,通 報 者 は地裁 に不 服 を申 立 てた が,2006年2月13日,証拠不十 分 と判 断 され,暫定措置 の 申請 も否定 された。 同3月 13日,通報者 は政府評議会 (CouncilofState)
に不 服 を申立 て た が, 同7月24日,却 下 され た。 同8月17日,通報者 はINDに特別 な事情 (長期 にわた るオ ラ ンダで の滞 在等) に基 づ く 新 た な 申請 を提 出 した が, 同9月26日に却 下
され, これ に対 す る不服 申立 は2007年5月16 日に却 下 された。 同6月11日に 申請 した司法 審査 について は,地裁 で係属 中で あ る。
4 通報者 の主張 は以下 の通 りで あ る。
当事 国 は,条約6条 が禁止 してい る女性 の人 身売買 お よび強制売春 の罪 と闘 うために努力 し てい るが,通報者 は,以下 の理 由に よ り,当事 国に よる条約6条違反 の被害 を受 けてい る。 オ ラ ンダには,警察 に 自分 が人身売買 の被 害者 で あるこ とを通報 し,警察 が刑事的捜査 を開始す れば,滞在許可 を得 るこ とがで きる とい う制度 が あ るが,INDは2度 目の聴 取 で通 報 者 が奴 隷 的取扱いや売春 の被害者 で あるこ とを知 った に もかか わ らず,通報者 に この制度 について情 報 を提供 しなか った。 また,当事 国は,通報者 が未成年 で あ ったに もかかわ らず,難民認定 申 請 を注意深 く扱 わず,特別 な法的扶助 お よび適 切 な保護 と支援 を提供 しなか った。 さらに,入 国管理官 らは,通報者 の教育程度 の低 さや未成 年 で あ るこ とに配慮 しなか ったた め,通報者 は オ ランダに来 るまでの経路や 中国での居所 な ど の情報 を伝 えるこ とがで きなか った。当事 国の
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過失 に よ り,通報者 は難民認定 申請手続 におい て トラウマ を得, 自殺 をはか る ようにな った。
5 これ に対 し,当事 国 は,国内救済手続 が 未 了で ある として,以下 の通 り本通報 の受理許 容性 に異議 を唱 えた。
1) 通 報 者 は,2003年5月 の‑ ‑ グ地裁 の決 定 に対 して,政府評議会行政裁判部 (Admin‑
istrative Jurisdiction Division)に上訴す る こ とがで きた。 また,通報者 は,国内裁判所 において当時国に よる条約6条違反 を主張 し てい ないため,当事 国はその ような主張 に対 応す る機会 を得 るこ とがで きなか った。
2) 2007年5月 の滞在 許 可 申請 の否定 に対 す る上訴 の却下 に対 して同6月に申請 された司 法審査 が係属 中で ある。
3) 通報者 は,条約6条違反 の内容 について具 体 的 に示 してお らず,本通報 は十分 に立証 さ れてい ない。
6 当事 国 は, さ らに,本通報 の本案 につい て,人身売買被害者 に捜査 お よび刑事手続期 間 中の滞在 を認 め, その後切実 な人道的理 由か ら 滞在 継続 許 可 に転 換 され る可能 性 の あ る "B9
スキーム" と呼 ばれ る人身売買被害者 のための 特別 措 置 につい て,INDが通 報 者 に知 らせ な か った こ とは,INDの過 失 で は ない。 なぜ な ら,通報者 は, 口頭 または書面 でほ とん ど何 も 情 報 を提 供 で きず,INDにおい て も警 察 へ の 通報 について伝 える必要が ある とは認識 で きな か ったか らである。通報者 は,国内手続 におい て法的助言者 の支援 を得てお り,必要で あれば 警察 に通報 し,B9スキ ームに よる保護 を申請 す るこ ともで きた はずで あ るが,B9スキ ーム についての知識 を得 た あ とも警察 には通報 して い ない。
受理許容性に関する委員会の検討
1 本通報 は,他 の国際的手続 に よ り検討 さ れてい ない。
2 委 員会 は,通 報 者 が2003年5月 のノ、‑
グ地裁 の決定 に対 して政府評議会行政裁判部 に
上 訴 しなか った こ と,2007年6月 に提 出 した 司法審査請求が係属 中で あるこ とに より,本事 案 の国内手続 は未 了であ る と考 える。
3 委 員会 の先例 に よ り,通報者 は委 員会へ の主張 に関 して国内で も実質的 な提起 を行 って い るこ とが必要で あるが,通報者 は,人身 また は女性 の売買が滞在許可取得 の理 由 となる可能 性 に言及 してい るに もかかわ らず,国内裁判 で 条約6条違反 を主張 してお らず,警察 に通報す る とい う可能性 も利用 してい ない。 また,通報 者 は,司法審査 の結果 が出てい ない こ とについ て,救済措置 が不 当に遅延 してい るか または効 果的な救済 が期待で きない説得力 ある理 由を示
してい ない。
4 よって,委 員会 は,通報者 の境遇 に大い に同情す るものではあるが, オ ランダ法 に基づ く手続 が尽 くされない限 り,本通報 を受理す る こ とはで きない と決定す る。
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Dairiam,Neubauer,Pimentel委 員に よる反 対意見1 本通報 の主張 は,人身売買 に関す る もの で あ り,人身売買以外 の理 由で通報者 が申請 し た難民認定手続 あるい は滞在許可手続 の問題で はない。人身売買 の よ うな国際犯罪か ら被害者 を保護す るこ とお よび法執行官 にそ うした被害 者 を特定 し,保護 を求 め るための方法 を通知す るこ とがで きるよ う適切 な訓練 を行 うこ とは締 約 国の義務で あ り,人身売買 の被害者 には,過 切 な救済手続 を利用す るためのガイダ ンスが必 要で ある。
2 通報者 の条約6条 に関す る主張 は,十分 に立証 されてお り,本事案 は受理可能で ある と 宣言す る。6条 は,締約 国に,女性 の売買や売 春か らの搾取 を禁止す るためにすべての適切 な 措置 を とるこ とを求 めてい る。当事 国の主張 に は留意す るが,本通報 に添付 された通報者 の聴 取 や報 告 書 に含 まれ る数 多 くの要素 は,IND 担 当者 に通報者が人身売買 の被害者で ある と疑
神奈川ロージャーナル 第4号
わせ るに足 るもので ある。 また,通報者 が経験 した強制売春, レイプ,監禁等 は, オ ランダが 2005年7月27日に締約 国 とな ってい る 「国際 的 な組織犯罪 の防止 に関す る国際連合条約 を補 足す る人 (特 に女性及 び児童) の取 引 を防止 し, 抑止 し及 び処罰す るための議定書 (バ レル モ議 定 書)」 の3条 (a)お よび (b)に よる人 身売 買 の定義 に合致す る。
3 我 々 は,人身売買 とい う犯罪 の性質 と, 教育 がない うえに トラウマをかか えてい る被害 者 が 自 らの経験 を詳細 に報告す るこ との困難 に 照 ら して,INDは通 報 者 の状況 に対 して必 要 とされた相当の注意 をもって行動せず,通報者 が人身売買 の被害者 で ある可能性 を認識す るこ とお よびB9スキームの利用 を含 む権利 を告 げ るこ とを怠 った とい う見解 を有す る。 さらに, 2007年 の当事 国 に対 す る総 括所 見 におい て, 委 員会 は,人身売買 の被害者 が当事 国に協力で きるか香 かにかかわ らず,すべての必要 な便益 を提供 す る よう求 めた こ とを想起す る。
4 選択議定書7条3項 に よ り,本事案 は条 約6条 の違反 に相当す る と認 め,以下 について
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当事 国に勧告す る。
Ⅰ.通報者 に関 して :通報者が実際 に人身売 買 の被害者で あるか どうか を決定す るため の措置 を とり, もしそ うで あれば,バ レル モ議定書6条 に従い保護 を提供す るこ と。
Ⅱ.一般 :国境警備,警察,入 国管理官が人 身売買被害者 を適切 に聴取 し,早い段階で 被害 を特定す るこ とがで きるよ う適切 な訓 練 を実施す るこ と。PTSDを有す る人身売 買被害者 の状況 を考慮 した聴取方法 につい て, ガイ ドライ ンを提供す るこ と。人身売 買被害者 と推定 され る人 を発見 した場合 に, サ ー ビスや カウンセ リングを紹介 し,特別 な保護 を受 けるための手続 に関す る情報提 供 のための要件 を確立す るこ と。
5 最後 に,当事 国 に対 し,選択議定書 の重 要 な 目的 は,意 図 された法 の便益や救済 を女性 が得 るこ とがで きない ような法 システムの弱点 を評価 す る機会 を提供す るこ とにあ る とい うこ とを指摘 してお きたい。
(担当 :近江美保)