Research on the Improvement Methods of Residential Environment in Old Apartment Complex in Beijing
平成 30 年 7 月
王 暁朦
WANG Xiaomeng
中国都市部における高経年住宅団地の住環境改善手法に関する研究 王 暁朦
論 文 要 旨
中 国 で は、 建 国 後 か ら 1990 年 代 ま で 国 が 都 市 住 宅 の 計 画、 建 設、 分 配、 管 理 の 主 体となり、公有住宅として単位(企業・行政機関)を通じて職員に分配された。特に 1980 年代のストックが多いが、1990 年代の都市住宅制度改革によって住民に払い下げ られ、公有住宅の私有化が進んだ。一方、住宅管理の仕組みの整備は遅れ、多くの団地 では住宅管理を担ってきた単位の解体や管理放棄による管理不全に陥った。このため、
建物や設備の劣化と利用秩序の低下とともに、住民の高齢化が進行する高経年住宅団地
(「老旧小区」と呼ばれる)の改善が大きな課題となっている。公共の福祉サービスが 立ち遅れているため、高齢者が自宅で住み続けられる環境づくりが必要であり、特に配 慮が求められる高齢単身・夫婦世帯への対策が急務である。
中国政府は第 12 次五カ年計画(2011 - 2015 年)において国民の居住環境の目標のひ とつに掲げ、北京市では老旧小区のうち 1990 年以前の建設で管理不全の状態にあるも のを対象とし、2012 年から「老旧小区総合整備事業(以下、老旧小区事業)」に着手 している。ただし、住戸の改修は個々の所有者の責任とされ、整備の対象に含まれない。
老旧小区を構成する住宅には、単元式住宅と呼ばれるユニット設計の中層集合住宅が多 く、住戸プランは「小方庁」あるいは「n 室 1 庁」と呼ばれる狭小な形式である。払い 下げ後、住民による住戸内の改装や改修が進んでおり、内装やプランの変更によって居 住性の向上が図られる一方で無理な工事によるトラブルも生じている。
以上の背景から本研究は、建物の高経年化と住民の高齢化が進む中国都市部の集合住 宅団地について、北京市を対象とする調査により、政府による住環境整備事業の動向お よび高齢者世帯の住まい方と住戸改修の実態を明らかにし、今後の住環境改善のあり方 を検討することを目的としている。
序論とする第 1 章では、研究の背景、目的、対象および方法について述べるとともに、
既往研究を概観し、本研究の位置付けを明確にした。
第 2 章では、北京市における住環境整備事業の動向と課題について、まず、市政府の
公開資料・データの収集により老旧小区事業の整備内容と運営体制を分析し、次に、朝 陽区 HB 団地での事業前後の現地観察・インタビュー調査を行い、整備プロセスと住環 境の変化および住宅管理の取り組みを分析した。これにより、老旧小区事業の重点は当 初、管理の停滞による建物劣化の補修と屋外共用部分の原状回復に置かれたが、13 次 五カ年計画期(2016 - 2020 年)から対象団地や整備メニューが拡大し、高齢化対応や 団地管理の自律化にも重点が広がっていること、また、整備プロセスでは、ハード整備 が先行し、続いてソフト対策が進められること、事業運営において団地の居民委員会が 果たす役割は大きく、整備中の工事の安全確保や住民の取りまとめから、整備後の地域 活動の運営や自律管理の検討にまで及んでいることを明らかにした。
第 3 章、第 4 章では、北京市の単元式住宅における高齢者世帯の住まい方と住戸改修 の実態について、大興区 CS 団地で行った高齢者のアンケート調査および住戸改修を行っ た高齢単身・夫婦世帯の訪問調査から、家族構成や住まい方の変化、住戸改修の履歴等 を把握した。まず、第 3 章では、住戸改修によるプラン変更は、「厨房と前室の一体化」
「庁と前室の一体化」「トイレの改造と庁の拡張」「屋と陽台の一体化」「その他」に 整理でき、特に、小方庁住宅では水回り空間と庁の一体的な改修によって、庁の「壁面 の確保」「採光の改善」「面積の拡大」を実現し、高齢者の生活利便や子世帯等との交 流時の快適性を高めていることを明らかにし、住戸面積の狭い単元式住宅において在宅 生活を支える有効な改修手法であることを指摘した。
次に、第 4 章では、子との交流や依存の度合いをもとに高齢単身・夫婦世帯のタイプ を「依存型」「独立型」「中間型」に分け、「依存型」の事例では、子世帯との食事を 中心とした交流空間の充実に重点を置く改修とともに、単身女性の北側寝室や夫婦世帯 の同寝転換が見られ、援助を受ける子世帯への強い配慮や配偶者の体調急変への不安感 が住まい方や住戸改修に表れていること、また、「独立型」の事例では、自身の趣味な どに合わせて拠点空間を充実する改修や、子への配慮よりも、自身のライフスタイルや 快適性を大切にした住まい方を読み取り、世帯のライフスタイルに応じた住まい方や住 戸改修へつなげていく仕組みづくりが重要であることを指摘した。
第 5 章では、高齢者世帯の住戸改修工事のプロセスと課題について、大興区 CS 団地 の住戸改修を行った高齢単身・夫婦世帯、請負工務店、団地管理部局への調査から、改 修工事の発注形態を整理し、改修工事のプロセスと役割分担、また、管理部局のルール との対応を分析した。これにより、改修工事の発注形態は「一括型」「一部分離発注型」
「直営型」に分けられ、施工費が最も安い反面手間も多い「直営型」を選択する世帯が
多く、工事の負担感を強く感じていることを明らかにし、さらに、直営型の改修工事プ ロセスの分析をもとに、高齢者による工事管理の負担軽減と適切な改修の誘導のための 支援策として、管理部局が中心となり、住民と近隣住民及び工務店・専門業者の連携・
調整を図る仕組みを提案した。具体的には、工事前における住民の改修希望の聴取、参 考事例の見学機会の設定、信頼できる業者の推薦、及び改修内容の事前チェックとアド バイス、また、工事中は、管理の補助者の手配や近隣への工事情報を周知するサービス、
工事後は、工事検査にもとづく施主と業者への指導を行うものである。
第 6 章では、各章を通じて得られた知見を総括し、今後の課題を述べた。
目次
第 1 章 序論
1-1.研究の背景
(1) 高経年住宅団地の住環境の悪化 (2) 中国都市部の高齢化の進行
(3) 政府による老旧小区の住環境整備の推進 (4) 単元式住宅の課題と住民による自主改修 1-2.研究の目的
1-3.研究の方法 1-4.調査対象団地
(1)HB 団地 ( 北京市朝陽区 ) (2)CS 団地 ( 北京市大興区 )
1-5.既往研究の総括と本研究の位置付け 1-6.論の構成
1-7.研究の用語と定義 (1) 高経年住宅団地に関する用語 (2) 単元式住宅に関する用語 (3) 高齢者に関する用語 (4) 改修工事に関する用語 補注
参考文献
第 2 章 「老旧小区総合整備事業」の動向と課題
2-1.序
2-2.住環境整備事業の沿革と老旧小区の形成経緯 (1) 不良住宅地区の再開発事業 ―「危旧房改造事業」と「棚 戸区改造事業」
(2) 老旧小区の形成経緯
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2-3.老旧小区事業の整備内容と運営体制 (1) 整備メニューと事業実績
(2) 運営組織
2-4.13 次計画期の事業拡充
2-5.朝陽区 HB 団地の整備プロセス (1) 調査対象団地の概要
(2) 整備内容と住民意識
(3) 居民委員会の役割と団地管理の取り組み 2-6.まとめ
(1) 整備内容と運営体制 (2) 整備プロセス 補注
参考文献
第 3 章 単元式住宅における高齢者世帯の住戸改修の実態
3-1.序
3-2.研究対象と方法 (1) 調査対象住宅の概要 (2) 調査方法
3-3.アンケート調査からみた高齢者の概況 (1) 高齢者の属性と生活状況
(2) 住戸の自主改修と居住意識
3-4.高齢単身・夫婦世帯の住戸改修の実態 (1) 調査対象世帯の概要
(2) 改修によるプランの変更内容 3-5.まとめ
補注 参考文献
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第 4 章 高齢者世帯の住まい方の変化と住戸改修の関係
4-1.序
4-2.寝室と生活拠点の利用 4-3.子との交流と部屋利用 4-4.住まい方と住戸改修との変化
(1) 依存型の事例 (2) 中間型の事例 (3) 独立型の事例 4-5.まとめ 参考文献
第 5 章 高齢者世帯の住戸改修工事のプロセスと課題
5-1.序
5-2.研究対象と方法 (1) 研究の対象 (2) 研究の方法
5-3.改修工事の発注形態と工務店の概要 5-4.住戸改修工事の実態
(1) 調査対象世帯の工事概要 (2) 水回り空間の改修工事の実態 (3) 改修工事のプロセスと役割分担
5-5.管理ステーションの改修規定と監督行為 5-6.まとめ
(1) 住戸改修工事の特徴
(2) 高齢者世帯の住戸改修への支援の仕組みの検討 (3) 今後の課題 --- 福祉関係との連携
参考文献
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第 6 章 結論
6-1.総括 6-2.今後の課題
参考文献一覧 図表リスト 添付資料 関連論文 謝辞
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序論
1-1.研究の背景 1-2.研究の目的 1-3.研究の方法 1-4.調査対象団地
1-5.既往研究の総括と本研究の位置付け 1-6. 論の構成
1-7. 研究の用語と定義
第 1 章 序論
1-1.研究の背景
本研究は、建物の高経年化と住民の高齢化が進む中国都市部の集合住宅団地について、
北京市を対象とする調査により、政府による住環境整備事業の動向および高齢者世帯の 住まい方と住戸改修の実態を捉え、今後の住環境改善のあり方を検討するものである。
研究の背景を以下に示す。
(1) 高経年住宅団地の住環境の悪化
中国では、建国後から 1990 年代まで国が都市住宅の計画、建設、分配、管理の主体 となり、公有住宅として単位注 1)を通じて職員に分配された。特に 1980 ~ 90 年代に建 設されたものが多いが、1990 年代の都市住宅制度改革によって住民に払い下げられ、
公有住宅の私有化が進んだ。
一方、住宅管理の仕組みの整備は遅れ、多くの団地では住宅管理を担ってきた単位の 解体や管理放棄による管理不全に陥った。そもそも建物仕様が低いことに加え、単位に よる住宅管理に慣れた住民は新たに管理費用を負担する意識が薄く、専門の管理会社へ の委託も容易ではない1)。このため、建物や設備の劣化と利用秩序の低下とともに、住 民の高齢化が進行する高経年住宅団地(「老旧小区」と呼ばれる)の改善が大きな課題 となっている。( 図 1-1)
(2) 中国都市部の高齢化の進行
中国の都市部では高齢化の進行が早く、北京市では 2015 年の 60 歳以上人口は 320 万人で総人口の 21.5%を占め、市老齢委員会の推計によれば 2050 年には 650 万人に達 すると見込まれている。1979 年に始まった一人っ子政策によって「421 家庭(両親 4 人・
図 1-1 高経年住宅団地の住環境の劣化
夫婦 2 人・子供 1 人)」と呼ばれる家族構成が増加し、高齢者の扶養問題も深刻である。
中国では、家族の責任で老親を扶養することが社会原則であり注 2)、公共の福祉サー ビスは立ち遅れ、高齢者のニーズに対応しきれない状況にある。老人ホーム等の福祉施 設の数は少なく、料金も高いため、利用できる人は少ない。このため、自宅で住み続け られる環境をいかにつくるかが重要な課題であり、中でも配慮が求められる高齢単身・
夫婦世帯への対策は急を要する。
(3) 政府による老旧小区の住環境整備の推進
中国政府は「国民経済と社会発展第十二個五年間規画綱要」(2011-2015 年)におい て国民の居住環境の向上を目標のひとつに掲げた。これを受けて北京市では、「市 12 次五年間規画」を公表し、「老旧住宅」の安全性の確保と「社区」注 3)管理の推進を都 市発展の目標に掲げた。さらに、2012 年に「北京市老旧小区総合整治工作実施意見」
を出し、老旧小区のうち 1990 年以前の建設で管理不全の状態にあるものを対象として
「老旧小区総合整備事業」に着手している。(表 1-1、図 1-2)
しかしながら、事業予算の制約で建物の安全性の向上や景観の改善に重点が置かれ、
バリアフリー改修等の高齢化対応の整備は進んでいない。もとより、住戸の改修は個々 の所有者の責任とされ、整備の対象に含まれない。
12 次五カ年計画 13 次五カ年計画
都市建設 の目標
中国的特色を持つ世界都市 (中国語:中国特色的世界城市)
国際一流レベルで調和のとれた住みやすい都市 (中国語:国际一流宜居城市)
インフラ施設 の建設・整備
・公共交通の建設
・水源・ガス・電力の確保
・インターネット配線の設置
・利便性・住みやすさの向上
・都市環境の全面整備
・重点的な地域にインフラ施設の補充建設
住宅政策
・「保障性住宅」の建設と分配制度の透明化
・公共賃貸住宅制度の策定
・「老旧住宅」に対して安全面の改善
・棚戸区の整備
・公共賃貸住宅建設の推進
・所有権共有住宅 ( 自住型商品房 ) の建設
「社区」管理 ・住民自治管理の推進
・住民交流の促進
・高齢者の持続居住を支える「社区」レベルでの 支援制度の整備
・管理モデルの試行
・「社区」内交流空間の整備
・知能情報処理のシステムの構築
・「社区」管理に向けの人材育成 表 1-1 北京市 12・13 次五カ年計画における都市建設・整備に関する政策の変化 5)6)
(4) 単元式住宅の課題と住民による自主改修
老旧小区を構成する住宅には、単元式住宅と呼ばれるユニット設計の中層集合住宅が 多く見られる。統計資料によれば、2015 年における北京市の住宅団地の約半数(1,580 団地)が 1990 年以前の建設であり2)、また、全住宅の総床面積約 59 千万㎡ 3)のうち 1981 ~ 1990 年に建設されたものが約 8%(約 5 千万㎡ )2)を占め、そのうちほぼ半数が 多層煉瓦造単元式住宅である。4)
これら 1980 年代に大量建設された単元式住宅の住戸平面型は「小方庁」あるいは「n 室 1 庁」と呼ばれる形式である7)。1960 〜 1970 年代初期に考案された標準設計プラン だが、大量供給のために住戸規模を制限する中国政府の方針に適合し、面積削減と餐庁 確保を果たすものであった8)。(図 1-3)
このため、公有住宅の払い下げ後、住民による住戸内の改装や改修が進んでおり、内 装やプランの変更によって居住性の向上が図られている。一方で、無理な工事による耐 震性の低下や配管・配線のトラブルも生じており、適切な誘導が必要である。また、高 齢者世帯による改修工事の運営は負担が大きく、支援の仕組みが求められる。
図 1-3 単元式住宅の標準設計プランの例27)28)
図 1-2 「北京市老旧小区総合整備事業」の実施(http://www.cnr.cn/)
「9014 単元 ( 北京 1960 年代 )」 「701 乙3(1973 年 )」
1-2
.研究の目的
以上の背景から、本研究では、中国都市部における高経年住宅団地における住環境整 備事業の動向及び高齢者の住い方と住戸改修の実態について、以下の 3 つの研究課題を 設定する。
第一の研究課題は、北京市における住環境整備事業の動向と課題を明らかにすること である。これについて、まず「老旧小区総合整備事業 ( 老旧小区事業 ) )」12 次計画期
(2011-2015)における老旧小区事業の整備メニューと運営組織および 13 次計画期(2016- 2020)における拡充内容について整理する。次に、事業実施地区での事業前後の現地観察・
インタビュー調査を行い、整備の実施プロセスと前後の住環境変化および住宅管理の取 り組みを把握する。これらより、老旧小区事業の動向を整備内容や運営体制の推移及び 整備プロセスから捉え、その特徴と課題を明らかにする。
第二の研究課題は、北京市の単元式住宅における高齢者世帯の住まい方と住戸改修の 実態を明らかにすることである。単元式住宅の大量建設期に形成された北京市の高経年 住宅団地を対象に調査を行い、高齢単身・夫婦世帯の住まい方と住戸改修の特徴を明ら かにし、在宅生活を支える環境整備のあり方について考察する。さらに、高齢者の住ま い方や子世帯との交流と住戸改修との関係を解明することで、高齢期の在宅生活におけ る住要求に応じた住宅改修のあり方について考察する。
第三の研究課題は、高齢者世帯の住戸改修工事のプロセスと課題を明らかにすること である。これについて、住戸改修を行った高齢者世帯へや内装工事業者、団地管理会社 への住戸改修工事における団地管理会社のルールとの対応、内装工事業者と高齢世帯と の役割分担に注目し、改修工事のプロセスの実態と課題を捉える。さらに、今後必要と される高齢者世帯の住戸改修を支援する組織、プロセス、連携手法の可能性について検 討を行う。
本研究は、以上の研究課題を解明し、中国都市部における高経年住宅団地の住環境改 善のあり方を検討することを目的とする。
1-3
.研究の方法
本研究は、資料収集、アンケート調査、現場観察調査、住戸内訪問調査及びそれらの 分析よりなり、研究課題によって方法を使い分けている。以下に各章の研究方法を示す。
第 2 章では、「老旧小区総合整備事業」の動向と課題について、まず、北京市人民代 表大会常務委員会・市人民政府・各区政府ウェブサイトに公開された政策・意見・工作 報告の収集を行い、12 次計画期(2011-2015)における老旧小区事業の整備メニューと 運営組織および 13 次計画期(2016-2020) における拡充内容について整理した。 次に、
事業実施地区(朝陽区 HB 団地)での事業前後の現地観察・インタビュー調査(2014 年、
2017 年、2018 年) を行い、 整備の実施プロセスと前後の住環境変化および住宅管理の 取り組みを捉え、最後に、事業の特徴と課題を指摘した。
第 3 章及び第 4 章では、 単元式住宅における高齢者世帯の住まい方と住戸改修につ いて、大興区 C S 団地を対象とし、まず、居民委員会から入手した資料をもとに建設概 要と主な維持管理の履歴について整理し、 併せて、 居民委員会を通じて調査協力が得 られた住宅改修経験のある高齢者世帯 13 戸(高齢単身 5 戸、高齢夫婦 7 戸、同居 1 戸)
を訪問して予備調査を行った(2015 年 5 月〜 8 月)。次に、調査対象住宅に住む高齢者 201 人への街頭対面アンケート調査を行い、生活の概況や住宅改修の実績、将来意向等 を 把 握 し た(2015 年 9 月 〜 10 月)。 さ ら に、 高 齢 単 身・ 夫 婦 世 帯 に 重 点 を 置 き、 予 備 調査世帯と追加世帯 14 戸(高齢単身 3 戸、 高齢夫婦 11 戸) の計 27 戸を対象に訪問調 査を行い、住戸の内観記録とインタビューによる家族構成や住まい方の変化、住戸改修 の履歴等を把握した(2015 年 12 月〜 2016 年 1 月)。このうち高齢単身・夫婦世帯 26 戸 について分析を行い、住まい方と住戸改修との関係と捉え、高齢者の住要求に応じた住 戸改修のあり方について考察した。
第 5 章では、 高齢者世帯の住戸改修工事のプロセスについて、 第 3 章と同じく、C S 団地の高齢単身・夫婦世帯 26 戸の訪問調査結果に加え、改修工事を請負った工務店 (3 店 ) や団地管理を行う物業管理会社へのインタビューと資料収集を行い、住戸改修工事 の実態を把握した。次に、訪問調査世帯の 1 世帯から入手した工事スケジュールのメモ をもとに、改修工事のプロセスと関係者の役割を整理、考察し、高齢者世帯の住戸改修 の支援のあり方について検討した。
1-4.調査対象団地
(1)HB 団地 ( 北京市朝陽
区 )
第 2 章における老旧小区事業の整備 プロセスと前後の住環境変化および住 宅管理の取り組みについて、北京市朝 陽区の H B 団地を対象に観察・インタ ビュー調査を行った。朝陽区は、都心 部の東に位置する直轄区であり、1950 年代から工業開発が進んだ。多くの工 場建設とともに、労働者のための公有 住宅も大量に供給され、現在、その多 く が 老 旧 小 区 事 業 の 対 象 と な っ て い
る9)10) 。H B 団地は、23 の単位の元社
宅で構成され、それぞれフェンスや壁 で囲まれた「組団」注 4)となっている。
1990 年 前 後 に 各 単 位 か ら 住 宅 が 住 民 に 払 い 下 げ ら れ、H B 団 地 の 全 住 宅 が 私有化した。その後、ほとんどの単位 が倒産・合併・分社化したが、組団の 領域は変わらず、それぞれが管理が停 滞した状態になっている。 このため、
2014 年 11 月 (12 次 計 画 期 ) に 老 旧 小 区事業の対象として指定され、事業が 実施されている。( 図 1-4)
(2)CS 団地 ( 北京市大興区 )
第 3、4 の 単 元 式 住 宅 に お け る 住 民 の自主改修状況と住まい方の変化、ま た、第 5 章の改修工事の内容とプロセ ス に つ い て、1980 年 代 に 大 量 建 設 さ れた住戸プランである「小方庁」型や「n
室 1 庁」 型7) を 持 つ、 北 京 市 郊 外 の 図 1-4 HB 団地 ( 朝陽区 )
CS 団地を調査対象とした。
C S 団 地 は、 北 京 市 の 中 心 部から南約 20k m に位置し、
国 営 石 油 企 業 か ら 分 社 し て 1985 年 に 設 立 さ れ た 企 業の社宅団地である。団地 に は 中 層 集 合 住 宅 が 65 棟 あり、居民委員会の資料に よ れ ば、2015 年 の 世 帯 数 は約 3,200 世帯、 人口は約 9,500 人 で あ る。 こ の う ち 60 歳以上の人口は約 1,900 人 で あ り、 全 体 の 2 割 を 占 め る。 調 査 対 象 住 宅 は、
当 団 地 の 開 発 初 期 で あ る 1985 ~ 88 年 に 建 設 さ れ た 一般職員向けの単元式住宅 30 棟 で あ る。 こ れ ら は 職 員 住 宅 18 棟(648 戸 ) と
老 職 員 住 宅 12 棟(360 戸 ) に 分 か れ、 前 者 は 勤務年数の短い職員に分配される「小方庁」住 戸 か ら 成 る 4 階 建 て の 住 棟 で あ り、 後 者 は 10 年以上勤務するベテラン職員(「老職員」 と呼 ばれる)に分配される「2 室1庁」住戸を主と する 5 階建ての住棟である注 5) 。どの住棟もレ ンガ造で内壁はプラスター仕上げである。
社宅管理の変遷は、社宅が職員に分配された 後、 都 市 住 宅 制 度 改 革 に よ っ て 1998 年 か ら 払 い 下 げ が 始 ま り、2005 年 に 住 宅 所 有 権 証 書 が 購 入 世 帯 に 発 行 さ れ た。 住 棟 の 維 持 管 理 は 当
初、企業の管理部門が直接行っていたが、払い 図 1-5 CS 団地 ( 大興区 )
下げと同時に管理部門を分離して物業管理会社が設立され、以降はこの物業管理会社注
6)が住棟の屋根・外壁や共用部分の修繕を行っている。なお、当団地は物業管理が行わ れているため、老旧小区事業の対象には位置づけられていない。( 図 1-5)
1-5.既往研究の総括と本研究の位置付け
本研究の 3 つの研究課題を、住環境整備事業の動向、単元式住宅における高齢者世帯 の住まい方と住戸改修の実態、高齢世帯の住戸改修工事のプロセスに関連する既往研究 と位置付けを以下に述べる。
まず、 住環境整備事業の動向について、 中国都市部の住宅市街地の改善事業を取り 扱った研究は、日本では不良住宅地区の再開発事業に関するものが多い。方らは、1990 年以降の上海市における市街地再開発事業の仕組みについて、従前居住者転出方式と再 入居方式を比較分析し、 後者の優位性と事業推進における課題を明らかにした。11)浜 本らは、北京市崇文区の危旧房事業の調査を行い、事業プロセスと住民生活の変容の実 態を明らかにし、 弱者救済に重点を置いた政策改善案を提起した。12)菅野は、 長春市 における不良住宅地区の調査より、1997 年から 2007 年の間に不良住宅地区の分布は都 心部で激減する一方、郊外のスプロール地区や元農村地区(城中村)で増加しているこ と、また、不良住宅地区におけるゴミ収集等の社会サービスは改善されているが、下排 水や道路等のインフラ整備は立ち遅れていることなどを明らかにした。13)14)中国内では 近年、高経年住宅団地の住宅改修手法や共用空間の活用等を提案する研究が多く見られ
15)16)
、また、住宅管理に関する研究では、高経年住宅団地に対応する物業管理モデルの 提案や住民自律管理の問題点を指摘するものが見られる1)17)。老旧小区事業については、
諸整備の実施成果や計画案に関する報告が増えつつある。
次に、単元式住宅における高齢者世帯の住まい方と住戸改修の実態については、中国 の都市住宅における高齢者居住に関する研究として、曹らは高齢者の生活様態を捉え、
住戸内では自身の要求に応じて使いこなしや物理的改造を工夫していることを明らかに し18)、 林らは高齢者夫婦の就寝様態と居場所の拠点や夫婦の接点の取り方等との関連 を明らかにしている19)。 朴らは給付住宅に住む高齢者の住宅改修や高齢期に向けた居 住空間の対応に関する課題を指摘している20)。 また、 中国の集合住宅の改修手法を取 り扱った研究として、 周らは住宅の内装工事を規制する制度の変遷と実施された内装 工事の工事箇所等の特徴を分析している21)。金らは自力内装と精内装の特色を分析し、
自力内装が中国で主な市場を占める要因を指摘している22)。 湯らは都市住宅制度改革 を機に建て替えられた社宅団地を対象として社宅分配システムの影響と世帯構成の変化 に注目して住まい方の特徴を分析し、住環境の課題を指摘している23)。
さらに、高齢者世帯の住戸の改修工事のプロセスに関して、家装工事また改修工事の プロセスを研究対象として、 周らは北京市の集合住宅における家装工事を研究対象と
し、家装工事の実施項目の相違による居住者の実現度と満足度の相違を明らかにし24)、 張らは北京市で小規模の内装工事を実際に設計施工すること通して、日本との比較にお いて現代北京の内装工事の特異点を明らかにした25)。
以上の既往研究は、中国都市部の住宅市街地の改善事業を取り扱った研究、高経年住 宅団地の住宅改修手法や共用空間の活用等を提案する研究、都市住宅における高齢者居 住に関する研究、集合住宅の改修手法を取り扱った研究、家装工事また改修工事のプロ セスに関する研究であり、住宅団地の住環境改善手法について、住宅団地の「高経年化」
と住民の「高齢化」という二つの「老い」の問題に対応する研究はなされていない。
本論文は、「老旧小区総合整備事業」の動向を整備内容や運営体制の推移及び整備プ ロセスから捉え、その特徴と課題を明らかにし、次に、高齢化の進む都市部に位置する 大量供給期の単元式住宅を対象に、高齢者の住まい方や子世帯との交流と住戸改修との 関係を解明することで、高齢期の在宅生活における住要求を捉え、中国の都市住宅の環 境整備のあり方を考察し、さらに、内装工事業者と高齢世帯との役割分担に注目し、改 修工事のプロセスの実態と課題を明らかにするとともに、老旧小区事業をいかに継続・
発展させるか、高齢者世帯の在宅生活を支える環境整備手法のあり方、また、必要とさ れる高齢者世帯の住戸改修を支援する組織、プロセス、連携手法の可能性について検討 を行うものである。
1-6 論の構成
本論文は、序論、本論及び結論の 6 つの章より構成されている。( 図 1-6)
序論とする第 1 章では、研究の背景、目的、対象および方法について述べるとともに、
既往研究を概観し、本研究の位置付けを明確にしている。
本論は、第 2 章、第 3 章、第 4 章、第 5 章の 4 つの章より構成され、序論において設 定した 3 つの課題について調査・研究資料を活用した詳細な分析と結果について論述し ている。
第 2 章では北京市における住環境整備事業の動向と課題について、まず、北京市政府 の公開資料・データの収集より老旧小区事業の整備内容と運営体制を分析し、12 次計 画期整備メニューと事業実績、事業の運営組織、13 次計画期の事業拡充を明らかにした。
加えて、北京市朝陽区の H B 団地での調査をもとに、老旧小区事業の整備プロセスと前 後の住環境変化および住宅管理の取り組みを捉え、整備内容と住民意識、居民委員会の 役割と団地管理の取り組みに注目した分析を行い、事業の整備プロセス、住民評価およ び今後の課題について明らかにした。
図 1-6 本研究のフロー
第 3 章、第 4 章では C S 団地に行った調査結果を用い、北京市の単元式住宅における 高齢者世帯の住まい方と住戸改修の実態と課題について論じた。第 3 章では、まず、ア ンケート調査からみた高齢者の概況を整理した。特に、高齢者の属性と生活状況、住戸 の自主改修と居住意識を詳細に分析し、単元式住宅に住む高齢者世帯の特徴を明らかに した。また、高齢単身・夫婦世帯の住戸改修の実態の分析を行い、改修によるプランを 分類し、それぞれの特徴を示した。第 4 章には、高齢者世帯の住まい方の変化と住戸改 修の関係について分析した。まず、高齢単身・夫婦世帯の住まい方について寝室と生活 拠点および子との交流時の部屋利用を捉え、高齢者世帯が単元式住宅の各空間の利用状 況を明らかにした。続いて、子との交流や依存の度合いに着目し、事例を選んで高齢者 の住まい方の変化と住戸改修との関係を考察し、調査対象世帯を、子の援助に依存性の 強さから 3 つのタイプを分け、住まい方の変化と住戸改修との関係について事例考察を 行った。以上の結果を踏まえ、単元式住宅における高齢者世帯の在宅生活を支える環境 整備のあり方を指摘できた。
第 5 章では、単元式住宅に住む高齢者の住戸改修工事のプロセスの実態と課題を明ら かにするために、C S 団地の住戸改修を行った高齢者世帯への調査をもとに、住戸改修 工事における団地管理会社のルールとの対応、内装工事業者と高齢世帯との役割分担に 注目した。まず、改修工事の発注形態と工務店の概要を整理し、高齢世帯の改修工事概 要、水回り空間の改修工事の実態、改修工事のプロセスと役割分担について捉えた。加 えて、団地管理ステーションの改修規定と監督行為の分析を行い、住戸改修工事の特徴 を明らかにし、高齢者の住戸改修の支援手法について検討した。
1-7 研究の用語と定義
(1) 高経年住宅団地に関する用語
「不良住宅地区の再開発事業」
1990 年以降、都心部の旧市街地を中心に再開発事業である「危旧房改造事業」( 以下、
危改事業 ) を大規模に実施し、都市インフラ整備と土地の高度利用を図った12)。さらに、
2013 年に国務院は「棚戸区改造事業」 を推進する意見 ( 国務院関与加快棚戸区改造工 作意見 )、危改事業を「棚戸区改造事業」に移行し、都心部や元農村(城中村)に分布 する棚戸区を主な対象として実施している。
「小区」
「中国都市居住区計画設計基準」 によれば、「小区」 とは、 集合住宅を形成して、 人 口 1 万∼ 1.5 万人程度の住宅団地と定義する。本研究では「老旧小区」、「老旧小区事業」
また組織の名称以外、「小区」のことを「団地」と記述する。
「単位」
「単位」とは、企業・行政機関等の組織を指す。市場経済導入前の中国では、これら の単位は公的な組織であり、給与を支払うのみではなく、住居・教育・医療等の様々な 社会福祉面での保障も担っていた。1980 年代以降、 国有企業の大多数が赤字経営とい う状況で、大量の「単位」で合併・解体・倒産が生じた。
「社区」
中華人民共和国政府(民政部)の定義によれば、「社区」とは、①一定の地域に住む人々 によって構成され、②改革を通じて規模を調整した居民委員会の管轄区、のこととされ ている。中国では 2000 年前後をピークに、全国的に都市部の基層行政単位である街道・
居民委員会レベルでの行政区画の再編が行われたが、その最も基礎的な単位である居民 委員会の管轄範囲を、「コミュニティ」の学術概念をベースに再設定した。その背景には、
従来の職場(「単位」)を基盤とした都市住民管理や社会保障サービスが立ち行かなくな ったことがあげられる。
「組団」
中国では、団地 ( 小区 ) は複数の「組団」から構成される。1 つの組団は人口 1 千∼ 3 千人程度の規模である。各組団内にはそれぞれの共用空間・施設が設置されている。本 研究で対象とする H B 団地では、かつて「単位」の社宅地であったものが現在組団とな っている。
「居民委員会」
居民委員会とは、 中華人民共和国において都市地域社会に設置された住民組織であ る。日本の町内会にあたり、住民の相互扶助組織として「大衆的自治組織」と性格づけ られる一方、行政系統の末端に位置付けられて、政府の保護を受けながら行政補助機能 を担っている。「都市居民委員会組織法」によると「自己管理、自己教育、自己奉仕の 末端大衆自治組織」と定義される。注 7)
(2) 単元式住宅に関する用語
「単元式住宅」
中国の都市部では、建国後から 1990 年代まで住宅を大規模に建設する都合上、設計 システムを簡略化し、設計の速度を高め、構造や建築部品を統一し、施工の効率をあげ るため、1つの住棟がいくつかの階段室を共有するブロックに分けることになる。この 1つのブロックが単元と言われている。7)
「小方庁」型
これらの住戸プランは玄関部に置かれた「小方庁」や「門房」と呼ばれる小空間とそ れに繋がる 2 ~ 3 の居室 ( 屋 ) で構成される。 プランの原型は 1960 年代に開発されて いるが、1980 年代の都市住宅需要の逼迫に対して建設量確保のために住戸規模を制限 する政策が行われた際、面積削減と餐庁確保を果たすプランとして数多く建設された。
(3) 高齢者に関する用語
「高齢者世帯」
高齢者の規定を中国で用いられる年齢 60 歳以上とし、60 ~ 74 歳を前期高齢者、75
歳以上を後期高齢者として区分する。
「生活拠点」
生活拠点は高齢者が住戸内に長い時間滞在する場所としてすみの中心であり、年長慣 れ親しんだ物で溢れ、その人らしい個の空間としての身の置きどころと定義される。
(4) 改修工事に関する用語
「工務店」
本研究でいう「工務店」とは、施工隊と呼ばれる家庭内装工事を主にしている施工組 織であり、個人で経営する場合が多く、工事費用が低くて、よく単元式住宅の改修工事 に利用される。
「専門業者」
戸内空間になされた装飾、インテリアデザイン及び室内用品の備え付け、飾り付けと かかわった内装部品の専門店である。
【補注】
注 1)「単位」とは、企業・行政機関等の組織を指す。市場経済導入前の中国では、これらの単位は公的な 組織であり、給与を支払うのみではなく、住居・教育・医療等の様々な社会福祉面での保障も担っていた。
1980 年代以降、国有企業の大多数が赤字経営という状況で、大量の「単位」で合併・解体・倒産が生じた。
注 2) 中華人民共和国老人権益保障法(1996 年)では、成年の子どもが父母を扶養する義務を有すること(家 族扶養)を規定している。また、北京市民政部では 2009 年に「介護施設の発展の促進に関する意見」を発表し、
2020 年までに 90%の高齢者が社会的な支援システムを利用しながら家族介護を維持し、6%の高齢者が社区の 有料の在宅サービスを利用し、4%の高齢者が高齢者介護施設に入所するという、「9064」と呼ばれる介護方 式を示しており、家族扶養の原則のもとで社会福祉制度がつくられている。
注 3) 中華人民共和国政府(民政部)の定義によれば、「社区」とは、①一定の地域に住む人々によって構 成され、②改革を通じて規模を調整した居民委員会の管轄区、のこととされている。中国では 2000 年前後 をピークに、全国的に都市部の基層行政単位である街道・居民委員会レベルでの行政区画の再編が行われた が、その最も基礎的な単位である居民委員会の管轄範囲を、「コミュニティ」の学術概念をベースに再設定 した。その背景には、従来の職場(「単位」)を基盤とした都市住民管理や社会保障サービスが立ち行かな くなったことがあげられる。(https://ja.wikipedia.org/wiki/ 社区 )
注 4) 中国では、団地 ( 小区 ) は複数の「組団」から構成される。1 つの組団は人口 1 千∼ 3 千人程度の規模 である。各組団内にはそれぞれの共用空間・施設が設置されている。本研究で対象とする HB 団地では、か つて「単位」の社宅地であったものが現在組団となっている。
注 5) これらの住戸プランは玄関部に置かれた「小方庁」や「門房」と呼ばれる小空間とそれに繋がる 2 ~ 3 の居室 ( 屋 ) で構成される。プランの原型は 1960 年代に開発されているが、1980 年代の都市住宅需要の 逼迫に対して建設量確保のために住戸規模を制限する政策が行われた際、面積削減と餐庁確保を果たすプラ ンとして数多く建設された。参考文献 7)、27)、28)。
注 6) 不動産の総合的な管理業務を行う専門管理会社。参考文献 26)。
注 7) 國谷知史・奥田進一・長友昭編集『確認中国法用語 250WORDS』(2011 年)成文堂(「居民委員会」の 項、執筆担当;國谷知史)
【参考文献】
1) 陳瑩 , 周俊:単位制老旧住宅区物業管理模式研究, 中国房地産 ( 学術版 ), 2017 年 4 期 2) 王 朝.城市旧住宅改造規画設計策略研究.[ 碩士学位論文 ].清華大学建築系 ,2011 3) 北京市統計局.北京市 2015 年“十二五”時期国民経済と社会発展統計公報.2016 4) 胡 世徳.展望 90 年代北京住宅建設.建築経済 ,1992(10):14 ~ 18
5) 「北京市国民経済・ 社会発展第 12 次5ヵ年計画要綱 (2016-2020)」北京市人民政府 2016 年 6) 「北京市国民経済・ 社会発展第 13 次5ヵ年計画要綱 (2016-2020)」北京市人民政府 2016 年
7) 王 青:天津市の単元式住宅における住様式に関する研究ー中国都市住宅における住様式の研究,日本 建築学会計画系論文報告集 , 第 479 号 ,pp77 ~ 85,1996.1
8) 友清 貴和:庁型住宅の発展過程と庁の役割―中国の都市住宅に関する研究,日本建築学会計画系論文 集 , 第 458 号 ,pp.53 ~ 61,1994.4
9) 北京市統計局:「北京区域統計年鑑- 2016」,中国統計出版社,2016 10) 北京市朝陽区政府ホームページ http://www.bjchy.gov.cn/
11) 方明,土井幸平,赤崎弘平 , 中国における従前居住者再入居方式による旧市街地再開発事業 ( 上海市 静安区の事例調査から ),日本建築学会計画系論文集,第 536 号,171 ∼ 176,2000 年 10 月
12) 浜本篤史,吉富拓人,出和暁子,真野洋介 , 中国における近代的住居への移行と住民生活の変容 ( 北 京市崇文区危旧改造事業を事例として ),住宅総合研究財団研究論文集 NO.31, 2004 年
13) 菅野博貢:中国長春市における不良住宅地区の類型別分布と面積の変化 (1997 年から 2007 年に至る 10 年間の中国・長春市不良住宅地区における居住環境の変容 その 1),日本建築学会計画系論文集,第 75 巻,
No611,pp1481 ∼ 1490,2010 年 6 月
14) 菅野博貢:中国長春市における不良住宅地区の類型別住宅環境の変化 (1997 年から 2007 年に至る 10 年 間の中国・長春市不良住宅地区における居住環境の変容 その 2),日本建築学会計画系論文集,第 76 巻,
No663,pp929 ∼ 938,2011 年 5 月
15) 曲直:城市老旧住宅改造設計研究,清華大学 博士論文,2011
16) 傅岳峰,戴儉,惠暁曦:基于原公有住房改造的城市片区更新方法研究——以北京西城区三里河街区的住宅 更新為例,城市建築,2009 年 02 期
17) 張磊,劉麗敏:物業運作-従国家中分離出来てき新公共空間 ( 国家権利過度化与社会権利不足之間的張 力 ),社会,2005 年 01 期
18) 曹文燕 , 長澤泰 , 山下哲郎 : 天津市中層集合住宅団地に住む高齢者の生活 様態とその特性 , 中国都 市部の高齢化に対応する集合住宅の建築計画の研究 , 日本建築学会計画系論文集 , 第 490 号 , pp.73-81, 1996.12
19) 林文潔 , 西村伸也 : 中国大連市・ハルビン市集合住宅に住む高齢者夫婦の住まい方の特徴 , 都市在宅 高齢者の住空間計画に関する研究 , 日本建築学会計画系論文集 , 第 599 号 , pp.1-7, 2006.1
20) 朴美玉 , 佐藤栄治 , 三橋伸夫 : 中国上海市の給付住宅に住む高齢者の自宅生活の継続性 , 日本建築学 会技術報告集 , 第 19 巻 , 第 43 号 , pp.1049-1054, 2013.10
21) 周曉紅 :1 次工事の竣工標準と家装工事の管理規定の変遷が家装工事に与える影響 , 日本建築学会計画 系論文集 , 第 592 号 , pp.1-8, 2005.6
22) 金萍 , 小倉暢之 : 中国瀋陽市集合住宅における自力内装に関する研究 , 日本建築学会九州支部研究報 告第 48 号 , pp.165-168, 2009.3
23) 湯璐璐 , 森傑 , 野村理恵 : 中国の都市住宅制度改革を機に建替えられた社宅団地における居住環境 の課題 , 住まい方と自主的改修の実態に注目して , 日本建築学会計画系論文集 , 第 77 巻 , 第 677 号 , pp.1553-1562, 2012.7
24) 周 暁紅 , 吉田 哲 , 宗本順三 , 周燕ミン , 家装工事の特徴と居住者からみた実現度・満足度の研究 - 北京市の集合住宅における家装工事の研究 -, 日本建築学会計画系論文集 , 第 575 号,1 − 5,2004 年 1 月 25) 張 永和,高山 正行,海 日汗,戴 長靖,現代北京における内装工事の実態研究―日本との比較を 通して―,住宅総合研究財団研究論文集 NO.31,2004 年
26) 鞏従容 , 菊地成朋 : 中国の都市住宅制度改革に伴う住宅管理体制の変化に関する研究 , 日本建築会計 画系論文集 , 第 573 号 , pp.9-15, 2003.11
27) 清華大学住宅教研組:城市型住宅類型参考図集 , 清華大学印刷発行組 ,1961
28) 国家建委建築科研究院建築情報研究所:住宅設計実例図集 , 第 7314 号内部資料 ,1974
「老旧小区総合整備事業」の動向と課題
2-1. 序
2-2. 住環境整備事業の沿革と老旧小区の形成経緯 2-3. 老旧小区事業の整備内容と運営体制
2-4. 13 次計画期の事業拡充 2-5. 朝陽区 HB 団地の整備プロセス 2-6. まとめ
第 2 章 「老旧小区総合整備事業」の動向と課題
2-1.序
近年、 中国都市部における住宅市街地の整備は、 従来の不良住宅地区の再開発事業
注 1)に加え、「老旧小区」注 2)と呼ばれるかつて公有住宅であった高経年住宅団地の住環
境整備にも重点を広げており、 その動向が注目される。12 次計画期 (2011 ∼ 2015) 中の 2012 年に北京政府は「北京市老旧小区総合整治工作実施意見」 を出し、 老旧小区のう ち 1990 年以前の建設で管理不全の状態にあるものを対象として「老旧小区総合整備事 業」( 以下、老旧小区事業 ) に着手した。
本章では、まず、北京市政府の公開資料・データの収集注 3)を行い、北京市における 住環境整備事業の沿革と老旧小区事業に形成経緯を明らかにした。続いて、老旧小区事 業を注目し、12 次計画期(2011-2015)における整備メニューと運営組織および 13 次計 画期(2016-2020) における拡充内容について整理した。 次に、 事業実施地区(朝陽区 H B 団地)での事業前後の現地観察と住民・居民委員会へのインタビュー調査(2014 年、
2017 年、2018 年) を行い、 整備の実施プロセスと前後の住環境変化および住宅管理の 取り組みを捉え、最後に、事業の特徴と課題を指摘した。
2-2. 住環境整備事業の沿革と老旧小区の形成経緯
(1) 不良住宅地区の再開発事業 ---「危旧房改造事業」と「棚戸区改造事業」
北京市では 1990 年以降、不良住宅地区の改善について、都心部の旧市街地を中心に 再開発事業である「危旧房改造事業」( 以下、危改事業 ) を大規模に実施し、都市イン フラ整備と土地の高度利用を図った注 4)。住民の居住権保障や事業の公正性・透明性な どについて多くの問題を指摘されながらも、制度変更を重ねて不良住宅地区整備の主要 事業として推進してきた。さらに、中国政府は「国民経済と社会発展第十二個五年間規 画綱要(2011-2015 年)」(以下、12 次五カ年期)において、都市や農村部での住環境改 善の推進を掲げた。これに伴い、北京市では 2013 年から危改事業を「棚戸区改造事業」
( 以下、棚改事業 ) に移行し、都心部や元農村(城中村)に分布する不良住宅地区を主 な対象として実施している。(図 2-1、表 2-1)
まず、棚改事業の沿革を整理するため、その前身である危改事業からの変遷を文献資 料などをもとにたどる。 危改事業は 1987 ∼ 2012 年に実施されているが、 事業の対象や 整備内容、 運営体制から大きく 3 期に分けられる。 棚戸区事業への移行後(2012 年∼)
を 4 期とし、各期の特徴を以下にまとめる。( 表 2-2)
図 2-1 左:「老旧小区事業」地区の例 ( 北京・豊台区盧溝橋北里小区 ) http://rollnews.tuxi.com.cn/zjj/132587609fqz173620.html 右:「棚戸区事業」地区の例 ( 北京朝陽区化石営地区 )
http://www.wenxuecity.com/news/2016/09/01/5558187_print.html
試行段階 1987 ∼ 1990 年
推進段階 1990 ∼ 1999 年
連携段階 2000 制度創設年度 2011 年
根拠・法令等
① 1991 年「関于危旧 房改造現場弁公会会議 紀要」京政発1991 19 号
② 1994 年「関于進一 歩加快城市危旧房改造 若干問題報告」京政発 1994 44 号
① 2000 年「北京市加快城市危旧房 改造実施弁法( 試行)」京政発2000 19 号
② 2001 年「北京市城市房屋立退管 理弁法」京政発2001 87 号
③ 2003 年「北京旧城歴史文化保護 区房屋保護和修繕工作若干規定( 試 行) 的通知」京政発2003 65 号
④ 2004 年「関于加強北京旧城保護 和改善居住住房工作有関問題的通知
」京政発2004 14 号
「北京市人民政府関于加快棚戸区改造 和環境政治工作的実施意見」京政発 2014 18号
目的
居住環境の改善・居住水準の向上を図 る一方、都市インフラ・公共施設を充 実する。
実行者/所管 市・区政府と関連部局/棚戸区改造と
環境整治領導小組(市重大弁所属)
対象地域 棚戸区・伝統的民家・農村不良住宅
採択条件 (番号は根拠・
法令を対応する
。)
1987 年に4 地区 ( 菊児胡同・小 後倉・東南園・
郭荘北里) をモ デル事業として 決定した。
① 1991 年、37 地区を 選定した。敷地面積は 約360ha で、危旧住房 の延床面積が160 万㎡
である。
② 1994 年、「市危改 弁公室」が選定した77 地区以外、各区範囲内 の対象地区が区政府に 決められた。
① 2000 年、モデル事業としては5 地区が選定された。
② 2001 ~ 2002 年、「房改帯危改
」実施方法が本格実施され、50 対象 地区が決められた。
③④ 2003~2005 年、54 地区の文化 保護対象地区が選定された。
明文化された採択条件はなく、居住空 間が狭小過密で、住宅設備に欠陥があ り、火災や浸水の不安がある地区や住 宅が選ばれる。
事業内容
・棚戸区の整備・再開発。
・保存価値がある平屋の修繕。
・農村不良住宅の建て替え。
・対象地区及び周辺のインフラ整備。
実施状況
147 地区の不良 住宅地が整備さ れた。
333 地区の事業対象が 選定され、延床面積499 万㎡の不良住宅がクリ アランスされ、18.45 万世帯の住民が移転し た。
2001 ∼ 2002 年の間に50 地区で事業 が実施され、9.3 万世帯が地区外に 移転した。
2003 ∼ 2005 年54 地区の「文化保護 区」が選定された。
2005 年から年間5.8 億元が提供され
、当年度の「危改事業」の資金であ る。
2008 年以降、毎年1~2 万世帯が移転 されるように推進した。
2014∼2015年に191地区が選定され、約 1万世帯が住み替えた。
2016年に139地区が選定され、3万世帯 が住み替えた。
2017年に128地区が決定され、3万6千 世帯の立退き契約が済んだ。
事業名
危旧房改造事業(「危改事業」)
棚戸区改造事業(旧:危旧房改造事業) 2014年6月∼
危険・老朽の居住環境に住む住民が近代的な集合住宅へと移り、以前より広い スペース、安全で快適な居住空間を享受する。
市・区政府、各部局、各関連企業、各大学及び研究機関/危旧房改造事業弁公室 不良住宅地区
・各区政府が事業対象地区を選定する。
・不良住宅を撤去した後、新住宅地を建設するか、あるいは土地使用を変えて 再開発する。
・周辺のインフラを整備する。
事業 実施時期 対象地区:主な住宅型 主な範囲
主な整備内容
住民の移 住宅 公共施設・転の有無
住戸 住棟 共用施設 危改
事業
1990 ∼ 1999 年
不良住宅地区 ( 平屋・簡易アパート )
都市中心 部 ( 四環路
内 )
旧市街地の整備・新住宅
地の建設 建設不足 移転
2000 ∼ 2012 年 「住房改革」の払下げ制
度と並行 棚戸区
事業
2013 ∼ 2015 年
棚戸区・伝統的民家・
農村不良住宅
受け皿住宅の建設 建設不足 移転また は仮移 転・再入
居
2016 年∼ 建替え・移転建設 全面整備
( 再開発 ) 老旧小
区事業
2012 ∼ 2015 年 老朽化集合住宅団地
( 単元式住宅 ) ( 対象外 ) 耐震・設備改
修等 修復整備 移転なし 2016 年∼
表 2-1 北京市の住宅市街地整備事業の基本的性格
表 2-2 北京市不良住宅地区整備事業の変遷
①危改事業の試行期 (1987 ∼ 1990 年 )
1987 年、 市政府は不良住宅地区の改善手法の検討を始めた。 都心部に分布する深刻 な不良住宅地区から 4 地区 ( 菊児胡同・小後倉・東南園・郭荘北里 ) をモデル地区に選 定した。1 千万元の補助金を出し、政府・単位・住民・開発業者が連携して出資し、歴 史的地区に残る伝統的な町並みや四合院住宅の空間構成を継承しながら、現代生活に合 った住環境整備の手法が模索された注 5)。しかしながら、モデル事業は優れた整備事例 を生んだ一方で事業費が嵩み、 以降は同様な整備方法を推進できなかった。1980 年代 までの旧市街地の整備方針は、 過度の住宅不足から住宅の除却には消極的で、 低質な 平屋(平房)や簡易アパート(簡易楼)が大量に建設され、不良住宅の増加を招いた。
1990 年には 147 地区の不良住宅地区が存在し、 延床面積は約 284 万㎡、 人口は約 80 万 人の規模であった。
②危改事業の推進期 (1990 ∼ 1999 年 )
1990 年、 市政府第 8 次常務会議において危改事業の推進が決定され、 住宅地開発事 業の重点は新住宅地の開発優先から旧市街地の整備と新住宅地の開発の両立へと転換し た。1991 年、「危険・劣化住宅改造工事現場会議紀要 ( 関于危旧房改造現場弁公会会議 紀要 )」が発表され、危改事業が本格的に始まり、旧市街地に住む多くの住民を移転さ せ、全面的な再開発が行われた。1992 年に社会主義市場経済体制が導入され、国の経済・
土地・住宅政策は大きく転換した。土地の使用権の譲渡も可能になり、これに伴い、住 民移転の補償方式は住宅の現物支給から金銭補償・個人購入に変化した。1990 ∼ 1999 年 の 10 年間に 333 地区で事業実施され、 延床面積 499 万㎡の不良住宅がクリアランスさ れた。18.45 万世帯の住民が移転し、総事業費は 469 億元に達した。
③危改事業の連携期 (2000 ∼ 2012 年 )
諸費用の高騰で危改事業が行き詰まり、他の制度や開発と連携することで打開が図ら れた。2008 年の北京オリンピックまでが目標期限となり、 この時期に都心部の対象地 区の整備が大きく進展する一方、住民の生活再建に大きな課題を残した。この時期の特 徴として、 によれば、1990 年代後半、 土地価格や立退き補償金の高騰等の要因で危改 事業は一時行き詰まる。これに対し、市は 2000 年に「房改帯危改」という新方式を打 ち出し、開発業者の負担を軽減するため、立退き補償費の負担を分散化し、附随公共設 備の整備には政府が補助金を出すなどした。これにより事業は進捗したが、戻り入居住 宅を購入する力を持った住民と持たない住民との著しい格差を生んだ。
④棚改事業への移行期 (2013 年∼ 2015 年 )
国政府は 12 次五カ年期(2011-2015 年)において、主要目標の「国民生活の継続的改善」
の中で、 都市や農村部での住環境改善の推進を掲げた。2013 年時点で全国の約 1 億人 が棚戸区に住んでいるとされる。北京市でも、都心部に危改事業が滞った地区が残る他、
都市の拡大に伴いスプロール地域や元農村(城中村)にも不良住宅地区が増加し、深刻 な問題となっている。2013 年に国務院は「棚戸区改造事業を推進する意見 ( 国務院関 于加快棚戸区改造工作意見 )」を発表し、全国レベルで棚改事業を推進することを決定 した。 これを受け、 北京市政府は、2014 年に「北京市意見 ( 北京市人民政府関于加快 棚戸区改造和環境政治工作的実施意見 )」を発表し、2014 ∼ 2015 年に 191 地区、約 1 万 世帯を対象に事業を実施した。
棚改事業の制度概要を表 2-1 の右に示す。危改事業と比べて、対象地区の範囲が広が ったものの、事業の特徴は引き継がれており、採択条件が公表されていないなどトップ ダウンの姿勢が強い。事業内容も住民に対しては受け皿住宅の建設が中心であり、地区 特性を踏まえた住環境改善のメニューは見られない。一方、事業運営では、事業計画段 階から住民の立退き段階までは市・区政府が実施主体となり、民間開発事業者との役割 分担を明確にするなど、事業の透明性や公正性に配慮しつつ、事業推進を図るための改 善が認められる。危改事業と異なり、事業実施より発生した利益問題や住民不信等を防 ぐため、棚戸区事業の主導権は開発業者から政府・関連部局に移り、また、政府が事業 計画を策定し、開発業者と委託契約を結んでいる。開発業者は事業運営組織に入らず、
政府が事業対象・整備方針を決定、また、立退き段階に補償手続きを公表するなど、住 民との交渉を重視している。
老旧小区事業も棚改事業と同じく危改事業の教訓を生かし、地区ごとに事業の計画・
目標・内容を明確し、整備内容に対応する組織編成を行っており、事業運営の透明性や 公正性が図られている。
(2) 老旧小区の形成経緯
前述した不良住宅地区の再開発事業に加え、「老旧小区」と呼ばれるかつて公有住宅 であった高経年住宅団地の住環境整備である「老旧小区総合整備事業」が 2012 年から 推進されている。
中国では、建国後から 1990 年代まで国が都市住宅の計画、建設、分配、管理の主体 となり、単元式住宅注 6)と呼ばれるユニット設計の中層集合住宅が大量に建設され、公 有住宅として単位注 7)を通じて職員に分配された。特に 1980 ~ 90 年代に建設されたも